(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図10を参照して説明する。
図1に示すように、車両には、内燃機関として筒内噴射式のガソリンエンジン(以下、単にエンジンという)11が搭載されている。エンジン11の各気筒(シリンダ)12にはピストン13が往復動可能に収容されている。
気筒12毎の燃焼室14には、スロットルバルブ15、サージタンク16、吸気マニホルド17等を有する吸気通路18が接続されている。エンジン11の外部の空気は、吸気通路18の各部を順に通過して燃焼室14に吸入される。スロットルバルブ15は吸気通路18に回動可能に設けられており、電動モータ等からなるスロットル用のアクチュエータ19によって駆動される。アクチュエータ19は、運転者によるアクセルペダル21の踏込み操作等に応じて作動し、スロットルバルブ15を回動させる。吸気通路18を流れる空気の量(吸入空気量)は、スロットルバルブ15の回動角度(スロットル開度)や後述する吸気バルブ25の作用角等に応じて変化する。
また、燃焼室14には、その燃焼室14で発生した燃焼ガスをエンジン11の外部へ排出するための排気通路24が接続されている。
エンジン11には、吸気通路18の各気筒12における開口部を開閉する吸気バルブ25と、排気通路24の各気筒12における開口部を開閉する排気バルブ26とが設けられている。これらの吸・排気バルブ25,26はバルブスプリング27によって、上記開口部を閉じる方向(閉弁方向)である略上方へ常に付勢されている。
吸気バルブ25の略上方には吸気カムシャフト28が設けられ、また排気バルブ26の略上方には排気カムシャフト29が設けられている。これらの吸・排気カムシャフト28,29には、エンジン11の出力軸であるクランクシャフト31の回転が伝達される。この伝達により吸・排気カムシャフト28,29が回転し、バルブスプリング27に抗して吸・排気バルブ25,26を押下げる。この押下げにより、吸・排気通路18,24の気筒12における各開口部が開放される。
エンジン11には、電磁式の燃料噴射弁32が気筒12毎に取付けられている。各燃料噴射弁32は通電により開弁し、対応する燃焼室14に高圧燃料を噴射供給する。燃料噴射弁32から噴射された燃料は、燃焼室14内に吸入された空気と混ざり合って混合気となる。
エンジン11には、点火プラグ33が気筒12毎に取付けられている。各点火プラグ33は、イグナイタ34からの点火信号に基づいて作動する。点火プラグ33には、点火コイル35から出力される高電圧が印加される。そして、前記混合気は点火プラグ33の火花放電によって着火され、燃焼する。このときに生じた高温高圧の燃焼ガスによりピストン13が往復動される。ピストン13の往復運動は、コネクティングロッド36によって回転運動に変換された後、クランクシャフト31に伝達される。この伝達によりクランクシャフト31が回転されて、エンジン11の駆動力(出力トルク)が得られる。燃焼によって生じたガス(排気)は、排気バルブ26の開弁にともない排気通路24に排出される。
エンジン11には、クランクシャフト31に対する吸気カムシャフト28の相対回転位相を変化させることにより、その吸気バルブ25のバルブタイミングをクランク角(クランクシャフト31の回転角)に対して変更するためのバルブタイミング可変機構37が設けられている。
吸気バルブ25のバルブタイミングは、例えば、図2に示すように開弁時期IVO及び閉弁時期IVCで表すことができる。このバルブタイミングは、吸気バルブ25の開弁期間(開弁時期IVOから閉弁時期IVCまでの期間)が一定に保持された状態で進角又は遅角させられる。なお、図2中のEVO,EVCは排気バルブ26の開弁時期及び閉弁時期である。
また、図1に示すように、エンジン11には、バルブ特性可変機構として作用角可変機構38が設けられている。作用角可変機構38は、吸気バルブ25の作用角をバルブ特性として可変とする機構である。
ここで、作用角は、図3に示すように、吸気カムシャフト28の回転(図3ではクランク角で表現)について、吸気バルブ25の開弁期間(開弁時期IVOから閉弁時期IVCまでの角度範囲)である。本実施形態では、作用角可変機構38により、吸気バルブ25の最大リフト量もまたバルブ特性として連続的に変更される。最大リフト量は、吸気バルブ25が最も下方まで移動(リフト)したときの移動量である。これらの作用角及び最大リフト量は、作用角可変機構38によって互いに同期して変化させられ、例えば、作用角が小さくなるほど最大リフト量も小さくなる。作用角が小さくなるに従い、吸気バルブ25の開弁時期IVOと閉弁時期IVCとが互いに近寄って開弁期間が短くなり、各気筒12に吸入される空気の量が少なくなる。
図1に示すように、作用角可変機構38による作用角の調整は、1本のシャフト(コントロールシャフト41)を軸方向へ移動させることにより行われる。コントロールシャフト41は紙面と直交する方向に延びるように配置されているが、ここでは説明の便宜上、コントロールシャフト41の一部が紙面の左右方向に延びるように向きを変えて図示されている。コントロールシャフト41には、これを軸方向へ移動させるための電動アクチュエータ42が連結されている。
図4は電動アクチュエータ42の内部構造を示している。同図4に示すように、電動アクチュエータ42は、電動モータ43と、その電動モータ43の回転を直線運動に変換し、出力軸からコントロールシャフト41に伝達する回転−直線運動変換機構48とを備えている。
電動モータ43は、コイル44を有し、かつ電動アクチュエータ42のハウジング47に固定されたステータ45と、永久磁石を有するロータ46とを備えたブラシレスモータとして構成されている。
図5は、図4の電動アクチュエータ42における回転−直線運動変換機構48のみを拡大して示している。図4及び図5に示すように、回転−直線運動変換機構48は、両端が開放され、かつ上記コントロールシャフト41の軸線Lに沿って延びる円筒状のローラナット51を備えている。ローラナット51は、転がり軸受52によりハウジング47に対し回転可能に、かつ軸方向へ変位不能に支持されている。ローラナット51の両開放端にはカラー53,54が装着されている。また、ローラナット51の外周面には上記電動モータ43のロータ46が固定されている。
ローラナット51の内周面であって、軸方向における中間部分には、雌ねじ55が形成され、その雌ねじ55の軸線Lに沿う方向についての両側にはリングギヤ56,57がそれぞれ圧入されている。各リングギヤ56,57の内周面には、軸線Lに平行な歯すじを有する内歯58が形成されている。
回転−直線運動変換機構48は、その出力軸としてねじ軸59を備えている。ねじ軸59は、コントロールシャフト41と同一直線上に配置されており、その一部(図5の右側部)がローラナット51内に挿入されている。ねじ軸59は、滑り軸受61により両カラー53,54に軸方向へ変位可能に、かつ軸線Lの周りに回転不能に支持されている。ねじ軸59の外周面の一部には雄ねじ62が形成されている。また、ねじ軸59上における雄ねじ62の近傍にはギヤ63が一体回転可能に取付けられている。このギヤ63は、軸線Lに平行な歯すじを有する平歯車によって構成されている。ねじ軸59の一部はハウジング47を貫通し、上記コントロールシャフト41に連結されている。
ねじ軸59及びローラナット51間には、軸線Lに平行に延びる複数本の遊星ねじローラ64が等角度毎に配置されている。各遊星ねじローラ64は、上記雌ねじ55に対応して軸方向についての中間部分に位置するねじ部65と、そのねじ部65の軸方向両側に位置する一対のギヤ部66,67とを備えて構成されている。
ねじ部65の外周面には、上述したローラナット51の雌ねじ55及びねじ軸59の雄ねじ62に螺合し得る雄ねじ68が形成されている。また、一方(図5の左方)のギヤ部66の外周面には平歯からなり、かつリングギヤ56の内歯58に噛み合い得る外歯69が形成されている。外歯69における歯すじは、軸線Lに平行に形成されている。さらに、外歯69には、上記ローラナット51の雌ねじ55に螺合し得る雄ねじ71が形成されている。従って、ギヤ部66では、雄ねじ71のねじ山が、自身の軸線の周りに均等に形成された平歯(外歯69)の歯溝によって分断された形態をなしている。
また、他方(図5の右方)のギヤ部67の外周面には平歯からなり、かつリングギヤ57の内歯58、及びねじ軸59のギヤ63に噛み合い得る外歯72が形成されている。外歯72における歯すじは、軸線Lに平行に形成されている。この外歯72には、前述したギヤ部66におけるような雄ねじ71は形成されていない。
なお、本実施形態の回転−直線運動変換機構48では、ねじ軸59における雄ねじ62と各遊星ねじローラ64の雄ねじ68とが互いに逆方向のねじれ角を有している。これは、逆効率(直線運動を回転運動に変換する効率)を「0」又はそれに近い値にして、ねじ軸59の直線運動がローラナット51の回転運動に変換されるのを効果的に阻止するためである。
上記の構成を有する電動アクチュエータ42では、各遊星ねじローラ64が、その雄ねじ68においてローラナット51の雌ねじ55に螺合されている。そのため、電動モータ43のステータ45への通電により、ロータ46及びローラナット51が例えば軸線Lを中心として時計回り方向へ回転されると、その回転が雌ねじ55及び雄ねじ68の螺合部分を通じて各遊星ねじローラ64に伝達される。この伝達により、各遊星ねじローラ64はそれぞれ自身の軸線を中心として時計回り方向へ自転しつつ、軸線Lの周りを時計回り方向へ公転する。一方、軸線L上に配置されたねじ軸59は、こうした複数の遊星ねじローラ64の雄ねじ68に螺合している。このねじ軸59は、軸線Lの周りを回転不能であるが、軸方向へは変位可能である。そのため、各遊星ねじローラ64の上記自転及び公転によりねじ軸59が軸方向へ変位する。この際のねじ軸59の変位量は、ローラナット51の回転角度に応じて異なる。
ここで、上記のようにローラナット51の回転を各遊星ねじローラ64に伝達する際、同ローラナット51の雌ねじ55と各遊星ねじローラ64の雄ねじ68との螺合部分で滑りが発生すると、ローラナット51の回転に対応する角度分、遊星ねじローラ64が回転しないおそれがある。対応する角度とは、滑りがないとした場合に本来回転すべき角度のことである。しかし、各遊星ねじローラ64が、その両端部の外歯69,72において、リングギヤ56,57の内歯58に噛み合っている。このことから、リングギヤ56,57がローラナット51と一体で回転した場合、上記噛み合い部分を通じて、リングギヤ56,57と各遊星ねじローラ64との間で回転の伝達が行われる。そのため、こうした噛み合いのない場合とは異なり、各遊星ねじローラ64のローラナット51に対する滑りの発生が抑制されたうえで、ローラナット51の回転が遊星ねじローラ64に確実に伝達されて、その遊星ねじローラ64が、ローラナット51の回転角度に対応した角度に近い角度回転する。これに伴い、ねじ軸59がローラナット51の回転角度に対応した量に近い量移動する。
なお、上記電動アクチュエータ42において、ねじ軸59の変位方向は、電動モータ43におけるロータ46の回転方向を切替えることにより変更可能である。
そして、上記電動アクチュエータ42におけるねじ軸59の軸方向の変位に伴いコントロールシャフト41が軸方向へ変位することで作用角可変機構38が駆動され、吸気バルブ25の作用角が連続的に変化させられる。コントロールシャフト41が例えば図1の左方向へ移動すると、作用角が小さくなって1気筒当りの吸入空気量が少なくなる。これとは逆に、コントロールシャフト41が図1の右方向へ移動すると、作用角が大きくなって1気筒当りの吸入空気量が多くなる。
このように、スロットル開度の調整に加え、吸気バルブ25の作用角を変更することによっても吸入空気量を調整可能であることから、同一の吸入空気量を様々なスロットル開度及び作用角の組合わせで実現することが可能である。例えば、吸気バルブ25の作用角を大きくするときにはスロットル開度を相対的に小さくし、逆に作用角を小さくするときにはスロットル開度を相対的に大きくすることで気筒12への吸入空気量を一定に保持することが可能である。
吸入空気量の調整に際し、作用角を小さくすることにより吸入空気量を減少させる場合には、スロットルバルブ15を絞ってスロットル開度のみを小さくすることで吸入空気量を減少させる場合と比較して、ポンピングロスを小さくすることができる。そのため、エンジン11の出力ロスを抑えることが可能となり、燃費を向上させることができる。
ところで、車両には、図1に示すように、各種電気機器の電源としてバッテリ75が搭載されている。各種電気機器には、後述するエンジンECU91や作用角可変ECU92も含まれている。バッテリ75から各種電気機器への電力の供給・停止は、運転者によるイグニション(IG)スイッチ76のスイッチ操作に応じて行われる。イグニションスイッチ76は、各種電気機器への電力の供給に際しオン操作され、電力の供給停止に際しオフ操作される。
また、エンジン11にはバッテリ75の充電を行う手段としてオルタネータ(図示略)が取付けられている。オルタネータの回転軸は、エンジン11のクランクシャフト31に対し、プーリ、伝動ベルト等を介して駆動連結されている。そして、クランクシャフト31の回転がプーリ、伝動ベルト等を通じてオルタネータの回転軸に伝達される。この回転伝達により、回転軸が、発電を行う最小回転速度を上回る回転速度で回転すると、オルタネータは発電を行う。発電による電力はバッテリ75に供給されて充電される。
さらに、車両には、各部の状態を検出するセンサが種々取付けられている。これらのセンサとしては、例えばクランク角センサ81、カム角センサ82、作用角センサ、エアフロメータ83、スロットルセンサ84、アクセルセンサ85等が用いられている。
クランク角センサ81は、クランクシャフト31が一定角度回転する毎にパルス状の信号を発生する。この信号は、クランクシャフト31の回転角度であるクランク角や、単位時間当りのクランクシャフト31の回転数であるエンジン回転速度の算出等に用いられる。カム角センサ82は、吸気カムシャフト28の回転角度(カム角)を検出し、作用角センサは、吸気バルブ25の作用角の現状値、換言すれば作用角可変機構38の動作位置を検出する。エアフロメータ83は、吸気通路18を流れる空気の量(吸入空気量)を検出し、スロットルセンサ84はスロットル開度を検出し、アクセルセンサ85は運転者によるアクセルペダル21の踏込み量を検出する。
ここで、本実施形態では上記各種センサのうち特に作用角センサとして、電動モータ43の相対的な移動量(ロータ46の回転角)を検出する一対の相対位置センサ86,87が用いられている。一方の相対位置センサ86はエンコーダによって構成されており、図6(A)に示すように、電動モータ43のロータ46が一定角度回転する毎にパルス状の回転角信号SG1を出力する。また、他方の相対位置センサ87もまたエンコーダによって構成されており、図6(B)に示すように、電動モータ43のロータ46の回転に伴い、上記回転角信号SG2に対し所定角度回転位相をずらして回転角信号SG2を出力する。これらの回転角信号SG1,SG2は、ロータ46の回転角の算出に用いられる。
図1に示すように車両には、前記各種センサ81〜87の検出信号等に基づいて各部の作動を制御する電子制御装置として、エンジンECU(ECU:Electronic Control Unit )91及び作用角可変ECU92が設けられている。エンジンECU91は、主としてエンジン11の作動等を制御する。作用角可変ECU92は、電動アクチュエータ42に対する電力の供給及び遮断を制御するとともに、電動モータ43に対する通電制御を通じて作用角可変機構38の作動を直接制御する。両ECU91,92は制御手段を構成するものであり、相互通信可能に接続されている。
エンジンECU91は、メインリレー93を介して、またイグニションスイッチ76を介してバッテリ75に接続されている。メインリレー93は接点94と、この接点を開閉制御するための励磁コイル95とを備えている。
エンジンECU91はマイクロコンピュータを中心として構成されている。エンジンECU91では、中央処理装置(CPU)が、読出し専用メモリ(ROM)に記憶されている制御プログラム、初期データ、制御マップ等に従って演算処理を行い、その演算結果に基づいて各種制御を実行する。CPUによる演算結果は、ランダムアクセスメモリ(RAM)において一時的に記憶される。さらにエンジンECU91は、同ECU91に対する電力供給が停止された後にも各種データを記憶保持するバックアップRAMを備えている。
エンジンECU91は、前記各種制御として、例えばイグニションスイッチ76の操作に応じてメインリレー93を制御することにより、エンジンECU91を含む各種電気機器への電力供給を制御する。具体的には、イグニションスイッチ76がオンされると、メインリレー93の励磁コイル95を励磁する。この励磁により接点94が閉成(メインリレー93がオン)され、エンジンECU91を含む各種電気機器に対しバッテリ75から電力が供給される。一方、イグニションスイッチ76がオフされると、所定の条件(メインリレーオフ条件)が満たされた後に励磁コイル95を消磁する。
メインリレーオフ条件とは、エンジン11の停止後も所定状態とするために電力を必要とする各種電気機器について、それらの全てを所定状態にすることである。この所定状態の中には、吸気バルブ25のバルブタイミング及び作用角がともに次回のエンジン始動時に適したバルブタイミング及び作用角であることが含まれる。イグニションスイッチ76がオフ操作されたときに吸気バルブ25のバルブタイミング及び作用角が上記所定状態にないと、この所定状態とするために、前記メインリレー93のオンにより、イグニションスイッチ76のオフ操作後もしばらくの期間はエンジンECU91及び作用角可変ECU92を含む各種電気機器に電力を供給する。
上記所定の条件(メインリレーオフ条件)が満たされて励磁コイル95を消磁すると、接点94が開成(メインリレー93がオフ)され、バッテリ75からエンジンECU91及び作用角可変ECU92を含む各種電気機器への電力供給が遮断される。このように、エンジンECU91は、メインリレー93の制御を行うことにより、バッテリ75から同エンジンECU91及び作用角可変ECU92に電力を供給及び遮断する手段として機能する。
また、エンジンECU91は、燃料噴射弁32に対する通電を制御することで、同燃料噴射弁32からの燃料噴射を制御する。この燃料噴射制御では、エンジン回転速度及びエンジン負荷といったエンジン11の運転状況に基づき、混合気の空燃比を所定の値とするための燃料の噴射量を基本噴射量(基本噴射時間)として算出する。エンジン負荷は、例えばエンジン11の吸入空気量、又はそれに関係するパラメータ(例えば、スロットル開度、アクセル踏込み量等)に基づき求められる。こうして求めた基本噴射量を、各センサからの信号に基づき補正し、その補正後の噴射量に対応する時間、燃料噴射弁32に通電する。この通電により燃料噴射弁32が開弁して、上記補正後の噴射量の燃料が噴射される。
また、エンジンECU91は、バルブタイミング可変機構37を制御することで、吸気バルブ25のバルブタイミングを制御する。このバルブタイミング制御では、エンジン11の運転状態、例えばエンジン回転速度、エンジン負荷等に基づき、吸気バルブ25のバルブタイミングについての制御目標である目標バルブタイミングを算出する。そして、クランク角センサ81及びカム角センサ82の検出結果に基づき把握される吸気バルブ25の実際のバルブタイミングが、上記目標バルブタイミングとなるように、バルブタイミング可変機構37を制御する。この制御により、吸気バルブ25が、エンジン11の運転状態に適したバルブタイミングにて開閉される。
なお、エンジンECU91は、上記バルブタイミング可変機構37の制御の一態様として停止遅延制御を行う。停止遅延制御は、上述したように、吸気バルブ25のバルブタイミングを次回のエンジン始動時に適したバルブタイミングにするための制御である。この停止遅延制御は、エンジン停止のためにイグニションスイッチ76がオフ操作されることを条件に開始され、予め定められた所定の条件が成立したとき、例えば開始から所定時間が経過したときに終了する。
さらに、上述したように、スロットル開度の調整に加え、吸気バルブ25の作用角の調整によっても気筒12への吸入空気量の調整が可能であることから、エンジンECU91は、作用角及びスロットル開度を協調制御することで、気筒12への実際の吸入空気量を、エンジン11の運転状態に応じた吸入空気量(目標吸入空気量)にする。
この制御に際しては、エンジン11の運転状態、例えばアクセル踏込み量、エンジン回転速度等に基づき目標吸入空気量を算出し、この目標吸入空気量を実現するための制御目標として、目標スロットル開度と、目標バルブ特性としての目標作用角θtとをそれぞれ算出する。そして、目標スロットル開度を指令値としてスロットル用のアクチュエータ19に対する通電を制御する。また、エンジンECU91は目標作用角θtを指令値として作用角可変ECU92に送信する。
一方、作用角可変ECU92は、上記エンジンECU91と同様にCPU、ROM、RAM及びバックアップRAMを備えている。作用角可変ECU92には、上記電動アクチュエータ42の電動モータ43及び両相対位置センサ86,87が接続されている。
作用角可変ECU92は、電動アクチュエータ42に対する電力の供給・遮断に際し、イグニションスイッチ76のオン操作に伴うメインリレー93のオンと同期して電動アクチュエータ42への電力供給を開始する。この電力供給を遮断するタイミングについては後述する。
作用角可変ECU92は電動モータ43の制御に際し、まず上述した相対位置センサ86,87から出力される回転角信号SG1,SG2(図6(A),(B)参照)を計数することで、電源投入後に電動モータ43のロータ46が回転した角度(相対回転角)を相対移動量として求める。すなわち、電源投入時を「0」として、そこからどれだけの角度回転したかを求める。具体的には、カウンタ(図6(C)参照)を用いて次のようにして相対回転角を算出する。
このカウンタは、図7に示すように、両回転角信号SG1,SG2のいずれかが、「L」から「H」に立上がるとき(「↑」にて表記)、又は「H」から「L」に立下がるとき(「↓」にて表記)にカウント動作する。このカウント動作には、カウントアップ(「+」にて表記)と、カウントダウン(「−」にて表記)とがある。
ここで、カウンタがカウント動作する場合としては、図7に示す(1)〜(8)の8通りがあり、カウンタはこれらのうち下記の(1),(4),(6),(7)の場合にカウントアップする。
(1)回転角信号SG1が「H」のときに回転角信号SG2が立上がった場合
(4)回転角信号SG1が「L」のときに回転角信号SG2が立下がった場合
(6)回転角信号SG2が「H」のときに回転角信号SG1が立下がった場合
(7)回転角信号SG2が「L」のときに回転角信号SG1が立上がった場合
また、カウンタは下記の(2),(3),(5),(8)の場合にカウントダウンする。
(2)回転角信号SG1が「H」のときに回転角信号SG2が立下がった場合
(3)回転角信号SG1が「L」のときに回転角信号SG2が立上がった場合
(5)回転角信号SG2が「H」のときに回転角信号SG1が立上がった場合
(8)回転角信号SG2が「L」のときに回転角信号SG1が立下がった場合
上記のようにしてカウントアップ又はカウントダウンした後のカウンタの値(回転角信号SG1,SG2の計数値)と、回転角信号SG1(SG2)が出力されてから次の回転角信号SG1(SG2)が出力されるまでに電動モータ43が回転する角度とに基づき、電動モータ43の相対回転角を求める。
しかし、上記のようにして求めた相対回転角だけでは、電動モータ43が可動範囲のどの位置(絶対位置、この場合には絶対回転角)にあるのか判らない。そのため、電動モータ43の基準位置(基準回転角)を次のようにして設定する。エンジン11が停止する毎に、次回のエンジン始動に備え、そのエンジン停止時点の電動モータ43の絶対回転角を絶対位置記憶手段としてのバックアップRAMに記憶する。エンジン11が始動する毎に、前回のエンジン停止時に記憶した絶対回転角をバックアップRAMから読出し、この絶対回転角を上記基準回転角として設定する。
そして、上記のようにして設定した電動モータ43の基準回転角(基準位置)と相対回転角(相対移動量)とに基づき、基準回転角からどれだけ回転した角度であるかを求め、この角度を絶対回転角(絶対位置)とする。
さらに、この絶対回転角に対応する吸気バルブ25の絶対作用角が、前述したエンジンECU91から受信した目標作用角θtとなるように電動モータ43に対する通電時間をデューティ比Dにて制御(デューティ制御)する。デューティ比Dは、通電(ON)及び非通電(OFF)からなる1サイクル(時間)における通電時間の割合である。
このデューティ制御を行うことで、電動モータ43のロータ46が回転し、回転−直線運動変換機構48及び作用角可変機構38が作動し、吸気バルブ25がエンジン11の運転状態に適した作用角にて開閉される。さらに、作用角可変ECU92は上記両相対位置センサ86,87の検出値から求めた絶対作用角(実作用角θr)を実バルブ特性としてエンジンECU91に送信する。
なお、エンジンECU91及び作用角可変ECU92は、上記作用角可変機構38の制御の一態様として停止遅延制御を行う。停止遅延制御は、上述したように、吸気バルブ25の作用角を次回のエンジン始動時に適した作用角にするための制御である。この停止遅延制御は、エンジン11の停止のためにイグニションスイッチ76がオフ操作されることを条件に開始され、予め定められた所定の条件が成立したとき、例えば開始から所定時間が経過したときに終了する。
ところで、バッテリ電圧が低下し、電動モータ43の通電制御等を司る作用角可変ECU92の予め定められたリセット電圧を下回ると、作用角可変ECU92がリセットされる。この場合、基準回転角の設定時(エンジン始動時)からリセット直前までの期間にカウンタによってカウントされた値がクリアされてしまい、電動モータ43の相対回転角が不明となる。その結果、電動モータ43の絶対回転角、ひいては吸気バルブ25の絶対作用角(実作用角θr)を正確に把握することが困難となる。
上記バッテリ電圧がリセット電圧を下回る現象は、例えば次のような状況下で起こり得る。エンジン11の停止時にはエンジン回転速度が低下するところ、このエンジン回転速度がオルタネータが発電を行う最小回転速度よりも低くなった場合にはオルタネータによる発電が行われない。この場合には、バッテリ75のみから各種電気機器へ電力が供給されることとなり、バッテリ電圧が低下して作用角可変ECU92のリセット電圧を下回るおそれがある。こうした状況下で電動アクチュエータ42に不要に電力が供給されると、その電力消費によりバッテリ電圧がさらに低下し、上記リセット電圧を下回りやすくなる。
従って、こうした不具合を抑制するうえでは作用角可変ECU92のリセットを起こりにくくすることが重要である。しかし、仮に、電動アクチュエータ42への電力供給がメインリレー93がオフされるまで継続されるものとすると、実作用角θrが目標作用角θtに追従しているにも拘わらず、同電動アクチュエータ42に電力が不要に供給され続ける期間が生じ得る。そして、この期間における不要な電力消費によりバッテリ電圧が低下して作用角可変ECU92がリセットされ、電動アクチュエータ42における電動モータ43の相対回転角が不明となるおそれがある。
そこで、本実施形態では、上記の不具合に対処すべく、イグニションスイッチ76のオフ操作後、変動しない、又はほとんど変動しなくなった目標作用角θtに実作用角θrが追従することを、電動アクチュエータ42への電力供給を遮断する条件として設定している。
次に、前記のように構成された第1実施形態の作用について説明する。
図8のフローチャートは、エンジンECU91によって行われる各処理のうち、エンジン11の停止時に行われる停止制御ルーチンを示している。また、図9のフローチャートは、作用角可変ECU92によって行われる各処理のうち、エンジン停止時に電動アクチュエータ42に対する電力供給・遮断を制御するための停止時電源制御ルーチンを示している。
図8の停止制御ルーチンでは、エンジンECU91はまずステップ110において、エンジン11の停止のために、運転者によってイグニションスイッチ76がオンからオフに切替え操作されたかどうかを判定する。この判定条件が満たされていないと停止制御ルーチンを終了する。これに対し、ステップ110の判定条件が満たされていると、ステップ120において、電動アクチュエータ42への電力供給を遮断(電源をオフ)してもよい旨を示す電源オフ指令許可信号を受信したかどうかを判定する。この判定条件が満たされていない(信号受信無し)と、同ステップ120の処理を繰返し、満たされている(信号受信有り)と、ステップ130において、電動アクチュエータ42への電力供給を遮断する旨の指令である電源オフ指令信号を、作用角可変ECU92に送信する。そして、続くステップ140において、上述したメインリレーオフ条件が成立しているかどうかを判定する。同条件が満たされてないと、同ステップ140の処理を繰り返し、満たされているとステップ150において励磁コイル95を消磁する。この消磁により、接点94が開成(メインリレー93がオフ)され、バッテリ75からエンジンECU91及び作用角可変ECU92を含む各種電気機器への電力供給が遮断される。そして、ステップ150の処理を経た後に停止制御ルーチンを終了する。
次に、図9の作用角可変ECU92による停止時電源制御ルーチンの各処理について説明する。
作用角可変ECU92はまずステップ210において、上述した停止遅延制御が終了しているかどうかを判定する。また、続くステップ220において、目標作用角θtの変化度合いΔθtが所定値αよりも小さいかどうかを判定する。これらのステップ210,220の処理は、目標作用角θtが変動していない、又はほとんど変動していないことを確認するためのものである。変動していれば、実作用角θrを目標作用角θtに追従させるために電動アクチュエータ42に対する通電制御が必要である。目標作用角θtの変動中に電動アクチュエータ42への電力供給が遮断されると支障が出る。そのため、少なくともステップ210,220の判定条件が満たされない限り、電動アクチュエータ42への電力供給を遮断しないようにしている。
ここで、目標作用角θtの変化度合いΔθtとしては、停止時電源制御ルーチンについての前回制御周期から今回制御周期までの目標作用角θtの変化量を用いることができる。例えば、前回制御周期での目標作用角をθt(i-1) とし、今回制御周期での目標作用角をθt(i) とすると、両者の偏差の絶対値(| θt(i-1) −θt(i) | )を変化度合いΔθtとすることができる。所定値αとしては「0」又はそれに近い値が用いられる。そして、ステップ210,220の判定条件がともに満たされている場合にのみステップ230へ移行する。
ステップ230では、実作用角θrの目標作用角θtに対する乖離度合いΔθが所定の判定値βよりも小さいかどうかを判定する。この処理は、イグニションスイッチ76のオフ操作後に、作用角可変機構38により実作用角θrが目標作用角θtに追従しているかどうかを判定するためのものである。そのために、例えば目標作用角θtと実作用角θrとの偏差の絶対値(| θt−θr |)を求め、これを乖離度合いΔθとする。判定値βとしては、例えば実作用角θrが目標作用角θtに追従しているときに、両者(θr,θt)の偏差について採り得る値に基づき設定した値(例えば平均値等)を用いることができる。ステップ230の判定条件が満たされていれば、実作用角θrが目標作用角θtに追従しており、実作用角θrを変化させるためにそれ以上作用角可変機構38を作動させる必要がなく、電動アクチュエータ42への電力供給を遮断しても支障がないといえる。
上記ステップ230の判定条件が満たされていると、ステップ240において、電源オフ指令許可信号をエンジンECU91に送信する。次に、ステップ250においてエンジンECU91から電源オフ指令信号を受信したかどうかを判定する。この判定条件が満たされていると、ステップ260において、電動アクチュエータ42への電力供給を遮断し、その後に停止時電源制御ルーチンを終了する。
なお、上述したステップ210,220,230,250の判定条件の1つでも満たされていないと、そのまま停止時電源制御ルーチンを終了する。従って、これらの場合には、イグニションスイッチ76のオフ操作後であっても電動アクチュエータ42へ電力が供給される。
上述した図8の停止制御ルーチン及び図9の停止時電源制御ルーチンによると、電動アクチュエータ42に対する電力供給の状況(電力供給の有無)等は、例えば図10に示すように変化する。
タイミングt1でイグニションスイッチ76がオンからオフに切替え操作されると、その切替え操作に応じて停止遅延制御が行われる。停止遅延制御の後にエンジン回転速度が低下し始める。そして、目標作用角θtの変化度合いΔθtが所定値αよりも小さな値(「0」を含む)になり、しかもその目標作用角θtに対する実作用角θrの乖離度合いΔθが判定値βよりも小さくなったタイミングt2で電動アクチュエータ42に対する電力供給が遮断される。その後、メインリレーオフ条件が成立したタイミングt3でメインリレー93がオフされる。
従って、タイミングt2〜t3の期間には、電動アクチュエータ42に対する電力供給が行われないこととなる。表現を変えると、実作用角θrが目標作用角θtに追従しているにも拘わらず別の条件(ここではメインリレー93がオフされること)が成立するまでの期間(t2〜t3の期間)にわたり電力が供給され続ける場合に比べ、不要な電力の供給期間が短くなる。
この短縮の対象となった期間における不要な電力消費がなくなり、その電力消費に伴いバッテリ電圧が低下して作用角可変ECU92のリセット電圧を下回る現象が起こりにくくなる。
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(A)イグニションスイッチ76のオンからオフへの切替え操作後に、目標作用角θtの変化度合いΔθtが所定値αよりも小さく、かつ同目標作用角θtに対する実作用角θrの乖離度合いΔθが判定値βよりも小さいことを条件に、電動アクチュエータ42への電力供給を遮断するようにしている。そのため、メインリレー93がオフされる前であっても上記条件が満たされれば、電動アクチュエータ42への電力供給が遮断されることとなり、電力供給期間が短くなる。
上記条件が満たされてからメインリレー93がオフされるまでの期間(t2〜t3)には電動アクチュエータ42への電力供給が不要であるところ、この期間については同電動アクチュエータ42への電力供給を遮断している。そのため、メインリレー93がオフされることを条件に電動アクチュエータ42への電力供給を遮断する場合に比べ、上記の期間における電力供給遮断の分、電力消費を少なくすることができる。
(B)上記(A)に関連するが、短縮の対象となった期間(t2〜t3)における不要な電力消費がなくなる。そのため、上記期間に上記電力消費が原因でバッテリ電圧が低下して作用角可変ECU92のリセット電圧を下回る現象が起こりにくくなる。その結果、作用角可変ECU92がリセットされて、電動アクチュエータ42における電動モータ43の相対回転角に関する情報が消失して実作用角θrが不明となる不具合の発生を抑制することができる。
(C)回転−直線運動変換機構48として、ねじ軸59、複数の遊星ねじローラ64及びローラナット51を備えるものを用いている。そして、ねじ軸59の雄ねじ62のねじれ角と遊星ねじローラ64の雄ねじ68のねじれ角との関係が互いに逆方向となるように設定している。こうした設定をすることにより、回転−直線運動変換機構48の逆効率、すなわちねじ軸59の直線運動をローラナット51の回転運動に変換する効率を非常に小さな値(「0%」又はそれに近い値)にすることができる。そのため、電動アクチュエータ42への通電停止中に作用角可変機構38側から回転−直線運動変換機構48に力が加わって、一旦目標作用角θtに追従した実作用角θrが、その目標作用角θtから乖離するのを抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について図11及び図12を参照して説明する。
第1実施形態では、実作用角θrが目標作用角θtに追従することを前提として電動アクチュエータ42への電力供給を遮断した。しかし、仮に実作用角θrが目標作用角θtに追従せず、乖離度合いΔθが判定値β以上である状態が続いた場合には、図9のステップ230の判定条件が満たされず、電動アクチュエータ42に電力が供給され続ける。例えば、実作用角θrが目標作用角θtに追従する(乖離度合いΔθが判定値β未満になる)前にエンジン11の回転が停止した場合にこうした現象が起こり得る。この場合、作用角可変ECU92は、乖離している実作用角θrを目標作用角θtに追従させるべく、電動アクチュエータ42の電動モータ43に多くの電流を通電しようとする。実作用角θrが目標作用角θtに追従しないと、電動モータ43に採り得る最大の電流が通電される。そして、この状況が継続すると電動アクチュエータ42の通電に伴う発熱量が増大し、電動アクチュエータ42が過熱するおそれがある。
そこで、第2実施形態では、上述した「変化度合いΔθtが所定値αよりも小さく、かつ乖離度合いΔθが判定値βよりも小さい」という条件とは別に、「エンジン11の回転停止から所定時間Tが経過している」という条件を、電動アクチュエータ42への電力供給を遮断する条件として設定している。
そのために、第1実施形態での図9に対応する図11の停止時電源制御ルーチンでは、ステップ230の判定条件が満たされない場合に、ステップ235の処理を行うようにしている。
詳しくは、ステップ230の判定条件が満たされていないと、ステップ235において、エンジン回転速度が「0」となってから所定時間Tが経過したかどうかを判定する。ここで、所定時間Tとしては、採り得る最大の電流が電動モータ43に対し流され続けた場合に、その電動モータ43が過熱する時間(平均的な値)よりも小さな値が設定されている。また、エンジン回転速度が「0」になったときを基準とし、ここから所定時間Tが経過しているかどうかを判定するのは、次の理由による。この状況下では、作用角可変機構38のコントロールシャフト41をバルブスプリング27に抗して軸方向へ変位させるのに大きな力が必要となり、実作用角θrを目標作用角θtに追従させることが難しくなる。目標作用角θtに対する実作用角θrの乖離度合いΔθが判定値β以上となるのは、こうした状況のもとで起こるものと考えられるからである。
そして、上記ステップ235の判定条件が満たされていないと停止時電源制御ルーチンを終了する。これに対し、ステップ235の判定条件が満たされていると、上述したステップ240へ移行する。なお、ステップ235以外のステップにおける処理については第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
図8の停止制御ルーチン、及び上述した図11の停止時電源制御ルーチンによると、電動アクチュエータ42に対する電力供給・遮断等は、例えば図12に示すように変化する。
タイミングt1でイグニションスイッチ76がオンからオフに切替え操作されると、その切替え操作に応じて停止遅延制御が行われる。停止遅延制御の後にエンジン回転速度が低下し始める。そして、目標作用角θtの変化度合いΔθtが所定値αよりも小さな値(「0」を含む)になるものの、その目標作用角θtに対する実作用角θrの乖離度合いΔθが判定値β以上である状況が続くと、エンジン回転速度が「0」になったタイミングt1aから所定時間Tが経過したタイミングt2aで電動アクチュエータ42への電力供給が遮断される。その後、メインリレーオフ条件が成立したタイミングt3でメインリレー93がオフされる。
従って、タイミングt2a〜t3の期間には、電動アクチュエータ42への電力供給が行われないこととなる。表現を変えると、メインリレー93がオフされるまでの期間(t2a〜t3の期間)にわたり電力が供給され続ける場合に比べ、不要な電力の供給期間が短くなる。
この短縮の対象となった期間における不要な電力消費がなくなり、その電力消費に伴いバッテリ電圧が低下して作用角可変ECU92のリセット電圧を下回る現象が起こりにくくなる。
また、実作用角θrの目標作用角θtに対する乖離度合いΔθが判定値β以上である状況が続いても、エンジン11の回転が停止した時点(タイミングt1a)から所定時間Tが経過すると(タイミングt2a)、電動アクチュエータ42への電力供給が遮断される。そのため、乖離している実作用角θrを目標作用角θtに追従させるべく、電動アクチュエータ42に採り得る最大の電流が通電されて電動アクチュエータ42が過熱する現象が抑制される。
従って、第2実施形態によれば、上述した第1実施形態での(A)〜(C)に加え次の効果が得られる。
(D)「エンジン11の停止から所定時間Tが経過している」という条件を、電動アクチュエータ42への電力供給を遮断する条件として別途設定している。そのため、実作用角θrが目標作用角θtに追従しない状況が継続して発生しても、電動アクチュエータ42が過熱するのを確実に抑制することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について図13及び図14を参照して説明する。
第1実施形態では説明を割愛したが、イグニションスイッチ76がオン操作されてからオフ操作されるまでの期間、すなわち電動アクチュエータ42及び作用角可変ECU92へ電力が供給されている期間には、電動アクチュエータ42の状態についての診断(以下、異常診断という)が、診断手段としての作用角可変ECU92によって行われる。第3実施形態では、この期間に加え、イグニションスイッチ76のオフ操作後であっても電動アクチュエータ42へ電力が供給されている期間にも、電動アクチュエータ42の異常診断を行うようにしている。すなわち、イグニションスイッチ76がオンからオフに切替え操作された時点から電動アクチュエータ42への電力供給が遮断されるまでの期間を、異常診断を行う期間として加えている。
そのために、第1実施形態での図9に対応する図13の停止時電源制御ルーチンでは、ステップ210,220,230,250における判定条件のいずれか1つでも満たされない場合に、ステップ265の処理を行うようにしている。ステップ265では、電動アクチュエータ42に異常が発生していないかどうかを診断する。例えば、電動アクチュエータ42に対し採り得る最大の電流が所定の時間にわたり継続して通電されているかどうかを判定する。この判定条件が満たされていると、この状況がさらに続いた場合には電動アクチュエータ42が過熱するおそれがある旨の診断を行う。なお、この診断結果は、次回のエンジン始動時において、警告灯の点灯、点滅等の態様によって運転者に報知される。
また、第3実施形態では、ステップ250の処理とステップ260の処理との間にステップ255の処理を加えている。そして、ステップ250の判定条件が満たされていると、ステップ255において、上述したステップ265での異常診断を停止する。
このように、第3実施形態では、エンジンECU91から電源オフ指令信号を受信するまでは電動アクチュエータ42の異常診断を実行し、受信するとその異常診断を停止する。そして、この異常診断を経た後にステップ260において電動アクチュエータ42への電力供給を遮断する。
なお、ステップ210〜250,260の各処理の内容については第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
図8の停止制御ルーチン、及び上述した図13の停止時電源制御ルーチンによると、電動アクチュエータ42の異常診断が例えば図14に示すように実行・停止される。
イグニションスイッチ76がオンされている期間(タイミングt1以前の期間)には異常診断が行われる。これに加え、イグニションスイッチ76がオンからオフに切替え操作されるタイミングt1から電源オフ指令信号を受信して電動アクチュエータ42への電力供給が遮断(電源オフ)されるタイミングt2までの期間にも、異常診断が行われる。タイミングt2以降については異常診断が停止される。
従って、第3実施形態によれば、上述した第1実施形態での(A)〜(C)に加え次の効果が得られる。
(E)イグニションスイッチ76のオフ操作後に電動アクチュエータ42及び作用角可変ECU92に電力が供給されて電動アクチュエータ42が制御されている期間についても電動アクチュエータ42の異常診断(ステップ265)を行う期間としている。そのため、例えば実作用角θrが目標作用角θtに追従し、電動アクチュエータ42に適正な量の電流が通電されている場合には、正常である旨の診断をすることができる。これに対し、実作用角θrが目標作用角θtに追従しない状況が継続して発生して、電動アクチュエータ42に電力が供給され続け、実作用角θrを目標作用角θtに追従させるべく電動アクチュエータ42に過剰に電流が流された場合には、イグニションスイッチ76のオフ操作後であっても、異常である旨の診断をすることができる。そして、電動アクチュエータ42の異常を運転者等に報知することができる。その結果、運転者等は電動アクチュエータ42の異常に早期に対処することが可能となる。
本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・第2実施形態についても電動アクチュエータ42の異常診断を行うようにしてもよい。この場合、診断期間は、「イグニションスイッチ76がオン操作されてからオフ操作されるまでの期間」に加え、「イグニションスイッチ76のオフ操作後、電動アクチュエータ42及び作用角可変ECU92へ電力が供給されている期間」にする。後者の期間は、イグニションスイッチ76がオフ操作されてから、「変化度合いΔθtが所定値αよりも小さく、かつ乖離度合いΔθが判定値βよりも小さい」という条件と、「エンジン11の回転停止から所定時間Tが経過している」という条件のいずれか一方が満たされるまでの期間とする。
・電動アクチュエータ42の基準位置(電動モータ43の基準回転角)を上記各実施形態とは異なる態様で設定するようにしてもよい。
・相対位置センサは、電動アクチュエータ42から機関バルブ(吸気バルブ25)に至る動力伝達経路において、可動部材の相対移動量を検出するものであればよい。従って、各実施形態で用いたような電動モータ43のロータ46の回転角度を検出するもの以外にも、例えばコントロールシャフト41の軸方向についての相対移動量を検出するものであってもよい。
・バルブ特性可変機構は、吸気バルブ25の作用角及び最大リフト量のいずれか一方のみをバルブ特性として変更するものであってもよい。
・本発明は、吸気バルブ25に加えて、排気バルブ26のバルブ特性(作用角及び最大リフト量の少なくとも一方)を変更するようにした内燃機関にも適用可能である。
・作用角可変機構として、前記実施形態で用いたものとは異なるタイプを用いてもよい。例えば、吸気カムシャフトの吸気カムを軸方向にプロフィールが変化する三次元カムとし、この吸気カムシャフトを電動アクチュエータで軸方向に変位させることにより、作用角をエンジン運転状況に応じて変化させるようにしたものを、作用角可変機構として用いてもよい。要は、吸気バルブ25のバルブ特性をエンジン運転状況に応じて可変制御できるものであればよい。
11…ガソリンエンジン(内燃機関)、25…吸気バルブ(機関バルブ)、26…排気バルブ(機関バルブ)、38…作用角可変機構(バルブ特性可変機構)、42…電動アクチュエータ、43…電動モータ、48…回転−直線運動変換機構、51…ローラナット、59…ねじ軸、62,68…雄ねじ、64…遊星ねじローラ、86,87…相対位置センサ、91…エンジンECU(制御手段)、92…作用角可変ECU(制御手段、絶対位置記憶手段、診断手段)、α…所定値、β…判定値、T…所定時間、θr…実作用角(実バルブ特性)、θt…目標作用角(目標バルブ特性)、Δθ…乖離度合い、Δθt…変化度合い。