JP4511465B2 - 根尖位置検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、歯科における診断や治療時において、根管長の測定に使用される根尖位置検出装置に関する。
術者が歯の治療を行うとき、根管内の歯髄及び神経を除去することが必要な場合が生じる。この場合、術者は歯冠から根尖までの距離を測定し、その距離に相当する分の根管内の歯髄、神経あるいは細菌感染した羅漢象牙質や根管内異物を除去する。距離測定のためには、根尖位置検出装置が用いられる。根尖位置検出装置は、口腔内に口腔電極を配置し、根管内に測定電極を挿入し、測定電極と口腔電極との間に交流信号を与えて、測定電極が根尖位置に達したときに測定される信号の値(電気的特性値)に応じて根尖位置を検出する。
術者は、表示部の指針が所定の位置を示すことを監視することにより、測定電極が根尖に達したときを知る。
根管内の治療においては、歯の根尖位置を正確に検出することが重要な課題である。根尖位置が正確に検出されなかつた場合、上記した距離に誤差が生じる。この誤差を有する距離を信じて術者が治療を行うと、その治療後、根管内に歯髄、神経あるいは細菌感染した羅漢象牙質や根管内異物が残存した状態になったり、あるいは術者の処理の最中に根尖を破損してしまつたりするからである。
治療対象の歯の根管内の状態は、乾燥している乾燥状態から血液等で満たされている湿潤状態までケースバイケースで異なる。従来の根管長測定装置は、歯の根管内の状態が、特定の条件(太さ、形状(湾曲、分岐)、乾燥・湿潤の程度)にある時には正確に根尖位置を検出することができる。しかし、歯の根管内の状態が特定の条件ではない時には、その測定値は誤差を伴っていた。
また、従来の根尖位置検出装置の表示には、根尖位置を示す目盛りと、根尖位置前後にある目盛りが表記されている。上記のように、根管内の状態が特定の条件にある場合には、同目盛りは測定電極が根尖位置に位置したことを正確に表示するることができる。しかし、根尖位置前後にある目盛りは、測定電極が根尖位置の前後にあることを表示するに留まり、根尖位置からどの程度の距離にあるかを表示することはできなかった。
また、従来の根管長測定器により、最初に根管長を測定する前に、リーマ或いはファイルに挿入したシリコンストッパーの位置をX線写真を使用して根管長に合わせることも必要であつた。リーマやファイルに付したシリコンストッパーで、また、一旦根管長さを決定したリーマやファイルに付したシリコンストッパーで、印付けた場合でもシリコンストッパーがずれてしまい、正確な長さを表示できないこともあつた。該印が歯の陰によりX線写真上では認識出来なくなるケースが生じ、このため測定作業を途中でやめなければならなかった。
本願発明は、上記のような従来技術が有する課題の内の、少なくとも1つを解決することを目的とする。
本願発明の第1の観点にしたがって、被検査歯の根管の根尖位置を検出するための根尖位置検出装置が提供される。この根尖位置検出装置は下記を具備する:
根管内に挿入される測定電極;口腔内表面に配置される口腔電極;
測定電極及び口腔電極の内の1つに、複数種類の測定用信号を印加する電源;根尖位置モデルデータを記憶するための記憶部、根尖位置モデルデータは複数のモデル歯データグループを有し、各モデル歯データグループの各々は測定電極の先端がモデル歯の根尖位置に配置された状態における、該複数種類の測定用信号の各々に対する、測定電極と口腔電極間の電気的特性値から構成され、該モデル歯は各モデル歯データグループ毎に異なる;
検出部、検出部は複数種類の測定用信号の各々が順次測定電極及び口腔電極の内の1つに印加され、測定電極が根管内を根尖位置に向けて挿入されていく過程で、各測定信号に基いた測定電極と口腔電極との間の複数の電気的特性値を順次検出する;
比較部12、比較部は、検出部が順次検出した複数の電気的特性値から構成される被検査歯データグループを、記憶部に記憶された根尖位置モデルデータ中の複数のモデル歯データグループと比較し、被検査歯データグループと所定の関係にあるモデル歯データグループが存在することを検知して、その検知結果を出力する;
比較部が出力した検知結果を表示するための表示部。
本願発明の第2の観点に従って、被検査対象歯の根尖位置及び測定電極の先端と根尖位置との間の距離を検出するための根尖位置検出装置が提供される。該根尖位置検出装置は下記を具備する:
根管内に挿入される測定電極;
口腔内表面に配置される口腔電極;
測定電極及び口腔電極の内の1つに、複数種類の測定用信号を供給する電源;
記憶部、該記憶部は根管内位置別モデルデータを記憶する、根管内位置別モデルデータは複数のモデル歯データグループを具備し、各モデル歯データグループの各々は、測定電極の先端がモデル歯内の複数の所定位置の各々に配置された状態における、複数種類の測定用信号の各々に対する、測定電極と口腔電極の間の電気的特性値から構成され、モデル歯は各モデル歯データグループ毎に異なる;
検出部、該検出部は、複数種類の測定用信号の各々が測定電極及び口腔電極の内の1つに印加され、測定電極の先端が被検査歯の根管の入り口から根尖位置に向けて挿入されていく過程で、複数の測定用信号の各々に対する、測定電極及び口腔電極間の複数の電気的特性値を順次検出する;
比較部、該比較部は、検出部が順次検出した複数の電気的特性値から構成される被検査歯データグループと、記憶部に記憶された根管内位置別モデルデータ中の複数のモデル歯データグループとを比較し、被検査歯データグループと所定の関係にあるモデル歯データグループが存在することを検知し、その検知結果を位置情報として出力する。
上記した本願発明の第1及び第2の観点に基く根尖位置検出装置の各々は、下記a)乃至g)のいずれか1つを、或いは、これらのいずれか複数を組み合わせて具備することが好ましい。
(a)複数種類の測定用信号の各々は、周波数、波形、ピーク値の少なくとも1つに関して相違する。
(b)複数種類の測定用信号は、2種類の測定用信号であり、これら2種類の測定用信号は互いに周波数が異なる電圧である。
(c)検出部が検出する電気的特性は、両電極間のインピーダンス値、両電極間に流れる電流値、両電極間の電圧値、両電極間の電流値或いは電圧値と測定用信号間の位相差の内の少なくも1つである。
(d)比較部が検知する所定の関係は、被検査歯データグループが、記憶部に記憶された根尖位置モデルデータ中の複数のモデル歯データグループの中のいずれかと一致する関係、及び被検査歯データグループの値とモデル歯データグループの値との差が所定の範囲内である関係、の少なくも1つである。
(e)比較部が出力する検知結果は、表示用、警告用及び歯治療器具の制御用の少なくとも1つに利用される。
(f)根尖位置モデルデータは、実際の歯に基く実測データ、理論データ、シミュレーションデータ、実測データに基いて計算により求めた近似的データ及びこれらのデータの内の少なくとも二つを組み合わせたデータ、の内の1つである。
(g)比較部が出力した検知結果を表示するための表示部。
本願発明の第3の観点に基づいて、該第2の観点に従った根尖位置検出装置がさらに下記を具備する根尖位置検出装置が提供される:記憶部は根管内位置別モデルデータとともに、予測根管内位置別モデルデータを記憶する、ここで、予測根管内位置別モデルデータは、上記複数の所定位置の中の1つの所定位置と次の所定位置との間の予測された電気的特性値である;
比較部は、検出部が順次検出した実測電気的特性値を、記憶部に記憶された根管内位置別モデルデータ及び予測根管内位置別モデルデータと比較し、両モデルデータ中に実測電気的特性値と所定の関係にあるデータが存在することを検知して、その検知結果を出力する。
上記本願発明の第3の観点に基く根尖位置検出装置は、下記h)乃至t)のいずれか1つを、或いは、これらのいずれか複数を組み合わせて具備することが好ましい。
(h)比較部が出力した検知結果を表示するための表示部。
(i)複数種類の測定用信号の各々は、周波数、波形、ピーク値の少なくとも1つに関して相違する。
(j)複数種類の測定用信号は、2種類の測定用信号であり、これら2種類の測定用信号は互いに周波数が異なる電圧である。
(k)検出部が検出する電気的特性は、両電極間のインピーダンス値、両電極間に流れる電流値、両電極間の電圧値、両電極間の電流値或いは電圧値と測定用信号間の位相差の内の1つである。
(l)比較部が検知する所定の関係は、被検査歯データグループが、記憶部に記憶された根管内位置別モデルデータ中の複数のモデル歯データグループの中のいずれかと一致する関係、及び被検査歯データグループの値とモデル歯データグループの値との差が所定の範囲内である関係、の少なくも1つである。
(m)比較部が出力する検知結果は、表示用、警告用及び歯治療器具の制御用の少なくとも1つに利用される。
(n)根尖位置モデルデータは、実際の歯に基く実測データ、理論データ、シミュレーションデータ、近似的データ及びこれらのデータの内の少なくとも二つを組み合わせたデータの内の1つである。
(o)比較部が出力する検知結果が示す根管内位置と、次の根管内位置との間の、少なくとも1箇所の途中位置における電気的特性値を予測する予測部14、
ここで、予測部が予測した電気的特性値は上記予測された電気的特性値である。
(p)複数種類の測定用信号は、2種類の測定用信号であり、これら2種類の測定用信号は互いに周波数が異なる電圧である。
(q)検出部が検知する電気的特性は、両電極間のインピーダンス値、両電極間に流れる電流値、両電極間の電圧値、両電極間の電流値或いは電圧値と測定用信号間の位相差の内の1つである。
(r)比較部が検知する所定の関係は、被検査歯データグループが、記憶部に記憶された根管内位置別モデルデータ中の複数のモデル歯データグループの中のいずれかと一致する関係、及び被検査歯データグループの値とモデル歯データグループの値との差が所定の範囲内である関係、の少なくも1つである。
(s)比較部が出力する検知結果は、表示用、警告用及び歯治療器具の制御用の少なくとも1つに利用される。
(t)根尖位置モデルデータは、実際の歯に基く実測データ、理論データ、シミュレーションデータ、実測データに基いた計算により求めた近似的データ及びこれらのデータの内の少なくとも二つを組み合わせたデータの内の1つである。
図1は、本願発明の根尖位置検出装置の1つの実施形態を示す図である。
図2は、複数のモデル歯の根尖位置における、測定電極に印加する測定用信号の周波数と、該測定用信号により測定電極と口腔電極間に流れる電流値の実測データを示す図である。
図3は、図2に示された実測データから、500Hzと2KHzの測定用信号に対する、測定電極と口腔電極間に流れる電流値を小さい順に並べて配置した図である。
図4は、図2に示された実測データから、500Hz、2KHz、4KHzの測定用信号に対する、測定電極と口腔電極間に流れる電流値を小さい順に並べて配置した図である。
図5は、本願発明の第五の実施形態の装置を説明する図である。
図6は、複数のモデル歯の根尖手前1mmにおける、測定電極に印加する測定用信号の周波数と、該測定用信号により測定電極と口腔電極間に流れる電流値の実測データを示す図である。
図7は、複数のモデル歯の根尖手前3mmにおける、測定電極に印加する測定用信号の周波数と、該測定用信号により測定電極と口腔電極間に流れる電流値の実測データを示す図である。
図8は、逆円錐状根管のモデル歯の電気的特性値変化パターンを示す図である。
図9は、円筒状根管のモデル歯の電気的特性値変化パターンを示す図である。
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
第1図において、電源1は複数種類の測定用信号Pnを出力する。この測定用信号Pnは、例えば500Hz,2KHzの2種類の周波数の信号とされることができる。測定用信号Pnは、3種類以上の周波数の信号とされることもできる。測定用信号Pnは、周波数、波形、ピーク値の内の少なくとも1つに関して異なる信号とされることもできる。本願発明においては、複数種類の測定用信号Pnに基いて、測定電極10と口腔電極11間の複数種類の電気的特性値を検出することが必要であり、これら信号の種類は以下に説明される本願発明の原理に基いて、選択されることができる。
さらに、この測定用信号Pnは、測定電極10に印加されているが、口腔電極11に印加されても良い。
本実施形態の説明においては、本実施形態をより具体的に説明する便宜上から、測定用信号Pnとして500Hz及び2KHzの2種類の周波数の信号を使用し、該測定信号を測定電極に印加するケースについて説明する。しかし、本願発明は、このケースに限定されるものではない。
電源1は、500Hz及び2KHzの2種類の周波数の測定用信号を出力する。
信号切換え部2は電源1から出力される500Hz及び2KHzの2種類の周波数の測定用信号の各々を、制御部6の制御の下で、測定電極に順次供する。この信号切換え部2としてはいわゆるマルチプレクサなどのスイッチ部が採用されることができる。
整合部3は、信号切替部からの信号を、人体と接続しても安全な電圧レベルに変換し、そして必要以上に人体に測定電流が流れないようにする部分であり、電源1からの測定用信号Pnを測定電極10に供するに適した信号に調整する。しかし、電源からの測定用信号Pnが測定電極10に印加するための適した信号である場合、整合部3は削除されることができる。本実施態様において、整合部3は500Hzと2KHzの2種類の周波数の測定用信号Pnを所定の電圧値Vnに調整する。
口腔電極11に接続された増幅部4は口腔電極11から出力される測定信号Qnを増幅する。この測定信号Qnは、測定電極10と口腔電極11との間の電気的特性値に関係した値である。電気的特性値は、両電極間に流れる電流値In(以下、「測定電流値In」と記す)、両電極間の電圧値Vn(以下、「測定電圧値Vn」と記す)、電流値Inと測定用信号Pnとの間の位相差、電圧値Vnと測定用信号Pnとの間の位相差、及び両電極間のインピーダンス値Zn(以下、「根管内インピーダンス値Zn」と記す)のいずれか1つ或いはこれらの歯データグループの組合せ、とされることができる。
これら電気的特性値は、測定信号Qn自体、或いは他の信号値と組み合わせて求めることもできる。
本願発明における電気的特性値は、測定電流Inに限られないが、本実施形態をより具体的に説明する便宜上、以下においては、電気的特性値が測定電流Inであるケースが説明される。
増幅部4は、測定電流Inを電圧に変化し、その電圧を増幅する周知の増幅器が採用されることができる。
変換部5は増幅部4で増幅された交流の測定電圧Vnを、制御部で読み込み・記憶が可能な直流電圧Vdcに変換する回路である。
制御部6は、本実施形態の根尖位置検出装置100内の所定の機器を制御する。
本実施形態においては、電源1、信号切換え部2、整合部3、測定電極10、口腔電極11、増幅部4、変換部5及び制御部6により検出部25が構成されることができる。検出部25は、測定電極と口腔電極間の歯の電気的特性が検出できる構成であれば、いずれの構成も採用されることができる。検出部25は、500Hz及び2KHzの2種類の周波数の測定用信号Pnの各々を測定電極10の1つに印加し、各測定信号に基いた測定電極10と口腔電極11との間の2種類の電気的特性値を検出する。
本実施形態において、制御部6は根尖位置検出装置100内の所定の機器を制御するとともに、記憶部9に記憶されている電気的特性値に関する根尖位置モデルデータ中の複数のモデル歯データグループと、検出部25が検出した治療対象の被検査歯24の電気的特性値を有する被検査歯データグループとを比較し、被検査歯データグループと所定の関係にあるモデル歯データグループが存在するか否かを検査するための制御も実施することができる。
記憶部9は、測定電極10の先端がモデル歯24’の根管22’の根尖位置23’に位置した状態で、測定電極10と口腔電極11間の電気的特性値Inに関する根尖位置モデルデータを記憶する。モデル歯24’は、根管構造或いは根管内の状態(乾燥状態から湿潤状態までの湿潤の程度)を異にするサンプル歯である。この根尖位置モデルデータは、500Hz及び2KHzの2種類の周波数の測定用信号Vnをモデル歯24’に印加した際に得られる2種類の電気的特性値から構成される歯データグループを複数有している。
各グループは、それぞれ異なる実際のサンプル歯を対象にして得られた実測データを採用することができる。各モデル歯データグループの実測データは、所定のモデル歯24’の根尖位置23に測定電極10の先端が配置された状態で、500Hz及び2KHzの2種類の測定用信号Pnに対する、測定電極10と口腔電極11間の電気的特性値Inとされることができる。
この根尖位置(生理学的根尖位置)における実測データを、図2を使用して更に具体的に説明する。図2において、縦軸は測定電流In(数量化)であり、横軸は測定用信号の周波数である。図2は、測定電極10の先端を根尖位置に配置した状態での、測定電流Inと周波数fとの関係を示している。1つの線は、1つのモデル歯24’に関するデータを示している。ここで、同じ根管構造を有する一つのモデル歯24’でも、その根管内状態(例、乾燥状態や湿潤状態の程度及び太さの変化)が異なる場合は、異なるモデル歯24’として扱われる。
この実測データは、藤栄電気社製、商品名ジャスティIIの根尖位置検出装置を一部変更して使用した。この変更は、測定用信号の周波数が500Hz及び2000Hzであったのを、250乃至8000Hzに設定できるようにした。そして、ジャスティIIの検波出力の出力電流を検出抵抗に流し、その両端電圧値を測定データとして使用した。測定対象は、インホームドコンセプトの得られた者を対象とした。
図2は、約30症例のモデル歯24’における実測データを表している。この図2において、500Hzと2KHzの周波数の位置に垂線を引くと、各モデル歯24’毎に、各垂線と実測データとの交点の値のモデル歯データグループが得られる。図2からは、約50症例のモデル歯24’における上記交点の値のモデル歯データグループが得られる。500Hzのデータ指示値を見ると約70〜280程度の変化がある。
このように、各モデル歯24’の縦軸データ(電気的特性値)は、一定の値を示さないこと、すなわち各歯は互いに異なる固有の電気的特性値を有することが理解することができる。
図3は、図2に示された約50のモデル歯24’における、上記交点の値のモデル歯データグループを、測定データの順に配置している。
図3において、縦軸のデータ表示は数量化された値であり、×印を付したデータは、2KHzの測定用信号Pnにおける実測データの値を示し、■は、500Hzの測定用信号Pnにおける実測データの値を示している。各サンプルにおける、両測定用信号に対応するデータが1つのモデル歯データグループを形成する。
図3から、記憶部9に記憶される根尖位置モデルデータとして、異なるモデル歯24’より得られた約50のモデル歯データグループを得ることができる。
比較部12は、検出部25が検出した、治療対象の被検査歯24に関する、上記2種類の電気的特性値Inの被検査歯データグループを、記憶部9に記憶された根尖位置モデルデータ中のモデル歯データグループの値と比較し、該根尖位置モデルデータ中に被検査歯データグループと所定の関係のモデル歯データグループがあるか、否かを検査する。比較部12の検査結果は、測定電極の位置に関する位置情報として表示部7に送られる。上記「所定の関係」は、検出部が検出した2種類の電気的特性値よりなる被検査歯データグループが、記憶部に記憶されている根尖位置モデルデータ中のいずれかのモデル歯データグループと一致する関係とされることができる。或いは、上記所定の関係は被検査歯データグループとモデル歯データグループとの差異が所定の範囲内の関係であってもよい。この範囲としては、例えば、5%とすることができる。
表示部7は、比較部12からの出力を根尖位置検出装置100の検出結果として表示する。すなわち、比較部12から「一致」の情報を受けた表示部7は、測定電極の先端が根尖位置23に位置した旨を表示する。比較部12から「不一致」の情報を受けた表示部7は、測定電極の先端が根尖位置23に配置されていない旨を表示する。
この表示部7としては、アナログメーター、ディジタルメーター、音(例、警告音)、光(例、警告光)或いは振動等、術者に根尖位置を知らせ得るいずれの部も採用されることができる。
第1の実施形態においては、比較部12の出力は表示部7に送られたが、比較部7の出力は、警告用としても利用されることができる。この場合、比較部7の出力は、測定電極10の先端が根尖位置23に位置したことを、音、光或いは振動等により報知するために使用されることができる。比較部7の出力は、歯科治療器具(例、電気エンジンを備えた自動根管拡大器)の制御用に利用されることができる。
インターフェイス部8は、比較部12の出力を電気エンジンを備えた自動根管拡大器に供給するための回路である。自動根管拡大器は、術者による手作業での根尖拡大作業の代わりに、根管長測定器からのデータに基いて制御される電気エンジンにより回転されるリーマ及びファイルにより、根管拡大作業を機械的に実施することができる。
本願発明の第1の実施形態の根尖位置検出装置の動作を説明する。
(1) 記憶部9に、測定電極10の先端が根管の根尖位置23に配置された状態において、測定電極と口腔電極間の電気的特性値に関する根尖位置モデルデータを記憶する。この根尖位置モデルデータは、測定電極10の先端がモデル歯24’の根管22’の根尖位置23’に位置した状態で、測定電極10に500Hz及び2KHzの2種類の周波数の測定用信号を印加し、両電極間に流れる電流値(電気的特性値)Inである。より多くのモデル歯24’についてのモデルデータが記憶されることが好ましい。
(2)被検査歯24の口腔に口腔電極11を接触させ、測定電極10を該歯の根管内の測定開始位置(例、歯冠部)に位置させる。
(3)測定電極10を根尖位置23に向けて移動させつつ、測定電極に電源1から500Hz及び2KHzの2種類の周波数の測定用信号Pnを順次供給する。或いは、測定電極10を根尖位置23に向けて移動させる前から、両電極に向けて電源1から500Hz及び2KHzの2種類の周波数の測定用信号を供給を開始することもできる。
(4)切換え部2は、電源1からの500Hz及び2KHzの2種類の周波数の測定用信号Pnの各々が順次測定電極に向けて供給されるように、各測定用信号Pnが供給されるタイミングを調整する。
(5)切換え部2から、測定電極に順次供給された500Hz及び2KHzの測定用信号Pnに基いて、両電極間の2種類の電気的特性値(ここでは、電流値In)が口腔電極11から出力される。
(6)これら2種類の電気的特性値を示す電流値Inの各々は、電圧値に変換され、増幅部4において増幅される。
(7)増幅された2種類の電圧値Vnの各々は、変換部5において直流電圧値Vdcに変換される。
(8)比較部12は、変換部5から出力された2種類の直流電圧値Vdcからなる被検査歯データグループを、記憶部9に記憶された根尖位置モデルデータ中の複数のモデル歯データグループと比較し、2種類の直流電圧値Vdcからなる被検査歯がデータグループが、根尖位置モデルデータ中の複数のモデル歯データグループ中のいずれかと一致するか、否かを検査する。
(9)比較部9の検査結果は、表示部7に送られ、その検査結果は表示部7に表示される。
次に、本願発明の第二の実施形態を説明する。この第二の実施形態は、根尖位置を検出する機構に関しては、第1の実施形態と同様である。第二の実施形態は、根尖位置の検出に加えて、測定電極10の先端が根尖位置23から離れている距離も検出する点で第1の実施形態とは相違する。
第二の実施形態においては、記憶部9に記憶するデータの内容が異なる。記憶部9には、根管内位置別モデルデータが記憶される。
図2に示されたデータからは、複数の歯の根尖位置における縦軸データは一定値を示さないことが理解することができる。
これと同様に、根尖位置から所定の距離にある500Hzと2KHzの測定用信号に対する2種類の電気的特性値の被検査歯データグループは、各歯毎に異なり、一定値を示さないことが理解することができる。
根管内位置別モデルデータは、測定電極10がモデル歯24’の根管内22’において根尖位置23’に向かって挿入されていく過程で、測定電極10が根尖位置23’から離れている距離別に、測定電極10と口腔電極11の間の電気的特性値Rnに関するデータである(図6,7,2)。すなわち、根管内位置別モデルデータは、測定電極10が根尖位置23’から離れている距離ごとの、両電極間の電気的特性値Rnである。具体的には複数のモデル歯24’の各々に配置した測定電極10に、500Hzと2KHzの測定用信号を印加することにより、得られる2種類の電気的特性値Rnである。モデル歯24’の数は多いほどよい。
比較部12の機能も第一の実施形態とは異なる。第二の実施形態の比較部12は第1の実施形態と同様の根尖位置を検出するための比較、検査機能を有している。この機能に加えて、第二の実施形態の比較部12は、測定電極10の先端が根尖位置からどの程度離れているかの検査結果を出力する第二の機能を具備する。
第二の機能を以下に説明する。図1において、測定電極10の先端が根管内22’に挿入されていく過程で、電源1は測定電極10に500Hzと2KHzの測定用信号を供給する。この結果、測定電極10の先端が根管内22’に挿入されていくに従って、両電極間の電気的特性値Rnは変化する。
この変化する電気的特性値(すなわち、500Hzと2KHzの測定用信号に対する両電極間の2種類の電気的特性値Rn)を、比較部12は、記憶部に記憶されている根管内位置別モデルデータ中の複数のモデル歯データグループと比較し、一致したモデル歯データグループを検出する。比較部12は、この一致したモデル歯データグループがモデル歯24’のいずれの位置のデータであるかを確認し、その位置情報を表示部7に出力する。表示部7の表示により、術者は測定電極10が根尖位置23に近づいていく状況を正確に把握することができる。
このように、モデル歯24’の根管内位置別データを、根尖位置から1mm単位毎の距離で作成することにより、第二の実施形態は測定電極10の先端が根尖位置23’に近づいている状況を1mm単位で検出することができる。
第二の実施形態を改良することにより、測定電極10の先端が根尖位置23に近づいていく状況を、より精密に検出することができる。この改良の例は、記憶部9に記憶された或るa1点の位置における根管内位置別モデルデータと、a1点より1mm隣のa2の根管内位置別モデルデータとを使用して、a1とa2間の、少なくとも1箇所の途中の位置における根管内位置別データを計算により算出する。この算出された近似的データも上記根管内位置別モデルデータとして使用することにより、測定電極10の先端の位置をより精度良く検出することができる。
第三の実施形態が説明される。第三の実施形態は、図4に示されるように、3種類のデータを使用する。図4において、縦軸のデータ表示は数量化された値であり、×印を付したデータは、2KHzの測定用信号Pnにおける実測データの値を示し、■は500Hzの測定用信号Pnにおける実測データの値を示し、◆は、4KHzの測定用信号Pnにおける実測データの値を示す。これら3種類のデータを使用する態様は、基本的に上記第1の実施形態、第二の実施形態と同様である。
第四の実施形態が説明される。第一の実施形態乃至第三の実施形態では、根尖位置モデルデータとして実測データを採用した。第三の実施形態においては、これら実施形態における実測データに替えて、理論的データ、シミュレーションデータ、実測データに基づいて計算により求めた近似的データの内の1つ、或いはこれらのデータの内の少なくとも二つ或いは三つを組み合わせたデータを根尖位置モデルデータ或いは根管内位置別モデルデータとして採用する。ここで、シミュレーションデータは、歯の模型或いはコンピュータソフトによる模擬などを使って得たデータである。近似的データは、実測データの補足等の観点から作成されるデータであり、例えば図2において、最下部の実測データと、その上の実測データとの間における実測データ無しのエリアを補足するデータである。この近似的データは、図2の最下部の実測データとその上の実測データとを用いて、近似的に求めることができる。
理論的データについて説明する。各種の歯の根管構造と、種々の根管内状態に基いて、根管内のインピーダンスは根管構造と根管内状態により変化する。ここで、根管内状態とは乾燥状態から湿潤状態までの湿潤の程度に関する状態である。そこで、ある根管構造パターンを有するモデル歯24’の根管内状態を変化させた時に、変化する根管内インピーダンス値を理論的に計算することができる。
根管内に存在する物質(例、血液)は、ある抵抗値を持った導電性液体と考えることができる。そこで、該液体の比抵抗を使用して、当該根管構造パターンの歯に関する、種々の根管内状態における根管内インピーダンス値を計算により求めることができる。
種々の根管内状態における根管内インピーダンス値が求められれば、根管内に流れる電流値、根管内インピーダンス値の両端の電圧値、電源とこれらの電圧値、電流値との間の位相差、は計算或いはシミュレーションにより求めることができ、これらの値を使用してモデル歯データグループを構成するモデル歯24’の電気的特性値を理論的に求めることができる。
上記計算及びシミュレーションにおいては、根管の径が等しい筒状をまず想定する。この場合、根尖位置からの距離に対して抵抗値は同距離に比例した値となる。また、根管が円錐状の時は、根尖位置からの距離に対して抵抗値は2次曲線のような特性を示す。
根管内の環境により、比抵抗の抵抗率は変化する。この根管内の各環境毎における比抵抗と、根管構造のパタンを記憶部に記憶する。これらのデータに基いて、根尖位置モデルデータ或いは根管内位置別データを算出することができる。
例えば、各根尖位置手前の各ポイントの根管内位置別データを記憶する。その根管内位置別データの変化から、該データは根管の径の等しい特性のデータか、あるいは根管が円錐状に変化しているデータかを判断する。その判断結果に基いて、次のポイントまで、根管内位置別データがどのような曲線で変化するかを予測し、その予測に基いて、そのポイントでの根管内位置別データを予測する。次のポイントにおける測定データをこの予測した根管内位置別データと比較し、その食い違いを補正し、根管内位置別データになるようにして、その誤差を最小限にする。
第五の実施形態が説明される。第五の実施形態は、第二の実施形態の上述した改良に関し、測定電極10の先端が根尖位置23に近づいていく状況を、より緻密に検出する。
第5図において、電源1は複数種類の測定用信号Pnを出力する。この測定用信号Pnは、例えば500Hz,2KHzの2種類の周波数の信号とされることができる。測定用信号Pnは、3種類以上の周波数の信号とされることもできる。測定用信号Pnは、周波数、波形、ピーク値を内の少なくとも1つに関して異なる信号とされることもできる。本願発明においては、複数種類の測定用信号Pnに基いて、測定電極10と口腔電極11間の複数種類の電気的特性値を検出することが必要であり、これら信号の種類は以下に説明される本願発明の原理に基いて、選択されることができる。
さらに、この測定用信号Pnは、測定電極10に印加されているが、口腔電極11に印加されても良い。
本実施形態の説明においては、本実施形態をより具体的に説明する便宜上から、測定用信号Pnとして500Hz及び2KHzの2種類の周波数の信号を使用し、該測定信号を測定電極に印加するケースについて説明する。しかし、本願発明は、このケースに限定されるものではない。
電源1は、500Hz及び2KHzの2種類の周波数の測定用信号を出力する。
信号切換え部2は電源1から出力される500Hz及び2KHzの2種類の周波数の測定用信号の各々を、制御部6の制御の下で、測定電極に順次供する。この信号切換え部2としてはいわゆるマルチプレクサなどのスイッチ部が採用されることができる。
整合部3は、信号切替部からの信号を、人体と接続しても安全な電圧レベルに変換し、そして必要以上に人体に測定電流が流れないようにする部分であり、電源1からの測定用信号Pnを測定電極10に供するに適した信号に調整する。しかし、電源からの測定用信号Pnが測定電極10に印加するための適した信号である場合、整合部3は削除されることができる。本実施態様において、整合部3は500Hzと2KHzの2種類の周波数の測定用信号Pnを所定の電圧値Vnに調整する。
口腔電極11に接続された増幅部4は口腔電極11から出力される測定信号Qnを増幅する。この測定信号Qnは、測定電極10と口腔電極11との間の電気的特性値に関係した値である。電気的特性値は、両電極間に流れる電流値In(以下、「測定電流値In」と記す)、両電極間の電圧値Vn(以下、「測定電圧値Vn」と記す)、電流値Inと測定用信号Pnとの間の位相差、電圧値Vnと測定用信号Pnとの間の位相差、及び両電極間のインピーダンス値Zn(以下、「根管内インピーダンス値Zn」と記す)のいずれか1つ或いはこれらの歯データグループの組合せ、とされることができる。
これら電気的特性値は、測定信号Qn自体、或いは他の信号値と組み合わせて求めることができる。
本願発明における電気的特性値は、測定電流Inに限られないが、本実施形態をより具体的に説明する便宜上、以下においては、電気的特性値が測定電流Inであるケースが説明される。
増幅部4は、測定電流Inを電圧に変化し、その電圧を増幅する周知の増幅器が採用されることができる。
変換部5は増幅部4で増幅された交流の測定電圧Vnを、制御部で読み込みと記憶が可能な直流電圧Vdcに変換する回路である。
制御部6は、本実施形態の根尖位置検出装置100内の所定の機器を制御する。
第1の記憶部9には、根管内位置別モデルデータが記憶される。根管内位置別モデルデータは、データ自体で、数式化して、或いはグラフ化して、記憶することができる。ここで、根管内位置別モデルデータは、測定電極10の先端がモデル歯24’の根管内22’の複数の所定の各位置に配置された状態での、測定電極と口腔電極間の各電気的特性値を有するデータである。モデル歯24’の数は多いほどよい。
図6及び図7は、図2と同様に、モデル歯24’に関する根管内位置別モデルデータを示している。その縦軸は測定電流In(数量化)であり、横軸は測定用信号の周波数である。図6は、測定電極10の先端を根尖の手前3mmに配置した状態での、測定電流Inと周波数fとの関係を示している。図7は、測定電極10の先端を根尖の手前1mmに配置した状態での、測定電流Inと周波数fとの関係を示している。
図6及び7において、1つの線は、1つのモデル歯24’に関するデータを示している。ここで、同じ根管構造を有する一つのモデル歯24’でも、その根管内状態(例、乾燥状態や湿潤状態の程度及び太さの変化)が異なる場合は、異なるモデル歯24’として扱われる。
これらの実測データは、藤栄電気社製、商品名ジャスティIIの根尖位置検出装置を一部変更して使用した。この変更は、測定用信号の周波数が500Hz及び2000Hzであったのを、250乃至8000Hzに設定できるようにした。そして、ジャスティIIの検波出力の出力電流を検出抵抗に流し、その両端電圧値を測定データとして使用した。
図6及び7は、複数の症例のモデル歯24’における実測データを表している。この図6及び7において、500Hzと2KHzの周波数の位置に垂線を引くと、各モデル歯24’毎に各垂線と実測データとの交点の値のモデル歯データグループが得られる。図6及び7からは、約50症例のモデル歯24’に関する、根尖から3mm手前及び1mm手前の位置における上記交点の値(根管内位置別モデルデータ)が得られる。500Hzのデータ指示値を見ると約70〜280程度の変化がある。これらの根管内位置別モデルデータは、第1の記憶部に記憶される。
図2、6及び7からは、根尖位置、根尖手前3mm及び1mm手間の位置における、モデル歯24’の縦軸データ(電気的特性値)は、一定の値を示さないこと、すなわち各歯は互いに異なる固有の電気的特性値を有することが理解することができる。
根管内位置別モデルデータは、測定電極10がモデル歯24’の根管内22’において根尖位置23’に向かって挿入されていく過程で、測定電極10が根尖位置23’から離れている距離別に、測定電極10と口腔電極11の間の電気的特性値Rnに関するデータである。
第五の実施形態の比較部12は、第1の実施形態と同様の根尖位置を検出するための第1の機能を有することができる。この機能に加えて、第五の実施形態は、測定電極10の先端が根尖位置からどの程度離れているかの検査結果(位置情報)を出力する第2の機能或いは/及び第3の機能を具備することができる。
第2の機能を以下に説明する。第2の機能は上記第2の実施形態と同様である。すなわち、図5において、測定電極10の先端が根管内22’に挿入されていく過程で、電源1は測定電極10に500Hzと2KHzの測定用信号を交互に供給する。この結果、測定電極10の先端が根管内22’に挿入されていくに従って、両電極間の電気的特性値Rnは変化する。
この変化する電気的特性値Rnを、比較部12は、第1の記憶部に記憶されている複数の根管内位置別モデルデータと比較し、所定の関係にある根管内位置別モデルを検出する。比較部12は、所定の関係にある根管内位置別モデルデータがモデル歯24’のいずれの位置のデータであるかを検知し、検知した結果を表示部7に出力する。この検知した結果を表示部7が表示することにより、術者は測定電極10が根尖位置23に近づいていく状況を正確に把握することができる。
このように、モデル歯24’の根管内位置別データを、根尖位置から1mm単位毎の距離で作成することにより、第五の実施形態は測定電極10の先端が根尖位置23’に近づいている状況を1mm単位で検出することができる。
次に、第3の機能を説明する。第3の機能は、測定電極10の先端が根尖位置23に近づいていく状況を、より緻密に検出する。第3の機能は、測定電極の先端が、被検査歯24’の根管内22’内のa1位置から、その先のa2位置との間の、少なくとも1箇所の途中のいずれの位置にあるかを検出し、表示する。
この第3の機能は、被検査歯の電気的特性値変化パターンを使用することができる。図8及び図9は被検査歯の電気的特性値変化パターンの例を示す。図8は、根管内22’が逆円錐状をしたモデル歯24’において、直径0.2mmの測定電極を根管口から根管内22’に挿入していく時の、測定電極10と口腔電極11間の電気的特性値の変化パターンを示している。
同様に、図9は、根管内22’が円筒状をしたモデル歯24’において、直径0.2mmの測定電極を根管口から根管内22’に挿入していく時の、測定電極10と口腔電極11間の電気的特性値の変化パターンを示している。
上記第2の機能に基づいて、図5に示す比較部12が、被検査歯24の根管内22に挿入した測定電極10と口腔電極11間の電気的特性値が、図6に示す根管内位置別モデルデータの1つに一致したことを検知することにより、測定電極10の先端が根尖手前3mmに達したことが検知されたケースを事例として、第3の機能を説明する。
第3の機能は、図5に示された予測部14が処理した予測データを使用する。すなわち、測定電極10の先端が、根尖手前3mmに達するまでの変化パーターンから、被検査歯24の根管内構造は逆円錐状であることが把握される。この結果を受けて、予測部14は、図8のデータにおいて、測定電極が根尖手前3mmから根尖手前1mmに達するまでに、500Hzと2kHzの各測定用信号に対応する検出データは、所定の逆円錐状パターンと同等の変化率で増加することを把握する。
測定電極10の先端が根尖手前3mmに達した時に実測電気的特性値(すなわち、検出データ)(以下、各々「実測電気的特性値」、「実測した検出データ」と記す)と、上記8図により把握された根尖手前1mmでの増加量とに基づいて、予測部14は、測定電極10の先端が根尖手前1mmに達した時の電気的特性値(すなわち、検出データ)を予測する(以下、各々「予測電気的特性値」、「予測検出データ」と記す)。
これらの実測検出データと予測検出データとに基づいて、予測部12は、根尖手前3mmの位置から同じく1mmの位置までの間のより細分化された位置の根管内位置別モデルデータを予測する。この予測は、例えば、3mmから1mmまでを直線近似し、この間を複数等分(例、10等分、或いは20等分)する方法により実施することができる。
このように予測した、細分化された予測根管内位置別モデルデータは、第2の記憶部に記憶される。第2の記憶部は、第1の記憶部と別の記憶機構とすることもできるが、両記憶部を同一の記憶機構により実現することもできる。
測定電極10の先端が被検査歯24の根管内22に挿入されていく過程で、電源1は測定電極10に500Hzと2KHzの測定用信号を供給する。この結果、測定電極10の先端が根管内22に挿入されていくに従って、両電極間の電気的特性値Rnは変化する。
この変化していく電気的特性値(すなわち、500Hzと2KHzの測定用信号に対する両電極間の2種類の実測電気的特性値Rn)を、比較部12は、第1の記憶部に記憶されている根管内位置別モデルデータ、及び第2の記憶部に記憶されている予測根管内位置別モデルデータと比較する。実測電気的特性値と所定の関係にあるデータが、第1及び第2の記憶部に記憶されたこれら根管内位置別モデルデータ中に存在することが検知された場合、比較部12は、この所定の関係にあるデータがいずれの根管内位置のデータであるかを確認し、その位置を表示部7に位置情報として出力する。表示部7の表示により、術者は測定電極10が根尖位置23に近づいていく状況を緻密に把握することができる。
上記第五の実施形態は、根尖手前3mm及び1mmの位置における、根管内位置別モデルデータを使用したが、より細分化した位置(1mm毎の位置)における根管内位置別モデルデータを採用することもできる。
このように、予測部が予測した細分化した予測電気的特性値を根管内位置別モデルデータとして使用することにより、測定電極10の先端の位置をより緻密に検出することができる。
本願発明の1つの実施の形態によれば、根尖位置を精度よく検出することができる。
また、本願発明の1つの実施の形態によれば、根管状態による影響を軽減して、より精度良く根尖位置を測定できる。
また、本願の1つの実施形態によれば、測定電極の先端が根尖位置から離れている距離を緻密に測定できる。
また、本願発明の1つの実施の形態によれば、根管拡大を正確かつ容易に実施できる。
また、本願発明の1つの実施の形態によれば、根管拡大の作業時間が短縮できる。
本願発明の1つの実施の形態によれば、測定電極を根尖手前で作業を終わらせるために必要であつた、測定電極にシリコーンストッパーを固定するという作業が不要となる。

Claims (24)

  1. 被検査歯の根管の根尖位置を検出するための根尖位置検出装置100、該根尖位置検出装置は下記を具備する:
    根管内に挿入される測定電極10;
    口腔内表面に配置される口腔電極11;
    測定電極及び口腔電極の内の1つに、複数種類の測定用信号Pnを印加する電源1;
    根尖位置モデルデータを記憶するための記憶部9、根尖位置モデルデータは複数のモデル歯データグループを有し、各モデル歯データグループの各々は測定電極の先端がモデル歯の根尖位置に配置された状態における、該複数種類の測定用信号の各々に対する、測定電極と口腔電極間の電気的特性値から構成され、該モデル歯は各モデル歯データグループ毎に異なる;
    検出部25、検出部は、複数種類の測定用信号の各々が順次測定電極及び口腔電極の内の1つに印加され、測定電極が根管内を根尖位置に向けて挿入されていく過程で、各測定信号に基いた測定電極と口腔電極との間の複数の電気的特性値を順次検出する;
    比較部12、比較部は、検出部が順次検出した複数の電気的特性値から構成される被検査歯データグループを、記憶部に記憶された根尖位置モデルデータ中の複数のモデル歯データグループと比較し、被検査歯データグループと所定の関係にあるモデル歯データグループが存在することを検知して、その検知結果を出力する;
    比較部が出力した検知結果を表示するための表示部。
  2. 複数種類の測定用信号の各々は、周波数、波形、ピーク値の少なくとも1つに関して相違する、請求項1に記載の根尖位置検出装置。
  3. 前記複数種類の測定用信号は、2種類の測定用信号であり、これら2種類の測定用信号は互いに周波数が異なる電圧である、請求項1に記載の根尖位置検出装置。
  4. 前記検出部が検出する電気的特性は、両電極間のインピーダンス値、両電極間に流れる電流値、両電極間の電圧値、両電極間の電流値或いは電圧値と測定用信号間の位相差の内の少なくも1つである、請求項1に記載の根尖位置検出装置。
  5. 前記比較部が検知する所定の関係は、被検査歯データグループが、記憶部に記憶された根尖位置モデルデータ中の複数のモデル歯データグループの中のいずれかと一致する関係、及び被検査歯データグループの値とモデル歯データグループの値との差が所定の範囲内である関係、の少なくも1つである、請求項1に記載の根尖位置検出装置。
  6. 比較部が出力する検知結果は、表示用、警告用及び歯治療器具の制御用の少なくとも1つに利用される、請求項1に記載の根尖位置検出装置。
  7. 根尖位置モデルデータは、実際の歯に基く実測データ、理論データ、シミュレーションデータ、実測データに基づいて計算により求めた近似的データ及びこれらのデータの内の少なくとも二つを組み合わせたデータ、の内の1つである、請求項1に記載の根尖位置検出装置。
  8. 被検査対象歯の根尖位置及び測定電極10の先端と根尖位置との間の距離を検出するための根尖位置検出装置100、該根尖位置検出装置は下記を具備する:
    根管内に挿入される測定電極10;
    口腔内表面に配置される口腔電極11;
    測定電極及び口腔電極の内の1つに、複数種類の測定用信号を供給する電源1;
    記憶部9、該記憶部は根管内位置別モデルデータを記憶する、根管内位置別モデルデータは複数のモデル歯データグループを具備し、各モデル歯データグループの各々は、測定電極の先端がモデル歯内の複数の所定位置の各々に配置された状態における、複数種類の測定用信号の各々に対する、測定電極と口腔電極の間の電気的特性値から構成され、モデル歯は各モデル歯データグループ毎に異なる;
    検出部25、検出部は、複数種類の測定用信号の各々が測定電極及び口腔電極の内の1つに印加され、測定電極の先端が被検査歯の根管の入り口から根尖位置に向けて挿入されていく過程で、複数の測定用信号の各々に対する、測定電極及び口腔電極間の複数の電気的特性値を順次検出する;
    比較部12、比較部は、検出部が順次検出した複数の電気的特性値から構成される被検査歯データグループと、記憶部に記憶された根管内位置別モデルデータ中の複数のモデル歯データグループとを比較し、被検査歯データグループと所定の関係にあるモデル歯データグループが存在することを検知し、その検知結果を位置情報として出力する。
  9. さらに、比較部が出力した検知結果を表示するための表示部を具備する、請求項8に記載の根尖位置検出装置。
  10. 複数種類の測定用信号の各々は、周波数、波形、ピーク値の少なくとも1つに関して相違する、請求項9に記載の根尖位置検出装置。
  11. 複数種類の測定用信号は、2種類の測定用信号であり、これら2種類の測定用信号は互いに周波数が異なる電圧である、請求項9に記載の根尖位置検出装置。
  12. 検出部が検出する電気的特性は、両電極間のインピーダンス値、両電極間に流れる電流値、両電極間の電圧値、両電極間の電流値或いは電圧値と測定用信号間の位相差の内の1つである、請求項9に記載の根尖位置検出装置。
  13. 比較部が検知する所定の関係は、被検査歯データグループが、記憶部に記憶された根管内位置別モデルデータ中の複数のモデル歯データグループの中のいずれかと一致する関係、及び被検査歯データグループの値とモデル歯データグループの値との差が所定の範囲内である関係、の少なくも1つである、請求項9に記載の根尖位置検出装置。
  14. 比較部が出力する検知結果は、表示用、警告用及び歯治療器具の制御用の少なくとも1つに利用される、請求項9に記載の根尖位置検出装置。
  15. 根尖位置モデルデータは、実際の歯に基く実測データ、理論データ、シミュレーションデータ、実測データを基にして計算により求めた近似的データ、及びこれらのデータの内の少なくとも二つを組み合わせたデータの内の1つである、請求項9に記載の根尖位置検出装置。
  16. さらに、下記を具備する請求項9に記載の根尖位置検出装置:
    記憶部は根管内位置別モデルデータとともに、予測根管内位置別モデルデータを記憶する、ここで、予測根管内位置別モデルデータは、上記複数の所定位置の中の1つの所定位置と次の所定位置との間の途中位置における予測された電気的特性値である;
    比較部は、検出部が順次検出した実測電気的特性値を、記憶部に記憶された根管内位置別モデルデータ及び予測根管内位置別モデルデータと比較し、両モデルデータ中に実測電気的特性値と所定の関係にあるデータが存在することを検知して、その検知結果を出力する。
  17. さらに下記を具備する請求項16に記載の根尖位置検出装置:
    比較部が出力する検知結果が示す根管内位置と、次の根管内位置との間の途中位置における電気的特性値を予測する予測部14;
    ここで、予測部が予測した電気的特性値は上記予測された電気的特性値である。
  18. 複数種類の測定用信号は、2種類の測定用信号であり、これら2種類の測定用信号は互いに周波数が異なる電圧である、請求項16に記載の根尖位置検出装置。
  19. 検出部が検知する電気的特性は、両電極間のインピーダンス値、両電極間に流れる電流値、両電極間の電圧値、両電極間の電流値或いは電圧値と測定用信号間の位相差の内の1つである、請求項16に記載の根尖位置検出装置。
  20. 比較部が検知する所定の関係は、被検査歯データグループが、記憶部に記憶された根管内位置別モデルデータ中の複数のモデル歯データグループの中のいずれかと一致する関係、及び被検査歯データグループの値とモデル歯データグループの値との差が所定の範囲内である関係、の少なくも1つである、請求項16に記載の根尖位置検出装置。
  21. 比較部が出力する検知結果は、表示用、警告用及び歯治療器具の制御用の少なくとも1つに利用される、請求項16に記載の根尖位置検出装置。
  22. 根尖位置モデルデータは、実際の歯に基く実測データ、理論データ、シミュレーションデータ、近似的データ及びこれらのデータの内の少なくとも二つを組み合わせたデータの内の1つである、請求項16に記載の根尖位置検出装置。
  23. 被検査歯の根管の根尖位置を検出するための根尖位置検出装置、該根尖位置検出装置は下記を具備する:
    根管内に挿入される測定電極;
    口腔内表面に配置される口腔電極;
    測定電極及び口腔電極の内の1つに、複数種類の測定用信号を印加する電源;
    根尖位置モデルデータを記憶するための記憶部、根尖位置モデルデータは複数のモデル歯データグループを有し、各モデル歯データグループの各々は測定電極の先端がモデル歯の根尖位置に配置された状態における、該複数種類の測定用信号の各々に対する、測定電極と口腔電極間のインピーダンス値から構成され、該モデル歯は各モデル歯データグループ毎に異なる;
    測定電極と口腔電極の内の1つに複数種類の測定用信号を順次継続して供給するための信号切り替えユニット;
    検出部、検出部は、複数種類の測定用信号の各々が順次測定電極及び口腔電極の内の1つに印加され、測定電極が根管内を根尖位置に向けて挿入されていく過程で、各測定信号に基いた測定電極と口腔電極との間の複数のインピーダンス値を順次検出する;
    比較部12、比較部は、検出部が順次検出した複数のインピーダンス値から構成される被検査歯データグループを、記憶部に記憶された根尖位置モデルデータ中の複数のモデル歯データグループと比較し、被検査歯データグループと所定の関係にあるモデル歯データグループが存在することを検知して、その検知結果を出力する;
    比較部が出力した検知結果を表示するための表示部、
    ここにおいて、記憶部は根尖位置モデルデータとともに、予測根管内位置別モデルデータを記憶する、ここで、予測根管内位置別モデルデータは、測定電極の先端が、根尖位置の手前の位置に配置された状態における予測されたインピーダンス値である;
    比較部は、検出部が順次検出した実測インピーダンス値を、記憶部に記憶された根尖位置モデルデータ及び予測根管内位置別モデルデータと比較し、両モデルデータ中に実測インピーダンス値と所定の関係にあるデータが存在することを検知して、その検知結果を出力する。
  24. さらに下記を具備する請求項23に記載の根尖位置検出装置:
    比較部が出力する検知結果が示す根管内位置と、根尖位置との間の途中位置におけるインピーダンス値を予測する予測部;
    ここで、予測部が予測したインピーダンス値は上記根管内位置モデルデータとして採用される。
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