JP4524029B2 - 黒色顔料組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、経時的な増粘やゲル化の起こらない黒色顔料組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、黒色顔料組成物は、通常、着色剤としてアニリンブラックを含むと共に、糊剤としてカルボキシメチルセルロースやデキストリン等の水溶性高分子物質と、溶媒又は分散媒としての水とを含み、その他、必要に応じて、グリセリンのような湿潤剤やシリカ等の体質顔料を含む組成物である。
【0003】
このようなアニリンブラックを着色剤とする黒色顔料組成物は、従来、経時的に増粘し、ゲル化(硬化)する傾向がある。特に、糊剤として、上述したようなカルボキシメチルセルロースやデキストリン等の半合成水溶性高分子物質を用いたときに、この傾向が著しい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであって、経時的な増粘やゲル化が起こらず、経時安定性にすぐれる黒色顔料組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、アニリンブラックを塩基性化合物にて処理して、pHが5.5〜11.0の範囲にあるアニリンブラック組成物を得、これを溶剤としての水と糊剤としての分子中にカルボキシル基を有する水溶性高分子物質と共に混合することを特徴とする黒色顔料組成物の製造方法が提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明による黒色顔料組成物の製造方法においては、アニリンブラックを塩基性化合物にて処理して、そのpHを5.5以上、好ましくは、6.0〜11.0の範囲としたアニリンブラック組成物が黒色着色剤として用いられる。
【0007】
上記塩基性物質としては、無機化合物及び有機化合物のいずれでもよく、無機化合物としては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属が好ましく用いられ、他方、有機化合物としては、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のトリアルカノールアミンが好ましく用いられる。
【0008】
アニリンブラック組成物のpHが5.5よりも小さいときは、そのようなアニリンブラック組成物を用いてなる黒色顔料組成物の経時的な増粘やゲル化を十分に防止することができず、他方、pHが11.0を越えるときは、得られる黒色顔料組成物の発色が赤味を帯びるので好ましくない。
【0009】
アニリンブラックを着色剤として用いてなる黒色顔料組成物が経時的に増粘し、ゲル化するのは、アニリンブラックの製造に際して用いられる銅塩に関連するものとみられる。即ち、従来、アニリンブラックは、アニリンや塩酸アニリンを硫酸銅、硝酸銅、塩化銅のような銅塩を触媒としてアニリンを酸化し、縮合させることによって製造されている。
【0010】
従って、一般に、アニリンブラックは、通常、4.6以下のpHを有すると共に、1%程度の銅イオンを含んでおり、この銅イオンが黒色顔料組成物の水溶性高分子物質、特に、分子中にカルボキシル基を有する水溶性高分子物質(例えば、カルボキシメチルセルロースやデキストリン等)のカルボキシル基を架橋させて、増粘させ、遂には、黒色顔料組成物をゲル化させるものとみられる。
【0011】
このように、アニリンブラックは、通常、4.6以下のpHを有する粉末として入手することができ、ここに、本発明において用いるアニリンブラック剤組成物は、このような酸性のアニリンブラックを水酸化アルカリ金属のような塩基性物質にて処理して、そのpHが5.5以上とされているので、銅イオンは上記水酸化アルカリ金属に由来する水酸化物イオンによって、水酸化物としてアニリンブラック組成物中に固定されている。
【0012】
その結果として、このようなアニリンブラック組成物を黒色着色剤として用いてなる黒色顔料組成物においては、上述したように、アニリンブラックに由来する銅イオンがカルボキシル基を有する水溶性高分子物質のカルボキシル基を架橋させることはなく、かくして、経時的な増粘やゲル化が起こらないものとみられる。同様に、塩基性物質としてトリアルカノールアミンを用いる場合も、水と作用して水酸化物イオンを生成するので、銅イオンは水酸化物としてアニリンブラック組成物中に固定される。
【0013】
このように、本発明において用いるアニリンブラック組成物は、原料のアニリンブラックが4.6以下のpHを有する酸性のものであっても、これをアルカリ処理して、そのpHを5.5以上、好ましくは、6.0〜11.0の範囲としたものであり、従って、このようなアニリンブラック組成物を用いて得られる黒色顔料組成物は、経時的な増粘やゲル化を起こさないのである。
【0014】
本発明による黒色顔料組成物の製造方法は、述したようなアニリンブラック組成物を溶剤としての水と糊剤としての水溶性高分子物質と共に混合することによって、黒色顔料組成物を得るものである。
【0015】
本発明において、黒色顔料組成物におけるアニリンブラック組成物の配合割合は、アニリンブラックとして、通常、3〜50重量%の範囲であり、好ましくは、5〜40重量%の範囲である。アニリンブラックの配合割合が余りに高いときは、得られる顔料組成物の粘度が高すぎるので、例えば、絵具組成物として用いる場合、描画に際して、筆さばきが悪くなったり、チューブ容器から絵具を出し難い。また、顔料濃度が高すぎるので、混色して用い辛い。しかし、配合割合が余りに低いときは、所要の濃度を得ることができず、また、発色も悪い。本発明による黒色顔料組成物の製造方法においては、必要に応じて、アニリンブラックと共に、他の着色剤を併用してもよい。
【0016】
本発明による黒色顔料組成物の製造方法においては、糊剤として、水溶性高分子物質が用いられる。水溶性高分子物質は、従来、顔料組成物において、糊剤として知られているものであれば、天然品、半合成品、合成品のいずれも用いられる。従って、このような水溶性高分子物質の具体例として、例えば、アラビアガム、アルキル化デンプン、デキストリン、カルボキシメチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、ペクチン等を挙げることができる。このような水溶性高分子物質は、本発明による方法において、通常、5〜50重量%、好ましくは、10〜45重量%の範囲で配合される。
【0017】
水溶性高分子物質の配合割合が余りに多いときは、得られる黒色顔料組成物の粘度が高くなりすぎるほか、発色が透明調になる。他方、その配合割合が余りに少ないときは、得られる黒色顔料組成物において、アニリンブラックの分散性が悪く、また、顔料の定着性も悪くなる。
【0018】
本発明によれば、特に、糊剤として、分子中にカルボキシル基を有する水溶性高分子物質、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アルキル化デンプン等を用いるときに、得られる黒色顔料組成物において起こりやすい経時的な増粘やゲル化を有効に防止することができる。
【0019】
本発明において、水は、黒色顔料組成物における溶媒又は分散媒として働くものであって、顔料組成物において、通常、20〜60重量%、好ましくは、25〜45重量%の範囲で用いられる。
【0020】
この溶媒又は分散媒としての水の割合が余りに多いときは、得られる顔料組成物の粘度が過度に低くなって、アニリンブラックが分離する等、保存性に劣るようになり、他方、水の配合割合が余りに少ないときは、上記水溶性高分子物質が十分に溶解しなかったり、得られる顔料組成物の粘度が高くなりすぎる。
【0021】
本発明による黒色顔料組成物の製造方法においては、必要に応じて、アニリンブラックと共に、ケイ酸アルミニウム、シリカ、ベントナイト、硫酸バリウム等の体質顔料が顔料組成物のpHを考慮して適宜に用いられる。体質顔料は、通常、40重量%以下、好ましくは、20重量%以下の範囲で用いられる。
【0022】
本発明によって得られる黒色顔料組成物は、必要に応じて、湿潤剤、防腐・防かび剤、防錆剤、増粘剤、脱泡・消泡剤、界面活性剤等を適宜、有していてもよい。
【0023】
湿潤剤は、顔料組成物の乾燥性を最適に調節するほか、凍結防止や再溶解性向上剤等として用いられるものであり、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコールやグリコール類が好ましく用いられる。
【0024】
このような湿潤剤は、顔料組成物において、好ましくは、3〜20重量%、特に、6〜12重量%の範囲で用いられる。湿潤剤の配合割合が余りに多いときは、得られる顔料組成物の塗膜が乾燥し難く、使い勝手が悪い。しかし、湿潤剤の配合割合が余りに少ないときは、得られる顔料組成物の塗膜が乾燥した後、ひび割れを起こしやすい。
【0025】
本発明の方法によれば、前述したように、アニリンブラックを予め塩基性化合物で処理して、そのpHを5.5以上、好ましくは、6.0〜11.0の範囲としたアニリンブラック着色剤を調製し、これを溶剤としての水と糊剤としての水溶性高分子物質と共に混合し、更に、必要に応じて、湿潤剤やその他の成分を混合することによって、黒色顔料組成物を得ることができる。好ましくは、上記混合物を更にロール練りして、黒色顔料組成物を得る。
【0026】
本発明によって得られる黒色顔料組成物は、黒色の絵具組成物、インキ組成物、ポスターカラー等に好適に用いることができる。
【0027】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0028】
実施例1
下記成分のメジウムを調製した。メジウムとは、糊剤と湿潤剤を水に溶解させたものをいう。
【0029】
(メジウム)
カルボキシメチルセルロース 4.0重量%
デキストリン 30.0重量%
アルキル化デンプン 6.0重量%
グリセリン 11.0重量%
助剤 1.5重量%
水 47.5重量%
【0030】
次に、市販のアニリンブラック(pH4.6)粉末を水に分散させてスラリーとし、これに水酸化ナトリウム水溶液を加え、攪拌して、そのpHを種々の値に調整した後、濾過、乾燥して、粉末状のアニリンブラック組成物を得た。
【0031】
水と上記メジウムと上記アニリンブラック組成物に表1に示す体質顔料と防腐・防かび剤を混合、攪拌した後、ロール練りして、黒色絵具組成物を得た。これらの絵具組成物のそれぞれについて、調製直後のpH値(初期pH値)、絵具組成物の経時の増粘とゲル化の有無、発色状態を調べた。結果を表1に示す。
【0032】
絵具組成物の経時の増粘とゲル化の有無は、絵具組成物を容器中に密閉し、温度70℃の恒温器中に10日間放置したとき、増粘、ゲル化がみられたときを×、少し増粘、ゲル化がみられたときを△、増粘、ゲル化がないときを○とした。また、発色性は、絵具組成物/水=重量比5/1にてよく混ぜ合わせ、平筆を用いて、画用紙に3回重ね塗りし、乾燥させ、塗膜を形成して、目視にて観察し、よいときを○、悪いときを×とした。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
以上のように、本発明による黒色顔料組成物の製造方法によれば、予め、アニリンブラックを塩基性物質にて処理して、そのpHを5.5以上としており、従って、このようなアニリンブラック組成物を用いて得られる黒色顔料組成物においては、アニリンブラックに由来する経時的な増粘やゲル化が起こらず、経時安定性にすぐれており、例えば、黒色絵具組成物、インキ組成物、ポスターカラー等に好適に用いることができる。
Claims (6)
- アニリンブラックを塩基性化合物にて処理して、pHが5.5〜11.0の範囲にあるアニリンブラック組成物を得、これを溶剤としての水と糊剤としての分子中にカルボキシル基を有する水溶性高分子物質と共に混合することを特徴とする黒色顔料組成物の製造方法。
- 分子中にカルボキシル基を有する水溶性高分子物質がカルボキシメチルセルロース、デキストリン又はアルキル化デンプンである請求項1に記載の方法。
- 分子中にカルボキシル基を有する水溶性高分子物質を黒色顔料組成物の重量に基づいて5〜50重量%の範囲で用いる請求項1又は2に記載の方法。
- 塩基性化合物が水酸化アルカリ金属である請求項1に記載の方法。
- 塩基性化合物がトリアルカノールアミンである請求項1に記載の方法。
- アニリンブラック組成物がアニリンブラックの粉末を水に分散させてスラリーとし、これに塩基性化合物の水溶液を加え、攪拌し、そのpHを調整した後、濾過、乾燥することによって得られる粉末である請求項1に記載の方法。
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