JP4523098B2 - 近赤外線吸収組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は近赤外線を吸収するポリアゾ化合物を含有する近赤外線吸収組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、広範囲な産業分野にわたって近赤外線に関連する技術開発が注目を集めており、それに伴って優れた近赤外線吸収剤の開発もまた活発であり、既に多くの提案がなされている。
たとえば、特公昭43−25335号公報にはN,N,N’,N’−テトラキス(p−置換フェニル)−p−フェニレンジアミン類またはベンジジン類およびそれらのアルミニウム塩またはジイモニウム塩が記載されており、また、特開昭61−215662号公報、特開昭63−154767号公報、特公平1−19693号公報などにはナフタロシアニン型の化合物が記載されている。更に、特公昭63−31471号公報ではピリリウム塩誘導体が近赤外光吸収色素、フィルター用色素あるいは近赤外光増感色素として有用であり、特にレーザー光に対して極めて有効な不飽和吸収剤であることが記載されている。
【0003】
一方、特公昭60−42269号公報、特開平3−159786号公報にはアゾ化合物が提案されているが、前者は金属錯化合物であり、この場合、溶剤への溶解性や金属が離れやすいなどの問題があり、後者はモノアゾ化合物ではあるがアゾ成分のアルコキシ基あるいはアルキルアミノ基のアルキル基として比較的長鎖状のものが結合しており、やはり入手の困難な化合物である。
このように、上記公知の化合物は何れもそれらの分子構造が複雑であり、また、入手困難な高価な原料が使用されており、加えて製造工程も複雑であり、目的物質の得量も決して良好とはいえないのでその製品は極めて高価なものとならざるを得なかった。特に、金属錯化合物を用いる場合には、溶剤への溶解性が悪いとか金属が離れ易い等の問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者はこれら従来技術の問題点を解決するため、入手容易な原料を用いて、しかも製造容易なポリアゾ化合物に着目して、近赤外線吸収剤として近赤外線を効率的に吸収することのできる新規なポリアゾ化合物を開発し提案した(特開平11−269136号公報、以下’136公報という)。
しかし、このポリアゾ化合物でも近赤外線吸収能は充分満足すべきものとはいえないので、本発明はこれに第3物質を添加することにより、更にこれを改良しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の’136公報に記載された発明はポリアゾ化合物において、その分子中のアゾ基に対してp−位に少なくとも1個の−OH基または−OH基より誘導される基を含有することを特徴とする近赤外線吸収性のポリアゾ化合物及びその製造方法に関するものであるが、本発明は該化合物に第3物質、特に塩基性化合物、好ましくは有機塩基性化合物を添加することを特徴とする。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1) 下記構造式のいずれかで示される近赤外線吸収性ポリアゾ化合物及び塩基性化合物を含有することを特徴とする近赤外線吸収組成物及び
【化1】
(2) 塩基性化合物が1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5及び6−ブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7から選ばれる一種以上である上記(1) に記載の近赤外線吸収組成物、
に関するものである。
【0007】
上記(1) において、OH基より誘導される基としては−OR,−OOCR(ただし、R:CH3 、C2 5 、C4 9 等)基等が挙げられる。製造方法は自体公知の手段により目的とする化合物を製造するもので、例えばジアゾ化可能な第一アミノ基を有する置換もしくは未置換の芳香族単環又は多環化合物、又は複素環化合物をジアゾ化し、得られたジアゾ成分と更にジアゾ化可能な第一アミノ基を有するアゾ成分と順次カップリングさせることからなり、最終のアゾ成分は該アゾ成分がカップリングして生ずるアゾ基に対してp−位に−OH基又は−OH基より誘導される基が存在するようにするものである。
本発明のポリアゾ化合物においては、その分子中に少なくとも2個以上のアゾ基を有することおよび該アゾ基に対してp−位に−OH基または−OH基より誘導される基が存在し得るようにアゾ成分を選択することが重要である。特にアゾ基を有する芳香族単環若しくは芳香族縮合環又は縮合複素環のアゾ基に対してp−位に−OH基又は−OH基より誘導される基が存在することが好ましい。即ち、これらの条件が満たされることによってはじめて近赤外部において吸収を示すようになる。
【0008】
【発明の実施の形態】
上記’136公報に提示されている近赤外線吸収性ポリアゾ化合物を各種材料に加工する場合、塩基性化合物、特に強塩基性化合物を添加することにより、近赤外線吸収能を向上させ、ある場合にはその吸収波長域を、より長波長域にシフトさせ、より目的に適合した効果を期待することが可能である。
’136公報に提示された化合物について、塩基性化合物添加による性能の向上効果を以下に述べるように、光の吸収曲線の比較によって明らかにすることができる。
例えば、下記の三つの化合物の溶媒中でのそれぞれの光の吸収曲線を夫々有機強塩基性物質、例えば(1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7)(以下DBUと略す)を添加しないものと、溶媒中0.1%添加したものを比較すれば添付の図のようになる。なお本明細書において特に断りのない限り%は質量%を表わす。
【0009】
【化1】
【0010】
添付の図1は、上記式(1)のポリアゾ化合物の光吸収曲線を示し、図2はこれに有機強塩基性化合物DBUを0.1%添加した場合の光吸収曲線を示し、同様に、図3は上記式(2)のものを、図4はこれにDBUを0.1%添加した場合のものを示し、同様に図5は上記式(3)のものを、図6はこれにDBUを0.1%添加した場合の光吸収曲線をそれぞれ示したものである。なお上記測定は溶媒としてメチルエチルケトンを用い、各近赤外線吸収剤の濃度は10ppmとした。
また、ポリアゾ化合物として下記式(13)で表されるものを用い、無機塩基性化合物として苛性ソーダを添加しない場合と添加した場合の光吸収曲線を示すとそれぞれ図7及び図8が得られる。測定は苛性ソーダ50%水溶液を0.01%添加したポリアゾ化合物10ppmジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中で行い、苛性ソーダは50%水溶液を0.01%となるように添加した。
【0011】
図1−図2、図3−図4、図5−図6及び図7−図8の対比から明らかなように、いずれの吸収曲線においても可視部の吸収が低減し、近赤外部(700〜1000nm)の吸収が強められ近赤外線吸収剤としての能力の指標となるピークの高さがかなり増大しているのがわかる。同様なことが’136公報に含まれる他の化合物についても近赤外線吸収能を向上させる効果を認めることができる。本発明において使用し得る近赤外線吸収剤としては’136公報に含まれるポリアゾ化合物で、その代表的な具体例を以下に示す。
【0012】
【化2】
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
【化5】
【0016】
【化6】
【0017】
【化7】
【0018】
【化8】
【0019】
【化9】
【0020】
【化10】
【0021】
次にこれらの近赤外線吸収性ポリアゾ化合物に添加し、その近赤外線吸収能を向上させるための塩基性化合物としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ソーダ、苛性ソーダ、炭酸カリ等の無機塩基性化合物、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ピペリジン、ピリジン等の有機アミン、更に強塩基性有機化合物として、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5(DBN)、6−ブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBA−DBU)等があるが、強塩基性有機化合物としてあげたウンデセン誘導体は特に有効である。添加量としては、近赤外線吸収性ポリアゾ化合物(質量)に対して同量〜10倍量、好ましくは2倍量〜5倍量とする。
これらの化合物(DBU、DBN、DBA−DBU)の構造式は以下の通りである。
【0022】
【化11】
【0023】
以上のようにあげられた’136公報に記載されたものを含めて近赤外線吸収性ポリアゾ化合物と、塩基性化合物、特に強塩基性有機化合物としてあげたDBU、DBN、DBA−DBUを含有する本発明の組成物は各種のポリマー、例えばポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂;ポリスチレン;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルなどのビニル重合体;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂中に添加して、これを適当な形態、例えばチップ状、板状、シート状、フィルム状、あるいは糸状などに成形したり、紙、プラスチック、金属、織物等各種材料に塗工して使用することができる。
【0024】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例にのみ限定されるものではない。%は質量%を示す。
(実施例1)
化合物(4)を用い、次の組成の塗工液を調製し、
次の塗工条件にてポリエステルフィルム〔東レ(株)製、ルミラー(商品名)厚み100μm〕上に塗工し近赤外線吸収フィルムを製造した。
バーコーダー No.30
乾燥 100℃×1分
【0025】
一方、他の条件は全く同じでDBA−DBUを添加しない組成の塗工液を同様に塗布したフィルムも製造し、両方のフィルムの透過率曲線を測定し、それぞれ図9及び図10に示されるような結果を得た。透過率曲線は常法に従がい吸光曲線と同様にして測定した。フィルムを分光光度計(Hitachi V−2010)のホルダーの大きさに切ってセットして測定する。
このグラフより明らかなようにDBA−DBUを添加したものは添加しないものに比べて近赤外線吸収フィルムとしての性能がはるかにすぐれていることが分かる。
【0026】
(実施例2)
化合物(5)を用い、次の組成の塗工液を調製し、
化合物(5) 0.4%
変性ポリエステル 10%
DBN 2.0%
溶媒(MEK:トルエン 1:1) 87.6%
次の塗工条件にてポリエステルフィルム〔東レ(株)製、ルミラー厚み100μ〕上に塗工し近赤外線吸収フィルムを製造した。
バーコーダー No.30
乾燥 100℃×1分
【0027】
一方、他の条件は全く同じでDBNを添加しない組成の塗工液を同様に塗布したフィルムも製造し、両方のフィルムの透過率曲線を測定し、それぞれ図11及び図12に示されるような結果を得た。
このグラフより明らかなようにDBNを添加したものは添加しないものに比べて近赤外線吸収フィルムとしての性能がはるかにすぐれていることが分かる。
【0028】
(実施例3)
化合物(6)を用い、次の組成の塗工液を調製し、
化合物(6) 0.4%
変性ポリエステル 10%
DBU 2.0%
溶媒(MEK:トルエン 1:1) 87.6%
次の塗工条件にてポリエステルフィルム〔東レ(株)製、ルミラー厚み100μm〕上に塗工し近赤外線吸収フィルムを製造した。
バーコーダー No.30
乾燥 100℃×1分
【0029】
一方、他の条件は全く同じでDBUを添加しない組成の塗工液を同様に塗布したフィルムも製造し、両方のフィルムの透過率曲線を測定し、それぞれ図13及び図14に示されるような結果を得た。
このグラフより明らかなようにDBUを添加したものは添加しないものに比べて近赤外線吸収フィルムとしての性能がはるかにすぐれていることが分かる。
【0030】
(実施例4)
化合物(13)を用い、次の組成の塗工液を調製し、
化合物(13) 0.5%
ゼラチン 10%
DBU 2.0%
溶媒(水) 87.5%
次の塗工条件にてポリエステルフィルム〔東レ(株)製、ルミラー厚み100μm〕上に塗工し近赤外線吸収フィルムを製造した。
バーコーダー No.30
乾燥 100℃×1分
【0031】
一方、他の条件は全く同じでDBUを添加しない組成の塗工液を同様に塗布したフィルムも製造し、両方のフィルムの透過率曲線を測定し、それぞれ図15及び図16に示されるような結果を得た。
このグラフより明らかなようにDBUを添加したものは添加しないものに比べて近赤外線吸収フィルムとしての性能がはるかにすぐれていることが分かる。
【0032】
このようにして実施例1から4で得られた近赤外線吸収フィルムは各種の用途に用いる事ができる。例えばプラズマディスプレイ等から発生する近赤外線の遮蔽フィルムとして、又熱線カットを目的として自動車の窓、家庭用窓ガラス等に用いることができる。
【0033】
【発明の効果】
入手容易な原料を用いて比較的簡単に合成することができ、近赤外線を効率的に吸収することのできるポリアゾ化合物を含む組成物を提供する。本発明のポリアゾ化合物含有近赤外線吸収組成物は、近赤外部に強い吸収を持つので近赤外線吸収剤として、コンパクトディスク、レーザーディスク、光メモリーディスク、光カード等の光記録媒体、液晶表示装置、光学文字読取機など、あるいは光導電材料、近赤外線吸収フィルター、感熱転写、感熱紙、感熱孔版等の光熱変換剤、自動車または建材などの熱線遮光剤に用いることがてきる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るジスアゾ化合物(1)の吸収曲線を示すグラフ。
【図2】 本発明に係るジスアゾ化合物(1)を含む組成物の吸収曲線を示すグラフ。
【図3】 本発明に係るジスアゾ化合物(2)の吸収曲線を示すグラフ。
【図4】 本発明に係るジスアゾ化合物(2)を含む組成物の吸収曲線を示すグラフ。
【図5】 本発明に係るジスアゾ化合物(3)の吸収曲線を示すグラフ。
【図6】 本発明に係るジスアゾ化合物(3)を含む組成物の吸収曲線を示すグラフ。
【図7】 本発明に係るジスアゾ化合物(13)の吸収曲線を示すグラフ。
【図8】 本発明に係るジスアゾ化合物(13)を含む組成物の吸収曲線を示すグラフ。
【図9】 実施例1で得られた近赤外線吸収フィルムの透過率曲線を示すグラフ。
【図10】 実施例1で塩基性化合物を添加しない場合の近赤外線吸収フィルムの透過率曲線を示すグラフ。
【図11】 実施例2で得られた近赤外線吸収フィルムの透過率曲線を示すグラフ。
【図12】 実施例2で塩基性化合物を添加しない場合の近赤外線吸収フィルムの透過率曲線を示すグラフ。
【図13】 実施例3で得られた近赤外線吸収フィルムの透過率曲線を示すグラフ。
【図14】 実施例3で塩基性化合物を添加しない場合の近赤外線吸収フィルムの透過率曲線を示すグラフ。
【図15】 実施例4で得られた近赤外線吸収フィルムの透過率曲線を示すグラフ。
【図16】 実施例4で塩基性化合物を添加しない場合の近赤外線吸収フィルムの透過率曲線を示すグラフ。

Claims (2)

  1. 下記構造式のいずれかで示される近赤外線吸収性ポリアゾ化合物及び塩基性化合物を含有することを特徴とする近赤外線吸収組成物。
  2. 塩基性化合物が1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5及び6−ブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7から選ばれる一種以上である請求項1に記載の近赤外線吸収組成物。
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