JP4518656B2 - 空調機または空気清浄機用の前面フィルタ - Google Patents

空調機または空気清浄機用の前面フィルタ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機能性(消臭性、抗微生物性等)、紡糸性、延伸性、物性(強度、寸法安定性等)、および経済性(コスト)にすぐれた芯鞘接合型の複合フィラメントから作製された空調機または空気清浄機用の前面フィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
〈ポリプロピレン製のフィルタ〉
空調機や空気清浄機に組み込むフィルタとして、コスト的に有利でかつ成形性、機械的強度、耐水性、耐薬品性などの特性がすぐれているポリプロピレン線条でできたフィルタが汎用されている。
【0003】
フィルタ用のポリプロピレンに、合成系の抗菌剤を練り込んだり、茶の抽出成分であるカテキン類を外的に付着担持または内添により担持させたりすることも知られている。
【0004】
たとえば、特開平1−99656号公報には、 0.1%以上の抗菌剤を練り込んだポリプロピレン繊維からなる抗菌エレクトレットフィルタにつき言及がある。ただしこの公報の実施例で使用している抗菌剤は、合成系の抗菌剤であるチアベンダゾールである。
【0005】
特開平7−148407号公報には、茶の抽出成分を有効成分とするウィルス不活性剤をフィルタに含浸またはフィルタ素材に練り込んだ抗ウィルスフィルタが示されている。茶の抽出成分とは、カテキン類などの茶ポリフェノールである。その実施例には、(イ)茶の抽出成分を水に溶解して水溶液としてからエレクトレットフィルタに含浸付着させた例、(ロ)茶の抽出成分をポリプロピレンに混合して溶融してフィルム状に成形し、カッティングし、不織布化を行った例、があげられている。
【0006】
特開平8−266828号公報には、集塵フィルタと茶の抽出成分を添着したフィルタとからなる抗ウィルスフィルタが示されている。茶の抽出成分とは、カテキン類などの茶ポリフェノールである。茶の抽出成分を添着したフィルタとは、エレクトレットフィルタ、HEPAフィルタ、高性能フィルタ、中性能フィルタ、バグフィルタなどである。
【0007】
〈ポリプロピレン製の複合モノフィラメント〉
特公昭63−3969号公報(特許第1456233号)には、高融点ポリプロピレンを芯成分とし、低融点ポリオレフィンを鞘成分とする複合モノフィラメントが示されており、そのモノフィラメントをネット状物とすることについても言及がある。ただし、抗菌剤などの有効成分を担持させることについては記載がない。このモノフィラメントは、芯成分により必要な強度が得られ、かつ鞘成分により熱融着性が得られるので、ネット状や不織布状にすることが容易である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
茶の抽出成分を水に溶解して水溶液としてからフィルタに外的に含浸担持させた場合、つまり含浸による付着担持方法にあっては、茶の抽出成分が水になじみがあるため抽出成分の固着性も耐水性も不足し、水分と接触する使い方をしたり時々水洗を行うような使い方をしたときには、付着成分である茶の抽出成分が容易に失われてしまうという問題点がある。
【0009】
カテキン類などの茶の抽出成分をフィルタ素材としてのポリプロピレンに内添して(練り込んで)溶融成形する方法にあっては、本来水溶性であるカテキン類などの茶の抽出成分が非極性の樹脂であるポリプロピレンに馴染みがないため、フィラメント表面にブリードして汚れを生じやすく、またそのフィラメントを水中に浸漬したり水洗したりしたときは、抽出成分の大部分が溶出して効果が激減してしまう。ブリードを見込んで内添量を多くしても、依然として水と接触したときの溶出量が大きい上、コスト高になり、また紡糸性、延伸性、強度が低下することを免れない。加えてこの内添法にあっては、溶融成形に際して、茶の抽出成分のうち有効な部分の相当量が揮散してしまい、比較的高価な有効成分が目減りすることを免れない。
【0010】
本発明は、このような背景下において、溶融成形に際して機能性成分が揮散により失われがたく、内添した機能性成分のブリードが効果的に抑制され、また内添した機能性成分が紡糸性、延伸性、物性(強度、寸法安定性等)に悪影響を与えることがなく、しかもその機能性成分の内添量を大きく減ずることができるのでコスト的にも有利であり、かつその機能性成分が本来有するすぐれた機能性(消臭性、抗微生物性等)が最大限に発揮される上、水と接触するような使い方をしてもその機能性が長期にわたり持続するので耐久性があり、さらには人体に接触するような使い方をしても安全性の高い芯鞘接合型の複合フィラメントから作製された空調機または空気清浄機用の前面フィルタを提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の空調機または空気清浄機用の前面フィルタは、
芯成分Xと鞘成分Yとで構成された芯鞘接合型の複合フィラメントから作製された空調機または空気清浄機用の前面フィルタであること、
前記芯成分Xが、ポリオレフィン系の第1樹脂(H) で形成されていること、および、
前記鞘成分Yが、カテキン類の濃度を高めた茶由来のカテキン製剤、茶サポニン類および茶葉粉末よりなる群から選ばれた少なくとも1種の機能性成分(A) とコロイダルシリカを必須成分として含むセラミックス成分(C) とが両者の複合体の形態で配合されたポリオレフィン系の第2樹脂(L) で形成されていること、
を特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0013】
〈複合フィラメント〉
本発明の空調機または空気清浄機用の前面フィルタは、芯成分Xと鞘成分Yとで構成された芯鞘接合型の複合フィラメントから作製される。芯鞘型であれば、同心円芯鞘型、偏心芯鞘型、多心芯鞘型のいずれであってもよい。
【0014】
〈芯成分X〉
本発明において、芯成分Xは、ポリオレフィン系の第1樹脂(H) で形成される。このポリオレフィン系の第1樹脂(H) としては、ポリプロピレンやポリエチレンがあげられる。これらのポリエチレンやポリプロピレンは、単独であっても、異なるグレードまたは種類のものの任意の割合の混合物であってもよい。なお第1樹脂(H) の融点は第2樹脂(L) の融点よりも高い方が好ましいことが多い。
【0015】
ここでポリプロピレンは、プロピレンのホモポリマーのみならず、プロピレンを主体とするエチレン、ブテン−1などのα−オレフィンとの共重合体であってもよい。ポリプロピレンのメルトフローレート(後に実施例の個所で定義する)は、 0.3〜400、好ましくは 0.5〜200とすることが多い。ポリプロピレンの代表例は、融点がたとえば150℃以上のプロピレン単独重合体であり、そのような高融点のポリプロピレンを芯成分Xとする複合フィラメントは、紡糸性、延伸性、物性(強度、寸法安定性)などの点において特に好ましい。
【0016】
ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどがあげられる。ポリエチレンは、エチレンのホモポリマーのみならず、エチレンを主体とするプロピレンやブテン−1などのα−オレフィンとの共重合体であってもよい。ポリエチレンのメルトインデックス(後に実施例の個所で定義する)は、 0.1〜100、好ましくは 0.2〜80とすることが多い。
【0017】
〈鞘成分Y〉
一方、鞘成分Yは、機能性成分(A) とセラミックス成分(C) とが配合されたポリオレフィン系の第2樹脂(L) で形成される。このポリオレフィン系の第2樹脂(L) としても、ポリプロピレンやポリエチレンがあげられる。これらのポリエチレンやポリプロピレンは、単独であっても、異なるグレードまたは種類のものの任意の割合の混合物であってもよい。
【0018】
ここでポリプロピレンは、プロピレンのホモポリマーのみならず、プロピレンを主体とするエチレン、ブテン−1などのα−オレフィンとの共重合体であってもよい。ポリプロピレンのメルトフローレート(後に実施例の個所で定義する)は、 0.3〜400、好ましくは 0.5〜200とすることが多い。
【0019】
ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどがあげられる。ポリエチレンは、エチレンのホモポリマーのみならず、エチレンを主体とするプロピレンやブテン−1などのα−オレフィンとの共重合体であってもよい。ポリエチレンのメルトインデックス(後に実施例の個所で定義する)は、 0.1〜100、好ましくは 0.2〜80とすることが多い。
【0020】
得られる複合フィラメントに熱融着性が要求されるときは、用いるポリオレフィン系の第2樹脂(L) は、上述のポリオレフィン系の第1樹脂(H) よりも低融点(好ましくは5℃以上低融点)のポリオレフィン、たとえば、ポリエチレン、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマーであることが好ましい場合が多い。
【0021】
機能性成分(A) としては、カテキン類の濃度を高めた茶由来のカテキン製剤、茶サポニン類および茶葉粉末よりなる群から選ばれた少なくとも1種が用いられる。これらは、消臭性(脱臭性、悪臭消去性、有害ガス成分除去性等)、抗微生物性(抗菌性、殺菌性、静菌性、抗カビ性、抗ウイルス性等)、生理活性(抗アレルギー性等)、抗酸化性などの機能性を有する成分である。
【0022】
機能性成分(A) としては、カテキン類の濃度を高めた茶由来のカテキン製剤が特に重要である。茶カテキンの主たる成分は、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキン、エピカテキンガレートなどであるが、個々の成分に単離する必要はないので、これらの混合物からなる茶カテキンを濃厚に含む製剤(殊に20%以上、好ましくは25%以上含むもの)をそのまま好適に用いることができる。市販の茶由来のカテキン製剤には30%品、50%品、60%品、70%品、80%品、90%品などがあるので、その入手は容易である。
【0023】
茶サポニン類は、有機溶剤や水を用いて茶葉や茶の種子からサポニンを含む成分を抽出し、ついでカラムクロマトなどの手段を用いて繰り返し精製を行うことにより取得できる。茶サポニンには、ステロイド系サポニン、トリテルペノイド系サポニンなどがあるが、本発明の目的にはこれらをいずれも使用することができる。
【0024】
茶葉粉末としては、一番茶・二番茶・三番茶・深むし、かぶせなどの茶の粉末を用いることができる。
【0025】
セラミックス成分(C) としては、コロイダルシリカを必須成分として含むものであれば、種々のセラミックスが用いられ、以下に詳述するように、無機質焼結助剤−無機質凝集剤を組み合わせたもの、または、セラミックス粒子−無機質焼結助剤−無機質凝集剤を組み合わせたものが好適に用いられる。
【0026】
無機質焼結助剤としては、リン酸、硫酸、硝酸、炭酸などの無機酸の多価金属塩、アルカリ金属やアルカリ土(類)金属のフッ化物やケイフッ化物があげられる。多価金属塩としては、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、マンガンなどが好適に用いられ、これらは通常は含水塩ないし水和物を水に溶解した形で使用に供される。
【0027】
無機質凝集剤としては、ゾル状または溶液状の無機質凝集剤、殊に、ゾル状の無水ケイ酸または溶液状のケイ酸塩(ケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウム)が好適に用いられる。
ゾル状の無水ケイ酸には、水を媒体とする通常のコロイダルシリカのほか、アルコール等の有機溶媒を媒体とするオルガノシリカゾルがある。
【0028】
セラミックス粒子−無機質焼結助剤−無機質凝集剤におけるセラミックス粒子としては、各種の粘土鉱物、酸化物、水酸化物、複合酸化物、窒化物、炭化物、ケイ化物、ホウ化物、ゼオライト、クリストバライト、ケイ藻土、ケイ酸の多価金属塩などがあげられる。粘土鉱物としては、カオリン、ろう石、セリサイト、ベントナイトなどがあげられる。酸化物としては、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、マグネシアなどがあげられる。水酸化物としては、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、マンガンの水酸化物などがあげられる。複合酸化物の例はミョウバンである。窒化物の例は、窒化ケイ素、窒化ホウ素などである。炭化物の例は、炭化ケイ素、炭化ホウ素などである。ケイ酸の多価金属塩としては、アルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩などがあげられる。
【0029】
各成分の割合は、無機質焼結助剤−無機質凝集剤の組み合わせにあっては、無機質焼結助剤の固形分100重量部に対し、無機質凝集剤が固形分で100〜300重量部程度あるいはそれ以上とすることが多い。セラミックス粒子−無機質焼結助剤−無機質凝集剤の組み合わせにあっては、セラミックス粒子を主体とし、無機質焼結助剤および無機質凝集剤はそれぞれの役割を発揮する量とするが、セラミックス粒子100重量部に対し、無機質焼結助剤が固形分で 0.5〜20重量部程度、無機質凝集剤が固形分で 0.5〜25重量部程度とすることが多い。
【0030】
先にも述べたように、鞘成分Yは、機能性成分(A) とセラミックス成分(C) とが配合されたポリオレフィン系の第2樹脂(L) で形成されるが、本発明においては、上記の機能性成分(A) とコロイダルシリカを必須成分として含むセラミックス成分(C) との複合体粒子を製造しておいてから、その複合体粒子を第2樹脂(L) に配合するようにする。
【0031】
セラミックス成分(C) が無機質焼結助剤−無機質凝集剤を組み合わせたものである場合、機能性成分(A) を含有する状態でセラミックスを凝集させることが好ましい。例をあげると、無機質焼結助剤の一例としてのリン酸アルミニウムの水溶液に機能性成分(A) を粉末であるいは水溶液またはアルコール溶液として混合し、pHを3〜4に調整して、無機質凝集剤の一例としてのコロイダルシリカのコロイド液を混合して系のpHを中性程度にもっていくと、凝集が起こるので、その凝集物をルツボや蒸発皿に移し、乾燥器または電気炉にて乾燥するまで加熱処理する。
【0032】
セラミックス成分(C) がセラミックス粒子−無機質焼結助剤−無機質凝集剤を組み合わせたものであるときも、機能性成分(A) を含有する状態でセラミックスを凝集させることが好ましい。例をあげると、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、チタニア等のセラミックス粒子に無機質焼結助剤の一例としてのリン酸アルミニウムの水溶液を硬練りペースト程度の粘度になるように加えて混練し、続いて機能性成分(A) を粉末であるいは水溶液またはアルコール溶液として混合し(あるいはセラミックス粒子に機能性成分(A) を混合しておいてから無機質焼結助剤を混練し)、また必要に応じてリン酸アルミニウムの水溶液を追加混合し、pHを3〜4に調整して、無機質凝集剤の一例としてのコロイダルシリカのコロイド液を混合して系のpHを中性程度にもっていくと、凝集が起こるので、その凝集物をルツボや蒸発皿に移し、乾燥器または電気炉にて乾燥するまで加熱処理する。
【0033】
鞘成分Yに占める第2樹脂(L) 、機能性成分(A) 、セラミックス成分(C) の割合は、第2樹脂(L) 100重量部に対して機能性成分(A) およびセラミックス成分(C) の合計量が1〜40重量部(好ましくは2〜30重量部)となるようにすることが望ましい。後者の合計量が余りに少ないときは所期の消臭性、抗微生物性、生理活性、抗酸化性などの機能性が充分には発揮されず、一方後者の合計量が余りに多くしても、機能性は一定以上には上がらないばかりでなく、複合フィラメントの生産性が低下したり、強度や風合が低下したりするというマイナス面が目立つようになる。
【0034】
また、機能性成分(A) とセラミックス成分(C) との間の関係においては、セラミックス成分(C) 100重量部に対し機能性成分(A) を1〜300重量部(好ましくは2〜200重量部、さらに好ましくは3〜150重量部)とすることが望ましい。機能性成分(A) の割合が余りに少ないときには所期の消臭性、抗微生物性、生理活性、抗酸化性などの機能性が不足し、機能性成分(A) の割合が余りに多いときには、セラミックス成分(C) に対するバランスを崩し、コスト的にも不利となる。
【0035】
〈芯成分Xと鞘成分Yとの割合〉
複合フィラメントにおける芯成分Xと鞘成分Yとの割合は、重量比で、30:70〜80:20、殊に35:65〜75:25とすることが好ましい。鞘成分Yの割合が余りに少ないときには、機能性成分(A) の割合が過小となるので所期の機能性が充分には奏されず、また得られるフィラメントに熱接着性が要求されるときは熱接着性が不足するようになる。一方、鞘成分Yの割合が余りに多いときには、相対的に芯成分Xの割合が過小になるため、紡糸性、延伸性、強度、寸法安定性などの点で不満足となりやすい。
【0036】
〈複合フィラメントの製造法〉
上述の複合フィラメントは、ポリオレフィン系の第1樹脂(H) と、機能性成分(A) とセラミックス成分(C) とが配合されたポリオレフィン系の第2樹脂(L) とを、第1樹脂(H) が芯成分X、機能性成分(A) とセラミックス成分(C) とが配合された第2樹脂(L) が鞘成分Yとなるように、それぞれの溶融温度以上の温度で共押出成形することにより製造することができる。共押出成形は、2台の押出機を用い、複合ダイから線状に吐出することにより達成できる。場合によっては、回転ダイを用いてネット状に成形することもできる。なお第2樹脂(L) 側は、予め内添する材料の濃度の濃いマスターバッチを作製しておいて、そのマスターバッチを第2樹脂(L) と混合して成形に供することもできる。
【0037】
第1樹脂(H) 側、第2樹脂(L) 側には、もし必要なら、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、滑剤、帯電防止剤、艶消し剤、流動性改善剤、可塑剤、難燃剤などの助剤を内添しておくことができる。特に機能性成分(A) とセラミックス成分(C) とを配合した第2樹脂(L) の側には、酸化防止剤等の安定剤と共に、金属石鹸をはじめとする凝集防止性ないし分散性の向上に有効な成形助剤を併用配合して、機能性成分(A) およびセラミックス成分(C) (殊にこれら両者からなる複合体粒子)の均一分散を確保することが好ましく、また機能性成分(A) の担持性を向上させるため、銅塩、鉄塩、カルシウム塩、チタン塩、アルミニウム塩、銀塩、スズ塩、亜鉛塩、クロム塩、コバルト塩などの金属イオン源を適当量共存させておくこともできる。
【0038】
共押出成形後は、延伸を行うことが多い。延伸倍率に特に限定はないものの、倍率が余りに小さいときは、用途によっては強度が不足する傾向があるので、延伸倍率は3倍以上、殊に4倍以上とするのが通常である。一方、延伸倍率を余りに大きくすると、芯鞘間において層間剥離を起こしやすくなるなどのトラブルを生ずることがあるので、延伸倍率の上限は一般には10倍程度までである。なお、延伸を必要としない用途もあるので、延伸は必須ではない。
【0039】
〈応用、用途〉
本発明における芯鞘複合型の複合フィラメントの太さは、極細デニールから極太デニールまで任意である。複合フィラメントから、ネット、ロープ、ベルト、糸、パイル、綿(ワタ)状物、織布、不織布、編布などの二次製品を得ることも自在である。この複合フィラメントまたはその二次製品を、天然繊維(木綿、麻、絹、羊毛等)、合成樹脂(ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等)系の繊維やモノフィラメント、半合成繊維(アセテート等)、再生繊維(レーヨン等)、無機繊維(ガラス繊維、炭素繊維等)などの繊維やモノフィラメントあるいはそれらの二次製品と組み合わせて用いることもできる。
【0040】
上述の芯鞘複合型の複合フィラメントから、空調機や空気清浄機の前面フィルタが作製される。このときにはモノフィラメントをネットの形態で用いることが多い。この場合、フィルタ枠はポリプロピレンが主に使用されるため、本発明の複合フィラメントの鞘成分Yのポリオレフィン系の第2樹脂(L) の種類や内添物の量を選択または制御して熱融着性を持たせるようにすれば、モノフィラメントとフィルタ枠との熱融着を行うことができる。そしてモノフィラメントを予め熱融着しておけば、二次加工時や実用時にネットが目ずれを起こすのを有効に防止できるという利点がある。
【0041】
【実施例】
次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。「部」、「%」とあるのは重量基準で表わしたものである。
【0042】
以下において、MI(メルトインデックス)とあるのは、温度190℃、荷重2160g、オリフィス孔径 2.092mmの条件で10分間押し出した試料の重量をg数で表わしたものである。MFR(メルトフローレート)とあるのは、温度230℃、荷重2160g、オリフィス孔径 2.092mmの条件で10分間押し出した試料の重量をg数で表わしたものである。
【0043】
〈材料の準備〉
高温溶融性のポリプロピレンよりなる第1樹脂(H) として、
・(H1): 融点が163℃でMFRが 3.1のポリプロピレン(PP)、
・(H2): 融点が163℃でMFRが 5.9のポリプロピレン(PP)
の2種を準備した。
【0044】
低温または高温溶融性のポリオレフィンよりなる第2樹脂(L) として、
・(L1): 融点が163℃でMFRが 3.1のポリプロピレン(PP)、
・(L2): 融点が128℃でMFRが17.3のポリプロピレン(PP)、
・(L3): MIが16.1の高密度ポリエチレン(HDPE)
の3種を準備した。
【0045】
第2樹脂(L) 側に内添する機能性成分(A) として、
・(A1): 茶カテキン30%品(エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンおよびエピカテキンガレートの合計量が約30%の茶由来のカテキン製剤)、
・(A2): 純度70%の茶サポニン、
・(A3): 緑茶粉末
を準備した。
【0046】
第2樹脂(L) 側に内添するセラミックス成分(C) の原料として、
・(C2): リン酸アルミニウムおよびコロイダルシリカ、
・(C3): シリカ、リン酸アルミニウムおよびコロイダルシリカ
を準備した((C 1 )は欠番)。
【0047】
〈機能性成分(A) −セラミックス成分(C) 複合体粒子の準備〉
次のようにして、機能性成分(A) とコロイダルシリカを含むセラミックス成分(C) との複合体粒子を製造した。
【0048】
(その2)
セラミックス成分(C) の原料のうち(C2)については、濃度25%のリン酸アルミニウム水溶液200部に機能性成分(A) を混合し、pHを3〜4に調整して、コロイダルシリカのコロイド液(固形分40%)の130部を加えて混合し、pHを中性にもっていった。スラリーは徐々に凝集していったので、ハンドリングが可能なうちに蒸発皿(またはルツボ)に移し、恒温乾燥器または電気炉で加熱し、100〜300℃で乾燥し、加熱処理した。これにより硬い不定形の凝集体が得られたので、それを自動乳鉢(またはボールミル)で微粉砕し、篩で分級して100〜325メッシュの粒度のものを取得した。ついでこの凝集体の粒子を恒温乾燥器または電気炉で加熱処理した。
【0049】
(その3)
セラミックス成分(C) の原料のうち(C3)については、平均粒径325メッシュアンダーのシリカ400部と、機能性成分(A) 130部とを乾式混合した後、濃度25%のリン酸アルミニウム水溶液200部を添加しながら硬めに混練してペーストを得、このペーストにコロイダルシリカのコロイド液(固形分40%)50部を混合して、pHを中性にもっていった。この時点で徐々に凝集が起きてくるので、ハンドリングできるうちにルツボに移し、乾燥後、100〜300℃で脱水、加水分解させた。これを微粉砕した。
【0050】
実施例4〜6、9〜10(実施例1〜3、7〜8は欠番)
第2樹脂(L) に、少量の酸化防止剤および凝集防止剤(分散剤)と共に上記の(その2
)、(その3)の方法で得た機能性成分(A) 担持セラミックス成分(C) を混合して溶融押出すると共にペレット化した。このようにして得たペレットを鞘成分Y、上記の第2樹脂(H) のペレットを芯成分Xとして用いて、複合ダイを備えた2台の押出機により、鞘成分Yについては230℃((L1)を用いたとき)または205℃((L2)または(L3)を用いたとき)で、芯成分Xについては230℃で共押出成形し、ついで約6倍に延伸することにより、300デニールのモノフィラメント(複合フィラメント)を得た。次にこのモノフィラメントからネットを作製すると共に、ポリプロピレン製の枠に固定または熱融着させて、空調機用の枠付きの前面フィルタを作製した。条件を表1に示す。
【0051】
比較例1〜4
第1樹脂(H1)に機能性成分(A) を内添して230℃で押出成形し、ついで約6倍に延伸することにより、300デニールのモノフィラメントを得、さらにフィルタを作製した。
条件を表1に併せて示す。
【0052】
比較例5〜6
第2樹脂(L) へのセラミックス成分(C) の内添を省略したほかは、実施例1〜8と同様にして共押出し、ついで約6倍に延伸することにより、300デニールのモノフィラメント(複合フィラメント)を得、ついでフィルタを作製した。条件を表1に併せて示す。
【0053】
なお図1(イ)、(ロ)に、それぞれ、実施例4で得られた複合モノフィラメントおよび比較例1で得られたモノフィラメントのモデル的な断面図を示す。
【0054】
【表1】

第1樹脂(H) 側 第2樹脂(L) 側 複合体 (H) (A) (L) (A) (C) 粒子
比較例1 (H1)97部 (A1) 3部 - - - -
比較例2 (H1)97部 (A2) 3部 - - - -
比較例3 (H1)93部 (A1) 7部 - - - -
比較例4 (H 1 )93部 (A 2 ) 7部 - - - -
比較例5 (H1)50部 - (L1)46部 (A1) 4部 -
比較例6 (H 1 )50部 - (L 2 )46部 (A 1 ) 4部 -
実施例4 (H1)50部 - (L2)35部 (A1) 3部 (C2)12部 その2
実施例5 (H1)50部 - (L2)35部 (A2) 3部 (C2)12部 その2
実施例6 (H 1 )50部 - (L 2 )35部 (A 3 ) 3部 (C 2 )12部 その2
実施例9 (H2)50部 - (L2)35部 (A1) 3部 (C3)12部 その3
実施例10 (H 2 )50部 - (L 3 )35部 (A 2 ) 3部 (C 3 )12部 その3
【0055】
〈試験〉
上記で作製したフィルタを常温の水中に3時間浸漬してから一旦取り出して自然乾燥した後、もう一度水中に3時間浸漬してから取り出して自然乾燥し、最初の水浸漬の前および2回目の水浸漬の後の機能性成分(A) の量を示差熱重量分析計による熱分析(電気炉中で5℃/minの速度で昇温し、加熱過程における試料の熱収支(吸熱/発熱)とそれに伴う重量の増減を解析)により測定した。そして、水洗前および後のフィルタにつき、消臭試験および抗微生物性試験を下記の条件にて行った。結果を表2および表3に分けて示す。
【0056】
(消臭試験)
1m3の容器内には外部から操作できる空気清浄機、内部には上記で作製したフィルタを設置し、容器の中でタバコ5本を吸煙機に装着して着火し、最初の1本が燃え尽きた時点で吸煙機を停止し、最後のタバコが燃え尽きた時点で空気清浄機の運転を開始し、運転5分後および30分後にガス検知管を用いてアンモニア濃度を測定し、5分後の濃度(初期濃度)に比し30分後の濃度がどの程度減少しているかで脱臭率を求めた。
【0057】
(抗微生物性試験)
下記の条件により、各試料の抗菌性を調べた。
・試験項目:菌数減少率試験
・試験菌:Staphylococcus aureus ATCC 6538P
・試験方法:統一試験方法による。
・試験結果:
植菌数[A] 1.0×105 log A = 5.0
無加工布菌数[B] 1.6×107 log B = 7.2
(無加工布は標準綿布を使用)
log B - log A = 2.2 > 1.5 (試験は有効)
増減値 = log C - log A
増減値差 = (log B - log A) - (log C - log A)
【0058】
【表2】

比 較 例
1 2 3 4 5 6
水洗前
(A) 含有量 (%) 2.1 2.2 4.7 4.8 2.8 3.0
水浸漬後
(A) 含有量 (%) 0.3 0.3 0.7 0.6 0.2 0.2
NH3 脱臭率 (%) 48 48 54 53 43 43
抗菌性
菌数 log C 6.8 6.8 6.5 6.5 7.1 7.0
増減値 1.8 1.8 1.5 1.5 2.1 2.0
増減値差 0.4 0.4 0.7 0.7 0.1 0.2
(抗菌性試験の試料は 0.2gを採取)
【0059】
【表3】

実 施 例
4 5 6 9 10
水洗前
(A) 含有量 (%) 2.8 2.8 2.7 2.8 2.8
水浸漬後
(A) 含有量 (%) 2.7 2.7 2.7 2.7 2.7
NH3 脱臭率 (%) 77 74 73 77 77
抗菌性
菌数 log C 3.7 3.7 3.9 3.7 3.6
増減値 -1.3 -1.3 -1.1 -1.3 -1.4
増減値差 3.5 3.5 3.3 3.5 3.6
(抗菌性試験の試料は 0.2gを採取)
【0060】
表2、3のように、機能性成分(A) の内添量を3部としている比較例1〜2においては、水浸漬後の機能性が不充分であることがわかる。また機能性成分(A) の内添量を7部としている比較例3〜4にあっても、やはり水浸漬後の機能性が不充分であることがわかる。複合フィラメントとした比較例5〜6にあっては、外側層である鞘成分Y側に機能性成分(A) が内添されているので、水浸漬後の機能性がなおさら不充分となっている。なお、機能性成分(A) を内添していない第1樹脂(H1), (H2)のみのモノフィラメントの延伸品を用いたときのNH3 脱臭率は約40%であり、「測定値−40%」が実質的な脱臭率となる。また比較例(特に230℃で溶融押出を行っている比較例1〜5)においてはセラミックス成分(C) を共存させていないので、押出成形時に機能性成分(A) の相当量が揮散していることがわかる。
【0061】
〈抗ウィルス性試験〉
実施例4,5,9で得た複合フィラメント、および第1樹脂(H1)と第2樹脂(L1)との重量比で1:1の複合フィラメント(Control) を用いて、空調機用のフィルタからなる検体(3cm×3cm)を作製し、その検体にインフルエンザウィルス浮遊液 0.2mlを滴下し、25℃に保存した。保存24時間後に検体上のウィルスを洗い出し、洗い出し液中のウィルス感染価(1ml当りの50%組織培養感染量(TCID50)の対数値を測定した。結果を表4に示す。
【0062】
【表4】

log TCID 50 /ml
開始時 24hr後
Control 5.3 5.3
実施例4 5.3 3.5
実施例5 5.3 3.5
実施例9 5.3 3.5
【0063】
【発明の効果】
本発明の芯鞘接合型の複合フィラメントから作製される空調機や空気清浄機の前面フィルタにあっては、主として芯成分Xにより必要な紡糸性、延伸性、物性(強度、寸法安定性)が得られ、鞘成分Yによって消臭性、抗微生物性、生理活性、抗酸化性などの機能性が得られる。第2樹脂(L) の種類や内添物の量を選択または制御すれば、好ましい熱融着性が得られる。
【0064】
そして、鞘成分Yにおいては、機能性成分(A) がコロイダルシリカを含むセラミックス成分(C) と共存して定着および耐水化固定がなされている状態にあるため、溶融成形に際して機能性成分(A) が揮発により失われにくい上、内添した機能性成分(A) のブリードが効果的に抑制される。そして鞘成分Yに存在する機能性成分(A) により、該成分が本来有する消臭性、抗微生物性などのすぐれた機能性が最大限に発揮される。しかも水と接触したり水洗するような使い方をしても、機能性成分(A) が容易には溶出しないので、その機能性が長期にわたり持続する。セラミックス成分(C) の存在は、温湿度変化などの環境変化に対するフィラメントの寸法安定性や耐熱性の向上にも貢献する。
【0065】
また表面側の鞘成分Yに機能性成分(A) が存在するだけでよいので、機能性成分(A) の内添量を大きく減ずることができ、経済的にも有利となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例4で得られた複合モノフィラメントおよび比較例1で得られたモノフィラメントのモデル的な断面図である。
【符号の説明】
X…芯成分、
(H) …第1樹脂、
Y…鞘成分、
(L) …第2樹脂、(A) …機能性成分、(C) …セラミックス成分

Claims (3)

  1. 芯成分Xと鞘成分Yとで構成された芯鞘接合型の複合フィラメントから作製された空調機または空気清浄機用の前面フィルタであること、
    前記芯成分Xが、ポリオレフィン系の第1樹脂(H) で形成されていること、および、
    前記鞘成分Yが、カテキン類の濃度を高めた茶由来のカテキン製剤、茶サポニン類および茶葉粉末よりなる群から選ばれた少なくとも1種の機能性成分(A) とコロイダルシリカを必須成分として含むセラミックス成分(C) とが両者の複合体の形態で配合されたポリオレフィン系の第2樹脂(L) で形成されていること、
    を特徴とする空調機または空気清浄機用の前面フィルタ
  2. 第1樹脂(H) の融点が第2樹脂(L) の融点よりも高温である請求項1記載の空調機または空気清浄機用の前面フィルタ
  3. 芯成分Xと鞘成分Yとの重量比が30:70〜80:20である請求項1記載の空調機または空気清浄機用の前面フィルタ。
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