JP4522621B2 - 複層粉末成形装置および複層圧粉成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉末を圧縮成形した圧粉成形体に係り、とくに2層以上の複層の圧紛成形体の製造方法および粉体成形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車部品や機械部品等の広範な用途に用いられている焼結部品は、原料粉末を金型に装入し圧縮成形して圧粉体とし、この圧粉体を焼結して焼結体としたのち仕上げ加工されて製品とする粉末冶金法で製造されている。最近では、省資源、コストダウン等の観点から、過酷な条件に曝され特殊な特性が要求される部位には特殊材料を、その他の部位には一般材料を使用する複層からなる焼結部品、いわゆる複合材料が利用されている。この複合化された焼結部品は、通常、粉末充填時に複層化され成形された、複層圧粉体を焼結して製造されている。
【0003】
例えば、2層を有する圧粉体の製造方法としては、互いに直角に、あるいは互いにある角度をもって往復運動する、それぞれ異なる種類の粉末を充填する2台の粉末充填装置を用い、まず、一つの粉末充填装置で、粉末を所定の空間に充填したのち、その充填した粉末の上に、他の粉末充填装置を用いて異種の粉末を充填する方法がある。しかしながら、この方法では、直角方向に2台の粉末充填装置を往復運動させなければならず、装置の設置に必要な床面積が多大となり、製造装置設置場所に制限を受けるという不利がある。
【0004】
このような問題に対し、例えば、特開昭62-13605号公報には、複合粉末成形方法が提案されている。特開昭62-13605号公報に記載された複合粉末成形方法は、往復動する第1充填装置により粉末Aを充填すると同時に、ダイプレート上に抜出した圧粉体を第1充填装置により押出し、第2充填装置ヘつきあてて移動させる工程と、第1充填装置をもどしつつ、これと当接する第2充填装置を回転前進させ、第2充填装置の前進により圧粉体をダイプレート上のガイドへ送出す工程と、第2充填装置をさらに前進させ、粉末Bを充填させる工程と、これら粉末を圧粉成形する工程と、圧粉体をダイプレート上に抜出す工程とからなる複合粉末成形方法である。この技術によれば、設置床面積が小さく、圧粉体の送りの方向、距離が確実に一定となるとともに、充填サイクルが短く生産性が向上するとしている。
【0005】
また、特開昭62-13606号公報には、往復動する第1充填装置により粉末Aを充填すると同時に、ダイプレート上に抜出した圧粉体を第1充填装置により押出し、第2充填装置ヘつきあてて移動させる工程と、第1充填装置をもどしつつ、これと当接する第2充填装置を回転前進させ、第2充填装置の前進により圧粉体をダイプレート上の傾斜面へ送出す工程と、第2充填装置をさらに前進させ、粉末Bを充填させる工程と、これら粉末を圧粉成形する工程と、得られた圧粉体をダイプレート上に抜出す工程とよりなる複合粉末成形方法が提案されている。この技術によれば、設置床面積が小さく、圧粉体の送りの方向、距離が確実に一定となるとともに、充填サイクルが短く生産性が向上するとしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近では、更なる生産性向上のため成形サイクルタイムの短縮が要望されている。しかし、特開昭62-13605号公報、特開昭62-13606号公報に記載された技術を用いて複層圧粉体を製造する際に、各工程を短縮して成形サイクルタイムの短縮を図ると、複層の境界が大きく波打つという問題が発生する。複層のうちの特殊材料粉からなる層を所定の厚さとするためには、複層境界が波打つと、波打つ分だけ高価な特殊材料粉の充填量を増加させる必要があり、製造コストの高騰を招くことになる。
【0007】
また、最近では、地球環境の保全という観点から、自動車部品の軽量化が要望され、たとえば、バルブシートなどに至るまでの部品の軽量化、すなわち厚みの低減が指向されている。また、さらに省資源という観点から高価な材料の使用量を少なくすることが検討されている。
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、少ない量の充填で所定厚さの粉末層(高価な特殊材料粉末層)を形成でき、しかも円周方向の厚みばらつきを少なくできるなど充填精度が高い、2層以上の複層の圧粉体を容易にしかも安価に製造できる、複層圧粉成形体の製造方法および複層粉末成形装置を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記した課題を達成するために、まず複層境界の波打ち現象の原因について鋭意考究した。その結果、本発明者は、第1粉末充填空間を形成して第1の粉末を充填したのち、第2粉末充填空間を形成して第2の粉末を充填する際に、第2粉末充填空間の形成を急激に行うと、第1粉末層(A)と第2粉末層(B)との境界が波打つことを見いだした。
【0009】
複層境界が波打つ現象について、本発明者は次のように考えている。すなわち、図7に示すように、例えばダイおよびコアロッドの上昇を急激に行い第2粉末充填空間を形成すると、形成された第2粉末充填空間への第2の粉末の充填が追いつかず、負圧となる。このため、下パンチの内周および外周の隙間から大気が吸い込まれ、この吸い込まれた大気により第1粉末層(A)と第2粉末層(B)との境界が波打つ。
【0010】
このような考えに基づき、本発明者は、複層境界の波打ち防止対策を検討した。その結果、第2粉末充填空間の形成をゆっくり行うこと、すなわち、下パンチの下降、あるいはダイおよびコアロッドの上昇を負圧が生じない速度で行うことが複層境界の波打ち防止に有効であることに想到した。下パンチの下降、あるいはダイおよびコアロッドの上昇を負圧が生じない速度で行うためには、下パンチ、あるいはダイおよびコアロッドの昇降機構を主昇降機構とサブ昇降機構の2系統とし、主昇降機構による昇降速度をサブ昇降機構により適正な速度に減速調整することが良いことを思い付いた。
【0011】
本発明は、上記した知見に基づいて, さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
(1)上パンチと、下パンチと、ダイと、コアロッドとで囲まれる空間に、2種以上の粉末を順次充填し圧紛成形して、2層以上の圧粉体とする複層圧粉成形体の製造方法において、前記下パンチ、前記ダイおよび前記コアロッドをそれぞれの上面が同一平面上となる抜き出し状態に調整後、往復運動する第1の粉末充填装置を前進させて前記ダイを覆ったのち、前記下パンチを下降させるか、あるいは前記ダイおよび前記コアロッドを上昇させて、第1粉末充填空間を形成しながら、該第1粉末充填空間に第1の粉末を充填する第1の粉末充填工程と、前記往復運動する第1の粉末充填装置を後退させるとともに、反複回転運動する第2の粉末充填装置を回転前進させ、前記ダイを覆うと同時に、前記下パンチを下降させるか、あるいは前記ダイおよび前記コアロッドを上昇させるに際し、主昇降装置の作動に加えてサブ昇降装置を作動させて前記下降あるいは上昇の速度を減速し、負圧を生じさせないような速度として前記下パンチを下降させるか、あるいは前記ダイおよび前記コアロッドを上昇させ第2粉末充填空間を形成しながら、該第2粉末充填空間に第2の粉末を充填する第2の粉末充填工程と、を順次行い、粉末を充填したのち、前記反復回転運動する第2の粉末充填装置を回転後退させるとともに、前記上パンチを下降させて、該上パンチと前記下パンチとにより前記充填した粉末を圧粉成形し2層以上の複層の圧粉体とする圧粉成形工程と、前記下パンチを上昇させるか、あるいは前記ダイおよび前記コアロッドを下降させ前記圧粉体をダイプレート上に抜き出す圧粉体抜き出し工程と、を行うことを特徴とする複層圧粉成形体の製造方法。
(2)(1)において、前記第2粉末充填空間に第2の粉末を充填する際に、前記第2の粉末充填装置を少なくとも1回以上シェーキングさせることを特徴とする複層圧粉成形体の製造方法。
(3)(1)または(2)において、ダイプレート上に抜き出された前記圧粉体が、次の複層圧粉体を製造する前記第1の工程において前記往復運動する第1の粉末充填装置の前進により押し出され、製品排出口へ排出されることを特徴とする複層圧粉成形体の製造方法。
(4)上パンチと、下パンチと、ダイと、コアロッドと、および、該上パンチと下パンチとダイとコアロッドとで囲まれる粉末充填空間に粉末を充填する粉末充填装置と、を有する複層粉末成形装置において、前記粉末充填装置が、前記ダイを収容するダイプレート上で往復運動し所定の前記粉末充填空間に粉末を充填する第1の粉末充填装置と、前記ダイプレート上で反復回転運動し所定の前記粉末充填空間に粉末を充填する第2の粉末充填装置とからなり、さらに、前記ダイを収容するダイプレート上には、前記第1の粉末充填装置の前進限界面から始まり製品排出口に向けて下り勾配を有する第1の傾斜面と前記第2の粉末充填装置先端の軌跡に接する部分から始まり前記第1の傾斜面に接する第2の傾斜面とを有し、さらに、前記上パンチを配設したラムプレートには、前記反復回転運動する第2の粉末充填装置を、粉末充填時に少なくとも1回以上シェーキングするとともに回転後退を制御する粉末充填装置制御手段とが配設され、さらに、前記下パンチ、および/または、前記ダイおよび前記コアロッドには、主昇降機構に加えてさらにサブ昇降機構が付設される、ことを特徴とする複層粉末成形装置。
(5)(4)において、前記サブ昇降機構が油圧装置であることを特徴とする複層粉末成形装置。
(6)(4)または(5)において、前記第1の粉末充填装置には、該第1の粉末充填装置の前進方向端部下側に、製品排出口側に対向し前記第1の粉末充填装置が前進する向きとのなす角が鈍角である面を有する突起を、該突起の中心が前記第1の粉末充填装置の前進方向側端面の中心軸から所定の距離だけ製品排出口の反対側に離れた位置となるように、配設することを特徴とする複層粉末成形装置。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず、本発明方法の実施に好適な複層粉末成形装置について説明する。
複層粉末成形装置の一例を模式的に図1に示す。(a)は側面断面図であり、(b)はそのA−A矢視図である。複層粉末成形装置は、上パンチ5、下パンチ2、ダイ4、コアロッド1、および、粉末を充填する第1の粉末充填装置91および第2の粉末充填装置92を有する。
【0013】
ダイ4はダイプレート40に収容され、下パンチ2と、コアロッド1とで粉末充填空間を形成可能に配設される。また、上パンチ5は、ラムプレート51に配設され、上昇・下降自在とされ、粉末充填空間に充填された粉末を下パンチ2との間で圧粉成形可能とされる。
また、ダイプレート40には、第1の傾斜面41と第2の傾斜面42が設けられる。第1の傾斜面41は、第1の粉末充填装置91の前進限界面から始まり製品排出口 (図示せず)に向けて下り勾配を有する傾斜面であり、製品 (圧粉体)の排出を容易にし、生産性を向上させるために設けられる。また、第2の傾斜面42は、第2の粉末充填装置92先端の軌跡に接する部分から始まり第1の傾斜面41に接する傾斜面であり、第1の傾斜面41ととともに、製品 (圧粉体)の排出を容易にする役割を有する。
【0014】
第1の粉末充填装置91は、ダイプレート40上で往復運動し、ダイ4を覆い、下パンチ2とダイ4とコアロッド1とで囲まれる粉末充填空間に粉末を充填する。なお、第1の粉末充填装置91には、往復運動の前進方向端部下側に突起91a を配設することが好ましい(図1(b))。この突起91a は、製品排出口側に対向し第1の粉末充填装置が前進する向きとのなす角αが鈍角である面91b を有し、しかもこの突起の中心が、第1の粉末充填装置91の前進方向側端面の中心軸Xから所定の距離dだけ製品排出口の反対側に離れた位置となるように、第1の粉末充填装置91に配設することが好ましい(図1(c))。この突起91a は、ダイプレート面に対し垂直な中心軸を有する三角柱とすることが好ましいが、これに限定されるものではなく、製品排出口に対向し、第1の粉末充填装置91が前進する向きとのなす角αが鈍角である面を有するものであれば特に限定されないことはいうまでもない。
【0015】
このような突起91a を第1の粉末充填装置91の前進方向端面下側に付設することにより、第1の粉末充填装置91による製品 (圧粉体)の押出し方向が一定し、しかもダイプレート40に形成された傾斜面41,42 に圧粉体を送り出しやすくなり、製品送りのトラブル発生を防止できる。
また、第2の粉末充填装置92は、ダイプレート40上で反復回転運動し、ダイ4を覆い、下パンチ2とダイ4とコアロッド1とで囲まれる粉末充填空間に粉末を充填する。図2(a)に示すように、第2の粉末充填装置92は、軸81に回転支承される。第2の粉末充填装置92は、この軸81に対し反対側に配設されたエアーシリンダー82の作動により回転前進・回転後退からなる反復回転運動を行うことができる。
【0016】
また、本発明方法の実施に好適な複層粉末成形装置では、図2に示すように、上パンチ5を配設したラムプレート51に、第2の粉末充填装置92を粉末充填時に少なくとも1回以上シェーキングするとともに回転後退を制御する粉末充填装置制御手段52が配設されることが好ましい。なお、図2(b)は、図2(a)のA−A矢視図であり、第2の粉末充填装置92が、粉末の充填を終了し、粉末充填装置制御手段52の作用で回転後退を開始した状態を示している。粉末充填装置制御手段52は、カム等のならい具とすることが好ましく、第2の粉末充填装置92の反復回転運動を制御する回転駆動装置82に付設されたカムフォロワー53に、ラムプレートの下降に伴い当接するように配設されることが好ましい。粉末充填装置制御手段52がカムフォロワー53に当接することにより、第2の粉末充填装置92にシェーキングと上パンチ5との衝突を回避するための強制的回転後退運動を付与することができる。
【0017】
本発明方法では、第2の粉末充填装置92を粉末充填時に少なくとも1回以上シェーキングすることをが好ましく、このために、粉末充填装置制御手段52には、例えば、図2 (c) に示すようなS領域を設定し、第2の粉末充填装置92に少なくとも1回以上のシェーキングを付加することが好ましい。図2 (c) には1回のシェーキングを付加できる粉末充填装置制御手段52の例が示されているが、本発明ではこれに限定されるものではない。また、シェーキングを付加しない場合には、図2(c)におけるようなS領域を有しない粉末充填装置制御手段52とすることはいうまでもない。
【0018】
ラムプレートの下降に伴いカムフォロワー53が粉末充填装置制御手段52のS領域を通過したのちは、第2の粉末充填装置92は強制的に回転後退され、上パンチ5との衝突を回避できるように制御される。
なお、本発明方法の実施に好適な複層粉末成形装置では、下パンチ2、および/または、前記ダイ4および前記コアロッド1には、主昇降装置(図示せず)に加えてさらにサブ昇降装置43が付設されることが好ましい。本発明では、第2粉末充填空間の形成に当り、主昇降装置による下パンチ2の下降、あるいはダイ4およびコアロッド1の上昇を、その下降または上昇方向と反対方向にサブ昇降装置43を作動させて所望の速度に減速する。サブ昇降装置43の種類は、特に限定されないが、油圧装置とすることが好ましい。
【0019】
図6に、サブ昇降装置43の付設状況の一例を模式的に示す。図6では、ダイ4およびコアロッド1を上昇させる場合であり、ダイ4を支持し、主昇降装置によりダイ4を昇降させるダイプレート40にサブ昇降装置43が付設された状態を示す。なお、図示されない機構でコアロッド1はダイ4とともに主昇降装置により連動して昇降可能とされることが好ましい。図6に示されたサブ昇降装置43を使用して、第2粉末充填空間を形成する場合には、まず、サブ昇降装置43(ここでは油圧装置)を作動させて、主昇降装置によるダイプレート40の上昇(ダイ4およびコアロッド1の上昇)を阻止する。その後、徐々にサブ昇降装置43(ここでは油圧装置)の作動力を徐々に弱めながら(すなわち油圧を抜きながら)、ダイプレート40を上昇(ダイ4およびコアロッド1を上昇)させる。この主昇降装置とサブ昇降装置43とを併用することにより、第2粉末充填空間を形成する際に、効果的に負圧の発生を防止することができ、複層境界に波打ち現象を防止できる。
【0020】
つぎに、好ましくは上記した複層粉末成形装置を用いて行う、本発明方法について説明する。
本発明は、上パンチと、下パンチと、ダイと、コアロッドとで囲まれる空間に、2種以上の粉末を順次充填し圧紛成形して、2層以上の圧粉体とする複層圧粉成形体の製造方法である。本発明方法は、第1の粉末充填工程と、第2の粉末充填工程と、あるいはさらに、前記第1の粉末充填工程とあるいはさらに第2の粉末充填工程とを所望の層数だけ順次繰り返したのち、さらに圧粉成形工程と、圧粉体抜き出し工程と、を順次行う、2層以上の圧粉体とする複層圧粉体の製造方法である。
【0021】
本発明方法を、工程順に、図3(a)〜(c)、図4(a)〜(d)に示す。なお、図上段は側断面図、下段は平面図である。
第1の粉末充填工程では、下パンチ2、ダイ4およびコアロッド1をそれぞれの上面が同一平面上となる抜き出し状態に調整後、往復運動する第1の粉末充填装置91を前進させてダイ4を覆った(図3(a))のち、下パンチ2を下降させるか、あるいはダイ4およびコアロッド1を上昇させて、第1粉末充填空間を形成しながら、第1粉末充填空間に第1の粉末Aを充填する( (図3(b))。
【0022】
第1の粉末充填工程に続く、第2の粉末充填工程では、往復運動する第1の粉末充填装置91を後退させるとともに、反複回転運動する第2の粉末充填装置92を回転前進させる(図3(c))。回転前進した第2の粉末充填装置92がダイ4を覆うと同時に、負圧を生じさせないような速度で下パンチ2を下降させながら、あるいはダイ4およびコアロッド1を上昇させながら第2粉末充填空間を形成させて、第2粉末充填空間に第2の粉末Bを充填する(図4(a))。なお、負圧を生じさせないような速度で下パンチ2を下降させ、あるいはダイ4およびコアロッド1を上昇させるには、上記したサブ昇降装置を利用して、主昇降装置による下降速度または上昇速度を負圧の生じない所定の速度に減速することが好ましい。これにより、複層境界に波打ちがない複層の粉末充填が可能となる。
【0023】
この第2の粉末充填工程に際し、第2の粉末充填装置92を少なくとも1回以上シェーキングさせることが好ましい。シェーキングに際しては、ラムプレート51を下降させて、粉末充填装置制御手段52をカムフォロワー53に当接させ、粉末充填装置92にシェーキングを付与することが好ましい。これにより、円周方向の粉末Bの充填厚さのばらつきが緩和され、粉末Bの充填精度が向上する。
【0024】
2層以上の複層とする場合は、前記した第1あるいはさらに第2の粉末充填工程とを所望の層数だけ順次繰り返すことが好ましい。
所望の2層以上の複層粉末充填層を形成したのち、圧粉成形工程を施す。
圧粉成形工程では、反復回転運動する粉末充填装置92を回転後退させる(または粉末充填装置91を後退させる)とともに、上パンチ5を下降させて、上パンチ5と下パンチ2とにより充填した粉末を圧粉成形し2層以上の複層の圧粉体とする(図4(b))。
【0025】
圧粉成形工程に続いて、圧粉体抜き出し工程を施す。
圧粉体抜き出し工程では、下パンチ2を上昇させるか、あるいはダイ4およびコアロッド1を下降させるとともに、上パンチ5を上昇させ、圧粉体(X)をダイプレート40上に抜き出す(図4(c))。
ついで、ダイプレート40上に抜き出された圧粉体(X)は、次の複層圧粉体を製造する第1の工程において、往復運動する第1の粉末充填装置91の前進により、傾斜面41,42 に押し出されて、製品排出口へ排出される(図4(d))。なお、本発明では、第1の粉末充填装置91に、製品排出口側に対向し第1の粉末充填装置が前進する向きとのなす角αが鈍角である面91b を有する突起91a を付設した粉末充填装置を使用することが好ましく、前進に際し、この突起91a の面91b で抜き出された圧粉体Xを押し出すことにより、押し出す方向が傾斜面の方向となり、容易に安定して傾斜面41,42 の方向に押し出すことができ、製品 (圧粉体) の取り出しが容易となる。
【0026】
【実施例】
粉末Aとして、アトマイズ純鉄粉をベースとして、純鉄粉と黒鉛粉と銅粉とフェロモリブデン粉の合計量に対する質量%で、1.1 %の黒鉛粉と4.0 %の銅粉と1.0 %のフェロモリブデン粉と、さらに潤滑剤とを混合した混合粉を使用した。また、高機能材となる粉末Bとして、アトマイズ純鉄粉に、潤滑剤を除く全粉末合計量に対する質量%で、1.1 %の黒鉛粉と、6.3 %のCo粉と、2.0 %のNi粉と、0.8 %のフェロモリブデン粉と、16.5%のCo,Cr,Wを含有する硬質粉と、さらに潤滑剤とを混合した混合粉を使用した。
【0027】
粉末Aと粉末Bを使用し、図1に示す複合成形装置を利用して、本発明例として、第1の粉末充填工程と、第2の粉末充填工程と、さらに圧粉成形工程と、圧粉体抜き出し工程と、を順次行い、2層構造のバルブシート用圧粉体(外径:31.1mm、内径24.0mm、厚さ 8.3mm)を作製し、本発明例とした。なお、第2の粉末充填工程では、主昇降装置に加えて油圧装置からなるサブ昇降装置43を作動させて、ダイ4およびコアロッド1の上昇速度を減速し、予め定めた負圧が発生しない速度に調整した。また、第2の粉末充填工程では、粉末充填装置92に1回のシェーキングを付加する場合(本発明例2)と付加しない場合(本発明例1)の両者を実施した。
【0028】
なお、油圧装置からなるサブ昇降装置を作動させないで、またシェーキングを付加しないで、上記した本発明例と同様の2層構造のバルブシート用圧粉体を作製し、従来例とした。
ついで得られた圧粉体に、同一条件で脱脂処理と焼結処理を施し、焼結体とした。得られた焼結体の外周を研磨、エッチングして、A層およびB層の、2層の境界を全周に亘り現出した。図5(a)に示すように、各焼結体の現出された境界位置について、厚さ方向でA層底面から最も離れた位置tmax とA層底面に最も近い位置tmin をもとめ、次式
ばらつき指数(%)=(tmax ーtmin )/t×100 (%)
(ここで、tは厚さ(mm)である。)
を用いて、ばらつき指数(%)を算出した。得られたばらつき指数について、従来例のばらつき指数を基準(100 %)として、この基準値に対する各焼結体のばらつき指数の比を算出して、境界のばらつき度合いを評価した。
【0029】
得られた結果を図5に示す。
図5から、本発明例はいずれも従来例に比べて、ばらつき指数が低下している。とくに、粉末Bの充填時にシェーキングを付加することにより(本発明例2)、顕著にばらつき指数が低減している。
本発明によれば、2層境界のばらつきを減少することにより、機能材である粉末Bの充填厚さを結果的に薄くできることになる。これは高価な高機能材を少なくできることができることを意味し、バルブシートの製造原価の低減に大きく寄与できるうえ、さらに圧粉体の全体厚さを薄くすることにもなり、バルブシートの仕上げ加工負荷を軽減できるという効果もある。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、第1層と第2層の境界の波打ちを抑制することができ、結果として少ない量の充填で所望厚さの粉末充填層を形成でき、円周方向の充填厚さばらつきが少ない充填精度が高い、2層以上の複層の圧粉体を容易にしかも安価に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、複層圧粉体の全体厚さを薄くすることができ、仕上げ加工負荷を軽減できるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に好適な複層粉末成形装置の一例を示す側断面図(a)および平面図(b)である。
【図2】本発明の実施に好適な複層粉末成形装置の一例を示す側面図である。
【図3】本発明方法の各工程における手順を説明する模式図である。
【図4】本発明方法の各工程における手順を説明する模式図である。
【図5】実施例におけるばらつき指数比を示すグラフである。
【図6】本発明の複層粉末成形装置に好適なサブ昇降装置の設置状況の一例を示す模式図である。
【図7】従来の方法における複層境界の波打ち現象を模式的に説明する説明図である。
【符号の説明】
1 コアロッド
2 下パンチ
4 ダイ
40 ダイプレート
41 第1傾斜面
42 第2傾斜面
43 サブ昇降装置
5 上パンチ
51 ラムプレート
52 粉末充填装置制御手段
53 カムフォロワー
91 第1粉末充填装置
92 第2粉末充填装置
91a 突起
91b 面
Claims (6)
- 上パンチと、下パンチと、ダイと、コアロッドとで囲まれる空間に、2種以上の粉末を順次充填し圧紛成形して、2層以上の圧粉体とする複層圧粉成形体の製造方法において、
前記下パンチ、前記ダイおよび前記コアロッドをそれぞれの上面が同一平面上となる抜き出し状態に調整後、往復運動する第1の粉末充填装置を前進させて前記ダイを覆ったのち、前記下パンチを下降させるか、あるいは前記ダイおよび前記コアロッドを上昇させて、第1粉末充填空間を形成しながら、該第1粉末充填空間に第1の粉末を充填する第1の粉末充填工程と、
前記往復運動する第1の粉末充填装置を後退させるとともに、反複回転運動する第2の粉末充填装置を回転前進させ、前記ダイを覆うと同時に、前記下パンチを下降させるか、あるいは前記ダイおよび前記コアロッドを上昇させるに際し、主昇降装置の作動に加えてサブ昇降装置を作動させて前記下降あるいは前記上昇の速度を減速し、負圧を生じさせないような速度として前記下パンチを下降させるか、あるいは前記ダイおよび前記コアロッドを上昇させ第2粉末充填空間を形成しながら、該第2粉末充填空間に第2の粉末を充填する第2の粉末充填工程と、を順次行い、粉末を充填したのち、
前記反復回転運動する第2の粉末充填装置を回転後退させるとともに、前記上パンチを下降させて、該上パンチと前記下パンチとにより前記充填した粉末を圧粉成形し2層以上の複層の圧粉体とする圧粉成形工程と、
前記下パンチを上昇させるか、あるいは前記ダイおよび前記コアロッドを下降させ前記圧粉体をダイプレート上に抜き出す圧粉体抜き出し工程と、
を行うことを特徴とする複層圧粉成形体の製造方法。 - 前記第2粉末充填空間に第2の粉末を充填する際に、前記第2の粉末充填装置を少なくとも1回以上シェーキングさせることを特徴とする請求項1に記載の複層圧粉成形体の製造方法。
- ダイプレート上に抜き出された前記圧粉体が、次の複層圧粉体を製造する前記第1の工程において前記往復運動する第1の粉末充填装置の前進により押し出され、製品排出口へ排出されることを特徴とする請求項1または2に記載の複層圧粉成形体の製造方法。
- 上パンチと、下パンチと、ダイと、コアロッドと、および、該上パンチと下パンチとダイとコアロッドとで囲まれる粉末充填空間に粉末を充填する粉末充填装置と、を有する複層粉末成形装置において、
前記粉末充填装置が、前記ダイを収容するダイプレート上で往復運動し所定の前記粉末充填空間に粉末を充填する第1の粉末充填装置と、前記ダイプレート上で反復回転運動し所定の前記粉末充填空間に粉末を充填する第2の粉末充填装置とからなり、
さらに、前記ダイを収容するダイプレート上には、前記第1の粉末充填装置の前進限界面から始まり製品排出口に向けて下り勾配を有する第1の傾斜面と前記第2の粉末充填装置先端の軌跡に接する部分から始まり前記第1の傾斜面に接する第2の傾斜面とを有し、
さらに、前記上パンチを配設したラムプレートには、前記反復回転運動する第2の粉末充填装置を、粉末充填時に少なくとも1回以上シェーキングするとともに回転後退を制御する粉末充填装置制御手段とが配設され、
さらに、前記下パンチ、および/または、前記ダイおよび前記コアロッドには、主昇降機構に加えてさらにサブ昇降機構が付設される、
ことを特徴とする複層粉末成形装置。 - 前記サブ昇降機構が油圧装置であることを特徴とする請求項4に記載の複層粉末成形装置。
- 前記第1の粉末充填装置には、該第1の粉末充填装置の前進方向端部下側に、製品排出口側に対向し前記第1の粉末充填装置が前進する向きとのなす角が鈍角である面を有する突起を、該突起の中心が前記第1の粉末充填装置の前進方向側端面の中心軸から所定の距離だけ製品排出口の反対側に離れた位置となるように、配設することを特徴とする請求項4または5に記載の複層粉末成形装置。
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