JP4525736B2 - リニアソレノイド - Google Patents

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Description

本発明は、プランジャが磁気吸引部に磁気吸引されるリニアソレノイドに関する。
(発明の背景)
プランジャが磁気吸引部に磁気吸引されるリニアソレノイドでは、プランジャが磁気吸引部から離間すると、磁気吸引ギャップの増加、あるいは後述する薄肉部の磁束漏れにより、プランジャの磁気吸引力が弱まる。この結果、プランジャの発生する駆動力が、プランジャが磁気吸引部から離間する側において小さくなってしまう。
即ち、プランジャが磁気吸引部から離間すると、プランジャの磁気吸引力が弱まり、プランジャの駆動力が低下する不具合があった。
次に、薄肉部の磁束漏れによる不具合を具体的に説明する。
プランジャが磁気吸引部に磁気吸引されるリニアソレノイドの一例を、図2(a)を参照して説明する(符号は後述する実施例と共通)。なお、以下において軸方向の一方側{図2(a)の左側}を前、軸方向の他方側{図2(a)の右側}を後として説明するが、実際の搭載方向にかかるものではない。
図2(a)に示す電磁油圧制御弁は、スプール弁1と、このスプール弁1を駆動するリニアソレノイド2とから構成される。
リニアソレノイド2は、コイル13、プランジャ14、ヨーク17、ステータコア21からなる。
このステータコア21は、磁力によってプランジャ14を前方へ吸引する磁気吸引部18と、プランジャ14の周囲を覆ってプランジャ14を直接摺動させる筒形状を呈した磁気受渡部20と、磁気吸引部18と磁気受渡部20の間の薄肉部19とを一体に設けたものである。
また、磁気吸引部18は、プランジャ14が前方へ移動した際に、プランジャ14の前端(先端)が内側に侵入する筒形凹部24を備える。
この筒形凹部24の前側は、径方向の厚みが一定の非テーパ部24aとして設けられ、筒形凹部24の後側は、外周面が後方へ向けて小径となるテーパ部24bとして設けられている。
次に、コイル13の通電量を徐々に増加させた際におけるプランジャ14のストローク量と、プランジャ14に作用する磁気吸引力との関係を、図2(b)の実線Aに示す。なお、以下では、プランジャ14のストローク量を、プランジャ14の前端位置を基準として説明する。
この図2(b)の実線Aに示されるように、プランジャ14の前端位置が非テーパ部24aとテーパ部24bの境部より前方にある場合(ストローク量が所定ストローク量より大きい場合)、プランジャ14には一定の磁気吸引力が作用する。
しかるに、プランジャ14の前端位置が非テーパ部24aとテーパ部24bの境部より後方にある場合(ストローク量が所定ストローク量より小さい場合)、ストローク量が小さくなるに従い、プランジャ14の磁気吸引力が小さくなる。
この理由を以下に説明する。
プランジャ14の前端位置が非テーパ部24aとテーパ部24bの境部より前方にある場合(ストローク量が所定ストローク量より大きい場合)は、図2(c)に示されるように、プランジャ14の前端が非テーパ部24aの内側にあり、薄肉部19を通る磁束(漏れ磁束)が減り、磁束が主にプランジャ14を通る。この結果、プランジャ14の磁気吸引力が低下しない。なお、一例として、図2(c)に示すプランジャ14のストローク量における磁気吸引力を、図2(b)中の点f1に示す。
しかし、プランジャ14の前端位置が非テーパ部24aとテーパ部24bの境部より後方にある場合(ストローク量が所定ストローク量より小さい場合)は、図2(d)に示されるように、薄肉部19を通る磁束(漏れ磁束)が増えてしまい、プランジャ14を通る磁束が小さくなる。この結果、プランジャ14の磁気吸引力が低下してしまう。なお、一例として、図2(d)に示すプランジャ14のストローク量における磁気吸引力を、図2(b)中の点f2に示す。
上記の不具合を抑えるために、図2(e)に示すように、薄肉部19の全周にレーザ等の加工技術により多数の孔19aを形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このように薄肉部19に多数の孔19aを設けることにより、薄肉部19を通る磁束(漏れ磁束)を抑えることができ、図2(b)の破線Bに示されるように、プランジャ14のストローク量が所定ストローク量より小さくなった際の磁気吸引力の低下を抑えることができる。なお、一例として、図2(e)に示すプランジャ14のストローク量における磁気吸引力を、図2(b)中の点f3に示す。
しかるに、薄肉部19に多数の孔19aを形成しても、プランジャ14の前端位置が非テーパ部24aとテーパ部24bの境部より後方にある場合(ストローク量が所定ストローク量より小さい場合)の磁気吸引力の低下を完全に抑えることができない。
また、薄肉部19の全周に多数の孔19aを形成することにより、薄肉部19の強度が低下するため、強度を確保するために薄肉部19に多数の孔19aを形成できない場合がある。その場合には、薄肉部19を通る磁束(漏れ磁束)を抑える効果が薄れるため、プランジャ14の前端位置が非テーパ部24aとテーパ部24bの境部より後方にある状態における磁気吸引力の低下を抑える効果が弱くなってしまう不具合があった。
特開2001−263521号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プランジャが磁気吸引部から離間することで磁気吸引部とプランジャとの磁気吸引力が弱まる状態であっても、プランジャの駆動力の低下を防ぐことのできるリニアソレノイドの提供にある。
[請求項1の手段]
請求項1の手段のリニアソレノイドは、プランジャと、このプランジャの後方の固定部材との間に配置され、プランジャを前方へ付勢するアシストスプリングを備える。このアシストスプリングは、プランジャが磁気吸引部から離間することで磁気吸引部とプランジャとの磁気吸引力が弱まる区間即ちプランジャの先端が磁気吸引部を構成する筒型凹部(非テーパ部と、径方向の厚みがほかの部位より薄い薄肉部へと接続するテーパ部とからなる)の非テーパ部とテーパ部との境部より後方に位置する範囲においてプランジャを前方に強く付勢し、プランジャが磁気吸引部に接近することで磁気吸引部とプランジャとの磁気吸引力が強まる区間即ちプランジャの先端が筒型凹部の非テーパ部とテーパ部との境部より前方に位置する範囲においてプランジャを前方に弱く付勢する非線形特性を有する。
これにより、プランジャが磁気吸引部から離間することで磁気吸引部とプランジャとの磁気吸引力が弱まる状態(磁気吸引ギャップが大きい状態、および漏れ磁束が大きい状態)の時に、非線形特性を有するアシストスプリングが磁気吸引力の低下を補うように作用するため、プランジャの駆動力の低下を防ぐことができる。
ここで、プランジャのストローク量が増加するとアシストスプリングがプランジャ(あるいは固定部材)から離間するように設けられる場合、ストローク量の減少によりアシストスプリングがプランジャ(あるいは固定部材)に衝突し、アシストスプリングに撓む力(バウンズ力)が生じてしまう。その結果、プランジャの駆動対象物(例えば弁体)にバウンズ力が伝わり、駆動対象物が軸方向へ揺動する不具合が生じる。
これに対し、この請求項1の手段では、アシストスプリングの両端が、プランジャの全ストローク範囲においてプランジャと固定部材に常時接する。このため、プランジャの全ストローク範囲でアシストスプリングがプランジャ(あるいは固定部材)に衝突する不具合がなく、プランジャおよび駆動対象物にバウンズ力による揺動が発生しない。
[請求項2の手段]
請求項2の手段のリニアソレノイドは、テーパ部の軸方向長をL、非テーパ部とテーパ部の軸方向の境部をPとした場合、アシストスプリングにおける強い付勢力と弱い付勢力の変位点が、プランジャの前端位置が境部Pを起点とする±L/2の範囲内に設けられる。
[請求項3の手段]
請求項3の手段のリニアソレノイドは、磁気吸引部と磁気受渡部が、薄肉部を介して一体に設けられる。
これにより、プランジャの前端が、薄肉部の内側、あるいはテーパ部の内側に位置し、薄肉部を通る磁束(漏れ磁束)が増え、その結果プランジャの磁気吸引力が低下しても、非線形特性を有するアシストスプリングが強くプランジャを前方へ付勢して、磁気吸引力の低下を補うように作用するため、プランジャの駆動力の低下を防ぐことができる。
請求項4の手段]
請求項4の手段のリニアソレノイドは、流体の流量、または流体の圧力制御を行うバル
ブ部を駆動する。
請求項1の手段で説明したように、プランジャの全ストローク範囲でアシストスプリン
グがプランジャ(あるいは固定部材)に衝突する不具合がないため、プランジャおよび駆
動対象物であるバルブ部の弁体にバウンズ力による揺動が発生しない。このため、弁体の
揺動による流量の変動、または流体圧力の変動が生じない。
最良の形態のリニアソレノイドは、通電により磁力を発生するコイルと、軸方向へ摺動
自在に支持されたプランジャと、コイルの発生する磁力によりプランジャを前方へ磁気吸
引する磁気吸引部と、プランジャの外周に配置されてプランジャと径方向の磁気の受け渡
しを行う磁気受渡部と、プランジャを後方へ付勢する付勢力付与手段とを備える。
このリニアソレノイドは、プランジャと、このプランジャより後方に設けられた固定部
材との間に、プランジャを前方へ付勢するアシストスプリングを備える。
このアシストスプリングは、プランジャが磁気吸引部から離間することで磁気吸引部と
プランジャとの磁気吸引力が弱まる区間即ちプランジャの先端が磁気吸引部の非テーパ部とテーパ部との境部より後方に位置する範囲においてプランジャを前方に強く付勢し、プランジャが磁気吸引部に接近することで磁気吸引部とプランジャとの磁気吸引力が強まる区間即ちプランジャの先端が磁気吸引部の非テーパ部とテーパ部との境部より前方に位置する範囲においてプランジャを前方に弱く付勢する非線形特性を有する。
また、アシストスプリングの両端は、プランジャの全ストローク範囲においてプランジ
ャと固定部材に常時接するものである。
実施例1を図1を参照して説明する。この実施例1では、先ず、本発明の要部が適用されていない「電磁油圧制御弁の構造」を説明し、次に「実施例1の背景」を説明し、その後で「実施例1の特徴」を説明する。
〔電磁油圧制御弁の構造〕
この実施例1の電磁油圧制御弁は、例えば、自動変速機の油圧制御装置に搭載されるものである。具体的に、実施例1に示す電磁油圧制御弁は、外部と油密にシールされた油圧コントローラのケース(バルブボディ)の内部においてオイル中に配置されるものであり、スプール弁1(バルブ部の一例)と、このスプール弁1を駆動するリニアソレノイド2とを備える。
(スプール弁1の説明)
スプール弁1は、スリーブ3、スプール4およびリターンスプリング5(付勢力付与手段の一例)を備える。
スリーブ3は、略円筒形状を呈するものであり、中心にはスプール4を軸方向へ摺動自在に支持する挿通穴6が形成され、径方向にはオイルポート7が形成されている。
なお、オイルポート7は、図示しないオイルポンプのオイル吐出口に連通して入力圧が供給される入力ポート、電磁油圧制御弁で調圧した出力圧が出力される出力ポート、低圧側(オイルパン内等)に連通する排出ポート、呼吸用のドレーンポート等である。
スプール4は、スリーブ3内に摺動可能に配置され、オイルポート7の開口面積を可変するとともに、オイルポート7の連通状態を切り替えるものであり、オイルポート7を閉塞可能な複数のランド8と、ランド8間に設けられた小径部9とを備える。
このスプール4の後端部には、リニアソレノイド2の内部にまで延びるシャフト11が当接しており、そのシャフト11の後端は、後述するプランジャ14の前端面に当接して、プランジャ14がスプール4を軸方向へ駆動するように設けられている。
リターンスプリング5は、スプール4を後方に付勢する圧縮コイルスプリングであり、スリーブ3の前側のバネ室内に圧縮された状態で配置される。このリターンスプリング5は、後端がスプール4の前面に当接し、前端がスリーブ3の挿通穴6の前端を閉塞する調整ネジ12の底面に当接するものであり、調整ネジ12の螺合量(ねじ込み量)により、リターンスプリング5の付勢力が調整できるようになっている。
(リニアソレノイド2の説明)
リニアソレノイド2は、コイル13、プランジャ14、磁気固定子15、コネクタ16を備える。
コイル13は、通電されると磁力を発生して、プランジャ14と磁気固定子15を通る磁束ループを形成させるものであり、樹脂性のボビン13aの周囲に、絶縁被覆が施された導線(エナメル線等)を多数巻回したものである。
プランジャ14は、略円柱形状を呈した磁性体金属(例えば、鉄などの強磁性材料)である。
このプランジャ14は、磁気固定子15の内周面(具体的には、後述するステータコア21の内周面)と直接摺動するものである。
また、プランジャ14は、上述したようにスプール4側の前端面がスプール4のシャフト11の後端と当接しており、スプール4に伝わるリターンスプリング5の付勢力によってスプール4とともにプランジャ14も後側に付勢されている。
なお、プランジャ14の内部には、軸方向に貫通する呼吸孔(あるいは呼吸溝)が形成されている。
磁気固定子15は、コイル13の外周を覆う略カップ形状を呈した磁性体製のヨーク17と、磁気吸引部18、薄肉部19、磁気受渡部20が一体に設けられた磁性体製のステータコア21とから構成され、ヨーク17のカップ開口部(前部)からステータコア21を差し入れ、ヨーク17のカップ開口部においてスリーブ3とともにステータコア21を固定する構成を採用している。
ヨーク17は、コイル13の周囲を覆って磁束を流す磁性体金属(例えば、鉄などの強磁性材料)であり、内部にリニアソレノイド2の構成部品を組み込んだ後、開口端に形成された爪部をカシメることでスリーブ3と強固に結合される。
磁気吸引部18は、ヨーク17の開口端と磁気的に結合されるフランジ部22と、プランジャ14と軸方向に対向配置される磁気対向部23と、プランジャ14の前端部が侵入可能な筒形凹部24とを有する磁性体金属(例えば、鉄などの強磁性材料)であり、磁気吸引部18とプランジャ14との間にプランジャ14に磁気吸引力を与える磁気吸引ギャップが形成される。
磁気対向部23の内部には、図示されないが軸方向に貫通する呼吸孔(あるいは呼吸溝)が形成されている。なお、この実施例では、磁気吸引部18にフランジ部22を一体に設ける例を示したが、フランジ部22を別体に設けて圧入等の固定技術で結合したものであっても良い。
ここで、筒形凹部24を図1(b)を参照して具体的に説明する。
筒形凹部24における軸方向の前側は、径方向の厚みが一定の非テーパ部24aとして設けられている。また、筒形凹部24における軸方向の後側は、外周面が後方へ向けて小径となるテーパ部24bとして設けられている。このテーパ部24bは、プランジャ14のストローク量に対して磁気吸引力の変化を抑えるために設けられるものである。
なお、プランジャ14の最大リフト時(プランジャ14が最も前方へ磁気吸引された状態の時)には、プランジャ14の前端が、薄肉部19の内側→テーパ部24bの内側を通過した後、非テーパ部24aの内側(具体的には非テーパ部24aの前方側)まで侵入するものである。
薄肉部19は、径方向の厚みが他の部位より薄く設けられて、磁気吸引部18と磁気受渡部20との間で直接磁束が流れるのを阻害する磁気飽和部である。
磁気受渡部20は、プランジャ14の略全周を覆う円筒形状を呈する磁性体金属(例えば、鉄などの強磁性材料)であり、ヨーク17のカップ底部(後部)に形成された挿入凹部25に挿入配置されて、ヨーク17と磁気的に結合されている。
この磁気受渡部20は、その内周面においてプランジャ14が直接摺動するものであり、プランジャ14と径方向の磁束の受け渡しを行うものである。そして、磁気受渡部20とプランジャ14との間に磁気受渡ギャップが形成される。
コネクタ16は、電磁油圧制御弁を制御する電子制御装置(AT−ECU:図示しない)と接続線を介して電気的な接続を行う接続手段であり、その内部にはコイル13の両端にそれぞれ接続される端子16aが配置されている。
〔実施例1の背景〕
電子制御装置からコイル13に与えられる通電量(駆動電流)が、通電停止状態(非通電)から大きくなるに従って、コイル13の発生磁力が増加する。その結果、プランジャ14と磁気固定子15を通る磁束ループの磁束量が増加して、プランジャ14が前方へ磁気吸引される。
この時のプランジャ14のストローク量と、プランジャ14に作用する磁気吸引力との関係は、図1(c)の実線Aに示されるように、プランジャ14の前端が非テーパ部24aとテーパ部24bの境部より後方へ移動するに従って、プランジャ14の磁気吸引力が小さくなる。
具体的に、プランジャ14の前端部が非テーパ部24aの範囲では、プランジャ14には一定の磁気吸引力が発生する。
しかるに、プランジャ14の前端部がテーパ部24bの範囲内では、プランジャ14に作用する磁気吸引力が低下する。
さらに、プランジャ14の前端部が薄肉部19の範囲内では、プランジャ14に作用する磁気吸引力がさらに大きく低下してしまう。
プランジャ14の前端部の位置がテーパ部24bおよび薄肉部19の範囲で磁気吸引力が低下する理由は、プランジャ14の前端がテーパ部24b、薄肉部19の内側の場合、図1(b)に示されるように、薄肉部19を通る磁束(漏れ磁束)が増えることにより、プランジャ14を通る磁束が小さくなり、プランジャ14に作用する磁気吸引力が低下するためである。
〔実施例1の特徴〕
上記の不具合を解決するために、この実施例1のリニアソレノイド2は、プランジャ14と、このプランジャ14より後方側にあるヨーク17の底壁17a(固定部材に相当)との間に、プランジャ14を前方へ付勢するアシストスプリング26を備えている。
このアシストスプリング26は、上述した磁気吸引力の低下を補う特性を有する圧縮コイルバネであり、図1(c)の破線Bに示すように、
(i)プランジャ14の前端が、テーパ部24bおよび薄肉部19の内側に位置する範囲(プランジャ14が磁気吸引部18から離間することで磁気吸引力が弱まる区間)においてプランジャ14を前方に強く付勢し、
(ii)プランジャ14の前端が非テーパ部24aの内側に位置する範囲(プランジャ14が磁気吸引部18に接近することで磁気吸引力が強まる区間)においてプランジャ14を前方に弱く付勢する非線形特性を有するものである。
アシストスプリング26における強い付勢力と弱い付勢力の変位点Xは、プランジャ14と磁気吸引部18の離間量により磁気吸引力が強い区間と弱い区間とに変化する変化部に設けられる。
これを具体的に説明する。
アシストスプリング26の変位点Xは、少なくても、プランジャ14の前端部がテーパ部24bと薄肉部19との境部より前方側に設けられる。
好ましい形態を説明すると、
テーパ部24bの軸方向長をL、
非テーパ部24aとテーパ部24bの軸方向の境部をPとした場合、
プランジャ14の前端位置が境部Pを起点とする±L/2の範囲内に変位点Xが設けられるものである。
さらに好ましい形態の変位点Xは、図1(c)に示すように、プランジャ14の前端部が非テーパ部24aとテーパ部24bとの境部Pに設定されるものである。
次に、上記(i)におけるアシストスプリング26の特性を具体的に説明する。
この実施例1のリニアソレノイド2は、上述したように、(α)プランジャ14の前端がテーパ部24b内に位置する範囲内でプランジャ14に作用する磁気吸引力が低下し、(β)プランジャ14の前端が薄肉部19内に位置する範囲内でプランジャ14に作用する磁気吸引力がさらに低下する特性を有する。
そこで、この実施例のアシストスプリング26は、上記(α)、(β)による磁気吸引力の低下を補う特性を有する圧縮コイルバネであり、
(i−1)プランジャ14の前端がテーパ部24bの内側に位置する範囲においてプランジャ14を前方に付勢する付勢力より、
(i−2)プランジャ14の前端が薄肉部19の内側に位置する範囲においてプランジャ14を前方に付勢する付勢力が強く設けられている。
具体的なアシストスプリング26の特性は、プランジャ14の最大リフト時からプランジャ14を後方へ押した場合(アシストスプリング26を圧縮した場合)、プランジャ14の前端が非テーパ部24aとテーパ部24bの境部に達するまでは付勢力が非常に弱く、プランジャ14の前端がテーパ部24bと薄肉部19の境部に達するまでは付勢力が徐々に大きくなり、プランジャ14の後端が底壁17aに近づくに従って付勢力がさらに強まってゆく特性に設けられている。
なお、アシストスプリング26に非線形特性を持たせる手段は、周知の技術を用いるものであり、例えばスプリング線材の径が変化するコイルバネ、巻回径が変化するコイルバネ、巻線ピッチが変化するコイルバネ、複数の特性を備えるコイルバネを軸方向に直列に並べてなるコイルバネ等よりなり、プランジャ14に作用する磁気吸引力の低下を補う特性に設けられるものである。
また、アシストスプリング26の前側は、プランジャ14の後部に後ろ向きに開口形成された凹部の内部に挿入配置されたものであり、アシストスプリング26の両端は、図1(a)に示すように、プランジャ14の全ストローク範囲(コイル13の非通電時〜コイル13の最大通電時におけるプランジャ14の可動範囲)において、プランジャ14と底壁17aとに常時当接するように設けられるものである。
(実施例1の効果)
実施例1のリニアソレノイド2は、上述したように、プランジャ14とヨーク17の底壁17aとの間に、プランジャ14を前方へ付勢するアシストスプリング26を設けるとともに、アシストスプリング26の特性を、図1(c)の破線Bに示すように、磁気吸引力の低下(実線A参照)を補う非線形特性に設けている。
これにより、プランジャ14が磁気吸引部18から離間することで磁気吸引部18とプランジャ14との磁気吸引力が弱まる状態の時(プランジャ14の前端部が、テーパ部24bおよび薄肉部19の内側に位置する時)は、非線形特性を有するアシストスプリング26が強めにプランジャ14を前方へ付勢して、磁気吸引力の低下を補うように作用する。この結果、図1(c)の破線Cに示すように、プランジャ14には、「磁気吸引力+アシストスプリング26の付勢力」よりなる合力が作用することになり、プランジャ14の全ストローク範囲にわたり、プランジャ14の駆動力を一定に保つことができる。
即ち、コイル13の通電量の増加によって、プランジャ14の変位量を略比例的に可変することが可能になり、スプール弁1の制御精度(油圧制御精度)を高めることができる。
また、アシストスプリング26の両端が、プランジャ14の全ストローク範囲においてプランジャ14と底壁17aに常時当接する構成を採用するため、プランジャ14の全ストローク範囲でアシストスプリング26がプランジャ14(あるいは底壁17a)に衝突しない。これにより、プランジャ14およびスプール4にバウンズによる揺動が発生しない。
このように、スプール4の揺動が防がれるため、スプール4が揺動することにより生じる制御油圧の変動が生じず、スプール弁1による高い油圧制御精度を維持することができる。
〔変形例〕
薄肉部19の全周に多数の孔を形成して、薄肉部19における漏れ磁束を抑えるようにしても良い。即ち、薄肉部19にレーザ等で多数の孔を形成したリニアソレノイド2に本発明を適用しても良い。
上記の実施例では、磁気吸引部18の一例としてプランジャ14と軸方向に対向する磁気対向部23を設ける例を示したが、磁気吸引部18の内径にプランジャ14を摺動自在に支持する貫通穴を形成したものであっても良い。
上記の実施例では、磁気吸引部18と磁気受渡部20とが一体に設けられる例を示したが、磁気吸引部18と磁気受渡部20とが別体のものであっても良い。即ち、薄肉部19を有しないリニアソレノイド2に本発明を適用しても良い。
上記の実施例では、プランジャ14を後方へ付勢する付勢力付与手段としてリターンスプリング5を用いる例を示したが、バルブ部の弁体としてボール弁を用いる場合など、流体圧によってプランジャ14が後方へ付勢されるものであっても良い。
上記の実施例では、自動変速機の油圧制御装置に用いられる電磁油圧制御弁に本発明を適用する例を示したが、自動変速機以外の他の電磁油圧制御弁に本発明を適用しても良い。また、電磁油圧制御弁以外の電磁弁に本発明を適用しても良い。
上記の実施例では、バルブ部(実施例ではスプール弁1)を駆動するリニアソレノイド2に本発明を適用する例を示したが、バルブ以外の被駆動体を直接あるいは間接的に駆動するリニアソレノイド2に本発明を適用しても良い。
(a)電磁油圧制御弁の軸方向に沿う断面図、(b)リニアソレノイドの要部断面図、(c)プランジャのストローク量とプランジャに作用する力との関係を示すグラフである(実施例1)。 (a)電磁油圧制御弁の軸方向に沿う断面図、(b)プランジャのストローク量とプランジャに作用する力との関係を示すグラフ、(c)〜(e)リニアソレノイドの要部断面図である(従来例)。
符号の説明
1 スプール弁(バルブ部)
2 リニアソレノイド
5 リターンスプリング(付勢力付与手段)
13 コイル
14 プランジャ
17a ヨークの底壁(固定部材)
18 磁気吸引部
19 薄肉部
20 磁気受渡部
24 筒形凹部
24a 非テーパ部
24b テーパ部
26 アシストスプリング
L テーパ部の軸方向長
P 非テーパ部とテーパ部の軸方向の境部
X 変位点

Claims (4)

  1. 通電により磁力を発生するコイルと、軸方向へ摺動自在に支持されたプランジャと、前記コイルの発生する磁力により前記プランジャを軸方向の一方側へ磁気吸引する磁気吸引部と、前記プランジャの外周に配置されて前記プランジャと径方向の磁気の受け渡しを行う磁気受渡部と、前記プランジャを軸方向の他方側へ付勢する付勢力付与手段とを備えるリニアソレノイドにおいて、
    このリニアソレノイドは、前記プランジャと、このプランジャより軸方向の他方側に設けられた固定部材との間に、前記付勢力付与手段に対抗して前記プランジャを軸方向の一方側へ付勢するアシストスプリングを備え、
    このアシストスプリングは、その両端が、前記プランジャの全ストローク範囲において前記プランジャと前記固定部材とに常時接しており、
    前記磁気吸引部は、前記プランジャが軸方向の一方側へ移動した際に、前記プランジャの先端が内側に侵入する筒型凹部を備え、
    前記筒型凹部は、前記プランジャの先端が摺動するところが、軸方向の一方側において径方向の厚みが一定の非テーパ部と、軸方向の他方側において外周面が軸方向の他方側へ向けて小径となり径方向の厚みがほかの部位より薄い薄肉部へと接続するテーパ部とからなり、
    前記アシストスプリングは、前記プランジャの先端が前記非テーパ部と前記テーパ部との境部より軸方向の他方側に位置する範囲において前記プランジャを軸方向の一方側に強く付勢し、前記プランジャの先端が前記境部より軸方向の一方側に位置する範囲において前記プランジャを軸方向の一方側に弱く付勢する非線形特性を有していることを特徴とするリニアソレノイド。
  2. 請求項1に記載のリニアソレノイドにおいて、
    記テーパ部の軸方向長をL、
    前記非テーパ部と前記テーパ部の軸方向の境部をPとした場合、
    前記アシストスプリングにおける強い付勢力と弱い付勢力の変位点は、
    前記プランジャの変位途中における前記プランジャの先端位置が前記境部Pを起点とする±L/2の範囲内に設けられることを特徴とするリニアソレノイド。
  3. 請求項1または請求項2のいずれかに記載のリニアソレノイドにおいて、
    前記磁気吸引部と前記磁気受渡部は、前記薄肉部を介して一体に設けられることを特徴とするリニアソレノイド。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載のリニアソレノイドにおいて、
    このリニアソレノイドは、流体の流量、または流体の圧力制御を行うバルブ部を駆動することを特徴とするリニアソレノイド。
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