JP4519727B2 - 耐摩耗性チタン材 - Google Patents

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Description

本発明は、表面に硬質めっき皮膜を有する耐摩耗性チタン材に関する。
近年、炭酸ガスの排出低減などの地球環境保全の立場、あるいは機械自体の高性能化や省エネルギー化を推進するため、自動車やオートバイなどを代表とする、航空機、鉄道車両などの輸送機、あるいはロボットなどの産業機械では、構成部品の軽量化が求められている。そして、この軽量化対策の一環として、構成部品に用いられる部品の、鋼材から純チタン材またはチタン合金材(以下、単にチタン材と言う)への転換が進んでいる。特に、構成部品の内でも、動力伝達部品をチタン材製とすれば、動力伝達部品自体の軽量化だけではなく、動力伝達部品の駆動装置の小型化なども図ることができるので、軽量化の効果が大きい。
チタン材の、特に耐摩耗性の向上を図るために、表面に硬質な皮膜を設けることが従来から行なわれている。
この表面の硬質な皮膜としては、Crめっき、窒化、浸炭などの硬質表面皮膜に比して、耐摩耗性や耐久性、靱性などの総合的に優れた、Ni−P無電解めっき皮膜が用いられている。
例えば、特許文献1には、表面をRa0.5μm以上でPPI50 が130以上に粗面化したチタン合金またはアルミ合金の表面に、直接硬度HV500以上のNi−Pメッキ層を100μm以上被覆した転動疲労寿命に優れた機械構造用複合材が開示されている。
特許文献2には、表面をRa0.5μm以上でPPI50 が130以上に粗面化したチタンまたはチタン合金及びアルミまたはアルミ合金の表面に、P含有量4重量%以上で、メッキの結晶面方位〈111〉をメインとする内層と、P含有量4重量%未満で、メッキ硬さHV500以上の外層の少なくとも二層のNi−Pメッキ層を被覆した転動疲労寿命に優れた機械構造用複合材が開示されている。
特許文献3には、表面をRa0.5μm以上でPPI50 が130以上に粗面化したチタン合金またはアルミ合金の表面に、直接Ni- Pメッキ層を100μm以上被覆したのち、室温〜200℃または450〜600℃の熱処理を施した転動疲労寿命に優れた機械構造用複合材の製造方法が開示されている。
また、特許文献4には、硬質Ni-Pめっき皮膜を設けたTi合金などの金属基材製動力伝達部品において、外部からの応力や衝撃によるめっき皮膜の破壊や、長期間の使用によるめっき皮膜自体の疲労破壊や剥離を防止する技術が開示されている。より具体的には、金属基材の表面に、硬質電気Ni-Pめっき皮膜を設けた後に熱処理を行って、めっき皮膜の高硬度化と高密着化を図り、その後更に、めっき皮膜に微粒子を吹き当てるショットピーニングやドライホーニングを行って、めっき皮膜に残留圧縮応力を付与し、前記熱処理によるNi-Pめっき皮膜の靱性低下を回復して、めっき皮膜の硬さと靱性をバランスよく向上させる技術が開示されている。
これらのNi-Pめっき皮膜技術では、耐摩耗性、密着性、転動疲労寿命の向上は図れる。しかし、動力伝達等に用いられる機械部品においては、より接触応力が大きく、より動作速度が速くなる傾向にあり、現行の技術では性能的に不十分となってきている。すなわち、密着性、耐摩耗性の優れた表面処理が求められている。
特許第2777460号 (特許請求の範囲) 特許第2777468号 (特許請求の範囲) 特許第2888953号 (特許請求の範囲) 特開平8−39432号公報 (特許請求の範囲)
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、疲労寿命および耐摩耗性、密着性などの特性を保障しうる、信頼性の高いNi−Pめっきを施した、耐摩耗性チタン材を提供することである。
この目的を達成するために、本発明耐摩耗性チタン材の要旨は、Ni−Pめっき皮膜を設けたチタン材であって、前記Ni−Pめっき皮膜が、質量%で、Ni:85%以上、P:1〜5%、NH4 基:0.1〜1%を含むNi合金からなるとともに、X線回折法によるNi−Pめっき皮膜組織解析における皮膜の結晶子平均サイズが1〜5nmである結晶性めっき皮膜からなり、かつ前記チタン材とNi−Pめっき皮膜との界面に、Niが99%以上からなるNiまたはNi合金層か、Pdが90%以上からなるPdまたはPd合金層かの、少なくともいずれか一方が形成されており、Ni−Pめっき皮膜のめっきままでの硬度が500Hv以上であることとする。
本発明では、上記要旨のように、耐摩耗性、密着性などの特性を保障するために、Ni−Pめっき皮膜の結晶子平均サイズを小さくする。このために、Ni−Pめっき皮膜中にNH4 基を含むものとする。
これによって、Ni−Pめっき皮膜のめっきままでの硬度が500Hv以上に上昇し、靱性も高くなって割れにくくなる。また、Ni−Pめっき皮膜の潤滑性も向上する。
また、本発明では、Ni−Pめっき皮膜の配向度を、X線回折法による皮膜組織解析における、Ni(111)とNi(200)との測定ピーク強度比Ni(111)/Ni(200)を0.3〜0.5とすることによって、低減することが好ましい。このようなNi−Pめっき皮膜のNi−Pめっき皮膜の配向度低減によって、靱性が50kN以上に高くなる一方、めっき引張応力が5kgf/mm2 以下となって、前記高硬度でも割れにくくなる。
これらの効果を密着性良く発現させるためには、前記チタン材とNi−Pめっき皮膜との界面に、Niが99%以上からなるNiまたはNi合金層、または、Pdが90%以上からなるPdまたはPd合金層を形成する。
耐摩耗性を更に向上させるためには、前記Ni−Pめっき皮膜の上層として、更に、平均膜厚が0.1〜5μmで、硬度が900Hv以上の、硬質Crめっきが施されていることが好ましい。
そして、これらのめっき皮膜を確実に得るためには、前記Ni−Pめっき皮膜が無電解めっきであることが好ましい。無電解めっきは、電気めっきよりは、膜厚(膜厚分布)の均一性に優れる。
以上の効果を有する本発明は、高い耐摩耗性を保障しうる、チタン材、およびチタン材製部品を提供できる。
(Ni−Pめっき皮膜組成)
先ず、本発明におけるNi−Pめっき皮膜組成について説明する。本発明では、Ni−Pめっき皮膜は、基本的に、質量%で、Ni:85%以上、P:1〜5%、NH4 基:0.1〜1%を含むNi合金からなるめっき皮膜組成とする。
NiとPとは、硬質皮膜における耐摩耗性および疲労寿命特性を基本的に保障するものであり、このために、Niは85%以上、Pは1%以上含有させる。NiとPとの含有量が下限値未満では、上記基本特性が低下する。
一方、Niを98.9%を超えて含有させると、他のPやNH4 基の含有量が不足して、上記基本特性が低下する。したがって、Niは85%以上、好ましくは98.9%以下とする。
また、Pを5%を超えて含有させると、めっきままでの硬度が不足する。このため、硬度を500Hv以上とするための熱処理が更に必要となる。更に、めっき皮膜の靱性も低下して、割れやすくなる。したがって、Pは1〜5%の範囲とする。
NH4 基は、Ni−Pめっき浴からの、めっき皮膜成膜時に、めっき皮膜中に含有させるものであり、めっき皮膜の結晶粒を、X線回折測定法による結晶子平均サイズで5nm以下に微細化させると推考される。これによって、皮膜における耐摩耗性および疲労寿命、めっき密着性などの基本特性を保障する。
これらの効果を発揮させるためには、めっき浴成分の調整によって、NH4 基は0.1%以上含有させる。NH4 基含有量が0.1%未満では、これらの効果が発揮されず、結晶子平均サイズを微細化できない。また、NH4 基を含まないめっき浴組成では、めっき皮膜の配向性も強くなって、Ni−Pめっき皮膜の配向度を、X線回折法による皮膜組織解析における、Ni(111)とNi(200)との測定ピーク強度比Ni(111)/Ni(200)を0.3〜0.5とすることができなくなる。一方、NH4 基含有量が1%を超えてもこの効果は飽和し、却って上記基本特性が低下する。したがって、NH4 基は0.1〜1%の範囲で含有させる。
その他、本発明めっき皮膜では、CoやSの含有を許容する。Coは0.05%以上、Sは0.01%以上の含有で、硬度向上の効果がある。但し、多過ぎるとめっき皮膜の上記基本特性を低下させる恐れがあるので、Coについては、Ni、P、NH4 基などの含有量を保証できる1%以下とし、Sについては、靱性低下の観点から3%以下とする。
また、この他、C、B、W、Moなどの金属元素も、硬度向上の効果があり、Ni、P、NH4 基などの含有量を保証できる量までの含有を許容する。一方、Fe、Cu、Znは、めっき皮膜の上記基本特性を低下させる恐れがあるので、上記特性を阻害しない範囲での含有は許容する。
(Ni−Pめっき皮膜組織)
本発明では、特徴的には、Ni−Pめっき皮膜の、X線回折法による皮膜組織解析において、皮膜の結晶子平均サイズを1〜5nmに微細化させる。また、好ましくは、X線回折法による皮膜組織解析において、Ni(111)とNi(200)との測定ピーク強度比Ni(111)/Ni(200)が0.3〜0.5である配向の弱い乃至無いめっき皮膜とする。
上記皮膜の結晶子平均サイズの微細化によって、硬質皮膜における耐摩耗性、めっき密着性などの基本特性を保障する。
これに対して、例えば、前記した特許文献3では、Ni−Pメッキ密着性を向上させるために、被メッキ材表面の結晶面方位とメッキの結晶面方位との整合性を極力保つべく、結晶面方位〈111 〉の積分強度を次式で90%以下となるように、積極的に配向させている。〔〈111 〉/(〈111 〉+〈200 〉+〈220 〉+〈311 〉+〈222 〉)〕×100 ≦90。
しかし、このように、めっきの結晶面方位を配向させた場合、上記基本特性が低下しやすい。また、めっきの結晶面方位を敢えて配向させずとも、めっき皮膜とチタン基材との密着性は、本発明の界面層(中間層)によって、より向上させることができる。
本発明では、好ましくは、めっき皮膜の結晶の配向性を、めっき皮膜の主結晶面方位であるNi(111)とNi(200)とのX線回折法(XRD)による測定ピーク強度比によって規定し、この測定ピーク強度比で0.3〜0.5の範囲にあることとする。このように、めっき皮膜の結晶の配向性を弱くすることによって、靱性が50kN以上に高くなる一方、めっき引張応力が5kgf/mm2 以下となって、前記高硬度でも割れにくくなる。
この測定ピーク強度比が0.3未満の場合はNi(200)の結晶面方位の配向性が強くなり、一方、0.5を超えた場合も、前記従来技術と同様に、Ni(111)の結晶面方位の配向性が強くなり、靱性が低下したり、めっき引張応力が上昇して、上記基本特性が低下する可能性がある。
(Ni−Pめっき皮膜膜厚)
以上の組成からなるNi−Pめっき皮膜の平均膜厚は、好ましくは1〜100μmの範囲から選択される。Ni−Pめっき皮膜の平均膜厚が1μm未満では、耐摩耗性を保障できない可能性がある。一方、Ni−Pめっき皮膜の平均膜厚が100μmを超えると、逆に、密着性を含めためっき皮膜の基本特性が低下する可能性がある。
なお、本発明によれば、Ni−Pめっき皮膜の平均膜厚は上記範囲から選択されるものの、選択(制作)した平均膜厚の部品表面における分布(ばらつき)は、最大の膜厚と最小の膜厚との差が少ない方が好ましい。
(チタン材とNi−Pめっき皮膜との界面)
Ni−Pめっき皮膜のこれらの効果を更に向上させるためには、前記チタン材とNi−Pめっき皮膜との界面に、界面層(中間層、Ni−Pめっき皮膜の下地層)として、下記する各中間層を形成させる。
(1)Niが99%以上からなるNiまたはNi合金層。
(2)Pdが90%以上からなるPdまたはPd合金層。
これら各中間層のNiあるいはPdの純度がこれ以上低くなると、これら中間層の効果が達成できない可能性が生じる。
(NiまたはNi合金層)
NiまたはNi合金層上はNiめっきが析出しやすく、また密着性良く成膜しやすい。しかしながら、析出するNiめっきの結晶子サイズ、配向度の制御は難しく、結晶子サイズが大きく、配向度が強くなりがちである。前述のNi−Pめっき浴を用いれば、請求範囲内に結晶子サイズ、配向度を抑制することも可能であり、望ましくは、NiまたはNi合金層上が粗面化されている方が、Ni-Pめっきが析出する核を多数形成し、結晶子サイズを低減することができるため良い。
(PdまたはPd合金層)
PdまたはPd合金層は、Pdの分散析出ができている場合には、Pdが核としてNi−Pめっきが析出するため、Ni−Pめっき皮膜の前記結晶子サイズを微細化する作用を有する。また、Ni−PめっきはこのPd面に密着性良く成膜しやすいため、Ni−Pめっき皮膜とチタン材との密着性を向上させる。
(硬質Crめっき)
本発明では、用途からくるより高硬度化の要求に応じて、必要により、前記Ni−Pめっき皮膜の上層として、更に、平均膜厚が0.1〜5μmで、硬度が900Hv以上の、硬質Crめっきを施しても良い。硬質Crめっきは、他部材の接触時に、初期当たり(衝撃)を緩和する役割を果たす。但し、高荷重では、特にチッピング(割れによる摩耗)が生じやすく、Ni−Pめっき皮膜の潤滑性を低下させる。このため、硬質Crめっきを設ける場合には、初期の摩耗で硬質Crめっき皮膜が無くなり、部材のなじみが出てからは、硬質Crめっき皮膜が無い状態で使用されるように、皮膜厚みを調整することが好ましい。
以上のように形成したNi−Pめっき皮膜は、硬度が500Hv以上、より好ましくは、靱性が50kN以上、めっき引張応力が5kgf/mm2 以下の基本特性を有する。硬度が500Hv未満では耐摩耗性が不足する。靱性が50kN未満では疲労寿命などの耐久性が不足する可能性がある。めっき引張応力が5kgf/mm2 未満では残留応力が高過ぎ、密着性が低下するとともに割れやすくなり、耐久性が不足する可能性がある。
また、以上のように形成した、中間層、上層:Ni−Pめっき皮膜からなる皮膜、特に無電解めっき皮膜は、最大の膜厚と最小の膜厚との差が、最も良い状態では、例えば0.5μm以内の範囲に均一化され、膜厚分布が均一で、めっき皮膜も均一化される。この結果、耐摩耗性を部品のどの部位においても保障しうる利点もある。
(皮膜形成方法)
以上説明した本発明皮膜の形成方法につき、以下に、具体的に説明する。
本発明皮膜の形成方法は、必要により粗面化処理されたチタン基材を、先ず、市販アルカリ脱脂剤にて脱脂、酸洗(例えば、3:1程度の硝弗酸で常温で約10分洗浄するか、10g/l程度の濃度の塩酸で常温で約10分洗浄する)、活性化処理(10g/l程度の濃度の硫酸で常温で約2分洗浄する)、水洗などの適当な前処理を必要により行なう。なお、本発明の皮膜形成方法では、以下に説明する各めっき工程間に、水洗などの適当な中間処理あるいは前処理を必要により適宜加えることを含む。
(中間層)
上記前処理後に、先ず、前記した各中間層を設ける。
(NiまたはNi合金層形成方法)
400g/l硫酸ニッケル+50g/l塩化ニッケル+50g/l硫酸を各々含むめっき浴で、浴温50℃程度、5A/dm2 程度通電して、所定時間の電気めっきを行なう。この電気めっき処理の回数や、金属イオン濃度、あるいは通電時間や通電量を調整して、NiまたはNi合金層のNi濃度(純度)や膜厚を制御する。
(NiまたはNi合金層粗面化方法)
NiまたはNi合金層上を粗面化するのは、基材を機械的、化学的に粗面化してもよいが、NiまたはNi合金層を形成してから、機械的、化学的に粗面化してもよい。容易であることから、NiまたはNi合金層を形成してから、#100のガラスビーズやアルミナビーズを吹き付けることによって、粗面化させることが推奨される。
(PdまたはPd合金層形成方法)
0.2g/l塩化パラジウム+10g/l塩化第一錫+100ml塩酸を各々含むめっき浴に、浴温40℃程度、2分程度浸漬する、浸漬めっきを行なう。その後、温度40℃、100g/l濃度の硫酸水溶液で、2分程度洗浄して、錫を除去する。この間の水洗は必要となる。上記めっき処理の回数や、金属イオン濃度、あるいは浸漬時間を調整して、PdまたはPd合金層のPd濃度(純度)や膜厚を制御する。
(Ni−Pめっき方法)
Ni−Pめっき皮膜を得るためには、電気めっきでも可であるが、膜厚(膜厚分布)の均一性の点で、前記Ni−Pめっき皮膜が無電解めっきであることが好ましい。以下に、好適な無電解めっき条件を説明する。
上記前処理後、あるいは選択的に設ける上記中間層(下地層)形成後に、Ni−Pめっき皮膜を無電解めっき法により形成する。めっき浴の浴組成は、上記めっき皮膜組成範囲内となるように、例えば、硫酸ニッケル30(10〜50の範囲)g/l、ホスフィン酸ナトリウム20(10〜30の範囲)g/l、NH4 基を含む化合物(例えばクエン酸水素第二アンモニウム)50(30〜70の範囲)g/l、を含み、更に添加剤として、酢酸ナトリウム、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸もしくはそれらのナトリウム塩等の有機添加剤を10g/l程度含むものとする。浴温は、80〜90℃の比較的高温が採用される。なお、浴の最適PHは6〜7の中性範囲である。
これら組成と温度、PHを制御しためっき浴に、上記中間層(皮膜)形成後のチタン基材を所定時間浸漬する。このNi−P無電解めっき浴の組成と温度、PH、あるいは浸漬時間を調整して、上記Ni−Pの組成や膜厚を制御する。
(Crめっき)
Crめっきは公知の方法で可能で、クロム酸100〜500g/l、硫酸3〜7g/l、三価クロム3〜7g/l、有機スルホン酸6〜10g/l、程度含むめっき浴を、45〜55℃、通電量約40〜60A/dm2 程度で電気めっきを行なう。このめっき浴の組成と温度、あるいは通電量、通電時間を調整して、Crめっきの膜厚を制御する。
(チタン基材)
皮膜の素材(母材)であるチタン基材の種類は、公知の純チタンやα、βチタン合金などを、要求特性や機械的性質に応じて適宜選択して用いることができる。
以下に本発明の実施例を説明する。
Ti−6%Al−4%V板から通常の摩耗試験用の44mmφ×5mmのディスク材を製作し、チタン基材とした。
これらのチタン基材を被処理材として、前記した方法および条件で、選択的に、中間層、そして、上層:Ni−P無電解めっき皮膜からなる皮膜を各々形成した。この内、Ni−P無電解めっき皮膜は各例とも共通して平均皮膜厚みが10μm、または75μm(±0.5 μm)となるように成膜した。なお、硬質Crめっきも、Ni−P無電解めっき皮膜の上層に選択的に形成した。また、中間層として、NiまたはNi合金層を形成した場合は、NiまたはNi合金層表面に対し、#100のガラスビーズを吹き付け粗面化させた。
これら作製した各ディスク材の皮膜性状を以下の通り測定した。これらの結果を表1に示す。
(中間層)
Ni層、Pd層の、各層の厚さ。
Ni層あるいはPd層の、Ni、Pdの純度。
(Ni−P無電解めっき皮膜)
Ni量、P量、NH4 + ( NH4 基) 量、結晶子サイズ、
XRDでの測定ピーク強度比:Ni(111)/Ni(200)。
なお、これら各皮膜性状は、それぞれ以下の方法により測定した。
(Ni−P無電解めっき皮膜)
Ni−Pめっき皮膜のNi、P量はICP発光分光法、NH4 + 量はイオンクロマトグラフ法を使用した。但し、これらの分析は、めっき皮膜がついた状態の試料で行い、標準基板には純チタンを用いた。また、測定により得られた下地層などからのCu、Zn、Alなどの元素は、Ni、P量やNH4 + 量算出のための計算からは除外した。
Ni−Pめっき皮膜の結晶子サイズは、試料表面よりX線回折装置により特性X線Cu-Kα(波長:1.54Å)を用い、Ni(200)回折面で行い、回折プロファイルの広がり(積分幅)の測定結果を下記のScherrerの式に算入して求めた。なお、積分幅にはCauchy関数により補正した値を用いた。D=K・λ/βcosθ、D:結晶氏の大きさ(Å)、K:定数(1.05)、λ:測定X線波長(Å)、β:結晶子の大きさによる回折線の広がり、積分幅(ラジアン)、θ:回折線のブラック角。
Ni−Pめっき皮膜のXRDでの測定ピーク強度比は、同じくめっき皮膜がついた状態の試料表面より、X線回折装置により特性X線Cu-Kα(波長:1.54Å)を用い、得られたX線回折チャートより{111}、{200}のピーク高さからピーク強度を求め、Ni(111)/Ni(200)を算出した。
(中間層)
Ni層のNi量、Pd層のPd量は、オージェ電子分光法の深さ方向濃度分布より、各金属量がピークとなる深さでの定量分析を行なった。
(厚み)
各層あるいは皮膜の厚みは、各10箇所の500倍のSEM(走査型電子顕微鏡)にて断面を観察して、各層あるいは皮膜の平均膜厚を求めた。
(Ni−P無電解めっき皮膜特性)
また、作製した各ディスク材皮膜の、硬度、靭性、めっき引張応力などの特性を以下の通り測定した。これらの結果を表1に示す。
硬度:ビッカース硬度を荷重50gfにて断面より測定した。
靭性:ビッカース圧子押し込みによって、皮膜に割れが発生する最小荷重にて評価した。ただし、装置の最大荷重(50kgf)で割れが発生しない場合、>50kgfとした。
めっき引張応力:スパイラルめっき応力計によりめっき引張応力を測定した。
その上で、これら作製した各ディスク材表面 (皮膜) の耐摩耗性を各々以下の条件で評価した。これらの評価結果も表1に示す。
(耐摩耗性評価)
耐摩耗性試験1として、ショットブラスト(5kg/cm2、カ゛ラスヒ゛ース゛#100、直上10cmより吹き付け)により、各例の約10μm のNi−P無電解めっき皮膜が摩滅または剥離し、基材が露出するまでの時間を測定した。この試験の評価は以下の通りとした。>60sec :◎、30〜60sec :○、10〜30sec :△、<10sec :×。
耐摩耗性試験2として、ボールオンディスク試験を行った。この試験条件は、相手材のボールをSUJ2とし、荷重1kgf(最大接触面圧100kgf/mm2−ヘルツ圧より計算)、無潤滑、摺動速度1m/s、摺動距離1km での摩耗減量(mg)により評価した。この試験の評価は以下の通りとした。<3mg で◎、3 〜6mg で○、6 〜10mgで△、>10mgで×。
表1から分かる通り、発明例J〜Vは、Ni−Pめっき皮膜において、組成、結晶子平均サイズが本発明範囲を満足している。このため、Ni−Pめっき皮膜のめっきままでの硬度が500Hv以上であり、靭性も1kgf以上であり、めっき応力も5kgf/mm2以下である。
この結果、表1から分かる通り、発明例J〜Vは、全ての耐摩耗性試験において、評価×が無く、耐摩耗性チタン材として、あるいはこれを用いた機械部品として適用可能であることが分かる。
これに対して、比較例A〜Gは、Ni−Pめっき皮膜において、Ni−Pめっき組成、結晶子平均サイズ、中間層のいずれかが、本発明範囲外である。
比較例Aは、中間層が無く、成膜できなかった。
比較例Bは、Ni−Pめっき組成の内、Ni量が少な過ぎる。
比較例Cは、Ni−Pめっき組成の内、P量が少な過ぎる。
比較例Dは、Ni−Pめっき組成の内、NH4 基量が少な過ぎる。
比較例Eは、Ni−Pめっき組成の内、NH4 基量が多過ぎる。
比較例Fは、中間層のNi合金皮膜の組成の内、Ni量が少なすぎる。
比較例Gは、中間層のPd合金皮膜の組成の内、Pd量が少なすぎる。
この結果、比較例Bは硬度が低く、また、比較例C〜Gは結晶子サイズが本発明から外れ、靭性が低いまたはめっき応力が高い。
また、比較例H、Iは、Ni−Pめっき組成、結晶子平均サイズ、中間層ともに本発明範囲内であるが、前述のように、NiまたはNi合金中間層上にNi−Pめっきを施した場合、条件によっては結晶子サイズが大きくなる。
この結果、比較例A〜Iは、耐摩耗性が劣っており、耐摩耗性チタン材として、あるいはこれを用いた機械部品として適用できないことが分かる。
発明例の中でも、発明例Jは、Ni−Pめっき組成の内、Ni量が下限値に近い。発明例Kは、P量が下限値に近い。発明例L、Mは、NH4 基量が下限、上限値に近い。発明例N、Oは、中間層のNi、Pb成分量が下限値に近い。また発明例Pは、NiまたはNi合金中間層上のNi−Pめっきであり結晶子平均サイズが上限値に近い。
このため、これらの発明例は、これらのNi−Pめっき組成や中間層を中庸値近くで満足する発明例Q、T〜Vに比して、Ni−Pめっき皮膜のめっきままでの硬度が低い、靱性が低い、めっき引張応力が高いのいずれかの傾向にある。そのため、耐摩耗性も発明例Q、T〜Vに比して劣る。
したがって、これらの結果から、本発明におけるNi−Pめっきの組成や結晶子平均サイズ、中間層の、耐摩耗性に対する臨界的な意義が裏付けられる。
更に、発明例R、SのようにCr層を施すことによって、いっそう耐摩耗性が向上することがわかる。
Figure 0004519727
以上説明したように、本発明によれば、耐摩耗性や疲労特性の優れたNi−Pめっきを施した耐摩耗性チタン材、およびチタン材製機械部品を提供することができる。この結果、耐摩耗部品を軽量化したい用途、あるいは、耐摩耗性を含めてより信頼性の高い耐摩耗部品を求める用途に、耐摩耗性チタン材の適用を拡大できる。

Claims (5)

  1. Ni−Pめっき皮膜を設けたチタン材であって、前記Ni−Pめっき皮膜が、質量%で、Ni:85%以上、P:1〜5%、NH4 基:0.1〜1%を含むNi合金からなるとともに、X線回折法によるNi−Pめっき皮膜組織解析における皮膜の結晶子平均サイズが1〜5nmである結晶性めっき皮膜からなり、かつ前記チタン材とNi−Pめっき皮膜との界面に、Niが99%以上からなるNiまたはNi合金層か、Pdが90%以上からなるPdまたはPd合金層かの、少なくともいずれか一方が形成されており、Ni−Pめっき皮膜のめっきままでの硬度が500Hv以上であることを特徴とする耐摩耗性チタン材。
  2. 前記X線回折法によるNi−Pめっき皮膜組織解析における、Ni(111)とNi(200)との測定ピーク強度比Ni(111)/Ni(200)が0.3〜0.5である請求項1に記載の耐摩耗性チタン材。
  3. 前記Ni−Pめっき皮膜のめっき引張応力が5kgf/mm2 以下である請求項1乃至2のいずれか1項に記載の耐摩耗性チタン材。
  4. 前記Ni−Pめっき皮膜が無電解めっきである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の耐摩耗性チタン材。
  5. 前記Ni−Pめっき皮膜の上層に更に硬質Crめっきが施されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の耐摩耗性チタン材。
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