JP4528413B2 - 気相成長方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、組成の異なる化合物半導体のエピタキシャル膜を積層して成長させる気相成長方法に関し、特に有機金属気相成長法に適用して好適な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガリウム砒素(GaAs)やインジウムリン(InP)などの化合物半導体基板上へエピタキシャル膜を成長させる技術が非常に注目されている。最近の技術によれば、エピタキシャル膜としてインジウムガリウム砒素(InGaAs)、インジウムガリウムリン(InGaP)、アルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)、インジウムアルミニウム砒素(InAlAs)、インジウムガリウム砒素リン(InGaAsP)等のいわゆる混晶層を成長させることもできる。
【0003】
これらのエピタキシャル膜を成長させる有効な方法の一つに有機金属気相成長法(MOCVD法)がある。ここで、図5に基づき有機金属気相成長法について簡単に説明する。
【0004】
図5は、有機金属気相成長法を実現可能な装置の概略図であり、符号1が反応管、2aは有機金属原料(TMI,TMG等)の導入口、2bは第5B属の水素化ガス(PH3、AsH3等)の導入口、3が主に基板を加熱するヒータ、4がエピタキシャル膜を成長させるための基板、5が基板保持台、6が排気口である。
【0005】
トリメチルインジウム(TMI)、トリメチルガリウム(TMG)、トリエチルガリウム(TEG)、トリメチルアルミニウム(TMA)等のいわゆる有機金属とアルシン(AsH3)あるいはホスフィン(PH3)ガスを原料ガスとして、キャリアガスである水素(H2)とともに導入口2を介して基板4を配置した反応管1内に供給すると、原料ガスは基板4の上流側Uで分解され、ヒータ3で加熱された基板4上で第13族(3B族)元素と第15族(5B族)元素が反応して薄膜が成長する。なお、原料ガスとしてはアルシンやホスフィン等のガスの代わりにトリメチル砒素やターシャルブチルホスフィン等の有機金属を用いることもできる。
【0006】
例えば、図2に示す供給ガス切替シーケンスに従って説明すると、プロセスP11において、TMI、TMGおよびAsH3を原料として反応管内に導入すれば、これらは基板上流側Uで分解され基板4上で反応してInGaAs層(第1層)が成長する。次にS12において、TMGとAsH3の供給を停止してPH3の供給を開始すれば、TMIとPH3が基板上流側Uで分解されInGaAs層上で反応してInP層(第2層)が成長することができる。
【0007】
このとき、InP層(第2層)を形成するための原料ガスに、InGaAs層(第1層)の原料ガスでInP層の形成には不必要なガス、すなわちTMGやAsH3が混入するとInP層の結晶性が悪くなる。そこで、残留しているTMG、AsH3がキャリアガスH2により充分に排気するように、第1層の成長プロセスと第2層の成長プロセスの間に、成長中断プロセスを入れて結晶成長を中断するようにしている。
【0008】
しかし、成長中断プロセスにおいて、InPのように第5B族元素を含むエピタキシャル膜(第1層)をそのまま放置しておくと、第5B族元素(P)は蒸気圧が高いために層表面から蒸発してしまうという不具合を生じる。そこで、成長中断プロセスにおいて、第1層に含まれる第5B族元素を含むガス(AsH3、PH3)をパージガスとして所定の時間供給し続けてから第2層の原料ガスに切り換える方法が提案された。
【0009】
例えば、特開平9−213641号公報(有機金属気相成長法による急峻なヘテロ界面の作製方法 沖電気工業株式会社)には、InGaAs層上にInP層を成長させる場合、InGaAs層を成長させた後、パージガスとしてAsH3を所定時間供給してInGaAs層表面からAsが蒸発するのを防ぎつつ第1層の原料ガスを排気してから、InPの原料ガスであるTMIおよびPH3を供給する技術が開示されている。この技術は、第1層に含まれる第5B族元素(As、P)が第2層にも含まれる場合、例えば第1層がInGaPで第2層がInPである場合に、成長中断プロセスでPH3を供給することによりその分圧で第1層からPが蒸発するのを防止できるとともにTMGを排気することができ、そのままPH3は第2層の原料ガスとして使用できるという利点があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来技術では第1層がInGaAs層で第2層がInP層である場合のように、組成の大きく異なるエピタキシャル膜を積層して成長させるときには以下のような問題が生じることが判明した。
【0011】
例えば、InGaAs層(第1層)上に、InP(第2層)を成長させる場合を考える。上述した技術によると、成長中断プロセスにおいてInGaAs層表面からAsが蒸発するのを防ぐためにAsH3を供給し、その後AsH3からTMIおよびPH3に切り換えて供給する。この場合、成長中断プロセスにおいて、AsH3を供給しているので第1層からAsが蒸発するのは防止することはできる。しかし、TMIとPH3の供給を開始したときにはAsH3がまだ残留しているので、反応管内にはTMIとPH3とAsH3が混入した状態で存在することになる。その結果、これらのガスから形成されるInP層(第2層)の結晶性は低下してしまい第1層と第2層との界面の急峻性も悪くなってしまう。この影響は第1層の成長時間が長い程大きくなる傾向にあり、反応管の形状、ガス供給条件、成長する層の組成等によって異なるが数秒〜数十分のオーダーで切り換え前後のガスが混在した状態が続くことが発明者の実験により確かめられている。
【0012】
逆に、InGaAs層(第1層)を成長させ、成長中断プロセスにおいてPH3のみを供給してから、TMIおよびPH3を供給してInP(第2層)を形成する場合は、InP層の形成には不必要なTMGとAsH3は完全に排気されInP層の原料ガスに混入することはなくなるが、成長中断プロセスにおいてInGaAs層表面からAsが蒸発したりInGaAs層中のAsとPH3のPが置換したりするので、InGaAs層の品質が低下してしまう。
【0013】
そこで、本発明は上記問題点を解消し、InGaAs層とInP層のように組成の大きく異なるエピタキシャル膜を、界面の急峻性を損なうことなく積層して成長させ得る方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するためになされたもので、反応炉内に設けられた基板保持台上に半導体基板を配置し、所望する薄膜を成長させるのに必要な原料ガスを供給し、前記半導体基板表面に組成の異なる少なくとも2以上の薄膜を順次積層して成長させる気相成長方法において、前記反応炉内に第1の原料ガスを導入して前記基板上に第1層を成長させるプロセスと、第2の原料ガスを導入して、前記第1の原料ガスを排気しつつ前記第1層を構成する揮発性元素が蒸発するのを防止する中間層を第1層上に成長させるプロセスと、第2層を成長させるための原料ガスのうちの1または2種類のガスであって、前記中間層をサーマルエッチング可能なパージガスを導入して、前記中間層をエッチングしながら第1および第2の原料ガスを排気する成長中断プロセスと、第3の原料ガスを導入して、前記中間層上に前記第1層に格子整合し、かつ前記第1層と組成の異なる第2層を成長させるプロセスと、を少なくとも有するようにした気相成長方法である。
【0015】
第1層上に中間層を成長させることにより、成長中断プロセスにおいて第1層の構成元素が蒸発して第1層の表面状態が悪化するのを防止できるとともに、第1層を成長させるための第1の原料ガスが第2層を成長させるための第3の原料ガスに混入しないように充分排気できるため、組成の異なる薄膜を積層して成長させる場合でも急峻性に優れた結晶界面が形成され良質な結晶を得ることができる。
【0016】
また、前記中間層は、前記成長中断プロセスにおけるサーマルエッチングの後に結晶全体としての品質に影響を与えない厚さで残留するように成長させるとよい。すなわち、第1層の原料ガスが充分に排気できる時間をもとに成長中断プロセスを行う時間を設定し、成長中断プロセス中にサーマルエッチングにより中間層がすべてエッチングされ第1層表面が剥き出しにならない厚さに中間層を形成することが望ましい。これにより、中間層がすべてエッチングされ第1層表面が剥き出しになり第1層の構成元素(第5B族)が蒸発して第1層の表面状態が悪化するのを防止できる上に、中間層により結晶品質が低下することもなくなる。
【0017】
さらに、前記プロセスを有機金属気相成長法において行うようにするとよい。
【0018】
また、前記エピタキシャル膜の少なくとも一つは、化合物半導体混晶とすることができる。さらに、前記半導体基板を化合物半導体としてもよい。
【0019】
特に、前記半導体基板および前記エピタキシャル膜は、第3B族元素と第5B族元素とからなるIII−V族化合物半導体とすることにより、顕著に本発明の効果が現れる。
【0020】
また、前記半導体基板がInPであり、前記エピタキシャル膜はいずれもInPに0.5%以内で格子整合するIII−V族化合物半導体であるときには、特に優れた品質の結晶を得ることができる。
【0021】
前記中間層はIII−V族化合物半導体であり、前記第2層は前記中間層に含まれる第5B族元素を含むようにする。
【0022】
これにより、成長中断プロセスにおいて中間層および第2層に含まれる第5B族元素を含むガスを供給すれば、中間層表面から前記第5B族元素が蒸発するのを防止できるとともに、第3の原料ガスに不純ガス(第1および第2の原料ガス)が混入することも防止できる。また、中間層は成長中断プロセスにおけるサーマルエッチングにより除去されるものであるが完全に除去することは困難であるので、結晶全体の品質をよくするために残留する中間層の結晶性の良好であることが望ましい。そのために中間層表面から前記第5B属元素が蒸発するのを防ぐことが重要となる。
【0023】
また、残留する中間層の厚さは薄い方が結晶全体としての品質には影響が少なくなるので望ましく、中間層の結晶性が良好で厚さが充分に薄い場合は、中間層の存在は結晶全体としての品質には影響しないことが実験により分かった。具体的には、サーマルエッチング後の中間層の厚さが1〜20nmであれば、結晶全体の厚さが0.1μm以上のときには結晶全体としての品質には影響を与えることはない。
【0024】
また、前記III−V族化合物半導体は、例えば、InGaP、InGaAs、InGaAsPのように、第3B族元素であるIn、Gaと第5B族元素であるAs、Pのうち少なくとも3つの元素を含むようにすることができる。本発明は、このように組成の大きく異なるエピタキシャル膜を積層して成長させるときに適用することができる。
【0025】
前記成長中断プロセスにおいて、前記中間層がAsを含む場合はAsH3を、前記中間層がPを含む場合はPH3を、前記中間層がAsおよびPを含む場合はAsH3とPH3の混合ガスをパージガスとして導入するようにした。これにより、成長中断プロセスにおいて供給されるガスは、そのまま第3の原料ガスとして供給できるので、効率的に作業を行うことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。
【0027】
図5のような構成を有する有機金属気相成長装置を用いて、図6に示すようなInP基板13上にInGaAs層(第1層)12、InP層(第2層)11を積層してエピタキシャル成長させた半導体結晶を作製した。なお、InGaAsとInPとは0.1%以内で格子整合する結晶である。
【0028】
原料として、トリメチルインジウム(TMI)、トリメチルガリウム(TMG)、アルシン(AsH3)、ホスフィン(PH3)を用いた。また、成長温度は650℃、ガスの総流量は50000sccmで、成長圧力は50torrとした。
【0029】
ただし、ここで[sccm]とは、0℃、1気圧の下での1分間の流量をccで表したもので、標準体積を指す。
【0030】
図1に、本実施形態の結晶成長における原料ガスの供給の切替シーケンスを示す。このシーケンスにおいて、[ON]は反応管内に原料ガスが供給されている状態であり、[OFF]は原料ガスの供給が停止されている状態であることを示す。また、図7は本実施形態の結晶の成長過程を示す概略図である。
【0031】
まず、プロセスP1において、AsH3を500sccm、TMIを2.5sccmおよびTMGを2.5sccmで60min供給してInP基板13上にInGaAs層(第1層)12を2.5μm成長させた(図7(a))。次に、プロセスP2において、AsH3とTMGの供給を停止して、PH3を600sccm、TMIを6.0sccmで1min供給して中間層としてのInP層14を15nm成長させた(図7(b))。
【0032】
次に、プロセスP3において、TMIの供給を停止してPH3のみを600sccmで10min供給して、反応管内に残留しているAsH3とTMGをPH3に置換した(図7(c))。このとき、プロセスP2で形成したInP中間層14により、InGaAs層13よりAsが蒸発するのを防止している。また、プロセスP3ではAsH3とTMGをPH3で置換するとともに、図7(c)の14bの部分がサーマルエッチングされ、プロセスP3の終了時点ではInP中間層14aの厚さは5nmになっていた。
【0033】
次に、プロセスP4において、PH3の供給を継続したままTMIの供給を開始し、PH3を600sccm、TMIを6.0sccmで60min供給してInP層(第2層)11を1.5μm成長させた(図7(d))。
【0034】
得られた結晶について光学顕微鏡で観察したところ、良質な結晶であり欠陥は観察されなかった。また、図8に示すSIMSによる分析結果より、InP層11におけるAsの混入量は2〜10×1019atoms/ccで、Gaの混入量は1〜10×1018atoms/ccであった。
【0035】
比較のため、プロセスP3における成長中断プロセスの時間を1minにしたところInP層11表面にクロスハッチ状の欠陥が発生した。これは、プロセスP3において、残留しているTMG、AsH3とPH3が充分に置換されなかったために、プロセスP4で供給される原料ガスにTMG、AsH3が混入したことが原因であると考えられる。
【0036】
さらに比較のため、プロセスP2においてInP中間層14を100nmの厚さで成長させ、プロセスP3における時間を10minとしたところ、InP層11の結晶性が悪化してクロスハッチ状の欠陥が観察された。これは、結晶性の悪いInP中間層14aがサーマルエッチングによりその影響を無視できる程度まで除去されなかったためであると考えられる。
【0037】
以上のことから、成長する層、ガス供給量、気相成長装置等により条件は異なるが、第1層の原料ガスが完全に排気される時間をもとに成長中断時間(プロセスP3の時間)を設定し、成長中断プロセスにおいて行われるサーマルエッチングによりInP中間層14が完全にエッチングされず、かつ結晶全体としての結晶性に影響を与えない程度の厚さにInP中間層14を成長させるなど最適化する必要があることが分かる。
【0038】
次に、比較のため図2〜図4に示す従来の結晶成長における原料ガスの供給の切替シーケンスに従って、図6に示す結晶を成長させてその結晶性を評価した。
【0039】
図2は、成長中断プロセスを行わない場合のシーケンスである。まず、プロセスP1と同様に、AsH3を500sccm、TMIを2.5sccmおよびTMGを2.5sccmで60min供給してInP基板13上にInGaAs層を1μm成長させた(プロセスP11)。次に、AsH3とTMGの供給を停止して、PH3を600sccm、TMIを6.0sccmで60min供給してInP層13を1.5μm成長させた(プロセスP12)。
【0040】
得られた結晶について光学顕微鏡で観察したところ、GaInAs層12上のInP層11の結晶性が悪化しており、InP層11表面にクロスハッチ上の欠陥が観察された。さらに、図9に示すSIMSによる分析結果より、InP層11におけるAsの混入量は5×1019〜8×1020atoms/ccで、Gaの混入量は2×1018〜2×1019atoms/ccであり本実施形態の結晶に比較して混入量が1桁以上増大していた。
【0041】
図3は、成長中断プロセス中にAsH3を供給した場合のシーケンスである。まず、AsH3を500sccm、TMIを2.5sccmおよびTMGを2.5sccmで60min供給してInP基板13上にInGaAs層を1μm成長させた(プロセスP21)。次に、TMGの供給を停止して、AsH3のみを500sccmで20min供給した(プロセスP22)。次に、次に、AsH3の供給を停止して、PH3とTMIの供給を開始し、PH3を600sccm、TMIを6.0sccmで60min供給してInP層13を1.5μm成長させた(プロセスP23)。
【0042】
この場合もInP層11表面にクロスハッチ状の欠陥が観察された。これは、成長中断プロセス(プロセスP22)において第1層に含まれる第5B族元素Asを供給すれば、第1層表面からAsが蒸発するのを防止できるが、供給する原料ガスをMTIとPH3に切り換えたときにはAsH3が残留しているため、InP層11中にAsが混入してしまうからである。
【0043】
図4は、成長中断プロセス中にPH3を供給した場合のシーケンスである。まず、AsH3を500sccm、TMIを2.5sccmおよびTMGを2.5sccmで60min供給してInP基板13上にInGaAs層を1μm成長させた(プロセスP31)。次に、TMGの供給を停止して、PH3のみを600sccmで20min供給した(プロセスP32)。次に、PH3は供給したままTMIの供給を開始し、PH3を600sccm、TMIを6.0sccmで60min供給してInP層13を1.5μm成長させた(プロセスP33)。
【0044】
この場合は、成長中断プロセス(プロセスP32)においてガスの置換が充分に行われたためクロスハッチ状の欠陥は発生しなかったが、成長中断プロセス中にInGaAs層からAsが蒸発したりPと置換したりしたため、InGaAs層の表面状態が悪化してしまった。
【0045】
これらの結果より、本発明の結晶成長方法によればInGaAs層上にInP層を界面の急峻性を良く成長させることが可能であることが証明された。
【0046】
以上本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。
【0047】
例えば、本実施例では中間層に第2層(InP)と格子整合する結晶(InP)を成長させたが、前述したように中間層は結晶全体としての品質に影響を与えない厚さまでサーマルエッチングによって除去されるため、他の組成例えばGaP等を中間層とすることもできる。その場合、当然のことながら中間層の厚さと成長中断時間の最適値の組み合わせは中間層がInP層の時とは異なる。具体的には、第1層の原料ガスが充分に排気できる時間をもとに成長中断プロセスを行う時間を設定するとともに、成長中断プロセス中にサーマルエッチングにより除去されるエッチング量(厚さ)をもとに中間層を形成する厚さ(時間)を決定するとよい。もちろんエッチング後の中間層の厚さは、結晶全体としての結晶性に影響を与えない程度まで薄くされるのがよい。
【0048】
また、本発明を適用可能な材料の組み合わせを表1に示す。少なくとも表1に掲げる材料の組み合わせによれば、良質の結晶が得られることが確認されている。なお、材料の組み合わせは表1に挙げた例に制限されるものではなく、中間層が第2層の構成元素である第5B属元素の少なくとも一つを含むように構成されるようにし、成長中断プロセスにおいてその第5B族元素を含むガスをパージガスとして供給するようにすればよい。
【0049】
【表1】
【0050】
また、本実施形態では基板上に異なる組成をした2種類のエピタキシャル膜を成長させる場合について説明したが、本発明は、さらに第3層、第4層・・・と多層構造をした結晶を成長させる方法にも適用可能である。その際、第2層と第3層の間に形成される中間層、第3層と第4層の間に形成される中間層は、それぞれその中間層上に成長させる層に含まれる第5B族元素の少なくとも一つを含むようにし、その第5B族元素を含むガスをパージガスとして供給して成長中断プロセスを行うようにすればよい。
【0051】
【発明の効果】
本願において開示される発明によれば、第1層上に中間層を成長させることにより、成長中断プロセスにおいて第1層の構成元素が蒸発して第1層の表面状態が悪化するのを防止できるとともに、第1層の原料ガスが第2層の原料ガスに混入しないように充分排気できるため、急峻性に優れた結晶界面が形成され良質な結晶を得ることができる。特に、InGaAs層とInP層のように組成の大きく異なるエピタキシャル膜を積層して成長させる場合に適用して顕著な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の結晶成長における供給ガス切替シーケンス図である。
【図2】成長中断プロセスを行わないときの結晶成長における供給ガス切替シーケンス図である。
【図3】成長中断プロセスにおいてAsH3を供給したときの結晶成長における供給ガス切替シーケンス図である。
【図4】成長中断プロセスにおいてPH3を供給したときの結晶成長における供給ガス切替シーケンス図である。
【図5】有機金属気相成長装置の概略図である。
【図6】本実施形態において成長させた結晶の模式図である。
【図7】本実施形態の結晶成長プロセスをあらわす模式図である。
【図8】図1の結晶成長シーケンスに従って成長させた結晶のSIMSの測定結果チャートである。
【図9】図2の結晶成長シーケンスに従って成長させた結晶のSIMSの測定結果チャートである。
【符号の説明】
1 反応管
2a 有機金属原料の導入口
2b 第5B族水素化ガスの導入口
3 ヒータ
4 基板
5 基板保持台
6 排気口
U 上流側
L 下流側
11 InP層(第2層)
12 InGaAs層(第1層)
13 InP基板
14 InP中間層
14a InP層(残留部分)
14b InP層(エッチング部分)
Claims (6)
- 反応炉内に設けられた基板保持台上に半導体基板を配置し、所望する薄膜を成長させるのに必要な原料ガスを供給し、前記半導体基板表面に組成の異なる少なくとも2以上の薄膜を順次積層して成長させる気相成長方法において、
前記反応炉内に第1の原料ガスを導入して前記基板上に第1層を成長させるプロセスと、
第2の原料ガスを導入して、前記第1の原料ガスを排気しつつ前記第1層を構成する揮発性元素が蒸発するのを防止する中間層を第1層上に成長させるプロセスと、
第2層を成長させるための原料ガスのうちの1または2種類のガスであって、前記中間層をサーマルエッチング可能なパージガスを導入して、前記中間層をエッチングしながら第1および第2の原料ガスを排気する成長中断プロセスと、
第3の原料ガスを導入して、前記中間層上に前記第1層に格子整合し、かつ前記第1層と組成の異なる第2層を成長させるプロセスと、を少なくとも有し、
前記半導体基板、前記第1層、前記中間層、および前記第2層は、第13族(3B族)元素と第15族(5B族)元素とからなるIII−V族化合物半導体であり、
前記第2層は前記中間層に含まれる第15族(5B族)元素を含み、前記中間層に含まれる第15族(5B族)元素はAs及び、又はPであり、
前記成長中断プロセスにおいて、前記中間層がAsを含む場合はAsH3 を、前記中間層がPを含む場合はPH3 を、前記中間層がAsおよびPを含む場合はAsH3 とPH3 の混合ガスをパージガスとして導入することを特徴とする気相成長方法。 - 前記中間層は、前記成長中断プロセスにおけるサーマルエッチングの後に結晶全体としての品質に影響を与えない厚さで残留することを特徴とする請求項1に記載の気相成長方法。
- 有機金属気相成長法により前記第1層、前記中間層、および前記第2層を成長させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の気相成長方法。
- 前記第1層、前記中間層、および前記第2層の少なくとも一つは、化合物半導体混晶であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の気相成長方法。
- 前記半導体基板がInPであり、前記第1層、前記中間層、および前記第2層はいずれもInPに0.5%以内で格子整合するIII−V族化合物半導体であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の気相成長方法。
- 前記第1層および第2層は、In、Ga、AsおよびPのうち少なくとも3つの元素を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の気相成長方法。
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JPH09213641A (ja) * | 1996-02-06 | 1997-08-15 | Oki Electric Ind Co Ltd | 有機金属気相成長による急峻なヘテロ界面の作製方法 |
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