JP4514265B2 - 電極及び非水電解液二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水電解液二次電池の正極に用いて好適な電極、及びその電極を正極として用いた非水電解液二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、リチウム二次電池等の非水電解液二次電池の正極に用いられる芯体としては、以下に示すような様々なものが提案されている。
【0003】
例えば、特開平8−170126号公報には、Alからなる3次元網目状多孔体を正極芯体として用いることが提案されている。この公報では、発泡樹脂の表面にAl金属の微粉末を塗布し、Alの融点である660℃付近で熱処理することにより、発泡樹脂を除去するとともに、焼結前のAl粉末とは異なる断面形状を有する3次元網目状多孔体を形成し、これを芯体として、活物質合剤ペーストを含浸塗着することにより空孔内に活物質を充填して正極を形成している。
【0004】
しかしながら、この公報に示されているような正極では、空孔内における活物質と芯体との接触状態は悪く、良好な集電性が得られないという問題がある。
【0005】
また、特開平9−213307号公報には、Al、Ti、ステンレスからなる発泡状金属又は繊維状金属焼結体を芯体として用い、その芯体に活物質を塗工することにより空孔内に活物質を充填した電極が示されている。
【0006】
しかしながら、この公報に示されている正極においても、芯体と活物質との接触状態は悪く、良好な集電性が得られないという問題がある。
【0007】
また、特開平9−190815号公報には、Ni、Al、炭素、ステンレスからなる導電性多孔体に水酸化ニッケルを保持させた後、硝酸リチウム溶液を含浸させる正極の製造方法が示されている。
【0008】
しかしながら、この公報に示されている方法により製造された正極では、水酸化ニッケルの保持量がばらつき、活物質におけるNiとLiのモル比を特性的に優れた最適値に再現性よく制御することは困難である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来例の欠点に鑑み為されたものであり、集電性に優れた電極を提供することを目的とするものである。
【0010】
また、本発明は、電極の集電性が優れ、作動電圧が高く、高出力である非水電解液二次電池を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
第1の発明の電極は、リチウム複合酸化物を主体とする活物質を有する非水電解液二次電池に用いられる電極であって、パンチングメタル若しくは金属箔の基体にチタン若しくはチタンを主体とする合金の粉末を焼結して形成された多孔性の基板を芯体として用いたことを特徴とする。
【0014】
このような第1の発明の電極では、集電性に優れ、この電極を正極として用いたリチウム二次電池では、作動電圧が高くなる。
【0015】
更に、第1の発明の電極では、前記芯体の空孔内に活物質を析出により充填したことを特徴とする。
【0016】
このような第1の発明の電極は、芯体と活物質の接触状態が良好となり集電性が更に向上する。
【0017】
更に、第1の発明の電極は、リチウム化合物と、ニッケル、コバルト、マンガンの少なくとも1つを含む化合物との混合水溶液に前記芯体を含浸させ、前記空孔内に前記活物質を析出させたことを特徴とする。
【0018】
このような第1の発明の電極では、リチウム化合物と、ニッケル、コバルト、マンガンの少なくとも1つを含む化合物とが同時に析出されるため、活物質におけるリチウムと、ニッケル、コバルト、マンガンの少なくとも1つの元素とのモル比を最適の範囲内に再現性良く調整することができる。
【0019】
また、第1の発明の電極は、前記多孔性の基板の表面が、コバルト化合物若しくはインジウム化合物で被覆されていることを特徴とする。
【0020】
このような第1の発明の電極では、集電性が更に向上する。
【0023】
また、第1の発明において、チタン若しくはチタンを主体とする合金粉末はパンチングメタル若しくは金属箔からなる基体に焼結される。基体の形状としては、粉末が焼結されるのに適した平板状等の形状であれば良く、また、基体の材質としては、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、チタン等が適している。
【0024】
また、本発明の非水電解液二次電池は、上述の第1の発明の電極を正極として用いたことを特徴とする。
【0025】
このような非水電解液二次電池では、正極の集電性が向上し、作動電圧が高くなる。更に、集電性が向上することによって電極内の電位分布が軽減され、活物質の利用率も向上し、高容量となる傾向がある。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
(実施例1)
[正極の芯体の作製]
チタン粉末と結着剤であるポリエチレンオキサイド水溶液を混錬してスラリー状とし、厚さ50μmのパンチングメタルに塗着、乾燥後、水素気流中で焼結して多孔性チタン焼結基板からなる芯体を作製した。この基板の多孔度(気孔率)は約80%、厚みは0.7mmである。
【0028】
[活物質の充填]
上記の多孔性チタン焼結基板からなる芯体を80℃、比重1.5の硝酸ニッケル水溶液に浸漬し、乾燥させる工程を10回繰り返すことにより、芯体の空孔内に硝酸ニッケルを析出させた。その後、芯体を80℃で25%のNaOH水溶液に浸漬して前述の析出された硝酸ニッケルを水酸化ニッケルに変化させた。さらに,この芯体を室温、1モル/lのNaOH水溶液でアノード酸化し、水酸化ニッケルをオキシ水酸化ニッケルに変化させた。その後、芯体を350℃に保持した硝酸リチウムの溶融液に浸漬し、更に900℃で20時間熱処理して、LiNiO2の組成からなる活物質を形成させ、本発明の実施例1の正極を作製した。
【0029】
[電池の作製]
上記の正極と、負極であるリチウムとセパレータであるポリプロピレン製微多孔膜を積層し、電解液であるLiPF6を1モル/l溶解させたプロピレンカーボネイトとジメトキシエタンの等モル混合液を加え、電池缶に収納し、本発明の実施例1のコイン型のリチウム二次電池を作製した。尚、電池寸法は直径24mm、厚み3mmである。
【0030】
(実施例2)
活物質の充填方法として、以下の方法を用いること以外は、実施例1と同様にして実施例2のリチウム二次電池を作製した。
【0031】
芯体を硝酸ニッケルと硝酸リチウムをモル比で1:1になるように調整した80℃、比重1.5の混合水溶液に浸漬し、乾燥させ、芯体にニッケルとリチウムをモル比で1:1含むようにした。この工程を10回繰り返し、芯体の空孔内に、硝酸ニッケルと硝酸リチウムとを同時に析出させた。これを900℃で20時間熱処理して、LiNiO2の組成からなる活物質を形成し、本発明の実施例2の正極を作製し、実施例2のリチウム二次電池を作製した。
【0032】
(実施例3)
活物質の充填方法として、以下の方法を用いること以外は実施例2と同様にして実施例3のリチウム二次電池を作製した。
【0033】
実施例2と同様にして芯体の空孔内に硝酸ニッケルと硝酸リチウムを析出させた後、炭酸ナトリウム水溶液に浸漬し、硝酸塩を炭酸塩に変化させ、本発明の実施例3の正極を作製し、実施例3のリチウム二次電池を作製した。
【0034】
(実施例4)
活物質の充填方法として、実施例3の炭酸ナトリウムの代わりに水酸化ナトリウムを用いること以外は、実施例3と同様にして実施例4の正極を作製し、実施例4のリチウム二次電池を作製した。
【0035】
(実施例5)
正極の芯体の作製方法として、以下の方法を用いること以外は実施例2と同様にして実施例5のリチウム二次電池を作製した。
【0036】
実施例1と同様にして作製された芯体を硝酸インジウム水溶液に浸漬、乾燥後、水酸化ナトリウム水溶液に浸漬、空気中100℃で3時間熱処理することにより、芯体表面をインジウム酸化物で被覆した。この芯体に実施例2と同様にして活物質を充填して実施例5の正極を作製し、実施例5のリチウム二次電池を作製した。
【0037】
(実施例6)
正極の芯体の作製方法として、以下の方法を用いること以外は実施例5と同様にして実施例6のリチウム二次電池を作製した。
【0038】
芯体を実施例5における硝酸インジウム水溶液の代わりに、硝酸コバルト水溶液に浸漬し、乾燥後、水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、100℃で3時間熱処理することにより、芯体表面をコバルト酸化物で被覆した。その他は、実施例5と同様にして実施例6の正極を作製し、実施例6のリチウム二次電池を作製した。
【0039】
(実施例7)
活物質の充填方法として、以下の方法を用いること以外は実施例2と同様にして実施例7のリチウム二次電池を作製した。
【0040】
芯体を硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸マンガンと硝酸リチウムをモル比で1:1:1:3含む80℃、比重1.5の混合水溶液に浸漬し、乾燥させ、芯体にニッケルとコバルトとマンガンとリチウムをモル比で1:1:1:3含むようにした。この工程を10回繰り返し、芯体の空孔内に、硝酸ニッケルと硝酸コバルトと硝酸マンガンと硝酸リチウムとを同時に析出させた。これを900℃で20時間熱処理して、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2の組成からなる活物質を形成し、実施例7の正極を作製し、実施例7のリチウム二次電池を作製した。
【0041】
(参考例8)
芯体として、チタン粉末の代わりにアルミニウム粉末を用い、活物質を形成する際の熱処理温度を900℃に代えて600℃とする以外は実施例2と同様にして参考例8の正極を作製し、参考例8のリチウム二次電池を作製した。
【0042】
(参考例9)
正極の芯体を作製する際、Ti粉末に代えてステンレス(SUS304)の粉末を用いること以外は、実施例2と同様にして参考例9の正極を作製し、参考例9のリチウム二次電池を作製した。
【0043】
(参考例10)
正極の芯体を作製する際、Ti粉末に代えてニッケルの粉末を用いること以外は、実施例2と同様にして参考例10の正極を作製し、参考例10のリチウム二次電池を作製した。
【0044】
(実施例11)
活物質の充填方法として、LiNiO2粉末からなるペーストを、芯体に塗着することにより、芯体の空孔内に活物質を充填する。それ以外は実施例2と同様にして実施例11の正極を作製し、実施例11のリチウム二次電池を作製した。
【0045】
(比較例1)
正極の芯体を作製する際、チタン粉末に代えてニッケル粉末を用いること以外は、実施例1と同様にして比較例1の正極を作製し、比較例1のリチウム二次電池を作製した。尚、これは、特開平9−190815号公報に開示の技術とほぼ同様のものである。
【0046】
(比較例2)
芯体として公知の発泡ニッケルを用い、この芯体に活物質としてのLiNiO2粉末からなるペーストを塗着することにより、芯体の空孔内に活物質を充填する。それ以外は実施例2と同様にして比較例2の正極を作製し、比較例2のリチウム二次電池を作製した。
【0047】
(比較例3)
芯体としてチタン繊維(繊維径20μm)の焼結体を用いること以外は比較例2と同様にして比較例3の正極を作製し、比較例3のリチウム二次電池を作製した。尚、これは、特開平9-213307号公報に開示されているものとほぼ同様のものである。
【0048】
(比較例4)
芯体として、ポリウレタンの発泡樹脂にアルミニウムの粉末を塗着した後、600℃で熱処理してポリウレタンを除去してなるアルミニウムの焼結体(気孔率95%)を用いた。それ以外は比較例2と同様にして比較例4の正極を作製し、比較例4のリチウム二次電池を作製した。尚、これは、特開平8-170126号公報に開示されているものとほぼ同様のものである。
【0049】
(比較例5)
芯体としてステンレス繊維(繊維径20μm)の焼結体を用いること以外は比較例2と同様にして比較例5の正極を作製し、比較例5のリチウム二次電池を作製した。尚、これは、特開平9-213307号公報に開示されているものとほぼ同様のものである。
【0050】
次に、上記の実施例1〜7、11、参考例8〜10及び比較例1〜5のリチウム二次電池について、初期状態の電池容量、作動電圧、及び100サイクル後の電池容量、作動電圧を測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0051】
尚、電池容量及び作動電圧の測定は、3mAの充電電流で終止電圧4.3Vまで充電を行った後、5mAの放電電流で終止電圧2.9Vまで放電を行う工程を10サイクル行った状態を初期状態とし、この初期状態の後、上記工程を100サイクル行った状態を100サイクル後の状態として測定を行った。
【0052】
また、表1には、各電池の正極について、芯体の種類、活物質の充填方法、活物質の種類を併せて記載している。
【0053】
【表1】
【0054】
表1から判るように、正極の芯体として多孔性のチタン焼結基板を用いた実施例1、2、3、4、5、6、7及び11のリチウム二次電池は、比較例1、2、3、4、5のリチウム二次電池よりも、初期における容量が大きく、作動電圧も高い。また、実施例1、2、3、4、5、6、7及び11のリチウム二次電池は、比較例1、2、3、4、5のリチウム二次電池よりも、100サイクル経過後においても、容量が大きく、作動電圧も高い。
【0055】
更に、これらの実施例1、2、3、4、5、6、7及び11を比較すると、正極の芯体の空孔内に活物質を充填する方法として、析出により空孔内に活物質が形成された実施例1、2、3、4、5、6、7のリチウム二次電池は、芯体に活物質のペーストを塗布した実施例11のリチウム二次電池よりも、初期状態、100サイクル後の両方において、容量が大きく、作動電圧も高い。
【0056】
更に、実施例1と実施例2とを比較すると、実施例1のリチウム二次電池よりも実施例2のリチウム二次電池の方が、初期における容量が大きく、作動電圧が高い。しかも、実施例1のリチウム二次電池よりも実施例2のリチウム二次電池の方が、100サイクル経過後の容量、作動電圧の低下も少ない。これは、実施例2では、活物質を充填する際、硝酸ニッケルと硝酸リチウムを所定のモル比になるように調整した混合水溶液を用いているため、硝酸ニッケルと硝酸リチウムとが同時に析出され、活物質中においてLiとNiとが所望の割合で均一性良く分布するためと考えられる。
【0057】
また、活物質を析出後、芯体を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬させた実施例4のリチウム二次電池では、初期状態、100サイクル後の両方において、容量が大きく、作動電圧も高くなる。
【0058】
また、芯体表面をIn化合物で被覆した実施例5のリチウム二次電池、芯体表面をCo化合物で被覆した実施例6のリチウム二次電池では、初期状態、100サイクル後の両方において、容量が大きく、作動電圧も高くなる。
【0059】
また、実施例7のリチウム二次電池の測定結果から判るように、活物質としては、LiNiO2に限られず、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を活物質として用いた場合、容量及び作動電圧が更に向上する。
【0060】
また、正極の芯体が多孔性のチタン粉末の焼結基板以外であっても、芯体がアルミニウム粉末の焼結基板、ステンレス粉末の焼結基板、或いはニッケル粉末の焼結基板であり、硝酸ニッケルと硝酸リチウムとが同時に析出された参考例8、9、10のリチウム二次電池では、容量及び作動電圧が向上することが判る。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、集電性に優れ、非水電解液二次電池の正極に用いて好適な電極を提供し得る。
【0062】
また、本発明によれば、正極の集電性に優れ、初期状態から作動電圧が高く、サイクル経過後も作動電圧の低下が少ない非水電解液二次電池を提供し得る。
【0063】
更に、本発明によれば、初期状態から高容量で、サイクル経過後も容量の低下が少ない非水電解液二次電池を提供し得る。
Claims (4)
- リチウム複合酸化物を主体とする活物質を有する非水電解液二次電池に用いられる電極であって、パンチングメタル若しくは金属箔の基体にチタン若しくはチタンを主体とする合金の粉末を焼結して形成された多孔性の基板を芯体として用いたことを特徴とする電極。
- 前記芯体の空孔内に活物質を析出により充填したことを特徴とする請求項1記載の電極。
- 前記多孔性の基板の表面が、コバルト化合物若しくはインジウム化合物で被覆されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電極。
- 請求項1、2又は3記載の電極を正極として用いたことを特徴とする非水電解液二次電池。
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