この発明の第1の局面による画像形成装置は、インクシートカートリッジのインクシートを搬送する駆動源を備えた画像形成装置において、駆動源の駆動力をインクシートカートリッジの巻取ボビンに伝達するとともに、インクシートを巻取ボビンに巻き取る巻取リールをさらに備え、巻取リールは、回転軸と同心円状に設けられた複数の片部と、巻取ボビンに係合する巻取ボビン係合部とを有するリール部材と、駆動源からの駆動力が伝達されるギア部を有するとともに内周面がリール部材の片部の外周面側に嵌め合わされる原動側ギア部材と、無負荷状態からコイルの巻き径を縮められることによりリール部材の片部の内周面に圧入され、リール部材の片部を外側方向に押し広げる円環状のコイルバネからなるバネ部材と、リール部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に挟み込まれるように設けられる摩擦部材とを含み、原動側ギア部材とリール部材とは、互いに接触することなく摩擦部材を介して回転軸の半径方向に対向するように配置されるとともに、原動側ギア部材のギア部と、摩擦部材と、リール部材の片部と、バネ部材とが、回転軸の軸方向の所定位置で、回転軸の半径方向から見て互いに重なるように設けられることによって、ギア部と、摩擦部材と、リール部材の片部と、バネ部材とが、バネ部材の押圧力が作用する作用線上に直線状に並んで配置されるように構成され、巻取リールのリール部材の片部の先端部には、原動側ギア部材の一方側への抜けを抑制するための抜止部がリール部材と一体的に設けられ、リール部材の複数の片部間には、原動側ギア部材の他方側への抜けを抑制するための抜止片部がリール部材と一体的に設けられている。
この第1の局面による画像形成装置では、上記のように、巻取リールを、リール部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に配置される摩擦部材を含むように構成することによって、原動側ギア部材の内周面は、摩擦部材を介してリール部材から圧接されているので、原動側ギア部材にスリップトルク以上の駆動トルクが発生した場合は、原動側ギア部材の内周面と摩擦部材との接触状態における静止摩擦力と動摩擦力との差が小さいために、原動側ギア部材はリール部材に対して滑らかに滑り始めることができる。したがって、トルクリミッタ機能が働く際に、駆動中の巻取リールにがたつきが発生することを抑制することができる。また、巻取リールを、リール部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に配置される摩擦部材を含むように構成することによって、原動側ギア部材が摩擦部材により滑らかに滑り始めるために、原動側ギア部材とリール部材とが直接接触した場合の滑り始めに発生するような軋み音を抑制することができる。
また、第1の局面による画像形成装置では、巻取リールを、リール部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に配置される摩擦部材を含むように構成することによって、原動側ギア部材とリール部材とが直接的に接触している場合と異なり、摩擦部材によって原動側ギア部材の内周面が摩擦による磨耗から保護されるために、原動側ギア部材の摩擦部材に対する摩擦係数の経時変化が抑制される。したがって、製造時に設定されたスリップトルクを維持することができるので、巻取リールは巻取ボビンに対して適切なトルク制御を行うことができる。また、原動側ギア部材とリール部材とを、互いに接触することなく摩擦部材を介して対向するように配置するように構成することによって、バネ部材により外側方向に押し広げられたリール部材の片部は、摩擦部材のみを介して原動側ギア部材の内周面を押圧するために、摩擦部材と原動側ギア部材との間での摩擦係数のみによってスリップトルクが決定される。したがって、摩擦部材のみが摩擦に関与しているため、スリップトルクの設定値に製品ごとのばらつきが生じることが抑制されることにより、巻取リールは巻取ボビンに対して、より一層精度よく適切なトルク制御を行うことができる。
また、第1の局面による画像形成装置では、摩擦部材を、原動側ギア部材のギア部に対応する位置に配置するように構成することによって、原動側ギア部材のギア部に発生した駆動トルクが直ちに摩擦部材を介してリール部材に伝達されるために、原動側ギア部材は不要なねじれ変形などを起こさずに駆動源からの駆動力をリール部材に伝えることができる。したがって、巻取リールの駆動源が、所望のスリップトルク以上のトルクを伴うような過負荷状態で使用される状況を回避することができる。
また、第1の局面による画像形成装置では、リール部材の片部の先端部を、原動側ギア部材の一方側への抜けを抑制するための抜止部を一体的に含むように構成することによって、原動側ギア部材が所定の駆動トルク以上で回転し、リール部材の片部の外周面でスリップした場合においても、リール部材の抜止部が原動側ギア部材に当接することによって、原動側ギア部材がリール部材から原動機側ギア部材の一方側に脱落するのを容易に抑制することができる。また、リール部材を、リール部材の複数の片部間に、原動側ギア部材の他方側への抜けを抑制するための抜止片部を一体的に含むように構成することによって、原動側ギア部材が所定の駆動トルク以上で回転し、リール部材の片部の外周面でスリップした場合においても、リール部材の抜止片部が原動側ギア部材に当接することによって、原動側ギア部材がリール部材から原動機側ギア部材の他方側に脱落するのを容易に抑制することができる。また、リール部材を、リール部材の複数の片部間に、バネ部材を保持するための座部を一体的に含むように構成することによって、座部によってバネ部材の他方側への移動が抑制されるので、バネ部材をリール部材の片部の内周面に確実に配置することができる。
また、第1の局面による画像形成装置では、リール部材を、リール部材の片部の先端部の内周側に、バネ部材の一方側への抜けを抑制するための突起部を一体的に含むように構成することによって、リール部材の突起部によって、バネ部材の一方側への移動が抑制されるので、バネ部材がリール部材の片部の内周面から一方側に脱落するのを容易に抑制することができる。また、リール部材の片部は、同心円状に所定の角度間隔で複数配置されているとともに、片部間には、抜止片部および座部が交互に設けられているように構成することによって、リール部材は、同心円状にそれぞれ異なる機能を有する片部、抜止片部および座部を一体的に設けることができるので、リール部材は、原動側ギア部材およびバネ部材を安定して配置することができる。
この発明の第2の局面による画像形成装置は、インクシートカートリッジのインクシートを搬送する駆動源と、駆動源の駆動力をインクシートカートリッジの巻取ボビンに伝達するとともに、インクシートを巻取ボビンに巻き取る巻取リールとを備え、巻取リールは、回転軸と同心円状に設けられた複数の片部と、巻取ボビンに係合する巻取ボビン係合部とを有するリール部材と、駆動源からの駆動力が伝達されるギア部を有するとともに内周面がリール部材の片部の外周面側に嵌め合わされる原動側ギア部材と、リール部材の片部の内周面に配置され、リール部材の片部を外側方向に押し広げるコイルバネからなるバネ部材と、リール部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に挟み込まれるように設けられる摩擦部材とを含み、原動側ギア部材とリール部材とは、互いに接触することなく摩擦部材を介して回転軸の半径方向に対向するように配置され、原動側ギア部材のギア部と、摩擦部材と、リール部材の片部と、バネ部材とが、回転軸の軸方向の所定位置で、回転軸の半径方向から見て互いに重なるように設けられることによって、ギア部と、摩擦部材と、リール部材の片部と、バネ部材とが、バネ部材の押圧力が作用する作用線上に直線状に並んで配置されるように構成されている。
この第2の局面による画像形成装置では、上記のように、巻取リールを、リール部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に配置される摩擦部材を含むように構成することによって、原動側ギア部材の内周面は、摩擦部材を介してリール部材から圧接されているので、原動側ギア部材にスリップトルク以上の駆動トルクが発生した場合は、原動側ギア部材の内周面と摩擦部材との接触状態における静止摩擦力と動摩擦力との差が小さいために、原動側ギア部材はリール部材に対して滑らかに滑り始めることができる。したがって、トルクリミッタ機能が働く際に、駆動中の巻取リールにがたつきが発生することを抑制することができる。また、巻取リールを、リール部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に配置される摩擦部材を含むように構成することによって、原動側ギア部材が摩擦部材により滑らかに滑り始めるために、原動側ギア部材とリール部材とが直接接触した場合の滑り始めに発生するような軋み音を抑制することができる。また、巻取リールを、リール部材の片部の外周面と、原動側ギア部材の内周面との間に配置される摩擦部材を含むように構成することによって、原動側ギア部材とリール部材とが直接的に接触している場合と異なり、摩擦部材によって原動側ギア部材の内周面が摩擦による磨耗から保護されるために、原動側ギア部材の摩擦部材に対する摩擦係数の経時変化が抑制される。したがって、製造時に設定されたスリップトルクを維持することができるので、巻取リールは巻取ボビンに対して適切なトルク制御を行うことができる。また、原動側ギア部材とリール部材とを、互いに接触することなく摩擦部材を介して対向するように配置するように構成することによって、バネ部材により外側方向に押し広げられたリール部材の片部は、摩擦部材のみを介して原動側ギア部材の内周面を押圧するために、摩擦部材と原動側ギア部材との間での摩擦係数のみによってスリップトルクが決定される。したがって、摩擦部材のみが摩擦に関与しているため、スリップトルクの設定値に製品ごとのばらつきが生じることが抑制されることにより、巻取リールは巻取ボビンに対して、より一層精度よく適切なトルク制御を行うことができる。また、摩擦部材を、原動側ギア部材のギア部に対応する位置に配置するように構成することによって、原動側ギア部材のギア部に発生した駆動トルクが直ちに摩擦部材を介してリール部材に伝達されるために、原動側ギア部材は不要なねじれ変形などを起こさずに駆動源からの駆動力をリール部材に伝えることができる。したがって、巻取リールの駆動源が、所望のスリップトルク以上のトルクを伴うような過負荷状態で使用される状況を回避することができる。
上記第2の局面による画像形成装置において、好ましくは、バネ部材は、円環状のコイルバネであり、バネ部材は、無負荷状態からコイルの巻き径を縮められることによりリール部材の片部の内周面に圧入されている。このように構成すれば、コイルバネがリール部材の片部の内周面に圧入された状態からバネ形状を無負荷状態に復元する復元力(弾性エネルギー)を利用して、容易に、リール部材の片部を外側方向に押し広げるための押圧力を得ることができる。
上記第2の局面による画像形成装置において、好ましくは、リール部材の片部の先端部は、原動側ギア部材の一方側への抜けを抑制するための抜止部を一体的に有する。このように構成すれば、原動側ギア部材が所定の駆動トルク以上で回転し、リール部材の片部の外周面でスリップした場合においても、リール部材の抜止部が原動側ギア部材に当接することによって、原動側ギア部材がリール部材から原動機側ギア部材の一方側に脱落するのを容易に抑制することができる。
上記第2の局面による画像形成装置において、好ましくは、リール部材は、リール部材の複数の片部間に設けられ、原動側ギア部材の他方側への抜けを抑制するための抜止片部を一体的に有する。このように構成すれば、原動側ギア部材が所定の駆動トルク以上で回転し、リール部材の片部の外周面でスリップした場合においても、リール部材の抜止片部が原動側ギア部材に当接することによって、原動側ギア部材がリール部材から原動機側ギア部材の他方側に脱落するのを容易に抑制することができる。
上記第2の局面による画像形成装置において、好ましくは、リール部材は、リール部材の複数の片部間に設けられ、バネ部材を保持するための座部を一体的に有する。このように構成すれば、座部によってバネ部材の他方側への移動が抑制されるので、バネ部材をリール部材の片部の内周面に確実に配置することができる。
上記第2の局面による画像形成装置において、好ましくは、リール部材は、リール部材の片部の先端部の内周側に設けられ、バネ部材の一方側への抜けを抑制するための突起部を一体的に有する。このように構成すれば、リール部材の突起部によって、バネ部材の一方側への移動が抑制されるので、バネ部材がリール部材の片部の内周面から一方側に脱落するのを容易に抑制することができる。
上記第2の局面による画像形成装置において、好ましくは、リール部材の片部は、同心円状に所定の角度範囲で複数配置されているとともに、片部間には、抜止片部および座部が交互に配置されている。このように構成すれば、リール部材は、同心円状にそれぞれ異なる機能を有する片部、抜止片部および座部を一体的に設けることができるので、リール部材は、原動側ギア部材およびバネ部材を安定して配置することができる。
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態による昇華型プリンタの全体構成を示した分解斜視図である。図2は、図1に示した一実施形態による昇華型プリンタの構成を示した斜視図である。図3は、図1に示した一実施形態による昇華型プリンタの内部構造を示した断面図である。図4〜図15は、図1に示した一実施形態による昇華型プリンタの詳細構造を示した図である。まず、図1〜図15を参照して、本発明の一実施形態による昇華型プリンタ100の構造について説明する。なお、本実施形態では、画像形成装置の一例である昇華型プリンタに本発明を適用した場合について説明する。
本発明の一実施形態による昇華型プリンタ100の装置本体90は、図1に示すように、金属製のシャーシ1と、印字を行うための印字ヘッド2と、印字ヘッド2に対向するように配置されたプラテンローラ3(図3参照)と、金属製の送りローラ4(図3参照)と、所定の押圧力で送りローラ4を押圧する金属製の押さえローラ5(図3参照)と、送りローラギア6と、樹脂製の下部用紙ガイド7aと、樹脂製の上部用紙ガイド7bと、ゴム製の給紙ローラ8と、給紙ローラギア9と、ゴム製の排紙ローラ10と、排紙ローラギア11と、供給ボビン支持部40(図5参照)と、巻取リール50(図5参照)と、板金製のモータブラケット12と、用紙70を搬送するためのステッピングモータ13と、印字ヘッド2を回動させる際の駆動源となるステッピングモータ14と、揺動可能な揺動ギア15と、複数の中間ギア16〜19(図4参照)と、インクシート61(図3参照)が収納されたインクシートカートリッジ60を支持するカートリッジ支持部20(図3参照)とを備えている。また、装置本体90は、図2に示すように、樹脂製の筐体21の内部に配置されるように構成されている。また、本実施形態による昇華型プリンタ100は、図2に示すように、インクシートカートリッジ60と、装置本体90に供給する用紙70を収納するための給紙カセット80とが装置本体90に着脱可能に装着されている。なお、ステッピングモータ13は、本発明の「駆動源」の一例である。
また、図1に示すように、シャーシ1は、互いに対向するように配置された一方側面1aと、他方側面1bと、一方側面1aと他方側面1bとを連結する底面1cとを有している。また、図7に示すように、シャーシ1の一方側面1aには、後述するインクシートカートリッジ60の供給ボビン62を支持する供給ボビン支持部40が挿入される挿入穴1dと、インクシートカートリッジ60の巻取ボビン63を支持する巻取リール50が回転可能に挿入される挿入穴1eとが、それぞれ、バーリング加工により設けられている。この挿入穴1dおよび1eは、図7に示すように、シャーシ1の一方側面1aの表面から垂直方向にシャーシ1の内側に筒状に突出するように形成されている。また、図1に示すように、シャーシ1の一方側面1aには、上記した板金製のモータブラケット12がネジ部材(図示せず)により取り付けられている。また、図1に示すように、シャーシ1の一方側面1aに対向する他方側面1bには、インクシートカートリッジ60を挿入するためのカートリッジ挿入穴1fが設けられている。また、シャーシ1の底面1cには、図3に示すように、印刷時に用紙70の前端部70aおよび後端部70bを検出するための用紙センサ22aおよび22bが設けられている。
また、印字ヘッド2は、図3および図5に示すように、一対の支持軸2aと、一対のアーム部2bと、ヘッド部2cと、ヘッド部2cに取り付けられる樹脂製のヘッドカバー12d(図3参照)とを含んでいる。また、印字ヘッド2は、図5に示すように、シャーシ1の一方側面1aおよび他方側面1bの内側に、それぞれ支持軸2aを中心として回動可能に取り付けられている。また、印字ヘッド2のヘッド部2cには、図5に示すように、電圧パルスが印加されて発熱する複数の発熱体23が、ヘッド部2cの用紙70(図1参照)の幅方向(X方向)に沿って所定の間隔を隔てて一列に設けられている。また、発熱体23(図5参照)は、印刷時に、1つの発熱体23が1つのドットを形成するように構成されている。
また、2つのプラテンローラ軸受3aは、図5に示すように、それぞれ、シャーシ1の一方側面1aおよび他方側面1bに取り付けられているとともに、その2つのプラテンローラ軸受3aにプラテンローラ3が回動可能に支持されるように構成されている。また、送りローラ4は、図4に示すように、送りローラギア6に挿入される送りローラギア挿入部4aを有している。また、送りローラ4(図3参照)は、シャーシ1に取り付けられた図示しない送りローラ軸受に回動可能に支持されるように構成されている。また、押さえローラ5(図3参照)は、図示しない押さえローラ軸受に回動可能に支持されるように構成されている。また、送りローラ4および押さえローラ5は、図3に示すように、用紙70を間に挟んだ状態で回動することにより、用紙70を給紙方向(矢印T1方向)または排紙方向(矢印U1方向)に搬送する機能を有している。
また、給紙ローラ8は、図1に示すように、ステッピングモータ13によって回転されることにより、昇華型プリンタ100に装着されるとともに給紙カセット80に収納された用紙70を1枚ずつ装置本体90の内部に供給する機能を有している。また、排紙ローラ10は、ステッピングモータ13によって回転されることにより、装置本体90の内部で印刷が行われた印刷済みの用紙70を、装置本体90の外部へ排出する機能を有している。
また、図4および図5に示すように、モータブラケット12に取り付けられたステッピングモータ13の軸部には、樹脂製のモータギア24が取り付けられている。また、ステッピングモータ13は、図4および図5に示すように、後述する巻取リール50の原動側ギア部材52(厳密にはギア部52b)と、給紙ローラギア9と、排紙ローラギア11と、送りローラギア6(図4参照)とを駆動させるための駆動源としての機能を有する。また、ステッピングモータ14は、図5に示すように、印字ヘッド2の上面を押圧する図示しない押圧部材などの駆動源としての機能を有している。これにより、ステッピングモータ14は、図5に示すように、印字ヘッド2を回動させるとともに、印字ヘッド2をプラテンローラ3に対して上方から押圧することが可能に構成されている。
また、巻取リール50は、図6および図7に示すように、後述するインクシートカートリッジ60の巻取ボビン収納部64bの内部に回転可能に配置された巻取ボビン63に係合することによって、ステッピングモータ13(図1参照)の駆動力から所定の引張力(インクシート61の搬送トルク)を発生させるとともに、巻取ボビン63に巻き付けられたインクシート61を巻き取ることが可能に構成されている。
ここで、本実施形態では、巻取リール50は、図8および図9に示すように、樹脂製のリール部材51と、樹脂製の原動側ギア部材52と、金属製のコイルバネ53と、円環状に形成されたフェルト54とから構成されている。なお、コイルバネ53およびフェルト54は、それぞれ、本発明の「バネ部材」および「摩擦部材」の一例である。
また、本実施形態では、図9に示すように、リール部材51は、シャフト部51aと同心円状であるとともに、シャフト部51aの外周側に、巻取リール50の回転軸600(1点鎖線で示す)方向に伸びる複数(本実施形態では8つ)の片部51bが、シャフト部51aと一体的に設けられている。すなわち、リール部材51の片部51bは、円周方向に45度の等角度間隔で8つ設けられている。そして、図9に示すように、リール部材51の外周面51cには、短冊状の1本のフェルト54が円周方向に1回巻き付けられるとともに接着剤(本実施形態では両面テープを使用する)により固定されている。なお、図8に示すように、フェルト54は、端部54aがリール部材51の隣り合う片部51b間に配置されるとともに、フェルト54がリール部材51の4つの片部51bの外周面51c上でいずれも繋がった状態となるように構成されている。
また、本実施形態では、図8および図9に示すように、リール部材51の下方から原動側ギア部材52を矢印P方向(上方向)にスライドさせた場合に、後述する原動側ギア部材52の内周面52aが、リール部材51の片部51bの外周面51cに巻き付けられ固定されているフェルト54と当接することによって、リール部材51に同心円状に嵌め合わされることが可能なように構成されている。また、図9に示すように、コイルバネ53をリール部材51の上方から矢印Q方向(下方向)に巻き径を縮めながら圧入した場合に、コイルバネ53の外側面が、リール部材51の片部51bの内周面51dと当接することによって、リール部材51の片部51bが外側に向かって半径方向に押し広げられるとともに、図10に示すように、リール部材51の片部51bが、予め嵌め合わされた原動側ギア部材52の内周面52aを、フェルト54を介して押圧するように構成されている。
また、本実施形態では、図10に示すように、巻取リール50を組み立てた状態において、フェルト54が原動側ギア部材52の内周面52aに対して当接する位置は、原動側ギア部材52の外周側に設けられた後述するギア部52bと対向する位置となるように構成されている。また、この場合、図10に示すように、コイルバネ53は、リール部材51の片部51bの内周面51dのうち、フェルト54が固定された部分における外周面51cと対向する領域を外側に向かって押圧するように配置されている。したがって、図10に示すように、コイルバネ53、フェルト54およびギア部52bを含む原動側ギア部材52は、コイルバネ53の押圧力が作用する作用線350(1点鎖線で示す)上に半径方向に並んで配置されるように構成されている。
また、本実施形態では、図12および図13に示すように、リール部材51の片部51bの先端部から、片部51bの外周面51c側に向かって水平方向に伸びる抜止部51eが片部51bと一体的に形成されている。この抜止部51eは、図10に示すように、原動側ギア部材52がリール部材51に嵌め合わされた際に、原動側ギア部材52の一方側面52cが抜止部51eに当接することによって、原動側ギア部材52がリール部材51から矢印P方向(上方向)に抜け出ることを抑制する機能を有している。また、図12および図14に示すように、リール部材51の隣接する片部51b(図12参照)と片部51b(図12参照)との間に、回転軸600(図14の1点鎖線で示す)の軸方向から若干外側斜め上方向に向かって伸びる複数(本実施形態では4つ)の抜止片部51fが、リール部材51と一体的に設けられている。すなわち、抜止片部51fは、90度の等角度間隔で同心円状に4つ設けられている。この抜止片部51fは、図11に示すように、原動側ギア部材52がリール部材51に嵌め合わされた際に、原動側ギア部材52の他方側面52dが抜止片部51fに当接することによって、原動側ギア部材52がリール部材51から矢印Q方向(下方向)に抜け落ちることを抑制する機能を有している。なお、図10および図11に示すように、リール部材51の抜止部51e(図10参照)および抜止片部51f(図9参照)によって、原動側ギア部材52は、リール部材51の片部51bの外周面51cにフェルト54を介して嵌め合わされる軸方向(矢印P方向および矢印Q方向)の位置が位置決めされるように構成されている。
また、本実施形態では、図12および図14に示すように、リール部材51の隣接する片部51b(図12参照)と片部51b(図12参照)との間に、回転軸600(図14に1点鎖線で示す)方向に伸びる複数(本実施形態では4つ)の座部51gが、リール部材51と一体的に設けられている。すなわち、座部51gは、90度の等角度間隔で同心円状に4つ設けられている。この座部51gは、図11に示すように、コイルバネ53がリール部材51に圧入された際に、コイルバネ53の一方側面53aが座部51gに当接することによってコイルバネ53を保持するとともに、コイルバネ53は矢印Q方向(下方向)へ移動することを抑制する機能を有している。また、図13に示すように、リール部材51の片部51bの先端部の内周面51d側に突出するように、突起部51hが片部51bと一体的に形成されている。この突起部51hは、図10に示すように、コイルバネ53がリール部材51に圧入された際に、コイルバネ53の他方側面53bが突起部51hに当接することによって、コイルバネ53がリール部材51から矢印P方向(上方向)に抜け出ることを抑制する機能を有している。なお、図10および図11に示すように、リール部材51の座部51g(図11参照)および突起部51h(図10参照)によって、コイルバネ53は、リール部材51の片部51bの内周面51dに圧入された状態が維持されるように構成されている。また、図12に示すように、リール部材51の抜止片部51fおよび座部51gは、隣接する片部51bと片部51bとの間で、それぞれ、抜止片部51fと座部51gとが交互に配置されるように設けられている。
また、本実施形態では、図6に示すように、リール部材51のシャフト部51aの先端部にインクシートカートリッジ60の巻取ボビン63と係合する巻取ボビン係合部51iが、リール部材51と一体的に設けられている。また、図6に示すように、リール部材51のシャフト部51aの巻取ボビン係合部51iとは反対側の端部には、後述するモータブラケット12の軸受部12aに挿入される支持軸51jが、リール部材51と一体的に設けられている。したがって、巻取リール50は、図7に示すように、リール部材51のシャフト部51aの外周面51kが、シャーシ1の一方側面1aの挿入穴1eに回動可能に支持されるとともに、リール部材51のシャフト部51aの支持軸51jが、モータブラケット12の挿入穴12aに回動可能に支持されることにより、巻取ボビン63をインクシート61を巻き取る方向に回転させることが可能に構成されている。
また、本実施形態では、図15に示すように、樹脂製の原動側ギア部材52は、中空形状を有し、リール部材51の外周面51cにフェルト54を介して当接する内周面52aと、外周側に駆動トルクを発生させるギア部52bと、一方側面52cと、他方側面52dとが一体的に設けられている。また、図5に示すように、巻取リール50は、揺動ギア15が揺動することによって原動側ギア部材52のギア部52bに対して噛合することが可能な位置に配置されている。
また、本実施形態では、図10に示すように、巻取リール50の原動側ギア部材52は、コイルバネ53によって予め設定された押圧力でリール部材51の8つの片部51bから圧接されているために、コイルバネ53の押圧力に伴う原動側ギア部材52の内周面52aと、リール部材51の側のフェルト54との摩擦力以上の駆動トルクが原動側ギア部材52に対して発生した場合には、原動側ギア部材52の内周面52aと、リール部材51の側のフェルト54とが滑りを起こすことによって、原動側ギア部材52の駆動トルクが全てリール部材51に伝達されないように構成されている。その一方で、コイルバネ53の押圧力に伴う原動側ギア部材52の内周面52aと、リール部材51の側のフェルト54との摩擦力以下の駆動トルクにより原動側ギア部材52が回転する場合は、原動側ギア部材52の内周面52aとリール部材51のフェルト54とが互いに滑りを起こさずに、原動側ギア部材52の回転をそのままリール部材51に伝達するように構成されている。
また、供給ボビン支持部40は、図7に示すように、樹脂製の支持部材41に、圧縮コイルバネ42と、金属製の押圧板材43とを挿入して、支持部材41の溝部41aに抜止部材(Cリング)44を嵌め込むことによって、押圧板材43が圧縮コイルバネ42に押圧されるとともに、抜止部材44に当接するように構成されている。そして、図7に示すように、供給ボビン支持部40は、シャーシ1の一方側面1aに設けられた挿入穴1dに外側から挿入されるとともに、支持部材41がシャーシ1の一方側面1aに固定されるように構成されている。したがって、供給ボビン支持部40は、インクシートカートリッジ60が装置本体90に装着された際に、支持部材41の先端部41aが供給ボビン62に嵌め込まれるとともに、押圧板材43が供給ボビン62の端面62aに所定の押圧力を付与しながら当接されるように構成されている。
また、モータブラケット12には、図6および図7に示すように、バーリング加工により、軸受部12aが一体的に形成されている。この軸受部12aは、モータブラケット12の表面から垂直方向にモータブラケット12の外側に筒状に突出するように設けられている。
また、図3に示すように、下部用紙ガイド7aは、送りローラ4および押さえローラ5の近傍に設置されている。また、上部用紙ガイド7bは、下部用紙ガイド7aの上部に取り付けられている。この上部用紙ガイド7bは、図3に示すように、給紙時には、用紙70が下面側を通過するようにして印刷部への給紙経路に案内するとともに、排紙時には、用紙70が上面側を通過するようにして排紙経路に案内することが可能なように構成されている。
また、筐体21は、図2に示すように、蓋部材21aおよび21bと、押しボタンスイッチ21cとを含んでいる。また、蓋部材21aおよび21bは、図2に示すように、下端部を中心として筐体21の外部側に回動可能に設けられている。また、筐体21の蓋部材21aは、図2に示すように、給紙カセット80を装置本体90に装着するために開閉可能に設けられている。なお、給紙カセット80が取り外された状態においては、蓋部材21aを閉じることにより、装置本体90の内部に埃などが侵入するのが抑制されるように構成されている。また、筐体21の蓋部材21bは、図2に示すように、インクシートカートリッジ60を装置本体90に装着するために開閉可能に設けられている。なお、インクシートカートリッジ60の着脱時以外は、蓋部材21bを閉じることにより、装置本体90の内部に埃などが侵入するのが抑制されるように構成されている。また、筐体21の押しボタンスイッチ21cは、図2に示すように、ユーザが印刷を開始する際の操作ボタンとして設けられている。
また、図7に示すように、インクシートカートリッジ60は、インクシート61を供給するための供給ボビン62と、供給されたインクシート61を矢印A方向に巻き取るための巻取ボビン63とを備えている。また、インクシートカートリッジ60を構成する樹脂製のカートリッジケース64は、図7に示すように、供給ボビン62を回動可能に収納する供給ボビン収納部64aと、巻取ボビン63を回動可能に収納する巻取ボビン収納部64bと、供給ボビン収納部64aおよび巻取ボビン収納部64bを所定の距離を隔てて連結する一対の連結部64cおよび64dとから構成されている。これにより、図3および図5に示すように、供給ボビン収納部64aおよび巻取ボビン収納部64bに、それぞれ、供給ボビン62および巻取ボビン63が収納されると、供給ボビン62および巻取ボビン63に巻き付けられたインクシート61は、供給ボビン収納部64aと巻取ボビン収納部64bとの所定の距離の間で、外部に露出された状態となる。また、インクシート61は、Y色(イエロー色)インクシート、M色(マゼンダ)インクシートおよびC色(シアン色)インクシートの3色のインクシートが順に繋げられて構成されている。また、インクシート61(図7参照)は、前端部および後端部が、それぞれ、巻取ボビン63(図7参照)および供給ボビン62(図7参照)のボビン軸に固定されている。したがって、インクシート61(図7参照)が全て巻取ボビン63(図7参照)に巻き取られた場合でも、後端部が供給ボビン62(図7参照)側と繋がっているように構成されている。また、図7に示すように、インクシートカートリッジ60の供給ボビン収納部64aおよび巻取ボビン収納部64bの内部には、それぞれ、圧縮コイルバネ65が設けられている。この圧縮コイルバネ65により、図7に示すように、インクシートカートリッジ60は、装置本体90に装着された状態で、インクシートカートリッジ60の取り出し方向(矢印B方向)に常に付勢されている。
図16および図17は、図1に示した本発明の一実施形態による昇華型プリンタの印刷動作を説明するための図である。次に、図1〜図4、図6、図7、図10、図16および図17を参照して、本実施形態による昇華型プリンタ100の印刷動作について説明する。
まず、ユーザが押しボタンスイッチ21c(図2参照)を押圧することによって印刷動作が開始されると、図3に示すように、給紙カセット80(図2参照)内の用紙70が、ステッピングモータ13(図1参照)により印刷開始位置に向かって搬送(給紙)される。具体的には、図4に示すように、ステッピングモータ13が駆動するのに伴って、ステッピングモータ13に取り付けられたモータギア24が矢印C3方向に回転するとともに、中間ギア16および17を介して、送りローラギア6が矢印C1方向に回転する。そして、図4に示すように、送りローラギア6が矢印C1方向に回転するのに伴って、中間ギア18および19を介して、給紙ローラギア9が矢印C4方向に回転する。これにより、図3に示すように、給紙ローラギア9(図4参照)の回転に伴って給紙ローラ8が矢印C4方向に回転するので、給紙ローラ8の下面側に接触する用紙70は給紙方向(矢印T1方向)に搬送される。このとき、図3に示すように、用紙センサ22aにより用紙70の給紙方向の前端部70aが検出されることにより、用紙70の正常な給紙動作が認識される。また、用紙70の給紙方向(矢印T1方向)への搬送に伴い、用紙センサ22b(図3参照)によって用紙70の前端部70a(図3参照)が検知される。その後、用紙センサ22b(図3参照)の上を通過しながら、さらに給紙ローラ8(図4参照)によって搬送される用紙70は、給紙方向(矢印T1方向)に沿って進行するように下部用紙ガイド7a(図3参照)に案内されて、送りローラ4(図3参照)および押さえローラ5(図3参照)により、図16に示したような印刷開始位置まで搬送される。そして、図3に示すように、用紙70が印刷開始位置まで搬送されることにより、用紙センサ22aにより用紙70の給紙方向の後端部70bが検出される。この時、揺動可能な揺動ギア15(図4参照)は、巻取リール50(図4参照)のギア部52b(図4参照)に噛合していないので、巻取リール50(図4参照)のギア部52b(図4参照)は回転されない。これにより、給紙時には、図3に示すように、巻取ボビン63および供給ボビン62に巻き付けられたインクシート61は巻取方向(矢印A方向)に搬送されず、インクシート61は巻取ボビン63に巻き取られない。
その後、図16に示すように、ステッピングモータ14(図4参照)の駆動により図示しない押圧手段を用いて、印字ヘッド2を印刷位置まで下降させる。そして、図16に示すように、用紙70を排紙方向(矢印U1方向)に搬送しながら、印字ヘッド2とプラテンローラ3とにより用紙70とインクシート61とが押圧されるとともに、印字ヘッド2のヘッド部2c設けられた発熱体23が発熱される。この発熱体23が発熱することによって、インクシート61のインクが溶融・昇華されるとともに用紙70に転写されて印画処理(印刷動作)が行われる。
また、この動作では、図4に示すように、ステッピングモータ13が駆動するのに伴って、ステッピングモータ13に取り付けられたモータギア24が矢印D3方向に回動されるとともに、中間ギア16および17を介して、送りローラギア6が、矢印D1方向に回動される。これにより、送りローラ4が図16の矢印D1方向に回転する。さらに、中間ギア18(図4参照)、中間ギア19(図4参照)および給紙ローラギア9(図4参照)を介して、排紙ローラギア11(図4参照)および排紙ローラ10(図16参照)が、矢印D5方向(図16参照)に回転する。これにより、用紙70が印画方向である排紙方向(図16の矢印U1方向)に搬送される。この時、揺動可能な揺動ギア15(図4参照)は、巻取リール50(図4参照)の原動側ギア部材52(図4参照)のギア部52b(図4参照)と噛合する方向(図4の矢印D2方向)に揺動される。そして、揺動ギア15(図4参照)が、巻取リール50(図4参照)のギア部52b(図4参照)に噛合し、原動側ギア部材52(図4参照)を矢印D4方向(図4参照)に回転させる。これにより、図16に示すように、巻取リール50(図6参照)に係合する巻取ボビン63が矢印D4方向に回転されることによって、インクシート61が供給ボビン62側から印字ヘッド2とプラテンローラ3に挟まれた印画部を経て矢印A方向に搬送されるとともに、巻取ボビン63から所定の引張力を受けながら巻取ボビン63に巻き取られる。
ここで、本実施形態では、巻取リール50のリール部材51は、図10に示すように、コイルバネ53によって予め設定された押圧力でフェルト54を介して原動側ギア部材52に向かって圧接されているために、コイルバネ53の押圧力に伴うリール部材51の側のフェルト54と、原動側ギア部材52の内周面52aとの摩擦力以上の駆動トルクが原動側ギア部材52に対して発生した場合には、原動側ギア部材52の内周面52aと、リール部材51の側のフェルト54とが滑りを起こすことによって、原動側ギア部材52の駆動トルクが全てリール部材51に伝達されなくなる。つまり、ステッピングモータ13(図4参照)が所定回転数により原動側ギア部材52(図4参照)を矢印D4方向(図4参照)へ回転させているにも関わらず、リール部材51(図4参照)は、原動側ギア部材52(図4参照)の回転数以下の回転数により回転される。これにより、搬送中のインクシート61(図16参照)は、常に一定の引張力により巻取ボビン63(図16参照)に巻き取られる。
このように、印刷動作では、用紙70が図16のU1方向に搬送されるとともに、インクシート61が巻取ボビン63により巻き取られながら、用紙70にインクシート61(Y色インクシート)のインクが連続して転写されることにより印刷が行われる。また、印刷済みの用紙70の排紙時の動作としては、上記した用紙70の印刷時の搬送動作と同様に、用紙70をさらに図16のU1方向に搬送することにより印刷済みの用紙70が装置本体90の外部に排紙される。
次に、Y色(イエロー色)インクシートの印刷が終了されると、図17に示すように、ステッピングモータ14(図1参照)の駆動により図示しない押圧手段を用いて、印字ヘッド2のヘッド部2cがプラテンローラ3に対して離間された位置に移動される。
そして、図4に示すように、ステッピングモータ13が駆動するのに伴って、ステッピングモータ13に取り付けられたモータギア24が矢印C3方向に回動されるとともに、中間ギア16および17を介して、送りローラギア6が矢印C1方向に回動される。これにより、送りローラ4は、図17に示すように、送りローラギア6(図4参照)の回動に伴って、矢印C1方向に回動されているので、用紙70は給紙方向(矢印T1方向)に再び搬送されるとともに、用紙センサ22aおよび22bによって、用紙70の頭出しが行われる。また、この際、揺動可能な揺動ギア15(図4参照)は、巻取リール50(図4参照)の原動側ギア部材52(図4参照)のギア部52b(図4参照)と離間する方向(図4の矢印C2方向)に揺動される。これにより、揺動ギア15(図4参照)と原動側ギア部材52(図4参照)のギア部52b(図4参照)との噛合が解除されることによって、供給ボビン62に巻き付けられたインクシート61が巻取リール50により巻取ボビン63に巻き取られることなく、用紙70のみが給紙方向(図3の矢印T1方向)に搬送される。
その後、M色(マゼンタ色)インクシートおよびC色(シアン色)インクシートについて、図3、図16および図17に示した上記のY色(イエロー色)インクシートを印刷する際の印刷動作と同様の動作が繰り返し行われる。
なお、図16に示すように、Y色インクシートが用紙70に熱転写された時と同様に、インクシート61のM色インクシートおよびC色インクシートがそれぞれ用紙70に熱転写されながらが矢印A方向に搬送される際も、インクシート61は、巻取リール50(図7参照)の巻取ボビン63によって巻き取られていく。
ここで、本実施形態では、Y色インクシートが用紙70に熱転写された時と同様に、コイルバネ53によって予め設定された押圧力でフェルト54を介して原動側ギア部材52に向かって圧接されているために、コイルバネ53の押圧力に伴うリール部材51の側のフェルト54と、原動側ギア部材52の内周面52aとの摩擦力以上の駆動トルクが原動側ギア部材52に対して発生した場合には、原動側ギア部材52の内周面52aと、リール部材51の側のフェルト54とが滑りを起こすことによって、原動側ギア部材52の駆動トルクが全てリール部材51に伝達されなくなる。つまり、ステッピングモータ13(図4参照)が所定回転数により原動側ギア部材52(図4参照)を矢印D4方向(図4参照)へ回転させているにも関わらず、リール部材51(図4参照)は、原動側ギア部材52(図4参照)の回転数以下の回転数により回転される。これにより、搬送中のインクシート61(図16参照)は、常に一定の引張力により巻取ボビン63(図16参照)に巻き取られる。
そして、全ての色のインクシート61の印刷が終了されると、用紙70が排紙方向(図17の矢印U1方向)に搬送され、装置本体90の外部に排出される。そして、印字ヘッド2のヘッド部2cが、図3に示す状態を経て、プラテンローラ3に対して上方に離間された位置まで回動され、用紙70への印刷動作が終了される。
また、本実施形態では、上記印刷動作を繰り返すことによりインクシート61(図7参照)が全て巻取ボビン63(図7参照)に巻き取られ、供給ボビン62(図7参照)側がこれ以上回転できなくなった場合においても、巻取リール50(図7参照)のトルクリミッタ機能によって、巻取ボビン63(図7参照)が巻取方向(図6の矢印D2方向)に無理に回転することが抑制される。このため、インクシート頭出しセンサ(図示せず)によって次の印刷のためのインクシート印刷開始位置(Y色インクシート)を検出できなくなるので、インクシートカートリッジ60(図1参照)の交換がユーザに知らされる。
本実施形態では、上記のように、巻取リール50を、リール部材51の片部51bの外周面51cと、原動側ギア部材52の内周面52aとの間に配置されるフェルト54を含むように構成することによって、原動側ギア部材52の内周面52aは、フェルト54を介してリール部材51から圧接されているので、原動側ギア部材52にスリップトルク以上の駆動トルクが発生した場合は、原動側ギア部材52の内周面52aとフェルト54との接触状態における静止摩擦力と動摩擦力との差が小さいために、原動側ギア部材52はリール部材51に対して滑らかに滑り始めることができる。したがって、トルクリミッタ機能が働く際に、駆動中の巻取リール50にがたつきが発生することを抑制することができる。また、巻取リール50を、リール部材51の片部51bの外周面51cと、原動側ギア部材52の内周面52aとの間に配置されるフェルト54を含むように構成することによって、原動側ギア部材52がフェルト54により滑らかに滑り始めるために、原動側ギア部材52とリール部材51とが直接接触した場合の滑り始めに発生するような軋み音を抑制することができる。
また、本実施形態では、巻取リール50を、リール部材51の片部51bの外周面51cと、原動側ギア部材52の内周面52aとの間に配置されるフェルト54を含むように構成することによって、原動側ギア部材52とリール部材51とが直接的に接触している場合と異なり、フェルト54によって原動側ギア部材52の内周面52aが摩擦による磨耗から保護されるために、原動側ギア部材52のフェルト54に対する摩擦係数の経時変化が抑制される。したがって、製造時に設定されたスリップトルクを維持することができるので、巻取リール50は巻取ボビン63に対して適切なトルク制御を行うことができる。また、原動側ギア部材52とリール部材51とを、互いに接触することなくフェルト54を介して対向するように配置するように構成することによって、コイルバネ53により外側方向に押し広げられたリール部材51の片部51bは、フェルト54のみを介して原動側ギア部材52の内周面52aを押圧するために、フェルト54と原動側ギア部材52との間での摩擦係数のみによってスリップトルクが決定される。したがって、フェルト54のみが摩擦に関与しているため、スリップトルクの設定値に製品ごとのばらつきが生じることが抑制されることにより、巻取リール50は巻取ボビン63に対してより一層精度よく適切にトルク制御を行うことができる。
また、本実施形態では、フェルト54を、原動側ギア部材52のギア部52bに対応する位置に配置するように構成することによって、原動側ギア部材52のギア部52bに発生した駆動トルクが直ちにフェルト54を介してリール部材51に伝達されるために、原動側ギア部材52は不要なねじれ変形などを起こさずにステッピングモータ13からの駆動力をリール部材51に伝えることができる。したがって、巻取リール50を駆動源するステッピングモータ13が、所望のスリップトルク以上のトルクを伴うような過負荷状態で使用される状況を回避することができる。
また、本実施形態では、巻取リール50のコイルバネ53を、原動側ギア部材52のギア部52bおよびフェルト54が配置される領域に対応するリール部材51の片部51bの内周面51dの位置で、かつ、原動側ギア部材52のギア部52bによる駆動力が、フェルト54を介して片部51bに伝達される作用線350(図10の1点鎖線)上に、コイルバネ53による押圧力が作用する位置に配置するように構成することによって、コイルバネ53によるリール部材51の片部51bの外側方向への押圧力を、フェルト54を介して原動側ギア部材52の内周面52aに最も強く作用させることができるので、コイルバネ53の復元力(弾性エネルギー)を効率よく利用することができる。
また、本実施形態では、バネ部材を、円環状のコイルバネ53とするとともに、コイルバネ53を、無負荷状態からコイルの巻き径を縮められることによりリール部材51の片部51bの内周面51dに圧入するように構成することによって、コイルバネ53がリール部材51の片部51bの内周面51dに圧入された状態からバネ形状を無負荷状態に復元する復元力(弾性エネルギー)を利用して、容易に、リール部材51の片部51bを外側方向に押し広げるための押圧力を得ることができる。
また、本実施形態では、リール部材51の片部51bの先端部を、原動側ギア部材52の矢印P方向(図9参照)への抜けを抑制するための抜止部51eを一体的に含むように構成することによって、原動側ギア部材52が所定の駆動トルク以上で回転し、リール部材51の片部51bの外周面51cでスリップした場合においても、リール部材51の抜止部51eが原動側ギア部材52の一方側面52cに当接することによって、原動側ギア部材52がリール部材51から矢印P方向(図10参照)に脱落するのを容易に抑制することができる。
また、本実施形態では、リール部材51を、リール部材51の複数の片部51b間に、原動側ギア部材52の矢印Q方向(図9参照)への抜けを抑制するための抜止片部51fを一体的に含むように構成することによって、原動側ギア部材52が所定の駆動トルク以上で回転し、リール部材51の片部51bの外周面51cでスリップした場合においても、リール部材51の抜止片部51fが原動側ギア部材52の他方側面52dに当接することによって、原動側ギア部材52がリール部材51から矢印Q方向(図11参照)に脱落するのを容易に抑制することができる。
また、本実施形態では、リール部材51を、リール部材51の複数の片部51b間に、コイルバネ53を保持するための座部51gを一体的に含むように構成することによって、座部51gによってコイルバネ53の矢印Q方向(図11参照)への移動が抑制されるので、コイルバネ53をリール部材51の片部51bの内周面51dに確実に配置することができる。
また、本実施形態では、リール部材51を、リール部材51の片部51bの先端部の内周面51d側に、コイルバネ53の矢印P方向(図9参照)への抜けを抑制するための突起部51hを一体的に含むように構成することによって、リール部材51の突起部51hによって、コイルバネ53の矢印P方向(図10参照)への移動が抑制されるので、コイルバネ53がリール部材51の片部51bの内周面51dから矢印P方向(図10参照)に脱落するのを容易に抑制することができる。
また、本実施形態では、リール部材51の片部51bを、同心円状に45度の等間隔で8つ配置されているとともに、片部51b間に、抜止片部51fおよび座部51gが交互に(それぞれ4つずつ)設けられているように構成することによって、リール部材51は、同心円状にそれぞれ異なる機能を有する片部51b、抜止片部51fおよび座部51gを一体的に設けることができるので、リール部材51は、原動側ギア部材52およびコイルバネ53を安定して配置することができる。
また、本実施形態では、上記の効果に加えて、リール部材51に、片部51b、抜止部51e、抜止片部51f、座部51gおよび突起部51hを、リール部材51と一体的に設けるように構成することによって、原動側ギア部材52およびコイルバネ53をリール部材51に対して順に嵌め込む作業工程のみにより、原動側ギア部材52およびコイルバネ53の組み込みと位置決めとが行われるので、容易に、巻取リール50を組み立てることができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、画像形成装置の一例としての昇華型プリンタに本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、インクシートカートリッジのインクシートを搬送する駆動源を備えた画像形成装置であれば、昇華型プリンタ以外の他の画像形成装置にも適用可能である。
また、上記実施形態では、巻取リール50において、リール部材51の片部51bの外周面51cにフェルト54を摩擦部材として両面テープにより取り付けた例を示したが、本発明はこれに限らず、フェルト以外のたとえば短繊維配合ゴムなどを、両面テープおよび両面テープ以外のたとえば接着剤などによってリール部材51の片部51bの外周面51cに取り付けるように構成してもよい。
また、上記実施形態では、巻取リール50において、リール部材51の片部51bの内周面51dにコイルバネ53をバネ部材として圧入した例を示したが、本発明はこれに限らず、コイルバネ以外のたとえば金属製の平板を丸めることより環状に形成されたバネ部材を、リール部材51の片部51bの内周面51dに圧入するようにして構成してもよい。
また、上記実施形態では、リール部材51の片部51bを45度の等角度間隔で8つ設けた例を示したが、本発明はこれに限らず、リール部材51の片部51bを等角度間隔で設けなくてもよく、また、8つ以外でもよい。
また、上記実施形態では、リール部材51の抜止片部51f、座部51gおよび突起部51hをそれぞれ等角度間隔で4つ設けた例を示したが、本発明はこれに限らず、抜止片部51f、座部51gおよび突起部51hをそれぞれ等角度間隔で設けなくてもよく、また、4つ以外でもよい。
また、上記実施形態では、巻取リール50を構成するリール部材51および原動側ギア部材52をともに樹脂製とした例を示したが、本発明はこれに限らず、樹脂製以外のたとえば金属製の部材によって巻取リールを構成するようにしてもよい。