JP4513227B2 - 運転操作装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車体に対し移動可能に支持されるとともに運転者により操作される操作レバー等の操作部材の移動量等に応じて車両の転舵角等の運転制御量を変更する運転操作装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の運転制御装置は、例えば、特開平10−226352号公報に記載されている。開示された装置は、車輪の向きを変える舵取機構に機械的に連結されていない操舵手段と、前記操舵手段の操舵角を検出する操舵角検出手段と、検出された操舵角に応じて前記舵取機構の転舵角を増減制御する制御手段を備えている。また、この装置は、前記検出された操舵角に基いて前記操舵手段に与えるべき反力を求める制御手段と、電動モータ、同電動モータを駆動する反力増減部、及び同電動モータと前記操舵手段とを接続/切断するクラッチを含む反力増減手段と、前記反力増減手段の故障を検出したときに前記電動モータを短絡して前記反力を所定の値とする短絡手段とを備えていて、反力増減手段の故障時にも所定の反力を発生させるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術によれば、反力増減手段の故障に起因して操舵手段が操舵(移動)できないようなステッィク故障(又は操舵ロック状態)が発生すると、検出される操舵角が一定値となるため、実質的に転舵角を変更することができないという問題がある。また、操舵角を検出する操舵角センサ等の操舵角検出手段が異常となった場合にも同様の問題が発生する。
【0004】
本発明は、上記課題に対処するためになされたものであって、その特徴は、車両の運転操作装置であって、車体に対し移動可能に支持されるとともに運転者により操作される操作部材と、前記操作部材の移動量を検出する移動量検出手段と、運転者により前記操作部材に加えられる操作力を検出する操作力検出手段と、前記操作力に抗する反力を発生する反力発生手段と、前記検出される移動量に基いて前記車両の運転制御量を変更する運転制御量変更手段と、を備える運転操作装置において、前記検出される移動量が「前記移動量検出手段が正常である限りあり得ない値」となったか否かを判定する異常状態判定手段を備え、前記運転制御量変更手段は、前記検出される移動量が「前記移動量検出手段が正常である限りあり得ない値」となったと判定されたときは「前記検出される移動量に基いて前記車両の運転制御量を変更する」ことに代え「前記検出される操作力に基いて前記運転制御量を変更する」ように構成されたことにある。
【0005】
この場合、上記操作部材は車両のステアリングホイール型、航空機の所謂操縦桿型、ジョイスティック(操作レバー)型等、運転者により操作され車体に移動(直線移動、回動等を含む。)可能な部材であれば、どのような形状を有していてもよい。また、上記運転制御量は例えば転舵角(タイヤ切れ角)、内燃機関のスロットルバルブ開度又はアクセル開度、ブレーキアクチュエータの発生する制動力等の車両の運転のために操作される部材の制御量を含む。なお、この点は、以下に説明する発明についても同様に適用される。
【0006】
これによれば、前記検出される移動量が「前記移動量検出手段が正常である限りあり得ない値」となっていないと判定されるときは前記検出される移動量に基いて前記車両の運転制御量が変更されるとともに、前記検出される移動量が「前記移動量検出手段が正常である限りあり得ない値」となったと判定されたときは前記検出される移動量に代え前記検出される操作力に基いて同運転制御量が変更されるので、移動量検出手段が異常となったときであっても、車両の制御量の変更を継続することができる。
【0007】
本発明の他の特徴は、車両の運転操作装置であって、車体に対し移動可能に支持されるとともに運転者により操作される操作部材と、前記操作部材の移動量を検出する移動量検出手段と、前記検出される移動量に基いて前記車両の運転制御量を変更する運転制御量変更手段と、運転者により前記操作部材に加えられる操作力を検出する操作力検出手段と、前記操作力に抗する反力であって指示値に応じた大きさの反力を発生する反力発生手段と、前記検出される移動量に基いて前記指示値を決定する反力指示値演算手段と、を備える運転操作装置において、前記検出される移動量が「前記移動量検出手段が正常である限りあり得ない値」となったか否か、又は、前記車両が所定車速以上で走行している場合に前記検出される移動量が所定時間以上変化しないか否か、を判定する異常状態判定手段を備え、前記反力指示値演算手段は、前記検出される移動量が「前記移動量検出手段が正常である限りあり得ない値」となったと判定されたとき、又は、前記車両が所定車速以上で走行している場合に前記検出される移動量が所定時間以上変化しないと判定されたとき、前記検出される移動量に基いて前記指示値を決定することに代え前記検出される操作力に基いて前記指示値を決定するように構成されたことにある。
【0008】
これによれば、前記検出される移動量が「前記移動量検出手段が正常である限りあり得ない値」となったと判定されたとき、又は、前記車両が所定車速以上で走行している場合に前記検出される移動量が所定時間以上変化しないと判定されたとき、前記検出される移動量に代え前記検出される操作力に基いて反力の指示値が変更されるので、移動量検出手段が異常となったときであっても、操作部材に対して適正な反力を付与することができる。
【0009】
本発明の他の特徴は、車両の運転操作装置であって、車体に対し移動可能に支持されるとともに運転者により操作される操作部材と、前記操作部材の移動量を検出する移動量検出手段と、運転者により前記操作部材に加えられる操作力を検出する操作力検出手段と、前記操作力に抗する反力を発生する反力発生手段と、前記検出される移動量に基いて前記車両の運転制御量を変更する運転制御量変更手段と、を備える運転操作装置において、前記車両が所定車速以上で走行している場合に前記検出される移動量が所定時間以上変化しないか否かを判定する異常状態判定手段を備え、前記運転制御量変更手段は、前記車両が所定車速以上で走行している場合に前記検出される移動量が所定時間以上変化しないと判定されたときは前記検出される移動量に基いて前記車両の運転制御量を変更することに代え前記検出される操作力に基いて前記運転制御量を変更するように構成されたことにある。
【0010】
これによれば、前記操作部材が移動不能であると判定されないときは少なくとも前記検出される移動量に基いて前記車両の運転制御量が変更されるとともに、前記操作部材が移動不能であると判定されたときは前記検出される移動量に代えて前記検出される操作力に基いて同運転制御量が変更されるので、反力発生手段の故障等により操作部材が移動不能となったときでも、車両の制御量の変更を継続することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明による車両の運転操作装置の一実施形態について説明する。この運転操作装置は、図1及び図2に示した操作部材としての操作レバー(ジョイスティック)10を備えている。操作レバー10は、車両の運転席近傍に設けられ、図1に矢印で示したように、運転者により全体を前後方向及び左右方向に傾動(回動)させられるようになっている。
【0012】
図2は、上記操作レバー10を含む操作レバー装置の概略斜視図を示している。上記操作レバー10は、円柱棒状のロッド10aと、同ロッド10aの上部外周に固定された円柱状の把持部10bとを備えている。ロッド10aは略中央部に球状部10cを備えていて、同球状部10cにて車体に対して左右及び前後方向に回動可能に支持されている。なお、ロッド10aの軸方向が鉛直上下方向に沿う場合、操作レバー10の回動位置はその回動方向中央位置である中立位置にあるものと定義される。また、ロッド10aには、同ロッド10aの車両左右方向の歪を同車両左右方向において操作レバー10に加えられる操作力FSとして検出する歪センサ(即ち、操作力センサ)10dと、同ロッド10aの車両前後方向の歪を同車両前後方向において同操作レバー10に加えられる操作力FZとして検出する歪センサ(即ち、操作力センサ)10eとが備えられている。
【0013】
操作レバー装置は、また、操作レバー10の車両左右方向の回動に対する反力(中立位置から車両左右方向に回動させようとする運転者の操作力に抗する力)を発生する左右方向反力発生機構20を備えている。この左右方向反力発生機構20は、ガイドプレート21、回転軸22、第1歯車23、第2歯車24、直流電動モータ(左右反力用モータ)25、及び移動量検出手段としての移動量センサ(操作量センサ)26を備えている。
【0014】
ガイドプレート21は、L字状に屈曲されてなる板状部材であり、回転軸22が固定された面が鉛直面内に存在するように配置され、水平方向に存在するように配置される面に前記ロッド10aの直径より若干だけ大きい幅を有して車両前後方向に長手方向を有する溝21aが設けられていて、同溝内21a内をロッド10aが貫通するように構成されている。
【0015】
回転軸22は、その軸線が車両前後方向に沿うとともに、前記操作レバー10の球状部10cの中心を通るように車体に対して回転可能に支持されていて、中央部に第1歯車23を一体的に備えている。この第1歯車23は電動モータ25の回転軸に固定された第2歯車24に噛合している。
【0016】
以上の構成により、操作レバー10は車体に対して左右方向に(左右方向の面内で)回動可能に支持されるとともに、電動モータ25の回転により(電動モータ25の発生トルクにより)ガイドプレート21が回転軸22回りに回動し、これにより、操作レバー10が左右方向に回動されて同操作レバー10に車両左右方向の反力が付与されるようになっている。
【0017】
移動量センサ(移動量検出手段)26は、回転軸22の端部位置において車体に固定されていて、同回転軸22の回転角を操作レバー10の左右方向の移動量Xとして検出するようになっている。この移動量センサ26の出力である移動量Xの値は、操作レバー10が左右方向の中立位置にあるときに「0」となるように調整されている。なお、移動量センサ26は、回転軸22の回転を直線運動に変換し、同変換後の直線移動量を検出するものであってもよく、回転軸22の回転とともに移動する左右方向反力発生機構20の他の部材の回転角変化を移動量Xとして検出するものであってもよい。
【0018】
更に、操作レバー装置は、操作レバー10の車両前後方向の回動に対する反力(中立位置から車両前後方向に回動させようとする運転者の操作力に抗する力)を発生する前後方向反力発生機構30を備えている。この前後方向反力発生機構30は、ガイドプレート31、回転軸32、第3歯車33、第4歯車34、直流電動モータ(前後反力用モータ)35、及び移動量センサ36を備えている。
【0019】
ガイドプレート31は、L字状に屈曲されてなる板状部材であり、回転軸32が固定された面が鉛直面内に存在するように配置され、水平方向に存在するように配置される面に前記ロッド10aの直径より若干だけ大きい幅を有して車両左右方向に長手方向を有する溝31aが設けられ、同溝内31a内をロッド10aが貫通するように構成されている。
【0020】
回転軸32は、その軸線が車両左右方向に沿うとともに、前記操作レバー10の球状部10cの中心を通るように車体に対して回転可能に支持されていて、中央部に第3歯車33を一体的に備えている。この第3歯車33は電動モータ35の回転軸に固定された第4歯車34に噛合している。
【0021】
以上の構成により、操作レバー10は車体に対して前後方向に(前後方向の面内で)回動可能に支持されるとともに、電動モータ35の回転により(電動モータ35の発生トルクにより)ガイドプレート31が回転軸32回りに回動し、これにより、操作レバー10が前後方向に回動され、同操作レバー10に車両前後方向の反力が付与されるようになっている。
【0022】
また、移動量センサ(移動量検出手段)36は、回転軸32の端部位置において車体に固定されていて、同回転軸32の回転角を操作レバー10の前後方向の移動量Yとして検出するようになっている。この移動量センサ36の出力である移動量Yの値は、操作レバー10が前後方向の中立位置にあるときに「0」となるように調整されている。なお、移動量センサ36は、回転軸32の回転を直線運動に変換し、同変換後の直線移動量を検出するものであってもよく、回転軸32の回転とともに移動する前後方向反力発生機構30の他の部材の回転角変化を移動量Yとして検出するものであってもよい。このような構成の結果、上記操作力センサ10d,10eは、実質的に電動モータ25,35の負荷を検出する負荷検出手段をも構成している。
【0023】
次に、本運転操作装置の電気制御装置について図3を参照しながら説明する。なお、図3は、説明を簡単にするため、左右方向の反力発生機構20の電動モータ25と操舵角制御機構とを示すが、前後方向の反力発生機構30の電動モータ35、操作レバー10の前後方向の操作により変更される車両の内燃機関のスロットル開度及びブレーキアクチュエータの図示を省略している。
【0024】
この電気制御装置40は、マイクロコンピュータ41と、電動モータ25に所定の電流を流すためのスイッチング回路42と、操舵用電動モータ51に所定の電流を流すためのスイッチング回路43とを備えている。
【0025】
マイクロコンピュータ41は、CPU41aと、入力インターフェース41bと、出力インターフェース41cと、EEPROM41d(Electrical Erasable PROM)とを含んでいて、CPU41aは、後述するプログラム及びマップ等を記憶したROM、及びCPU41aによるプログラムの実行時に一時的に演算値を記憶するRAMからなるメモリ41eを内蔵している。
【0026】
入力インターフェース41bは、バスを介してCPU41aに接続されるとともに、移動量センサ26、操作力センサ10d、及び車両状態量センサとしての車速Vを検出する車速センサ61と接続されていて、これらのセンサの検出値をCPU41aに供給するようになっている。また、入力インターフェース41bは、スイッチング回路42の抵抗42aの上流側と接続されていて、同抵抗42aの上流側電位を検出することで電動モータ25に流れる実際のモータ電流値(実モータ電流)RIをCPU41aに供給するようになっている。
【0027】
出力インターフェース41cは、バスを介してCPU41aに接続されるとともに、スイッチング回路42,43、及び常開(ノーマリー・オープン)型のリレー44に接続されていて、CPU41aからの指令に基づきこれらの状態を変更する信号を送出するようになっている。
【0028】
EEPROM41dは、車両バッテリ70からの電源の供給を受けない状態においてもデータを記憶・保持する記憶手段であり、バスを介してCPU41aと接続されていて、電源が供給されている状態にて同CPU41aから供給されるデータを格納するとともに、CPU41aの要求に応じて保持しているデータを同CPU41aに供給するようになっている。
【0029】
スイッチング回路42は、ゲートが出力インターフェース41cにそれぞれ接続されたMOSFETからなる4個のスイッチング素子Tr1〜Tr4と、抵抗42aとを備えている。スイッチング素子Tr1,Tr2の各ドレインは、車両に搭載されたバッテリ70の電源ラインLに上流側端子が接続されたリレー44の下流側端子に接続されていて、同スイッチング素子Tr1,Tr2のソースは、スイッチング素子Tr3,Tr4のドレインにそれぞれ接続され、同スイッチング素子Tr3,Tr4のソースは抵抗42aを介して接地されている。また、スイッチング素子Tr1とTr3との間は電動モータ25の一側に接続され、スイッチング素子Tr2とTr4との間は電動モータ25の他側に接続されている。
【0030】
以上の構成により、スイッチング回路42(即ち、電動モータ25)はリレー44がオン(閉成)したときにバッテリ70から電源の供給を受け得る状態となり、スイッチング素子Tr1,Tr4が選択的に導通状態(オン状態)とされたとき、電動モータ25に所定の方向の電流が流れて同電動モータ25は一方向に回転し、スイッチング素子Tr2,Tr3が選択的に導通状態とされたとき、電動モータ25に前記所定の方向と反対方向の電流が流れて同電動モータ25は他方向に回転する。また、リレー44がオフ(開成)したときには電動モータ25の電源供給経路が遮断され、同電動モータ25への通電は停止する。
【0031】
スイッチング回路43は、上記スイッチング回路42と同様の構成を有していて、出力インターフェース41cを介して与えられるCPU41aの指示に応じて操舵用モータ51に所定の電流を流すようになっている。これにより、操舵用モータ51が回転トルクを発生すると操舵機構52が作動し、所定の転舵角θ(操舵角、タイヤ切れ角)が達成されるようになっている。
【0032】
前記バッテリ70の電源ラインLには、運転者によりオン(閉成)状態又はオフ(開成)状態に切換えられるイグニッションスイッチ45の一端が接続されている。イグニッションスイッチ45の他端はダイオードD1を介してCPU41a、入力インターフェース41b、出力インターフェース41c、及びEEPROM41dに接続されていて、イグニッションスイッチ45がオン状態とされたとき、それぞれに電源が供給されるようになっている。また、ダイオードD1の下流は、リレー44の下流側から前記ダイオードD1の下流側へ向う電流のみを許容するダイオードD2を介して前記リレー44の下流側端子と接続されていて、リレー44がオン状態とされたときは、イグニッションスイッチ45の状態にかかわらず、CPU41a、入力インターフェース41b、出力インターフェース41c、及びEEPROM41dに電源が供給されるようになっている。
【0033】
なお、図3においては省略されているが、実際には入力インターフェース41bに移動量センサ36が接続されるとともに、出力インターフェース41cには警告灯、電動モータ35に電流を付与するためのスイッチング回路、及び他のアクチュエータが接続されている。
【0034】
次に、上記のように構成した運転操作装置の作動について、図4を参照して説明する。図4は、図3に示したCPU41aがプログラムを実行することにより達成する機能をブロック図で示したものであり、理解を容易にするために、車速センサ61、移動量センサ26、操作力センサ10d、反力発生用の電動モータ25、スイッチング回路42,43、リレー44、操舵用の電動モータ51、操舵機構52、及びバッテリ70を併せて図示している。以下、各ブロック毎の機能について個別に説明し、その後、全体の作動について説明する。
【0035】
先ず、操舵(転舵)制御について説明すると、この操舵制御はスイッチ部B1と操舵制御部(運転制御量変更手段)B2とにより達成される。
【0036】
スイッチ部B1は、移動量異常検出部(移動量の異常状態判定手段)B3の出力に基いて、移動量センサ26の出力である移動量Xが正常であるときには同移動量Xを操舵制御部B2に出力し、移動量センサ26の出力である移動量Xが異常であるときには操作力センサ10dの出力である操作力FSを同操舵制御部B2に出力する。
【0037】
操舵制御部B2は、入力された移動量X又は操作力FSに基いて、図5又は図6の操舵角マップをそれぞれ使用して目標操舵角θmを決定し、同目標操舵角θmを達成するために必要な電流(電動モータ51に流すべき電流であって、例えば目標操舵角θmに比例する電流)Iθを求める。そして、操舵制御部B2は、前記電流Iθが操舵用モータ51に流れるようにするための信号をスイッチング回路43に供給し、スイッチング回路43は、この信号に基いてスイッチング素子(図示省略)を制御する。この結果、移動量センサ26の出力である移動量Xが正常であるときには同移動量Xに応じた目標操舵角θmとなるように操舵機構52が駆動され、移動量センサ26の出力である移動量Xが異常であるときには、操作力FSに応じた目標操舵角θmとなるように操舵機構52が駆動される。なお、操舵制御部B2に車両状態量として車速Vやヨーレートγを入力し、車速V又はヨーレートγによって目標操舵角θmを補正してもよい。
【0038】
次に、反力制御について説明すると、この反力制御は、上記移動量異常検出部B3に加え、通常時反力演算部B4、異常時反力演算部B5、操作力異常検出部B6、反力発生異常検出部B7、スイッチ部B8〜B10、反力減衰部B11、出力部B12、2入力の論理積を出力する論理積部B13、2入力の論理和を出力する論理和部B14、及び電流検出部B15により行われる。出力部B12を除くこれらの機能部は反力指示値演算手段を構成している。
【0039】
移動量異常検出部B3は、移動量センサ26の出力である移動量Xが、同移動量センサ26が正常である限りあり得ない値となったときに同移動量X(又は、移動量センサ26)が異常であると判定し、その旨をスイッチ部B1,B8、及び論理積部B13に出力する。また、移動量異常検出部B3は、車両の運転中(例えば、車速センサ61の出力である車速Vが所定車速より大きいとき等)において、移動量センサ26の出力である移動量Xが所定時間以上変化しないとき、同移動量X(又は、移動量センサ26)が異常であると判定し、その旨をスイッチ部B1,B8、及び論理積部B13に出力する。この場合、移動量異常検出部B3は、操作レバー10が移動不能であるか否かを事実上判定している。なお、移動量Xが正常であるか否かの判定・検出は、上記方法に限定されることはなく、例えば、上記正常である限りあり得ない値となっている状態が所定時間以上継続したときに同移動量Xが異常であると判定してもよい。
【0040】
通常時反力演算部B4は、車速センサ61の出力である車速Vを入力するとともに、移動量センサ26の出力である移動量Xを入力し、車速Vと移動量XとブロックB4内に示した反力マップとを用いて反力TFを決定する。なお、反力TFは、図示したように、同一移動量Xに対しては車速Vが大きいほど大きくなるように決定される。
【0041】
一方、異常時反力演算部B5は、車速センサ61の出力である車速Vを入力するとともに、操作力センサ10dの出力である操作力FSを入力し、車速Vと操作力FSとブロックB5内に示した反力マップとを用いて反力TFを決定する。なお、反力TFは、図示したように、同一操作力FSに対しては車速Vが大きいほど大きくなるように決定される。
【0042】
操作力異常検出部B6は、操作力センサ10dの出力である操作力FSが、同操作力センサ10dが正常である限りあり得ない値となったときに同操作力センサ10d(又は検出された操作力FS)が異常であると判定し、その旨を論理積部B13に出力する。なお、操作力センサ10dが正常であるか否かの判定は、上記方法に限定されることはなく、例えば、検出された操作力FSが正常である限りあり得ない値となっている状態が所定時間以上継続したときに同操作力センサ10dが異常であると判定してもよく、或いは、車両の運転中(例えば、車速センサ61の出力である車速Vが所定車速より大きいとき等)において、操作力センサ10dの出力である操作力FSが所定時間以上変化しないとき、同操作力センサ10dが異常であると判定してもよい。
【0043】
反力発生異常検出部B7は、スイッチ部B10から出力部B12に与えられる反力指示値TFsと、抵抗42aの上流側の電位をAD変換する電流検出部B15によって検出される電動モータ25に流れる電流RIとを入力し、図7にフローチャートにより示した反力発生異常判定ルーチンを実行することで、出力部B12、スイッチング回路42、及び電動モータ25(以下において、出力部B12、スイッチング回路42、及び電動モータ25を反力発生部と称する。)の異常を検出し、その結果に応じた信号を出力部B12、論理和部B14、及びリレー44に出力する。
【0044】
ここで、図7に示した反力発生異常検出(判定)ルーチンについて、反力発生部が正常である場合から説明すると、CPU41aは所定時間の経過毎にステップ700から処理を開始し、ステップ705に進んで反力指示値TFsを読込むとともに、ステップ710に進んでモータ電流RIを読込み、続くステップ715にてモータ電流RIに所定の定数kを乗じて実際の反力(実反力)TFrを求める。
【0045】
次いで、CPU41aはステップ720に進み、同ステップ720にて反力指示値TFsと実反力TFrの差の絶対値(|TFs−TFr|)が所定の閾値Th以上か否かを判定する。この場合、反力発生部は正常であるから、反力指示値TFsと実反力TFrは略等しいので、反力指示値TFsと実反力TFrの差の絶対値(|TFs−TFr|)は所定の閾値Thより小さい。従って、CPU41aはステップ720にて「No」と判定してステップ725に進み、同ステップ725にてカウンタCNTの値を「0」に設定し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。以上の処理は、反力発生部が正常である限り、所定時間の経過毎に繰り返され、反力発生異常検出部B7は、出力部B12、論理和部B14、及びリレー44に対して何らの信号も出力しない。
【0046】
次に、反力発生部が異常となった場合について説明すると、CPU41aはステップ700〜720までを同様に実行するが、この場合、反力指示値TFsと実反力TFrの差の絶対値(|TFs−TFr|)が所定の閾値Thより大きくなる。従って、CPU41aはステップ720にて「Yes」と判定してステップ730に進み、同ステップ730にてカウンタCNTの値を「1」だけ増大する。
【0047】
次いで、CPU41aはステップ735に進み、同ステップ735にてカウンタCNTの値が所定値CNT0より大きいか否かを判定する。現時点は、カウンタCNTの値は「0」から「1」だけ大きくなった直後であるので、所定値CNT0より小さい。従って、CPU41aはステップ735にて「No」と判定してステップ795に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0048】
以降においても、反力発生部が異常であると、反力指示値TFsと実反力TFrの差の絶対値(|TFs−TFr|)は所定の閾値Thより大きく、従って、CPU41aはステップ700〜720、730、735、795を繰り返し実行する。このため、カウンタCNTの値はステップ730の処理により次第に大きくなって、所定値CNT0を超えるので、CPU41aはステップ735に進んだときに「Yes」と判定してステップ740に進み、同ステップ740にて反力徐変指示(ハイレベル信号)を論理和部B14に対して出力する。この結果、スイッチ部B9,B10が反力減衰部B11を出力部B12に接続するように切換るとともに、反力減衰部B11が反力指示値TFsの減衰を開始し、これにより発生する反力が時間とともに徐々に減少する。
【0049】
次いで、CPU41aはステップ745に進み、同ステップ745にて反力指示値TFsが「0」であるか否かを判定する。現時点においては、反力指示値TFsは減衰を開始した直後であるから「0」でなく、従って、CPU41aはステップ745にて「No」と判定してステップ795に進み、同ステップ795にて本ルーチンを一旦終了する。
【0050】
このような状態が継続すると、反力指示値TFsは反力減衰部B11により次第に減少させられて「0」となる。このため、CPU41aはステップ745に進んだとき、同ステップ745にて「Yes」と判定してステップ750に進み、同ステップ750にてリレー44をオフ状態に変更(開成)する。次いで、CPU41aはステップ755に進み、同ステップ755にて出力部B12に対し、電動モータ25がモータブレーキを発生するような状態とするための指示(スイッチング素子Tr1,Tr2を導通状態(オン)とし、スイッチング素子Tr3,Tr4を非導通状態(オフ)とすることで、電動モータ25の両端を短絡するための指示)を発生し、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。以上が、反力発生異常検出部B7の機能である。
【0051】
なお、上記のルーチンにおいて、ステップ720にて「No」と判定した場合であって、反力指示値TFsが先のステップ740と反力減衰部B11により減少されているときは、これを正規の反力指示値TFsまで徐々に増大するように構成することが好適である。
【0052】
スイッチ部B8は、通常時反力演算部B4により決定される反力TFと、異常時反力演算部B5により決定される反力TFの何れかを、移動量異常検出部B3の出力に応じて選択し、同選択した反力TFを後段のスイッチ部B9に出力する。
【0053】
スイッチ部B9及びスイッチ部B10は、論理和部B14の出力に応じて同時に切換り、論理和部B14からの出力がない場合(ローレベル信号を受けている場合)、スイッチ部B8から入力される反力TFをそのまま反力指示値TFsとして出力部B12に出力する。一方、論理和部B14からの出力がある場合(ハイレベル信号を受けた場合)、スイッチ部B8から入力される反力TFを反力減衰部B11を介して時間減衰して反力指示値TFsに変更し、これを出力部B12に出力する。
【0054】
出力部B12は、PWM回路を含んでいて、スイッチ部B10から入力された反力指示値TFsに応じた電流値を求め、この電流値を有する電流を電動モータ25に流すようにスイッチング回路42の各スイッチング素子Tr1〜Tr4に対して制御信号を出力する。また、前述したように、反力発生異常検出部B7からの信号に応じて、電動モータ25を短絡状態とするための制御信号をスイッチング回路42に供給する。
【0055】
CPU41aは、上述の各ブロックの機能を達成するプログラムを実行することによって、操舵制御と反力制御を行う。以下、場合を分けて説明する。
【0056】
(システム(運転操作装置)全体が正常に機能しているとき)
この場合、移動量異常検出部B3、操作力異常検出部B6、及び反力発生異常検出部B7は何れも異常を検出しないので、その出力を発生しない(即ち、ローレベル信号を発生する)。この結果、操舵制御部B2は、移動量Xに応じて目標操舵角θmを決定し、これに応じた操舵制御が達成される。また、通常時反力演算部B4により移動量Xと車速Vとに応じて決定された反力TFが出力部B12に反力指示値TFsとして与えられ、これに応じた反力が電動モータ25により発生される。
【0057】
(移動量センサの出力である移動量Xに異常が発生したとき)
この場合、移動量異常検出部B3が出力を発生する(ハイレベル信号を出力する)。従って、スイッチ部B1が切換り、操舵制御部B2に移動量Xに代えて操作力FSが与えられ、操作力FSによる操舵(転舵)制御が実行される。移動量センサ26の出力が異常となる場合は、移動量センサ26自体が故障した場合、又はスイッチング回路42、電動モータ25を含む反力発生機構20が故障して操作レバー10が移動不能となる場合(スティック故障発生時、ロック故障発生時)等が考えられるが、上記構成によれば、このように移動量Xが正確に検出できない場合や移動量Xが一定値となってしまう場合であっても、操作力FSによる車両の操舵(運転制御量の変更)が可能となる。
【0058】
また、移動量異常検出部B3が出力を発生すると、スイッチ部B8が切換り、通常時反力演算部B4に代えて異常時反力演算部B5によって決定される反力TFに基く反力制御が実行される。従って、移動量センサ26が故障した場合であって正しい移動量Xが検出できない場合であっても、操作力FSによって適切な反力が操作レバー10に付与される。
【0059】
(操作力センサ及び移動量センサの出力である操作力FS及び移動量Xに異常が発生したとき)
この場合、移動量異常検出部B3及び操作力異常検出部B6の両ブロックが出力を発生する(ハイレベル信号を出力する)。従って、論理積部B13の出力がハイレベルとなって、論理和部B14の出力もハイレベルとなる。この結果、スイッチ部B9,B10が切換り、その時点の反力TFが反力減衰部B11により時間とともに減衰されて反力指示値TFsに変換されるので、実際の反力が徐々に減少する。これにより、反力の急減がなく、安定した運転操作を行うことができる。
【0060】
(反力発生機構20、反力発生部(出力部B12、スイッチング回路42、及び電動モータ25)に異常が発生した場合)
この場合、図7のルーチンを用いて説明したように、反力発生異常検出部B7は、先ず、論理和部B14に反力徐変指示のためのハイレベル信号を出力するため、スイッチ部B9,B10が切換り、その時点の反力TFが反力減衰部B11により時間とともに減衰されて反力指示値TFsに変換されるので、実際の反力が徐々に減少する。これにより、反力の急減がなく、安定した運転操作を行うことができる。
【0061】
そして、所定時間だけ反力発生部の異常が検出され続けて反力指示値TFsが「0」となると、反力発生異常検出部B7はリレー44をオフ状態に変更(開成)し、出力部B12に対して電動モータ25がモータブレーキを発生するような状態とするための指示を発生する。この結果、反力発生部への電源供給が遮断されるとともに、反力発生部が機能すれば電動モータ25のモータブレーキによる反力が発生され、反力発生部の異常時にもある程度の反力が操作レバー10に付与される。
【0062】
以上、説明したように、本発明による運転操作装置によれば、移動量センサ26、36操作力センサ10d,10e、反力発生部等の異常が検出された場合に、異常内容に応じた操舵制御や反力制御を行うことができる。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、通常時の操舵角制御は操作力FS、又は移動量Xの時間微分値を考慮して行ってもよく、また電動モータ25に流れる電流は、所謂目標トルクに対するPI制御又はPID制御により決定してもよい。更に、上記実施形態は左右方向の反力発生機構20に関する異常に対応するものであったが、本発明は前後方向の反力発生機構30に関する異常に対しても同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る運転操作装置の操作レバーの概略図である。
【図2】 図1に示した操作レバーを含む操作レバー装置の概略斜視図である。
【図3】 本発明の実施形態に係る運転操作装置の電気制御装置を示すブロック図である。
【図4】 図3に示したCPUの実行するプログラムを表した機能ブロック図である。
【図5】 移動量と目標操舵角の関係を規定する操舵角マップである。
【図6】 操作力と目標操舵角の関係を規定する操舵角マップである。
【図7】 図4に示した反力発生異常検出部の機能を達成するために図3に示したCPUが実行する反力発生異常検出ルーチンを示したフローチャートである。
【符号の説明】
10…操作レバー、10a…ロッド、10d,10e…操作力センサ、20…左右方向反力発生機構、30…前後方向反力発生機構、21,31…ガイドプレート、25,35…直流電動モータ、26,36…移動量センサ、40…電気制御装置、41…マイクロコンピュータ、41a…CPU、42,43…スイッチング回路、44…リレー、51…操舵用直流電動モータ、52…操舵機構、61…車速センサ、70…バッテリ、B2…操舵制御部、B3…移動量異常検出部、B4…通常時反力演算部、B5…異常時反力演算部、B6…操作力異常検出部、B7…反力発生異常検出部、B11…反力減衰部、B12…出力部、B13…論理積部、B14…論理和部、B15…電流検出部。
Claims (3)
- 車両の運転操作装置であって、
車体に対し移動可能に支持されるとともに運転者により操作される操作部材と、
前記操作部材の移動量を検出する移動量検出手段と、
運転者により前記操作部材に加えられる操作力を検出する操作力検出手段と、
前記操作力に抗する反力を発生する反力発生手段と、
前記検出される移動量に基いて前記車両の運転制御量を変更する運転制御量変更手段と、
を備える運転操作装置において、
前記検出される移動量が、前記移動量検出手段が正常である限りあり得ない値となったか否かを判定する異常状態判定手段を備え、
前記運転制御量変更手段は、
前記検出される移動量が、前記移動量検出手段が正常である限りあり得ない値となったと判定されたとき、前記検出される移動量に基いて前記車両の運転制御量を変更することに代え前記検出される操作力に基いて前記運転制御量を変更するように構成された運転操作装置。 - 車両の運転操作装置であって、
車体に対し移動可能に支持されるとともに運転者により操作される操作部材と、
前記操作部材の移動量を検出する移動量検出手段と、
前記検出される移動量に基いて前記車両の運転制御量を変更する運転制御量変更手段と、
運転者により前記操作部材に加えられる操作力を検出する操作力検出手段と、
前記操作力に抗する反力であって指示値に応じた大きさの反力を発生する反力発生手段と、
前記検出される移動量に基いて前記指示値を決定する反力指示値演算手段と、
を備える運転操作装置において、
前記検出される移動量が、前記移動量検出手段が正常である限りあり得ない値となったか否か、又は、前記車両が所定車速以上で走行している場合に前記検出される移動量が所定時間以上変化しないか否か、を判定する異常状態判定手段を備え、
前記反力指示値演算手段は、
前記検出される移動量が、前記移動量検出手段が正常である限りあり得ない値となったと判定されたとき、又は、前記車両が所定車速以上で走行している場合に前記検出される移動量が所定時間以上変化しないと判定されたとき、前記検出される移動量に基いて前記指示値を決定することに代え前記検出される操作力に基いて前記指示値を決定するように構成された運転操作装置。 - 車両の運転操作装置であって、
車体に対し移動可能に支持されるとともに運転者により操作される操作部材と、
前記操作部材の移動量を検出する移動量検出手段と、
運転者により前記操作部材に加えられる操作力を検出する操作力検出手段と、
前記操作力に抗する反力を発生する反力発生手段と、
前記検出される移動量に基いて前記車両の運転制御量を変更する運転制御量変更手段と、
を備える運転操作装置において、
前記車両が所定車速以上で走行している場合に前記検出される移動量が所定時間以上変化しないか否かを判定する異常状態判定手段を備え、
前記運転制御量変更手段は、
前記車両が所定車速以上で走行している場合に前記検出される移動量が所定時間以上変化しないと判定されたときは前記検出される移動量に基いて前記車両の運転制御量を変更することに代え前記検出される操作力に基いて前記運転制御量を変更するように構成された運転操作装置。
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