JP4808831B2 - 難燃性ポリオレフィン樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、成形加工時および燃焼時に樹脂組成物の熱分解による腐食性ガスあるいは有毒性ガスの発生がなく、難燃特性が優れた非ハロゲン系ポリオレフィン難燃性樹脂組成物およびそのための難燃剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂は、一般に燃焼しやすいので、近年用途の拡大に伴い難燃性の付与が強く要望され、種々の方法で難燃化処理が施されている。熱可塑性樹脂を難燃化する一般的な手段として各種のハロゲン系難燃剤を配合することが行われ、広く実用に供されている。
【0003】
しかし、ハロゲン系難燃剤を配合した樹脂組成物は、成形加工時に腐食性ガスを発生するため、周辺の機器を腐食しやすいという欠点がある。また、腐食性ガスを処理するために特別の設備が必要であるという欠点がある。また、燃焼時には発煙量が多く、ハロゲン化水素などの有毒性ガスにより火災の際に避難する人々が逃げ道を失う危険性が指摘されている。さらに、焼却処分の際に、ダイオキシン類の発生源になるとの指摘がされている。したがって、近年、このような欠点がないノンハロゲン系難燃剤が強く要望されている。
【0004】
そこで、各種ノンハロゲン系難燃剤の中でも有害な燃焼ガスを発生しない無機系水和物難燃剤、すなわち、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム等の燃焼時に腐食性ガスを発生しない水和金属酸化物を用いる方法が用いられるようになった。無機系水和物難燃剤のなかでも、とりわけ水酸化マグネシウムは脱水分解温度が高く、また燃焼時の抑煙効果に優れていることから広く実用に供されている。しかしながら、充分な難燃性を付与するためには、大量に添加する必要があり、その結果、得られる成形品は機械的特性が著しく低下するという問題点がある。
【0005】
また、特開昭61−106643号公報には、熱可塑性樹脂に対して縮合リン酸化合物とトリアジン化合物の組み合わせを添加することにより、難燃性を付与する方法が記載されている。また、特開昭60−152542号公報には、熱可塑性樹脂に対して、ポリリン酸アンモニウムとトリフェニルアンチモンを同時に添加することにより難燃性を付与する方法が記載されている。しかし、これらの方法により樹脂に充分な難燃性を付与するためには、難燃剤を大量に添加する必要があり、不経済であるのみならず、樹脂組成物の機械的特性が著しく低下するという問題点がある。
【0006】
また、米国特許第4154930号や第4201705号公報には、ポリオレフィン樹脂に対して、ペンタエリスリトールの酸性リン酸エステル(3,9−ジヒドロキシ2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]−ウンデカン−3,9−ジオキシド)のメラミン塩を添加することにより難燃性を付与する方法が知られているが、実用性には乏しいものである。
【0007】
さらに、特開平3−68663号公報には、ポリオレフィン樹脂に対して、ペンタエリスリトールビスホスホロクロリデート(3,9−ジクロロ2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]−ウンデカン−3,9−ジオキシド)とピペラジンとの反応物および縮合リン酸アンモニウムを添加することにより難燃性を付与する方法が開示されている。これらの化合物の組み合わせにより、高温高湿下の環境においての樹脂表面ブリード現象が改良される。しかし、充分な難燃性を得るためには、難燃剤を大量に添加しなければならない。
【0008】
近年、電気、電子用部品または自動車部品などの用途において難燃性の要求がますます厳しくなってきている。難燃性樹脂組成物から得られる成形品の用途の多様化、大型化に伴って、当該成形品の実用時の使用条件(機械的特性、耐熱性、電気絶縁性など)に対する要求も厳しくなってきている。このため、上記のような従来の方法によるポリオレフィン樹脂の難燃化方法は充分とはいえない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたもので、成形加工時および燃焼時に腐食性または有毒性のガスの発生がなく、優れた難燃性を有し、ハロゲンを含有しない難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリオレフィン樹脂に対して、特定の燐化合物を組み合わせて添加することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明によれば、ポリオレフィン樹脂と、下記(a成分)と、下記(b成分)とを含有する、非ハロゲン系難燃性ポリオレフィン樹脂組成物が提供される。
【0012】
(a成分):下記式(I)および/または(II)で表される酸性リン酸エステルのアミン塩:
【0013】
【化3】
【0014】
(但し、R1およびR2は同一または独立して炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
(b成分):(ポリ)リン酸のメラミン塩またはアンモニウム塩。
【0015】
1つの実施態様では、前記アミンが、ピペラジンおよび/またはエチレンジアミンである。
【0016】
1つの実施態様では、前記ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、前記(a成分)の配合量が10〜30重量部であり、前記(b成分)の配合量が10〜30重量部である。
【0017】
1つの実施態様では、さらに、(c成分)としてアクリル樹脂変性ポリテトラフロオロエチレンを含有する。
【0018】
別の局面において、本発明は、下記(a成分)と、下記(b成分)とを含有する、ポリオレフィン樹脂用非ハロゲン系難燃剤を提供する:
(a成分):下記式(I)および/または(II)で表される酸性リン酸エステルのアミン塩:
【0019】
【化4】
【0020】
(但し、R1およびR2は同一または独立して炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
(b成分):(ポリ)リン酸のメラミン塩またはアンモニウム塩。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明において、ポリオレフィン樹脂としては、従来公知の任意のポリオレフィン樹脂が使用され得る。具体的には例えば、ポリプロピレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、変性ポリエチレン樹脂、ポリ(1−ブテン)系樹脂、ポリペンテン系樹脂等が挙げられる。またこれらの樹脂は、単独で使用されてもよく、複数種類を混合して用いてもよい。
【0022】
前記変性ポリプロピレン樹脂の例としては、例えば、プロピレンを主成分とする共重合体が挙げられる。プロピレンを主成分とする共重合体の例としては、例えば、プロピレンを主成分とするプロピレン−α−オレフィン共重合体を挙げることができる。前記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる。
【0023】
前記変性ポリエチレン樹脂の例としては、エチレンを主成分とする共重合体が挙げられる。エチレンを主成分とする共重合体の例としては、例えば、エチレンを主成分とするエチレン−α−オレフィン共重合体を挙げることができる。
【0024】
前記α−オレフィンの例としては、プロピレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ブテン、1−ペンテン等が挙げられる。
【0025】
前記α−オレフィン以外の共重合体の例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体等が挙げられる。
【0026】
本発明の組成物には、得られる樹脂組成物の性能に悪影響を及ぼさない限りにおいて、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂を使用しても差し支えない。例えば、スチレン系樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ACS樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、変性ポリフェニレンオキシド、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン類、ポリエーテルニトリル、ポリチオエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、各種液晶ポリマー性樹脂およびこれらの混合物などの熱可塑性樹脂、ならびにポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂およびこれらの混合物等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0027】
本発明の組成物中の(a成分)は、酸性リン酸エステルのアミン塩である。(a成分)は、例えば、以下のように製造され得る。ペンタエリスリトールまたはネオペンチルグリコールとオキシハロゲン化リンとを反応させてホスホロクロリデートを得る。ホスホロクロリデートを加水分解して酸性リン酸エステル(I)および/または(II)を得る。酸性リン酸エステル(I)および/または(II)とアミン化合物とを反応させることにより(a成分)のアミン塩が製造される。
【0028】
ここで、式(II)中のR1およびR2は同一であってもよく、または異なってもよく、炭素数1〜3のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基が挙げられる。メチル基が好ましい。
【0029】
またここで、上記アミン化合物は、芳香族アミンであってもよく、脂肪族アミンであってもよい。脂肪族アミンは、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、また環状であってもよい。上記アミン化合物の具体的な好ましい例としては、ピペラジン、ピペリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、モルホリンなどが挙げられる。高い難燃性を付与できる点で、ピペラジン、エチレンジアミンが好ましい。さらに好ましくは化合物(I)のピペラジン塩、エチレンジアミン塩である。
【0030】
使用する酸性リン酸エステル、アミン化合物の種類、またその反応比を変更することにより、得られる該酸性リン酸エステルのアミン塩の構造を適宜選択、変更することができる。これらの酸性リン酸エステルのアミン塩は単独で使用してもよく、若しくは二種類以上の混合で使用することも差し支えない。
【0031】
本発明で(b成分)として用いられる(ポリ)リン酸のメラミン塩またはアンモニウム塩は、(ポリ)リン酸とメラミンまたはアンモニアとを反応させることにより製造される。一般に市販されているポリリン酸メラミン、リン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アンモニウムの何れのものでも使用することができる。好ましくはリン酸メラミンである。これらの化合物は単独で使用してもよく、若しくは二種類以上の混合で使用しても差し支えない。
【0032】
本発明の組成物の好ましい実施態様では、前記(a成分)および(b成分)に加えて、さらに高度にポリオレフィン樹脂を難燃化する目的で(c成分)としてアクリル樹脂変性ポリテトラフロオロエチレンを使用することが好ましい。
【0033】
本発明の組成物で使用され得るアクリル樹脂変性ポリテトラフロオロエチレンは、ポリテトラフロオロエチレンをメタクリル酸アルキルエステルの重合体にて変性して製造される。これは、ポリテトラフロオロエチレン中のフッ素原子を表面に配列して高剛性とし、凝集性を小さくして容易に繊維状の網目構造が出来易くしたものである。一般に市販されている何れのものでも使用することができる。
【0034】
本発明の組成物中の(a成分)の配合量は、樹脂100重量部に対して、好ましくは、5〜50重量部である。より好ましくは、10〜30重量部である。さらに好ましくは、12〜25重量部である。配合量が少なすぎる場合には充分な難燃性が得られにくい。配合量が多すぎる場合には、得られる成形品の機械的特性が低下し易く、実用性に乏しくなり易い。
【0035】
本発明の組成物中の(b成分)の配合量は、樹脂100重量部に対して、好ましくは、5〜50重量部である。より好ましくは、10〜30重量部である。さらに好ましくは、12〜25重量部である。配合量が少なすぎる場合には充分な難燃性が得られにくい。配合量が多すぎる場合には、得られる成形品の機械的特性が低下し易く、実用性に乏しくなり易い。
【0036】
また、(b成分)の配合量は、(a成分)100重量部に対して、30部〜300重量部であることが好ましい。より好ましくは、40〜250重量部であり、さらに好ましくは、50〜200重量部である。
【0037】
本発明の組成物中の(c成分)を用いる場合、その配合量は、樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましい。より好ましくは0.2〜8重量部である。さらに好ましくは、0.3〜5重量部である。特に好ましくは0.5〜2重量部である。配合量が少なすぎる場合には充分な難燃性が得られにくい。また配合量が多すぎる場合には、得られる難燃性に比べて、組成物のコストが上がりやすい。
【0038】
また、(c成分)を用いる場合、その配合量は、(a成分)100重量部に対して、1〜30重量部であることが好ましい。より好ましくは、2〜25重量部であり、さらに好ましくは、3〜20重量部である。
【0039】
本発明の難燃性樹脂組成物には、必要に応じて本発明の樹脂組成物の性能を損なわない範囲内において、前記(a成分)および前記(b成分)以外の難燃剤を併用してもよい。例えば、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、レゾルシンビス(リン酸ジフェニル)、ビスフェノールAビス(リン酸ジフェニル)などのリン酸エステル、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの無機化合物等を配合しても差し支えない。
【0040】
また、本発明の難燃性樹脂組成物には、赤リン粉末、シリコーンまたは炭素粉末などを難燃助剤として配合することも差し支えない。赤リン粉末には安定化赤リン粉末を使用することが好ましく、該安定化赤リン粉末としては熱硬化性樹脂被覆赤リン、オレフィン被覆赤リン、酸化チタン被覆赤リン、チタンアルミニウム縮合物被覆赤リン等を挙げることができる。
【0041】
さらに、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、組成物の物性を損なわない範囲で、一般的に配合されている各種添加剤、例えばフェノール系、アミン系、硫黄系、リン系、エポキシ系等の酸化防止剤および安定剤、マイカ、タルク、アルミナ等の無機充填剤および木粉等の有機充填剤、カチオン系活性剤や非イオン系活性剤等の帯電防止剤、ガラス繊維、金属繊維、ウィスカー等の補強材、ベンゾフェノン系、サリチレート系、ベンゾトリアゾール系、アクリロニトリル系等の紫外線吸収剤、光安定剤、脂肪酸誘導体、高融点ワックス系等の滑剤、軟化剤、酸化チタン、フタロシアニン系等の顔料などの1種もしくは2種以上が適当量含有されていても良い。
【0042】
本発明による難燃性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、各成分を単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ロール等の汎用の混練装置を用いて溶融混練し、板状、シート状やフィルム状に成形加工することにより成形品が得られる。
【0043】
難燃剤の調製方法および難燃剤の樹脂への添加方法も、公知の任意の方法が可能である。例えば、a)成分とb)成分とを混合して難燃剤を調製した後、調整された難燃剤を樹脂に添加してもよい。または、a)成分とb)成分と樹脂とを同時に混合してもよい。
【0044】
(本発明の組成物の用途)
本発明の難燃性ポリプロピレン樹脂組成物は、機械機構部品、電気・電子部品、自動車部品として有用に用いることができる。例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、パソコン、プリンター、ディスプレー、CRTディスプレー、ファックス、コピー、ワープロ、ノートパソコン、DVDドライブ、PDドライブ、フロッピーディスクドライブなどの記憶装置のハウジング、リレー、スイッチ、ケース部材、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子機器部品、自動車部品、機械部品、その他各種用途に幅広く用いることができる。
【0045】
(本発明の難燃剤)
以上、本発明の組成物について説明したが、本発明の難燃剤についても、本発明の組成物について上述した、材料、製造方法および使用方法などが同様に用いられる。
【0046】
【実施例】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(調製例および合成例)
化合物(A1)、(A2)、および(A3)を、以下に説明する方法により合成した。
【0048】
(調製例1)
・3,9−ジヒドロキシ2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]−ウンデカン−3,9−ジオキシド(以下、化合物(1)と略する)の合成
▲1▼第一段階反応
(反応式)
【0049】
【化5】
【0050】
攪拌機、温度計、ジムロート型コンデンサーを備えた3Lの三口フラスコに、ペンタエリスリトール680g(5.0モル)、オキシ塩化燐3070g(20モル)を充填し、撹拌しながら65℃まで0.5時間かけて昇温した後、2時間反応させ、次いで110℃まで2時間かけて昇温し反応を完結した。この際に発生する塩酸ガスは系外へ回収した(回収した塩酸量は理論の発生量に対し102〜103wt%であった。)。得られた反応物を室温まで冷却した後、1,4−ジオキサン700gで繰り返し洗浄し、溶媒を除去し、白色固体のホスホロクロリデート1489.5gを得た。
【0051】
▲2▼第二段階反応
(反応式)
【0052】
【化6】
【0053】
攪拌機、温度計、ジムロート型コンデンサーを備えた3Lの三口フラスコに、該ホスホロクロリデート1470g、1,4−ジオキサン1400gおよび、水162gを充填し、撹拌しながら0.5時間かけて80℃まで昇温し、さらに75℃から80℃の間で3.5時間反応させた後、2時間かけて90℃まで昇温し、塩酸の発生がなくなったことを確認して反応を完結した。この際に発生する塩酸ガスは系外へ回収した(回収した塩酸量は理論の発生量に対し80wt%であった。)。得られた反応物を室温まで冷却した後、1,4−ジオキサン700gで繰り返し洗浄し、溶媒を除去および乾燥を行い、白色固体の化合物(1)を882.7g得た(酸価426.3/理論値432)。
【0054】
(調製例2)
・2−ヒドロキシ−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシド(以下、化合物(2)と略する)の合成
▲1▼第一段階反応
(反応式)
【0055】
【化7】
【0056】
攪拌機、温度計、ジムロート型コンデンサーおよび追加ロートを備えた3Lの四口フラスコに、ネオペンチルグリコール832g(8モル)、トルエン582.4gを充填した。撹拌しながら、0.5時間かけて45℃まで昇温した後、オキシ塩化燐1216g(7.9モル)を2時間かけて追加した。その後、50℃で1時間反応させた。その後、2時間かけて80℃まで昇温し、さらに80℃で1時間熟成した。その後、80℃に維持しつつ0.5時間かけて250mmHgまで減圧し発生する塩酸を回収しながら1時間反応を行い、白色固体のホスホロクロリデート2026gを得た。
【0057】
▲2▼第二段階反応
(反応式)
【0058】
【化8】
【0059】
上記ホスホロクロリデート2026gに水148.5gを添加し、0.5時間かけて85℃まで昇温した。発生する塩酸を回収しつつ、85℃から90℃の間で3.5時間反応させた。その後、2時間かけて95℃まで昇温し、さらに95℃から100℃の間で2時間熟成し、塩酸の発生がなくなったことを確認して反応を完結した。得られた反応物を室温まで冷却した後、ろ過により固体を分離し、該固体をトルエン300gで洗浄し、溶媒除去および乾燥して、白色固体の化合物(2)を1302.4g得た(酸価325/理論値338)。
【0060】
(合成例1)化合物(A1)の合成
攪拌機、温度計、ジムロート型コンデンサーおよび追加ロートを備えた2Lの四つ口フラスコに、化合物1を390g(1.5モル)、メタノールを500g充填した。これを0.5時間かけて45℃まで昇温した。反応物の温度を50℃から55℃の間に維持しつつ、メタノール320gに溶解させた無水ピペラジン254.9g(3.0モル)を1時間かけて追加した。反応により生成した固体を溶解する目的でメタノール200gを追加した。その後、同じ温度で1時間熟成して反応を完結した。得られた反応物を室温まで冷却し、ろ過により固体を分離した。該固体をメタノール350gで洗浄し、溶媒除去および乾燥して、白色固体の化合物(A1)583gを得た。
【0061】
(合成例2)化合物(A2)の合成
攪拌機、温度計、ジムロート型コンデンサーおよび追加ロートを備えた2Lの四つ口フラスコに、化合物(1)を440g(1.7モル)、メタノールを750g充填した。これを0.5時間かけて45℃まで昇温した。反応物の温度を50℃から55℃の間に維持しつつ、メタノール75gに溶解させたエチレンジアミン100.3g(1.67モル)を1時間かけて追加し、反応により生成した固体を溶解する目的でメタノール500gを追加した。その後、同じ温度で1時間熟成して反応を完結した。得られた反応物を室温まで冷却した。ろ過により固体を分離した後、該固体をメタノール300gで洗浄し、溶媒除去および乾燥して、白色固体の化合物(A2)490gを得た。
【0062】
(合成例3)化合物(A3)の合成
攪拌機、温度計、ジムロート型コンデンサーおよび追加ロートを備えた2Lの四つ口フラスコに、化合物(2)を664g(3.88モル)、メタノールを500g充填した。これを0.5時間かけて45℃まで昇温した。反応物の温度を50℃から55℃の間に維持しつつ、メタノール200gに溶解させた無水ピペラジン165.3g(1.92モル)を1時間かけて追加した。反応により生成した固体を溶解する目的でメタノール200gを追加し、その後、同じ温度で1時間熟成して反応を完結した。得られた反応物を室温まで冷却し、ろ過により固体を分離し、該固体をメタノール300gで洗浄し、溶媒除去および乾燥して、白色固体の化合物(A3)768.9gを得た。
【0063】
上記の各合成例で得られた化合物について元素分析を行った。元素分析装置として、株式会社柳本製作所製「柳本高速CHNレコーダー MT−3型」を使用した。なお、測定試料がリン含有化合物であるため、酸化タングステンを試料と共に白金ポートに入れて測定した。
【0064】
リンの含有率については、吸光光度法で測定を行った。まず、過塩素酸と硝酸とで試料を分解した。その後、バナジン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウムおよび硝酸を加えて発色させ、分光光度計(島津製作所製「DOUBLE−BEAM SPECTROPHOTOMETER UV−150−02」)を使用し、440nmの波長の吸光度を測定した。
【0065】
【表1】
【0066】
(実施例および比較例)
2軸押出機を用いて、以下の表2に示す所定量(重量部)の各成分を溶融混練し、難燃性樹脂組成物を得た。得られた組成物を射出成形機にて成形し、燃焼試験用および機械的特性測定用試料をそれぞれ作製した。
【0067】
各実施例および比較例中においては、以下の材料を用いた。
・ポリオレフィン樹脂:トクヤマ製商品名「トクヤマポリプロMS−670C」比重=0.90(g/cc)、MI=23.0(g/10min)(以下、PP樹脂と略する)
・酸性リン酸エステルのアミン塩:
3,9−ジヒドロキシ2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]−ウンデカン−3,9−ジオキシドのピペラジン塩(以下、化合物(A1)と略する)、
3,9−ジヒドロキシ2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]−ウンデカン−3,9−ジオキシドのエチレンジアミン塩(以下、化合物(A2)と略する)、および
2−ヒドロキシ−5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−オキシドのピペラジン塩(以下、化合物(A3)と略する)
・リン酸メラミン:三和ケミカル製商品名「MPP−A」
・アクリル樹脂変性ポリテトラフルオロエチレン:三菱レイヨン製商品名「メタブレンA−3000」(以下、A−PTFEと略する)
・水酸化マグネシウム:協和化学工業製商品名「キスマ5A」
・水酸化アルミニウム:昭和電工製商品名「ハイジライトH−42M」
・燐酸トリフェニル:大八化学工業製商品名「TPP」。
【0068】
燃焼試験は、UL−94垂直燃焼試験およびJIS規格K−7201に準拠した酸素指数法によって評価した。UL−94垂直燃焼試験の結果は、V−0、V−1、V−2、Burnの4段階で評価した。
【0069】
機械的特性は、JIS規格K−7207試験法に準拠した荷重たわみ温度(℃)により評価した。
【0070】
評価結果を以下の一覧表に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
この表から理解されるように、本発明によれば、難燃性に優れたポリオレフィン樹脂組成物および良好な難燃剤が得られる。
【0073】
【発明の効果】
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の構成は前述の通りである。ハロゲンを含有した難燃剤を使用しないため加工時や燃焼時にハロゲン系ガスの発生が無く、人体への有毒性や機器への腐食性等の安全面の問題が無い。また、優れた難燃性と機械的特性を併せ持つことにより幅広い用途に用いることが可能となる。
Claims (5)
- 前記アミンが、ピペラジンおよび/またはエチレンジアミンである、請求項1に記載の組成物。
- 前記ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、前記(a成分)の配合量が10〜30重量部であり、前記(b成分)の配合量が10〜30重量部である、請求項1または2に記載の組成物。
- さらに、(c成分)としてアクリル樹脂変性ポリテトラフロオロエチレンを含有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
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