JP4518465B2 - 晶析方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶析出量の少ない原料を効率良く晶析し、回収する方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
原料の容量に対して結晶析出量が少ない物質の晶析を図る場合、処理後のスラリー濃度がそれほど高くならず、また得られる結晶の粒径も小さくなりがちであるため、晶析自体の効率が低くなるばかりでなく、処理後のスラリーをそのまま固液分離機に供給し、結晶分を回収しようとしても、(イ)分離機での脱液率が低下する、(ロ)分離する結晶量に対する分離機の稼動負荷が高くエネルギー効率が悪い、等の問題がある。
【0003】
このため従来は、図2に示すように、結晶缶2から排出される処理済スラリーを、上記(イ)及び(ロ)の問題が発生し難いスラリーサイクロン等の濃縮装置10を用いてある程度まで濃縮した後、スクリーン装置や遠心分離機等の固液分離機4により結晶を回収するといった対策が採られて来た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、かかる従来の対策では、濃縮装置を用いる分だけ装置が複雑・過大となり、コストも嵩む。
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、結晶析出量の少ない物質を効率良く晶析し、効率よく回収しうる、より簡素かつ安価な技術を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
<請求項記載の発明>
種晶を含む所定濃度の原液スラリーまたは種晶を含まない原液を結晶缶内に連続的に供給し、結晶缶内のスラリーから清澄液を連続的に前記結晶缶外に抜出すことにより当該スラリーを前記結晶缶内において濃縮しながら、当該スラリー中の結晶を成長させる一方で、
結晶缶内のスラリー濃度が所定の抜出濃度に達する度に、結晶缶内の濃縮スラリーを抜き出して前記結晶缶外の固液分離機に供給し、当該固液分離機により濃縮スラリーから成長結晶を分離する、
ことを特徴とする晶析方法。
【0011】
(作用効果)
本発明では、結晶缶内のスラリーから清澄液を連続的に抜出すという簡素な手法により、結晶缶における結晶成長操作中にスラリーを濃縮するようになしているため、結晶析出量の少ない物質を効率良く晶析でき、また処理後のスラリーは濃縮装置を介さずに分離機に供給することもでき、後の回収を容易かつ効率良く行うことができるようになる。またこのような簡素な手法を採用することにより設備コスト及びランニングコストを著しく低減することができるようになる。
特に、スラリー濃縮を伴う結晶成長ステップを行う一方で、結晶缶内のスラリー濃度が所定の抜出濃度に達する度に、結晶缶内のスラリーを抜き出して固液分離機に供給し結晶回収を行うようにすると、成長結晶スラリーの排出はバッチ式になるものの、連続的な原液スラリーまたは原液の供給が可能であるため、晶析処理全体としては連続処理とすることができる。
【0012】
<請求項記載の発明>
前記原液スラリーまたは種晶を含まない原液の濃度を析出量が5重量%以下になる濃度とし、前記抜出濃度を10重量%以上として晶析操作を行う、請求項1記載の晶析方法。
【0013】
(作用効果)
具体的に、本発明はかかる低濃度の原液スラリーまたは原液を晶析する場合に好適であり、この場合結晶缶内からの清澄液の抜き出しにより10重量%以上に濃縮するのが好ましい。
【0014】
<請求項記載の発明>
結晶缶内のスラリー濃度が前記抜出濃度に達していないときに、結晶缶からスラリーを抜き出し、固液分離機を介さず、結晶缶から固液分離機へのスラリー供給路を介して再び結晶缶に戻す循環操作を行う、請求項1または2に記載の晶析方法。
【0015】
(作用効果)
かかる循環操作を行うことにより、結晶缶から固液分離機へのスラリー供給を断続的に行っても、そのポンプおよび供給路を含むスラリーの流路が閉塞されるおそれが少ない。
【0016】
<請求項記載の発明>
前記結晶缶内に、スラリーの攪拌手段と、中心部に貫通孔を有し、外周に向かうにつれて中心部よりも高さが高くなる形状の邪魔板とを設け、
前記攪拌手段による攪拌流から遮りながら前記濃縮スラリーを抜き出す、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の晶析方法。
【0017】
【0018】
【0019】
(作用効果)
通常の場合、缶内スラリー濃度の均一化等の目的で攪拌手段が必要になるが、邪魔板を設けることにより、スラリー抜出口が攪拌機による攪拌流から遮られるため、スラリー抜出口近傍においては結晶が自然沈降してスラリーが清澄化しているため、容易に清澄液を抜き出すことができる。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
図1は、本発明に係る晶析装置例1を示している。本発明の結晶缶2としては、特に限定されないが、攪拌機2mを備え、スラリーを攪拌して缶内循環を行うタイプのものが好適に使用できる。また結晶缶2内にドラフトチューブ等の間接冷却手段c1や、これとともに又はこれに代えて結晶缶2外面に冷却ジャケットc2を備えているものも好適に使用できる。
【0025】
前述のとおり、本発明は、結晶缶2内のスラリーから清澄液を断続的または連続的に抜出すことによりスラリーを濃縮することを骨子とする。したがって、本発明ではこの範囲内において例えば適宜のフィルタを介して結晶缶2内のスラリーを吸引し清澄液を抜き出す等、種々の形態を採ることができるが、図示形態のように結晶缶2内のスラリー液面以下の適宜位置にスラリー抜出口2zを設け、結晶分が殆どない液面近傍の液分を清澄液として抜き出す形態が簡素であり、また既存設備への適用も容易なため好ましい。ただし、このような液面近傍からのスラリー抜出形態を採用する場合に、攪拌機2mを用いると、その攪拌力により液面近傍まで結晶が舞い上がり、結晶缶2内に清澄な部分が殆ど無くなり、清澄液の抜き出しが困難となる。よって、かかる場合には、抜出口2zを攪拌機2mによる攪拌流から遮るように邪魔板2bを設けるのが好ましい。
【0026】
例えば、図示例の結晶缶2のように、缶内の径方向中央にドラフトチューブ型間接冷却手段c1が配置されており、その内空に攪拌機2mの攪拌翼が配置され、攪拌翼を回転させるとドラフトチューブc1内側のスラリーが下向きに、およびドラフトチューブc1外側のスラリーが上向きに流れるタイプのものにおいては、ドラフトチューブc1の上面に、逆さ裁頭円錐形の筒状邪魔板(すなわち中心部に貫通孔を有し、外周に向かうにつれて中心部よりも高さが高くなる形状の邪魔板)2bを液面下となる位置に設け、この邪魔板2bと液面との間の周壁にスラリー抜出口2zを設けるのが好ましい。この場合、邪魔板2bは、スラリーの流れが下向きとなる中心部は遮らず、液の出入り及び攪拌機2mを設ける場合にはその攪拌軸の取り回しを可能にするが、スラリーが上向きとなるドラフトチューブc1外側にあっては、スラリー抜出口1zをスラリーの流れから遮ることができる。かくして、邪魔板2bの上側にあるスラリーは攪拌機2mによる攪拌の影響を殆ど受けなくなり、清澄化するようになる。なお、図示形態では、結晶缶2から抜き出された清澄液は清澄液回収タンク7に供給されるように構成されている。
【0027】
他方、結晶缶2の下部には、成長結晶を含む結晶スラリーを排出するためのスラリー排出口2xが設けられており、本実施形態ではこのスラリー排出口2xが供給路3を介して固液分離機4の被分離液供給口4iに対し接続されるとともに、この供給路3を介して結晶缶2内のスラリーを固液分離機4の被分離液供給口4iへ圧送するポンプ装置Pが設けられている。固液分離機4としては、遠心分離機およびウェットスクリーン等、公知のものを用いることができる。特に、図示のようにポンプ装置Pを供給路3に介在させる場合には、供給路3におけるポンプ装置Pと固液分離機4の被分離液供給口4iとの間(特に被分離液供給口4iの近傍が好ましい)から循環路5を分岐し、この循環路5を結晶缶2内に対して連通させるとともに、その分岐点に三方切替弁6等の切替手段を介在させる等により、結晶缶2から排出される成長結晶スラリーを固液分離機4に供給する状態と結晶缶2に循環返送する状態とを切替可能にするのが好ましい。
【0028】
他方、かくして構成された晶析装置1によれば次のような晶析操作が可能になる。すなわち、例えば原液スラリーSLは結晶缶2内に対して連続的に供給することを原則として運転を開始する。供給されたスラリーは結晶缶2内のスラリーと混合され、その混合により、及び冷却手段c1,c2の作用により冷却され、結晶が析出される。この際、前述のとおり攪拌機2mにより缶内スラリーの濃度の均一化が図られるが、邪魔板2bの上側では攪拌機2mによる液の流れがないため、結晶の沈降作用により、邪魔板2bの上側には清澄液のみが常に存在するようになる。この清澄液は邪魔板2bから液面までの高さ位置に設けられた抜出口2zからオーバーフローにより系外に抜き出される(オーバーフローの場合、原料供給が断続的のときには断続的に抜き出され、連続的なときには連続的に抜き出される)。この操作により、結晶缶2内のスラリー濃度は上昇する。図示形態では、結晶缶2から抜き出された清澄液は清澄液回収タンク7に供給される。
【0029】
特徴的には、原液スラリーSLを結晶缶2内の濃縮スラリーに補充すると、原液スラリーSLの溶質の殆どが結晶缶2内に存在している結晶の成長に使用されるため、微細な偽晶の発生が少なくなり、反対に結晶缶2内の結晶の粒径は従来よりも大きくなる。
【0030】
かかる結晶の成長により、結晶缶2内スラリー濃度が所定の抜出濃度まで高くなったならば、ポンプ装置Pにより結晶缶2下部からスラリーを抜き出し、これを分離機4に供給して固液分離を行う。この抜出濃度は、原液スラリーSLの濃度が5%以下の場合、10%以上とすることができる。この固液分離機4に対する供給間隔は、原液スラリー濃度、原料に対する析出量等により適宜定めることができ、例えば通常の場合で数十分から数時間に1回の割合で供給することができる。かかる固液分離により固形分が成長結晶CLとして回収される。一方、分離された液分は、本実施形態では清澄液回収タンク7に供給される。
【0031】
かかる固液分離に際しては、スラリーがある程度まで濃縮されている点、スラリー中の結晶が充分な大きさに成長している点、ならびに断続的に分離処理を行えば足りる点から、脱液効率が高く、含有水分がより少ない結晶が得られるとともに、分離機4に対するスラリー供給を連続的に行う場合と比較して、分離機4にかかる負荷が小さいため、エネルギー効率も良い。
【0032】
かかる成長結晶スラリーの排出の一方で、結晶缶2内への原液スラリー供給は継続的に行われる。その結果、再び結晶缶2内のスラリー濃度が低下し、初期状態に戻る。以降は、上述の操作を繰り返すことにより、成長結晶スラリーの排出はバッチ式になるものの、連続的な原液スラリーの供給が可能であるため、晶析処理全体としては連続処理とすることができる。
【0033】
他方、上述のとおり、結晶缶2から固液分離機4へのスラリー供給を断続的に行う場合、その供給路3にスラリーが付着していたり、静止状態で残存していたりすると、それが装置や管内壁に付着し、閉塞に至るおそれがある。このため、本実施形態のように、ポンプ装置Pが供給路3に介在されている場合には、前述のように循環路5および切替弁6を設け、結晶缶2内のスラリー濃度が抜出濃度に達していないときでも、所定の間隔であるいは連続的に、切替弁6を循環路5に連通するように切り替え、ポンプ装置Pにより結晶缶2からスラリーを抜き出し、供給路3を介して再び結晶缶2に戻す循環操作を行うようにすると、供給路3内は常にスラリーにより洗浄されることになるため、閉塞を効果的に防止できる。なお、固液分離機4に対して成長結晶スラリーを供給する場合には、切替弁6により供給路3を固液分離機4に連通させるように切り替える。
【0034】
<その他>
(イ)上記例では、濃縮のための清澄液の抜き出しをオーバーフローにより行っているが、ポンプにより強制的に抜き出すこともできる。
【0035】
(ロ)上記例のような循環路5及び切替手段6を用いることに代えて、ポンプ装置として、竪型ポンプを結晶缶2内に設置し、固液分離機4に成長結晶スラリーを供給する時以外は、ポンプ内および供給路を構成する配管内にスラリーが堆積しにくい構造をとることで、スラリー流路の閉塞を抑制することもできる。
【0036】
(ハ)上記例の操作は自動制御により行うのが好ましいが、そのうちのいずれか一つ若しくは複数、または全ての操作を作業員が手動で行うこともできる。
【0037】
(ニ)上記例では、種晶を含む原液スラリーから晶析を行う場合を示したが、本発明は種晶を含まない原液のみから晶析を行う場合にも適用できる。
【0038】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、より簡素かつ安価に、結晶析出量の少ない物質を効率良く晶析し、効率よく回収することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る晶析装置例を示すフロー図である。
【図2】 従来の晶析装置例を示すフロー図である。
【符号の説明】
1…晶析装置、2…結晶缶、2b…邪魔板、2z…抜出口、3…供給路、4…固液分離機。

Claims (4)

  1. 種晶を含む所定濃度の原液スラリーまたは種晶を含まない原液を結晶缶内に連続的に供給し、結晶缶内のスラリーから清澄液を連続的に前記結晶缶外に抜出すことにより当該スラリーを前記結晶缶内において濃縮しながら、当該スラリー中の結晶を成長させる一方で、
    結晶缶内のスラリー濃度が所定の抜出濃度に達する度に、結晶缶内の濃縮スラリーを抜き出して前記結晶缶外の固液分離機に供給し、当該固液分離機により濃縮スラリーから成長結晶を分離する、
    ことを特徴とする晶析方法。
  2. 前記原液スラリーまたは種晶を含まない原液の濃度を析出量が5重量%以下になる濃度とし、前記抜出濃度を10重量%以上として晶析操作を行う、請求項1記載の晶析方法。
  3. 結晶缶内のスラリー濃度が前記抜出濃度に達していないときに、結晶缶からスラリーを抜き出し、固液分離機を介さず、結晶缶から固液分離機へのスラリー供給路の少なくとも一部を介して再び結晶缶に戻す循環操作を行う、請求項1または2に記載の晶析方法。
  4. 前記結晶缶内に、スラリーの攪拌手段と、中心部に貫通孔を有し、外周に向かうにつれて中心部よりも高さが高くなる形状の邪魔板とを設け、
    前記攪拌手段による攪拌流から遮りながら前記濃縮スラリーを抜き出す、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の晶析方法。
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