JP4516215B2 - トランスジーンの新規な発現調節系 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、細胞内の核酸の発現をコントロールするための新規な組成物及び方法に関する。より特定的には本発明は、in vitro及びin vivoの神経細胞内で核酸の発現をコントロールするために特に好適である。
【0002】
細胞内の核酸の発現をコントロールすることは、生物工学のすべての分野で最も待ち望まれている技術である。細胞内の核酸の発現をコントロールすることができれば、例えば、in vitroまたはex vivoで、組換えタンパク質の発現条件の改善、遺伝子の機能または調節の研究、ウイルス粒子の産生、in vivo移植用細胞の調製、などを行うことが可能になる。in vivoでは、動物モデルの特性の改良、化合物の生体内利用率もしくは毒性のより詳細な研究、遺伝子の機能のより詳細な研究が可能になり、あるいは、例えば治療もしくはワクチン製造を目的とする化合物の産生のより有効なコントロールが可能になる。本発明の組成物及び方法はこのように生物工学のすべての分野で役立つ。
【0003】
遺伝子の発現をコントロールすることを試みた種々の方法が従来技術に記載されている。これらの方法は特に、組織特異的な転写プロモーターまたはベクターの使用から成る。しかしながら、記載された系は、特にin vivoでは、期待通りの特異性レベルを必ずしも示さない。また、発現を一時的にコントロールすることができない。
【0004】
Gossenら(PNAS 89(1992)5547;Science 268(1995)1766)は、一方でテトラサイクリンによってコントロールされるトランス作用因子tTAを使用し、他方でtTA感受性プロモーターを使用する複合系を記載している。該系は発現の一時的調節に関して利点を与えることはできるが、現在までに記載された限りではまだ幾つかの欠点を有しており、これらの欠点によってその利用が限られている。これらの欠点は、細胞毒性や発現低下が観察されること、2つのベクターを使用する必要があること、などである。
【0005】
本発明はここに、従来技術の系に比較して卓越した安定性、特異性及び操作性などの特性を有している新規な調節的発現系を提供する。
【0006】
従って本発明の第一の目的は、遺伝子発現の厳密なコントロールを確保する特別な種類及び編成の要素から構成された遺伝子構築物に関する。
【0007】
本発明の別の目的は、これらの遺伝子構築物を組込んだベクター、特にウイルスベクターに関する。
【0008】
従って本発明の別の目的は、本発明の遺伝子構築物またはベクターによって遺伝子修飾された細胞、このような細胞を含む組成物、及び、目的とする所望の物質をin vitro、ex vivoまたはin vivoで産生するためのこのような細胞及び組成物の使用に関する。
【0009】
本発明の別の目的は、in vitro、ex vivoまたはin vivoの細胞内、より特定的には神経細胞内で核酸を調節的に発現させる方法及び組成物に関する。本発明の別の目的はまた、本発明の構築物またはベクターによって遺伝子修飾された細胞(特に神経前駆細胞)のin vivo接種(または移植)から成る、核酸のin vivo導入及び調節的発現方法に関する。
【0010】
より特定的には本発明は、tTAの使用に基づいた改良特性を示す新規な調節的発現系を記載している。この系はアデノウイルスに含まれているときに特に有効であり、特に神経系ではin vitro及びin vivoの双方で効率的な調節的発現を示し得る。
【0011】
より特定的には、本発明の第一の目的は、
(a)テトラサイクリン調節系のトランス作用因子(tTA)をコードする核酸を中等度プロモーターのコントロール下に含む第一領域と、
(b)所望の核酸をtTA感受性プロモーターのコントロール下に含む第二領域とから成り、
2つの領域(a)及び(b)が同一転写方向に配置されていることを特徴とする核酸に関する。
【0012】
より好ましくは、本発明の核酸は更に、2つの領域即ち領域(a)と領域(b)との間に配置されており領域(a)と領域(b)との間の転写干渉を制限する第三領域(c)を含む。
【0013】
本発明は、このような構築物が特に神経細胞内のin vivo遺伝子発現をコントロールするために有利な特性を有しているという知見から得られた。本発明はまた、これらの構築物の有利な特性が部分的には種々の遺伝子要素の選択及び編成に由来することを示す。
【0014】
例えば、本発明の核酸の領域(a)において、tTAトランス作用因子の遺伝子の発現をコントロールするために使用されるプロモーターは中等度プロモーターである。本文中で使用された“中等度プロモーター”なる用語は、その活性レベルが中等である、即ち強いプロモーターの活性レベルよりも低いと当業者が考えるようなプロモーターを意味する。より特定的には、本文中で使用された中等度プロモーターなる用語は、生理的レベルの発現を許容する非ウイルスプロモーターを意味する。
【0015】
従って、強いウイルスプロモーター(特にhCMV)をプロモーターとして使用する既刊の文献(Gossenら,PNAS 89(1992)5547)に記載された系と違って、本発明の構築物は、tTAトランス作用因子を哺乳類細胞に毒性でないレベルで構成的に合成し得る。出願人はここに、細胞内でtTAが中等レベルに維持されるとき、特に神経細胞内で遺伝子発現がより精密にかつより正確に調節され得ることを知見した。
【0016】
より好ましくは、使用されるプロモーターは細胞プロモーター、即ち、細胞内で発現される遺伝子に由来するプロモーターである。遺伝子構築物を導入する予定の細胞と同種の生物の細胞に由来する(または誘導される)プロモーターが有利である。従って、本発明の構築物を動物体内への核酸導入に使用するとき、使用される中等度細胞プロモーターは同種の動物または類縁の動物また近縁の動物の細胞から誘導されるのが好ましい。異なる生物に由来するプロモーターを使用することも勿論可能であり、例えば、使用されたプロモーターが機能する限りヒトの体内で発現させるためにネズミのプロモーターを使用してもよい。
【0017】
より好ましくはまた、使用されるプロモーターは中等度の構成性細胞プロモーターである。従って本出願では、本発明の系の最良特性は構成性プロモーターを使用するときにのみ得られること、即ち、このときに細胞内で安定なレベルのtTAの存在及び維持が確保されることを証明する。
【0018】
本発明に適合する中程度の構成性細胞プロモーターの特定例は特に、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)または延長因子1α(EF1α)の“ハウスキーピング”遺伝子のプロモーターのような遍在性プロモーターである。本発明の範囲内で使用できる別の中等度細胞プロモーターは、組織特異的プロモーター、例えば、グリア細胞特異的GFAP(“Glial−specific fibrillary acidic protein(グリア細胞特異的原線維酸性タンパク質)”の遺伝子、ニューロン特異的NSE(“neuron−specific enolase(ニューロン特異的エノラーゼ)”の遺伝子、β−アクチン遺伝子、β−グロビン遺伝子、心筋細胞特異的MHCα(“myosis heavy chain α”の遺伝子のプロモーター、あるいは、例えばNRSE−PGK型の複合プロモーターがある。
【0019】
従って、本文中で使用された中等度プロモーターなる用語は好ましくは、遍在性の構成性発現または特定の組織もしくは細胞型に限局された構成性発現を確保し、好ましくは生理的発現レベルを得ることが可能な細胞プロモーターを意味する。PGKプロモーター(または該プロモーターの変異体)の使用は本発明の好ましい実施態様を表す。例えば、後出の実施例は、該プロモーターの使用によって構築物導入後の少なくとも1カ月間は所望の核酸のin vivo発現を維持し得ることを示す。即ちこの期間中には所望の核酸を発現している細胞の数の減少が全く観察されなかった。このような発現安定性は、従来技術の系に比較して卓越した本発明の重要な利点の1つを表す。例えば、強いプロモーター(RSVウイルスのLTRのプロモーター)のコントロール下のβ−ガラクトシダーゼをコードしているアデノウイルスを感染させた神経前駆細胞の移植組織では、移植後1カ月以内に発現レベルの明らかな低下が観察される。これは安定性に関する本発明の有利な特性を示しており、これらの特性は、tTA遺伝子の発現を指令するために中等度プロモーターを使用したことに伴って予想外に得られたものである。
【0020】
本発明の構築物の別の重要な特徴は、2つの領域、即ち領域(a)と領域(b)との配置にある。即ち、有利な配置ではこれらの2つの領域が、(i)同一転写方向に配置されており、(ii)転写干渉を制限する領域(c)によって隔てられている。
【0021】
本出願はまず、本発明の系の効率を改善するために(即ち、発現のコントロールを改善するために)、2つのカセット(a)及び(b)を同一転写方向に配置することが特に有利であることを示す。2つのカセットを逆向きに配置したときに発現コントロールの改善がしばしば観察されていただけに、この結果はむしろ意外である。逆平行配置を有する構築物の場合に発現低下が報告されていたにもかかわらず(Kojimaら,Biochem.Biophys.Res.Commun 238(1997)569)、本発明の条件では対照的に、同一方向に配置されたカセットがアデノウイルスに含まれているときにも発現低下は全く生じない。。
【0022】
他方で、本発明の構築物の特性を更に改良するために、上記の領域(a)と領域(b)との間に、(a)と(b)との間の転写干渉を制限する第三の領域(c)を導入するのが特に有利である。“転写干渉”という表現は、領域(b)の核酸の転写に対する領域(a)のプロモーターの影響または効果あるいはその逆を意味する。より詳細には、“転写干渉”という表現は、単離状態で含まれているときの領域(b)の発現と領域(a)に機能的に結合したときの領域(b)の発現との間に存在し得る差異を意味する。このような領域(c)は、好ましくは転写終結因子から成り、好ましくはUMS配列を含む。UMS配列(“upstream mouse sequence(上流マウス配列)”)は、ネズミのc−mos遺伝子の上流で同定されたゲノム配列である(McGeadyら,DNA 5(1986)289)。この配列は、転写終結因子として挙動する。本発明はここに、これらの配列が、より特定的にはアデノウイルスに含まれているときに、特に神経系内での遺伝子のin vivo発現を有効にコントロールする目的で有利に使用できることを示す。
【0023】
従って本発明の系は、同一の核酸中に2つのカセット(領域)が共存することに基づく。一方のカセットは、第二カセットの所望の核酸の発現を活性化し得る転写因子を調節可能な条件下で発現させる。従ってこの第二カセット(領域b)では、本発明の遺伝子構築物に適合した転写プロモーターを選択することが重要である。即ち領域(b)で使用されるプロモーターはtTAトランス作用因子に感受性のプロモーター、即ち、該トランス作用因子の存在下で活性が増加するプロモーターである。従って構造的な見地から、該プロモーターは、その配列中にまたはその配列から機能性距離を隔てて、少なくとも1つのtTA因子結合部位を含むプロモーターである(Gossenら,1992)。この結合部位またはオペレーター領域(OpまたはtetOp)は例えば、図6に示す配列または該配列の機能性変異体を有し得る。1つの変異体は例えば、1つまたは複数の塩基対の突然変異、欠失または付加によって遺伝子修飾されているがtTAトランス作用因子に結合する能力を保存している配列に対応し得る。好ましくは、修飾は図6に示す配列の10%未満に関連する。更に、領域(b)に存在するOp配列は、1つまたは複数のコピー、例えば1−10コピー、好ましくは3−10コピー、更に好ましくは3−8コピーで存在し得る。特定実施態様では、(b)に使用されるプロモーターは、7個のオペレーター配列を含む。より好ましくは、所望の核酸の発現の実質的なコントロールを確保するために、(b)に使用されるプロモーターは、基底活性が零ではないにしても極めて弱い基底活性を有しているのが望ましい。その結果として、このプロモーターはtTAの存在下でのみ活性であることが観察され、従って調節が極めて厳密である。好ましくは、(b)に使用されるプロモーターがtTAトランス作用因子に感受性の最小プロモーターである。最小という特性は、基底活性が零ではないにしても極めて弱い基底活性を有しているプロモーターを意味する。このようなプロモーターは一般に、転写プロモーターの機能に必須の最小要素(例えばTATAボックス)を含んでおり、例えばプロモーターの強さまたはプロモーターの調節に天然に関与する他の領域は欠如している。このようなプロモーターは、様々な種類のプロモーターから要素の欠失及び/または付加(“サイレンサー”)によって調製され得る。(b)の好ましいプロモーターは、哺乳類細胞中で機能性であり、tTAの非存在下で本質的に不活性であり、tTAトランス作用因子の存在下で刺激されるプロモーターである。“本質的に不活性の”という用語は、慣用の技術、特に酵素アッセイ、免疫組織化学、微量透析またはHPLCなどの技術によって検出できる発現産物(ポリペプチド)が全く存在しないことを意味する。しかしながらこの用語は、PCRまたはその他の極めて高感度の検出技術によって検出可能であるが濃度レベルが実質的に有意でないmRNA分子の存在を排除しない。
【0024】
(b)に使用され得るプロモーターは、多様な種類、多様な起原であり多様な特性を有し得る。使用されるプロモーターの選択は特に、所望の用途及び目的とする遺伝子に依存する。従って、プロモーターは強いプロモーターもしくは弱いプロモーターに由来してもよく、または、遍在性プロモーターもしくは組織/細胞特異的プロモーターに由来してもよい。あるいは、生理学的状態または病態生理学的状態に特異的なプロモーター(細胞分化の状態または細胞周期の幾つかの段階に依存する活性をもつプロモーター)に由来してもよい。プロモーターの起原は、真核細胞、原核細胞、ウイルス細胞、動物細胞、植物細胞、人工細胞またはヒト細胞などでよい。プロモーターの特定例は、CMV、TK、GH、EF1−α、APOなどの前初期遺伝子のプロモーター、または人工プロモーターである。本発明に使用するためには、これらのプロモーターを“最小”にする、即ち、tTAの存在に依存性にするのが好ましい。このために、出発プロモーターを酵素で消化し、好ましくは1つまたは複数のOp配列に機能的に結合した後で、プロモーターの活性を試験する。tetOp配列の数、及び、該配列から選択プロモーターまでの距離は、該プロモーターの発現が厳密にtTA依存性になるように当業者によって適宜調節される。好ましくは、(b)に使用されるプロモーターは、Cortiら(Neuroreport 7(1996)1655)に記載されているようなサイトメガロウイルス(CMV)、好ましくはヒトのサイトメガロウイルス(hCMV)の遺伝子の前初期プロモーターである。該文献の記載内容は参照によって本発明に含まれるものとする。
【0025】
本発明は、所望の用途に応じた種々の所望の核酸を発現させるために使用され得る。従って、領域(b)の所望の核酸は好ましくは、所望のタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸である。本発明の意味に含まれる所望の産物の特定例は、酵素、血液誘導体、成長ホルモンのようなホルモン、サイトカイン、リンホカイン:インターロイキン、インターフェロン及びTNFなど(フランス特許第9203120号)、増殖因子、例えばVEGFまたはFGFのような血管新生促進因子、神経伝達物質またはそれらの前駆体またはそれらの合成酵素(チロシンヒドロキシラーゼ:TH)、栄養因子、特に、神経変性疾患、神経系傷害を生じた外傷性全身障害または網膜変性を治療するための神経栄養因子:BDNF、CNTF、NGF、IGF、GMF、aFGF、NT3、NT5、HARP/プレイオトロフィン、あるいは、骨成長因子、造血因子、など、ジストロフィンまたはミニジストロフィン(フランス特許第9111947号)、凝血に関与する因子:VII因子、VIII因子、IX因子をコードする遺伝子、自殺遺伝子(チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ)、p21のような細胞周期に関与するタンパク質、あるいは、依存性キナーゼを阻害するその他のタンパク質、Rb、Gas−1、Gas−6、Gas−3、Gad 45、Gad 153、サイクリンA、B、D、あるいは、平滑筋中の細胞増殖を制限するGAXタンパク質(再発狭窄症の治療)、アポトーシスを誘発するタンパク質、または、p53、Bax、BclX−s、Badのようなその他の腫瘍抑制タンパク質、または、Bcl2及びBclX−1のその他のアンタゴニスト、ヘモグロビンの遺伝子またはその他の輸送タンパク質の遺伝子、アポリポタンパク質A−I、A−II、A−IV、B、C−I、C−II、C−III、D、E、F、G、H、J及びアポ(a)から選択されたアポリポタンパク質型の脂質の代謝に関与するタンパク質に対応する遺伝子、リポタンパク質リパーゼ、肝性リパーゼ、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ、7−アルファ−コレステロールヒドロキシラーゼ、ホスファチジル酸ホスファターゼのような代謝酵素、あるいは、コレステロールエステル輸送タンパク質、リン脂質輸送タンパク質、HDL結合タンパク質のような脂質輸送タンパク質、あるいは、LDL受容体、キロミクロンレムナント受容体及びスカベンジャー受容体から選択される受容体、などがある。
【0026】
所望の産物のうちでも特に重要な産物は、抗体、一本鎖の可変抗体フラグメント(ScFv)、または、免疫治療に役立つ認識能力を有している他の任意の抗体フラグメントである。抗体フラグメントによる治療の対象は、例えば感染性疾患、腫瘍(抗RAS抗体、抗p53抗体または抗GAP抗体)、または、多発性硬化症のような自己免疫疾患(抗イディオタイプ抗体)である。
【0027】
別の所望のタンパク質の非限定例は、可溶性受容体、例えば抗HIV治療の場合の可溶性CD4受容体もしくは可溶性TNF受容体または筋無力症治療の場合の可溶性アセチルコリン受容体;酵素の基質またはインヒビターとなるペプチド、あるいは、例えば、喘息、血栓症または再発狭窄症の治療の場合のような受容体または接着タンパク質のアゴニストまたはアンタゴニストとなるペプチド:人工タンパク質、キメラタンパク質または一部欠失タンパク質、などである。所望の必須ホルモンとしては、糖尿病に対するインスリン、成長ホルモン及びカルシトニンがある。
【0028】
核酸はまた、ターゲット細胞中で発現することによって遺伝子の発現または細胞性mRNAの転写をコントロールし得る遺伝子またはアンチセンス配列でもよい。このような配列は例えば、欧州特許第140308号に記載の技術に従ってターゲット細胞中に細胞性mRNAの相補RNAとして転写され細胞性mRNAがタンパク質に翻訳されることを阻止し得る。治療用遺伝子はまた、ターゲットRNAを選択的に破壊し得るリボザイムをコードする配列を含む(欧州特許第321201号)。
【0029】
核酸はまた、ヒトまたは動物の体内で免疫応答を生じさせ得る抗原性ペプチドをコードする1つまたは複数の遺伝子を含み得る。従ってこの特定実施態様では、特に微生物、ウイルスまたは癌を対象としたヒト用または動物用のワクチンまたは免疫治療薬の開発に本発明を使用し得る。このようなペプチドは特に、エプスタイン・バールウイルス、HIVウイルス、肝炎B型ウイルス(欧州特許第185573号)、偽狂犬病ウイルス、“シンシチウム形成ウイルス”及びその他のウイルスに特異的な抗原性ペプチドでもよく、あるいは、MAGEタンパク質のような腫瘍特異的抗原(欧州特許第259212号)でもよい。
【0030】
核酸はまた、細胞に対して毒性の産物、特に条件的毒性を示す産物(即ち、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、など)をコードし得る。
【0031】
その他の所望の遺伝子は特に、Mc Kusick,V.A.Mendelian(Inheritance in man,catalogs of autosomal dominant,autosomal recessive,and X−linked phenotypes,Eighth edition.John Hopkins University Press(1988))、及びStandbury,J.B.ら(The metabolic basis of inherited disease,Fifth edition.McGraw−Hill(1983))に記載されている。所望の遺伝子は、アミノ酸、脂質及びその他の細胞構成成分の代謝に関与するタンパク質を包含する。
【0032】
他方で、領域(b)はまた、所望の核酸の3′に位置している転写終結因子を含み得る。最後に、核酸は、IRESによって適宜に隔てられている複数のコーディング領域を含むことができ、これによって複数の有益産物を産生し得る。
【0033】
本発明の構築物は神経系における発現の調節に特に好適であるため、所望の核酸はより特定的に、神経伝達物質またはそれらの前駆体またはそれらの合成酵素(チロシンヒドロキシラーゼ:TH)、または、栄養因子、特に神経変性疾患、神経系損傷を生じた外傷性全身障害または網膜変性を治療するための神経栄養因子をコードしている。
【0034】
特定実施態様によれば、本発明は、
(a)テトラサイクリン調節系のトランス作用因子(tTA)をコードする核酸をPGK遺伝子のプロモーターのコントロール下に含む第一領域と、
(b)特にヒトのチロシンヒドロキシラーゼをコードする核酸を1−10個、好ましくは3−8個、特に7個のtetOp配列を含むように修飾されたCMV最小プロモーターのコントロール下に含む第二領域と、
(c)UMS配列を含む第三領域とから成り、
2つの領域(a)及び(b)が同一転写方向に配置されていることを特徴とする核酸に関する。
【0035】
本発明の核酸はDNAでもよく、RNAでもよい。より特定的には、本発明の核酸は、ゲノムDNA(gDNA)または相補的DNA(cDNA)である。本発明の核酸は、実施例に示すような例えば核酸の合成、ライブラリーのスクリーニング、結合、酵素による切断、増幅、クローニング、などを含む当業者に公知の技術によって作製できる(Maniatisら参照)。従って、異なる領域(a)、(b)及び(c)を別々に作製し、次いで機能的に組立てる。即ち、同じ転写方向で組立てる。領域(a)と領域(b)との間の間隔は本発明の構築物の有効性を損なわない範囲で調節可能である。従ってこれらの領域間の距離は、例えば0−3000bp、より普遍的には0−1000bp、好ましくは500bp未満である。領域(a)と(b)との間のこの距離は一般に領域(c)の長さ(領域(c)が存在する場合)及び使用されるベクターのクローニング能力によって決定される。当業者はこの距離を容易に調節できる。本発明の核酸は種々の起原の要素、特に、原核細胞、真核細胞(動物、植物、ウイルス、など)、合成または半合成の核酸に由来の種々の要素を含み得る。
【0036】
本発明はまた、上記に定義のような核酸を含む任意のベクターに関する。本発明のベクターは、例えばプラスミド、コスミド、ファージ、YAC、HAC、トランスポゾン、エピソーム、ウイルス、などのような当業者に公知の任意のベクターでよい。本発明の好ましいベクターの種類は、例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスまたはある種のレトロウイルス(特にレンチウイルス)のようなウイルスベクターによって代表される。本発明のウイルスはより好ましくは、神経細胞、特に神経細胞の前駆体に向性を有するウイルスである。この観点から本発明に含まれる特に好ましいベクターはアデノウイルスである。
【0037】
本発明を実施するために使用されるアデノウイルスは好ましくは、組換え欠陥アデノウイルス、即ち、そのゲノムがヘテロロガス核酸を含み細胞中で自律複製できないアデノウイルスである。より好ましくは、本発明のアデノウイルスは少なくともE1及びE3領域の全部または一部に欠陥を有している。
【0038】
組換え欠陥アデノウイルスはまた、第三世代の組換え欠陥アデノウイルス、即ち、領域E1及びE4の全部または一部と任意に領域E3に欠陥を有しているアデノウイルスでもよい。
【0039】
本発明の特定実施態様は、以下の領域の全部またはその機能部分に関わる欠失を含むアデノウイルスの使用から成る:
−E1、E4及びE3、
−E1、E4及びE2、
−E1、E4、E2及びE3、
−上記領域とアデノウイルスの後期機能をコードする遺伝子(L1−L5)の全部または一部、あるいは、
−ウイルスのコーディング領域全部。
【0040】
アデノウイルスのゲノム構造は文献に広く記載されている。この点で、アデノウイルスAd5のゲノムは完全に配列決定され、データベースでアクセスできる(特に、GeneBank M73260参照)。同様に、別のアデノウイルス(Ad2、Ad7、Ad13、イヌのアデノウイルスCAV−2、など)もそのゲノムの全部ではないまでも一部が配列決定されている。更に、組換え欠陥アデノウイルスの構築も文献に記載されている。従って、例えば、国際出願WO94/28152、WO95/02697及びWO96/22378は、領域E1及びE4の種々の欠失を記載している。また、国際出願WO96/10088は、Iva2遺伝子の処に修飾を含むベクターを記載しており、国際出願WO94/26914は動物起原のアデノウイルスを記載しており、国際出願WO95/29993はアデノウイルスの領域E2に関する欠失を記載している。
【0041】
本発明の範囲内で有利に使用される組換えアデノウイルスは、そのゲノムの領域E1に欠失を含み、この欠失は領域E1a及びE1bに関係する。特定例として欠失は、(Ad5のゲノムを基準として)ヌクレオチド454−3328、382−3446または357−4020に関係する。
【0042】
他方で、国際出願WO95/12697及びWO96/22378に記載されているように、領域E4中の欠失は好ましくは読取り枠全体に関係し、例えば33466−35535もしくは33093−35535の欠失または領域E4の一部分だけ(例えばORF6またはORF3)が欠失している。引用したこれらの特許出願の記載内容は参照によって本発明に含まれるものとする。
【0043】
更に、後期機能を喪失したアデノウイルス(“最小”ベクター)またはコーディング領域全部が欠失したアデノウイルス(“gutless”ベクター)の構築が、例えばParksら,PNAS 93(1996)p.13565及びLieberら,J.Virol.70(1996)p.8944によって記載されている。
【0044】
本発明の核酸は組換えアデノウイルスゲノムの種々の部位に挿入できる。該核酸は、領域E1、E3またはE4の処に欠失配列に置換してまたは付加配列として挿入できる。該核酸はまた、ウイルスの産生に必要なシス位置の配列(ITR配列及びキャプシド形成配列)以外の別の任意の部位に挿入できる。
【0045】
更に、組換えアデノウイルスは、ヒト起原でも動物起原でもよい。ヒト起原の好ましいアデノウイルスは、グループCのクラスのアデノウイルス、特に、2型(Ad2)及び5型(Ad5)のアデノウイルスまたは7型(Ad7)もしくは12型(Ad12)のアデノウイルスである。動物起原の種々のアデノウイルスのうちでは、イヌ起原のアデノウイルス、特に、アデノウイルスCAV2のすべての菌株が好ましい〔マンハッタン株またはA26/61株(ATCC VR−800)〕。動物起原の別のアデノウイルスは特に、国際出願WO94/26914に引用されている。該特許出願の記載内容は参照によって本発明に含まれるものとする。
【0046】
組換えアデノウイルスは、キャプシド形成細胞系、即ち、組換えアデノウイルスのゲノムに欠失している1つまたは複数の機能をトランス位置で相補し得る細胞系において産生される。当業者に公知のキャプシド形成系の一例は、アデノウイルスのゲノムの一部分が組込まれた293細胞系である。より詳細には、293細胞系は、左側ITRを含むアデノウイルス血清型5(Ad5)のゲノムの左側末端(約11−12%)と、キャプシド形成領域と、E1aとE1bとを含む領域E1と、pIXタンパク質をコードする領域と、pIVa2をコードする領域の一部分とを含むヒトの腎胚細胞系である。この細胞系は、領域E1に欠陥をもつ組換え欠陥アデノウイルス、即ち、領域E1の全部または一部が欠失した組換え欠陥アデノウイルスをトランス相補し、高い力価をもつウイルス予製液を産生し得る。この細胞系はまた許容温度(32℃)で、温度感受性E2突然変異を更に含むウイルス予製液を産生し得る。領域E1を相補し得る別の細胞系、特に、ヒト肺癌細胞A549(国際特許WO94/28152)またはヒト網膜芽腫(Hum.Gen.Ther.(1996)215)に基づく細胞系も記載されている。更に、アデノウイルスの複数の機能をトランス相補し得る細胞系も記載されている。特に、領域E1及びE4を相補する細胞系(Yehら,J.Virol.Vol.70(1996)pp.559−565;Cancer Gen.Ther.2(1995)322;Krougliakら,Hum.Gen.Ther.6(1995)1575)、及び、領域E1及びE2を相補する細胞系(国際特許WO94/28152、WO95/02697、WO95/27071)、または、上記の細胞系から誘導され、特にこのようなウイルスの構築に関与する部位特異的リコンビナーゼ活性を更に発現するので最小アデノウイルスを産生するために使用できる系が記載されている。
【0047】
通常の作製手順では、ウイルスDNAをキャプシド形成細胞系に導入し、次いで(アデノウイルスのサイクル速度は24−36時間なので)約2−3日後に細胞を溶解させることによって組換えアデノウイルスを作製する。この方法を実施するために導入されるウイルスDNAは、細菌中(国際特許WO96/25506)または酵母中(国際特許WO95/03400)で適宜構築され、次いで細胞にトランスフェクトされ得る組換えウイルスの完全ゲノムでよい。ウイルスDNAはまた、キャプシド形成細胞系の感染に使用される組換えウイルスの形態でもよい。ウイルスDNAはまた、組換えウイルスゲノムの一部分と相同領域とを各々が含むフラグメントの形態で導入されてもよく、フラグメントがキャプシド形成細胞に導入された後、種々のフラグメント間の相同的組換えによって組換えウイルスゲノムが再構築され得る。
【0048】
細胞の溶解後、塩化セシウム勾配遠心またはクロマトグラフィーのような公知の任意の技術によって組換えウイルス粒子を単離し得る。代替方法は特にフランス特許出願FR9608164に記載されている。該特許出願の記載内容は参照によって本発明に含まれるものとする。
【0049】
本発明は更に、上記に定義のようなベクターを含む組成物、好ましくは上記に定義のような組換え欠陥アデノウイルスを含む組成物に関する。この実施態様においては本発明の組成物が可変量の組換えアデノウイルスを含み得る。該量は所望の用途(例えば、in vitro、ex vivoまたはin vivo)に応じて当業者が容易に調整し得る。組成物は組換えアデノウイルスを、一般的には10−1015v.p.のオーダ、好ましくは10−1012v.p.のオーダで含んでいる。v.p.なる用語は、組成物中に存在するウイルス粒子の数に相当する。
【0050】
本発明のベクター及び組成物は、細胞内に核酸を導入して調節的に発現させるためにin vitroもしくはin vivoで直接使用されてもよく、または、in vivo接種(または移植)予定の細胞に核酸を導入するために使用されてもよい。
【0051】
本発明はまた、上記に定義のような核酸またはベクターを含む任意の細胞に関する。これらの細胞は好ましくは、哺乳類細胞、好ましくはヒト細胞である。特に好ましい実施態様では、細胞が神経細胞、特に神経前駆細胞である。このような細胞集団は例えば、Bucら(Neurobiol.Dis.2(1995)37)に記載されているようなヒトの神経前駆細胞である。
【0052】
これに関連した本発明の特定実施態様は、上記に定義のような核酸を含む組換えアデノウイルスによって遺伝子修飾された神経細胞を含む。
【0053】
本発明はまた、上記に定義のような細胞を含む任意の組成物に関する。
【0054】
本発明は更に、所望の核酸をin vivoで発現させる目的で使用される組成物を製造するための、上記に定義のような核酸またはベクターまたは組成物の使用に関する。
【0055】
本発明はまた、所望の核酸をin vivo神経系で発現させる目的で使用される組成物を製造するための、上記に定義のような核酸またはベクターまたは組成物の使用に関する。
【0056】
特定実施態様では、本発明は、上記に定義のような細胞を患者の神経系に移植し、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン類似体を患者に投与することによって該細胞の発現をコントロールする核酸の調節的発現方法に関する。
【0057】
本発明の組成物は、溶液、ゲル、粉末、などの多様な形態を有し得る。組成物は一般に、好ましくは無菌の溶液、例えば無菌の等張性生理的塩類溶液(リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムなど、またはこれらの塩の混合物)の形態であるか、または、必要に応じて滅菌水もしくは生理的血清の添加によって溶液に復元し得る乾燥組成物、特に、凍結乾燥組成物の形態である。ヒドロゲルのような別の賦形剤も使用できる。このヒドロゲルは、細胞毒性でなく生体親和性である任意のポリマー(ホモポリマーまたはヘテロポリマー)から調製できる。このようなポリマーは例えば、国際出願WO93/08845に記載されている。更に、本発明の組成物は、瓶、管、アンプル、袋、シリンジ、小フラスコ(ballonet)などのような任意の適当な型の容器に包装できる。
【0058】
上記に指摘したように、本発明の組成物はin vitro、ex vivoまたはin vivoで使用できる。
【0059】
in vitroまたはex vivoで使用するためには、適当な任意の容器(プレート、皿、袋、など)内で、上記に定義のようなベクター組成物の存在下で細胞をインキュベートするだけでよい。この種の用途の場合、アデノウイルスを含む組成物は、細胞1個あたり、例えば10−5000v.p.の感染多重度(MOI)、好ましくは100−2000v.p.の感染多重度で使用され得る。
【0060】
in vivo使用のためには、本発明の組成物を、外用、経口、非経口、鼻孔内、静脈内、筋肉内、皮下、眼内、経皮、腫瘍内、などの経路で投与できるように製剤化し得る。この用途で使用される組成物は、特に細胞性組成物の場合、10−10個の細胞、より好ましくは10−10個の細胞を含むのが有利である。更に、移植された組成物は好ましくは、細胞を高密度(約10−10細胞/μl)で含む。実際、実施例に示した結果は、高密度細胞を使用すると移植物がより容易に取込まれ、移植細胞の生存率が向上することを示す。また、in vivo移植細胞の生存率を更に向上させるために、1種または複数の免疫抑制化合物または免疫抑制治療薬を、必ずしも移植後でなく移植と同時にまたは移植よりも前に投与することが可能である(Neuroscience 78(1997)685)。
【0061】
この点で、本発明はまた、上記に定義のような組成物の投与から成る核酸のin vivo導入方法に関する。本発明は例えば、動物体内で病理学的モデルを作製するためまたはヒト体内で遺伝子の調節などを研究するため、あるいはまた、標識試験もしくは生体内利用率試験のためまたは医療目的で使用される。
【0062】
発現調節のためには、本発明の組成物がテトラサイクリンを含むかまたはtTAトランス作用因子の活性に作用し得る任意のテトラサイクリン類似体を含むのが有利である。このような類似体の一例はドキシサイクリンである(Kistnerら,PNAS 93(1996)10933)。本発明で使用可能な他の類似体は例えばAlvarezら(Gene Ther.4(1997)993)によって記載されている。該文献は参照によって本発明に含まれるものとする。類似体の用量は、類似体の種類及び使用される構築物に従って当業者が容易に調整し得る。一例として、本発明の構築物中の核酸のin vitro発現を完全に阻止するために十分なドキシサイクリンの用量は0.1ng/mlである。
【0063】
本発明は、特に、パーキンソン病(PD)のような神経変性疾患の治療(即ち、部分的または全面的な軽減)に特に適している。PDは黒質中のドーパミン作動性ニューロンの進行性消失を特徴とする疾患である。病気の症状をコントロールするためにL−DOPAによる治療が試みられたが、治療効果は病気の進行に伴って低下する。本出願は、ドーパミンのin vivo合成に関与する遺伝子(チロシンヒドロキシラーゼ、TH)の導入によってこの病気を治療するという有利な代替方法を提供する。ドーパミン作動性化合物で長期間の薬理学的処置を行った試験では、これらの処置が調節されない全身的作用を誘発し、殆どの場合に、運動ニューロン応答が波動性を示すという極めて好ましくない結果を生じる。本発明はこの種の状況に特に好適である。何故なら、本発明によればL−DOPA合成を精密にかつ局所的にコントロールすることが可能であり、この種のコントロールはドーパミン作動性刺激の複合メカニズムを生理的に再現する運動応答を得るために必須であると考えられるからである。
【0064】
本発明を以下の実施例に基づいてより詳細に説明する。実施例は本発明の代表例であるが本発明はこれらの実施例に限定されないことを理解されたい。
【0065】
(図面の簡単な説明)
図1:本発明の核酸を含むアデノウイルスのゲノムの構造を表す概略図。逆方向末端反復配列(ITR)とキャプシド形成配列(ψ)とが示されている。pIXはアデノウイルスのタンパク質IXをコードする配列を表す。
【0066】
図2:パネル(a):アデノウイルスAdPGK.tet.hTH−1を種々のMOIで感染させたヒト神経前駆細胞を示す。示した値は4つの試験の平均値である。
【0067】
パネル(b)及び(c):MOI=140で感染させた7日後に免疫組織化学によって測定したin vitroヒト神経前駆細胞中のTHの産生を示す。パネル(b)は非処理、パネル(c)は感染直後から7日目までドキシサイクリン(10ng/ml)の存在下で処理。倍率はパネル(b)で360倍、パネル(c)で220倍。
【0068】
図3:アデノウイルスAdPGK.tet.hTH1を感染(MOI=40)させた培養物中のhTH活性の消失速度(a)及び回復速度(b)。0日目(感染の5.5日後)にドキシサイクリン(5ng/ml)を添加(a)または除去(b)。非処理培養物中の0日目のhTH活性を100%とした。(c)は感染11日後に測定したhTHの発現に対する種々の用量のドキシサイクリンの効果を示す。数値は少なくとも4回の試験の平均値である。
【0069】
図4は、アデノウイルスAdPGK.tet.hTH−1(MOI=40)を感染させたヒト神経前駆細胞を線条体内に移植し、この移植細胞中のTHに対する免疫反応性を示す。免疫反応性は、(a)非処理動物、及び、(b)ドキシサイクリンで毎日処理した動物から採取した15μmの凍結乾燥脳切片〔lacuna〕に対する抗TH免疫組織化学によって測定した。バイオレット染色(a)(b)は、細胞をアルカリホスファターゼに結合した抗ジゴキシゲニン抗体と共にインキュベーションし次に特異的基質で染色することによって、ジゴキシゲニン標識aluプローブとハイブリダイズするヒト細胞の存在を検出する。倍率110。
【0070】
図5は、アデノウイルスAdPGK.tet.hTH−1(MOI=40)に感染させたヒト神経前駆細胞移植物中のTH免疫反応性を示す。免疫反応性は、(a)非処理動物、及び、(b)ドキシサイクリンで毎日処理した動物から採取した15μmの凍結乾燥脳切片に対して抗TH免疫組織化学、及び、35イオウ標識HTH−1特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用したin situハイブリダイゼーションを行うことによって測定した。これらの切片をクレジルバイオレットで対比染色した。倍率450。
【0071】
図6は、tTA遺伝子(A);UMS配列(B);Op配列(C);CMV最小プロモーター(D)のヌクレオチド配列を示す。
【0072】
実施例
I−材料と方法
1.アデノウイルスAdPGK.Tet.HTH−1の構築
テトラサイクリン調節系のトランス作用因子(tTA)及びヒトサイトメガロウイルスの最小プロモーター(PhCMV)をコードする配列を含むDNAフラグメントを、プラスミドpUMS−luc(Cortiら,Neuroreport 7(1996)1655)から、酵素XhoI及びScaIで消化することによって切除し、酵素BglII/ClaIによって消化しておいたシャトルプラスミドpCMVlucIX(M.C.Geoffroyから提供)に挿入した。このようにしてベクターptetIXが得られた。ヒトチロシンヒドロキシラーゼI(hTH−1)のcDNA(Grima B.ら,Nature 1987,326:707−711)とSV40ウイルスのポリアデニル化シグナルとを順次に含むBglII/HindIIIフラグメントをベクターptetIXのClaI部位とEcoRV部位との間に挿入し、これによってベクターptetIXhTH−1を作製した。ベクターptetIXhTH中のtTAの発現をコントロールするヒトサイトメガロウイルスの前初期プロモーター(hCMVp)をホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)のネズミの遍在性プロモーターの遺伝子(Adraら,Gene 1987;60−65)で置換した。PGKプロモーターを含むXhoI/SplIフラグメントをベクターptetIXhTH−1のSpeI部位とSplI部位との間に挿入することによってプラスミドpPGKtetIXhTH−1を作製した。相同的組換えのために(Stratfordら,J.Clin.Invest.(1992)626)、ベクターpPGKtetIXhTH−1をXmnIで直鎖化し、アデノウイルスAdβgalの大きいClaIフラグメントと共に、領域E1をトランス相補する293細胞系にコトランスフェクトした。組換えアデノウイルスAdPGK.tet.hTH−1をプラークアッセイによって2回精製した。293細胞系で増幅し、塩化セシウム勾配及びセファデックス(Sephadex)カラムで順次精製することによってウイルス予製液が得られた。293細胞系のプラーク滴定によって測定したウイルス価は3.5×1010pfu/mlである。
【0073】
2.ヒト神経前駆細胞の作製及び培養
ヒト胚脳の一次培養物を採取し、既刊の文献(Bucら,Neurobiol.10(1995)37)に記載されているように、塩基性FGFを補充した無血清培地中でin vitro増殖させた。
【0074】
3.ヒト神経前駆細胞の感染
in vitro試験のために、12ウェルの組織培養プレートに1ウェルあたり6−7×10細胞の密度で細胞を播種し、選択した感染多重度(MOI)のウイルスと共に400μlの無血清規定培地(DS−FM)中でインキュベートした。6時間後、上清を除去し、同量のDS−FMで置換した。感染後の種々の時点で、細胞を採取し、遠心し(4000 RPM,5分)、ペレットを−80℃で凍結させ、酵素アッセイを行った(Reinhardtら,Life Sciences,(1986)21−85)。
【0075】
移植のために、6cm直径の組織培養プレートに細胞をプレートあたり5×10細胞の密度で播種し、1細胞あたり40pfuのMOIのウイルスAdPGK.t.thTH−1と共に6時間インキュベートした。感染の翌日、既刊の文献(Sabateら,Nature Genetics,9(1995)256)に記載の手順で細胞を採取し、DS−FM培地に1μlあたり4×10細胞の密度で再懸濁させ、移植処理中を通じて氷上に保存した。
【0076】
4.病変及び脳内移植
脳内移植の5〜6週間前に、既刊の文献(Horellouら,Neuron 5(1990),393)に記載の手順で、スプレーグドーリーネズミ(Charles−River)の成体の左上行中線条体ドーパミン作動性経路に、6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)を定位固定的に注入した。1kgあたり800μlのケタミン(UVA)とロンプン(Bayer)との1:1比の混合物で麻酔にかけた16匹のラットに移植処理を行った。10μlのHamiltonシリンジを使用し、傷付けた線条体の2つの部位の各々に1μlの細胞懸濁液を以下の定位固定座標に注入した:ブレグマ(AB)の+0.7前方,中央線(LM)の+2.5側方,硬膜面(V)の5腹側、及び、+1.5AB,−2.5LM,5V(出発線を0に設定)。動物に体重1kgあたり10mgのシクロスポリンを毎日注入した。。
【0077】
5.in situハイブリダイゼーション及び免疫組織化学
移植の4週後、既刊の文献(Sabateら、前出)に記載の手順で動物を潅流した。脳を摘出し、4%pfa中で固定し、20%ショ糖を含むPBS培地中に保存した。次いで、15μmの切片を作製した。
【0078】
ジゴキシゲニン標識(タグ)を付けたヌクレオチドで標識したヒト細胞に特異的なaluプライマー(5′−XTTgCAgTgAgCCgAgATCgCgCC−3′)を使用したハイブリダイゼーションによってヒト細胞を検出した。初期変性段階(95%ホルムアミド、0.1×SSC中で撹拌下に75℃で20分間)後、切片を既刊の文献(Dumasら,J.Chem.Neuroanat.5(1992)11)に記載の手順で処理した。移植組織中のヒトTH−1 RNAをヒトTHのエキソン1に逆向きの35イオウ標識オリゴヌクレオチド(5′−TgCCTgCTTggCgTCCAgCTCAgACA−3′)と共にin situハイブリダイゼーションによって検出した。ハイブリダイゼーション条件は、Lanieceらによって記載された条件に等しい(J.Neurochem.66(1966)1819)。免疫組織化学のために、切片を標準技術によって処理した。
【0079】
II−結果
1.本発明による調節系のコントロール下のヒトTH−1をコードするアデノウイルス(AdPGK.tet.hTH−1)の作製
単一アデノウイルスベクターからhTH−1トランスジーンの調節的発現を得るために、最初は2つのベクターの使用に基づいたテトラサイクリン依存性の負の調節系tet−offを修飾した。テトラサイクリン感受性のtTAトランス作用因子とヒトTH−1 cDNAとを、領域E1及びE3が欠失したアデノウイルスAd5の主鎖に挿入した。ベクターAdPGK.tet.hTH−1中で、tTAの発現はネズミのホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子の遍在性プロモーターのコントロール下にあり、ヒトTHの転写はtTA感受性最小プロモーター(CMVプロモーター)によってコントロールされている。2つの転写ユニット間の転写干渉を制限するためにtTAとCMVプロモーターとの間にUMS配列を挿入した。
【0080】
2.ヒト神経前駆細胞に対するAdPGK.te.hTH−1の感染:in vitro調節発現
アデノウイルスAdPGK.tet.hTH−1がヒト神経前駆細胞中で活性THを合成できるか否かを判定するために、細胞を種々の感染多重度で感染させた(図2a)。得られた結果は、感染細胞中のTH活性がベクターの使用用量の関数として増加することを示す。これは、アデノウイルスAdPGK.tet.hTH−1が機能性であることを示す。
【0081】
ドキシサイクリンによるhTH−1遺伝子の発現コントロールの可能性をアデノウイルス感染細胞中で試験した。感染直後に培養培地にこの抗生物質を添加すると(10ng/ml)、ウイルスの使用用量が最大のときにもTH活性はいかなる時点でも全く観察されなかった。更に、TH免疫反応性を示す細胞は全く同定されなかった(図2b及び2c)。
【0082】
次に、既にトランスジーンを発現している細胞中でその後の遺伝子発現が阻止されるか否かを試験した。このために、細胞が既に検出可能なTH活性を有している感染後5.5日目に培養培地にドキシサイクリンを添加した。得られた結果は、酵素活性が次第に減少し、ドキシサイクリン添加の5.5日後にはほぼ完全に消滅することを示す(図3a)。従って、ヒト神経前駆細胞に本発明の条件下でTH−1遺伝子を転写すると、極めて有効な負の調節が得られる。
【0083】
トランスジーンの活性を再度誘発することが可能であるか否かを試験するために、感染細胞の培養培地からドキシサイクリンを除去した後でTH活性をモニターした(図3d)。得られた結果は、細胞中のTH活性が次第に増加することを示す。これはドキシサイクリンによるトランスジーンの阻害が可逆的であることを表す。
【0084】
次に、遺伝子の発現を阻害するために必要な抗生物質の最小用量を決定するために、感染直後の細胞を種々の濃度のドキシサイクリンと共にインキュベートした(図3c)。0.01ng/mlの用量ではTH活性が検出可能であるが、0.1ng/mlの濃度はTH活性の出現を阻止するために十分である。
【0085】
3.アデノウイルスAdPGKtet.hTH−1を感染させたヒト神経前駆細胞の脳内移植:in vivo発現のコントロール
この実施例は、本発明の系、特にアデノウイルスを感染させたヒト神経前駆細胞がヒトTHのin vivo発現に介在する能力、及び、本発明の系がこのin vivo発現を特にドキシサイクリンを使用して調節する能力を証明する。細胞にアデノウイルスAdPGK.tet.hTH−1を感染させ、次いで、毒素6−OHDAを注入してドーパミン作動性経路に片側性病変を生じさせたネズミの線条体に移植した。移植物の取込みを容易にするために、高密度(4×10/μl)に懸濁させた多数の細胞(8×10)を各動物に移植した。移植後、動物を非処理(n=8)で維持するかまたはドキシサイクリン(1g/mlの水溶液)で毎日処理(n=8)した。移植の4週後に、ラットを殺し、脳のTH発現を分析した。
【0086】
ヒト特異的alu反復配列に逆向きのオリゴヌクレオチドプローブと共にin situハイブリダイゼーションを行うことによって測定すると、試験した全部の脳がヒト細胞の生存移植組織を含んでいた(図4a)。ドキシサイクリン処理動物と非処理動物との間に移植組織のサイズ及び見かけの差異は全く観察されなかった。
【0087】
非処理動物体内の移植組織は、高いTH免疫反応性を示す(図4a)。移植組織中でTHを発現している細胞の数は5−10%であると推定された。移植後に無血清培地中で6日間再培養した細胞では同様のパーセントの細胞がTH免疫反応性を示す。これらの結果は、遺伝子の発現がinvivoでもin vitroでも同じ条件下であることをはっきりと示す。
【0088】
これに反して、ドキシサイクリンを投与した移植動物ではTH免疫反応性を示す細胞は全く観察されなかった(図4b)。これは、ドキシサイクリンが移植組織内で、免疫組織化学によって十分に検出し得る量のTHの発現を有効に阻害することを表す。
【0089】
ドキシサイクリンの効果が転写レベルにおける遺伝子発現の厳密なコントロールを表しているか否かを確認するために、TH−1のメッセンジャーRNAに特異的なオリゴヌクレオチドを使用して切片のin situハイブリダイゼーシヨンを行った。非処理動物の移植組織はかなりの程度に標識されていた。標識は免疫反応性細胞と共存していた(図5a)。これに反して、処理動物の移植組織では特異的標識は全く検出されなかった(図5b)。
【0090】
結論として、ドキシサイクリンは、移植ヒト神経前駆細胞によって導入されたアデノウイルスに含まれている本発明の系のトランスジーンの転写を有効に阻害すると言うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の核酸を含むアデノウイルスのゲノムの構造を表す概略図。逆方向末端反復配列(ITR)とキャプシド形成配列(ψ)とが示されている。pIXはアデノウイルスのタンパク質IXをコードする配列を表す。
【図2A】 アデノウイルスAdPGK.tet.hTH−1を種々のMOIで感染させたヒト神経前駆細胞を示す。示した値は4つの試験の平均である。
【図2B】 MOI=140で感染させた7日後に免疫組織化学によって測定したin vitroヒト神経前駆細胞中のTHの産生を示す。非処理。倍率は360倍。
【図2C】 MOI=140で感染させた7日後に免疫組織化学によって測定したin vitroヒト神経前駆細胞中のTHの産生を示す。感染直後から7日目までドキシサイクリン(10ng/ml)の存在下で処理。倍率は220倍。
【図3A】 アデノウイルスAdPGK.tet.hTH1を感染(MOI=40)させた培養物中のhTH活性の消失速度。0日目(感染の5.5日後)にドキシサイクリン(5ng/ml)を添加。非処理培養物中の0日目のhTH活性を100%とした。数値は少なくとも4回の試験の平均値である。
【図3B】 アデノウイルスAdPGK.tet.hTH1を感染(MOI=40)させた培養物中のhTH活性の回復速度。0日目(感染の5.5日後)にドキシサイクリン(5ng/ml)を除去。非処理培養物中の0日目のhTH活性を100%とした。数値は少なくとも4回の試験の平均値である。
【図3C】 アデノウイルスAdPGK.tet.hTH1を感染(MOI=40)させた培養物中のhTH活性。感染11日後に測定したhTHの発現に対する種々の用量のドキシサイクリンの効果を示す。数値は少なくとも4回の試験の平均値である。
【図4A】 アデノウイルスAdPGK.tet.hTH−1(MOI=40)を感染させたヒト神経前駆細胞を線条体内に移植し、移植細胞中のTHに対する免疫反応性を示す。免疫反応性は、非処理動物から採取した15μmの凍結乾燥脳切片〔lacuna〕に対する抗TH免疫組織化学によって測定した。バイオレット染色は、細胞をアルカリホスファターゼに結合した抗ジゴキシゲニン抗体と共にインキュベーションし次に特異的基質で染色することによって、ジゴキシゲニン標識aluプローブとハイブリダイズするヒト細胞の存在を検出する。倍率110。
【図4B】 アデノウイルスAdPGK.tet.hTH−1(MOI=40)を感染させたヒト神経前駆細胞を線条体内に移植し、移植細胞中のTHに対する免疫反応性を示す。免疫反応性は、ドキシサイクリンで毎日処理した動物から採取した15μmの凍結乾燥脳切片〔lacuna〕に対する抗TH免疫組織化学によって測定した。バイオレット染色は、細胞をアルカリホスファターゼに結合した抗ジゴキシゲニン抗体と共にインキュベーションし次に特異的基質で染色することによって、ジゴキシゲニン標識aluプローブとハイブリダイズするヒト細胞の存在を検出する。倍率110。
【図5A】 アデノウイルスAdPGK.tet.hTH−1(MOI=40)に感染させたヒト神経前駆細胞移植物中のTH免疫反応性を示す。免疫反応性は、非処理動物から採取した15μmの凍結乾燥脳切片に対して抗TH免疫組織化学、及び、35イオウ標識HTH−1特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用したin situハイブリダイゼーションを行うことによって測定した。これらの切片をクレジルバイオレットで対比染色した。倍率450。
【図5B】 アデノウイルスAdPGK.tet.hTH−1(MOI=40)に感染させたヒト神経前駆細胞移植物中のTH免疫反応性を示す。免疫反応性は、ドキシサイクリンで毎日処理した動物から採取した15μmの凍結乾燥脳切片に対して抗TH免疫組織化学、及び、35イオウ標識HTH−1特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用したin situハイブリダイゼーションを行うことによって測定した。これらの切片をクレジルバイオレットで対比染色した。倍率450。
【図6】 tTA遺伝子(A);UMS配列(B);Op配列(C);CMV最小プロモーター(D)のヌクレオチド配列を示す。

Claims (12)

  1. (a)テトラサイクリン調節系のトランス作用因子(tTA)をコードする核酸をPGK遺伝子のプロモーターのコントロール下に含む第一領域と、
    (b)所望の核酸をtTA感受性プロモーターのコントロール下に含む第二領域と
    (c)2つの領域(a)及び(b)の間に配置されており、転写終結因子としてUMS配列を含む第三領域を含んで成り、
    2つの領域(a)及び(b)が同一転写方向に配置されていることを特徴とする核酸。
  2. 領域(b)の所望の核酸が所望のタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸であることを特徴とする請求項1に記載の核酸。
  3. 所望のタンパク質またはポリペプチドが神経伝達物質またはそれらの前駆体またはそれらの合成酵素及び栄養因子から選択されることを特徴とする請求項2に記載の核酸。
  4. (a)テトラサイクリン調節系のトランス作用因子(tTA)をコードする核酸をPGK遺伝子のプロモーターのコントロール下に含む第一領域と、
    (b)ヒトのチロシンヒドロキシラーゼをコードする核酸を1−10個のtetOp配列を含むように修飾されたCMV最小プロモーターのコントロール下に含む第二領域と、
    (c)UMS配列を含む第三領域とを含んで成り、
    2つの領域(a)及び(b)が同一転写方向に配置されていることを特徴とする核酸。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の核酸を含むベクター。
  6. アデノウイルスベクターを含むウイルスベクターから選択されることを特徴とする請求項5に記載のベクター。
  7. 請求項1から4のいずれか一項に記載の核酸または請求項5に記載のベクターを含む細胞。
  8. ヒト細胞を含む哺乳類細胞から選択されることを特徴とする請求項7に記載の細胞。
  9. 神経細胞であることを特徴とする請求項8に記載の細胞。
  10. 請求項4に記載の核酸を含む組換えアデノウイルスによって遺伝子修飾された神経細胞。
  11. 請求項1から4のいずれか一項に記載の核酸を含む組換えアデノウイルスによって遺伝子修飾された神経細胞を含む組成物であって、領域(b)の所望の核酸がヒト チロシンヒドロキシラーゼをコードする前記組成物
  12. ヒト チロシンヒドロキシラーゼをin vivoの神経系中で発現させる組成物を製造するための、請求項4に記載の核酸を含む組換えアデノウイルス、または、請求項11に記載の組成物の使用。
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