JP4527854B2 - 多層同時成形されたチューブを用いた帯電部材の製造方法、及び該帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置 - Google Patents

多層同時成形されたチューブを用いた帯電部材の製造方法、及び該帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電部材、その帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関し、詳しくは、被帯電体に接触配置され、電圧を印加されることにより該被帯電体を帯電する帯電部材、その帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真装置や静電記録装置等の画像形成装置に用いられる帯電手段として、接触帯電方式の帯電手段の採用が進められている。接触帯電は、被帯電体に接触配置された帯電部材に電圧を印加することによって被帯電体を所定の極性及び電位に帯電させるものであり、電源の電圧を低くすることができる、オゾン等のコロナ生成物の発生を少なくすることができる、及び構造が簡単で低コスト化を図ることができる等の利点がある。
【0003】
帯電部材に印加する電圧は直流のみを印加する方式(DC印加方式)の他に、直流電圧を接触帯電部材に印加したときの被帯電体の帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を有する振動電界(時間と共に電圧値が周期的に変化する電界)を接触帯電部材と被帯電体との間に形成して被帯電体面を帯電処理する手法(AC印加方式)があり、この方がより均一な帯電をすることが可能である。
【0004】
また、接触帯電装置は、被帯電体に接触させる帯電部材の形状や形態から、帯電部材をローラー状部材(帯電ローラー)としたローラー型帯電器(特開昭63−7380号公報及び特開昭56−91253号公報等)、ブレード状部材(帯電ブレード)としたブレード型帯電器(特開昭64−24264号公報及び特開昭56−194349号公報等)及びブラシ状部材(帯電ブラシ)としたブラシ型帯電器(特開昭64−24264号公報等)等に大別される。
【0005】
帯電ローラーは、回転自由に軸受支持されて被帯電体に所定の圧力で圧接され、被帯電体の移動に伴い従動回転する。
【0006】
上記帯電ローラーは通常、基体として中心に設けた芯金と、該芯金の外周にローラー状に設けた導電性の弾性層と、更にその外周に設けた表面層等を有する多層構造体である。
【0007】
上記各層のうち、芯金(金属層)はローラーの形状を維持するための剛体であると共に、給電電極としての役割を有している。
【0008】
また、上記弾性層は通常、1×104〜1×1011Ω・cmの体積固有抵抗を有すること、及び弾性変形することにより被帯電体との均一な接触を確保する機能が要求されるため、通常、導電性が付与されたゴム硬度(JIS A)70度以下の柔軟性を有する加硫ゴムが使用される。そして、従来の帯電ローラーには、弾性層としてゴム発泡体(又はスポンジ状ゴム)を使用した発泡タイプとゴム発泡体を使用しないソリッドタイプがあった。また、上記表面層は被帯電体の帯電均一性を向上させ、被帯電体表面のピンホール等に起因するリークの発生を防止すると共に、トナー粒子や紙粉等の固着を防止する機能、更には弾性層の硬度を低下させるために用いられるオイルや可塑剤等の軟化剤のブリードを防止する機能等も有している。表面層の体積固有抵抗は、通常、1×105〜1×1013Ω・cmであり、従来、導電性塗料を塗布すること、あるいはシームレスチューブを被覆すること等により形成されていた。
【0009】
チューブ被覆ローラーの製造方法としては、熱収縮性チューブを使用する方法と非熱収縮性チューブを使用する方法とがある。熱収縮性チューブを用いる場合は、芯金あるいは芯金上に弾性体を形成した弾性ローラーを内面にプライマーが塗布された熱収縮性チューブに挿入し、全体を加熱してチューブを収縮させてローラー外周に被覆する。また、非熱収縮性チューブを用いる場合は、円筒状金型の内壁に非熱収縮性チューブを長手方向に引張りながら配置してチューブと円筒状金型内壁との間を減圧してチューブを内壁に密着した状態にし、芯金外周に弾性体を形成した弾性ローラーを挿入した後、加熱融着してローラー外周にチューブを被覆していた。
【0010】
しかし、熱収縮性チューブを用いる場合、製造工程は簡単であるが、熱収縮性チューブの製造が難しく、偏肉は避けられず、しかも高価であった。また、収縮性の調整も難しく、皺が発生してしまう等の問題もあった。また、非熱収縮性チューブを用いる場合、非熱収縮性チューブは偏肉のない均一な厚さのチューブが廉価で得られるが、表面層が多層構造のローラーの製造には工程上熟練を要し、皺が発生したり、チューブがねじれたりする等の問題が発生し易かった。
【0011】
一方、上記多層部をチューブで形成した場合、ピンホール等の不具合は避けることができ、膜厚のコントロールも比較的容易である。しかし、従来のチューブの場合、30μm以下の薄い膜厚のチューブの成形は非常に困難なため、多層の抵抗層を、単一層のチューブを複数個用意して一個づつ外嵌処理することにより、重ね合わせて形成した場合、抵抗層全体の肉厚が厚くなるため、希望する抵抗値のローラーが得難いという欠点を有していた。
【0012】
そこで、上記多層チューブを同時成形させる方法(特開平11−125952号公報)もあるが、通常成形直後に回収のために、冷却水等によりチューブを急冷するため、各層の弾性率の違い、残留ひずみの違いにより、成形時は密着していた多層チューブもチューブ材料の組み合わせによっては、密着力が不十分となり、被覆時、使用時に剥離したり、密着力のムラに起因する界面抵抗のムラが直接画像不良として現れる欠点があった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、同時成形された多層チューブの局所的な密着力の不均一や各層間の密着不良に起因する帯電不良が生じない帯電部材を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、上記帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に従って、芯金と、該芯金外周上の発泡弾性体層と、複数層の機能性膜を同時成形して得られた外層がスチレン系熱可塑性エラストマーからなり、内層がウレタン系エラストマーからなる機能性複層チューブが該発泡弾性体層外周に被覆されている帯電部材の製造方法において、該機能性複層チューブを、80〜120℃の温度で熱処理することにより各層間の密着力を上げ、これを200N/m以上とすることを特徴とする帯電部材の製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明に従って、電子写真感光体と帯電部材及び、現像手段、クリーニング手段の一方又は両方の手段を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジにおいて、該帯電部材が、該電子写真感光体に接触配置され、電圧を印加されることにより該電子写真感光体を帯電する帯電部材であって、上記帯電部材であることを特徴とするプロセスカートリッジが提供される。
【0017】
更に、本発明に従って、電子写真感光体、帯電部材、露光手段、現像手段及び転写手段を備える電子写真装置において、該帯電部材が、該電子写真感光体に接触配置され、電圧を印加されることにより該電子写真感光体を帯電する帯電部材であって、上記帯電部材であることを特徴とする電子写真装置が提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の帯電部材(以下、帯電ローラーともいう)1’の一例を示すもので、電子写真装置の帯電器として使用するものである。この帯電ローラーは、ステンレススチール、めっき処理した鉄、黄銅及び導電性プラスチック等の良導電性材料からなる芯金1の外周に導電性の弾性材料からなる発泡弾性体層2を設け、更にこの発泡弾性体層2の外周にチューブ状の機能性複層膜3を被覆したものである。図1の場合、機能性複層膜は内部層3(i)と外部層3(o)からなる。
【0020】
本発明における芯金(金属層)としては、例えばアルミニウム、銅、鉄、又はこれらを含む合金等の良導体が好適に用いられる。本発明に用いられる芯金は、0.1〜1.5mm程度の厚さを有する金属管であっても、また棒状であってもよい。
【0021】
ここで、上記発泡弾性体層2を構成する導電性を有する弾性材料としては、導電材を配合した発泡導電性ゴム組成物あるいは導電性ポリウレタンフォームを用いることができる。
【0022】
この場合、発泡導電性ゴム組成物を構成するゴム成分としては、特に制限されるものではないが、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)、クロロプレン、クロロスルフォン化ポリエチレンに導電材を配合したものの発泡体、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合ゴムの発泡体又はエピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとの共重合ゴムに導電材を配合したものの発泡体を好適に使用することができる。
【0023】
これらゴム組成物に配合する導電材としては、カーボンブラック、黒鉛、金属及び導電性の各種金属酸化物(酸化錫及び酸化チタン等)等の導電性粉体や、カーボンファイバー及び金属酸化物の短繊維等の各種導電性繊維を用いることができる。その配合量は、全ゴム成分100質量部に対して好ましくは3〜100質量部、特に好ましくは5〜50質量部であり、これにより発泡弾性体層2の体積抵抗を1×101〜1×109Ω・cm程度に調整することが好ましい。なお、この発泡弾性体層2の形成は、公知の加硫成形法により行うことができ、その厚さは帯電ローラーの用途等に応じて適宜設定されるが、通常1〜20mmが好ましい。
【0024】
本発明においては、この発泡弾性体層2上に機能性複層膜3をチューブの形態で被覆する。この場合、この機能性複層膜3を構成する熱可塑性樹脂としては、押出し成形可能な熱可塑性樹脂であればいずれのものでもよく、具体的には、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、エチレン酢酸ビニル、エチレンエチルアクリレート、エチレンアクリル酸メチル、スチレンブタジエンゴム、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12及びその他の共重合ナイロン等のポリアミド、スチレンエチレンブチル、エチレンブチル、ニトリルブタジエンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、多硫化ゴム、塩素化ポリエチレン、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエン、イソプレンゴム及びポリノルボルネンゴム等の通常のゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)及びスチレン−ブタジエン−スチレンの水添加物(SEBS)等の熱可塑性ゴムを使用することができ、特に制限されるものではない。
【0025】
あるいは、上記の各樹脂や共重合体よりなるエラストマー及び変性体等のエラストマーと、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)等の飽和ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、ポリウレタン、ポリフェニレンオキサイド、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル−エチレン/プロピレンゴム−スチレン樹脂(AES)及びアクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS)等のスチレン系樹脂及びアクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、等の各樹脂及び共重合体からなる材料の組み合わせが好ましい。
【0026】
次に、本発明において用いられる機能性複層膜について説明する。本発明における機能性複層膜は、予めシームレスチューブの形態に成膜された重合体であって、前記芯金(金属層)外周上の発泡弾性体層に外嵌し、被覆する。
【0027】
例えば、図2に示す装置により1回の操作で所望層数の機能性複層膜3を形成することができる。図2の(a)は2種2層用、(b)は2種3層用、(c)は3種3層用である。
【0028】
この場合に使用される樹脂、エラストマー及び共重合体等は前記したものであり、後述する導電材等を適宜配合することにより、所望の特性を有するチューブ構成が得られる。
【0029】
更に、上記ゴム、熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂から選ばれた2種以上の重合体からなるポリマーアロイ又はポリマーブレンドも使用できる。
【0030】
本発明の機能性複層膜のチューブは、上記各種重合体と、下記の導電材及び必要ならばその他の添加剤からなる導電性重合体組成物を押出成形法、射出成形法及びブロー成形法等によりチューブ状に成膜することにより得ることができる。上記各種成形法の中では、押出成形法が特に好適である。
【0031】
更には、形成するチューブの各薄膜層の膜厚均一性、また導電材等の分散性がより均一であるものを得るためには、縦型のチューブ押出機(図3)を使用する。
【0032】
なお、上記導電材としては、公知の素材が使用でき、例えば、カーボンブラック及びグラファイト等の炭素微粒子;ニッケル、銀、アルミニウム及び銅等の金属微粒子;酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム及びシリカ等を主成分とし、これに原子価の異なる不純物イオンをドーピングした導電性金属酸化物微粒子;炭素繊維等の導電性繊維;ステンレス繊維等の金属繊維;炭素ウィスカーやチタン酸カリウムウィスカーの表面を金属酸化物や炭素等により導電化処理した導電性チタン酸カリウムウィスカー等の導電性ウィスカー;及びポリアニリン及びポリピロール等の導電性重合体微粒子等が挙げられる。
【0033】
本発明に用いられる機能性複層膜の各層は上記記載の材料で構成され、機能性複層チューブの各層間の密着力が200N/m以上であることが必要である。200N/m未満であると、多層チューブ間の密着力が不十分となり抵抗ムラが発生する。更に、好ましくは多層チューブを熱処理することにより、密着力を上げ、密着不十分による抵抗ムラを低減することができる。
【0034】
多層チューブの熱処理の時間、温度等の条件は特に制限されることはないが、チューブ形状が保たれるという条件から、温度上限は多層チューブ中の最も融点の高い層の融点以下であることが好ましい。
【0035】
また、熱処理は、チューブを該弾性層に被覆した後でもよく、この場合には、熱処理温度が多層チューブの各層の融点以上であってもよい。
【0036】
本発明に用いられる機能性複層膜の抵抗値は、1×104〜1×108Ω・cmであることが好ましく、特には1×105〜1×107Ω・cmであることが好ましい。
【0037】
本発明に用いられる機能性複層膜は種々の方法で成膜することができるが、前記のように押出法が好適である。即ち、予め重合体と導電材及び必要に応じて、架橋剤、安定剤及びその他の添加剤を混合したコンパウンドを製造し、該コンパウンドを押出機によりリング状スリットを有するダイスより押出し、冷却することによって連続的にシームレスチューブを製造することができる(図3)。
【0038】
非熱収縮チューブである場合、発泡弾性体層と機能性複層膜の密着性を確保するためにはチューブ内径は発泡弾性体層外径以下であることが必要である。圧縮空気を吹き込むことによりチューブ径を拡大させた状態で芯金を有する発泡弾性体層を挿入し、空気圧を解除すれば外嵌処理が完了する。
【0039】
次に、本発明に用いる押出し装置を図3により説明する。成形に用いるダイス4には、空気導入用の中央通孔5の周囲に内外二重の環状の押出し流路6、7が設けられており、成形に際しては中央通孔5から空気を吹き込みながら、内側流路6に第1押出機8から機能性複層膜を構成する内部層用エラストマーを、また外側流路7に第2押出機9から機能性複層膜を構成する外部層用エラストマーをそれぞれ加圧注入し、内部層3(i)と外部層3(o)を重ね合わせ一体化して押出して得られた機能性複層膜のチューブ3の内部を空気で膨らませながら、その外周に設けた水冷リング10にて冷却し、これをチューブ送り装置により引張り、所定長さに順次切断し、帯電ローラー用の機能性複層膜として、次工程にて、芯金1を有する発泡弾性体層に被覆する。図3中、チューブ送り装置の22はタイミングプーリー、23は送りベルトである。
【0040】
本発明においては、例えば外部層に耐圧性を持たせるべく1×105〜1×106Ωの抵抗の樹脂層を配置し、内部層に1×104〜1×106Ωの樹脂層を配置することは容易で、帯電ローラーの如き、ローラーの表面電位のコントロールが必要なローラーには理想的な機能性複層膜となる。
【0041】
機能性複層膜は内部層と外部層の2層からなり、帯電部材の抵抗値Rrが0.01MΩ<Rr<1MΩであることが好ましい。0.01MΩ以下であると、高電圧がかかるため耐圧性に問題が発生し易く、1MΩ以上では電子写真感光体に対し十分帯電できるだけの電流が流れず、帯電不良を起こし易くなる。
【0042】
本発明により得られた機能性複層膜のチューブ3の内径は、特に制限されるものではなく、これを用いるローラーの外径によって決定されるが、直径10〜20mmの小径チューブを使用するのが一般的である。
【0043】
本発明により得られた機能性複層膜のチューブ3を用いて帯電ローラーや現像ローラーを製造する場合には、図1に示すように予め金属芯金1の外周に発泡弾性体層2を被覆したローラーの外周に、機能性複層膜のチューブ3を嵌め込めばよい。
【0044】
この嵌め込みにおいて、機能性複層チューブ3の内径は、発泡弾性体層2の外径よりもやや小さめであることがローラーの仕上がりにおいて皺等を生じないことから好ましく、例えば製品としてのローラーの外径が12.0mmで、機能性複層チューブ3の肉厚が内外層を併せて0.1mmの場合、芯金を有する発泡性弾性層の外径を11.9mmにして、機能性複層膜のチューブ3の内径を11mm程度にすることが望ましい。
【0045】
また、機能性複層チューブ3の嵌め込みの際に、必要に応じてその内面又はローラーの外周にプライマー処理して接着してもよいが、この処理を行わないで圧着により固着することも可能である。
【0046】
(作用)
機能性複層チューブ3は、内外層を同時に押出す縦型押出機成形により多層一体成形されているため、内外層に機能分離させて肉厚を必要十分な厚みで、帯電ローラーの設計上必要とする抵抗値に広範囲に対応した抵抗層を得ることが可能となる。更に、熱処理をすることで、各層の密着力が被覆時、使用時に耐えうる十分な強度を持ち、かつ均一な抵抗値を持ったローラーを作製することができる。
【0047】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
【0048】
機能性複層膜の構成を抵抗調整層/導電性制御層とした場合、抵抗調整層は材料そのものが適切な抵抗値を有する樹脂を用いてもよく、又はカーボン及び導電性金属酸化物等の導電粉を混合して抵抗値を調整した樹脂でもよい。この例の各層材料を同時押出しにより一体となった複層の機能性チューブを成形することができる。本発明においては、縦型押出し装置を用いてチューブの成形を行う。横型の押出し装置では、押出されたチューブの流れ方向が重力に対して直交した配置であるために、チューブ円周方向に重力の影響が働き、特に押出された直後の熱い状態でその影響を受けるため、本発明で用いる電子写真用途には、精細性に欠けるものと考えられた。
【0049】
(実施例1)
<芯金>
芯金は、鉄材を押出し成形により、直径約5mmの棒材に押出し、長さ260mmに切断後、これに化学メッキを厚さ約3μm施したものを用意した。
【0050】
<発泡弾性体層の成形>
内径4.5mm、外径11.5mmのホース状の発泡弾性体層[エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)に、加硫剤と発泡剤を配合し、混合したものを押出し成形機によりホース状に成形し、加硫缶内で発泡させたもの]を長さ225mmに切り、その中心孔に、前記した直径5mm、長さ260mmの芯金を挿入した。
【0051】
<機能性複層膜のチューブ成形>
機能性複層膜の外部層の材料として、スチレン系の樹脂(スチレン−エチレン・ブチレン−オレフィン共重合樹脂、商品名:ダイナロン、JSR社製)100質量部、ポリエチレン20質量部及びカーボンブラック(商品名:ケッチェンブラックEC、ライオンアクゾ社製)15質量部をV型ブレンダーで数分間混合した。これを更に加圧式ニーダーを用いて190℃で10分間溶融混練した。更に、冷却後、粉砕機で粉砕し、単軸押出し機でペレット化した。
【0052】
内部層の材料として、ポリウレタンエラストマー100質量部、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC)15質量部、酸化マグネシウム10質量部及びステアリン酸カルシウム1質量部を、外部層の材料と同様の工程でペレット化した。
【0053】
縦型押出機(プラ技研社製の特注品、図3参照)を用いて、これらを一つのクロスヘッドで2重層となるように合流し、適温の熱水(40℃〜90℃)10中に押出し、更に冷却し引き取った(22、23)。このようにして、外径約11mmの機能性複層膜のチューブを得た。
【0054】
得られた、多層チューブを80℃で、2、6及び16時間熱処理を行った。また、熱処理温度を100℃、120℃にし、2時間熱処理を行ったチューブについても用意した。
【0055】
チューブ層間の密着力の測定は、多層チューブを長軸方向に切り開き、一部をはがして、ロードセルを用いて、JIS K6854に従いT型はく離強度を求めた。密着力の結果を表1に示した。それによると、熱処理をすることにより、密着力が上がっていることがわかる。
【0056】
<ローラーの作製>
内径4.5mm、外径11.5mmのホース状の発泡弾性体層を長さ225mmに切り、径5mm×長さ260mmの芯金(金属層)を挿入した。これに上記熱処理をした機能性複層チューブ3を230mm長さに切断したものを、チューブ被覆装置(不図示)により発泡弾性体層外周に嵌め込み、圧密着させた。なお、該帯電部材の電気抵抗値Rrは、ローラーに200Vの電圧を印加し、このとき流れる電流値Iから抵抗値Rrを式Rr=V/Iにより求めた。各ローラーの抵抗値を表2に示す。何れのローラーの抵抗値Rrは、0.01MΩから1MΩに入っていた。
【0057】
この帯電ローラーをLBP(レーザービームプリンター;ヒューレットパッカード社製レーザージェット2−P)の一次帯電器に用いて画像形成を行った結果、機能性複層膜3と発泡弾性体層2の間に隙間が発生することなく、機能性複層膜3に皺が寄ることもなく、良好な画像が得られた。
【0058】
(実施例2)
実施例1において、多層チューブを熱処理せずに、帯電ローラーを作製し、ローラーを80℃、100℃及び120℃で2時間熱処理した。密着力の測定については、ローラーから多層チューブをはがし、実施例1と同様にして測定した。実施例1と同様に画像評価をした結果、良好な画像が得られた。
【0059】
(比較例1)
実施例において、多層チューブ、又は帯電ローラーを熱処理しないこと以外は同様にして作製した。
【0060】
実施例1と同様に画像評価をした結果、初期画像では問題はなかったが、高温高湿(32.5℃/85%RH)環境下あるいは低温低湿(15℃/10%RH)環境下では、画像出力枚数が増えるに従って画像欠陥が現れ、1000枚を超えると顕著になった。但し、1000枚で判断のつかないものは、4000枚まで画像出しを行い、確認した。
【0061】
また、実施例1と同様の方法で帯電ローラーの局所的な抵抗値Rrを測定したところ、実施例1より不均一であることが分った。
【0062】
なお、帯電ローラー表面の凹凸は、実施例、比較例共に問題になるようなものは観測されなかった。
【0063】
【表1】
Figure 0004527854
【0064】
【表2】
Figure 0004527854
【0065】
【表3】
Figure 0004527854
【0066】
図4に本発明の帯電部材を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。
【0067】
図において、1は電子写真感光体であり、矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体13は、回転過程において、本発明の帯電部材1’によりその周面に正又は負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)からの露光光14を受ける。こうして電子写真感光体13の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0068】
形成された静電潜像は、次いで現像手段15によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から電子写真感光体13と転写手段16との間に電子写真感光体13の回転と同期取りされて給紙された転写材17に、転写手段16により順次転写されていく。
【0069】
転写を受けた転写材17は、電子写真感光体面から分離されて定着手段18へ導入されて定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0070】
転写後の電子写真感光体13の表面は、クリーニング手段19によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、繰り返し像形成に使用される。
【0071】
本発明においては、上述の電子写真感光体13、帯電部材1’、現像手段15及びクリーニング手段19等の構成要素のうち複数のものをプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。例えば、現像手段15及びクリーニング手段19を電子写真感光体13及び帯電部材1’と共に一体に支持してカートリッジ化して、装置本体のレール20等の案内手段を用いて装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ21とすることができる。
【0072】
また、露光光14は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿からの反射光や透過光、あるいは、センサーで原稿を読取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動及び液晶シャッターアレイの駆動等により照射される光である。
【0073】
このように、実施例1、2及び比較例1の帯電部材が組み込まれたプロセスカートリッジを用いた画像形成装置により評価を行っている。
【0074】
【発明の効果】
以上のように、本発明の帯電部材は、熱処理をすることにより、多層チューブの密着力が十分となり、局所的不均一が少なく、表面平滑性が良好である等優れた特性を有している。
【0075】
また、上記帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置によれば、低温低湿から高温高湿の環境下まで画像欠陥のない良好な画像の出力が長期間維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性ローラーの断面図である。
【図2】多層チューブを同時成形する押出し装置である。
(a)は2種2層用、(b)は2種3層用、(c)は3種3層用
【図3】多層チューブを同時成形する押出し装置である。
【図4】本発明の導電性ローラーを有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の断面図である。
【符号の説明】
1’ 導電性ローラー
2 発泡弾性体層
3 機能性複層膜
4 ダイス
5 中央通孔
6,7 流路
8 第1押出機
9 第2押出機
10 水冷リング
12 電源
13 電子写真感光体
14 露光光
15 現像手段
16 転写手段
17 転写材
18 定着手段
19 クリーニング手段
20 案内手段
21 プロセスカートリッジ容器
22 タイミングプーリー
23 送りベルト

Claims (6)

  1. 芯金と、該芯金外周上の発泡弾性体層と、複数層の機能性膜を同時成形して得られた外層がスチレン系熱可塑性エラストマーからなり、内層がウレタン系エラストマーからなる機能性複層チューブが該発泡弾性体層外周に被覆されている帯電部材の製造方法において、
    該機能性複層チューブを、80〜120℃の温度で熱処理することにより各層間の密着力を上げ、これを200N/m以上とすることを特徴とする帯電部材の製造方法
  2. 前記熱処理が、前記機能性複層チューブが前記発泡弾性体層外周に被覆されている状態で行われる請求項1に記載の帯電部材の製造方法。
  3. 前記機能性複層チューブの熱処理前の各層の密着力が200N/m以下であるものに対して、前記熱処理を行う請求項1に記載の帯電部材の製造方法。
  4. 前記機能性複層膜が内部層と外部層の2層からなり、前記帯電部材の抵抗値Rrが0.01MΩ<Rr<1MΩである請求項1〜3のいずれか1項に記載の帯電部材の製造方法
  5. 電子写真感光体と帯電部材及び、現像手段、クリーニング手段の一方又は両方の手段を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジにおいて、該帯電部材が、該電子写真感光体に接触配置され、電圧を印加されることにより該電子写真感光体を帯電する帯電部材であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた帯電部材であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
  6. 電子写真感光体、帯電部材、露光手段、現像手段及び転写手段を備える電子写真装置において、該帯電部材が、該電子写真感光体に接触配置され、電圧を印加されることにより該電子写真感光体を帯電する帯電部材であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた帯電部材であることを特徴とする電子写真装置。
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