JP4517189B2 - 糖ヌクレオチド運搬作用を有するタンパク質、組織の癌化の検出方法 - Google Patents

糖ヌクレオチド運搬作用を有するタンパク質、組織の癌化の検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、新たな糖ヌクレオチド運搬作用を有するタンパク質、かかるタンパク質をコードする核酸、及び前記タンパク質の「被験組織における発現量の検出結果」と「当該被験組織の癌化」とを関連づけることによる「組織の癌化の検出方法」に関する。
本明細書においては、ウリジン二リン酸を「UDP」と、グアノシン二リン酸を「GDP」と、シチジン一リン酸を「CMP」と、N-アセチル-D-グルコサミンを「GlcNAc」と、D-フコースを「Fuc」と、D-ガラクトースを「Gal」と、L-シアル酸を「Sia」と、D-グルコースを「Glc」と、D-グルクロン酸を「GlcUA」又は「GlcA」と、N-アセチル-D-ガラクトサミンを「GalNAc」と、D-マンノースを「Man」、キシロースを「Xyl」と略記する。また、糖及び糖残基の表記において、シアル酸以外は特記なき場合にはラセミ体は全てD体を表す。
従来、糖ヌクレオチド運搬因子としては、例えばUDP-Gal運搬因子(非特許文献1)、GDP-Fuc運搬因子(非特許文献2、非特許文献3)、CMP-Sia(非特許文献4、非特許文献5)、UDP-GalNAc運搬因子(非特許文献6)等が知られていた。しかし、糖ヌクレオチド運搬因子のさらなる機能解明のためには、さらなる新たな糖ヌクレオチド運搬因子が望まれていた。
一方、組織の癌化を検出する方法としては、様々な方法が知られており、例えばX線検査、内視鏡検査や、CA19-9等の腫瘍マーカー検査等があげられる。X線検査や内視鏡検査などでは組織を形態的又は組織学的にしか観察できないため、確定的な診断はできず、また腫瘍マーカーも偽陽性、偽陰性が現れる点で確定的な診断には不十分であった。
組織の癌化の確定診断は実際に組織を生検により採取し、その組織の培養を行って確認する方法によって行われているが、この方法は組織の培養にそれなりの時間が必要とされる。
一方、内視鏡下で外科的手法により、生体組織の病変部を切除する手術は一般になされている。例えばそのような病変部について簡単に癌化の有無を確認する手法が存在すれば、癌化の早期発見にも繋げることができ、その後の患者の治療や予防に役立てることができる。
また、特許文献1にはGlcNAc転移酵素をコードするDNAを検出し、その「発現の変化」と「胃癌又は膵癌」とを関連づけることで、胃癌や膵癌の検出ができることが開示されている。
特開2001−46077号公報 J. Biochem., 120(2), 236-241(1996) Nat. Genet., 28(1), 73-76(2001) Nat. Genet., 28(1), 69-72(2001) J. Biochem., 120(6), 1074-1078(1996) J. Biochem., 124(1), 171-178(1998) J. Biochem., 126(1), 68-77(1999)
新たな糖ヌクレオチド運搬作用を有するタンパク質が発見されれば、生体内における糖ヌクレオチド運搬因子の仕組みの解明に繋がるため、このような発見が大いに期待されていた。また、採取した組織からなるべく早く、信頼性の高い「組織の癌化を検出する方法」の開発が強く望まれていた。
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、新たな「糖ヌクレオチド運搬活性」を有するタンパク質、及び「癌化した組織における、前記タンパク質をコードする核酸の転写産物量」が「健常組織における当該核酸の転写産物量」よりも減少していることを発見し、これを組織の癌化検出方法に応用することで本発明を完成した。
すなわち本発明は以下の通りである。
(1) 下記(a)又は(b)のタンパク質。
(a)配列番号2記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2記載のアミノ酸配列に1又は数個のアミノ酸の付加、欠失、置換、又は転位を有し、かつ糖ヌクレオチド運搬作用を有するタンパク質。
(2) 糖ヌクレオチド運搬作用が、ウリジン二リン酸−N−アセチル−D−グルコサミン、ウリジン二リン酸−グルコース又はグアノシン二リン酸−マンノース運搬作用であることを特徴とする(1)記載のタンパク質。
(3) (1)又は(2)記載のタンパク質を有効成分として含有する糖ヌクレオチド運搬作用剤。
(4) (1)又は(2)記載のタンパク質の、糖ヌクレオチド運搬作用剤としての使用。
(5) (1)又は(2)記載のタンパク質の「被検組織における発現量の検出結果」と、「前記被検組織の癌化」とを関連づけることを特徴とする被検組織の癌化の検出方法。
(6) (1)又は(2)記載のタンパク質の「被検組織における発現量の検出結果」が、「(1)又は(2)記載のタンパク質をコードする核酸が被検組織において発現する量」を定量し、該定量によって得られた値と健常組織における該核酸発現量とを対比することによって得られることを特徴とする(5)記載の被検組織の癌化の検出方法。
(7) 「(1)又は(2)記載のタンパク質をコードする核酸が被検組織において発現する量」が下記(A)、(B)又は(C)記載の塩基配列からなる核酸が発現する量であることを特徴とする(6)記載の被検組織の癌化の検出方法。
(A)配列番号1記載の塩基配列;
(B)配列番号1記載の塩基配列の一部を含み、30〜1500bpの塩基配列;
(C)配列番号1記載の塩基配列の一部の塩基配列に相補的な塩基配列を含み、30〜1500bpである塩基配列。
(8) 「配列番号1記載の塩基配列の一部」が、「配列番号1記載の塩基番号849〜919からなる塩基配列」、又は「配列番号1記載の塩基番号49〜1062からなる塩基配列」であることを特徴とする(7)記載の被検組織の癌化の検出方法。
(9) 「核酸が発現する量」が、当該核酸の遺伝情報の転写によって生じる転写産物量を定量することにより得られる(6)〜(8)の何れかに記載の被検組織の癌化の検出方法。
(10) 前記被検組織が胃又は大腸由来の組織であることを特徴とする(5)〜(9)何れか記載の組織の癌化の検出方法。
(11) 配列番号1記載の全塩基配列の一部又は該一部の塩基配列に相補的な塩基配列を含み、30〜1500bpであることを特徴とする核酸。
(12) 配列番号1記載の塩基番号849〜919からなる塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列を含むことを特徴とする(11)記載の核酸。
(13) 配列番号1記載の塩基番号49〜1062からなる塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列を含むことを特徴とする(11)又は(12)記載の核酸。
(14) 配列番号1記載の塩基番号49〜1062からなる塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列からなることを特徴とする(11)記載の核酸。
(15) DNAであることを特徴とする(11)〜(14)何れか記載の核酸。
(16) (11)〜(15)何れか記載の核酸の、組織の癌化の検出のための使用。
本発明により新規核酸、及び組織の癌化の新規な検出方法が提供される。
以下、本発明を発明の実施の形態により詳説する。
(1)本発明タンパク質
本発明タンパク質は、下記(a)又は(b)のタンパク質である。
(a)配列番号2記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2記載のアミノ酸配列に1又は数個の置換、欠失、挿入、又は転位を有し、かつ糖ヌクレオチド運搬作用を有するタンパク質。
本発明タンパク質のうち、上記(a)に示すタンパク質は、配列番号1記載の塩基配列のうち、塩基番号49〜1062の領域(コード領域:CDS)にコードされるタンパク質である。
一般に酵素活性を有するタンパク質のアミノ酸配列のうち、一若しくは数個の構成アミノ酸が置換、欠失、挿入、或いは転位しても酵素活性が維持されることが知られており、そのような変異を有するタンパク質も同一タンパク質のバリアントであると言うことができる。本発明タンパク質における(a)のタンパク質においても配列番号2記載のアミノ酸配列に、一若しくは数個(2以上21以下)の構成アミノ酸の置換、欠失、挿入、或いは転位が起こっていても、糖ヌクレオチドを運搬する運搬作用を保持している限りにおいて、上記(a)で表されるタンパク質と実質的に同一の物質であるということができ、本発明タンパク質に包含される。このような変異を有するタンパク質は、配列番号1記載の塩基番号49〜1062に1以上数個(2以上63以下であることが好ましい)の塩基の置換、欠失、挿入、又は転位を有する塩基配列にコードされるタンパク質であるということができる。
このような変異を有するタンパク質のアミノ酸配列は、上記(a)で表されるポリペプチドのアミノ酸配列と95%以上、好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上の相同性を有することが好ましい。アミノ酸配列の相同性は、FASTAのような周知のコンピュータソフトウェアを用いて容易に算出することができ、このようなソフトウェアはインターネットによっても利用に供されている。
すなわち、天然に存在するタンパク質には、それをコードする遺伝子DNAの多型や変異の他、生成後のタンパク質の細胞内及び精製中の修飾反応などによってそのアミノ酸配列中にアミノ酸の置換、欠失、挿入又は転位等の変異が起こりうるが、それにも拘わらず変異を有しないタンパク質と実質的に同等の生理、生物学的活性を示す物があることが知られている。このように構造的に若干の相違があってもその機能については大きな違いが認められないタンパク質も、上記「タンパク質」に包含される。人為的にタンパク質のアミノ酸配列に上記の様な変異を導入した場合も同様であり、この場合には更に多種多様の「変異を有するタンパク質」を作成することが可能である。例えば、ヒトインターロイキン2(IL-2)のアミノ酸配列中の、あるシステイン残基をセリン残基に置換したタンパク質がIL-2の活性を保持することが知られている(Science, 224(1984), p.1431)。またある種のタンパク質は、活性には必須でないペプチド領域を有していることが知られている。例えば、細胞外に分泌されるタンパク質に存在するシグナルペプチドや、プロテアーゼの前駆体等に見られるプロ配列などがこれに当たり、これらの領域のほとんどは翻訳後、又は活性型タンパク質への転換に際して除去される。このような活性に必須でないペプチド領域の配列を有するタンパク質は、一次構造上は異なった形で存在しているが、同等の機能を有するタンパク質であり、「本発明タンパク質」もそのような配列が連結していても良い。このような「変異を有するタンパク質」は「部位特異的変異法」などの公知の方法により容易に作成することが可能である。
「本発明タンパク質」が運搬する糖ヌクレオチドとしては、UDP-GlcNAc、UDP-Gal、GDP-Fuc、CMP-Sia、UDP-Glc、UDP-GlcA、UDP-GalNAc、UDP-Xyl及びGDP-Manが好ましく、UDP-GlcNAc、UDP-Gal、GDP-Fuc、UDP-Glc、UDP-GlcA及びGMP-Manがより好ましく、その中でも特にUDP-GlcNAc、UDP-Glc、及びGDP-Manが好ましい。哺乳類細胞においては、更にはUDP-GlcNAcおよびUDP-Glcが好ましい。
「本発明タンパク質」が有する「糖ヌクレオチド運搬作用」の確認は、例えばJ. Biol. Chem.,275, pp.13580-13587 (2000) の方法等にしたがって行うことができる。すなわち、[14C]、[3H]、又は[35S]などの放射性同位元素([3H]が好ましい)で放射能標識した「糖ヌクレオチド(UDP-GlcNAc等)」と、上記「本発明タンパク質」とを混合し、そこに酵母の膜画分を添加して、膜画分に移行した放射能を測定する方法で行うことができる(このような方法としては具体的には後述の実施例2記載の方法が例示される)。
また、本発明タンパク質は、糖ヌクレオチド運搬作用を有しており、生体内における糖鎖形成反応(Glycosylation reaction)に関与していることが推測されるが、特に、本発明タンパク質の発現が増すと、細胞内におけるヘパラン硫酸(以下、HSとも言う)の合成量も増加する。つまり、本発明タンパク質にはヘパラン硫酸合成活性化作用もあると言える。
(2)本発明核酸
「本発明核酸」は、配列番号1記載の全塩基配列又はその一部、或いは該塩基配列に相補的な塩基配列を含み、30〜1500bpであることを特徴とする核酸である。
「本発明核酸」における、「配列番号1記載の全塩基配列の一部」とは、30〜1500bp、好ましくは40〜1400bp、さらに好ましくは60〜1350bp、最も好ましくは80〜1300bpの長さからなる。このような核酸としては、例えば配列番号1記載の塩基番号49〜1062からなる塩基配列からなる核酸、及び配列番号1記載の塩基番号849〜919からなる塩基配列からなる核酸等が例示される。このような核酸又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸は、後述の「本発明検出方法」へ使用することができ、特にこのような長さの核酸は、殊にハイブリダイズ能と取り扱いやすさの双方を兼ね備えているため、ハイブリダイズ用プローブとして優れている。上記で例示される核酸以外の核酸であっても、上記例示した長さの範囲内で、配列番号1記載の塩基配列、特に塩基番号49〜1062の範囲内から適宜選択することができる。
なお、本明細書で核酸の長さを表す単位「bp」とは、核酸が二本鎖となっている場合にその二本鎖を形成する塩基対の数、一本鎖となっている場合には、その核酸に相補的な塩基配列からなる一本鎖がハイブリダイズした二本鎖の塩基対数に相当する数に換算した核酸の長さである。従って例えば「1000bp」の一本鎖のDNAは1000個のヌクレオチドで形成されていることになり、「1000bp」の二本鎖のDNAは2000個のヌクレオチド(1000対のヌクレオチド)で形成されていることになるが、双方とも同じ「1000個のヌクレオチドからなる鎖長」のDNAを表すことになる。
また、配列番号1記載の塩基配列からなる核酸又は当該塩基配列のうち塩基番号49〜1062を含む塩基配列からなる核酸は、タンパク質合成における開始コドン及び終止コドンに相当する塩基配列を含むため、「配列番号2記載のアミノ酸番号1〜337からなるアミノ酸配列からなるポリペプチド」を遺伝子工学的に調製するために使用することができ、有用である。
「本発明核酸」は、DNAであってもRNAであっても良いが、後述の「本発明検出方法」にハイブリダイズ用プローブ等として使用する場合や、組換ベクターや組換体の調製時に安定である点で優れるため、DNAであることが好ましい。
また、上記「配列番号1記載の塩基配列の一部を有する核酸又はそれに相補的な塩基配列からなる核酸」に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸(特にDNA)も、例えば配列番号1記載の塩基配列を有する核酸の生体内での発現状況、より具体的には該核酸を含む遺伝子の遺伝情報が転写されて生じる転写産物量などを検査するためのハイブリダイズ用プローブとして使用することができ、医学、生化学等の研究用の試薬又は診断薬として極めて有用である。
なお、ここで「ストリンジェントな条件下」とは、一般に「核酸のハイブリダイズを使用する実験手法(例えばノザンブロットハイブリダイゼーション、サザンブロットハイブリダイゼーション)」等で用いられる条件が挙げられ、好ましくは37.5%ホルムアミド、5×SSPE(塩化ナトリウム/リン酸ナトリウム/EDTA(エチレンジアミン四酢酸)緩衝液)、5×デンハルト溶液(Denhardt's solution)、0.5% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)存在下での42℃の条件が例示される。
「本発明核酸」は例えば以下の方法により調製することが可能である。
公知のヒト由来のUDP-Gal運搬関連遺伝子7であるUGTrel7の塩基配列(GenBank accession No.NM#015139)をクエリーとしてBLASTにより塩基配列を検索を行ない、配列番号1の全配列を含むクローン(GenBank accession No. XM#047286)を得ることができる。なお、後述の実施例 記載の方法においても上記クローンを同様に得ることが出来る。この相補配列を基にポリメラーゼチェイン反応(以下「PCR法」とも記載する)などを用いてヒトcDNAライブラリーなどから本発明核酸(例えば本発明DNA)をPCR法等の公知の方法により増幅して調製することができる。
「本発明核酸」は、例えば配列番号3記載の配列を5'プライマー、配列番号4記載の配列を3'プライマーとして使用して、例えばヒトゲノムcDNAライブラリーを鋳型として常法に従って一次PCR法を行い、更に配列番号5記載の配列を5'プライマー、配列番号6記載の配列を3'プライマーとして使用して、上記一次PCR法による産物を鋳型として二次PCR法を行うことで調製することができる。
配列番号1記載の塩基配列のうちポリペプチドをコードしていると考えられる領域(塩基番号49〜1062)は、5'プライマーとして配列番号7の塩基配列からなるプライマー及び3'プライマーとして配列番号8の塩基配列からなるプライマーを使用してPCR法で調製することができ、配列番号1記載の全塩基配列からなる核酸の調製は、例えば配列番号9の配列を5'プライマー、配列番号10記載の配列を3'プライマーとして使用して、市販のcDNAライブラリーを鋳型としてPCR法により調製することができる。また、配列番号1の塩基番号849〜919からなる塩基配列からなる領域は、5'プライマーとして配列番号11の塩基配列からなるプライマーと、3'プライマーとして配列番号12の塩基配列からなるプライマーとを使用して、同様にcDNAライブラリーから調製することができる。
この場合、配列番号3及び配列番号4のプライマーを使用したPCR法においては産物として1047bpのDNA断片が得られ、配列番号5及び配列番号6のプライマーを使用したPCR法においては産物として1081bpのDNA断片が得られ、配列番号7及び配列番号8のプライマーを使用したPCR法において産物として1014bpのDNA断片が得られる。これらを例えばアガロースゲル電気泳動等の分子量によりDNA断片を篩い分ける方法で分離し、特定のバンドを切り出す方法等の常法に従って単離して「本発明核酸」を得ることができる。
このようにして単離した「本発明核酸」から、それがコードする「ポリペプチド」を発現する組換体を調製するために使用することができる。すなわち、「本発明核酸」の両端に制限末端(粘着末端又は平滑末端)を常法により連結し、発現ベクターに挿入することができる。当業者であれば制限末端は発現ベクターに適合するように適宜選択することが可能である。発現ベクターは、「本発明核酸がコードするタンパク質を発現させたい宿主細胞」に適したものを当業者であれば適宜選択することができる。このような発現ベクターには、上記「本発明核酸」を目的の宿主細胞中で発現しうるように遺伝子発現に関与する領域(プロモータ領域、エンハンサー領域、オペレーター領域等)が適切に配列されており、さらに「本発明核酸」が適切に発現するように構築されていることが好ましい。
上記「本発明核酸を含む発現ベクター」を宿主細胞に組み込み、組換体を得ることができる。上記「宿主細胞」として真核細胞(ほ乳類細胞、酵母、昆虫細胞等)であっても原核細胞(大腸菌、枯草菌等)であっても使用することができる。宿主細胞として真核細胞を使用する場合には「本発明核酸を含む発現ベクター」の元となるベクター(以下「基本ベクター」とも記載する)として「真核細胞用の発現ベクター」を選択し、宿主細胞として原核細胞を使用する場合には基本ベクターとして「原核細胞用の発現ベクター」を選択する。
ところで「本発明核酸」はヒトゲノムライブラリーから発見された核酸であり、また運搬因子に関連する遺伝子であると考えられるため、本発明においては真核細胞を組換体の宿主細胞として用いるとより天然物に近い性質を有した「本発明タンパク質」が得られる(例えば糖鎖が付加された態様など)と考えられる。従って、「宿主細胞」としては真核細胞、好ましくはほ乳類細胞又は酵母、特にほ乳類細胞を選択することが好ましく、「本発明核酸を含む発現ベクター」の基本ベクターは真核細胞用のベクター、例えばほ乳類細胞用又は酵母用のベクターを選択することが好ましい。
近年、遺伝子工学的手法として、形質転換体を培養、生育させてその培養物、生育物から目的物質を単離・精製する手法が確立されている。「本発明核酸を含む発現ベクター」はその「本発明核酸」がコードする「ポリペプチド(タンパク質)」の単離・精製が容易となるように構築されていることが好ましい。特に上記「ポリペプチド」を「標識ペプチド」との「融合タンパク質」の形態で発現するように「本発明核酸を含む発現ベクター」を構築して遺伝子工学的に「ポリペプチド」を調製すると、単離・精製が容易となるため好ましい。
上記「標識ペプチド」の例としては、「本発明核酸がコードするポリペプチド」を遺伝子組み換えによって調製する際に、該「ポリペプチド」を「標識ペプチド」と結合した「融合タンパク質」として発現させることにより、形質転換体の生育物から「本発明核酸がコードするポリペプチド」の分泌・分離・精製又は検出を容易にすることを可能とする機能を有したペプチドが例示される。このような「標識ペプチド」としては、例えばシグナルペプチド(多くのタンパク質のN末端に存在し、細胞内の膜透過機構においてタンパク質の選別のために細胞内で機能している15〜30アミノ酸残基からなるペプチド:例えばOmpA、OmpT、Dsb等)、プロテインキナーゼA、プロテインA(黄色ブドウ球菌細胞壁の構成成分で分子量約42,000のタンパク質)、グルタチオンS転移酵素、Hisタグ(ヒスチジン残基を6〜10個並べて配した配列)、mycタグ(cMycタンパク質由来の13アミノ酸配列)、FLAGペプチド(8アミノ酸残基からなる分析用マーカー)、T7タグ(gene10タンパク質の最初の11アミノ酸残基からなる)、Sタグ(膵臓RNaseA由来の15アミノ酸残基からなる)、HSVタグ、pelB(大腸菌外膜タンパク質pelBの22アミノ酸配列)、HAタグ(ヘマグルチニン由来の10アミノ酸残基からなる)、Trxタグ(チオレドキシン配列)、CBPタグ(カルモジュリン結合ペプチド)、CBDタグ(セルロース結合ドメイン)、CBRタグ(コラーゲン結合ドメイン)、β-lac/blu(βラクタマーゼ)、β-gal(βガラクトシダーゼ)、luc(ルシフェラーゼ)、HP-Thio(His-patchチオレドキシン)、HSP(熱ショックペプチド)、Lnγ(ラミニンγペプチド)、Fn(フィブロネクチン部分ペプチド)、GFP(緑色蛍光ペプチド)、YFP(黄色蛍光ペプチド)、CFP(シアン蛍光ペプチド)、BFP(青色蛍光ペプチド)、DsRed、DsRed2(赤色蛍光ペプチド)、MBP(マルトース結合ペプチド)、LacZ(ラクトースオペレーター)、IgG(免疫グロブリンG)、アビジン、プロテインG等のペプチドが挙げられ、何れの識別ペプチドであっても使用することが可能である。その中でも特にシグナルペプチド、プロテインキナーゼA、プロテインA、グルタチオンS転移酵素、Hisタグ、mycタグ、FLAGペプチド、T7タグ、Sタグ、HSVタグ、pelB又はHAタグが、遺伝子工学的手法による本発明タンパク質の発現、精製がより容易となることから好ましく、特にHAタグとの融合タンパク質として「本発明核酸がコードするポリペプチド」の発現の確認が容易となるため好ましい。
ほ乳類細胞で発現可能であって、かつ上述のHAタグとの融合タンパク質として「本発明核酸がコードするポリペプチド」を得ることができる基本ベクターとしては例えばpCMV-HA(クロンテック社製)等が例示されるが、当業者であれば「本発明核酸がコードするポリペプチド」の発現に使用する宿主細胞、制限酵素、識別ペプチドなどから判断して適当な基本ベクターを選択することが可能である。
なお、本発明によって「本発明核酸の塩基配列」が開示されたため、当業者であれば目的とする「本発明核酸」や調製したい「本発明核酸の一部の領域」の両端の塩基配列を基に適宜プライマーを作成し、それを用いてPCR法などによって目的の領域を増幅して調製することが容易である。
(3)本発明検出方法
「本発明検出方法」は、本発明タンパク質の、「被検組織における発現量の検出結果」と「前記被検組織の癌化」とを関連づけることを特徴とする被検組織の癌化の検出方法である。
「本発明検出方法」における本発明タンパク質の発現量の検出は、例えば本発明タンパク質が有する糖ヌクレオチド運搬作用、好ましくはUDP-GlcNAc運搬作用を測定して行うことが可能であり、また上記本発明核酸が発現する量の測定や上記本発明核酸の遺伝情報の転写によって生じる転写産物量の定量により測定することでも検出することが可能であり、例えば本発明核酸のうち「配列番号1記載の塩基番号849〜919を含むDNAの転写産物量の変化」を測定することによって簡単に行なうことができる。
上述のDNAの転写産物量は、例えば上記で例示したDNAの5'末端と3'末端の塩基配列を基に作成したプライマーと、蛍光色素と消光物質を結合させたプローブとを用いた定量的リアルタイムPCR法(以下「定量的RT-PCR法」とも記載する)等を用いることで定量することが可能である。RT-PCR法に使用するプローブとしては例えば配列番号13記載の塩基配列からなる核酸が例示される。
「本発明検出方法」の被検組織としては、何れの組織であっても使用することが可能であるが、食道、胃、肺、膵臓、肝臓、腎臓、十二指腸、小腸、大腸、直腸、結腸などが挙げられ、好ましくは食道、胃、小腸、及び大腸が例示され、最も好ましくは胃及び大腸が例示される。
「本発明検出方法」は、組織から分離して得られる「組織片」を使用して行うことが好ましい。すなわち生検などによって得られた組織に含まれる病変部分(被検組織)における上記DNAの発現量と、該部分の周辺の健常部分における上記DNAの発現量とを対比することで、検出目的の疾患に由来する発現量の変化を「差」や「比」等として検出することができ、癌の診断、癌治療における経過観察等に有用である。
また、「本発明検出方法」における「DNAの発現量の定量」は、「DNA」又は「DNAから転写されて生ずるmRNA」を増幅してその量を測定するPCR法などの方法などがあるが、必ずしも「DNA」又は「DNAから転写されて生ずるmRNA」を定量して行なうことに限定はされず、例えば上記DNAが転写・翻訳されて生ずる「本発明核酸がコードするポリペプチド」を定量して行なうことも可能である。このような「ポリペプチドの定量」は、例えば精製した「本発明核酸がコードするポリペプチド」を使用して常法によって調製した抗体などを用いて常法(ウエスタンブロッティング、エンザイムイムノアッセイ等)に従って行なうことができる。この中でも特にPCR法が好ましく、RT-PCR法が最も好ましい。
組織の癌化は、好ましくは健常組織と比して被検組織における上記DNAの発現量が低下している場合に当該被検組織が癌化していると判定することが好ましく、特にRT-PCR法によって癌化を検出する場合には、健常組織と比して被検組織が上記DNAの発現量で3以上、好ましくは5以上、最も好ましくは10以上低下している場合に癌化していると判定することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)本発明核酸の調製方法
GDP-Fucトランスポーター遺伝子(GenBank accession No.NM_018389)のアミノ酸配列をクエリーとして、TBASTN検索を行った。その結果、オープンフレームリーディング領域(ORF領域)の全長を含む配列番号1記載のcDNA(GenBank Accession No.XM#047286)を同定した。なお、当該塩基配列(GenBank accession No.XM#047286)がUGTrel7とホモロジーを有することも判明した。また、この塩基配列がコードするアミノ酸配列は配列番号2と予測された。
配列番号1の塩基配列からなるcDNAを得るために、Platinum Pfx DNAポリメラーゼと、鋳型としてヒト大腸由来のcDNAライブラリー(クロンテック社製)を用い、5'プライマーとして配列番号3記載の塩基配列、3'プライマーとして配列番号4記載の塩基配列からなるDNAを用いて常法により一次PCR法を行い、更に配列番号5記載の塩基配列を5'プライマーに、配列番号6記載の塩基配列を3'プライマーとして使用して二次PCR法を行った。PCR産物から、アガロースゲル電気泳動を用いて約1.1kbpのDNA断片(STP1遺伝子)を常法に従って回収した。
(実施例2)酵母発現による本発明タンパク質の作用
実施例1で得られたDNA断片(以下、実施例1DNA断片という)を、Gatewayクローニングシステム(インビトロジェン社製)の説明書に従って酵母発現ベクターであるYEP352 GAPIIに挿入して組換ベクターYEP352 GAPII-STP1を得た。このベクターを常法に従って酢酸リチウム法により、生育にウラシルを要求する酵母の株W303aに導入して形質転換体を得た。このようにして得た形質転換体をウラシルを含まないSD培地を含む寒天プレートで培養して形質転換体を選別した。得られた形質転換体をウラシルを含まないSD液体培地で大量培養した。
このように培養した形質転換体を冷やした10mmol/lのアジ化ナトリウム(NaN3)を含む蒸留水で洗浄した後、形質転換体約5gを5倍量の消化液(1.4mol/lのソルビトール、50mmol/lのリン酸カリウム、10mmol/lのNaN3及び40mmol/lの2-メルカプトエタノールを含むpH7.5の溶液)に懸濁し、Zymolyase100T(生化学工業株式会社製)を1mg/g菌体となるように添加して、37℃で30分間反応させて、形質転換体の細胞壁を消化した。その後、冷却遠心分離により沈殿させ、冷やした1.0mol/l のソルビトール溶液で2回洗浄し、チモリアーゼを除去した。当該細胞を10mlの消化液(0.8mol/lのソルビトール、5μg/mlペプスタチンA、1mmol/lのフェニルメチルスルホニルフルオライドを含むpH7.2の10mmol/lトリエタノールアミン溶液)に懸濁し、ダウンスホモジナイザーを用いて形質転換体をホモジナイズした。これを4℃、1000×gで10分間遠心分離し、上清を回収して細胞抽出液とした。
この細胞抽出液を更に、4℃で10,000×gの超遠心分離を15分間行い、沈殿を回収した。この沈殿からなる画分(P10)は、小胞体を多く含む画分であった。
さらに、P10を除去した上清を、4℃で100,000×gの超遠心分離を1時間行い、沈殿を回収した。この沈殿からなる画分(P100)は、ゴルジ体を多く含む画分であった。
P100を除去した超遠心分離の上清をS100とし、サイトゾル画分とした。
200μgのP10、P100、又はS100画分のタンパク質を100μlの反応液(0.25mol/lのショ糖、5mMのMgCl2、1mmol/lのMnCl2、10mmol/lの2-メルカプトエタノール、1μmol/lの3H標識ウリジン二リン酸-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)を含む20mmol/lのTris-HCl緩衝液(pH7.5))を添加して、30℃にて反応を開始した。5分後に10倍量の氷冷した反応停止液(0.25mol/lのショ糖、5mmol/lのMgCl2、150mmol/lのKClを含む20mmol/lのTris-HCl緩衝液(pH7.5))を添加し、孔径0.45μmのニトロセルロースフィルターで濾過した。このフィルターを10mlの氷冷した反応停止液で洗浄し、フィルターの放射能を液体シンチレーションカウンターを用いて測定した(図1)。陰性対照としては、YEP352 GAPIIのみによって酵母W303a株を形質転換した形質転換体を用いて調製した各画分(Mock P10画分、Mock P100画分)を用いた。
その結果、P10及びP100画分に強いUDP-GlcNAc運搬作用が観察された。
また、強いUDP-GlcNAc運搬作用が観察されたP100画分について、3H標識UDP-GlcNAc以外にも、3H標識GDP-Fuc、3H標識UDP-Gal、3H標識CMP-Sia、3H標識UDP-Glc、3H標識UDP-GalNAc、14C標識UDP-GlcUA、3H標識GDP-Man及び14C標識UDP-Xylを用いて運搬作用を測定した(図2)。
その結果、P100画分に存在する本発明タンパク質には、UDP-Glc、UDP-GlcNAc及びGDP-Manについて顕著な運搬活性が観察され、その運搬活性は、Mock P100画分と比較して、UDP-Glc運搬活性は4.2倍、UDP-GlcNAc運搬活性は6.2倍、GDP-Man運搬活性は1.9倍であった。
また、P100画分に存在する本発明タンパク質について、UDP-GlcNAc、UDP-Glcの基質濃度を変化させ、これら基質に対する運搬活性を観察したところ、基質濃度依存性が確認された(図3A、B、C)。また、両基質に対する運搬活性は飽和性であり、Km値は、UDP-GlcNAcについて2.1μM、UDP-Glcについて8.0μM、GDP-Manについては0.14μMであった(図3D、E、F)。
(実施例3)哺乳類細胞発現による本発明タンパク質の作用
実施例1で得たDNA断片(STP1遺伝子)を、Gatewayクローニングシステムにより哺乳類細胞ベクターであるpCXN2に挿入して、組み換えベクターpCXN2-STP1を得た。この組み換えベクターを、ヒト大腸癌由来のHCT116細胞にLipofectamine2000(インビトロジェン社)を使用して説明書に従い遺伝子導入した。その後STP1遺伝子を安定して過剰発現している細胞を、600μg/mlのジェネティシン硫酸塩(G418、インビトロジェン社製)を含む10%ウシ胎仔血清(FBS)含有DMEM:HAM 1:1混合培地で1ヶ月間培養することにより選別し、得られた形質転換体を前記と同じ混合培地で大量培養した。この様に培養した形質転換体から、実施例2と同様の方法で、P10画分、P100画分およびS100画分を得た。
尚、陰性対照の細胞としては、組み換え前のpCXN2ベクターを同様にしてHCT116細胞に導入し、600μg/mlのG418を含む培地で1ヶ月間培養したものを用いた。細胞の継代は、1mMのEDTAと0.25%のトリプシンを含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で処理することにより行った。
得られたP100画分について、本発明タンパク質の基質としてUDP-GlcNAc、UDP-GlcおよびGDP-Manを用い、実施例2と同様の方法で、これら基質に対する運搬活性を実験した。陰性対照としては、pCXN2ベクターのみによって、上記と同様にHCT116細胞を形質転換した形質転換体を用いて調製したP100画分を用いた。(尚、本発明遺伝子による形質転換体と陰性対照との本発明遺伝子の発現レベルを確認したところ、本発明遺伝子による形質転換体は、陰性対照に比べ5.4倍のSTP1転写産物量を示した。)
結果を下記表1に示す。各運搬活性は、P100画分における本発明タンパク質1mg当たりの5分間での各基質の運搬量(pmol/5分/mgタンパク質)で表す。
Figure 0004517189
上記より、哺乳類細胞で発現させた実施例1DNA断片による形質転換体は、陰性対照と比較し、1.7倍のUDP-GlcNAc運搬活性と1.8倍のUDP-Glc運搬活性を有するが、GDP-Man運搬活性には殆ど差が見られなかった。
(実施例4)
本実施例には、実施例3と同様の方法により、実施例1DNA断片によってHCT116細胞を形質転換した形質転換細胞を用いた。また、陰性対照の細胞も実施例3と同様の方法で得られた細胞を用いた。
継代から16時間後のこれら細胞を、1 mMのEDTAを含みトリプシンを含まないPBSで処理することによって回収し、1 x 107 細胞/ mlになるようにBSA緩衝液(0.1%のウシ血清アルブミン(BSA)と0.1%のアジ化ナトリウムを含むPBS)に懸濁した。この細胞懸濁液100 μlを試験管にとり、一次抗体としてそれぞれ抗ヘパラン硫酸マウスモノクローナル抗体(生化学工業株式会社製)あるいは抗コンドロイチン硫酸マウスモノクローナル抗体(生化学工業株式会社製)を上記細胞懸濁液の1/100量添加し、氷冷下に30分放置することにより、上記一次抗体で標識した。次いで、一次抗体で標識した細胞をBSA緩衝液で2回洗浄した後、二次抗体としてフルオレセインイソチオシアネート(FITC)を結合した抗マウスIgM抗体を含むBSA緩衝液に再度懸濁し、氷冷下に30分放置することにより、上記二次抗体で標識した。その後、これらの細胞を、EPICS ELITEフローサイトメーター(ベックマンコールター社製)装置を用いてフローサイトメトリー解析することにより、細胞表面のFITC量を定量した。尚、バックグラウンドの値は、抗体反応の前に各々、抗ヘパラン硫酸マウスモノクローナル抗体の場合は、10 mU/mlのヘパリチナーゼI(生化学工業株式会社製)を、抗コンドロイチン硫酸マウスモノクローナル抗体の場合は100 mU/mlのコンドロイチナーゼABC(生化学工業株式会社製)を添加して37℃、30分間処理した細胞を用いて測定した。
その結果、実施例1DNA断片(STP1遺伝子)による形質転換細胞においては、陰性対照に比べて、細胞表面に多くのヘパラン硫酸が検出されたが、コンドロイチン硫酸の量には、ほとんど差が見られなかった(図4)。ヘパラン硫酸はGlcUAとGlcNAcから成る二糖の基本骨格を有し、コンドロイチン硫酸はGlcUAとGalNAcから成る二糖の基本骨格を有していることより、この結果は、STP1を過剰に発現している形質転換細胞においては、ヘパラン硫酸合成の基質となるUDP-GlcNAcの濃度が増大し、ヘパラン硫酸合成が盛んに行われたことが推測される。
つまり、本発明タンパク質はヘパラン硫酸合成の基質となるUDP-GlcNAcを運搬する作用を有し、生体内においてヘパラン硫酸合成に関与していると考えられる。本発明者らは、HCT116細胞において、糖修飾反応が起こる場所であると知られているゴルジ体で本発明タンパク質が非常に多く発現していることも確認しており、更に、上記実験により本発明タンパク質がヘパラン硫酸合成に関与している事が強く示唆されているので、本発明遺伝子により、種々の生理活性を有するヘパラン硫酸の合成量を調節出来ると推測される。
(実施例5)胃癌組織における本発明DNA発現量の変化
定量的リアルタイムPCR法を用いてヒト胃癌組織と同一患者の健常胃組織での本発明DNAの発現量を比較した。ヒト胃癌組織及び健常胃組織のRNAを、RNeasy Mini Kit(キアゲン社製)で抽出し、Super-Script II First-Strand Synthesis System(インビトロゲン社製)を用いたoligo(dT)法によりsingle strand DNAとした。このDNAを鋳型として用いてプライマー(5'プライマー:配列番号11、3'プライマー:配列番号12)及びTaqManプローブ(配列番号13)を用いてABI PRISM 7700(アプライドバイオシステムス社製)により定量的リアルタイムPCR法を行なった。PCR反応の条件は、95℃で10分で反応を行った後、95℃で15秒、60℃1分のサイクルを40回繰り返して行なった。内部標準としてβ-アクチン遺伝子を用い、β-アクチン遺伝子(b-Act)の発現量に対する本STP1遺伝子の発現量の比を算出して対比した(表2、図5)。
Figure 0004517189
その結果、癌化した胃組織においてはSTP1の発現量が40以上低下した検体が多く見られることが明らかとなった。この結果から、健常組織における本発明DNAの発現量と比して、発現量が低下している胃の被検組織は、癌化しているおそれが高いことが示唆され、本発明DNAの発現量は癌化の検出に役立つことが示唆された。
(実施例6)大腸癌組織における本発明DNA発現量の変化
定量的リアルタイムPCR法を用いてヒト大腸癌組織と同一患者の健常大腸組織での本発明DNAの発現量を比較した。ヒト大腸癌組織及び健常大腸組織のRNAを、RNeasy Mini Kit(キアゲン社製)で抽出し、Super-Script First-Strand Synthesis System(インビトロゲン社製)を用いたoligo(dT)法によりsingle strand DNAとした。このDNAを鋳型として用いてプライマー(5'プライマー:配列番号11、3'プライマー:配列番号12)及びTaqManプローブ(配列番号13)を用いてABI PRISM 7700(アプライドバイオシステムス社製)により定量的リアルタイムPCR法を行なった。PCR反応の条件は、95℃で10分で反応を行った後、95℃で15秒、60℃で1分のサイクルを40回繰り返して行なった。内部標準としてβ-アクチン遺伝子を用い、β-アクチン遺伝子(b-Act)の発現量に対する本STP1遺伝子の発現量の比を算出して対比した(表2、図6)。また、参考として検体採取した患者の末梢血における腫瘍マーカーCA19-9を市販のCA19-9測定キットを用いて測定した(表3、図6)。
Figure 0004517189
その結果、癌化した大腸組織においてもSTP1の発現量が減少している検体が多いことが明かとなった。
本発明タンパク質のUDP-GlcNAc運搬作用が存在する画分を示す図である。白いバーは陰性対照を示す。 GDP-Man、UDP-Glc、UDP-GlcNAc、GDP-Fuc、UDP-Gal、CMP-Sia、UDP-GalNAc、UDP-GlcUA及びUDP-Xylに対する、本発明タンパク質の運搬作用を示す図である。白色バーは陰性対照を示す。 A:本発明タンパク質のUDP-GlcNAc運搬作用への基質濃度変化による影響を示す。B:本発明タンパク質のUDP-Glc運搬作用への基質濃度変化による影響を示す。C:本発明タンパク質のUDP-GlcNAc運搬活性に関する基質濃度と反応速度との関係を示す。D:本発明タンパク質のUDP-Glc運搬活性に関する基質濃度と反応速度との関係を示す。 Aが抗コンドロイチン硫酸抗体による抗体染色の結果であり、Bが抗ヘパラン硫酸抗体による抗体染色の結果であり、Mockが陰性対照を示し、hfrc1がSTP1過剰発現細胞の結果を示す。なお、薄い点線はバックグラウンドの測定値を示し、Aでは100mU/mlのコンドロイチナーゼABCで処理した細胞を用い、Bでは10m U/mlのヘパリチナーゼIで処理した細胞を用いた。縦軸(Relative cell number)は計測細胞数(相対数)、横軸(Fluorescence)は蛍光強度を示す。 胃組織における癌化組織と健常組織でのSTP1遺伝子発現量を示す図である。白抜きは健常組織でのSTP1発現量(β-アクチン発現量との相対値)を示し、黒塗りは癌化組織でのSTP1発現量(β-アクチン発現量との相対値)を示す。 大腸組織における癌化組織と健常組織でのSTP1遺伝子発現量を示す図である。白抜きは健常組織でのSTP1発現量(β-アクチン発現量との相対値)を示し、黒塗りは癌化組織でのSTP1発現量(β-アクチン発現量との相対値)を示す。 大腸における癌化組織でのCA19-9検出量を示す図である。白抜きは健常組織、黒塗りは癌化組織でのCA19-9検出量を示す。

Claims (4)

  1. 下記(a)又は(b)のタンパク質を有効成分として含有する糖ヌクレオチド運搬作用 剤であって、該糖ヌクレオチドがウリジン二リン酸−N−アセチル−D−グルコサミン、 ウリジン二リン酸−グルコース又はグアノシン二リン酸−マンノースである糖ヌクレオチ ド運搬作用剤
    (a)配列番号2記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (b)配列番号2記載のアミノ酸配列に1又は数個のアミノ酸の付加、欠失、置換、又は転位を有し、かつ糖ヌクレオチド運搬作用を有するタンパク質。
  2. 下記(a)又は(b)のタンパク質の「被検組織における発現量の検出結果」と、「前 記被検組織の癌化」とを関連づけることを特徴とし、被検組織が大腸由来の組織または胃 由来の組織である、被検組織の癌化の検出方法。
    (a)配列番号2記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (b)配列番号2記載のアミノ酸配列に1又は数個のアミノ酸の付加、欠失、置換、又は 転位を有し、かつ糖ヌクレオチド運搬作用を有するタンパク質。
  3. 請求項2記載のタンパク質の「被検組織における発現量の検出結果」が、下記(A)、 (B)、(C)又は(D)記載の塩基配列からなる核酸が発現する量と当該被検組織と同 じ由来の健常組織における該核酸発現量とを対比して得られることを特徴とする請求項2 記載の被検組織の癌化の検出方法。
    (A)配列番号1記載の塩基配列;
    (B)配列番号1記載の塩基番号49〜1062からなる塩基配列;
    (C)配列番号1記載の塩基番号849〜919からなる塩基配列;
    (D)(B)又は(C)に相補的な塩基配列
  4. 「被検組織における発現量の検出結果」と「前記被検組織の癌化」との関連づけが、健 常組織と比して被検組織における発現量が低下している場合に当該被検組織が癌化してい ると判定することである、請求項2または3に記載の被検組織の癌化の検出方法。
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