JP4529217B2 - 精フェニレンジオキシジ酢酸類の製造方法 - Google Patents

精フェニレンジオキシジ酢酸類の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、精フェニレンジオキシジ酢酸類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
下記一般式(I)
Figure 0004529217
(式中、Rはハロゲン、カルボキシ基または炭素数4以下の炭化水素基を表し、nは0〜3の整数を表す。。)
で表されるフェニレンジオキシジ酢酸類は、ポリエステルやポリアミドなどの原料として用いられる工業的に有用な化合物である。
精フェニレンジオキシジ酢酸類の製造方法としては、フェニレンジオキシジ酢酸類を主成分とする粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液を酸析する方法が知られている。例えば、上記アルカリ水溶液と鉱酸とを用いて80℃以上で酸析した後、80℃以上で保温する方法が提案されている(特開平4-173764号公報)。
しかしながら、この方法では、得られた精フェニレンジオキシジ酢酸類が純度等の点で充分満足し得るものではなく、この点の改善が望まれていた。
【0003】
【課題を解決するための手段】
このような状況下、本発明者らは、高純度、高収率を与える精フェニレンジオキシジ酢酸類の製造方法を見出すべく、粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液の酸析方法について鋭意検討を重ねた結果、酸析を0〜50℃で行った後、80〜110℃で保温することにより、目的の精フェニレンジオキシジ酢酸類が、高純度、高収率で得られることを見出すとともに、更に検討を重ねた結果、上記温度下において、粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液全体の少なくとも10重量%以上を酸析すれば、残りは、上記温度以外の温度で酸析しても、同様に高純度、高収率で目的物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0004】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)
Figure 0004529217
(式中、Rはハロゲン、カルボキシ基または炭素数4以下の炭化水素基を表し、nは0〜3の整数を表す。)
で示されるフェニレンジオキシジ酢酸類を主成分とする粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液を鉱酸により酸析せしめた後、保温することによる精フェニレンジオキシジ酢酸類の製造方法において、粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液の少なくとも10重量%を0〜50℃下で酸析せしめ、保温を80〜110℃で実施することを特徴とする精フェニレンジオキシジ酢酸類の製造方法を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるフェニレンジオキシジ酢酸類としては前記一般式(I)で示される化合物が挙げられる。
ここで、置換基Rとしては、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、カルボキシ基またはその塩、メチル、エチル、t−ブチル基等の炭素数1〜4程度の炭化水素基等が挙げられる。またnとしては、0〜3程度の整数が挙げられるが好ましくは0である。
【0006】
本発明の原料である粗フェニレンジオキシジ酢酸類は、上記のフェニレンジオキシジ酢酸類(I)を主成分とするものである。
粗フェニレンジオキシジ酢酸類におけるフェニレンジオキシジ酢酸類(I)の含有量としては、通常、固形分として約80重量%以上、とりわけ約90重量%以上が好適である。
【0007】
粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液としては、フェニレンジオキシジ酢酸類(I)を主成分とするアルカリ水溶液であれば良く、該溶液は完全に溶解しても、フェニレンジオキシジ酢酸類(I)などが析出したスラリーでも良い。
粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液の製造方法は特に限定されないが、例えば、下記一般式(II)
Figure 0004529217
(式中、R、nは前記と同じ意味を表す。)
で示されるジヒドロキシベンゼン類(II)とエチレンオキサイドをアルカリ水溶液で反応させ、得られたフェニレンジオキシジエタノール類を酸化することにより粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液を得る方法(特公昭62-28940号公報、特表平3-500653号公報、特開平3-38544号公報)、ジヒドロキシエトキシベンゼン類(II)とハロゲン化酢酸をアルカリ水溶液でエーテル化反応せしめることにより粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液を得る方法(特開平4-173764号公報)等が挙げられる。
中でも後者の方法が、粗フェニレンジオキシジ酢酸類中におけるフェニレンジオキシジ酢酸類の含有量が高いことから好ましい。
【0008】
上記ジヒドロキシベンゼン類(II)の代表例としては、レゾルシン、ヒドロキノン等が挙げられるが、中でもレゾルシンが好適である。
また、ハロゲン化酢酸としては、例えば、モノクロロ酢酸、モノブロモ酢酸等が挙げられるが、中でもモノクロロ酢酸が好適である。
ハロゲン化酢酸の使用量は、ジヒドロキシベンゼン類に対して、通常、2.0〜4.0モル倍程度、好ましくは2.2〜3.0モル倍程度である。
【0009】
上記のエーテル化反応において使用されるアルカリ水溶液のアルカリとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸化物などが例示される。中でも、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好適である。
アルカリの使用量としてはハロゲン化酢酸1モルに対して、通常、1.8〜2.5当量程度、好ましくは1.9〜2.1当量程度である。
アルカリ水溶液の濃度としては、アルカリの種類によっても異なるが、例えば、水酸化ナトリウムの場合、20〜50重量%程度のものが使用される。
【0010】
エーテル化反応の具体的な製造方法としては、例えば、ジヒドロキシベンゼン類の水溶液にハロゲン化酢酸とアルカリ水溶液とを併注する方法、ジヒドロキシベンゼン類を少量のアルカリ水溶液で溶解した溶液にハロゲン化酢酸とアルカリ水溶液とを併注混合する方法およびジヒドロキシベンゼン類を溶解したアルカリ水溶液とハロゲン化酢酸とを併注する方法等が挙げられる。
また、エーテル化反応は、反応溶液のpHを7.5〜12程度、好ましくは7.5〜8.5程度で実施されることが好ましい。反応溶液のpHが7.5未満の場合には、ヒドロキシフェニレン酢酸類が増加する傾向にあるので好ましくなく、12を超えた場合には、ハロゲン化酢酸が加水分解される傾向にあるので好ましくない。
【0011】
エーテル化反応は、通常、80℃〜110℃程度、好ましくは90℃〜100℃程度で実施される。
また、エーテル化反応は、反応マス中のハロゲン化酢酸が消失するまで実施することが好ましく、反応時間は、通常、1〜10時間程度である。
【0012】
本発明は、粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液を鉱酸により酸析せしめた後、保温することによる精フェニレンジオキシジ酢酸類の製造方法において、粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液の少なくとも10重量%を0〜50℃下で酸析せしめ、保温を80〜110℃で実施することを特徴とするものである。
【0013】
鉱酸を用いて、粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液の少なくとも10重量%を酸析する際の温度が、50℃を超える場合には、得られる精フェニレンジオキシジ酢酸類中の不純物が増加する傾向があるため、好ましくない。また、上記の温度を0℃未満で実施することも可能であるが、冷凍設備等を必要とするため経済的に好ましくない。
粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液を0〜50℃下で酸析する重量が、該アルカリ水溶液全体の10重量%に達しない場合には、精フェニレンジオキシジ酢酸類の純度が低下する傾向にあるため、好ましくない。
【0014】
鉱酸による粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液の酸析の方法としては、例えば、(1)0〜50℃下で鉱酸に粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液を添加する方法、(2)0〜50℃下で粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液と鉱酸とを併注混合する方法、(3)0〜50℃下で粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液に鉱酸を添加する方法、(4)0〜50℃下で、鉱酸に少なくとも10重量%の粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液を加え、残りのアルカリ水溶液を50〜110℃程度で添加する方法、(5)0〜50℃下で少なくとも10重量%の粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液と鉱酸を併注混合し、残りのアルカリ水溶液と鉱酸を50〜110℃程度で併注混合する方法、(6)0〜50℃下で少なくとも10重量%の粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液に鉱酸を加え、残りのアルカリ水溶液と鉱酸とを50〜110℃程度で混合する方法、等が挙げられる。
中でも、(1)、(2)、(4)または(5)のいずれかの方法が好ましく、とりわけ(1)または(4)の方法が好適であり、より好ましくは(4)の方法である。
【0015】
本発明の鉱酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸が挙げられる。特に硫酸、塩酸が好ましく、中でも塩酸が好適である。
鉱酸は、水溶液として使用することが好ましく、その濃度は、通常、5〜20重量%程度のものである。
鉱酸の使用量としては、フェニレンジオキシジ酢酸類(I)1モルに対し、通常、2.6〜3.4当量程度である。
【0016】
粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液と鉱酸をすべて酸析した後、得られた混合物を、80〜110℃、好ましくは85〜95℃程度に保温する。保温温度が80℃に未満の場合には、得られる精フェニレンジオキシジ酢酸類中の不純物が増加する傾向にあるため、好ましくなく、110℃を超える場合には、混合物が沸騰して器壁に結晶が付着する傾向にあるため好ましくない。保温時間としては、通常、0.1〜4時間程度、好ましくは0.5〜2時間程度である。
【0017】
保温後、上記の混合物を50〜0℃程度、好ましくは40〜10℃程度まで冷却する。次に、得られた結晶を濾過等の方法により分離、必要に応じて水洗、乾燥することにより、目的の精フェニレンジオキシジ酢酸類を得ることができる。また、得られた精フェニレンジオキシジ酢酸類は必要に応じて、再結晶などにより精製することもできる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
(粗フェニレンジオキシジ酢酸類アルカリ水溶液の製造例)
窒素雰囲気下、フラスコにレゾルシン 297.3 g(2.70mol)および水 225.0 gを加え、撹拌して結晶を溶解した。次いで48%苛性ソーダ水を添加して溶液のpHを7.8とした後、95℃まで加熱し、同温度でモノクロロ酢酸 663.4 g(7.02mol)と水 389.6 gからなる水溶液を5時間かけて加え、更に同温度で2時間撹拌した。
加熱、滴下および保温中、いずれも水溶液のpHが7.5〜8.1になるように48%苛性ソーダ水溶液を滴下した。使用した48%苛性ソーダ水溶液は合計 1110 g(4.93当量)であった。得られた粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液は 2685 g であり、スラリー状であった。このスラリーの一部を50%アセトニトリル水溶液に溶解した後、高速液体クロマトグラフィーを用いて面積百分率法により分析した。結果を表1に示した。
【0020】
(精フェニレンジオキシジ酢酸類の製造例)
窒素雰囲気、攪拌下、フラスコに15%塩酸水溶液 247.9 g(1.02mol)を仕込み、15℃に冷却した。次いで、この水溶液に上記の粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液 297.0 g(レゾルシンとして0.30mol相当)を徐々に添加した後、33gの水で粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液調整槽を洗浄した洗浄水を添加した。これらの添加に1時間を要した。この間、フラスコの混合物を15±1℃に維持した。
次いで、得られた混合物を90℃まで加熱し、同温度で1.0時間保温した後、30℃まで冷却した。析出している結晶を濾過したのち、水 100 gにて洗浄し、60℃で真空乾燥を行い、白色の精フェニレンジオキシジ酢酸類 61.8 g を得た。
この一部を50%アセトニトリル水溶液に溶解した後、高速液体クロマトグラフィーを用いて内標準法により分析した。結果を表1に示した。
尚、略号はそれぞれ、II-1:3−フェニレンジオキシジ酢酸、III-1:1,3−ヒドロキシフェノキシ酢酸、III-2:2−カルボキシメチル−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸と4−カルボキシメチル−1,3−フェニレンジオキシジ酢酸の混合物を表す。
【0021】
(実施例2)
窒素雰囲気、攪拌下、フラスコに15%塩酸水溶液 273.45 g(0.90mol)を仕込み、20℃に冷却した。次いで、実施例1と同様にして得られた粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液 130.0 g(レゾルシンとして0.13mol相当、粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液の43重量%)を添加した。この時の反応温度は50℃であった。続いて粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液 172.54 g(レゾルシンとして0.17mol相当、粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液の57重量%)を添加したのち、33gの水で粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液調整槽を洗浄した洗浄水を添加した。粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液をすべて鉱酸水溶液と混合した際の反応温度は90℃であった。これらの添加に1時間を要した。
次いで、得られた混合物を90℃にて1.0時間保温した後、30℃まで冷却した。析出している結晶を濾過したのち、水 100 gにて洗浄し、60℃で真空乾燥を行い、白色結晶 63.0 g を得た。得られた結晶の分析結果を表1に示した。
【0022】
(実施例3〜7、比較例1〜3)
以下、表1に示す条件以外は実施例1および2に準拠して実施し、結果を表1にあわせて示した。
ここで、酸析条件の開始温度とは、塩酸水溶液と粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液との混合開始前の塩酸水溶液の温度を表わし、同条件の終了温度とは、粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液をすべて塩酸水溶液と混合した際の混合物の温度を表わす。また、添加量とは、粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液全重量100に対して0〜50℃下で混合せしめた該アルカリ水溶液の重量比率を表わし、時間とは、塩酸水溶液と粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液全量との混合に要した時間を表わす。また、保温温度とは、塩酸水溶液と粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液全量との混合物を1時間保温した際の混合物の温度を表わす。
【0023】
【表1】
Figure 0004529217
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、精フェニレンジオキシジ酢酸類を高純度、高収率で製造し得る。

Claims (4)

  1. 下記一般式(II)
    Figure 0004529217
    (式中、Rはハロゲン、カルボキシ基または炭素数4以下の炭化水素基を表し、nは0を表す。)
    で示されるジヒドロキシベンゼン類とハロゲン化酢酸とをアルカリ水溶液中にて反応せしめることにより得られた下記一般式(I)
    Figure 0004529217
    (式中、R、nは前記と同じ意味を表す。)
    で示されるフェニレンジオキシジ酢酸類を主成分とする粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液を鉱酸により酸析せしめた後、保温することによる精フェニレンジオキシジ酢酸類の製造方法において、粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液の少なくとも10重量%を0〜50℃下で酸析せしめ、次いでここに、残りの粗フェニレンジオキシジ酢酸類のアルカリ水溶液を加えて0〜110℃下で酸析せしめ、次いで、保温を80〜110℃で実施することを特徴とする精フェニレンジオキシジ酢酸類の製造方法。
  2. ジヒドロキシベンゼン類が、レゾルシンおよび/またはヒドロキノンであることを特徴とする請求項記載の製造方法。
  3. ハロゲン化酢酸が、モノクロロ酢酸であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 鉱酸が塩酸及び/又は硫酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。
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