JPH0344880B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

この発明は、圧粉体の圧粉密度を部分的に調節
できる成形方法とその装置に関するものである。 圧粉体の部分密度を制御したい場合には二通り
あつて、その一つは特定の部分を他の部分よりも
高密度にしたい場合、他の一つは充填された粉末
がダイ内で偏り、そのままでは不均一な圧粉体に
なるのを補正して均一に圧粉したい場合である。 この発明は、そのいずれの場合にも適用可能で
あるが、先ず前者について説明する。 いま、第１図のような焼結歯車を例にとると、
軽量化および含油性の点からは全体の密度が低い
ほうがよく、一方歯部の密度は当然高くなければ
ならない。図中の粉末を表わす点の農淡は、望ま
しい密度分布を示したものである。 第２図はこの様な圧粉体を成形するための従来
周知の成形装置を例示したもので、圧粉体の形状
からは下パンチは上端面が平らな１本のパンチで
済むところを内外２本に分割し、歯部を形成する
パンチ２ａは固定し、内側のパンチ２ｂは上下に
摺動できる構成になつている。 この従来装置の作動については、図から容易に
理解できるので詳しい説明は省略するが、左側の
粉末充填状態では歯部の充填深さを大きく取つて
内側のパンチ２ｂとの段差の分だけ多く充填し、
これを右側の如く圧縮して、圧縮中の粉末が横に
は殆ど流れないのを利用して歯部の密度を高める
訳である。 しかし、この装置は確かに合理的ではあるが、
本来１本で済む下パンチを２本に分割し、しかも
その１本には上下動させる付加機構を必要とする
など、金型やダイセツトの製作およびコストの面
で問題があり、より簡潔な方式が望まれていた。 この発明は上述の事情に鑑みなされたもので、
ダイの上縁部内周に型孔に続く大径部を設けると
ともに、粉末の充填後ダイが一旦上昇し、大径部
の粉末が型孔内に落下してから圧縮が始まるよう
構成したことをその要旨とするものである。 以下、この発明の一実施例を第３図〜第４図に
ついて説明する。 第３図はこの発明の要部を示したもので、成形
する歯車の歯部は簡略化したが、その外形寸法は
第２図と同一に描いてある。第２図と比べ、装置
が単純化したことがわかる。図中１はダイ、２は
下パンチ、４はコアロツドで、ダイ１の上縁部に
示した６がこの発明の特徴とする大径部である。
この大径部６は、第３図左側に示すようにダイ１
自体に設けてもよいが、圧縮成形時の負荷を直接
には受けないので、合金工具鋼や超硬合金など、
ダイと同じ高級材料を用いる必要はない。同図の
右側のようにダイの上に適宜材質のアダプター５
を載せ、これに大径部を設けることもできる。 第４図はこの装置の作動と粉末の挙動を模式的
に示すもので、左から順に粉末充填、ダイ上昇、
圧縮成形、圧粉体抜出しの各工程を示している。 先ず粉末充填の際、所定の充填深さに擦り切り
充填すると、大径部にはその切り欠き容積に相当
する量の粉末が充填されることになる。この状態
からダイを上昇させると、大径部にあつた粉末は
ダイの型孔内に流れ落ち、図示の如く歯部の位置
に堆積する。これを円滑に行なわせるためには、
大径部の勾配が原料粉末の安息角より大きいこと
が望ましいが、しかし絶対条件ではない。 なお、この様な擦り切り充填後のダイの上昇は
既知のアンダーフイル操作と同じ手段で、即ち、
機械プレスの場合はカムプロフアイルの変更で、
油圧プレスの場合はリミツトスイツチと設定位置
とか、プレスの下ラムを駆動する油圧回路の制御
プログラムの変更によつて容易に行なわれる。 次いで、この状態から上パンチ３を下降させて
圧粉すれば、第２図の場合と同様圧縮比の大きい
分だけ歯部の密度が高くなる。以後の工程は従来
と同じである。 内径10mm、外径40mm、長さ15mmの円筒形圧粉体
について、通常のダイと、その内周上縁に垂直軸
に対する勾配20°、長さ15mmの大径部を全周に亙
つて設けたダイとの比較結果を第１表に示す。粉
末は噴霧鉄粉、成形圧力は6t／cm²であり、密度の
測定は半径15mmの所で外側と内側に分割した各部
の部分密度と、全体の平均密度を試料の数各々10
箇について求め、その平均値を記してある。 この結果から、本発明においては圧粉体の内側
部分と外側部分で歴然たる密度の差が認められ、
所期の目的が達成されていることがわかる。

【表】 次に、冒頭で述べた他の一つの場合、即ち粉末
が不均一に充填されたのを是正する場合について
説明する。 一般に、粉末の充填は第５図の如くフイーダー
７を前進させて型孔に粉末を流し込み、後退する
際に余分の粉末をフイーダーの下縁で擦り切つて
いるが、型孔内の表面近くの粉末がフイーダーに
引き摺られて移動し掻き取られ、充填密度に差を
生じることがある。この図では型孔の左側上部に
粉末の空白部分を模式的に描いたが、現に円筒形
の成形体の部分密度を測定すると、多くの場合、
その分布とフイーダーの往復方向とに相関がある
ことが知られている。 そしてこの様な密度の不均一は、そのこと自体
よりも、それに起因する焼結歪みのために、端面
フレ、外径フレなどの製品の寸法制度が低下する
ことが多きな問題である。 以下、この様な場合に関する実施例を第６図〜
第７図について説明する。 この場合の粉末の偏りは、型孔内の或る局部に
生じる現象であるから、前記の実施例では圧粉体
の外周全体の密度を高めるために大径部６をダイ
１またはアダプター５の全周に亙つて設けたのと
異なり、第６図のように粉末の不足する局部に対
応して部分的に大径部６を設ければ足りる。 なお、第６図ではアダプター５の外周を円形に
して回転可能な形状とし、これを外枠で保持する
構成をとつているが、これは大径部の修正を容易
にするためと、必要に応じて大径部の位置を変更
できるためである。 第７図は成形装置の作動の粉末の挙動を模式的
に示すもので左図が粉末充填、右図がダイ上昇の
各工程を示している。なおこの図は要部のみ描い
てあるが、ダイセツト全体の構成ならびに作動は
前記の第３図と同様である。 先ず粉末充填の際、図面の右方向から前進して
くるフイーダーにより所定の充填深さに擦り切り
充填すると、大径部にはその切り欠き容積に相当
する量の粉末が一旦充填されるが、フイーダーが
戻る際に第５図と同様の現象、即ち第７図に模式
的に描いたように、大径部６の壁面に粉末の空白
部分（低密度部分）を生じる。そこで大径部６の
形状および大きさを適切に設計すれば、結果的に
は、正規の型孔に粉末の引き摺り現象なしに充填
されたのと同じ状態に充填することができる。 この状態から、右のように粉末のレペルが大径
部より下になるまでダイを上昇させれば、型孔内
の粉末の密度は各部一様になる。従つて右図の状
態から上パンチを下降させて圧粉すれば、各部の
密度の一様な圧粉体が得られる。以後の工程は従
来と同じである。 内径５mm、歯先径22mm、厚さ５mm、歯数25モジ
ユール0.75の歯車について、通常のダイとその内
周上縁に垂直軸に対する勾配20°、半径方向の深
さ１mmの大径部６を第６図の如く設けたダイのそ
れぞれを用いて成形し、各々の焼結後の寸法精度
を比較した結果を第２表に示す。 この結果から、従来の方式では寸法精度が低下
するような場合でも、この発明によればその低下
を著しく軽減できることがわかる。なお大径部の
設計をより適切に補正すれば、寸法精度がさらに
向上すると期待される。

【表】 この発明の効果は以上の二つの実施例に述べた
通りで、従来方式に比べて大径部の分だけ装置の
全長が長くなり、ダイを動かす下ラムをストロー
クも大きくなる不利を差し引いても、装置の単純
化および製品品質の向上など得られる利益の方が
遥かに大きいと評価できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は歯部を高密度に成形した焼結歯車を例
示する図面、第２図はこの歯車を成形する従来の
成形装置を示す図面、第３図および第４図はこの
発明の第１の実施例に係る成形装置の要部および
その作動状態を説明する図面、第５図は従来装置
の粉末充填に関する問題点を説明する図面、第６
図および第７図はこの発明の第２の実施例に係る
成形装置の要部およびその作動状態を説明する図
面である。 １……ダイ、２……下パンチ、３……上パン
チ、４……コアロツド、５……アダプター、６…
…大径部。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ ダイ内に充填された粉末を上下のパンチ間に
   圧縮して圧粉体を得るに当たり、その型孔の内周
   上縁に大径部を備えるダイに粉末を擦り切り充填
   後、ダイを一旦上昇させて大径部にあつた粉末を
   型孔内に流下堆積させたのち圧縮開始することを
   特徴とする、部分密度の調節された圧粉体を成形
   する方法。