JP4530384B2 - 新規なリン化合物及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なリン化合物に関する。さらに詳しくは、成形加工時および燃焼時に樹脂組成物の熱分解による腐食性ガスあるいは有毒性ガスの発生がなく、樹脂に高い難燃性を付与し得るリン化合物およびそれを含有する難燃剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂は、一般に燃焼しやすいので、近年用途の拡大に伴い難燃性の付与が強く要望され、種々の方法で難燃化処理が施されている。熱可塑性樹脂を難燃化する一般的な手段として各種のハロゲン系難燃剤を配合することが行われ、広く実用に供されている。
【0003】
しかし、ハロゲン系難燃剤を配合した樹脂組成物は、成形加工時に腐食性ガスを発生するため、周辺の機器を腐食しやすいという欠点がある。また、腐食性ガスを処理するために特別の設備が必要であるという欠点がある。また、燃焼時には発煙量が多く、ハロゲン化水素などの有毒性ガスにより火災の際に避難する人々が逃げ道を失う危険性が指摘されている。さらに、焼却処分の際に、ダイオキシン類の発生源になるとの指摘がされている。したがって、近年、このような欠点がないノンハロゲン系難燃剤が強く要望されている。
【0004】
そこで、各種ノンハロゲン系難燃剤の中でも有害な燃焼ガスを発生しない無機系水和物難燃剤、すなわち、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム等の燃焼時に腐食性ガスを発生しない水和金属酸化物を用いる方法が用いられるようになった。無機系水和物難燃剤のなかでも、とりわけ水酸化マグネシウムは脱水分解温度が高く、また燃焼時の抑煙効果に優れていることから広く実用に供されている。しかしながら、充分な難燃性を付与するためには、大量に添加する必要があり、その結果、得られる成形品は機械的特性が著しく低下するという問題点がある。
【0005】
また、特開昭61−106643号公報には、熱可塑性樹脂に対して縮合リン酸化合物とトリアジン化合物の組み合わせを添加することにより、難燃性を付与する方法が記載されている。また、特開昭60−152542号公報には、熱可塑性樹脂に対して、ポリリン酸アンモニウムとトリフェニルアンチモンを同時に添加することにより難燃性を付与する方法が記載されている。しかし、これらの方法により樹脂に充分な難燃性を付与するためには、難燃剤を大量に添加する必要があり、不経済であるのみならず、樹脂組成物の機械的特性が著しく低下するという問題点がある。
【0006】
また、米国特許第4154930号や第4201705号公報には、ポリオレフィン樹脂に対して、ペンタエリスリトールの酸性リン酸エステル(3,9−ジヒドロキシ2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]−ウンデカン−3,9−ジオキシド)のメラミン塩を添加することにより難燃性を付与する方法が知られているが、近年の電気、電子用部品または自動車部品などの用途において要求される厳しい難燃性能を満たすことはできないので、さらなる難燃剤が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、成形加工時および燃焼時に腐食性または有毒性のガスの発生がなく、合成樹脂に対して優れた難燃性を付与し得る、ハロゲン原子を含有しない難燃性ポリオレフィン樹脂組成物に有用な化合物および難燃剤を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定のリン化合物が合成樹脂(例えば、ポリオレフィン樹脂)に対して優れた難燃性を付与し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
具体的には、本発明によれば、以下の式(I)の化合物と:
【0010】
【化5】
アミンとの塩として形成される化合物が提供される。
ここで、該アミンは、ピペラジンであるか、または炭素数が1〜6のアルキレンジアミンである。
【0011】
本発明によればまた、以下の式(II)の化合物と
【0012】
【化6】
アミンとの塩として形成される化合物が提供される。
ここで、該アミンは、ピペラジンであるか、または炭素数が1〜6のアルキレンジアミンであり、
式(II)中のR1およびR2は、同一または独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表す。
【0013】
1つの実施態様では、前記アルキレンジアミンがエチレンジアミンである。
【0014】
別の局面において、本発明によれば、上記いずれかの化合物からなる、難燃剤が提供される。
【0015】
また別の局面において本発明の方法は、難燃剤の製造方法であって、式(I)の化合物とアミンとを反応させて塩を形成する工程を包含する:
【0016】
【化7】
ただし、該アミンは、ピペラジンであるか、または炭素数が1〜6のアルキレンジアミンである。
【0017】
また別の局面において本発明の方法は、難燃剤の製造方法であって、式(II)の化合物と、アミンとを反応させて塩を形成する工程を包含する:
【0018】
【化8】
ただし、該アミンは、ピペラジンであるか、または炭素数が1〜6のアルキレンジアミンであり、
式(II)中のR1およびR2は、同一または独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表す。
【0019】
さらに別の局面において、本発明は、(ポリ)リン酸のメラミン塩およびアンモニウム塩からなる群から選択される難燃剤の難燃性を改良する難燃性改質剤であって、上記いずれかの化合物である、難燃性改質剤を提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の化合物は、式(I)または(II)で表される酸性リン酸エステルとアミンとの塩である。ここで、当該アミンは、ピペラジンまたは炭素数1〜6のアルキレンジアミン塩である。
【0021】
(式Iの化合物)
式(I)の化合物(本明細書中において、化合物(I)ともいう。)は、酸性リン酸エステルであって、従来公知の方法により合成され得る。あるいは、式(I)の化合物として、市販されているものを利用してもよい。合成方法の具体的な例を以下に説明する。
【0022】
式(I)の化合物は、例えば、以下のように製造され得る。ペンタエリスリトールとオキシハロゲン化リンとを反応させてホスホロクロリデートを得る。ホスホロクロリデートを加水分解すると酸性リン酸エステル(I)が得られる。酸性リン酸エステル(I)とアミン化合物とを反応させることにより、アミン塩が製造される。
【0023】
上記合成方法の例をさらに詳細に説明する。この合成方法の例では、化合物(I)は、以下の式(A)の化合物を経由する合成ルートで合成される。
【0024】
【化9】
(但し、Xは塩素原子または臭素原子を表す。)
化合物(A)は、ペンタエリスリトールと、オキシハロゲン化リンとを反応させることにより得られる。反応に用いるオキシハロゲン化リンの量は、例えば、ペンタエリスリトールに対して1.8から5モル当量が好ましい。必要に応じて、反応に不活性な有機溶媒をこの反応の際に用いることができる。使用可能な溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられる。適切な反応温度は、例えば、50℃〜130℃である。適切な時間は、例えば、1〜10時間である。必要に応じて、公知の方法により精製されてもよい。
【0025】
なお、ここで、当該オキシハロゲン化リンの具体例としては、オキシ塩化リンおよびオキシ臭化リンが挙げられる。
【0026】
次いで、化合物(A)を加水分解することにより、化合物(I)が合成される。例えば、化合物(A)と、適量の水とを反応させる。反応させる量としては、例えば、化合物(A)に対して1.8から2.4モル当量である。適切な反応温度は、例えば、60〜100℃である。適切な反応時間は、例えば、0.5〜10時間である。得られた化合物は、必要に応じて、蒸留、ろ過、洗浄、遠心分離などの公知の方法で精製される。
【0027】
(式Iの酸性リン酸エステルのアミン塩)
式(I)の酸性リン酸エステルのアミン塩は、式(I)の酸性リン酸エステルと、アミンとを反応させることにより得られる。反応条件としては、リン酸とアミンとが反応し得る反応条件である限り、任意の条件が使用され得る。
【0028】
このアミン塩は、例えば、以下のように製造され得る。ペンタエリスリトールまたはネオペンチルグリコールとオキシハロゲン化リンとを反応させてホスホロクロリデートを得る。ホスホロクロリデートを加水分解して酸性リン酸エステル(I)を得る。酸性リン酸エステル(I)とアミン化合物とを反応させることによりアミン塩が製造される。
【0029】
具体的には、例えば、式(I)の化合物1分子と、アミン1分子とが反応して、式(I)の化合物のうちの1つのリン酸基と、アミンのうちの1つのNH基とが反応して、塩としての化合物を形成することができる。この場合、具体的には、模式的に、式(I)の化合物を「D」と表し、アミンを「E」と表すと、この場合の塩は、「D−E」との構造になる。
【0030】
また例えば、式(I)の化合物1分子と、アミン2分子とが反応して、アミン2分子のそれぞれの分子の1つづつのNH基が、式(I)の化合物の2つのリン酸基と結合して、塩としての化合物を形成することができる。この場合、具体的には、式(I)の化合物を「D」と表し、アミンを「E」と表すと、この場合の塩は、「E−D−E」との構造になる。
【0031】
またさらに例えば、式(I)の化合物2分子と、アミン1分子とが反応して、式(I)の化合物2分子のそれぞれの分子の1つづつのリン酸基が、アミンの2つの塩基性水素と反応して、塩としての化合物を形成することができる。この場合、具体的には、式(I)の化合物を「D」と表し、アミンを「E」と表すと、この場合の塩は、「D−E−D」との構造になる。
【0032】
さらに、本発明の塩としての化合物は、式(I)の化合物の複数分子と、アミンの複数分子とが結合した、いわゆるポリマーのような構造を有していてもよい。具体的には、式(I)の化合物を「D」と表し、アミンを「E」と表すと、「D−E−D−E−D−E−D− … 」との構造となる。
【0033】
このため、上述した各種の塩を包括的に簡略化した一般式は、
DnEm
(Dは式(I)の化合物の残基、Eはアミンの残基、mは任意の自然数、nは、m、m+1、またはm−1から選択される自然数)となる。
【0034】
さらに、アミンがアルキレンジアミンである場合、アミン1分子に対して、式(I)の化合物が3分子または4分子結合してもよい。例えば、式イ
【0035】
【化10】
または、式ロ
【0036】
【化11】
のタイプの化合物であってもよい。また、このような結合状態の部分構造を含んで、分岐構造を有するポリマー、例えば、式ハ
【0037】
【化12】
または式ニ
【0038】
【化13】
のタイプの化合物であってもよい。
【0039】
このような場合をも含めると、上記一般式
DnEm
におけるnは、m−1から3m+1までの範囲の任意の整数をとり得る。
【0040】
本明細書中において、式(I)の化合物とアミンとの塩とは、上記一般式で表されるすべての化合物をいう。また、それらのうちの複数の化合物を組合せた混合物として用いてもよい。
【0041】
例えば、式(I)の化合物とアミンとを反応させた場合に、反応条件によっては、単一の化合物ではなく、上記一般式 DnEm で示され得る複数の化合物の混合物が得られる場合があるが、その場合に、得られた複数種の化合物を分離する必要は必ずしもなく、その混合物のまま難燃剤として使用しても、良好な性能を発揮し得る。
【0042】
また、塩として形成される化合物中に、複数のアミン残基が存在する場合、それらのアミンは、同一であってもよく、別種のものであってもよい。例えば、ピペラジンをE1、エチレンジアミンをE2として、
E1−D−E2
の構造の化合物であってもよく、
DnE1 kE2 h (kおよびhは、k+h=m、すなわち、kとhとの和がn、n-1、またはn+1となる任意の自然数)
との構造、すなわち、ポリマー型構造中にランダムに、ピペラジンとエチレンジアミンとが使用される構造であってもよい。
【0043】
上記の塩として形成される各種の化合物においては、nが10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。3以下であることがさらに好ましい。1つの好ましい実施態様では、1である。同様に、mが10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。3以下であることがさらに好ましい。1つの好ましい実施態様では、1である。
【0044】
式(I)の化合物のアミン塩において、式(I)の化合物とアミン(ピペラジンまたはアルキレンジアミン)との反応モル比は、好ましくは、1:1〜1:2である。
【0045】
本発明に用いるアルキレンジアミンは、炭素数が1〜6のアルキレンジアミンであれば特に限定されない。具体的には例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等を例示できる。特に高い難燃性を付与できる点から好ましくはエチレンジアミンである。
【0046】
式(I)の化合物と、アミンとの塩は、リン酸とのアミンとの反応に関する従来公知の技術を応用すれば、容易に合成することができる。
【0047】
例えば、溶媒中で、式(I)の化合物と、ピペラジンまたはアルキレンジアミンとを、必要に応じて加熱しながら反応させることにより合成することができる。
【0048】
ここで、溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールが使用可能である。
【0049】
反応温度としては、例えば、0〜70℃の温度が使用可能である。
【0050】
反応時間としては、例えば、0.5〜5時間程度反応させることができる。
【0051】
合成反応に用いる式(I)の化合物と、ピペラジンまたはアルキレンジアミンとの比率としては、例えば、式(I)の化合物に対して0.9から2.3モル当量のピペラジンまたはアルキレンジアミンを添加することができる。
【0052】
具体的には、例えば、ピペラジンおよび/またはアルキレンジアミンの使用量を化合物(I)に対して1.8〜2.3モル当量程度とすれば、化合物(I):アミン(ピペラジンおよび/またはアルキレンジアミン)=1:2の塩を製造することができる。また例えば、ピペラジンまたはアルキレンジアミンの使用量を化合物(I)に対して0.9〜1.2モル当量とすれば、化合物(I):アミン(ピペラジンまたはアルキレンジアミン)=1:1の塩を製造することができる。
【0053】
(化合物IIとアミンとの塩)
次に、式(II)の化合物とアミンとの塩について説明する。なお、式(II)中のR1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基であり、同一であってもよく、または異なってもよい。R1およびR2は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基が挙げられる。メチル基が好ましい。
【0054】
化合物IIとアミンとの塩は、例えば、以下のように製造され得る。例えば、ネオペンチルグリコールなどのグリコールとオキシハロゲン化リンとを反応させてホスホロクロリデートを得る。ホスホロクロリデートを加水分解して式(II)の酸性リン酸エステルを得る。式(II)の酸性リン酸エステルとアミン化合物とを反応させることによりアミン塩が製造される。
【0055】
具体的には例えば、化合物(II)は、以下の化合物(C)を原料として、以下の化合物(B)を中間体として合成される。
【0056】
【化14】
(但し、R1およびR2は前記と同義を表す。)
【0057】
【化15】
(但し、R1およびR2、Xは前記と同義を表す。)
化合物(B)は、例えば、化合物(C)とオキシハロゲン化リンとを反応させることにより得られる。反応量としては、例えば、化合物(C)に対して0.9から1.2モル当量のオキシハロゲン化リンとを反応させることができる。反応は、必要に応じてベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の反応に不活性な有機溶媒中で行うことができる。適切な反応温度は、例えば、50〜130℃である。適切な反応時間は、例えば、1〜10時間である。得られた化合物は、必要に応じて、公知の方法で精製され得る。
【0058】
化合物(II)は、例えば、化合物(B)を加水分解することにより得られる。例えば、化合物(B)と適切な量の水とを反応させることにより得られる。水の量は、例えば、化合物(B)に対して0.9から1.2モル当量である。適切な反応温度は、例えば、60〜100℃である。適切な反応時間は、例えば、0.5〜10時間である。得られた化合物は、必要に応じて、蒸留、ろ過、洗浄、遠心分離などの公知の方法により精製され得る。
【0059】
次いで、例えば、溶媒中で化合物(II)とアミンとを反応させることによりアミン塩が得られる。
【0060】
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール溶媒が使用され得る。アミンの使用量としては、化合物(II)に対して0.9〜2.3モル当量を添加することが好ましい。反応温度としては、例えば、0〜70℃が好ましい。反応時間としては、0.5〜5時間が好ましい。このような反応条件を適切に選択することにより、化合物(II)のピペラジン塩またはアルキレンジアミン塩が得られる。
【0061】
具体的には、例えば、アミンとしてピペラジンを用いた場合には、化合物(II)1分子とアミン1分子とが反応した化合物、または、化合物(II)2分子とアミン1分子とが反応した化合物が得られる。化合物(II)2分子とアミン1分子とが反応した化合物が好ましい。
【0062】
また例えば、アミンとしてアルキレンジアミンを用いた場合には、化合物(II)1分子とアミン1分子とが反応した化合物、化合物(II)2分子とアミン1分子とが反応した化合物、化合物(II)3分子とアミン1分子とが反応した化合物、または、化合物(II)4分子とアミン1分子とが反応した化合物が得られ得る。化合物(II)2分子とアミン1分子とが反応した化合物が好ましい。
【0063】
このような方法により、化合物(I)のアミン塩(ピペラジン塩または炭素数1〜6のアルキレンジアミン塩)、および化合物(II)のアミン塩(ピペラジン塩または炭素数1〜6のアルキレンジアミン塩)が結晶として得られる。必要に応じて上述した有機溶媒による洗浄や再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの公知の方法により、さらに高純度の精製品とすることができる。
【0064】
このようにして得られた本発明の化合物をそのまま難燃剤とするか、あるいは、本発明の化合物を主成分として難燃剤を製造すれば、得られる難燃剤は、各種合成樹脂に対して優れた難燃性を付与し得る。
【0065】
すなわち、本発明の難燃剤は、前記の化合物(I)または化合物(II)のアミン塩(ピペラジン塩または炭素数1〜6のアルキレンジアミン塩)の1種もしくは2種以上の混合物を含有してなるものであり、合成樹脂中または合成樹脂を得るための単量体中に添加して使用される。
【0066】
上記難燃剤中には、所望により各種化合物を添加してもよい。例えば、リン酸エステル化合物を添加することができる。具体的には、例えば、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシリルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリブチルホスフェートなどの単量型リン酸エステルを添加してもよく、また、レゾルシンビス(リン酸ジフェニル)、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)などの縮合リン酸エステルを添加してもよい。また、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン等の無機化合物を添加してもよく、またリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、メラム、メラミン等の窒素含有化合物などを添加してもよい。上述した各種添加剤のなかでもリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムが好ましい。ここで、本発明の化合物と、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムから選ばれる化合物とを併用すれば、樹脂への難燃性に対して相乗効果を発揮する。
【0067】
本発明の化合物と、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウムから選ばれる化合物とを併用する際のリン化合物の配合量は、好ましくは、樹脂100重量部に対して、1〜60重量部であり、より好ましくは5〜50重量部であり、さらに好ましくは、10〜30重量部である。特に好ましくは、12〜25重量部である。配合量が少なすぎる場合には充分な難燃性が得られにくい。逆に配合量が少なすぎる場合には、得られる成形品において充分な機械的特性を得にくい。充分な機械的特性が得られない場合、実用性に乏しくなるので好ましくない。
【0068】
また、本発明の化合物を難燃剤として使用する際には、赤リン粉末、シリコーンまたは炭素粉末などを難燃助剤として配合しても差し支えない。赤リン粉末としては安定化赤リン粉末を使用することが好ましい。当該安定化赤リン粉末の例としては熱硬化性樹脂被覆赤リン、オレフィン被覆赤リン、酸化チタン被覆赤リン、チタンアルミニウム縮合物被覆赤リン等を挙げることができる。
【0069】
さらに、本発明の化合物を難燃剤として使用する際には、必要に応じて、組成物の物性を損なわない範囲で、一般的に配合されている各種添加剤を必要に応じて添加してもよい。具体的には、例えばフェノール系、アミン系、硫黄系、リン系、エポキシ系等の酸化防止剤および安定剤、マイカ、タルク、アルミナ等の無機充填剤および木粉等の有機充填剤、カチオン系活性剤や非イオン系活性剤等の帯電防止剤、ガラス繊維、金属繊維、ウィスカー等の補強材、ベンゾフェノン系、サリチレート系、ベンゾトリアゾール系、アクリロニトリル系等の紫外線吸収剤、光安定剤、脂肪酸誘導体、高融点ワックス系等の滑剤、軟化剤、酸化チタン、フタロシアニン系等の顔料などの1種もしくは2種以上を必要に応じて、適切な量で使用することができる。
【0070】
本発明の化合物を難燃剤として使用する場合、その難燃剤を添加する対象となる樹脂は、合成樹脂であってもよく、天然樹脂であってもよい。合成樹脂が好ましい。また、樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。好ましくは、熱可塑性樹脂である。
【0071】
熱可塑性樹脂の具体的な例としては、例えば、塩素化ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、スチレン系樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ACS樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートなどがある。熱硬化性樹脂の具体的な例としては、ポリウレタン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステルなどが挙げられる。好ましくは非ハロゲン含有樹脂である。非ハロゲン含有化合物である難燃剤と非ハロゲン含有樹脂との組合せを選択した場合、有害、有毒なハロゲン系ガスが発生する危険性は完全に克服されるという利点がある。
【0072】
また、本発明の化合物を難燃剤として使用する場合、前記非ハロゲン含有樹脂の難燃化に有効であり、中でも、ポリオレフィン樹脂に添加した場合の難燃性改良に特に有効である。
【0073】
上述したポリオレフィン樹脂としては、従来公知の任意のポリオレフィン樹脂が使用され得る。具体的には例えば、ポリプロピレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、変性ポリエチレン樹脂、ポリ(1−ブテン)系樹脂、ポリペンテン系樹脂等が挙げられる。またこれらの樹脂は、単独で使用されてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
【0074】
前記変性ポリプロピレン樹脂の例としては、例えば、プロピレンを主成分とする共重合体が挙げられる。プロピレンを主成分とする共重合体の例としては、例えば、プロピレンを主成分とするプロピレン−α−オレフィン共重合体を挙げることができる。前記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる。
【0075】
前記変性ポリエチレン樹脂の例としては、エチレンを主成分とする共重合体が挙げられる。エチレンを主成分とする共重合体の例としては、例えば、エチレンを主成分とするエチレン−α−オレフィン共重合体を挙げることができる。
【0076】
前記α−オレフィンの例としては、プロピレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる。
【0077】
前記α−オレフィン以外の共重合体の例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体等が挙げられる。
【0078】
本発明の化合物を難燃剤として使用する場合、もちろん、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂に使用しても差し支えない。例えば、スチレン系樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ACS樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、変性ポリフェニレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン類、ポリエーテルニトリル、ポリチオエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、各種液晶ポリマー性樹脂およびこれらの混合物などの熱可塑性樹脂、ならびにポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂およびこれらの混合物等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0079】
難燃剤として用いる場合、酸性リン酸エステルのアミン塩は単独で使用してもよく、若しくは二種類以上の混合物として使用してもよい。
【0080】
なお、化合物(I)とメラミンとの塩は、上述したように、(ポリ)リン酸のメラミン塩またはアンモニウム塩と組み合わせて、難燃剤または難燃剤組成物としてもよい。このように組み合わせて用いる場合、化合物(I)とメラミンとの塩を、本明細書中では、便宜上、(a成分)という。また、このように組み合わせて用いる場合の(ポリ)リン酸のメラミン塩、またはアンモニウム塩を、本明細書中では、便宜上、(b成分)ともいう。
【0081】
(ポリ)リン酸のメラミン塩またはアンモニウム塩は、(ポリ)リン酸とメラミンまたはアンモニアとを反応させることにより製造される。一般に市販されているポリリン酸メラミン、リン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムの何れのものでも使用することができる。好ましくはリン酸メラミンである。これらの化合物は単独で使用してもよく、若しくは二種類以上の混合で使用してもよい。
【0082】
好ましい実施態様では、前記(a成分)および(b成分)に加えて、さらに高度にポリオレフィン樹脂を難燃化する目的で(c成分)としてアクリル樹脂変性ポリテトラフロオロエチレンを使用することが好ましい。
【0083】
使用され得るアクリル樹脂変性ポリテトラフロオロエチレンは、ポリテトラフロオロエチレンをメタクリル酸アルキルエステルの重合体にて変性して製造される。これは、ポリテトラフロオロエチレン中のフッ素原子を表面に配列して高剛性とし、凝集性を小さくして容易に繊維状の網目構造が出来易くしたものである。一般に市販されている何れのものでも使用することができる。
【0084】
上述したように、上記(a成分)と(b成分)とを併用する場合、上記(a成分)の配合量は、樹脂100重量部に対して、好ましくは、1〜60重量部である。より好ましくは、5〜50重量部である。さらに好ましくは、10〜30重量部である。特に好ましくは、12〜25重量部である。配合量が少なすぎる場合には充分な難燃性が得られにくい。配合量が多すぎる場合には、得られる成形品の機械的特性が低下し易く、実用性に乏しくなり易い。
【0085】
上記(a成分)と(b成分)とを併用する場合、上記(b成分)の配合量は、樹脂100重量部に対して、好ましくは、1〜60重量部である。より好ましくは、5〜50重量部である。さらに好ましくは、10〜30重量部である。特に好ましくは、12〜25重量部である。配合量が少なすぎる場合には充分な難燃性が得られにくい。配合量が多すぎる場合には、得られる成形品の機械的特性が低下し易く、実用性に乏しくなり易い。
【0086】
また(b成分)の配合量は、(a成分)100重量部に対して、30部〜300重量部であることが好ましい。より好ましくは、40〜250重量部であり、さらに好ましくは、50〜200重量部である。
【0087】
上記(c成分)を用いる場合、その配合量は、樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましい。より好ましくは0.2〜8重量部である。さらに好ましくは、0.3〜5重量部である。特に好ましくは0.5〜2重量部である。配合量が少なすぎる場合には充分な難燃性が得られにくい。また配合量が多すぎる場合には、得られる難燃性に比べて、組成物のコストが上がりやすい。
【0088】
また、(c成分)を用いる場合、その配合量は、(a成分)100重量部に対して、1〜30重量部であることが好ましい。より好ましくは、2〜25重量部であり、さらに好ましくは、3〜20重量部である。
【0089】
難燃性樹脂組成物には、必要に応じてその性能を損なわない範囲内において、前記(a成分)および前記(b成分)以外の難燃剤を併用してもよい。例えば、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、レゾルシンビス(リン酸ジフェニル)、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)などのリン酸エステル、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの無機化合物等を配合しても差し支えない。
【0090】
本発明の化合物を用いた難燃性樹脂組成物は、任意の方法により、所望の成形品とされ得る。例えば、各成分を単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ロール等の汎用の混練装置を用いて溶融混練し、板状、シート状やフィルム状などの所望の形状に成形加工することにより所望の成形品が得られる。
【0091】
難燃剤の調製方法および難燃剤の樹脂への添加方法も、公知の任意の方法が可能である。
【0092】
(本発明の化合物の用途)
本発明の化合物を用いた難燃性樹脂組成物は、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品として有用に用いることができる。例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、パソコン、プリンター、ディスプレー、CRTディスプレー、ファックス、コピー、ワープロ、ノートパソコン、DVDドライブ、PDドライブ、フロッピーディスクドライブなどの記憶装置のハウジング、リレー、スイッチ、ケース部材、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子機器部品、自動車部品、機械部品、その他各種用途に幅広く用いることができる。
【0093】
(本発明の難燃剤)
以上、本発明の化合物について説明したが、本発明の難燃剤についても、本発明の化合物について上述した、材料、製造方法および使用方法などが同様に用いられる。
【0094】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0095】
(調製例および合成例)
化合物(A1)、(A2)、および(A3)を、以下に説明する方法により合成した。
【0096】
(調製例1)
・3,9−ジヒドロキシ2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]−ウンデカン−3,9−ジオキシド(以下、化合物(1)と略する)の合成
▲1▼第一段階反応
(反応式)
【0097】
【化16】
攪拌機、温度計、ジムロート型コンデンサーを備えた3Lの三口フラスコに、ペンタエリスリトール680g(5.0モル)、オキシ塩化燐3070g(20モル)を充填し、撹拌しながら65℃まで0.5時間かけて昇温した後、2時間反応させ、次いで110℃まで2時間かけて昇温し反応を完結した。この際に発生する塩酸ガスは系外へ回収した(回収した塩酸量は理論の発生量に対し102〜103wt%であった。)。得られた反応物を室温まで冷却した後、1,4−ジオキサン700gで繰り返し洗浄し、溶媒を除去し、白色固体のホスホロクロリデート1489.5gを得た。
【0098】
▲2▼第二段階反応
(反応式)
【0099】
【化17】
攪拌機、温度計、ジムロート型コンデンサーを備えた3Lの三口フラスコに、該ホスホロクロリデート1470g、1,4−ジオキサン1400gおよび、水162gを充填し、撹拌しながら0.5時間かけて80℃まで昇温し、さらに75℃から80℃の間で3.5時間反応させた後、2時間かけて90℃まで昇温し、塩酸の発生がなくなったことを確認して反応を完結した。この際に発生する塩酸ガスは系外へ回収した(回収した塩酸量は理論の発生量に対し80wt%であった。)。得られた反応物を室温まで冷却した後、1,4−ジオキサン700gで繰り返し洗浄し、溶媒を除去および乾燥を行い、白色固体の化合物(1)を882.7g得た(酸価426.3/理論値432)。
【0100】
(調製例2)
・2−ヒドロキシ−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシド(以下、化合物(2)と略する)の合成
▲1▼第一段階反応
(反応式)
【0101】
【化18】
攪拌機、温度計、ジムロート型コンデンサーおよび追加ロートを備えた3Lの四口フラスコに、ネオペンチルグリコール832g(8モル)、トルエン582.4gを充填した。撹拌しながら、0.5時間かけて45℃まで昇温した後、オキシ塩化燐1216g(7.9モル)を2時間かけて追加した。その後、50℃で1時間反応させた。その後、2時間かけて80℃まで昇温し、さらに80℃で1時間熟成した。その後、80℃に維持しつつ0.5時間かけて250mmHgまで減圧し発生する塩酸を回収しながら1時間反応を行い、白色固体のホスホロクロリデート2026gを得た。
【0102】
▲2▼第二段階反応
(反応式)
【0103】
【化19】
上記ホスホロクロリデート2026gに水148.5gを添加し、0.5時間かけて85℃まで昇温した。発生する塩酸を回収しつつ、85℃から90℃の間で3.5時間反応させた。その後、2時間かけて95℃まで昇温し、さらに95℃から100℃の間で2時間熟成し、塩酸の発生がなくなったことを確認して反応を完結した。得られた反応物を室温まで冷却した後、ろ過により固体を分離し、該固体をトルエン300gで洗浄し、溶媒除去および乾燥して、白色固体の化合物(2)を1302.4g得た(酸価325/理論値338)。
【0104】
(合成例1)化合物(A1)の合成
(3,9−ジヒドロキシ2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]−ウンデカン−3,9−ジオキシドのピペラジン塩)
C5H10P2O8+C4H10N2→C9H20N2P2O8
攪拌機、温度計、ジムロート型コンデンサーおよび追加ロートを備えた2Lの四つ口フラスコに、化合物(1)を390g(1.5モル)、メタノールを500g充填した。これを0.5時間かけて45℃まで昇温した。反応物の温度を50℃から55℃の間に維持しつつ、メタノール320gに溶解させた無水ピペラジン254.9g(3.0モル)を1時間かけて追加した。反応により生成した固体を溶解する目的でメタノール200gを追加した。その後、同じ温度で1時間熟成して反応を完結した。得られた反応物を室温まで冷却し、ろ過により固体を分離した。該固体をメタノール350gで洗浄し、溶媒除去および乾燥して、白色固体の化合物(A1)583gを得た。
【0105】
(合成例2)化合物(A2)の合成
(3,9−ジヒドロキシ2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]−ウンデカン−3,9−ジオキシドのエチレンジアミン塩)
C5H10P2O8+C2H8N2→C7H18N2P2O8
攪拌機、温度計、ジムロート型コンデンサーおよび追加ロートを備えた2Lの四つ口フラスコに、化合物(1)を440g(1.7モル)、メタノールを750g充填した。これを0.5時間かけて45℃まで昇温した。反応物の温度を50℃から55℃の間に維持しつつ、メタノール75gに溶解させたエチレンジアミン100.3g(1.67モル)を1時間かけて追加し、反応により生成した固体を溶解する目的でメタノール500gを追加した。その後、同じ温度で1時間熟成して反応を完結した。得られた反応物を室温まで冷却した。ろ過により固体を分離した後、該固体をメタノール300gで洗浄し、溶媒除去および乾燥して、白色固体の化合物(A2)490gを得た。
【0106】
(合成例3)化合物(A3)の合成
(2−ヒドロキシ−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドのピペラジン塩)
2C5H11PO4+C4H10N2→C14H32N2P2O8
攪拌機、温度計、ジムロート型コンデンサーおよび追加ロートを備えた2Lの四つ口フラスコに、化合物(2)を664g(3.88モル)、メタノールを500g充填した。これを0.5時間かけて45℃まで昇温した。反応物の温度を50℃から55℃の間に維持しつつ、メタノール200gに溶解させた無水ピペラジン165.3g(1.92モル)を1時間かけて追加した。反応により生成した固体を溶解する目的でメタノール200gを追加し、その後、同じ温度で1時間熟成して反応を完結した。得られた反応物を室温まで冷却し、ろ過により固体を分離し、該固体をメタノール300gで洗浄し、溶媒除去および乾燥して、白色固体の化合物(A3)768.9gを得た。
【0107】
(比較合成例1)(化合物A4の合成)
(3,9−ジヒドロキシ2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]−ウンデカン−3,9−ジオキシドのメラミン塩)
C5H10P2O8+C3H6N6→C8H16N6P2O8
無水ピペラジンの代わりに、メラミンを用いた以外は上記合成例1と実施的に同様に、化合物を調製した。
【0108】
上記の各合成例で得られた化合物について元素分析を行った。元素分析装置として、株式会社柳本製作所製「柳本高速CHNレコーダー MT−3型」を使用した。なお、測定試料がリン含有化合物であるため、酸化タングステンを試料と共に白金ポートに入れて測定した。
【0109】
リンの含有率については、吸光光度法で測定を行った。まず、過塩素酸と硝酸とで試料を分解した。その後、バナジン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウムおよび硝酸を加えて発色させ、分光光度計(島津製作所製「DOUBLE−BEAM SPECTROPHOTOMETER UV−150−02」)を使用し、440nmの波長の吸光度を測定した。
【0110】
【表1】
(実施例および比較例)
2軸押出機を用いて、以下の表2に示す所定量(重量部)の各成分を溶融混練し、難燃性樹脂組成物を得た。得られた組成物を射出成形機にて成形し、燃焼試験用および機械的特性測定用試料をそれぞれ作製した。
【0111】
各実施例および比較例中においては、以下の材料を用いた。
・ポリオレフィン樹脂:トクヤマ製商品名「トクヤマポリプロMS−670C」比重=0.90(g/cc)、MI=23.0(g/10min)(以下、PP樹脂と略する)
・酸性リン酸エステルのアミン塩:
3,9−ジヒドロキシ2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]−ウンデカン−3,9−ジオキシドのピペラジン塩(以下、化合物(A1)と略する)、
3,9−ジヒドロキシ2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]−ウンデカン−3,9−ジオキシドのエチレンジアミン塩(以下、化合物(A2)と略する)、および
2−ヒドロキシ−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドのピペラジン塩(以下、化合物(A3)と略する)
・リン酸メラミン:三和ケミカル製商品名「MPP−A」
・アクリル樹脂変性ポリテトラフルオロエチレン:三菱レイヨン製商品名「メタブレンA−3000」(以下、A−PTFEと略する)
・水酸化マグネシウム:協和化学工業製商品名「キスマ5A」
・水酸化アルミニウム:昭和電工製商品名「ハイジライトH−42M」
・燐酸トリフェニル:大八化学工業製商品名「TPP」。
【0112】
燃焼試験は、UL−94垂直燃焼試験およびJIS規格K−7201に準拠した酸素指数法によって評価した。UL−94垂直燃焼試験の結果は、V−0、V−1、V−2、Burnの4段階で評価した。
【0113】
機械的特性は、JIS規格K−7207試験法に準拠した荷重たわみ温度(℃)により評価した。
【0114】
評価結果を以下の一覧表に示す。
【0115】
【表2】
この表から理解されるように、本発明によれば、難燃性に優れたポリオレフィン樹脂用の難燃剤が得られる。
【0116】
【発明の効果】
本発明のリン化合物、すなわち化合物(I)のピペラジン塩および/または炭素数が1〜6であるアルキレンジアミン塩、化合物(II)のピペラジン塩および/または炭素数が1〜6であるアルキレンジアミン塩は、合成樹脂に対して優れた難燃性を示すことから、本発明により難燃剤として優れた性質を発揮する新規化学物質を提供することが可能となる。
【0117】
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の構成は前述の通りである。ハロゲンを含有した難燃剤を使用しないため加工時や燃焼時にハロゲン系ガスの発生が無く、人体への有毒性や機器への腐食性等の安全面の問題が無い。また、優れた難燃性と機械的特性を併せ持つことにより幅広い用途に用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 上記実施例において得られた化合物A1のIRスペクトルを示す。
【図2】 上記実施例において得られた化合物A2のIRスペクトルを示す。
【図3】 上記実施例において得られた化合物A3のIRスペクトルを示す。
Claims (7)
- 前記アルキレンジアミンがエチレンジアミンである、請求項1または2に記載の化合物。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物からなる、難燃剤。
- (ポリ)リン酸のメラミン塩およびアンモニウム塩からなる群から選択される難燃剤の難燃性を改良する難燃性改質剤であって、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物である、難燃性改質剤。
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