JP4529203B2 - 角速度センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば自動車の姿勢制御やナビゲーションなどに用いられる角速度センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の薄型の角速度センサとしては、特開平10−170276号公報に記載されたものが知られている。この角速度センサは、中央部にある付加質量部が細い梁により平面内で支持された構造である。また、この付加質量部を平面内で駆動するための駆動部と、平面と直交する軸周りに角速度が印加された時、付加質量部に働くコリオリ力により、付加質量部が変位する変位量を検出するための検出部とがともに櫛歯構造の電極より構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような角速度センサは、比較的薄型な構造を実現できるものの、駆動するために櫛歯構造の電極同士を対向させ、これらの電極同士に働く吸引力により駆動しなければならない。したがって、これらの電極同士を極めて微小な間隙で且つ高精度に形成しなければならない。
【0004】
また、微弱な信号を高精度に検出できるようにするためには、対向する櫛歯構造の電極同士を極めて微小な間隙で且つ高精度に形成しなければならないばかりか対向する櫛歯を多数設けなければならないといった課題を有していた。
【0005】
本発明はこの課題を解決するものであり、駆動及び検出のための櫛歯構造の電極を形成する必要もなく且つ角速度印加に基づく信号以外は除去可能な薄型な角速度センサを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
XY面内に設けられた基部と、XY面内において前記基部からY軸と反対の方向に延出した第1、第2の音叉片と、前記第1、第2の音叉片とそれぞれ相対向するように前記基部からY軸方向に延出した第3、第4の音叉片と、前記第1、第3の音叉片の先端からX軸方向に延出した第1、第3の付加質量部と、前記第2、第4の音叉片の先端からX軸方向と反対の方向に延出した第2、第4の付加質量部と、前記基部から前記第1、第2の音叉片の間と前記第3、第4の音叉片の間を通るようにY軸方向及びY軸方向と反対の方向にそれぞれ延出し連結された屈曲振動片と、前記屈曲振動片の中間からX軸方向及びX軸方向と反対の方向に張り出すように形成された第5の付加質量部と、前記第1、第2、第3、第4の音叉片がXY面内で1次モードの音叉振動をするように前記第2、第4の音叉片に設けられた駆動手段と、Z軸周りの角速度が印加された時、前記第5の付加質量部の中心を節にして起こる前記屈曲振動片のXY面内の2次モードの屈曲変形を検出するための検出手段とを備えたことを特徴とするものである。この構成により、駆動及び検出のための櫛歯構造の電極を形成する必要もなくなるばかりか、角速度印加に基づく信号以外は除去可能な薄型な角速度センサが得られる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、XY面内に設けられた基部と、XY面内において前記基部からY軸と反対の方向に延出した第1、第2の音叉片と、前記第1、第2の音叉片とそれぞれ相対向するように前記基部からY軸方向に延出した第3、第4の音叉片と、前記第1、第3の音叉片の先端からX軸方向に延出した第1、第3の付加質量部と、前記第2、第4の音叉片の先端からX軸方向と反対の方向に延出した第2、第4の付加質量部と、前記基部から前記第1、第2の音叉片の間と前記第3、第4の音叉片の間を通るようにY軸方向及びY軸方向と反対の方向にそれぞれ延出し連結された屈曲振動片と、前記屈曲振動片の中間からX軸方向及びX軸方向と反対の方向に張り出すように形成された第5の付加質量部と、前記第1、第2、第3、第4の音叉片がXY面内で1次モードの音叉振動をするように前記第2、第4の音叉片に設けられた駆動手段と、Z軸周りの角速度が印加された時、前記第5の付加質量部の中心を節にして起こる前記屈曲振動片のXY面内の2次モードの屈曲変形を検出するための検出手段とを備えているため、駆動及び検出のための櫛歯構造の電極を形成する必要もなくなるばかりか、角速度印加に基づく信号以外は除去可能といった作用を有する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、第1、第2、第3、第4の音叉片の1次モードの共振周波数と屈曲振動片の2次モードの共振周波数を近接させた構成としているため、検出感度が高くなり且つ検出の応答周波数を高くできる作用を有する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、基部の四隅に第1、第2、第3、第4の音叉片からそれぞれ等距離になるように設けられた4個所の固定部と、前記各固定部の近傍の所定位置にそれぞれスリット部が形成された構成としているため、外乱振動が検出部の2次の屈曲振動へ混入するのを防止する効果及び検出部の2次の屈曲振動が基部へ漏れるのを防止するための機械的なダンピング効果を有する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、XY面内に設けられた基部、第1、第2、第3、第4の音叉片、屈曲振動片と第1、第2、第3、第4、第5の付加質量部が、圧電材料により一体に形成された構成としているため、圧電特性の均一な平板から極めて容易に一体構造を形成可能といった作用を有する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、XY面内に設けられた基部、第1、第2、第3、第4の音叉片、屈曲振動片と第1、第2、第3、第4、第5の付加質量部は、恒弾性金属材料または酸化物材料により形成され、少なくとも前記第1、第2、第3、第4の音叉片と屈曲振動片のXY面上には圧電材料からなる層が設けられた構成としているため、機械的振動特性としての高いQを有する材料と圧電定数の大きな圧電材料を自由に組合わせることが可能となるといった作用を有する。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図27を用いて説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の角速度センサの第1の実施の形態を説明するための斜視図である。図1において、駆動方向をX軸方向、コリオリ力が発生する方向をY軸、角速度Ωの入力軸をZ軸とする。図1において、1は厚さ(Z軸方向)0.2mm、長さ(Y軸方向)20mm、幅(X軸方向)13.3mmの圧電体としての水晶板から構成された基部である。
【0014】
基部1からY軸と反対の方向に第1、第2の音叉片2a,2bが延出し、第1、第2の音叉片2a,2bとそれぞれ相対向するように基部1からY軸方向に第3、第4の音叉片3a,3bが延出している。第1、第2の音叉片2a,2bの先端からはX軸方向、X軸方向と反対方向にそれぞれ対称となるように第1、第2の付加質量部4a,4bが延出している。同じく第3、第4の音叉片3a,3bの先端からは、X軸方向、X軸方向と反対方向にそれぞれ対称となるように第3、第4の付加質量部5a,5bが延出している。
【0015】
基部1から第1、第2の音叉片2a,2bの間と第3、第4の音叉片3a,3bの間を通るようにY軸方向及びY軸方向と反対の方向にそれぞれ延出し連結された屈曲振動片6が設けられている。屈曲振動片6の中間には、屈曲振動片6からX軸方向及びX軸方向と反対方向に張り出すように矩形の第5の付加質量部7が設けられている。基部1、第1、第2、第3、第4の音叉片2a,2b,3a,3b、第1、第2、第3、第4の付加質量部4a,4b,5a,5b、屈曲振動片6、第5の付加質量部7は、いずれも一枚の水晶板から一体に形成されている。一枚の水晶板から形成された基部1の四隅には微小な面積で固定するための固定部としてのφ0.2の孔部8a,8b,8c,8dが形成されている。
【0016】
孔部8a,8b,8c,8dの近傍には、機械的ダンピング効果を得るためのL字状のスリット部9a,9b,9c,9dがそれぞれ所定の位置に設けられている。
【0017】
第2、第4の音叉片2b,3bの各XY面(表面側)には、駆動手段を構成するための駆動電極12a,13aが設けられている。第1、第3の音叉片2a,3aの各XY面上(表面側)には、モニター用の検出手段を構成するための検出電極10a,11aが設けられている。屈曲振動片6のXY面上(表面側)には、コリオリ力による屈曲変形の検出用としての検出手段を構成するための検出電極14a,15aが設けられている。
【0018】
図2は駆動電極が設けられた第2の音叉片2bをXZ面で切断した断面図である。図2において、X軸方向を向く矢印は水晶からなる第2の音叉片2bの電気軸を示し、12bは第2の音叉片2bを挟んで駆動電極12aと対向するように第2の音叉片2bのXY面上(裏面側)に設けられた駆動電極である。16は第2の音叉片2bのYZ面上(側面)に第2の音叉片2bを挟んで対向するように設けられた一対の共通電極である。17は駆動回路の出力信号源である。
【0019】
第4の音叉片3bにも第2の音叉片2bと同様に、駆動電極13a,13b、共通電極16が設けられている。
【0020】
次に、第2の音叉片2bの駆動原理を簡単に説明する。仮に、出力信号源17から駆動電極12a,12bに正極性の電圧が印加されると、図2内に示す破線の矢印方向に電界の方向が向く。これにより第2の音叉片2bのab側は圧縮し、cd側は伸長する。また、駆動電極12a,12bに負極性の電圧が印加されると第2の音叉片2bのab側は伸長し、cd側は圧縮する。
【0021】
これらが連続的に繰り返されることで、第2の音叉片2bは、XY面内で1次モードで振動する。
【0022】
同様な駆動原理により、第4の音叉片3bもXY面内で1次モードで振動する。第2、第4の音叉片2b,3bが1次モードで振動することにより第1、第3の音叉片2a,3aも共振し、XY面内で音叉振動を開始する。
【0023】
図3はモニター用の検出電極が設けられた第1の音叉片2aをXZ面で切断した断面図である。X軸方向を向く矢印は、図2と同様に水晶からなる第1の音叉片2aの電気軸を示し、10bは第1の音叉片2aを挟んでモニター用の検出電極10aと対向するように第1の音叉片2aのXY面上(裏面側)に設けられたモニター用の検出電極である。16は図2と同様に、共通電極である。
【0024】
第3の音叉片3aにも第1の音叉片2aと同様に、モニター用の検出電極11a,11b、共通電極16が設けられている。
【0025】
次に、モニター用の検出電極10a,10b、共通電極16に現われる電荷に関して簡単に説明する。
【0026】
第1の音叉片2aは図2に示す第2の音叉片2bとともに音叉振動をしているため、第2の音叉片2bのab側が圧縮している時は第1の音叉片2aのgh側が圧縮する。
【0027】
また、第2の音叉片2bのcdが伸長している時は、第1の音叉片2aのef側が伸長する。
【0028】
これらの圧縮、伸長によりモニター用の検出電極10a,10bには正電荷が発生し、共通電極16には負電荷が発生する。従って、第1の音叉片2aにおいて、ef側が圧縮し、gh側が伸長した場合は、モニター用の検出電極10a,10bに負電荷が発生し、共通電極16に正電荷が発生する。
【0029】
図4は本発明の角速度センサとその駆動回路を接続したブロック図である。図4において、18は差動入力型のチャージ増幅器である。18は屈曲振動片6に設けられた検出電極14a,15aから得られた信号を増幅し信号を90°位相シフトさせるためのものである。19は検波回路である。検波回路19によりチャージ増幅器18の出力信号を同期検波する。20は検波回路19により得られた検波信号中に含まれる駆動信号成分を除去し、角速度検出信号のみを通過させるためのローパスフィルタである。21は第2、第4の音叉片2b,3bを駆動させるための和入力型の駆動回路である。モニター用の検出電極10a,10b,11a,11bから得られる信号を駆動回路21に入力することにより第1、第2、第3、第4の音叉振動片2a,2b,3a,3bを目標とする15μmの振動振幅となるようにフィードバック制御する。図5は、第1、第3の音叉片2a,3aがX軸方向に、第2、第4の音叉片2b,3bがX軸方向と反対の方向に駆動変形している際に、Z軸周りの角速度が印加された時の第1、第2、第3、第4の音叉片2a,2b,3a,3b、屈曲振動片6の変形形態の一例を説明するための模式線図である。
【0030】
図5に示すように、Z軸周りの角速度が印加されたことにより、第1、第3の付加質量部4a,5aにはY軸方向に、第2、第4の付加質量部4b,5bにはY軸方向と反対の方向に集中的にコリオリの力が働き、このコリオリ力により、第1、第2、第3、第4の音叉片2a,2b,3a,3bの振動振幅の対称性が崩れた1次モードの変形を呈する。この対称性の崩れた第1、第2、第3、第4の音叉片2a,2b,3a,3bの応力状態を補正するように、第5の付加質量部7の中心を振動の節にして屈曲振動片6が2次モードの屈曲変形(S字形状)を呈する。この屈曲変形量に対応して屈曲振動片6に設けられた検出電極14aから電荷が得られる。また、この電荷量は印加された角速度の大きさに対応している。振動の節となる第5の付加質量部7は屈曲振動片6の2次モードの屈曲振動の共振周波数を微調整する機能と2次モードの屈曲振動の安定との共機能を併せ持っている。
【0031】
図6は、第1、第2の音叉片2a,2bの間にある検出電極が設けられた屈曲振動片6をXZ面で切断した断面図である。図6において、X軸方向を向く矢印は水晶からなる屈曲振動片6の電気軸を示し、14bは屈曲振動片6を挟んで検出電極14aと対向するように屈曲振動片6のXY面上(裏面側)に設けられた検出電極である。16は屈曲振動片6のYZ面上(側面)に屈曲振動片6を挟んで対向するように設けられた一対の共通電極である。
【0032】
同じく、第3、第4の音叉片3a,3bの間にある屈曲振動片6にも、屈曲振動片6を挟んで検出電極15aと対向するように検出電極15bが設けられ、YZ面上(側面)には屈曲振動片6を挟んで対向するように一対の共通電極16が設けられている。
【0033】
次に、屈曲振動片6に図5に示すようなS字形状の屈曲変形が起こった時の検出電極14a,14b,15a,15b、共通電極16に現われる電荷の発生状態を簡単に説明する。
【0034】
第1、第2の音叉片2a,2bの間にある屈曲振動片6のij側は伸長し、kl側は圧縮するため、検出電極14a,14bには正電荷が発生し、共通電極16には負電荷が発生する。また、屈曲振動片6全体としては、第5の付加質量部7の中心を振動の節にしてS字形状の屈曲変形を呈するため、第3、第4の音叉片3a,3bの間にある屈曲振動片6のij側は圧縮し、kl側が伸長するため、検出電極15a,15bには負電荷が発生し、共通電極16には正電荷が発生する。
【0035】
検出電極14a,14bから得られた電荷と検出電極15a,15bから得られた電荷をチャージ増幅器18により差動増幅することにより2倍の出力が得られるばかりか、X軸方向の外乱や温度による影響を排除する効果がある。
【0036】
本実施の形態において、第1、第2、第3、第4の音叉片2a,2b,3a,3bの1次モードの共振周波数と屈曲振動片6の2次モードの共振周波数を近接させることにより、検出感度が高くなるばかりか、検出の応答周波数を高くすることも可能となる。
【0037】
本実施の形態において、スリット部9a,9b,9c,9dが基部1に設けられていることにより、外乱振動が屈曲振動片6の2次モードの屈曲振動に混入するのを防止する効果がある。また、屈曲振動片6の2次モードの屈曲振動が基部1へ漏れるのを防止する働きもある。
【0038】
本実施の形態においては、基部1、第1、第2、第3、第4の音叉片2a,2b,3a,3b、第1、第2、第3、第4の付加質量部4a,4b,5a,5b、屈曲振動片6と第5の付加質量部7をいずれも一枚の水晶板から一体に形成した例について説明したが、圧電性を示す材料であれば単結晶材料でも多結晶材料でも構わない。
【0039】
(実施の形態2)
図7は、本発明の角速度センサの第2の実施の形態を説明するための斜視図である。図7において、図1と同一構成部分には同一番号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。図7において、基部30、第1、第2、第3、第4の音叉片31a,31b,32a,32b、第1、第2、第3、第4の付加質量部33a,33b,34a,34b、屈曲振動片35と第5の付加質量部36が、恒弾性金属により一体に形成されている以外は、第1の実施の形態において説明した図1に示す形状寸法ともに同一である。
【0040】
第2、第4の音叉片31b,32bのXY面上には、1次モードで駆動するための圧電体セラミックス39,40が接合されている。第1、第3の音叉片31a,32aのXY面上にはモニター用の圧電体セラミックス37,38が接合されている。また、屈曲振動片35のXY面上には2次モードの屈曲変形により印加された角速度の大きさに対応した電荷を検出するための圧電体セラミックス41,42が接合されている。
【0041】
図7において、第1、第2、第3、第4の音叉片31a,31b,32a,32b、屈曲振動片35の変形形態、モニター時の圧電体セラミックス37,38に発生する電荷、Z軸周りの角速度が印加された時の圧電体セラミックス41,42に発生する電荷の傾向は、いずれも第1の実施の形態と同様である。
【0042】
本実施の形態においては、第1、第2、第3、第4の音叉片31a,31b,32a,32b、第1、第2、第3、第4の付加質量部33a,33b,34a,34b、屈曲振動片35及び第5の付加質量部36並びに圧電体セラミックス37,38,39,40,41,42を別の材料に分けて構成しているため、それぞれ機械的振動特性としての高いQを有する材料と圧電定数の大きな圧電材料を自由に組合わせることが可能となる。
【0043】
本実施の形態において、駆動用、そのモニター用、印加された角速度の大きさに対応した電荷の検出用にそれぞれ圧電体セラミックスを接合した例について説明したが、圧電性を示すものであれば各種の薄膜構成を採用することも可能である。
【0044】
(実施の形態3)
図8は、本発明の角速度センサの第3の実施の形態を説明するための斜視図である。図8において、座標軸の方向は図1と同一である。
【0045】
図8において、50は厚さ(Z軸方向)0.2mm、長さ(Y軸方向)20mm、幅(X軸方向)13.3mmの圧電体としての水晶板から構成された基部、51a,51bは支持部、52a,52b,53a,53bは第1、第2、第3、第4の音叉片、54は第1の付加質量部、55は第2の付加質量部、56a,56b,57a,57bはモニター用の検出手段兼印加された角速度の大きさに対応した電荷を検出する検出手段を構成するための検出電極、58a,58b,59a,59bは駆動手段を構成するための駆動電極、60は共通電極、61a,61bは機械的ダンピング効果を得るための矩形状の孔部、62a,62b,62c,62dは基部50を微小面積で固定するための固定部としてのφ0.2の孔部、63a,63bは第1、第2の連結部である。
【0046】
基部50の幅13.3mmの中央且つY軸上において、基部50の長さ20mmの両端から各3mmの位置より支持部51a,51bが相対向するように延出している。支持部51aの先端からY軸方向と反対の方向に第1、第2の音叉片52a,52bが延出し、支持部51bの先端からY軸方向に第3、第4の音叉片53a,53bが延出している。第1、第3の音叉片52a,53aは第1の連結部63aで連結し、第1の連結部63aからX軸方向にT字状の第1の付加質量部54が延出している。また、第2、第4の音叉片52b,53bは第2の連結部63bで連結し、第2の連結部63bからX軸方向と反対方向にT字状の第2の付加質量部55が延出している。
【0047】
図9は図8に示す角速度センサとその駆動回路を接続したブロック図である。図9において、図8、図4と同一構成部分には同一番号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0048】
検出電極56a,57aにより検出された電荷は、チャージ増幅器18、駆動回路21の両方に入力される。
【0049】
図10は駆動電極が設けられた第2の音叉片52bをXZ面で切断した断面図である。図10において、X軸方向を向く矢印は水晶からなる第2の音叉片52bの電気軸を示し、58bは第2の音叉片52bを挟んで駆動電極58aと対向するように第2の音叉片52bのXY面上(裏面側)に設けられた駆動電極である。60は第2の音叉片52bのYZ面上(側面)に第2の音叉片52bを挟んで対向するように設けられた一対の共通電極である。17は図2と同一の駆動回路の出力信号源である。
【0050】
第4の音叉片53bにも第2の音叉片52bと同様に、駆動電極59a,59b、共通電極60が設けられている。
【0051】
次に、第2の音叉片52bの駆動原理を簡単に説明する。仮に、出力信号源17から駆動電極58a,58bに正極性の電圧が印加されると、図10内に示す破線の矢印方向に電界の方向が向く。これにより第2の音叉片52bのab側は圧縮し、cd側は伸長する。また、駆動電極58a,58bに負極性の電圧が印加されると第2の音叉片52bのab側は伸長し、cd側は圧縮する。
【0052】
これらが連続的に繰り返されることで、第2の音叉片52bは、XY面内で1次モードで振動する。
【0053】
同様な駆動原理により、第4の音叉片53bもXY面内で1次モードで振動する。第2、第4の音叉片52b,53bが1次モードで振動することにより第1、第3の音叉片52a,53aも共振し、XY面内で音叉振動を開始する。
【0054】
図11はモニター用の検出電極が設けられた第1の音叉片52aをXZ面で切断した断面図である。X軸方向を向く矢印は、図10と同様に水晶からなる第1の音叉片52aの電気軸を示し、56bは第1の音叉片52aを挟んでモニター用の検出電極56aと対向するように第1の音叉片52aのXY面上(裏面側)に設けられたモニター用の検出電極である。60は図10と同様に、共通電極である。
【0055】
第3の音叉片53aにも第1の音叉片52aと同様に、モニター用の検出電極57a,57b、共通電極60が設けられている。
【0056】
次に、モニター用の検出電極56a,56b、共通電極60に現われる電荷に関して簡単に説明する。
【0057】
第1の音叉片52aは図10に示す第2の音叉片52bと音叉振動をしているため、第2の音叉片52bのab側が圧縮している時は第1の音叉片52aのgh側が圧縮する。
【0058】
また、第2の音叉片52bのcdが伸長している時は、第1の音叉片52aのef側が伸長する。
【0059】
これらの圧縮、伸長によりモニター用の検出電極56a,56bには正電荷が発生し、共通電極60には負電荷が発生する。従って、第1の音叉片52aにおいて、ef側が圧縮し、gh側が伸長した場合は、モニター用の検出電極56a,56bに負電荷が発生し、共通電極60に正電荷が発生する。
【0060】
図12は、駆動により第1、第2、第3、第4の音叉片52a,52b,53a,53bが音叉振動した場合に、第1、第2、第3、第4の音叉片52a,52b,53a,53b全体としてどのような変形形態になるかの一例を説明するための模式線図である。
【0061】
第1、第3の音叉片52a,53aは、第1の連結部63aを振動の腹にして、1次モードでX方向に変形し、第2、第4の音叉片52b,53bは第2の連結部63bを振動の腹にして1次モードでX方向と反対の方向に変形する。
【0062】
図13は、図12に示す駆動変形形態の際にZ軸周りの角速度が印加された時の第1、第2、第3、第4の音叉片52a,52b,53a,53bの変形形態の一例を説明するための模式線図である。
【0063】
図13に示すように、Z軸周りの角速度が印加されることにより、第1の付加質量部54には第1の連結部63aを支点にしてY軸方向に集中的にコリオリ力が働き、第2の付加質量部55には第2の連結部63bを支点にしてY軸方向と反対方向に集中的にコリオリ力が働く。これらの力により、第2の音叉片52bの振幅はX軸方向と反対方向により強められ、第4の音叉片53bの振幅はX軸方向に弱められる。また、第1の音叉片52aの振幅はX軸方向と反対方向に弱められ、第3の音叉片53aの振幅はX軸方向に強められる。
【0064】
前述のような第1、第2、第3、第4の音叉片52a,52b,53a,53bの変形により、モニター用と兼用された検出電極56a,56b,57a,57b、共通電極60には、印加された角速度の大きさに対応した電荷の増減が生ずる。
【0065】
例えば、図11に示した第1の音叉片52a上の検出電極56a,56b、共通電極60について詳述すると、第1の音叉片52aの振幅が減少するため、検出電極56a,56bの正極性の電荷は減少し、共通電極60の負極性の電荷も減少する。逆に第3の音叉片53aの振幅は増加するため、検出電極57a,57bの正極性の電荷は増加し、共通電極60の負極性の電荷も増加する。
【0066】
これらの検出電極56a,56bから得られた電荷と検出電極57a,57bから得られた電荷をチャージ増幅器18により差動増幅することにより印加された角速度の大きさに対応した最終出力が得られる。
【0067】
この構成によると、駆動振動をモニターするための音叉片に印加された角速度に対応した変形が重畳されるため、モニター用の音叉片と角速度を検出するための音叉片を兼用させることが可能となるばかりか、X軸方向の外乱や温度による影響が排除される効果がある。
【0068】
本実施の形態においては、基部50と第1、第2、第3、第4の各音叉片52a,52b,53a,53bとの間に支持部51a,51bを設けたため、駆動時の音叉振動がより安定すると同時に検出感度も向上するといった効果を生ずるが、本発明は必ずしもこの構成に特定されるものではなく、第1、第2、第3、第4の各音叉片52a,52b,53a,53bを基部50から直接延出させる構成も可能である。
【0069】
本実施の形態においては、基部50、支持部51a,51b、第1、第2、第3、第4の音叉片52a,52b,53a,53b、第1、第2の付加質量部54,55と第1、第2の連結部63a,63bのいずれをも、一体の水晶板から形成した例について説明したが、第2の実施の形態と同様、圧電体セラミックスを接合したり、圧電性を示す各種の薄膜を表面に形成する構成でも本発明の技術思想を達成可能である。
【0070】
本実施の形態においては、第1、第2、第3、第4の音叉片52a,52b,53a,53bがそれぞれ延出する基部50の近傍に所定の大きさの矩形状の孔部61a,61bを設けているため、外乱振動が音叉振動へ混入するのを防止する効果や音叉振動が基部へ漏れるのを防止するための機械的なダンピング効果が一段と向上するが本発明は必ずしもこの構成に特定されるものではない。
【0071】
(実施の形態4)
図14(a),(b)は、本発明の角速度センサの第4の実施の形態を説明するための平面図、下面図である。図14において、座標軸の方向は基本的に図1と同一であるが、さらに円周方向をθ方向、円心へ向かう方向をγ方向とする。
【0072】
図14において、70は厚さ(Z軸方向)0.5mm、長さ(Y軸方向)25mm、幅(X軸方向)25mmの圧電体としての水晶板から構成された基部、71a,71b,71cは分岐部分、72a,72b,72cは支持部、73a,73b,73cは第1、第2、第3の振動片、74a,74b,74cは第1、第2、第3の振動片73a,73b,73cの中央部、75aは第1の付加質量部、75bは第2の付加質量部、75cは第3の付加質量部、76a,76b,77a,77bは駆動手段を構成するための駆動電極、78a,78b,79a,79bは印加された角速度の大きさに対応した電荷を検出する検出手段を構成するための検出電極、80a,80b,81a,81bはモニター用の検出手段を構成するための検出電極、82は共通電極、83a,83b,83cは機械的ダンピング効果を得るための矩形状の孔部、84a,84b,84c,84dは基部70を微小面積で固定するための固定部としてのφ0.2の孔部である。基部70を同一円周上で3等分する分岐部分71a,71b,71cから円心に向かって3本の支持部72a,72b,72cが延出している。
【0073】
隣接する支持部72a,72bの先端同士を連接するように第1の振動片73aが設けられ、支持部72b,72cの先端同士を連接するように第2の振動片73bが設けられ、支持部72c,72aの先端同士を連接するように第3の振動片73cが設けられている。中央部74aから円心方向にT字状の第1の付加質量部75aが延出され、中央部74bから円心方向にT字状の第2の付加質量部75bが延出され、中央部74cから円心方向にT字状の第3の付加質量部75cが延出されている。
【0074】
図15は図14に示す角速度センサとその駆動回路を接続したブロック図である。図15において、基本的には図14に示す角速度センサと図4に示す駆動回路からのみ構成されているため、図14、図4と同一構成部分には同一番号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ以下に示す図の説明とともに詳述する。
【0075】
図16は駆動電極が設けられた第1の振動片73aをγZ面で切断した断面図である。図16において、γ方向を向く矢印は水晶からなる第1の振動片73aの電気軸を示し、76b,77bは第1の振動片73aを挟んで駆動電極76a,77aと対向するように第1の振動片73aのXY面上(裏面側)に設けられた駆動電極である。82は第1の振動片73aのθZ面上(側面)に第1の振動片73aを挟んで対向するように設けられた一対の共通電極である。17は図2と同一の駆動回路の出力信号源である。
【0076】
次に、第1の振動片73aの駆動原理を簡単に説明する。仮に、出力信号源17から駆動電極76a,77a,76b,77bに負極性の電圧が印加されると、図16内に示す破線の矢印方向に電界の方向が向く。これにより第1の振動片73aのab側は伸長し、cd側は圧縮する。また、駆動電極76a,77a,76b,77bに正極性の電圧が印加されると第1の振動片73aのab側は圧縮し、cd側は伸長する。
【0077】
これらが連続的に繰り返されることで、第1の振動片73aは、XY面内でγ方向に1次モードで振動する。第1の振動片73aが1次モードで振動することにより第2、第3の振動片73b,73cも共振し、XY面内でγ方向に1次モードで振動を開始する。
【0078】
図17はモニター用の検出電極が設けられた第3の振動片73cをγZ面で切断した断面図である。γ方向を向く矢印は、図16と同様に水晶からなる第3の振動片73cの電気軸を示し、80b,81bは第3の振動片73cを挟んでモニター用の検出電極80a,81aと対向するように第3の振動片73cのXY面上(裏面側)に設けられたモニター用の検出電極である。82は図16と同様に、共通電極である。
【0079】
次に、モニター用の検出電極80a,81a,80b,81b、共通電極82に現われる電荷に関して簡単に説明する。
【0080】
第3の振動片73cは図16に示す第1の振動片73aとともに共振振動をしているため、第1の振動片73aのab側が伸長している時は第3の振動片73cのgh側が圧縮する。
【0081】
また、第1の振動片73aのcdが圧縮している時は、第3の振動片73cのef側が伸長する。
【0082】
これらの圧縮、伸長によりモニター用の検出電極80a,81a,80b,81bには正電荷が発生し、共通電極82には負電荷が発生する。従って、第3の振動片73cにおいて、ef側が圧縮し、gh側が伸長した場合は、モニター用の検出電極80a,81a,80b,81bに負電荷が発生し、共通電極82に正電荷が発生する。
【0083】
図18は、駆動により第1、第2、第3の振動片73a,73b,73cが共振振動した場合に、第1、第2、第3の振動片73a,73b,73c全体としてどのような変形形態になるかの一例を説明するための模式線図である。
【0084】
第1、第2、第3の振動片73a,73b,73cは、中央部74a,74b,74cを振動の腹にして、1次モードで円心方向に変形する。
【0085】
図19は、図18に示す駆動変形形態の際にZ軸周りの角速度が印加された時の第1、第2、第3の振動片73a,73b,73cの変形形態の一例を説明するための模式線図である。
【0086】
図19に示すように、Z軸周りの角速度が印加されることにより、第1、第2、第3の付加質量部75a,75b,75cには中央部74a,74b,74cを支点にしてθ方向に集中的にコリオリ力が働く。これらの力により、第1、第2、第3の振動片73a,73b,73cの検出電極76a,76b,78a,78b,80a,80bが設けられている側の振幅は円心方向(γ方向)により強められ、逆に第1、第2、第3の振動片73a,73b,73cの検出電極77a,77b,79a,79b,81a,81bが設けられている側の振幅は円心から放射する方向に弱められる。
【0087】
前述のような第1、第2、第3の振動片73a,73b,73cの変形により、検出電極78a,78b,79a,79b、共通電極82には、印加された角速度の大きさに対応した電荷の増減が生ずる。
【0088】
例えば、図14に示した第2の振動片73b上の検出電極78a,78b,79a,79b、共通電極82について詳述する。第2の振動片73bの検出電極79a,79bが設けられている側の振幅が減少するため、検出電極79a,79bの正極性の電荷は減少し、共通電極82の負極性の電荷も減少する。逆に第2の振動片73bの検出電極78a,78bが設けられた側の振幅は増加するため、検出電極78a,78bの正極性の電荷は増加し、共通電極82の負極性の電荷も増加する。
【0089】
これらの検出電極78a,78bから得られた電荷と検出電極79a,79bから得られた電荷をチャージ増幅器18により差動増幅することにより印加された角速度の大きさに対応した最終出力が得られる。
【0090】
この構成によると、印加された角速度に対応した変形が、駆動振動と共振する振動片73bの変形に重畳した状態で検出が可能となるばかりか、X軸方向の外乱や温度による影響が排除される効果がある。また、駆動振動のモニター用に独立した振動片73cを設けることも可能となる。
【0091】
本実施の形態においては、第1、第2、第3の振動片73a,73b,73cの各中央部74a,74b,74cに第1、第2、第3の付加質量部75a,75b,75cを円心方向に設けたため、角速度が印加された時の検出感度が一段と向上するといった効果を生ずるが、本発明は必ずしもこの構成に特定されるものではなく、第1、第2、第3の振動片73a,73b,73cに第1、第2、第3の付加質量部75a,75b,75cを設けない構成も可能である。
【0092】
本実施の形態においては、基部70、支持部71a,71b,71c、第1、第2、第3の振動片73a,73b,73c、第1、第2、第3の付加質量部75a,75b,75cのいずれをも、一体の水晶板から形成した例について説明したが、第2の実施の形態と同様、圧電体セラミックスを接合したり、圧電性を示す各種の薄膜を表面に形成する構成でも本発明の技術思想を達成可能である。
【0093】
本実施の形態においては、支持部72a,72b,72cがそれぞれ延出する基部70の近傍に所定の大きさの矩形状の孔部83a,83b,83cを設けているため、外乱振動が駆動振動へ混入するのを防止する効果や駆動振動が基部へ漏れるのを防止するための機械的なダンピング効果が一段と向上するが本発明は必ずしもこの構成に特定されるものではない。
【0094】
(実施の形態5)
図20は本発明の角速度センサの第5の実施の形態を説明するための平面図である。図20において、座標の方向は基本的に図14と同一である。図20において、90は厚さ(Z軸方向)0.5mm、直径25mmの圧電体としての水晶板から構成された基部、91a,91b,91cは基部90から円心方向(γ方向)に延出した支持部、92a,92b,92cは隣接する支持部91aと91b、91bと91c、91cと91a同士をそれぞれ連接した第1、第2、第3の振動片である。図20において、第1、第2、第3の振動片92a,92b,92cからそれぞれ駆動手段、モニター手段、印加された角速度を検出する検出手段が構成される。
【0095】
本実施の形態において、上述以外の駆動部、モニター部、印加された角速度を検出する検出部の基本構成、振動片の変形形態、発生する電荷の傾向、接続される駆動回路等は、実施の形態4と同様である。
【0096】
(実施の形態6)
図21は、本発明の角速度センサの第6の実施の形態を説明するための斜視図である。図21において、座標軸の方向は基本的に図1と同一であるが、さらに円周方向をθ方向、円心へ向かう方向をγ方向とする。
【0097】
図21において、100は厚さ(Z軸方向)0.5mm、長さ(Y軸方向)25mm、幅(X軸方向)25mmの圧電体としての水晶板から構成された基部、101a,101bは分岐部分、102a,102bは支持部、103a,103bは第1、第2の円弧状の振動片、104a,104bは第1、第2の振動片103a,103bの中央部、120aは第1の付加質量部、120bは第2の付加質量部、105a,105b,106a,106bは駆動手段を構成するための駆動電極、107a,107b,108a,108bはモニター用の検出手段兼印加された角速度の大きさに対応した電荷を検出する検出手段を構成するための検出電極、109は共通電極、110a,110b,110c,110dは基部100を微小面積で固定するための固定部としてのφ0.2の孔部である。基部100を同一円周上で2等分する分岐部分101a,101bから円心に向かって2本の支持部102a,102bが延出している。
【0098】
隣接する支持部102a,102bの先端同士を円周上で連接するように第1、第2の振動片103a,103bが設けられている。中央部104a,104bから円心方向に第1、第2の付加質量部120a,120bが延出されている。
【0099】
図22は図21に示す角速度センサとその駆動回路を接続したブロック図である。図22において、基本的には図21に示す角速度センサと図9に示す駆動回路からのみ構成されているため、図21、図9と同一構成部分には同一番号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分についてのみ以下に示す図の説明とともに詳述する。
【0100】
図23は駆動電極が設けられた第1の振動片103aをγZ面で切断した断面図である。図23において、γ方向を向く矢印は水晶からなる第1の振動片103aの電気軸を示し、105b,106bは第1の振動片103aを挟んで駆動電極105a,106aと対向するように第1の振動片103aのXY面上(裏面側)に設けられた駆動電極である。109は第1の振動片103aのθZ面上(側面)に第1の振動片103aを挟んで対向するように設けられた一対の共通電極である。17は図2と同一の駆動回路の出力信号源である。
【0101】
次に、第1の振動片103aの駆動原理を簡単に説明する。仮に、出力信号源17から駆動電極105a,106a,105b,106bに負極性の電圧が印加されると、図23内に示す破線の矢印方向に電界の方向が向く。これにより第1の振動片103aのab側は伸長し、cd側は圧縮する。また、駆動電極105a,106a,105b,106bに正極性の電圧が印加されると第1の振動片103aのab側は圧縮し、cd側は伸長する。
【0102】
これらが連続的に繰り返されることで、第1の振動片103aは、XY面内でγ方向に1次モードで振動する。第1の振動片103aが1次モードで振動することにより第2の振動片103bも共振し、XY面内でγ方向に1次モードで振動を開始する。
【0103】
図24はモニター用の検出電極が設けられた第2の振動片103bをγZ面で切断した断面図である。γ方向を向く矢印は、図23と同様に水晶からなる第2の振動片103bの電気軸を示し、107b,108bは第2の振動片103bを挟んでモニター用の検出電極107a,108aと対向するように第2の振動片103bのXY面上(裏面側)に設けられたモニター用の検出電極である。109は図23と同様に、共通電極である。
【0104】
次に、モニター用の検出電極107a,108a,107b,108b、共通電極109に現われる電荷に関して簡単に説明する。
【0105】
第2の振動片103bは図23に示す第1の振動片103aとともに共振振動をしているため、第1の振動片103aのab側が伸長している時は第2の振動片103bのgh側が圧縮する。
【0106】
また、第1の振動片103aのcdが圧縮している時は、第2の振動片103bのef側が伸長する。
【0107】
これらの圧縮、伸長によりモニター用の検出電極107a,108a,107b,108bには正電荷が発生し、共通電極109には負電荷が発生する。従って、第2の振動片103bにおいて、ef側が圧縮し、gh側が伸長した場合は、モニター用の検出電極107a,108a,107b,108bに負電荷が発生し、共通電極109に正電荷が発生する。
【0108】
図25は、駆動により第1、第2の振動片103a,103bが共振振動した場合に、第1、第2の振動片103a,103b全体としてどのような変形形態になるかの一例を説明するための模式線図である。
【0109】
第1、第2の振動片103a,103bは、中央部104a,104bを振動の腹にして、1次モードで円心方向に変形する。
【0110】
図26は、図25に示す駆動変形形態の際にZ軸周りの角速度が印加された時の第1、第2の振動片103a,103bの変形形態の一例を説明するための模式線図である。
【0111】
図26に示すように、Z軸周りの角速度が印加されることにより、第1、第2の付加質量部120a,120bには中央部104a,104bを支点にしてθ方向に集中的にコリオリ力が働く。これらの力により、第1、第2の振動片103a,103bの検出電極105a,105b,108a,108bが設けられている側の振幅は円心方向(γ方向)により強められ、逆に第1、第2の振動片103a,103bの検出電極106a,106b,107a,107bが設けられている側の振幅は円心から放射する方向に弱められる。
【0112】
前述のような第1、第2の振動片103a,103bの変形により、検出電極108a,108b,107a,107b、共通電極109には、印加された角速度の大きさに対応した電荷の増減が生ずる。
【0113】
例えば、図21に示した第2の振動片103b上の検出電極108a,108b,107a,107b、共通電極109について詳述する。第2の振動片103bの検出電極107a,107bが設けられている側の振幅が減少するため、検出電極107a,107bの正極性の電荷は減少し、共通電極109の負極性の電荷も減少する。逆に第2の振動片103bの検出電極108a,108bが設けられた側の振幅は増加するため、検出電極108a,108bの正極性の電荷は増加し、共通電極109の負極性の電荷も増加する。
【0114】
これらの検出電極107a,107bから得られた電荷と検出電極108a,108bから得られた電荷をチャージ増幅器18により差動増幅することにより印加された角速度の大きさに対応した最終出力が得られる。
【0115】
この構成によると、駆動振動をモニターするための振動片に印加された角速度に対応した変形が重畳されるため、モニター用の振動片と角速度を検出するための振動片を兼用させることが可能となるばかりか、X軸方向の外乱や温度による影響が排除される効果がある。
【0116】
本実施の形態においては、第1、第2の振動片103a,103bの各中央部104a,104bに第1、第2の付加質量部120a,120bを円心方向に設けたため、角速度が印加された時の検出感度が一段と向上するといった効果を生ずるが、本発明は必ずしもこの構成に特定されるものではなく、第1、第2の振動片103a,103bに第1、第2の付加質量部120a,120bを設けない構成も可能である。
【0117】
本実施の形態においては、基部100、支持部102a,102b、第1、第2の振動片103a,103b、第1、第2の付加質量部120a,120bのいずれをも、一体の水晶板から形成した例について説明したが、第2の実施の形態と同様、圧電体セラミックスを接合したり、圧電性を示す各種の薄膜を表面に形成する構成でも本発明の技術思想を達成可能である。
【0118】
本実施の形態においても、分岐部分101a,101bの近傍の基部100に所定の大きさの孔部を設けることで実施の形態4と同様に外乱振動の混入や駆動振動が基部100へ漏れるのを防止することが可能である。
【0119】
(実施の形態7)
図27は本発明の角速度センサの第7の実施の形態を説明するための斜視図である。図27において、座標の方向は基本的に図21と同一である。
【0120】
本実施の形態において、実施の形態6と異なる点は、基本的に振動片が4個所設けられている点であるため、この点に関して以下に詳述する。
【0121】
図27において、111は厚さ(Z軸方向)0.5mm、直径25mmの圧電体としての水晶板から構成された基部、112a,112b,112c,112dは基部111から円心方向(γ方向)に延出した第1、第2、第3、第4の支持部、113a,113b,113c,113dは隣接する支持部112aと112b、112bと112c、112cと112d、112dと112a同士をそれぞれ連接した円弧状の第1、第2、第3、第4の振動片、114a,114b,114c,114dは第1、第2、第3、第4の振動片113a,113b,113c,113dの中央部、115a,115b,115c,115dは中央部から円心方向に延出した第1、第2、第3、第4の付加質量部である。図27において、第1、第3、第2、第4の振動片113a,113c,113bと113dからそれぞれ駆動手段、モニター手段、印加された角速度を検出する検出手段が構成される。
【0122】
本実施の形態において、上述以外の駆動部、モニター部、印加された角速度を検出する検出部の基本構成、振動片の変形形態、発生する電荷の傾向、接続される駆動回路等は、実施の形態6と同様である。
【0123】
本実施の形態において、第1の振動片に駆動手段を設け第2、第4の振動片を印加された角速度を検出する検出手段に選択することでX軸周りの角速度を検出することも可能となる。同じく、第2の振動片に駆動手段を設け、第1、第3の振動片を印加された角速度を検出する手段に選択することでY軸周りの角速度を検出することも可能となる。
【0124】
本実施の形態においても、第1、第2、第3、第4の支持部112a,112b,112c,112dの付け根近傍の基部111に所定の大きさの孔部を設けることで実施の形態4と同様に外乱振動の混入や駆動振動が基部111へ漏れるのを防止することが可能である。
【0125】
【発明の効果】
以上のように本発明は、XY面内に設けられた基部と、XY面内において前記基部からY軸と反対の方向に延出した第1、第2の音叉片と、前記第1、第2の音叉片とそれぞれ相対向するように前記基部からY軸方向に延出した第3、第4の音叉片と、前記第1、第3の音叉片の先端からX軸方向に延出した第1、第3の付加質量部と、前記第2、第4の音叉片の先端からX軸方向と反対の方向に延出した第2、第4の付加質量部と、前記基部から前記第1、第2の音叉片の間と前記第3、第4の音叉片の間を通るようにY軸方向及びY軸方向と反対の方向にそれぞれ延出し連結された屈曲振動片と、前記屈曲振動片の中間からX軸方向及びX軸方向と反対の方向に張り出すように形成された第5の付加質量部と、前記第1、第2、第3、第4の音叉片がXY面内で1次モードの音叉振動をするように前記第2、第4の音叉片に設けられた駆動手段と、Z軸周りの角速度が印加された時、前記第5の付加質量部の中心を節にして起こる前記屈曲振動片のXY面内の2次モードの屈曲変形を検出するための検出手段とを備えることにより、駆動及び検出のための櫛歯構造の電極を形成する必要もなくなるばかりか、角速度印加に基づく信号以外は除去可能な薄型な角速度センサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態の角速度センサを説明するための斜視図
【図2】 同角速度センサの駆動電極が設けられた音叉片をXZ面で切断した断面図
【図3】 同角速度センサのモニター用の検出電極が設けられた音叉片をXZ面で切断した断面図
【図4】 同角速度センサと駆動回路を接続したブロック図
【図5】 同角速度センサに角速度が印加された時の音叉片と屈曲振動片の変形形態の模式線図
【図6】 同角速度センサの検出電極が設けられた屈曲振動片をXZ面で切断した断面図
【図7】 本発明の第2の実施の形態の角速度センサを説明するための斜視図
【図8】 本発明の第3の実施の形態の角速度センサを説明するための斜視図
【図9】 同角速度センサと駆動回路を接続したブロック図
【図10】 同角速度センサの駆動電極が設けられた音叉片をXZ面で切断した断面図
【図11】 同角速度センサのモニター用の検出電極が設けられた音叉片をXZ面で切断した断面図
【図12】 同角速度センサの駆動時の音叉片の変形形態の模式線図
【図13】 同角速度センサに角速度が印加された時の音叉片の変形形態の模式線図
【図14】 (a)本発明の第4の実施の形態の角速度センサを説明するための平面図
(b)同角速度センサの下面図
【図15】 同角速度センサと駆動回路を接続したブロック図
【図16】 同角速度センサの駆動電極が設けられた振動片をγZ面で切断した断面図
【図17】 同角速度センサのモニター用の検出電極が設けられた振動片をγZ面で切断した断面図
【図18】 同角速度センサの駆動時の振動片の変形形態の模式線図
【図19】 同角速度センサに角速度が印加された時の振動片の変形形態の模式線図
【図20】 本発明の第5の実施の形態の角速度センサを説明するための平面図
【図21】 本発明の第6の実施の形態の角速度センサを説明するための斜視図
【図22】 同角速度センサと駆動回路を接続したブロック図
【図23】 同角速度センサの駆動電極が設けられた振動片をγZ面で切断した断面図
【図24】 同角速度センサのモニター用の検出電極が設けられた振動片をγZ面で切断した断面図
【図25】 同角速度センサの駆動時の振動片の変形形態の模式線図
【図26】 同角速度センサに角速度が印加された時の振動片の変形形態の模式線図
【図27】 本発明の第7の実施の形態の角速度センサを説明するための斜視図
【符号の説明】
1,30,50,70,90,100,111 基部
2a,31a,52a 第1の音叉片
2b,31b,52b 第2の音叉片
3a,32a,53a 第3の音叉片
3b,32b,53b 第4の音叉片
4a,33a,54,75a,115a,120a 第1の付加質量部
4b,33b,55,75b,115b,120b 第2の付加質量部
5a,34a,75c,115c 第3の付加質量部
5b,34b,115d 第4の付加質量部
6,35 屈曲振動片
7,36 第5の付加質量部
8a,8b,8c,8d,61a,61b,62a,62b,62c,62d,83a,83b,83c,84a,84b,84c,84d,110a,110b,110c,110d 孔部
9a,9b,9c,9d スリット部
10a,10b,11a,11b,56a,56b,57a,57b,80a,80b,81a,81b,107a,107b,108a,108b モニター用の検出電極
12a,12b,13a,13b,58a,58b,59a,59b,76a,76b,77a,77b,105a,105b,106a,106b 駆動電極
14a,14b,15a,15b,56a,56b,57a,57b,78a,78b,79a,79b,107a,107b,108a,108b 角速度検出用の検出電極
16,60,82,109 共通電極
17 駆動回路の出力信号源
18 チャージ増幅器
19 検波回路
20 ローパスフィルタ
21 駆動回路
37,38,39,40,41,42 圧電体セラミックス
51a,51b,72a,72b,72c,91a,91b,91c,102a,102b,112a,112b,112c,112d 支持部
63a 第1の連結部
63b 第2の連結部
71a,71b,71c,101a,101b 分岐部分
73a,92a,103a,113a 第1の振動片
73b,92b,103b,113b 第2の振動片
73c,92c,113c 第3の振動片
74a,74b,74c,104a,104b,114a,114b,114c,114d 中央部
113d 第4の振動片

Claims (5)

  1. XY面内に設けられた基部と、XY面内において前記基部からY軸と反対の方向に延出した第1、第2の音叉片と、前記第1、第2の音叉片とそれぞれ相対向するように前記基部からY軸方向に延出した第3、第4の音叉片と、前記第1、第3の音叉片の先端からX軸方向に延出した第1、第3の付加質量部と、前記第2、第4の音叉片の先端からX軸方向と反対の方向に延出した第2、第4の付加質量部と、前記基部から前記第1、第2の音叉片の間と前記第3、第4の音叉片の間を通るようにY軸方向及びY軸方向と反対の方向にそれぞれ延出し連結された屈曲振動片と、前記屈曲振動片の中間からX軸方向及びX軸方向と反対の方向に張り出すように形成された第5の付加質量部と、前記第1、第2、第3、第4の音叉片がXY面内で1次モードの音叉振動をするように前記第2、第4の音叉片に設けられた駆動手段と、Z軸周りの角速度が印加された時、前記第5の付加質量部の中心を節にして起こる前記屈曲振動片のXY面内の2次モードの屈曲変形を検出するための検出手段とを備えた角速度センサ。
  2. 第1、第2、第3、第4の音叉片の1次モードの共振周波数と屈曲振動片の2次モードの共振周波数を近接させた請求項1に記載の角速度センサ。
  3. 基部の四隅に第1、第2、第3、第4の音叉片からそれぞれ等距離になるように設けられた4個所の固定部と、前記各固定部の近傍の所定位置にそれぞれスリット部が形成された請求項1に記載の角速度センサ。
  4. XY面内に設けられた基部、第1、第2、第3、第4の音叉片、屈曲振動片と第1、第2、第3、第4、第5の付加質量部は、圧電材料により一体に形成された請求項1に記載の角速度センサ。
  5. XY面内に設けられた基部、第1、第2、第3、第4の音叉片、屈曲振動片と第1、第2、第3、第4、第5の付加質量部は、恒弾性金属材料または酸化物材料により形成され、少なくとも前記第1、第2、第3、第4の音叉片と屈曲振動片のXY面上には圧電材料からなる層が設けられた請求項1に記載の角速度センサ。
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