JP4511361B2 - 被検定水の溶存水素濃度の定量分析方法及び装置 - Google Patents

被検定水の溶存水素濃度の定量分析方法及び装置 Download PDF

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Description

本発明は、水素溶存水に、水素酸化還元酵素(ただし、予め生体内に存在するものを除く)または貴金属コロイドである触媒を作用させる過程を通じて、該水素溶存水申に含まれる基質としての分子状水素を、生成物としての活性水素に分解する反応を促進させることにより、電子の欠乏に起因して酸化状態にあるか、または酸化から防御したい抗酸化対象を、電子が充足された還元状態にすることができる抗酸化方法、抗酸化機能水およびその用途に関する。
たとえば生体にとって酸素は両刃の剣である。酸素は栄養素を酸化してエネルギーを獲得する目的で、または、生体にとって必須な各種の酸素添加反応を行う目的で用いられる一方で、その酸化力に由来して各種組織障害を引き起こす危険を伴うことが指摘されている。
特に代謝等を通じて生成される活性酸素ラジカルや、一酸化窒素(NO)などのフリーラジカルは、不安定な不対電子を持つ反応性に富んだ原子や分子であって、更に1電子を取り込むか、または逆に与えることによりその安定性を保とうとする。一般に、スーパーオキサイドアニオンラジカル(・O )、ヒドロキシラジカル(HO・)、過酸化水素(H)、一重項酸素()の4種を活性酸素ラジカルと呼ぶ。その他に、ヒドロペルオキシラジカル(HO・)、ペルオキシラジカル(LO・)、アルコキシラジカル(LO・)なども広義の活性酸素ラジカルであると考えられる。以下では、これらの活性酸素ラジカルを総称して「活性酸素種」と呼ぶ場合がある。また、ここで言う活性酸素種と、一酸化窒素(NO)等のフリーラジカルを総称して、単に「ラジカル」と呼ぶ場合がある。
かかる活性酸素種からは、例えば鉄イオンや銅イオンの存在下で、新たな活性酸素種が副次的に生成される。こうして加速度的に生成された活性酸素種は、細胞やDNAを損傷し、老化促進因子とされる過酸化脂質を生成することを通じて、多くの疾病に関与することが明らかになってきた。なかでもヒドロキシラジカル(HO・)は最も反応性が高く、細胞損傷等の障害作用が大きい活性酸素種であることが知られている。さらに、紫外線(UV)による皮膚等での炎症発生においても、ヒドロキシラジカル(HO・)生成とその関与が確認されている。ウィルスの感染もまた、感染者の過剰な免疫応答の結果、活性酸素種が生体バランス維持の必要量以上に生成されて、生体に毒性作用を及ぼすことが知られている。
こうした毒性作用を生体に及ぼす活性酸素種は、通常は生体内でスーパーオキサイド・デスムターゼ(SOD)やカタラーゼなどの酵素により消去される。
ところが、ストレスや飲酒、喫煙、激しい運動、高齢化などの諸要因によって生体のバランスが崩れると、SODが減少し、活性酸素種によって過酸化脂質が増加して、心筋梗塞、動脈硬化、糖尿病、癌、脳卒中、白内障、肩こり、冷え性、高血圧、及び老人性痴呆症等の各種疾病を招来したり、生体の生理機能を低下させたり、シミ、ソバカス、しわ等の美容外観の退化をもたらすなどといった問題が指摘されている。
その一方で、活性酸素種を含むラジカルの、酸化、品質劣化、腐敗、汚濁、消臭並びに鮮度低下への関与が、これらの発現および悪性化機構の重大要因の一つとして指摘されている。その結果、活性酸素種を含むラジカルは、商品価値低下、生産性低下、生活・自然環境負荷増加などの深刻な損傷をもたらすきっかけを与えているといった問題が指摘されている。
そうした活性酸素種由来の各種問題を改善する物質として、アスコルビン酸、α−トコフェロール、システイン、グルタチオン、ユビキノン、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)などの抗酸化剤やフリーラジカル消去剤が知られている。
しかしながら、こうした抗酸化剤等は化学的合成品であることから、これらを多量に生体等の抗酸化対象に対して適用した場合には、かかる抗酸化対象に対する安全性に疑問が残るという問題がある。また、これらの抗酸化剤等は相手方を還元する過程を通じて自身が酸化されることとなるが、そうした副生成酸化物の抗酸化対象に対する安全性が懸念されるという問題もある。
そこで、従来の抗酸化剤等と同等またはそれ以上の優れた抗酸化機能又はラジカル消去機能を発揮しながら、抗酸化対象に関する安全性や環境負荷低減を高い水準で期せる革新技術の開発が待望されていた。
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、水素溶存水に、水素酸化還元酵素(ただし、予め生体内に存在するものを除く)または貴金属コロイドである触媒を作用させる過程を通じて、該水素溶存水中に含まれる基質としての分子状水素を、生成物としての活性水素に分解する反応を促進させることにより、電子の欠乏に起因して酸化状態にあるか、または酸化から防御したい抗酸化対象を、電子が充足された還元状態にし、これをもって、生体等の抗酸化対象に関する安全性や環境負荷低減を高い水準で期せる抗酸化方法、および抗酸化機能水を提供することを目的とする。
また、本発明は、水素溶存水に、この水素溶存水中に含まれる基質としての分子状水素を、生成物としての活性水素に分解する反応を触媒する水素酸化還元酵素(ただし、予め生体内に存在するものを除く)または貴金属コロイドを含有させてなる水であって、前記触媒によって前記反応を促進させることにより、電子の欠乏に起因して酸化状態にあるか、または酸化から防御したい抗酸化対象を、電子が充足された還元状態にする抗酸化機能を有する抗酸化機能水、並びに、かかる抗酸化機能水を含有する酸化防止剤、老化防止剤、品質劣化防止剤、腐敗防止剤、汚濁防止剤、消臭剤、および鮮度保持剤を提供することを目的とする。
本発明の概要説明に先立って、本発明者らが本発明を想到するにいたった経緯について説明する。
1. 本発明の思考経緯
本願出願人は、先に出願しすでに公開され、この引用によって本願発明にその記載内容が取り込まれる再公表特許WO99/10286号において、水素イオン指数(以下、「pH」と称する。)と酸化還元電位(以下、「ORP」と称する。)とを互いに独立して制御できる電解槽および電解水生成装置を開示している。同出願の概要は以下に示す通りである。すなわち、被電解原水が導入される電解室と、前記電解室内と前記電解室外を区画する一つ以上の隔膜と、前記電解室内外のそれぞれに、前記隔膜を挟んで設けられた少なくとも一つ以上の電極板対と、前記電解室内に設けられた電極板を陰極とする一方で前記電解室外に設けられた電極板を陽極として両極間に電圧を印加する電源回路と、を備え、前記電解室外の電極板が前記隔膜に接触または僅かな隙間を介して設けられている還元電位水生成装置である。同装置における陰極側には、原水のpHを大きく変えることなく、ORPが大きく負の値に引き下げられた電解還元電位水(以下、「還元電位水」という場合がある。)が生成される。以下では、特にことわらない限り、「電解処理」とは、上述の還元電位水生成装置を用いて毎分1リットルの流量で5A定電流の電解条件にて連続通水式に電解処理することをいう。
本発明者らは、上述の還元電位水生成装置で生成される還元電位水の性能評価試験を通じて、本発明を想到するに至ったのである。
ここで、還元電位水とは、ORPが負の値を持ち、なおかつ、pHに対応するORP値が所定値を超える値を示すものである。ORP値が所定値を超えるか否かは、次のネルンストの式(近似式)から判断する。
ORP=−59pH−80(mV)・・・(ネルンストの式)
この式は、図1に示すように、pHとORPとが比例関係(pHがアルカリ側に傾くほどORP値は負に傾く)にあることを示している。ここで、pHに対応するORP値が所定値を超える値を示すとは、ORP値が上記ネルンストの式にしたがう値を下回ることをいう。ここでは、こうした条件を満足する水を還元電位水と呼ぶことにする。たとえば、上記のネルンストの式にpH7を代入すると、ORPは−493(mV)程度になる。つまり、pH7ではORPが−493(mV)程度以下の水が還元電位水に相当することになる。ただし、ここで定義した還元電位水の範疇に属するもののなかでも、溶存水素濃度の多少の差が厳然として存在するが、これについては、その溶存水素濃度の定量分析方法と併せて後に詳述する。
さて、還元電位水にはエネルギーの高い電子が相当量含まれている。これは、ORP計で測定すれば明らかである。ORPとは、被測定液に含まれる酸化物質と還元物質の存在比率を示す指標であって、その単位は一般にミリボルト(mV)を用いる。一般にORP計では、測定用の電極が負に帯電すると負のORP値が観測され、逆に測定用の電極が正に帯電すると正のORP値が観測される。ここで、測定用の電極が負に帯電するためには、被測定液にエネルギーの高い電子が含まれている必要がある。したがって、ORP値が負の絶対値が大きい値を示すということは、必然的に、被測定液にはエネルギーの高い電子が含まれている、ということができる。
ここで、還元電位水中にエネルギーの高い電子がどの程度含まれているかの性能評価を行うために、発光ダイオード(以下、「LED」と省略する。)を用いた点灯試験を行った。これは、電池の原理を用いたものである。具体的には、白金などの電極201と隔膜203とを交互に備え、陰極室205と陽極室207をそれぞれ三室程度有する試験用セル209において、陰極室には例えばORPが−600(mV)程度の還元電位水を、陽極室には例えばORPが+400(mV)程度の水道水をそれぞれ投入し、陰極室205に接触する電極にはLED211のマイナス側端子を、陽極室にはLED211のプラス側端子を接続すると、LED211の持続的な点灯が観察された。このことは、LED211を介して、セル209の陽極から陰極に向けて電流が流れていることを意味し、さらにいえば、電流が流れているとは、電子が流れていることを意味する。このとき、LED211を流れる電子はセル209の陰極から陽極に流れることを考慮すると、還元電位水中にはエネルギーの高い電子群が確かに含まれていることが実験的に定性評価された。
参考例として、上記のセル209において、陰極室には市販の電解水生成装置で生成したアルカリ性電解水(例えばORPは−50mV程度)や天然のミネラルウォーターなどを、陽極室には水道水をそれぞれ投入し、上述と同様に、陰極室の電極にはLEDのマイナス側端子を、陽極室にはLEDのプラス側端子を接続すると、この場合にはLEDの点灯は観察されなかった。これは、既存のアルカリ性電解水や天然のミネラルウォーターには、LEDを点灯させ得るほどのエネルギーの高い電子群が含まれていないからであると考えられる。
また、市販の電解水生成装置において、流量を絞ってORP値を大きく負の方へ移動させたとしても、上記のネルンストの式にしたがって、そのときのpH値におけるORP値の絶対値が小さければ、やはりLEDの点灯は観察されない。これは、たとえば、市販の電解水生成装置において、流量を絞った結果、pHが10程度でORP値が−500〜−600(mV)であっても、pH値のわりにはORP値は小さいことになるので、電子エネルギー的には弱く、上記のネルンストの式において、pH値が10程度であればORP値は少なくとも−670(mV)程度以下に引き下げられていなければ、LEDを点灯させることはできないのであろうと考えられる。
また、LEDにもいくつか種類があるが、上述したような各室が交互に三層構造で配置されたセル209を用いた場合、還元電位水では、3V以上程度の高い端子間電圧を要求するブルーやグリーンなどの呈色を示すダイオードの継続点灯が観察された。
そこで、還元電位水中にエネルギーの高い電子が含まれていることの、産業利用性について鋭意研究を進めてきたところ、還元電位水は「潜在的な還元力」を持っているのではないか、とのヒントを得た。特に、LEDを点灯させることができるほどORP値がかなり負の値に傾いていることから、還元電位水は相当強力な還元力を持っており、この還元力をうまく引き出すことができれば、医療、工業、食品、農業、自動車、エネルギーなどを含む、広範な産業分野に利用できるのではないか、と確信するに至った。
ここで、「潜在的な還元力」とは、どのような状態にあるのかを説明する。
たとえば、水道水などのふつうの水にビタミンC(アスコルビン酸)などの還元剤を加えた後、さらに酸化剤を添加すると、還元剤は直ちに酸化剤を還元する。一方、還元電位水に酸化剤を加えても、酸化剤を直ちに還元することはない。このときの状態は、還元電位水の負の方に大きいORP値はそのままで、なおかつ酸化剤もそのままの状態を保持し、両者が共存している状態にあると考えられる。この時点では、まだ還元力は発揮されていない。
つまり、還元電位水中に、いかにエネルギーの高い電子が存在していようと、換言すれば、いかにORPが大きい負の値を持っていようと、還元電位水から直ちに電子が放電して酸化剤を還元する、という反応は起こらないという事実に直面した。そこで、還元電位水中に含まれる電子エネルギーの大きさと、電子の放電しやすさ、つまり還元力の発揮とは、別問題であろうと考えた。
では、還元電位水が還元力を発揮するにはどうすればよいであろうか。この命題について、本発明者らはさらに鋭意研究を進めたところ、何らかの触媒を作用させてはどうか、とのひらめきを得るに至った。一口に触媒といっても様々な種類のものがあるが、特に、たとえば生体に適用する前提では、なんらかの酵素、または、後述する貴金属コロイド(貴金属クラスターの微粒子)を触媒として用いることができるのではないか、との着想を得るに至ったのである。
ここで、特に酵素について言及すると、酵素作用の本質は化学反応の触媒であり、酵素の活性は触媒する反応の速さで測る。A→Bという反応を触媒する場合、Aは基質であり、Bは生成物である。これを本発明のケースに当てはめると、水素溶存水中に含まれる分子状水素が基質に相当する一方、活性水素が生成物に相当することになる。そして、こうした酵素がはたらく作用機序は次のように説明できると考えた。
いま、還元電位水中に含まれる高いエネルギーを持つ電子群が酸化剤にめぐり合い、この酸化剤を還元する必要があるとする。還元電位水中に含まれる電子群が酸化剤まで移動するには、これら電子群が、まず越えなければならないエネルギーの壁が存在する。このエネルギーの壁のことを「ポテンシャル障壁」とか「活性化エネルギー」などと一般に称する。このエネルギーが高いほど、越えなければならない壁の高さも高いことになる。そして、この壁の高さで言い表せるエネルギーは、電子群が持つエネルギーよりも大きいので、通常では電子群はこの壁を越えられず、結果的に酸化剤まで移動できない。つまり、酸化剤を還元できないのであろうと考えた。
ところが、たとえば酵素のような触媒が作用すると、壁の高さに相当する活性化エネルギーを低下させることができるので、この結果、還元電位水中に含まれる電子群は、触媒がない場合と比較してかなりスムーズに酸化剤まで移動できることになり、この移動が完了した時点で、還元電位水は酸化剤を還元できることになる。
このように、酵素などの触媒が作用したときに、還元電位水中に含まれる、エネルギーの高い電子群は放電しやすくなり、結果的に還元力を発揮することができるわけである。すなわち、これが還元電位水は「潜在的な還元力を持つ」ということであり、このことは、表現を変えれば「還元電位水が持つ還元力は封印されている」といえる。こうした様々な思考過程を経て、「還元電位水が持つ還元力の封印を解く鍵が触媒である」との発想を得るに至ったのである。
本発明の思考経緯を明らかにしたところで、本発明の概要について説明する。
2. 本発明の概要
2.1 抗酸化方法
本発明によれば、水素溶存水に、水素酸化還元酵素(ただし、予め生体内に存在するものを除く)または貴金属コロイドである触媒を作用させる過程を通じて、該水素溶存水中に含まれる基質としての分子状水素を、生成物としての活性水素に分解(活性化)する反応を促進させることにより、電子の欠乏に起因して酸化状態にあるか、または酸化から防御したい抗酸化対象を、電子が充足された還元状態にすることを特徴とする抗酸化方法が提供される。
本発明者らは、電解処理水や水素バブリング水などの水素溶存水のORP値が負の値を呈するその本質は、同水中に溶存している水素であるとの確信を得ている。水素は究極の還元物質であること、さらには、電解処理中において陰極側には水素が発生する事実が、上述した確信を裏付けている。
しかしながら、本発明の思考経緯において明らかにしたように、水素溶存水そのままでは本来の還元力は封印されたままである。
そこで、水素溶存水が持つ還元力の封印を解き放つためには、本発明に係る抗酸化方法で定義したように、水素溶存水に触媒を作用させる過程がきわめて重要であることを見出した。
もうひとつの重要な要素は抗酸化対象の存在である。抗酸化対象が存在しなければ、本発明に係る抗酸化機能を発揮する場面がないからである。
つまり、本発明において重要な要素は、第一に水素溶存水、第二に触媒、そして第三に抗酸化対象である。これらの三要素が有機的に結合されてはじめて、水素が潜在的に持つ還元力の封印が解き放たれて、還元機能をも含む広義の抗酸化機能が顕在的に発現される。なお、本発明でいう抗酸化機能の発現とは、電子の欠乏に起因して酸化状態にあるか、または酸化から防御したい抗酸化対象を、電子が充足された還元状態にすることをいう。また、抗酸化対象を電子が充足された還元状態にするとは、酸化状態にある抗酸化対象それ自体を還元するケースと、酸化から防御したい抗酸化対象を酸化しようと企む活性酸素種などの酸化物質それ自体を還元するケースと、の両者を含む概念である。
さて、ここでの還元力の大きさは、ORP値の状態等(ORP計測値の安定性や、上述したネルンストの式との関係など)で一応推定することができるが、究極的には、後に詳述する酸化還元色素を用いた溶存水素濃度定量方法を用いて求めた溶存水素濃度DHの実効値に依存して決定される。
次に、これらの三要素について、本発明に属すると想定している技術的範囲の射程に言及する。
2.1.1 水素溶存水
水素溶存水とは、水素を含有している水全般を想定している。また、ここでいう水(原水という場合もある。)とは、水道水、精製水、蒸留水、天然水、活性炭処理水、イオン交換水、純水、超純水、市販のペットボトル水、後述する生体水、水中で化学反応により分子状水素を発生させた水など、すべての水を含む。さらに、こうした水に電解助剤や後述する還元剤を加えた水全般をも、本発明の技術的範囲の射程に捉えている。さらにいえば、水素を含有している水であるという条件さえ満足すれば、その液性が酸性か、中性か、またはアルカリ性かの別を問わず、また、その溶存濃度の高低をも、原則として問わない。ただし、本発明を適用することで発現する抗酸化機能は、触媒を介して分子状水素を活性水素に置換する過程で放出される電子に由来しているので、分子状水素の溶存濃度が高いほうが、より大きい抗酸化機能の発現を期することができる。
さらに、水素溶存水とは、隔膜を介して陽極と陰極間で原水を電解処理したときに陰極側で生成される電解水、または、原水に水素をバブリング(曝気)ないし加圧充填などして処理した水をも含む。かかる定義をしたのは、既存の連続通水式又はバッチ式の電解水生成器で生成したいわゆるアルカリイオン水等の電解水や、外部操作によって原水に水素を含有させて生成される水素溶存水をも、本発明の技術的範囲の射程に捉えていることを明らかにする趣旨である。ここで水素溶存水として列挙したものはあくまで例示に過ぎず、これらのみに拘泥する趣旨ではない。したがって、たとえ天然水であってもそのなかに水素が含有されていれば、そうした水をも本発明の技術的範囲の射程から除外する趣旨ではないことを明らかにしておく。
また、例えば生体の血液やリンパ液などの体液(生体水という場合がある。)内には、腸内微生物、特に、ヒドロゲナーゼを有する微生物が生成したものと推察される分子状水素が溶存しているが、本発明で言う水素溶存水とは、その由来を問わずに分子状水素を溶存している生体水をも、その技術的範囲の射程に捉えている。なお、生体内における分子状水素の所在は腸内にとどまらず、腸管から吸収されて血液中にも分布しており、血流にのった分子状水素は、特に肝臓や腎臓等の各内臓器官などに送られて、生体内の各部位に貯蔵されていると考えられる。この場合、生体内に存在している分子状水素を還元剤として利用するために、ヒドロゲナーゼなどの酵素、または、後述する貴金属コロイドを生体内に投与することで、分子状水素の活性化を促進すればよい。
しかも、水素溶存水とは、ORPが負の値を持ち、かつ、pHに対応するORP値が、ネルンストの式;ORP=−59pH−80(mV)にしたがう値を下回る値を示す還元電位水をも含む。ここでいう還元電位水とは、本願出願人が開発した、被電解原水が導入される電解室と、前記電解室内と前記電解室外を区画する一つ以上の隔膜と、前記電解室内外のそれぞれに、前記隔膜を挟んで設けられた少なくとも一つ以上の電極板対と、前記電解室内に設けられた電極板を陰極とする一方で前記電解室外に設けられた電極板を陽極として両極間に電圧を印加する電源回路と、を備え、前記電解室外の電極板が前記隔膜に接触または僅かな隙間を介して設けられている還元電位水生成装置を用いて生成される電解還元電位水を含むのは当然として、それ以外の装置で生成した水であって、上述した還元電位水としての条件を満たす水を除外する趣旨ではないことを明らかにしておく。なお、還元電位水生成装置において、いったん生成した水を再び電解槽(電解室)へと還流させるように導き、以下この還流工程を所定時間だけ繰り返すといった循環電解処理技術を採用した場合には、後述する表1等に示すように、溶存水素濃度が高くORP値がさらに低い還元電位水が得られ、そうした還元電位水では優れた還元力(抗酸化力)を発揮し得ることを付言しておく。
さらに、水素溶存水とは、雰囲気圧力下で飽和濃度以上(酸化還元色素を用いた溶存水素濃度定量分析方法による溶存水素濃度実効値換算)の水素を溶存した水であることが好ましい。本発明に係る抗酸化機能水由来の還元活性、抗酸化活性の発現を高いレベルで期せるからである。
さてここで、本発明者らが想定している水素溶存水の参考例と、水素を溶存していない水の比較例と、のそれぞれに係る各種物性値を挙げておく。比較のための対象水としては、藤沢市水道水を活性炭カラムに通して処理した活性炭処理水、藤沢市水道水をオルガノ社製イオン交換カラムに通して処理したオルガノ精製水、そして、ペットボトル水の一例として、カルピス伊藤忠ミネラルウォーター(株)より日本国内に供給されている「evian」(S.A.des Eaux Minrales d’Evianの登録商標)を例示している。こうした比較対象水に水素を溶存させるための各種処理後の水素溶存水としては、本願出願人が開発した還元電位水生成装置にて、毎分1リットルの流量で5A定電流の電解条件を用いて連続式電解処理を行った第1の還元電位水と、同装置にて同一の電解条件(循環水量は2リットル)を用いて連続式循環電解処理を30分間行った第2の還元電位水と、各種比較対象水に対して水素ガスのバブリング処理を30分間行った水素ガスバブリング水と、ミズ株式会社製電解水生成装置「ミニウォーター」にて標準水量で電解レンジ「4」の電解条件を用いて連続式電解処理を行ったアルカリ性電解水と、を例示している。
また、こうした水がもつ各種物性値としては、pH、酸化還元電位ORP(mV)、電気伝導度EC(mS/m)、溶存酸素濃度DO(mg/L)、溶存水素濃度DH(mg/L)、水温T(°C)を挙げている。また、これらの各種物性値を計測するのに用いた各種計器類としては、pHメーター(温度計含む)は株式会社堀場製作所製の、pHメーター本体の型式『D−13』、同プローブの型式『9620−10D』であり、ORPメーターは株式会社堀場製作所製の、ORPメーター本体の型式『D−25』、同プローブの型式『9300−10D』であり、ECメーターは株式会社堀場製作所製の、ECメーター本体の型式『D−24』、同プローブの型式『9382−10D』であり、DOメーターは株式会社堀場製作所製の、DOメーター本体の型式『D−25』、同プローブの型式『9520−10D』であり、DHメーター(溶存水素計)は東亜ディーケーケー株式会社製の、本体型式『DHDI−1』、同電極(プローブ)型式『HE−5321』、同中継器型式『DHM−F2』であり、こうした各種計器類を用いて、比較対象水がもつ各種物性値をそれぞれ計測した。
Figure 0004511361
この表1によれば、溶存水素計で計測した溶存水素濃度(DH)に注目したとき、還元電位水生成装置を用いて1回電解処理した第1の還元電位水では、電解処理した水を即時に取り出せるにもかかわらず、そのなかには0.425〜0.900(mg/L)もの高濃度の水素を溶存させることができることがわかる。
また、処理時間をたとえば30分間とした場合において、本還元電位水生成装置における循環電解還元電位水(第2の還元電位水)と、水素ガスバブリング水と、の溶存水素濃度を比較したとき、後者では0.89〜1.090(mg/L)であるの対し、前者では1.157〜1.374(mg/L)もの高濃度の水素を溶存させることができることがわかった。
ところで、水素溶存水中には、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩を含む群から選択される少なくとも1つの還元剤が、必要に応じて添加されているのが好ましい。触媒作用により生じた活性水素の溶存酸素による速やかな酸化を予防する必要がある際には、水素溶存水中の溶存酸素濃度をできるだけ少なくしておく(水素溶存水中の溶存酸素濃度が、2mg/L以下、1.5mg/L以下、1mg/L以下、0.5mg/L以下、0mg/Lの順序で、少ないほどよい。)ことが好ましいからである。
これについてさらに説明すれば、触媒を作用させた水素溶存水に、溶存酸素をちょうど還元できる化学当量には及ばない量だけの還元剤を加えた場合には、溶存酸素濃度DO(mg/L)をほとんど0(mg/L)にまで下げることができる。
このときの比較例として、触媒を作用させていない水素溶存水に同様の量の還元剤を加えたものでは、溶存酸素濃度DO(mg/L)を大きく引き下げるまでには至らない。これは、封印が解き放たれた水素溶存水のもつ本来的な還元力が、還元剤がもつ還元力をより強く引き出した結果であると考えられる。
したがって、本発明に係る抗酸化機能水を還元剤や水溶性ビタミンなどの添加物とともに共存させた状態でボトル詰めした場合には、こうした添加物は抗酸化環境下におかれる結果として、添加物が本来的にもつ抗酸化作用をさらに強く引き出し、増幅活性が期せるという側面もあることを付言しておく。これは、本発明に係る抗酸化機能水を、例えば還元型アスコルビン酸とともに共存させさせた状態でボトル詰めした場合には、かかるアスコルビン酸は抗酸化環境下におかれるため還元型であり続ける結果として、還元型アスコルビン酸が本来的にもつ抗酸化作用をさらに強く引き出せることを意味する。この場合には、例えば還元型アスコルビン酸などの還元剤を、共存系内の溶存酸素等の酸化物を還元中和してなお有り余る量だけ添加することが好ましい。ただし、アスコルビン酸の添加量は、抗酸化機能水が呈するpHや、1日当りに摂取すべく推奨されている下限量などを考慮して、適宜の量を添加することが好ましい。
2.1.2 触媒
触媒とは、前記水素溶存水中に含まれる基質としての分子状水素を、生成物としての活性水素に分解する反応を触媒する機能を有するもの全般を想定している。すなわち、本発明に係る触媒機能の本質は、分子状水素の活性化を円滑に促進することにあるが、その機能のなかには、分子状水素から電子を受け取る(ひとつの分子状水素を活性化することで2個の電子が得られる;H→2e+2H)こと、並びに、受け取った電子を一旦プール(触媒への吸着や吸蔵の概念を含む)した後、又はプールすることなく抗酸化対象に供与すること、が含まれる。なお、電子を抗酸化対象に供与するとは、酸化状態にある抗酸化対象それ自体を還元するケースと、酸化から防御したい抗酸化対象を酸化しようと企む活性酸素種などの酸化物質それ自体を還元するケースと、の両者を含む概念である。
本発明に係る触媒としては、たとえば、水素酸化還元酵素、さらに言えばヒドロゲナーゼ、次述する貴金属コロイド、または、可視光線、紫外線、電子線を含む群から選択される少なくとも1つの電磁波などを、技術的範囲の射程に捉えている。なお、本発明で想定している貴金属コロイドとは、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、金、銀、レニウム、並びにこれら貴金属元素の塩、合金化合物、錯体化合物などのコロイド粒子それ自体、さらにはこれらの混合物を含む概念である。かかる貴金属コロイドを製造又は使用するにあたっては、本引用によりその記載内容が本願発明に取り込まれる、難波征太郎、大倉一郎の両氏による「Ptコロイドの作り方と使い方」、表面Vol.21 No.8(1983)の記載内容等を参照すればよい。また、本発明でいうコロイドとは、一般にコロイドとしての本質的な挙動を示すと言われている、直径1nm〜0.5μmの範囲の粒子を想定している。ただし、例えば貴金属コロイドとしてPtコロイドを採用したときの、同Ptコロイドの触媒活性が高まる粒子径としては、好ましくは1〜10nm、より好ましくは2〜6nmの範囲が妥当であると考えられる。これは、上記の難波氏らによる論文「Ptコロイドの作り方と使い方」に記載されているように、貴金属としての本来的な性質を発揮させることと、触媒活性向上を狙って表面積を稼ぐことと、のトレードオフ関係から導き出せる粒径である。しかも、本発明でいうコロイドとは、ドイツのシュタウディンガーが提案している、「10〜10個の原子から構成されているものがコロイドである。」との定義にも合致するものである。さらに、本発明に係る貴金属コロイドは、その表面積を稼ぐために、その粒子形状が球形であることが好ましい。これは、貴金属コロイドの表面積が大きいということは、基質としての分子状水素との接触機会を増すことを意味するので、貴金属コロイドの触媒機能を発現する観点から有利であることに由来する。
さらに言えば、触媒とは、それ自身のはたらきを補う補酵素、無機化合物、有機化合物などの電子伝達体をもその範疇に含む。
こうした電子伝達体は、たとえば、電子供与体である、水素、水素酸化還元酵素ヒドロゲナーゼ、または貴金属コロイドから電子を円滑に受け取ることができると同時に、受け取った電子を、電子受容体である抗酸化対象に対して円滑に伝達できる性質を有することが好ましい。簡単に言えば、電子伝達体の役割は水素(電子)の運び屋である。
2.1.2.1 電子伝達体の候補
以下に、電子伝達体の候補を挙げておく。なお、電子伝達体は酸化型であるか還元型であるかを問わないが、還元型の電子伝達体では、あらかじめ余剰電子を持っているため、電子をより放出しやすい点で有利であるといえる。
(a) メチレンブルー(通常は酸化型)
メチルチオニン塩化物、テトラメチルチオニン塩化物
化学式=C16H18ClN3S・3(H2O)
還元型メチレンブルーは、ロイコメチレンブルーという。
(b) ピオシアニン(pyocyanin)
化学式=C13H10N2O
緑膿菌(Pseudomonas aeru ginosa)が産生する抗生物質のひとつである。ピオシアニンは可逆的に酸化還元反応を行い、酸化型は、アルカリ性で青色を呈色する場合と、酸性で赤色を呈色する場合と、の2種類がある。また、還元型は、還元型メチレンブルー(ロイコメチレンブルー)と同様に無色である。
(c) フェナジンメトスルフェート(phenazine methosulfate)
略称=PMS
化学式=C14H14N2O4S
フェナジンメトスルフェートは光分解されやすい傾向がある。
(d) 1−メトキシPMS
光に不安定な上記PMSの代替として開発され、光に安定である。
(e) 鉄(III)イオンを含む化合物
たとえば、FeCl3,Fe2(SO4)3,Fe(OH)3など多数がある。本来の目的は、鉄(III)イオンであるFe(3+)をイオンとして得るための試薬である。生体中には、赤血球のヘモグロビンのヘム鉄としての存在が考えられる。なお、ヘム鉄は、独立した鉄イオンとは性質が異なる。
特にin vitroでは、アスコルビン酸と共役すると、酸化力の強いヒドロキシルラジカル(・OH)を生成するから、鉄イオンはあればよいというわけではない。しかし、in vivoでは、鉄イオンは、一酸化窒素(NO)が共存すると、ヒドロキシルラジカル(・OH)を生成しないこともあるといわれている。
特に2価鉄Fe(2+)は、3価鉄Fe(3+)の還元型であるが、還元型でも酸化作用を亢進することが多々ある。特に過酸化脂質があると、ラジカル連鎖反応が起こりやすくなる。鉄(III)イオンFe(3+)がアスコルビン酸などにより還元されるとき、過酸化脂質が共存すると、ラジカル生成連鎖反応が起こる。つまり、多くの脂質ラジカルが生成し、生体に対して悪影響を与えると考えられる。
(f) 還元型アスコルビン酸(化学式=C6H8O6)
生体中に存在するが、体外から吸収したものであり、ヒトでは合成できない。
(g) グルタチオン(化学式=C10H17N3O6S)
略称=GSH
生体内に多く存在するSH化合物であり、ヒトもこれを合成する遺伝子をもっていると推察される。3個のアミノ酸(グルタミン酸−システイン−グリシン=Glu−Cys−Gly)からなるポリペプチドであり、グリオキサラーゼの補酵素であり、細胞内還元剤、老化防止剤としての機能などが知られている。また、グルタチオンは、酸素(O2)を直接(非酵素的に)還元する機能を有している。
(h) システイン(Cys)
アミノ酸のひとつであるSH化合物であり、タンパク質を摂取して、消化分解した最終的な生成物である。上述したグルタチオンの構成要素であり、SH基を有するアミノ酸である。これも、グルタチオンのように、2個のシステインCysが、それぞれ水素原子1個を放出して、ジスルフィド結合(−s−s−)して酸化型システインになる。
(i) 安息香酸(C7H6O2)
生体中にはほとんど存在しないが、イチゴ類に0.05%程度含まれている。基本的な還元剤であり、ヒドロキシルラジカルを、非酵素的に、かつ効果的に消去し、水に変える機能を有している。
(j) p−アミノ安息香酸(C7H7NO2)
(k) 没食子酸(C7H6O5)(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)
植物の葉、茎、根などに広く存在し、一般に止血剤や、食品用抗酸化剤(食品添加物)として用いられる。そのアルカリ性水溶液は、特に還元力が強い。酸素と反応しやすい傾向がある。
なお、ここで触媒として列挙したものはあくまで例示に過ぎず、これらのみに拘泥する趣旨ではない。したがって、本発明が想定している触媒反応に寄与する限りにおいて、たとえば、温度、圧力、超音波や撹拌などの物理的外力などその他の諸パラメータを除外する趣旨ではないことを明らかにしておく。
また、生成物としての活性水素とは、原子状水素(H・)と水素化物イオン(ヒドリドイオンH)とを包括的に含む概念であることを付言しておく。
さらに、ここで述べたような触媒は、個々に単独で用いることもできるし、必要に応じて、適宜複数組み合わせて用いることもできる。基本的には、水素溶存水→触媒→抗酸化対象の順序で電子が伝達されるのであるが、これ以外にも、水素溶存水→酵素(ヒドロゲナーゼ)→抗酸化対象、水素溶存水→電子伝達体→抗酸化対象、水素溶存水→酵素(ヒドロゲナーゼ)→電子伝達体→抗酸化対象、水素溶存水→貴金属コロイド→抗酸化対象、または、水素溶存水→貴金属コロイド→電子伝達体→抗酸化対象、などの順序で電子が伝達されることが想定される。また、こうした電子伝達系に対して、可視光線、紫外線、電子線を含む群から選択される少なくとも1つの電磁波を組み合わせて作用させることもできる。
2.1.3 抗酸化対象
抗酸化対象とは、電子の欠乏に起因して酸化状態にあるか、または酸化から防御したい対象物全般を想定している。なお、ここでいう酸化とは、酸素、熱、光、pH、イオン等の直接的または間接的な作用によって対象物から電子が引き抜かれる現象をいう。そして、抗酸化対象とは、具体的には、たとえば、生体細胞や生体臓器、または、ビタミン等の抗酸化物質、食品、医薬部外品、医薬品、化粧品、飼料、後述する酸化還元色素、ならびに水それ自体などを、本発明の技術的範囲の射程に捉えている。なお、ここで抗酸化対象として列挙したものはあくまで例示に過ぎず、これらのみに拘泥する趣旨ではないことを明らかにしておく。
次に、触媒と抗酸化対象との関係について、触媒の視点から言及する。
本発明では、水素溶存水中に含まれる基質としての分子状水素を、生成物としての活性水素に分解する反応を触媒するのが、たとえば水素酸化還元酵素、ヒドロゲナーゼ、または、貴金属コロイドである。
いま、還元電位水に水素酸化還元酵素、たとえばヒドロゲナーゼを加えたもの(つまり、ヒドロゲナーゼ触媒添加抗酸化機能水)を考える。たとえば弱アルカリ性の還元電位水にヒドロゲナーゼを加えたものを飲用したときに、胃腸などの消化器系生体細胞(抗酸化対象)において活性酸素種などの酸化剤が共存する場合には、直ちにこれらの酸化剤を還元することになる。また、その他の添加物である果汁やビタミン類など(抗酸化対象)が共存するときには、還元電位水は、ヒドロゲナーゼが共存している条件下で、これら添加物の抗酸化剤として作用する。その作用機序は、還元電位水に溶存している分子状水素がヒドロゲナーゼの水素分解作用により二個の原子状水素(H・)に解離して活性化し、こうして生じた原子状水素(H・)が水の存在下でプロトンと電子に分かれ、そうして生じた電子が抗酸化対象に供与されるものと考えられる。ここで、電子が抗酸化対象に供与されるとは、酸化状態にある抗酸化対象それ自体を還元するケースと、酸化から防御したい抗酸化対象を酸化しようと企む活性酸素種などの酸化物質それ自体を還元するケースと、の両者を含む概念である。
また、還元電位水に貴金属コロイド、たとえば白金(Pt)やパラジウム(Pd)のコロイド粒子を含有させたもの(つまり、貴金属コロイド触媒添加抗酸化機能水)を考える。たとえば、弱アルカリ性の還元電位水にPtコロイド又はPtコロイドを含有させたものを飲用したときに、胃腸などの消化器系生体細胞(抗酸化対象)において活性酸素種などの酸化剤が共存する場合には、直ちにこれらの酸化剤を還元することになる。また、その他の添加物である果汁やビタミン類など(抗酸化対象)が共存するときには、還元電位水は、Ptコロイドやパラジウム(Pd)が共存している条件下で、これら添加物の抗酸化剤として作用する。その作用機序は、還元電位水に溶存している分子状水素がPtコロイドやパラジウム(Pd)の微粒子表面に吸着するとともに二個の原子状水素(H・)に解離して活性化し、こうして生じた原子状水素(H・)が水の存在下でプロトンと電子に分かれ、そうして生じた電子が抗酸化対象に供与されるものと考えられる。ここで、電子が抗酸化対象に供与されるとは、上述のヒドロゲナーゼ触媒添加抗酸化機能水の場合と同様に、酸化状態にある抗酸化対象それ自体を還元するケースと、酸化から防御したい抗酸化対象を酸化しようと企む活性酸素種などの酸化物質それ自体を還元するケースと、の両者を含む概念である。
こうした抗酸化機能は、還元電位水のような水素溶存水と、触媒としての水素酸化還元酵素ヒドロゲナーゼまたは貴金属コロイドと、消化器系生体細胞などの抗酸化対象と、の三者がそろってはじめて発現される。換言すれば、必要なときだけ還元力を発現し、不要なときには何らの作用効果も奏さない。しかも、その化学的成分組成に着目したとき、たとえば還元電位水は原水を電気分解して得られるごくふつうの水に過ぎない。したがって、還元力を発現した後においても、やはりふつうの水としてふるまうだけで生体などに対して何らの悪影響をも及ぼさないことが特筆すべき点である。言い換えれば、狙った正の作用は得られるが負の作用、いわゆる副作用は全く存在しない点が、従来の抗酸化剤やラジカル消去剤との決定的な相違点であるといえる。
ここで、京都大学大学院理学研究科助教授である樋口芳樹氏の論文、「水素酸化還元酵素のX線構造化学」(SPring・8 Information/Vol.4 No.4 JULY 1999)を引用する。同氏は、「水素酸化還元酵素はヒドロゲナーゼと呼ばれ、広くバクテリアに見られるタンパク質である。一般には鉄、ニッケル、などを持つ金属タンパク質であるが、最近これらの金属を全く持たない新規のヒドロゲナーゼも発見されている。この分子が水素を分解して生じる電子は菌体内の様々な酸化還元反応を円滑に進めていくのに利用される。また、細胞の膜表層で膜内外のプロトン濃度勾配を直接支配するため、ATP合成分解酵素との関連も含めて細菌内のエネルギー代謝系で重要な役割を担っていると考えられている。」との研究成果を発表している。同氏はまた、別の論文「放射光を用いた多波長異常分散法によるヒドロゲナーゼのX線結晶構造解析」において、「生物がエネルギーを獲得するための一連の反応系の中心酵素はATP合成分解酵素である。この酵素を活性化するためには細胞膜の内外にプロトン濃度勾配がつくられる必要があることは良く知られている。ヒドロゲナーゼは細胞膜表層に存在する膜タンパク質で膜周辺の分子状水素の酸化還元を触媒するという機能を持つ。つまりこのヒドロゲナーゼは膜内外のプロトン濃度勾配を直接支配して、ATP合成分解酵素の働きを制御していることになる。従って、ヒドロゲナーゼは生物のエネルギー代謝系を円滑に進めるために非常に重要な役割を持つ可能性がある。ヒドロゲナーゼの立体構造を明らかにすることは生命維持のメカニズムのうち最も重要なエネルギー代謝に関わる部分の構造と機能の関係が解明されることになり大きな意義がある。」との研究成果を発表している。
本発明者らは、同氏の、「ヒドロゲナーゼは膜内外のプロトン濃度勾配を直接支配して、ATP合成分解酵素の働きを制御していることになる。従って、ヒドロゲナーゼは生物のエネルギー代謝系を円滑に進めるために非常に重要な役割を持つ可能性がある。」との知見に特に注目した。それは、ヒドロゲナーゼが生物に対するそうした効果を期せるということは、本発明に係る抗酸化方法、抗酸化機能水、または生体適用水を生体細胞へ適用したときの、細胞レベルでの抗酸化機能の発現とあわせて、プロトン濃度勾配の改善に由来するエネルギー代謝系の円滑促進が期せるであろうことを裏付けていると考えるからである。
したがって、本発明に係る水素酸化還元酵素、ヒドロゲナーゼまたは貴金属コロイドは、単球/マクロファージ系細胞の機能に関連または起因する疾患、特に、マクロファージ系細胞の機能の亢進または低下に関連または起因した疾患、組織もしくは臓器の機能障害または病態の予防、改善または治療のための医薬品としての道筋も開けていると考えられる。
なお、医薬品としての具体例は次の通りである。すなわち、一般に水は、脂質膜、細胞膜、または脳血液関門をも含め、生体のあらゆる箇所に速やかに到達できるという性質をもつため、活性酸素種に由来する生体細胞の損傷部位に、注射、点滴、透析などの操作を介して水素酸化還元酵素ヒドロゲナーゼまたは貴金属コロイドを、水素溶存水とともに、または各別に送り込むことにより、同損傷部位の治癒効果を期待することができる。
ここで、水素酸化還元酵素ヒドロゲナーゼはタンパク質であり、これを生体の損傷部位に注射、点滴、透析などの操作を介して送り込むことを想定した場合、かかる酵素を生体の免疫機構が非自己と認識して抗原抗体反応が起こるおそれがあるといった問題がある。この問題を解決するには、生体がもつ経口寛容の原理を臨床的に応用すればよい。経口寛容とは、経口/経腸的に侵入する外来抗原に対して誘導される抗原特異的T/B細胞不応答性のことをいう。簡単にいえば、口から摂取した物質が例え抗原となりうるタンパク質であっても、それが小腸から吸収されていれば、その物質に対しては免疫寛容が成立するという現象が経口寛容であり、既にこの原理を応用した治療も試みられている。したがって、かかる経口寛容の原理を臨床的に応用することを通じて、抗酸化というあたらしい治療戦略に道を開きうるものと考えられる。
2.2 抗酸化機能水、およびその用途
本発明によれば、水素溶存水に、この水素溶存水中に含まれる基質としての分子状水素を、生成物としての活性水素に分解する反応を触媒する水素酸化還元酵素(ただし、予め生体内に存在するものを除く)または貴金属コロイドを含有させてなる水であって、前記触媒によって前記反応を促進させることにより、電子の欠乏に起因して酸化状態にあるか、または酸化から防御したい抗酸化対象を、電子が充足された還元状態にする抗酸化機能を有することを特徴とする抗酸化機能水が提供される。
こうした構成を採る抗酸化機能水には、本発明において重要な三要素のうち、水素溶存水と触媒が含まれているので、あとは抗酸化対象にさえめぐりあえば、水素が潜在的に持つ還元力の封印が解き放たれて、本発明特有の抗酸化機能が発現される。なお、抗酸化対象を電子が充足された還元状態にする抗酸化機能とは、酸化状態にある抗酸化対象それ自体を還元するケースと、酸化から防御したい抗酸化対象を酸化しようと企む活性酸素種などの酸化物質それ自体を還元するケースと、の両者を含む概念である。
ところで、上述した構成を採る抗酸化機能水をたとえば飲用に供する場合であって、抗酸化対象としてたとえば大腸を想定した場合、大腸に到達する以前で水素が潜在的に持つ還元力の封印がほとんど解き放たれてしまったのでは、本来の目的を達成することができなくなるといった問題がある。
そこで、触媒としての水素酸化還元酵素、ヒドロゲナーゼ、または貴金属コロイドには、該触媒の活性及び/又は反応時間を調整するための処理または操作が施されていることが好ましい。
ここで、触媒の活性及び/又は反応時間を調整するための処理または操作とは、たとえば、図3又は図4に示すように、ヒドロゲナーゼ、または貴金属コロイドがたとえば大腸や小腸などの対象部位に到達したときに本来の触媒作用が開始されることを狙って、ヒドロゲナーゼまたは貴金属コロイドを腸溶性カプセルなどに封入する処理や、ヒドロゲナーゼ入りの抗酸化機能水の温度やpHを、酵素ヒドロゲナーゼの活性を失活させることなく抑制し得る範囲に調製しておく操作などを含む。なお、ヒドロゲナーゼの至適pHは9付近であり、至適温度は49°C程度であると言われている。そして、こうした触媒の反応時間を調整するための処理または操作を、ヒドロゲナーゼ等またはその周辺環境に施すこと全般を、本発明の技術的範囲の射程に捉えている。
また、本発明によれば、水素溶存水に、この水素溶存水中に含まれる基質としての分子状水素を、生成物としての活性水素に分解する反応を触媒する水素酸化還元酵素(ただし、予め生体内に存在するものを除く)または貴金属コロイドを含有させてなる水であって、前記触媒によって前記反応を促進させることにより、電子の欠乏に起因して酸化状態にあるか、または酸化から防御したい抗酸化対象を、電子が充足された還元状態にする抗酸化機能を有する抗酸化機能水を主成分として含有し、飲用、注射用、点滴用、透析用、化粧用を含む各用途で生体に用いるように調製されていることを特徴とする生体適用液が提供される。
すなわち、例えば本発明に係る抗酸化機能水を注射用、点滴用、透析用の用途で、特に、そのまま血流にのせる態様で生体に適用するに際しては、本発明に係る抗酸化機能水に対して、血液とほぼ等張となる浸透圧調製、生理的液性範囲(例えばpH4.5〜8.0、好ましくはpH7.0〜7.8、さらに好ましくはpH7.1〜7.5)へのpH調製などを施す必要がある。この場合、浸透圧調製物質としては、生理的に許容できるものであればとくに限定されず、例えば、各種電解質(例えば、ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・亜鉛・鉄・銅・マンガン・ヨウ素・リン等の無機成分の水溶性塩等)、グルコース、ヒアルロン酸等の糖類、アルブミン等のタンパク質、アミノ酸等を使用することができる。また、pH調整剤としては、生理的に許容できるものであればとくに限定されず、例えば、各種の有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基等を使用することができ、特に、有機酸が好適に用いられる。この有機酸としては、例えば、クエン酸、酢酸、コハク酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸等が使用でき、無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸等を使用することができる。一方、有機塩基としては、例えば、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、マレイン酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム等を使用することができ、無機塩基としては、例えば、水酸化アルカリ金属等を使用することができる。
さらに、生体、具体的には患者の症状改善を目的とした場合、本発明に係る抗酸化機能水の含有成分に対して、各種電解質、アミノ酸、高カロリー成分、経腸栄養剤等の薬液成分、ビタミン類や抗生物質等の薬剤成分などを添加調製して、これを輸液として使用することが好ましい。なお、各種電解質としては、例えば、ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・亜鉛・鉄・銅・マンガン・ヨウ素・リン等の無機成分の水溶性塩等を使用することができる。また、アミノ酸としては、例えば、必須アミノ酸、非必須アミノ酸および/またはこれらのアミノ酸の塩、エステルまたはN−アシル体等を使用することができる。さらに、高カロリー成分としては、例えば、グルコース・フルクトースなどの単糖類やマルトース等の二糖類などを使用することができる。
ここで、本発明に係る抗酸化機能水に、例えばビタミンCなどのビタミン類及びアミノ酸(良質タンパク)を添加した生体適用液では、次のような作用機序に従う生体の免疫力賦活化等をも期せるものと考えられる。すなわち、例えばビタミンCなどのビタミン類は、本発明の抗酸化機能水と同様にラジカル消去活性を有する一方で、生体の代謝を司る生体酵素(例えば、SOD、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、インターフェロン合成酵素など)やインターフェロン(糖とタンパク質からできた物質で、免疫力を発揮)の合成又は本来的機能発揮のための助酵素的な役割を担っている。また、アミノ酸(良質タンパク)は、生体酵素やインターフェロンの原料としての重要な役割を担っている。
いま、生体において例えば局所的に過剰な量の(・O )が発生したとする。すると、ビタミンCやビタミンEなどのビタミン類、並びに、SOD、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどの生体酵素は、相互に協働して(・O )を消去する。このとき、ビタミンCやビタミンEなどのビタミン類は、(・O )を還元消去する過程で自らが酸化されてしまう結果、助酵素的な役割を含む本来の仕事を果たせなくなる。すると、生体酵素やインターフェロンなどの生体における合成又は本来的機能が落ちる結果として、免疫力の低下等を招来してしまう。
これに対し、本発明に係る抗酸化機能水に、例えばビタミンCなどのビタミン類及びアミノ酸(良質タンパク)を添加した生体適用液では、抗酸化機能水が(・O )を消去することに伴って、ビタミン類の助酵素的な働きを含む本来の仕事の専念化、並びにアミノ酸の供給に由来する生体酵素やインターフェロンなどの合成又は本来的機能を促進する結果として、生体の免疫力賦活化等をも期せるものと考えられる。
なお、ビタミン類及びアミノ酸を含有しない本発明に係る抗酸化機能水、ビタミン類を含有した本発明に係る生体適用液、又はアミノ酸を含有した本発明に係る生体適用液であっても、もともと生体に存在するビタミン類の消費が抑制され、ビタミン類が助酵素的な働きを含む本来の仕事に専念できるという意味で、ここで例示した作用機序に従う生体の免疫力賦活化等を期せるものと考えられる。
一方、触媒として貴金属コロイドを用いて、これを生体に適用するに際しては、安全性を担保することが必須である。具体的には、貴金属コロイド自体の急性毒性を含む生体親和性を考慮する必要がある。これについて、たとえば白金並びにパラジウムでは、これをヒトが摂取してもそのほとんどが腎臓を経由して尿として速やかに排出されること、また、食品添加物として厚生労働省の認可を得ていること(添加量の規制もなし)等を考慮すると、生体親和性の問題は生じないと考えられる。もうひとつの考慮すべき問題として、貴金属コロイドを抗酸化機能水中において安定かつ均一に分散させるためには、なんらかの分散剤的なものを添加してもよい。これについて、たとえば、飲用または化粧用の場合、食品添加物として厚生労働省の認可を得ているもののなかから、分散剤的な機能を有するものを適宜選択すればよい。この場合、たとえば、低刺激性で化粧品や医薬品用途にも汎用されている、ショ糖脂肪酸エステルやポリビニルピロリドン(PVP)などが好適に用いられる。なお、貴金属コロイドのための分散剤乃至は保護膜(触媒活性の調整機能を担う)形成成分として、抗酸化機能水中にショ糖脂肪酸エステルやポリビニルピロリドン(PVP)を含有させることは、請求項との関係における触媒の活性及び/又は反応時間を調整するための処理または操作の範疇に含まれる。
こうした抗酸化機能水は、たとえば以下のような産業分野における応用展開が可能であると考えられる。
その第1は、医学・薬学分野における応用である。たとえば、輸液製造その他の薬剤の製造工程における基水として利用することができる。また人工透析液剤、腹膜貫流液剤、薬剤としても利用することができる。さらに、例えば生体臓器移植時における移植臓器の保存液(この場合、別途浸透圧調整を行うことが好ましい。)としても好適に利用することができる。これにより、活性酸素種由来のあらゆる疾病の予防・治療、医薬品の副作用軽減・老化防止、移植臓器の保存性向上等の効果を期することができる。
第2は皮膚組織の酸化がもたらす老化・退行変成の予防・治療剤としての応用である。たとえば、化粧水その他の化粧品の製造工程において利用することができる。
第3は抗酸化食品・機能性食品としての応用である。たとえば、食材製造工程における使用が考えられる。
第4は飲料水、加工飲料水その他における応用である。たとえば、飲料水(抗酸化水)としての使用、また、缶ジュース、缶コーヒー、ペットボトル水、清涼飲料等の加工飲料水の基水としての使用が考えられる。
第5は食材の農薬・除草剤・殺虫剤等による汚染・劣化の改善、鮮度保持への応用である。たとえば、野菜・果実等の出荷前の洗浄液として用いることができる。
第6は加工食品製造工程における酸化防止剤・品質劣化防止剤・腐敗防止剤・汚濁防止剤・消臭剤・鮮度保持剤などの代替剤としての応用である。具体的には、たとえば347種類にも及ぶ食品添加物の代替剤としての使用が考えられる。
これについてさらに説明すると、活性酸素種を含むラジカルの、酸化、老化、品質劣化、腐敗、汚濁、消臭並びに鮮度低下への関与が、これらの発現および悪性化機構の重大要因の一つとして指摘されている。その結果、活性酸素種を含むラジカルは、健康障害、疾病発症、生理機能低下、美容外観の退化、商品価値低下、生産性低下、生活・自然環境負荷の増加などの深刻な損傷をもたらすきっかけを与えている。このことはまた、疾病が起きやすく治り難いことに起因する医療コストの増大、生産や流通等における機会損失と割高なコスト負担といった産業上の損失等をもたらす一因ともなる。活性酸素種の関与が望ましいとする例は、殺菌、消毒、漂白といったごく限られた例に過ぎず、大部分の例において活性酸素種は悪影響しかもたらさない。本発明は、これら活性酸素種を含むラジカルに起因した各種産業上の課題に対し、最も効率的かつ低コストで、応用範囲が広い解決手段を提供するものである。
生体が活性酸素種に急激または多量に曝される例は、手術時の急な血液再循環、臓器移植時、全身火傷、潜水時急浮上の肺気腫など比較的限られた例であり、大部分の例では僅かな量の活性酸素種が火ダネとなり、やがて広範な害をもたらすようになる。
生体の新陳代謝過程や老廃物の蓄積、直射日光および紫外線や放射線に曝された時、発癌性および変異原性物質や重金属と接した時、火傷やウイルス感染を受けた時、切傷や細胞破壊を被った時などに、正常状態もしくは不活性状態の酸素や酸素分子含有化合物等が活性化され、更にはラジカル化される機会は多種多様に存在している。また、活性酸素種を帯びた飲食物や飼料、タバコのけむり、煤煙排気ガス、塩素系有機溶剤などに曝された場合も、これらからの直接的ラジカル作用を受けるだけでなく、生体側においても活性酸素種の生成が惹起あるいは誘導されてくる。当初において活性酸素種の生成量は極めて僅かで局所的ではあっても、その生成が正常域をこえて持続しまたは生成後に除去しきれず残存した状態が継続するにつれて、活性酸素種は次第にそして加速度的に増加してゆき、上記例のような悪影響を発現しはじめる。
換言すれば、活性酸素種は、その生成と影響力が連鎖的に増大してゆくという点で、酸化還元反応など通常の化学反応(非ラジカル反応)や酵素反応とは損傷の与え方を異にする。つまり、活性酸素種の発生に起因して、潜在的に生理機能低下や退化等が進行してゆき、やがてある日あるとき突然顕在化するかのように、急速にしかも大きな損傷として発現してくるのである。
ヒトの疾病のケースを例示すれば、活性酸素種による慢性的な酸化ストレス負荷が、糖尿病(特にインシュリン非依存型)、肝硬変(特に脂肪肝型)、狭心症など循環器疾患(特に動脈硬化型)、痴呆症(特に脳梗塞型)、悪性腫瘍(主に化学発癌)などの諸疾病の発症機構に関与している主犯であるといわれている。また、加齢(高齢化)や体力消耗による生理機能低下、激しい動作の連続による新陳代謝や呼吸の異常亢進、栄養バランスや摂取量の過不足、睡眠や運動の不足においては、老化および退化あるいは疲労といった現象となって現れる。これらの現象においては、代謝老廃物が蓄積されやすくなり、または、細胞組織や皮膚等の再生不良および機能低下に伴って、活性酸素種の生成若しくは残存蓄積量の増加が認められており、症状促進や回復遅延の一大要因をなしている。
ヒト以外の動物および植物のケースを例示すれば、活性酸素種の生成過剰や残存蓄積あるいは暴露が、ヒトでの例と同様に種々の健康障害あるいは生育障害をもたらすばかりでなく、それらの結果として、家畜飼育、ペット繁殖、水産養殖や植物栽培の産業においては、搾乳量低下、肉質および肥育率低下、産卵率低下、脱毛など毛並み不良、繁殖育成効率低下、病害虫被害の受難度増大、鑑賞価値低下、栽培収穫量や養殖水揚げ量およびこれらの質の低下など、生産性低下や商品価値低下を招来することにもつながる。
飲食物や飼料それ自体のケースを例示すれば、紫外線等への暴露による活性酸素種生成、活性酸素種を帯びた原料等の混入、活性酸素種原料であり製造過程での殺菌消毒および漂白に使用される過酸化水素の残留によって、ビタミンなど栄養成分や食効成分の酸化分解、油脂含有および使用のものでは油脂分解やエマルジョン崩壊、色素含有および使用のものでは退色や変色、生鮮ものでは傷口等からの変敗、またこれらに伴って不快臭や食味食感減退が加速度的に促進され、著しい品質劣化がもたらされることになる。
環境のケースを例示すれば、活性酸素種を含むラジカルを帯びたあるいは帯び易い浮遊物の存在は、生活空間や作業空間に不快臭あるいはアレルギーや炎症が生じ易い環境をもたらし、また水質変化が促進される。
これらのケースのような損傷は、活性酸素種の関与が例えなくても進行し得るものの、活性酸素種の関与によってその進行が大きく促進されることは間違いない。
活性酸素種を含むラジカルが損傷増加に関与している場合には、従来の酸化防止剤、老化防止剤、品質劣化防止剤、腐敗防止剤、汚濁防止剤、消臭剤および鮮度保持剤では損傷の防止あるいは抑制を行うことは難しく、その唯一の解決手段は、抗酸化方法、抗酸化機能水、およびその用途に係る本発明であると本発明者らは強く確信している。
本発明は、従来の抗酸化剤等の活性酸素種スカベンジャーの使用と比べて、抗酸化という主作用を奏する一方で、それに付随する副作用をまったく生じさせないことから、安全性とラジカル消去効率の両者を高いレベルで同時に達成し、従来品では解決困難であった香味や色調の低下、物性の破壊、高コスト化、二次感染の心配など、使いにくさや用途の限定といった多くの課題を解消可能である。
また、本発明は、後述する実施例で示すように、pHによる影響を受けにくいため、酵素や抗酸化剤等のような場合とは異なって、酸性からアルカリ性にいたる液性領域で幅広く応用でき、しかも室温で高い効果を発揮することにより、食品分野や医薬品分野を初めとする広範の分野において産業上極めて有用である。
発明の作用及び効果
前述したように、本発明において重要な要素は、第一に水素溶存水、第二に触媒、そして第三に抗酸化対象である。これらの三要素が有機的に結合されてはじめて、水素が潜在的に持つ還元力の封印が解き放たれて、抗酸化機能が顕在的に発現される。
本発明に係る抗酸化方法、および抗酸化機能水によれば、水素溶存水に触媒を作用させる過程を通じて、該水素溶存水中に含まれる基質としての分子状水素を、生成物としての活性水素に分解する反応を促進させることにより、電子の欠乏に起因して酸化状態にあるか、または酸化から防御したい抗酸化対象を、電子が充足された還元状態にし、これをもって、生体への安全性や環境負荷低減を高い水準で期することができる。
すなわち、抗酸化方法、抗酸化機能水、およびその用途に係る本発明は、酸性からアルカリ性に至る広範なpH範囲において、しかも室温にて、優れたラジカル消去機能を発揮する。
そこで、本発明は、ヒト、ヒト以外の動物、植物、発酵微生物、培養細胞などの生命体での生理機能活動において活性酸素種の関与により惹起されやすい酸化的ストレスや老化など各種障害の予防あるいは改善に、または、飼育、養殖、栽培、発酵、培養、加工、保存などにおいて生産物やそれらの生産過程における変質、分解、腐敗、汚濁、異臭化、鮮度低下、効力減退、能率低下などの品質劣化や活性低下の防止が求められている分野において、特にその利用が期待される。
さらに、食品、飼料、医薬医療用品、医薬部外品、香粧品、洗浄剤、消臭剤、衛生用品、衣料用品、鮮度保持用資材や包装容器、動物飼育、水産養殖、植物栽培、発酵や培養などの各産業分野においてもその有用性が見込まれる。
しかも、本発明の有用性が発揮されやすくかつ活用しやすいよう利用者へ提供できる具体的な態様について、いくつかの例をこれら産業における商品群の中から示すならば、以下のとおりである。
たとえば、食品分野であれば、高度の活性酸素種除去機能を備えた食品添加物として加工食品の品質や日持ち向上および生鮮食品における鮮度保持に、または、本発明の抗酸化機能水を有効成分とする特定保健用食品や健康食品を提供することで健康維持および疾病予防に、それぞれ活用できる。飼料分野では、飼料用添加物やペットフードとして健康管理および飼料効率や生産性向上に利用できる。
薬事法第二条各項で規定するところの医薬品、医薬部外品、化粧品および医療用具の分野においては、医薬品添加物や化粧品添加物などとして製剤の品質向上に役立てることができるばかりでなく、疾病の治療と予防、体調体質の改善、美容の維持向上、衛生状態や快適環境確保のための有効成分とすることができる。このうち医薬品においては、活性酸素種の関与により発症あるいは回復遅延や症状悪化がもたらされる疾病の医療用治療水、または、一般用では滋養強壮保健薬、胃腸薬、感冒薬、口腔鼻炎用薬および外皮用薬の分野で、特に有用性が期待される。医薬部外品については、薬用歯磨き剤、口中清涼剤、薬用化粧品、毛髪用剤、浴用剤、腋臭防止剤および生理処理用品の分野で、さらに、化粧品では、頭髪用化粧品類、洗髪用化粧品類、化粧水類、クリーム乳液類、パック類、ファンデーション類、口紅類、洗顔料類、石けん類、歯磨き類の分野において、その有用性が高い。
以上のような例以外にも、本発明に係る抗酸化方法および抗酸化機能水を具体的態様にて提供することが種々可能であって、本発明の実施形態および有用性が上記例に限定されるものではないことを付言しておく。
図1はネルンストの式を示すグラフ、図2はLEDを用いた点灯実験の様子を説明するための図、図3は本発明の応用例を説明するための図、図4は本発明の抗酸化方法を利用した半導体基板の洗浄システム100を示す概略図、図5は本発明に係る洗浄システム100などに用いられる還元電位水生成装置11の基本的構造を示す縦断面図、図6〜図7はメチレンブルーの呈色変化によるPtコロイド触媒添加電解処理水の還元活性評価試験結果を示す図、図8〜図9はメチレンブルーの呈色変化によるPtコロイド触媒添加水素溶存水の還元活性評価試験結果を示す図、図10〜図11はメチレンブルーの呈色変化によるPdコロイド触媒添加水素溶存水の還元活性評価試験結果を示す図、図12〜図13はメチレンブルーの呈色変化による貴金属混合(Pt+Pd)コロイド触媒添加水素溶存水の還元活性評価試験結果を示す図、図14はメチレンブルーの呈色変化によるPtコロイド触媒添加電解処理水(電解処理前添加/電解処理後添加)の還元活性評価試験結果を示す図、図15〜図16はDPPHラジカルの呈色変化によるPtコロイド触媒添加電解処理水の抗酸化活性評価試験結果を示す図、図17〜図18はDPPHラジカルの呈色変化による触媒添加水素溶存水(脱気処理+水素ガス封入処理)の抗酸化活性評価試験結果を示す図、図19〜図20はメチレンブルーの呈色変化による酵素ヒドロゲナーゼ触媒添加水素溶存水(脱気処理+水素ガス封入処理)の還元活性評価試験結果を示す図、図21〜図22は酸化還元色素酸化還元滴定による溶存水素濃度定量分析方法の説明に供する図、図23は各種サンプル水の溶存水素濃度DHの実測値と実効値の対比説明に供する図、図24はチトクロムc還元法の説明に供する図、図25はエピネフリン酸化法の説明に供する図、図26はPtコロイド濃度を主パラメータとした、Ptコロイド触媒含有水素溶存水が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す図、図27はPdコロイド濃度を主パラメータとした、Pdコロイド触媒含有水素溶存水が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す図、図28はPtコロイド濃度を主パラメータとした、Ptコロイド触媒含有水素溶存水が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す図、図29は(Pt+Pd)混合コロイド濃度を主パラメータとした、(Pt+Pd)混合コロイド触媒含有水素溶存水が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す図、図30は(Pt+Pd)混合コロイド濃度を主パラメータとし、Pt:Pdの混合モル比を副主パラメータとした、(Pt+Pd)混合コロイド触媒含有水素溶存水が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す図、図31は(Pt+Pd)混合コロイド濃度を主パラメータとし、Pt:Pdの混合モル比を副主パラメータとした、(Pt+Pd)混合コロイド触媒含有水素溶存水が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す図、図32はPtコロイド濃度を主パラメータとした、Ptコロイド触媒前添加1パス電解処理水が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す図、図33はPdコロイド濃度を主パラメータとした、Pdコロイド触媒前添加1パス電解処理水が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す図、図34はPtコロイド濃度を主パラメータとした、Ptコロイド触媒前添加循環電解処理水が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す図、図35はPdコロイド濃度を主パラメータとした、Pdコロイド触媒前添加循環電解処理水が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す図、図36はAsA水溶液濃度を主パラメータとした、AsA水溶液が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す図、図37は貴金属触媒の種類の相違を主パラメータ(濃度は固定)とした、触媒含有水素溶存水が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す図、図38は水素・酸素共存水溶液系におけるPtコロイド触媒の作用機序を示す図、図39は水素・酸素共存水溶液系におけるPdコロイド触媒の作用機序を示す図、図40は実施例に係る溶存水素濃度DHの実効値を示す図、図41〜図42はPtコロイド触媒含有二段電解処理水(AOW)が、C.エレガンスの寿命に与える影響を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明に係る抗酸化機能水の基水(水素溶存水)生成に用いられる還元電位水生成装置11の基本構造について、図5を参照しつつ説明する。
本例の還元電位水生成装置11には、純水などの原水を導入する導入口111と、生成された還元電位水を取り出すための導出口112とが形成されており、これら導入口111と導出口112との間に電解室113が形成されている。特に限定はされないが、本例の還元電位水生成装置11では、ケーシング114の底面に、図示する紙面に対して垂直方向に原水が導入されるように導入口111が形成され、ケーシング114の頂面に、図示する紙面に対して垂直方向に電解水が取水されるように導出口112が形成されている。
また、還元電位水生成装置11の左右の側壁には多孔性隔膜115が設けられており、この隔膜115の室外のそれぞれに、電極板116が接触した状態で設けられている。他方の電極板117は、その主面が一方の電極板116にそれぞれ対面するように電解室113内に設けられている。
これら二対の電極板116,117には、直流電源(電源回路)12が接続されており、隔膜115を挟んで対向する一対の電極板116,117の一方に陽極が、他方の電極板に陰極が印加されるようになっている。例えば、電解室113にて還元電位水を生成する場合には、図5に示されるように、電解室113内に設けられた電極板117に直流電源12の陰極が接続され、電解室113外に設けられた電極板116に陽極が接続される。
なお、電解室113にて電解酸化水を生成する場合には、電解室113内に設けられた電極板117に直流電源12の陽極を接続し、電解室113外に設けられた電極板116に陰極を接続すれば良い。
本例で用いられる電極板116,117は、チタン素材の全面にわたり、白金、イリジウム、パラジウムなどの群から選ばれる1又は2以上の組み合わせに係る貴金属を焼成被覆するなどして構成されている。また、電極板116,117には、後述するように、複数のパンチ孔が空けられている。
本例で用いられる隔膜115は、電解室113に流される水がしみ込みやすく、かつしみ込んだ水が垂れ難い性質のものが好ましい。すなわち、本例の還元電位水生成装置11では、電解中において隔膜115自体および隔膜115と電極板116間の僅かな隙間Sに水膜が形成され、この水膜を介して両電極板116,117に電流が流れる。したがって、この水膜を構成する水が順次入れ替わることが電解効率を高める上で重要となる。また、隔膜115にしみ込んだ水が、隔膜115と電極板116との間から漏れるとその処理が必要となるため、しみ込んだ水が垂れ落ちない程度の含水性を有することが好ましい。ただし、隔膜としてたとえば固体電解質膜を採用する場合には、この固体電解質膜それ自体が電気伝導性を有しているので、この場合には隔膜115と電極板116間に僅かな隙間Sを形成することを省略することができる。
隔膜115の一例として、骨材がポリエステル不織布またはポリエチレンスクリーン、膜材質が塩素化エチレンまたはポリフッ化ビニリデンと酸化チタンあるいはポリ塩化ビニルであって、厚さが0.1〜0.3mm、平均孔径が0.05〜1.0μm、透水量が1.0cc/cm・min以下の多孔性膜、または、固体電解質膜などを例示することができる。隔膜115として陽イオン交換膜を使用する場合は、例えばデュ・ポン社製のナフィオン膜のような、ベース材料をポリテトラフルオロエチレンとした陽イオン交換基ペルフルオロスルホン酸膜や、旭化成製のフレミオン膜のような、陽イオン交換基ビニルエーテルとテトラフルオロエチレンの共重合体等を用いることができる。
一方、こうした隔膜115を挟んで対向して配置される一対の電極板116,117の板間距離は、0mm〜5.0mm、より好ましくは1.5mmである。ここで電極板116,117の板間距離が0mmとは、たとえば隔膜115の両主面のそれぞれに電極膜を直接形成したゼロギャップ電極を用いた場合であり、実質的には隔膜115の厚さ分の距離を有することをいう。ゼロギャップ電極は隔膜115の一方の主面のみに電極を形成しても良い。また、このようなゼロギャップ電極を採用する場合には、電極表面から発生するガスを隔膜115とは反対の背面側へ逃がすための孔(例えばパンチ孔)または隙間を電極板116,117に設けておくことが望ましい。なお、電極板116,117に孔または隙間を設ける構成を、図5に示す電解槽に設けられる電極板においても採用することができる。
また、電解室113内に設けられる電極板117,117の板間距離は、特に限定されないが、0.5mm〜5mm、より好ましくは1mmである。
このように構成された還元電位水生成装置11を用いて還元電位水を生成するには、まず、電解室113内に設けられた2枚の電極板117,117に直流電源12の負極(−)を接続するとともに、電解室113外に設けられた電極板116,116に直流電源12の正極(+)を接続し、隔膜115を挟んでそれぞれ対向する二対の電極板116,117に電圧を印加する。そして、導入口111から純水などを導入すると、電解室113では水の電気分解が行われ、電極板117の表面及びその近傍で、
2HO+2e →2OH +H
なる反応が生じる。また、隔膜115を挟んだ電解室113外の電極板116の表面、すなわち当該電極板116と隔膜115との間においては、
O−2e →2H +1/2・O
なる反応が生じる。
このHイオンは、隔膜115に含蓄されながらここを通過し、その一部が陰極板117から電子eを受容して、水素ガスとなって陰極側の生成電解水中に溶け込む。これにより、陰極側(すなわち電解室113内)で生成される電解水は、従来の有隔膜電解技術を用いて生成した電解水よりも酸化還元電位(ORP)が低い還元電位水となる。
また、隔膜115を通過したHイオンの残余は、電解室113中のOHイオンと反応して水に戻るため、電解室113で生成される還元電位水のpHは、若干中性に近づくことになる。つまり、pHはさほど高くないがORPが低い還元電位水が得られることになる。このようにして生成された水酸化物イオンを含む還元電位水は、導出口112から供給される。
なお、こうした電解処理により得られる還元電位水を所望のpH値にしたい場合には、例えばフタル酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩などのpH緩衝作用塩の溶液を用いるなどして、あらかじめ原水のpH値を調製しておけばよい。本還元電位水生成装置11では、原水のpHを大きくは変化させないからである。具体的には、たとえば、シリコン基板の洗浄や飲料の用途を狙ってpHをアルカリ性に傾かせたいのであれば、原水のpH値をアルカリ性付近に管理調製すればよく、また、飲料、注射液、点滴液、または透析液の用途を狙ってpHをほぼ中性にしたいのであれば、原水のpH値を中性付近に管理調製すればよく、さらには、化粧料の用途を狙ってpHを弱酸性にしたいのであれば、原水のpH値を弱酸性付近に管理調製すればよい。
ちなみに、上述した実施形態では還元電位水を生成する装置として図5に示すものを説明したが、この装置11は酸化電位水を生成する場合にも適用できる。この場合には、電解室113内に設けられた2枚の電極板117,117に直流電源12の陽極(+)を接続するとともに、電解室113外に設けられた電極板116,116に直流電源12の陰極(−)を接続し、隔膜115を挟んでそれぞれ対向する二対の電極板116,117に電圧を印加すればよい。
そして、導入口111から純水などを導入すると、電解室113では水の電気分解が行われ、電極板117の表面及びその近傍で、
O−2e →2H +1/2・O
なる反応が生じる一方、隔膜115を挟んだ電解室113外の電極板116の表面、すなわち当該電極板116と隔膜115との間の水膜においては、
2HO+2e →2OH +H
なる反応が生じる。
このOHイオンは、隔膜115に含蓄されながらここを通過し、その一部が陰極板117に電子eを受渡して、酸素ガスとなって陽極側の生成電解水中に溶け込む。これにより、陽極側(すなわち電解室113内)で生成される電解水は、従来の有隔膜電解技術を用いて生成した電解水よりも酸化還元電位(ORP)が高い酸化電位水となる。
また、隔膜115を通過したOHイオンの残余は、電解室113中のHイオンと反応して水に戻るため、電解室113で生成される酸化電位水のpHは、若干中性に近づくことになる。つまり、pHはさほど低くないがORPが高い酸化電位水が得られることになる。こうして生成された水素イオンを含んだ酸化電位水は、導出口112から供給される。
ちなみに、図5に示す還元電位水生成装置11を用い、電解室113内に設けられた2枚の電極板117,117に直流電源12の陰極(−)を接続するとともに、電解室113外に設けられた電極板116,116に直流電源12の陽極(+)を接続して(電極板の有効面積は1dm)、pHが7.9、ORPが+473mVの藤沢市水道水を毎分1リットルの流量(本還元電位水生成装置11における適正な流量は毎分1〜3リットルであり、特に好ましくは毎分1〜1.8リットルである。)で5A定電流の電解条件にて連続通水式に電解処理を行った。このとき隔膜115として、陽イオン交換膜であるデュ・ポン社製のナフィオン膜を用い、電極板116,117間の距離は1.2mmとし、電解室113内における電極板117,117間の距離は1.4mmとした。
この結果、電解処理直後において、pH=9.03、ORP=−720mVの還元電位水が得られた。また、この還元電位水を静置して、5分後、10分後、および30分後のpHおよびORPを測定したところ、5分後にはpH=8.14,ORP=−706mV、10分後にはpH=8.11,ORP=−710mV、30分後にはpH=8.02,ORP=−707mVとなった。すなわち、電解処理直後の時点では同処理水のpHは9を越えていたが、すぐにpHが下がりpH8付近で安定した。これは、隔膜115と陽極板116との間の水膜付近で生じたHイオンは、隔膜115を通過して電解室113に移動したのち、同電解室113内のOHイオンと中和反応してもとの水に戻るのであるが、かかる中和反応は、電解処理後の還元電位水を静置しておいた場合でも、濃度的な化学平衡が成立するまで経時的に促進されることが原因であると考えられる。
貴金属コロイド触媒添加水素溶存水の還元活性/ラジカル消去活性評価試験
以下に、本発明に係る水素溶存水に貴金属コロイド触媒(Ptコロイド/Pdコロイド)を加えたとき、同水素溶存水中に含まれる化学的に不活性な分子状水素が活性化することで発現する還元活性またはラジカル消去活性の各評価試験について、各自の実施例と参考例をそれぞれ示す。
上述した二通りの評価試験形態のうち、還元活性評価試験では、抗酸化対象としてメチレンブルー(テトラメチルチオニン塩化物;C1618ClN3S・3(HO))を用いる一方、ラジカル消去活性の評価試験では、抗酸化対象として水溶液中で比較的安定なラジカルであるDPPHラジカル(1,1−diphenyl−2−picrrylhydrazyl)を用いる。
ここで、抗酸化対象として酸化還元色素の範疇に属するメチレンブルーを用いた場合の還元活性評価原理について説明すると、酸化型メチレンブルー水溶液(吸収極大波長;665nm程度、以下、メチレンブルーを「MB」と呼ぶ場合がある。)は青色を呈しているが、それが還元されて還元型メチレンブルー(ロイコメチレンブルー)となったとき、青色から無色に呈色変化する。この青色消失の程度で、還元活性つまり還元力を評価する。なお、還元型メチレンブルーは溶解度が低いため白色沈殿物が生じるが、再酸化されると元の酸化型メチレンブルーとなり、青色にもどる。つまり、メチレンブルー水溶液の呈色反応は可逆的である。
一方、抗酸化対象としてDPPHラジカルを用いた場合のラジカル消去活性評価原理について説明すると、DPPHラジカル水溶液(吸収極大波長;520nm程度、以下、「DPPH」と呼ぶ場合がある。)は濃紅色を呈しており、かかるDPPHは還元されてラジカルではなくなると濃紅色が退色する。この退色の程度で、ラジカル消去活性、つまり抗酸化力を評価する。なお、DPPHラジカル水溶液の呈色反応は非可逆的である。
かかる評価試験の説明は、(1)メチレンブルーの呈色変化によるPtコロイド触媒添加電解処理水の還元活性評価、(2)メチレンブルーの呈色変化によるPtコロイド/Pdコロイド触媒添加水素溶存水(脱気処理+水素ガス封入処理)の還元活性評価、(3)メチレンブルーの呈色変化によるPtコロイド触媒添加電解処理水(電解処理前添加/電解処理後添加)の還元活性評価、(4)DPPHラジカルの呈色変化によるPtコロイド触媒添加電解処理水の抗酸化活性評価、(5)DPPHラジカルの呈色変化による触媒添加水素溶存水(脱気処理+水素ガス封入処理)の抗酸化活性評価、の順序で行うものとする。
(1)メチレンブルーの呈色変化によるPtコロイド触媒添加電解処理水の還元活性評価
(1−A);還元力評価試験手順
和光純薬工業株式会社製の標準緩衝液6.86(リン酸塩水溶液)および9.18(ホウ酸塩水溶液)を、それぞれ精製水で10倍希釈したpH緩衝水溶液を調製する。以下では、これら2種類の希釈水を、「基本水6.86」、「基本水9.18」とそれぞれ呼ぶ。また、田中貴金属製の白金コロイド(その粒径分布は2〜4nmであり、分散剤としてポリビニルピロリドンを含有)4%溶液0.6gを、和光純薬工業株式会社製の蒸留水500mLに溶かしたものを「Pt基準液」と呼ぶ。なお、Pt基準液の白金成分の濃度C(Pt)は、計算式C(Pt)=0.6g×0.04/500mLから48mg/L濃度となる。そして、上記2種類の基本水6.86および9.18と、Pt基準液とを用いて、各4種類、都合8種類のサンプル水溶液を調製した。それらを以下に示す。
i.基本水(6.86)
ii.基本水(6.86)1494mLに、Pt基準液を6mL加えた、Ptコロイド入りの水溶液
iii.基本水(6.86)を電解処理した水溶液
iv.基本水(6.86)1494mLにPt基準液を6mL加えてPtコロイド入りの水溶液とし、さらに、同水溶液を電解処理した水溶液
v.基本水(9.18)
vi.基本水(9.18)1494mLに、Pt基準液を6mL加えた、Ptコロイド入りの水溶液
vii.基本水(9.18)を電解処理した水溶液
viii.基本水(9.18)1494mLに、Pt基準液を6mL加えてPtコロイド入りの水溶液とし、さらに、同水溶液を電解処理した水溶液
なお、上記i〜viiiの都合8通りの各サンプル水溶液において、pH、ORP(mV)、温度T(°C)、Ptコロイドの濃度を、次の表2にまとめて示す。
Figure 0004511361
上記i〜viiiの都合8通りの各サンプル水溶液の還元活性をそれぞれ調べるために、各水溶液350mLにメチレンブルー(1g/L濃度)溶液を10mL加え、メチレンブルーモル濃度を74.4μMに調製して、各サンプル水溶液のメチレンブルー吸光度(A589;波長589nmにおける吸光度)を分光光度計で測定した。
(1−B);参考例および実施例の開示
(参考例1)
サンプルiの基本水6.86である触媒無添加水溶液にメチレンブルーを加えた水溶液のメチレンブルー吸光度(A589)を参考例1とし、その結果を図6に示す。
(参考例2)
サンプルiiの(基本水6.86+Pt基準液)である触媒添加水溶液にメチレンブルーを加えた水溶液のメチレンブルー吸光度(A589)を参考例2とし、その結果を図6に示す。
(参考例3)
サンプルiiiの(基本水6.86+電解処理)である触媒無添加電解処理水にメチレンブルーを加えた水溶液のメチレンブルー吸光度(A589)を参考例3とし、その結果を図6に示す。
サンプルivの(基本水6.86+電解処理+Pt基準液)である触媒添加電解処理水にメチレンブルーを加えた水溶液のメチレンブルー吸光度(A589)を実施例1とし、その結果を参考例1〜3と対比させつつ図6に示す。
(参考例4)
サンプルvの基本水9.18である触媒無添加水溶液にメチレンブルーを加えた水溶液のメチレンブルー吸光度(A589)を参考例4とし、その結果を図7に示す。
(参考例5)
サンプルviの(基本水9.18+Pt基準液)である触媒添加水溶液にメチレンブルーを加えた水溶液のメチレンブルー吸光度(A589)を参考例5とし、その結果を図7に示す。
(参考例6)
サンプルviiの(基本水9.18+電解処理)である触媒無添加電解処理水にメチレンブルーを加えた水溶液のメチレンブルー吸光度(A589)を参考例6とし、その結果を図7に示す。
サンプルviiiの(基本水9.18+電解処理+Pt基準液)である触媒添加電解処理水にメチレンブルーを加えた水溶液のメチレンブルー吸光度(A589)を実施例2とし、その結果を参考例4〜6と対比させつつ図7に示す。
(1−C);実施例の考察
実施例1、2の結果を参考例1〜6と対比させつつ考察すると、実施例1、2の触媒添加電解処理水は、参考例1〜6と比較して、そのpHの差異にかかわらず特異的にメチレンブルーを還元しており、触媒添加電解処理水だけが大きな還元活性を示しているといえる。なお、メチレンブルー水溶液の青色呈色の有無を目視で確認すると、実施例1、2の触媒添加電解処理水だけが無色透明であり、メチレンブルーの青色消失を視認できた。なお、参考例1〜6では、メチレンブルーの青色消失は視認できなかった。また、実施例1、2の触媒添加水素溶存水では、多量の白色沈殿物(還元型メチレンブルー)を目視確認できた。
(2)メチレンブルーの呈色変化によるPtコロイド/Pdコロイド触媒添加水素溶存水(脱気処理+水素ガス封入処理)の還元活性評価
(2−A);還元力評価試験手順
株式会社ニッポンジーン製造、和光純薬工業株式会社販売の、特注1MのTris−HCl(pH7.4)と、同1MのTris−HCl(pH9.0)を、それぞれ和光純薬工業株式会社製の蒸留水で20倍希釈し、Tris−HClの50mM濃度水溶液を調製する。以下では、これら2種類の希釈水を「基本水7.4」、「基本水9.0」とそれぞれ呼ぶ。また、田中貴金属社製のパラジウムコロイド(その粒径分布は2〜4nmであり、分散剤としてポリビニルピロリドンを含有)4%溶液0.6gを、和光純薬工業株式会社製の蒸留水500mLに溶かしたものを「Pd基準液」と呼ぶ。このPd基準液のパラジウム成分の濃度C(Pd)は、Ptコロイドと同様の計算式から、C(Pd)=0.6g×0.04/500mL=48mg/L濃度となる。
次に、基本水7.4および基本水9.0をそれぞれ84mL採取し、1g/L濃度のMB水溶液をそれぞれに4mL加え、121.7μM濃度のMB入り基本水7.4および基本水9.0を各調製する。さらに、これらのMB入り基本水7.4、9.0をそれぞれ個別の脱気ビンに50mLづつ採取し、真空ポンプにて10分間脱気した後に水素ガスを10分間封入する操作を3回繰り返す。なお、かかる操作は水素溶存水中における水素以外の気体成分の除去を狙ったものである。
このようにして得られた、水素ガス封入済みのMB入り基本水7.4および基本水9.0をそれぞれ3mL採取し、これらを密閉系であらかじめ水素ガス置換した石英セルに投入し、さらに、Pt基準液、Pd基準液、または、Pt基準液とPd基準液とのモル比が約1となる混合溶液のそれぞれを同石英セルに加えたときの、メチレンブルーの吸光度変化(ΔA572;波長572nmにおける吸光度変化)を測定した。
(2−B);実施例の開示
MB入り水素溶存水(MB入り基本水7.4+脱気処理+水素ガス封入処理)に、Pt基準液をPtコロイド濃度が190μg/Lとなる量だけ加えた水溶液のメチレンブルー吸光度変化(ΔA572)を実施例3とし、その結果を図8、図9にそれぞれ示す。
MB入り水素溶存水(MB入り基本水9.0+脱気処理+水素ガス封入処理)に、Pt基準液をPtコロイド濃度が190μg/Lとなる量だけ加えた水溶液のメチレンブルー吸光度変化(ΔA572)を実施例4とし、その結果を実施例3と対比しつつ図8に示す。なお、実施例3と実施例4の各サンプル水の相違点はpHである。
MB入り水素溶存水(MB入り基本水7.4+脱気処理+水素ガス封入処理)に、Pt基準液をPtコロイド濃度が95μg/Lとなる量だけ加えた水溶液のメチレンブルー吸光度変化(ΔA572)を実施例5とし、その結果を実施例3と対比しつつ図9に示す。なお、実施例3と実施例5の各サンプル水の相違点はPtコロイド濃度である。
MB入り水素溶存水(MB入り基本水7.4+脱気処理+水素ガス封入処理)に、Pd基準液をパラジウムコロイド濃度が444μg/Lとなる量だけ加えた水溶液のメチレンブルー吸光度変化(ΔA572)を実施例6とし、その結果を図10、図11にそれぞれ示す。
MB入り水素溶存水(MB入り基本水9.0+脱気処理+水素ガス封入処理)に、Pd基準液をパラジウムコロイド濃度が444μg/Lとなる量だけ加えた水溶液のメチレンブルー吸光度変化(ΔA572)を実施例7とし、その結果を実施例6と対比しつつ図10に示す。なお、実施例6と実施例7の各サンプル水の相違点はpHである。
MB入り水素溶存水(MB入り基本水7.4+脱気処理+水素ガス封入処理)に、Pd基準液をパラジウムコロイド濃度が111μg/Lとなる量だけ加えた水溶液のメチレンブルー吸光度変化(ΔA572)を実施例8とし、その結果を実施例6と対比しつつ図11に示す。なお、実施例6と実施例8の各サンプル水の相違点はパラジウムコロイド濃度である。
MB入り水素溶存水(MB入り基本水7.4+脱気処理+水素ガス封入処理)に、Pt基準液とPd基準液とのモル比が約1となる混合溶液を貴金属混合(Pt+Pd)コロイド濃度が160μg/Lとなる量だけ加えた水溶液のメチレンブルー吸光度変化(ΔA572)を実施例9とし、その結果を図12、図13にそれぞれ示す。
MB入り水素溶存水(MB入り基本水9.0+脱気処理+水素ガス封入処理)に、実施例9と同様の混合溶液を貴金属混合(Pt+Pd)コロイド濃度が160μg/Lとなる量だけ加えた水溶液のメチレンブルー吸光度変化(ΔA572)を実施例10とし、その結果を実施例9と対比しつつ図12に示す。なお、実施例9と実施例10の各サンプル水の相違点はpHである。
MB入り水素溶存水(MB入り基本水7.4+脱気処理+水素ガス封入処理)に、実施例9と同様の混合溶液を貴金属混合(Pt+Pd)コロイド濃度が80μg/Lとなる量だけ加えた水溶液のメチレンブルー吸光度変化(ΔA572)を実施例11とし、その結果を実施例9と対比しつつ図13に示す。なお、実施例9と実施例11の各サンプル水の相違点は貴金属(Pt+Pd)コロイド濃度である。
(2−C);実施例の考察
実施例3、4を対比している図8は、pH7.4およびpH9.0におけるPtコロイド添加水素溶存水のMB還元活性を示す。同図によれば、pHの相違によるMB還元活性に大差はみられず、両者ともに高いMB還元活性を示している。
実施例3、5を対比している図9は、Ptコロイド濃度95μg/Lおよび190μg/LにおけるPtコロイド添加水素溶存水のMB還元活性を示す。同図によれば、Ptコロイド濃度の高い方がMB還元活性も高くなっている。このことから、MB還元活性を高めるためには、Ptコロイド濃度を高くすることが効果的であると考えられる。
実施例6、7を対比している図10は、pH7.4およびpH9.0におけるPdコロイド添加水素溶存水のMB還元活性を示す。同図によれば、pHの相違によるMB還元活性に大差はみられず、両者ともに高いMB還元活性を示している。
実施例6、8を対比している図11は、Pdコロイド濃度111μg/Lおよび444μg/LにおけるPdコロイド添加水素溶存水のMB還元活性を示す。同図によれば、Pdコロイド濃度の高い方がMB還元活性も高くなっている。このことから、MB還元活性を高めるためには、Pdコロイド濃度を高くすることが効果的であると考えられる。
実施例9、10を対比している図12は、pH7.4およびpH9.0における貴金属混合(Pt+Pd)コロイド添加水素溶存水のMB還元活性を示す。同図によれば、pHの相違によるMB還元活性に大差はみられず、両者ともに高いMB還元活性を示している。
実施例9、11を対比している図13は、貴金属混合(Pt+Pd)コロイド濃度80μg/Lおよび160μg/Lにおける貴金属混合(Pt+Pd)コロイド添加水素溶存水のMB還元活性を示す。同図によれば、貴金属混合(Pt+Pd)コロイド濃度の高い方がMB還元活性も高くなっている。このことから、MB還元活性を高めるためには、貴金属混合(Pt+Pd)コロイド濃度を高くすることが効果的であると考えられる。
また、図8(実施例3、4;Ptコロイド添加水素溶存水のMB還元活性)と図10(実施例6、7;Pdコロイド添加水素溶存水のMB還元活性)を対比すると、実施例3、4の方が濃度が低いにもかかわらず、実施例6、7と同等のMB還元活性を示していることがわかる。さらに、両者のモル濃度(μM)を対比しても、Ptコロイドは0.98μMであるのに対してPdコロイドは4.17μMであり、Ptコロイドの方が低い。このことから、本発明に係る貴金属触媒に期待するMB還元活性について、同等のMB還元活性を得るための使用量が少なくて済むという意味で、Ptコロイドの方がPdコロイドよりも触媒活性の点で優れているといえる。
一方、図8(実施例3、4;Ptコロイド添加水素溶存水のMB還元活性)と図12(実施例9、10;貴金属混合(Pt+Pd)コロイド添加水素溶存水のMB還元活性)を対比すると、両者ともに優れたMB還元活性を示していることがわかる。両者のモル濃度(μM)を対比してみても、Ptコロイドでは0.98μMであるのに対して貴金属混合(Pt+Pd)コロイドでは1.07μMであり、両者はほぼ等しい。このことから、本発明に係る貴金属触媒に期待するMB還元活性について、Ptコロイドと貴金属混合(Pt+Pd)コロイドとは、触媒活性の点でほぼ同等であるといえる。
(3)メチレンブルーの呈色変化によるPtコロイド触媒添加電解処理水(電解処理前添加/電解処理後添加)の還元活性評価
(3−A);還元力評価試験手順
上記(1−A)で調製したものと同様の基本水6.86を2000mL調製し、このなかから1000mLにPt基準液4mLを加えて、Ptコロイド入り基本水6.86を約1リットル調製する。残りの1000mLにはまだPtコロイドを加えないでおく。このようにして、Ptコロイド無しの基本水6.86を約1リットルと、Ptコロイド入りの基本水6.86約1リットルとを調製する。
次に、両サンプルを各別に電解処理して得られる電解処理水(水素溶存水)をそれぞれ2.86mLだけ採取し、これらをあらかじめ水素ガス置換した密閉系の石英セルに投入する。
さらに、Ptコロイド無しのセルには、あらかじめ脱気して水素ガスを封入した1g/L濃度のメチレンブルー水溶液を0.14mLだけ添加する。ここで、両セルを分光光度計にセットして待機する。
次に、Ptコロイド無しのセルには48mg/L濃度のPtコロイド溶液を12μL添加する一方、Ptコロイド入りのセルには、あらかじめ脱気処理と水素ガス封入処理済の1g/L濃度のメチレンブルー水溶液を0.14mL加えて、両セル溶液の分光光度計での測定を開始させる。なお、両セル内に添加されているPtコロイド濃度は、それぞれが約182μg/Lとなるように調製してある。
(3−B);実施例の開示
触媒前添加電解処理水(MB入り基本水6.86+Ptコロイド電解前添加)の、測定開始から30分間までにおける、メチレンブルー吸光度(A572;波長572nmにおける吸光度)の最小値を実施例12とし、その結果を図14に示す。
触媒後添加電解処理水(MB入り基本水6.86+Ptコロイド電解後添加)の、測定開始から30分間までにおける、メチレンブルー吸光度(A572)の最小値を実施例13とし、その結果を実施例12と対比させつつ図14に示す。
(3−C);実施例の考察
実施例12、13を対比している図14は、Ptコロイドの添加時期(電解処理前か後か)を異ならせたときの電解処理水のMB還元活性を示す。同図によれば、Ptコロイドは電解処理前に加えた方が、より高いMB還元活性を得られることがわかる。この理由は現在追跡調査中であるが、MB還元活性のもととなる活性化した水素が、電解処理水中の酸素等の酸化物質がもつ酸化力を無効化していることに由来するものと推測される。これは、Ptコロイド入りの活性炭処理水を原水として電解処理を施した電解処理水の溶存酸素濃度を、その電解処理直後に計測してみたところ、同電解処理水の溶存酸素濃度がほとんどゼロになっていることから導き出された推論である。そうすると、かかる電解処理の例に限らず、水素封入処理や水素ガスバブリング処理においても、触媒(Ptコロイド)の処理前添加は、より高いMB還元活性を得る(酸素等の酸化物質がもつ酸化力の無効化に由来)観点から好ましいものと考えられる。さらに、例えば原水に還元剤を添加する処理を施すことで溶存水素水を得る場合においても、原水にあらかじめPtコロイドを加えておくことは、上記と同様により高いMB還元活性を得る観点から好ましいものと考えられる。なお、触媒としてはPtコロイドに限らず、Pdコロイドや、PtコロイドとPdコロイドとの混合コロイドの場合も同様に、触媒の処理前添加は、より高いMB還元活性(触媒活性)を得る観点から好ましい。これは、貴金属コロイド触媒を電解処理前に添加した場合、電解処理の過程で貴金属コロイド触媒のなかに水素を効率的に吸蔵させることができ、こうして貴金属コロイド触媒のなかにたくわえられた水素が、より高いMB還元活性(触媒活性)をもたらすものと考えられる。
(4)DPPHラジカルの呈色変化によるPtコロイド触媒添加電解処理水の抗酸化活性評価
(4−A);抗酸化活性評価試験手順
上記の(1−A)で調製したものと同様に、表2に示すサンプルi〜viiiの都合8通りの各サンプル水溶液がもつ抗酸化活性をそれぞれ調べるために、各水溶液16mLに、DPPH(0.16g/L濃度)溶液を4mL加え、DPPHモル濃度を81.15(μM)に調製して、DPPHを添加してから3分後の各サンプル水溶液のDPPH吸光度変化(ΔA540;波長540nmにおける吸光度変化)を、分光光度計で測定した。
(4−B);参考例および実施例の開示
(参考例7)
サンプルiの基本水6.86である触媒無添加水溶液にDPPHを加えた水溶液のDPPH吸光度差(ΔA540)を参考例7とし、その結果を図15に示す。なお、同図におけるDPPH吸光度変化(ΔA540)は、本サンプルi(ブランク)の吸光度に対する、サンプルi〜ivの吸光度との差分(ΔA540)を示す。したがって、参考例7のDPPH吸光度変化(ΔA540)はゼロとなる。
(参考例8)
サンプルiiの(基本水6.86+Pt基準液)である触媒添加水溶液にDPPHを加えた水溶液のDPPH吸光度変化(ΔA540)を参考例8とし、その結果を図15に示す。
(参考例9)
サンプルiiiの(基本水6.86+電解処理)である触媒無添加電解処理水にDPPHを加えた水溶液のDPPH吸光度変化(ΔA540)を参考例9とし、その結果を図15に示す。
サンプルivの(基本水6.86+電解処理+Pt基準液)である触媒添加電解処理水にDPPHを加えた水溶液のDPPH吸光度変化(ΔA540)を実施例14とし、その結果を参考例7〜9と対比させつつ図15に示す。
(参考例10)
サンプルvの基本水9.18である触媒無添加水溶液にDPPHを加えた水溶液のDPPH吸光度変化(ΔA540)を参考例10とし、その結果を図16に示す。なお、同図におけるDPPH吸光度変化(ΔA540)は、本サンプルv(ブランク)の吸光度に対する、サンプルv〜viiiの吸光度との差分(ΔA540)を示す。したがって、参考例10のDPPH吸光度変化(ΔA540)はゼロとなる。
(参考例11)
サンプルviの(基本水9.18+Pt基準液)である触媒添加水溶液にDPPHを加えた水溶液のDPPH吸光度変化(ΔA540)を参考例11とし、その結果を図16に示す。
(参考例12)
サンプルviiの(基本水9.18+電解処理)である触媒無添加電解処理水にDPPHを加えた水溶液のDPPH吸光度変化(ΔA540)を参考例12とし、その結果を図16に示す。
サンプルviiiの(基本水9.18+電解処理+Pt基準液)である触媒添加電解処理水にDPPHを加えた水溶液のDPPH吸光度変化(ΔA540)を実施例15とし、その結果を参考例10〜12と対比させつつ図16に示す。
(4−C);実施例の考察
実施例14、15の結果を参考例7〜12と対比させつつ考察すると、基本水6.86および9.18の両者において実施例14、15の触媒添加電解処理水は、参考例7〜12と比較して、特異的にDPPHラジカルを消去しており、大きな抗酸化活性、またはラジカル消去活性を示している。ちなみに、Ptコロイド触媒は電解処理前に添加している。なお、図15に示すように、参考例9では、触媒無添加電解処理水であるにもかかわらずDPPHラジカル消去活性が認められる。これは、たとえば本件明細書で開示した電解処理水などの高濃度水素溶存水においては、還元対象たる酸化物質が強い酸化力をもつラジカルである場合、このラジカルによる分子状水素からの強制的な水素引き抜き反応によって、触媒の助けがなくともラジカル消去活性の発現が期せる可能性を示唆しているものと考えられる。
(5)DPPHラジカルの呈色変化による触媒添加水素溶存水(脱気処理+水素ガス封入処理)の抗酸化活性評価
(5−A);抗酸化活性評価試験手順
上記(2−A)と同様に、「基本水7.4」、「基本水9.0」を用意し、次に、406μMのDPPH溶液と、基本水7.4および基本水9.0をそれぞれ50mL採取し、真空ポンプにて10分間脱気した後に水素ガスを10分間封入する操作を3回繰り返す。なお、かかる操作は水素溶存水中における水素以外の気体成分の除去を狙ったものである。
このようにして得られた、水素ガス封入済みのDPPH溶液0.3mLと、基本水7.4および基本水9.0をそれぞれ2.7mL採取し、これらを密閉系であらかじめ水素ガス置換した石英セルに投入し、同石英セルに、Pt基準液を加えたものと加えないものの両者について、DPPHの吸光度変化(ΔA540;波長540nmにおける吸光度変化)を分光光度計にて30分間にわたりそれぞれ測定した。
(5−B);参考例および実施例の開示
(参考例13)
水素溶存水(基本水7.4+脱気処理+水素ガス封入処理)にPt基準液を加えていない水溶液のDPPH吸光度変化(ΔA540)を参考例13とし、その結果を図17に示す。
水素溶存水(基本水7.4+脱気処理+水素ガス封入処理)に、Pt基準液をPtコロイド濃度が190μg/Lとなる量だけ加えた水溶液のDPPH吸光度変化(ΔA540)を実施例16とし、その結果を参考例13と対比させつつ図17に示す。なお、参考例13と実施例16の相違点は、Ptコロイドの添加有無である。
(参考例14)
水素溶存水(基本水9.0+脱気処理+水素ガス封入処理)にPt基準液を加えていない水溶液のDPPH吸光度変化(ΔA540)を参考例14とし、その結果を図18に示す。
水素溶存水(基本水9.0+脱気処理+水素ガス封入処理)に、Pt基準液をPtコロイド濃度が190μg/Lとなる量だけ加えた水溶液のDPPH吸光度変化(ΔA540)を実施例17とし、その結果を参考例14と対比させつつ図18に示す。なお、参考例14と実施例17の相違点は、Ptコロイドの添加有無である。
(5−C);実施例の考察
参考例13と実施例16を対比している図17は、Ptコロイドの添加有無を相違点としたpH7.4における水素溶存水のDPPHラジカル消去活性を示す。また、参考例14と実施例17を対比している図18は、Ptコロイドの添加有無を相違点としたpH9.0における水素溶存水のDPPHラジカル消去活性を示す。同図によれば、Ptコロイド無しの参考例13、14では、測定時間(30分間)内で自然退色したと考えられる分だけの吸光度変化がみられる一方、Ptコロイド入りの実施例16、17では、自然退色分を超える明らかなDPPHラジカル消去活性の発現が観察された。なお、pHの相違によるDPPHラジカル消去活性のレベル差はみられなかった。
酵素ヒドロゲナーゼ触媒添加水素溶存水の還元活性評価試験
次に、本発明に係る水素溶存水に酵素ヒドロゲナーゼ触媒を加えたとき、同水素溶存水中に含まれる化学的に不活性な分子状水素が活性化することで発現する還元活性評価について、その実施例と参考例をそれぞれ示す。かかる還元活性評価試験では、貴金属コロイド触媒添加水素溶存水の還元活性評価試験と同様に、抗酸化対象として酸化還元色素メチレンブルーを用いる。この場合の還元活性評価原理は、前述した貴金属コロイド触媒でした説明と同様のため、その重複した説明を省略する。
(6)メチレンブルーの呈色変化による酵素ヒドロゲナーゼ触媒添加水素溶存水(脱気処理+水素ガス封入処理)の還元活性評価
(6−A);還元活性評価試験手順
上記(2−A)で調製したものと同様に、「基本水7.4」、「基本水9.0」を用意し、これらの基本水7.4および基本水9.0をそれぞれ84mL採取し、1g/L濃度のMB水溶液をそれぞれに4mL加え、121.7μM濃度のMB入り基本水7.4および基本水9.0を各調製する。さらに、これらのMB入り基本水7.4、9.0をそれぞれ50mL採取し、真空ポンプにて10分間脱気した後に水素ガスを10分間封入する操作を3回繰り返す。なお、かかる操作は水素溶存水中における水素以外の気体成分の除去を狙ったものである。一方、125μM濃度のヒドロゲナーゼ溶液を蒸留水で4倍希釈したものを、1mL用のマイクロカプセルに投入し、同カプセルに窒素ガス(不活性ガス)を封入することで酸素を除去する。
このようにして得られた、水素ガス封入済みのMB入り基本水7.4および基本水9.0をそれぞれ3mL採取し、これらを密閉系であらかじめ水素ガス置換した石英セルに投入し、さらに、上述の如く調製したヒドロゲナーゼ溶液を同石英セルに加えたときの、メチレンブルーの吸光度変化(ΔA572)を測定した。
(6−B);参考例および実施例の開示
MB入り水素溶存水(MB入り基本水7.4+脱気処理+水素ガス封入処理)に、上述の如く調製したヒドロゲナーゼ溶液を10μL加えた水溶液のメチレンブルー吸光度変化(ΔA572)を実施例18とし、その結果を図19に示す。
(参考例15)
MB入り水素溶存水(MB入り基本水7.4+脱気処理+水素ガス封入処理)に、ヒドロゲナーゼ溶液を加えていない水溶液のメチレンブルー吸光度変化(ΔA572)を参考例15とし、その結果を実施例18と対比しつつ図19に示す。なお、実施例18と参考例15の各サンプル水の相違点は酵素ヒドロゲナーゼの添加有無である。
MB入り水素溶存水(MB入り基本水9.0+脱気処理+水素ガス封入処理)に、上述の如く調製したヒドロゲナーゼ溶液を10μL加えた水溶液のメチレンブルー吸光度変化(ΔA572)を実施例19とし、その結果を図20に示す。
(参考例16)
MB入り水素溶存水(MB入り基本水9.0+脱気処理+水素ガス封入処理)に、ヒドロゲナーゼ溶液を加えていない水溶液のメチレンブルー吸光度変化(ΔA572)を参考例16とし、その結果を実施例19と対比させつつ図20に示す。なお、実施例19と参考例16の各サンプル水の相違点は酵素ヒドロゲナーゼの添加有無である。
(6−C);実施例の考察
実施例18、19の結果を参考例15,16と対比させつつ考察すると、実施例18、19の触媒添加水素溶存水は、参考例15、16と比較して、そのpHの差異にかかわらず特異的にメチレンブルーを還元しており、触媒添加水素溶存水だけが大きな還元活性を示しているといえる。なお、メチレンブルー水溶液の青色呈色の有無を目視で確認すると、実施例18、19の触媒添加水素溶存水だけが無色透明であり、メチレンブルーの青色消失を視認できた。なお、参考例15、16では、メチレンブルーの青色消失は視認できなかった。また、実施例18、19の触媒添加水素溶存水では、多量の白色沈殿物(還元型メチレンブルー)を目視確認できた。
酸化還元色素酸化還元滴定による溶存水素濃度定量分析方法
(A) 発想の経緯
本願出願人が開発した還元電位水生成装置11にて電解処理した電解処理水(電解還元水)には、電解処理時に陰極反応で生成された水素が確かに溶存している。かかる電解処理水中にどの程度の濃度の水素が溶存しているかは、溶存水素計を用いて一応、計測できる。ここで一応と表現したのは、一般に溶存水素計は電極反応における電気化学的物理量をテーブルルックアップ方式で溶存水素濃度に置換するといった計測原理を採用しているため、たとえば被検定水の液性などの外部要因に依存して計測値が比較的大きく変動する傾向があるからである。
ところで、すでに上述した実施例に基づき説明したとおり、電解処理水に触媒を加えない触媒無添加電解処理水では、例えば酸化型メチレンブルーなどの酸化還元色素(抗酸化対象)を加えても同色素は還元反応特有の呈色変化を示さない一方、電解処理水に触媒を加えた触媒添加電解処理水では、かかる色素を加えると同色素は還元反応特有の呈色変化を示した。つまり、酸化還元色素の酸化還元反応は、(触媒添加電解処理水+酸化還元色素)溶液の呈色変化を観察することを通して視認できた。
かかる実験を試行錯誤しつつ繰り返し行っているなかで、本発明者らは、触媒添加電解処理水が保持している還元力が大きいほど、酸化還元色素メチレンブルーの青色から透明への呈色変化反応が速やかに行われる傾向があることに気づいた。つまり、触媒添加電解処理水が保持している還元力と、加えられた酸化還元色素メチレンブルーを全量還元するのに消費される還元力と、を比較した際において、前者が後者を上回っているときの両者の差分である還元力の余力の大きさと、酸化還元色素メチレンブルーの呈色変化反応速度とのあいだに、なんらかの相関性があることを見出した。
こうした知見を踏まえて、かかる相関性の産業上利用性につき鋭意研究を進めたところ、本発明者らは、酸化還元色素メチレンブルーの酸化還元反応を通じて、触媒添加電解処理水が有する顕在抗酸化力(溶存水素濃度)を定量分析できるのではないか、と発想するにいたったのである。
かかる発想を具現化する手段として、外部環境から隔離下に行われる滴定操作によって、貴金属コロイド触媒を存在させた所定量の被検定水中に酸化還元色素の溶液を滴下していったときの、貴金属コロイド触媒を介した前記酸化還元色素の還元反応による同色素の呈色変化終点までの滴下量から、被検定水中の溶存水素量を求め、前記所定量と前記滴下量に基づいて、被検定水の溶存水素濃度を定量分析する溶存水素濃度の定量分析方法を提供できることを見出し、その分析のための装置として、一方端が閉止されて他方端が開放された筒状容器と、前記開放端から前記筒状容器内へとピストン式に移動自在に挿入される押し子とからなり、スターラー用の攪拌子が動作可能である、外部環境から隔離されたガス不透過性試験器であって、前記筒状容器の閉止端、内側壁、及び押し子により区画される被検定水収容室内へと、外部環境から隔離した状態で液を注入し得るように、前記筒状容器の閉止端、側壁、又は押し子のいずれかに液注入部を備える溶存水素濃度の定量分析装置が適当であることを見出した。なお、かかる定量分析方法の変形例として、前記酸化還元色素の還元反応による同色素の呈色変化終点までの滴下量に基づく定量分析に代えて、貴金属コロイド触媒を存在させた所定量の被検定水中に酸化還元色素の所定濃度溶液を所定の量だけ滴下したときの、貴金属コロイド触媒を介した前記酸化還元色素の還元反応による同色素の呈色変化速度に基づいて、被検定水の溶存水素濃度を定量分析する溶存水素濃度の定量分析方法を採用してもよい。
(B) 実験目的
触媒添加電解処理水を含む水素溶存水に対して、酸化還元色素メチレンブルーの所定濃度溶液を滴下していった際において、かかる滴下後の溶液が還元呈色反応を示さなくなるまで(以下、「終点」という場合がある。)に加えられたメチレンブルーの合計滴下量が、溶存水素濃度(顕在抗酸化力)定量分析の尺度になることを、以下の実験を通して確認していく。
(C) 実効的な溶存水素濃度定量分析方法の概要
本発明に係る水素溶存水に触媒を加えたとき、同水素溶存水中に含まれる化学的に不活性な分子状水素が活性化することで発現する還元力(抗酸化力)の実効的な量、つまり、実効的な溶存水素濃度DH(mg/L)を定量分析するために、触媒としてPtコロイドを、また、酸化還元色素としてメチレンブルーを用いて、触媒(Ptコロイド)添加水素溶存水に対するメチレンブルーの酸化還元滴定を行った。
(D) 実験手順
基本的な実験手順は、あらかじめいくつかのサンプル水(溶存水素濃度などの諸特性値計測済み)を用意しておき、これらのサンプル水に対して触媒(Ptコロイド)を加えるとともに、メチレンブルーの滴下処理を施してゆく。そして、各々のメチレンブルー合計滴下量等から求められる溶存水素濃度の実効値と、溶存水素計での実測値との相関性の有無を比較評価する。
両者のあいだにもしも相関性があれば、メチレンブルー酸化還元滴定により溶存水素濃度を定量分析すること、および、顕在的抗酸化機能を発現する鍵物質が溶存水素であること、の妥当性を客観的にも検証することができると考えられる。
そうした基本的な考え方を踏まえて、まず、既述のPt基準液を40倍濃度に調製した40倍濃度Pt基準液を用意する。同40倍濃度Pt基準液の白金成分の濃度C(Pt)は、計算式C(Pt)=24g×0.04/500mLから192mg/Lとなる。
次に、1g/L濃度(体積モル濃度;2677.4μM)のメチレンブルー水溶液と、10g/L濃度(体積モル濃度;26773.8μM)のメチレンブルー水溶液とを用意する。ここで、濃度の異なる2種類のメチレンブルー水溶液を用意したのは、被検定水に溶存しているであろう水素濃度に応じて添加するメチレンブルー溶液の濃度を変えた方が、同溶液の添加量を減らすことができる結果、実験精度の向上を期せるからである。ただし、Pt基準液のPt濃度と、メチレンブルー水溶液のMB濃度は、これのみに限定されず、被検定水に溶存しているであろう水素量などの諸条件に応じて適宜調整すればよい。
次に、上記の如く調製した40倍濃度Pt基準液50mLと、濃度の異なる2種類のメチレンブルー水溶液各50mLとを、それぞれ個別の脱気ビンに採取し、真空ポンプにて10分間脱気した後に窒素ガスを10分間封入する操作を3回繰り返し、窒素ガス置換した40倍濃度Pt基準液とメチレンブルー水溶液とを調製する。かかる操作は、各溶液中における窒素(不活性ガス)以外の気体成分の除去を狙ったものである。
次に、200mLの被検定水を、マグネット式スターラー用の攪拌子とともに、アクリル製のガス不透過性試験器に投入する。この試験器は、本実験のために作成したものであり、アクリル製円筒形状中空チューブの長手方向における一方の端部にアクリル製円形板を接着することで底面を形成するとともに、その開放側を、同チューブの内径よりごく僅かに小径の円形板よりなる押し子にて長手方向移動自在のピストン式に封止する構造とされている。この押し子には、その全周囲を覆うようにシリコンゴム等の素材よりなるシールリングが装着されている。試験器の側壁には、同試験器における底面、内側壁、及び押し子により区画される被検定水収容室内に、外部環境から隔離した状態で40倍濃度Pt基準液やMB溶液を注入し得るように、同試験器における放射方向外側に向けてアクリル製円筒形状中空チューブよりなる溶液注入部が設けられている。そして、この溶液注入部には、シリンジニードル挿入用のゴム栓が着脱自在に設けられている。こうして構成された試験器の被検定水収容室内に被検定水を投入するにあたっては、試験器から押し子を外した状態で被検定水を静かに注ぎいれたのち、被検定水収容室内に気相が生じないように押し子を装着する。これにより、試験器の被検定水収容室内に被検定水を、外部環境から隔離した状態で閉じ込めておくことができる。また、試験器の被検定水収容室内に40倍濃度Pt基準液やMB溶液を投入するにあたっては、かかる溶液をシリンジ内において気相が生じないように吸い込み採取し、同シリンジのニードルを、溶液注入部に装着されたゴム栓に挿入したのち、シリンジのピストンを押すことで静かに溶液を注入する。なお、ここで開示した試験器はあくまでも一例であって、試験器の素材がガス不透過性であり、かつ、水素を吸蔵しないこと(例えばステンレスはガス不透過性ではあるが、水素を吸蔵してしまうため、試験器の素材として適さない。)、被検定水収容室を外部環境から隔離できること、被検定水収容室の体積が可変でありこと、被検定水収容室を気密かつ液密に保てること、40倍濃度Pt基準液やMB溶液などを、被検定水収容室を外部環境から隔離した状態で投入できること、スターラー用の攪拌子が動作可能であること、などの諸条件を満たせば、その他の容器を適宜採用することができる。
次に、上記の被検定水入り試験器を、その底面を下にしてマグネット式スターラー台に置き、攪拌子による攪拌を開始する。
次に、上述の窒素ガス置換した40倍濃度Pt基準液1mLを、シリンジを用いて被検定水収容室に注入し、十分攪拌し混合させる。
次に、上述の窒素ガス置換した所定濃度のメチレンブルー水溶液を、被検定水の呈色変化を目視で観察しながら少量づつシリンジを用いて注入していく。ここで、被検定水の溶存水素濃度がメチレンブルーの投入量よりも上回っていれば、メチレンブルーは還元されて無色になるが、メチレンブルー水溶液の投入量を徐々に増やしていくと、加えたメチレンブルーと被検定水の溶存水素とが相互に打ち消しあって、やがてメチレンブルーの青色から無色への呈色変化が観察できなくなる。このときを終点とすれば、メチレンブルー水溶液のメチレンブルー濃度と、加えたメチレンブルー水溶液の合計量から、被検定水の溶存水素濃度DHを求めることができる。
(E) 実効的な溶存水素濃度の求め方
以下に、被検定水に加えたメチレンブルー水溶液の濃度と合計添加量から、被検定水中の実効的な溶存水素濃度DHを求める計算式と、計算式の導出過程と、を示しながら、実効的な溶存水素濃度DHの意味するところを説明する。
まず、以下の説明では、被検定水の体積を200mLとし、被検定水に加えるメチレンブルー水溶液のメチレンブルー体積モル濃度をN(μmol/L)とする。さらに、終点に達するまでに加えたメチレンブルー水溶液の総量をA(mL)とすると、加えたメチレンブルー分子の総量B(mol)は、
B=N・A(μmol/L×mL)
=N・A(mμmol) ・・・ (式1)
となる。ここで、メチレンブルー分子の化学式をMBClとし、水素分子の化学式をHとすると、Ptコロイドにより活性化した水素分子と、メチレンブルー分子との、水溶液中における反応は、次の反応式1で表現される。
+ MBCl → HCl + MBH ・・・ (反応式1)
ここで、HClは塩酸であり、MBHは還元型メチレンブルーである。反応式1によれば、1モルの水素分子と、1モルのメチレンブルー分子とが反応して、1モルの還元型メチレンブルー分子が生成している。電子の授受で説明するために、反応式を半反応式で2式に分離して書くと、次のようになる。
→ H + (H + 2e) ・・・ (半反応式1)
MB +(H + 2e)→ MBH ・・・ (半反応式2)
半反応式1は、水素分子1モルが2モルの電子を放出することを意味する一方、半反応式2は、メチレンブルー陽イオン1モル、つまり、メチレンブルー分子1モルが2モルの電子を受け取ることを意味している。ここで、水素分子1モルは、電子を2モル放出するから2グラム当量である一方、メチレンブルー陽イオン1モル、つまり、メチレンブルー分子1モルは、電子を2モル受け取るから2グラム当量である。結果的には、水素分子と、メチレンブルー陽イオン、つまり、メチレンブルー分子と、のグラム当量数は、両者ともに同じ2であるから、水素分子とメチレンブルー分子とは、モル比でいえば1対1で反応することになる。
これを踏まえると、上記の被検定水に加えたメチレンブルーの総量Bは、消費された水素分子の総量でもある。
したがって、測定すべき水素分子の総量をC(mμmol)とすると、上記の式1から、
C=B=N・A(mμmol) ・・・ (式2)
となる。さらに、被検定水の体積は200mLであり、被検定水の実効的な水素分子の体積モル濃度H(mol/L)は、モル数C(mol)を体積(mL)で割った値であるから、
(mol/L)=C/200(mμmol/mL)
=C/200(μmol/L) ・・・ (式3)
となる。さらに、この単位を質量濃度(g/L)に変換する場合には、相当する水素分子の質量濃度をDとすれば、水素分子Hに関する次の比例式、
1mol/2g=H(μmol/L)/D ・・・ (式4)
から、この式4に式3を代入すると、
D=2・C/200(μg/L)
=C/100(μg/L) ・・・ (式5)
となる。これが、被検定水200mLに含まれる、実効的な水素分子の質量濃度である。なお、上記の実効的な水素分子の質量濃度Dは、マイクログラムオーダーであるが、ミリグラムオーダーに変換するには、分子と分母に1000を乗じて、
D=C・1000/100・1000(μg/L)
=C・10−5(mg/L) ・・・ (式6)
とすればよい。
そうすると、式2の関係から、式6の水素分子のモル数Cはメチレンブルーの総量Bに置き換えることができるため、
D=N・A(mμmol)・10−5(mg/L) ・・・ (式7)
が成立する。
この式7から、被検定水に含まれる実効的な水素分子の質量濃度D(mg/L)を、メチレンブルー体積モル濃度N(μmol/L)に、終点に達するまでに加えたメチレンブルー水溶液の総量(mL)を乗じることで求めることができることがわかる。
ところで、被検定水には、ここで定量分析を試みている水素分子(水素ガス)のみならず、各種イオン、酸素分子(酸素ガス)、または二酸化炭素(炭酸ガス)なども溶存している。このうち、被検定水中における酸化還元反応に関与する物質名を例示すると、水素分子以外には、酸素分子、次亜塩素酸塩および次亜塩素酸、などが挙げられる。こうした酸素分子等は、酸化還元反応の中でも、主として酸化剤として作用するのが通常であり、一部の特殊な場合を除いては、還元剤として作用することはない。特に、ここで述べているようなメチレンブルーを還元する試験では、酸素分子等は酸化剤として作用し、メチレンブルーを還元することはなく、逆に、還元型メチレンブルーを酸化して、酸化型メチレンブルーに変えてしまう。つまり、分子状水素の活性化により還元されたメチレンブルーが還元型メチレンブルーとして無色のままか、または、白色沈殿のまま存在していたとしても、かかる酸素分子等が共存する場合には、再び還元型メチレンブルーを酸化して、もとの酸化型メチレンブルーにもどしてしまうことになる。また、メチレンブルーを介さなくても、活性化した水素分子と、酸素分子等とが直接反応して、相当量の水素分子の還元力を奪ってしまうため、この相当量のメチレンブルーを還元することはできなくなる。つまり、例えば図21、図22に示すように、水素溶存水中に酸素分子等の酸化物が共存する場合には、これらの量に相当する水素分子の量が消費されて、終点まで加えられるメチレンブルーの総量も、酸化物の量に応じて減少することになる。
こうしたことを考慮すると、メチレンブルーを用いた定量分析方法で測定される溶存水素濃度とは、溶存酸素などの酸化剤により消費された分の水素濃度を差し引いた実効的な溶存水素濃度であるといえる。
(F) 参考例と実施例の開示
(参考例17)
ミズ株式会社製電解水生成装置「ミニウォーター」(活性炭フィルター搭載)にて標準水量で電解レンジ「4」の電解条件を用いて連続電解処理を行ったアルカリ性電解水を被検定水とし、上述の窒素ガス置換した40倍濃度Pt基準液1mLを、シリンジを用いて被検定水収容室に注入して十分攪拌し混合させたあと、同被検定水に1g/L濃度(体積モル濃度;2677.4μM)のメチレンブルー水溶液を、被検定水の呈色変化を目視で観察しながら少量づつシリンジを用いて注入した。終点にいたるまでの同メチレンブルー水溶液の総注入量は1mLであり、上記式7に各値を代入して求めた溶存水素濃度DHの実測値は0.03(mg/L)であった。本参考例17に係る被検定水の、pH、酸化還元電位ORP(mV)、電気伝導度EC(mS/m)、水温T(°C)、溶存酸素濃度DO(mg/L)、溶存水素濃度DHの実測値(mg/L)、上記式7に各値を代入して求めた溶存水素濃度DHの実測値(mg/L)を表3に示すとともに、DHの実測値と実効値を図23に示す。なお、各種物性値を計測するのに用いた各種計器類としては、先に述べたものと同様のものを使用した。
(参考例18)
藤沢市水道水をオルガノ社製イオン交換カラムに通して処理した精製水をいったん沸騰させたあと、水素ガスのバブリング処理を施しながらその温度を20°Cまで冷ました水を被検定水とし、同被検定水200mLに、上述の窒素ガス置換した40倍濃度Pt基準液1mLを、シリンジを用いて被検定水収容室に注入して十分攪拌し混合させたあと、同被検定水に10g/L濃度(体積モル濃度;26773.8μM)のメチレンブルー水溶液を、被検定水の呈色変化を目視で観察しながら少量づつシリンジを用いて注入した。終点にいたるまでの同メチレンブルー水溶液の総注入量は6.2mLであり、上記式7に各値を代入して求めた溶存水素濃度DHの実測値は1.66(mg/L)であった。本参考例18に係る被検定水の、各種物性値を表3に示すとともに、溶存水素濃度DHの実測値と実効値を図23に示す。
上述したサンプルiの基本水6.86を毎分1リットルの流量で5A定電流の電解条件にて連続通水式に電解処理した電解処理水を被検定水とし、同被検定水200mLに、上述の窒素ガス置換した40倍濃度Pt基準液1mLを、シリンジを用いて被検定水収容室に注入して十分攪拌し混合させたあと、同被検定水に10g/L濃度(体積モル濃度;26773.8μM)のメチレンブルー水溶液を、被検定水の呈色変化を目視で観察しながら少量づつシリンジを用いて注入した。終点にいたるまでの同メチレンブルー水溶液の総注入量は5.9mLであり、上記式7に各値を代入して求めた溶存水素濃度DHの実測値は1.58(mg/L)であった。本実施例20に係る被検定水の、各種物性値を表3に示すとともに、溶存水素濃度DHの実測値と実効値を図23に示す。
上述したサンプルvの基本水9.18を毎分1リットルの流量で5A定電流の電解条件にて連続通水式に電解処理した電解処理水を被検定水とし、同被検定水200mLに、上述の窒素ガス置換した40倍濃度Pt基準液1mLを、シリンジを用いて被検定水収容室に注入して十分攪拌し混合させたあと、同被検定水に10g/L濃度(体積モル濃度;26773.8μM)のメチレンブルー水溶液を、被検定水の呈色変化を目視で観察しながら少量づつシリンジを用いて注入した。終点にいたるまでの同メチレンブルー水溶液の総注入量は5.0mLであり、上記式7に各値を代入して求めた溶存水素濃度DHの実測値は1.34(mg/L)であった。本実施例21に係る被検定水の、各種物性値を表3に示すとともに、溶存水素濃度DHの実測値と実効値を図23に示す。
和光純薬工業株式会社製の標準緩衝液4.01(フタル酸塩水溶液)を精製水で10倍希釈したpH緩衝水溶液を、毎分1リットルの流量で5A定電流の電解条件にて連続通水式に電解処理した電解処理水を被検定水とし、同被検定水200mLに、上述の窒素ガス置換した40倍濃度Pt基準液1mLを、シリンジを用いて被検定水収容室に注入して十分攪拌し混合させたあと、同被検定水に10g/L濃度(体積モル濃度;26773.8μM)のメチレンブルー水溶液を、被検定水の呈色変化を目視で観察しながら少量づつシリンジを用いて注入した。終点にいたるまでの同メチレンブルー水溶液の総注入量は6.3mLであり、上記式7に各値を代入して求めた溶存水素濃度DHの実測値は1.69(mg/L)であった。本実施例22に係る被検定水の、各種物性値を表3に示すとともに、溶存水素濃度DHの実測値と実効値を図23に示す。
上述したサンプルiの基本水6.86を毎分1リットルの流量で5A定電流の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した循環電解処理水を被検定水とし、同被検定水200mLに、上述の窒素ガス置換した40倍濃度Pt基準液1mLを、シリンジを用いて被検定水収容室に注入して十分攪拌し混合させたあと、同被検定水に10g/L濃度(体積モル濃度;26773.8μM)のメチレンブルー水溶液を、被検定水の呈色変化を目視で観察しながら少量づつシリンジを用いて注入した。終点にいたるまでの同メチレンブルー水溶液の総注入量は9.6mLであり、上記式7に各値を代入して求めた溶存水素濃度DHの実測値は2.57(mg/L)であった。本実施例23に係る被検定水の、各種物性値を表3に示すとともに、溶存水素濃度DHの実測値と実効値を図23に示す。
上述したサンプルvの基本水9.18を毎分1リットルの流量で5A定電流の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した循環電解処理水を被検定水とし、同被検定水200mLに、上述の窒素ガス置換した40倍濃度Pt基準液1mLを、シリンジを用いて被検定水収容室に注入して十分攪拌し混合させたあと、同被検定水に10g/L濃度(体積モル濃度;26773.8μM)のメチレンブルー水溶液を、被検定水の呈色変化を目視で観察しながら少量づつシリンジを用いて注入した。終点にいたるまでの同メチレンブルー水溶液の総注入量は12.3mLであり、上記式7に各値を代入して求めた溶存水素濃度DHの実測値は3.29(mg/L)であった。本実施例24に係る被検定水の、各種物性値を表3に示すとともに、溶存水素濃度DHの実測値と実効値を図23に示す。
実施例22と同様のpH緩衝水溶液を毎分1リットルの流量で5A定電流の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した循環電解処理水を被検定水とし、同被検定水200mLに、上述の窒素ガス置換した40倍濃度Pt基準液1mLを、シリンジを用いて被検定水収容室に注入して十分攪拌し混合させたあと、同被検定水に10g/L濃度(体積モル濃度;26773.8μM)のメチレンブルー水溶液を、被検定水の呈色変化を目視で観察しながら少量づつシリンジを用いて注入した。終点にいたるまでの同メチレンブルー水溶液の総注入量は12.4mLであり、上記式7に各値を代入して求めた溶存水素濃度DHの実測値は3.32(mg/L)であった。本実施例25に係る被検定水の、各種物性値を表3に示すとともに、溶存水素濃度DHの実測値と実効値を図23に示す。
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(G) 実施例の考察
表3および図23によれば、溶存水素濃度DHの実測値と実効値のあいだには、実測値が高いときにはそれに応じて実効値も高くなることから、相応の相関性があることがわかる。また、参考例18、および、実施例20〜25の溶存水素濃度DHの実効値は、参考例17のDH実効値と比較して、いずれも1.3(mg/L)を超えるという高い濃度を示した。特に、実施例20〜25のDH実効値は、常温(20°C)かつ大気圧下での分子状水素の水への飽和溶解濃度がおよそ1.6(mg/L)であるのに対して、およそ2.5〜3.3(mg/L)というきわめて高い濃度を示した。
さて、ここで行った溶存水素濃度の定量分析試験では、いずれもあらかじめ活性炭処理した水(還元剤は添加せず)を使用しており、次亜塩素酸などの塩素系酸化物質はあらかじめ除去されているので、酸化剤として被検定水に残っているものは、酸素分子が主であると考えられる。なお、酸素分子は、活性炭でいったん除去されたとしても、被検定水が大気に触れると速やかに同水中に溶け込んでくるため、なんらかの還元剤を使用しない限りは、活性炭のみで除去することが難しい。
しかしながら、本発明で提案している抗酸化方法を適用する前提では、本願出願人が開発した還元電位水生成装置のように、溶存水素濃度をできるだけ高くする一方で、溶存酸素等の酸化物質濃度をできるだけ低く抑えることが、本発明に係る水素溶存水と触媒の組み合わせに係る抗酸化機能水由来の還元活性、抗酸化活性の発現を期する上で重要である。
そこで、本発明に係る溶存水素水を、本発明に係る酸化還元色素を用いた溶存水素濃度定量分析方法を用いて求めた溶存水素濃度DHの実効値の観点から定義してみると、本発明に係る溶存水素水としては、雰囲気圧力下で飽和濃度以上(例えば、1気圧下では1.6以上、2気圧下では3.2以上、3気圧下では4.8以上、……)のDH実効値を示すものが好ましい。さらにいえば、雰囲気圧力が1気圧のとき、溶存水素濃度DH実効値が1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上、2.5以上、2.6以上、2.7以上、2.8以上、2.9以上、3.0以上、3.1以上、3.2以上、3.3以上(いずれも単位はmg/L)の順序で、高いものほど好ましい。これは、本発明に係る水素溶存水と触媒の組み合わせに係る抗酸化機能水由来の還元活性、抗酸化活性の発現を高いレベルで期せるからである。
本知見は、電解処理水を含む水素溶存水における水素濃度定量分析方法と、同水素溶存水がもつ顕在抗酸化力の尺度と、をあらたに提案するものである。また、既存の溶存水素計による溶存水素濃度の計測では、その測定手順や取扱いが煩雑であり、測定精度の点でもじゅうぶんに満足できるものではなく、しかも、そのコストも非常に高価であったのに対し、本発明に係る酸化還元色素を用いた溶存水素濃度定量方法では、その測定手順や取扱いは比較的簡易であり、また、被検定水に含まれる酸化物質を除去すれば、測定精度の点でも分子状水素の粒子の数を酸化還元色素との化学反応を介して直接的に定量分析する原理であるから高精度であり、しかも、そのコストも非常に安価である。
XOD実験系におけるエピネフリン酸化法を用いたラジカル消去活性評価試験
次に、XOD実験系におけるエピネフリン酸化法を用いたラジカル消去活性評価試験方法について、下記(A)にて説明する。また、同試験方法を用いたときの本発明に係る抗酸化機能水(ntixidant−functioningater;以下、「AOW」と言う場合がある。)等が発現するラジカル消去活性について、AOWとして水素溶存水に貴金属コロイド触媒(Ptコロイド/Pdコロイド/Pt・Pd混合コロイド)を加えた例を挙げて、下記(B)にて各自の実施例と参考例をそれぞれ示す。なお、XOD実験系とは、酸素溶存溶液系において、キサンチンに生体酵素であるキサンチンオキシダーゼ(XOD)を作用させる過程を通じて、キサンチンの酸化により放出される電子によって酸素を1電子還元してスーパーオキサイドアニオンラジカル(以下、単に「(・O )」と言う場合がある。)を生成する実験系(以下、「XOD実験系」という。)を言う。
(A) XOD実験系におけるエピネフリン酸化法を用いたラジカル消去活性評価試験方法
(A−1) 発想の経緯
従来のフリーラジカルの測定法としては、例えば「フリーラジカルとくすり」(発行所 株式会社廣川書店 ISBN 4−567−49380−X)のp133−141に記載されている通り、チトクロムc還元法が知られている。
このチトクロムc還元法(図24参照)は、XOD実験系において、スーパーオキサイドアニオンラジカル(・O )による酸化型チトクロムc(フェリシトクロムc(Fe3+))の酸化型チトクロムc(フェロシトクロムc(Fe2+))への還元反応が、SODや抗酸化剤等の被検体により阻害されるのを、分光光度計による酸化型チトクロムcの吸収極大(波長;550nm)の経時変化を通してみるものであり、(・O )の1電子還元剤としての反応性を利用している。
この測定原理について詳しく述べると、チトクロムc還元法において、(・O )による酸化型チトクロムcの還元反応に優先して(または同時に)、抗酸化剤等の被検体が(・O )を還元消去すると、酸化型チトクロムcの還元量、つまり還元型チトクロムcの生成量が抑制(上昇傾向を抑えるか、下降傾向を示しはじめる。)される。すると、還元型チトクロムcの吸収極大(A550)も低減する。これを時間の要素も含めて考えると、単位時間当たりの還元型チトクロムcの吸収極大(A550)が、(・O )の消去量にともなって低減する。この吸収極大(A550)の推移を経時的に観察することにより、被検体のSOD様活性を測定することができる。
しかしながら、上記従来のチトクロムc還元法を用いたSOD様活性測定系では、被検体として例えば本発明に係る抗酸化機能水やアスコルビン酸などの顕著な還元力を有するものを用いた場合、高精度の測定結果が得られないのみならず、本来とは逆の測定結果を導出してしまうという問題があった。これは(・O )を還元剤として使用していることに由来する。すなわち、本発明のAOWやアスコルビン酸などは、(・O )を還元消去すると同時に、酸化型チトクロムcをも還元してしまう。その結果、例えば(・O )を全量還元消去すると同時に、その余力で酸化型チトクロムcをも還元してしまうことが考えられる。そうすると、高精度の測定結果が得られないのみならず、見かけ上のSOD様活性が低いといった本来とは逆の測定結果を導出してしまうおそれがあったのである。
そこで、本発明者らは、本発明に係る抗酸化機能水のラジカル消去活性評価試験に適したフリーラジカル反応試薬につき鋭意探索を進めた結果、還元型エピネフリンの酸化を用いることができるのではないか、との知見を得るに至った。
還元型エピネフリンは、スーパーオキサイドアニオンラジカル(・O )に酸化されると、赤色のアドレノクローム(酸化型エピネフリン)に変化し、その吸収極大(A480)が上昇する。このとき、(・O )は酸化剤として作用する。ちなみに、還元型エピネフリンは通常の酸素分子には酸化されにくく、例え酸化されたとしても赤色への呈色反応は示さない。つまり、還元型エピネフリンは酸素溶存溶液系でもその吸収極大(A480)が上昇しないことを実験的に確認済みである。これは、還元型エピネフリンが、通常の酸素分子(O)とスーパーオキサイドアニオンラジカル(・O )とを区別するためのフリーラジカル反応試薬として適していることを意味する。
かかるエピネフリン酸化法(図25参照)において、まず、XOD実験系にてあらかじめ適量の(・O )が生成されているとする。こうして生成された(・O )は、以下の連鎖反応に従い還元型エピネフリンを酸化型に変えていく。
RH + ・O +2H ⇒ ・RH + H
・RH + O ⇒ RH +・O + H
RH + ・O + H ⇒ ・RH + H
・RH + O ⇒ R + ・O + H
ただし、(RH )は還元型エピネフリン、(R)は酸化型エピネフリン(アドレノクローム)である。生理的pH付近では、還元型エピネフリンと(・O )との反応性は低いが、還元型エピネフリンを大量投与すれば、還元型エピネフリンと(・O )との2次反応速度が速まる。そこで、本エピネフリン酸化法では、還元型エピネフリンのモル濃度を、例えば約1mM程度の高濃度にしておくことが好ましい。さらに、還元型エピネフリンは、例えば鉄イオンなどの微量の遷移金属により容易に酸化されてしまう傾向がみられる。かかる外乱の影響を除くために、EDTA等のキレート剤を被検定液中に共存させておくことが必要である。
さてこのとき、(・O )による還元型エピネフリンの酸化反応に優先して(または同時に)、抗酸化剤等の被検体が(・O )を還元消去していくと、還元型エピネフリンの酸化量、つまり酸化型エピネフリンの生成量が緩やかに抑制されていく。すると、酸化型エピネフリンの吸収極大(A480)の上昇傾向が緩やかになっていく。これを時間の要素も含めて考えると、単位時間当たりの酸化型エピネフリンの吸収極大(A480)の上昇傾向が、(・O )の消去量にともなって緩やかになっていく。そこで、この吸収極大(A480)の推移を経時的に観察することにより、被検体のSOD様活性(ラジカル消去活性)を測定することができることになる。
具体的には、横軸に経過時間を、縦軸に吸光度(A480)を採ったグラフを考えると、SOD様活性は、単位時間(ΔT)当たりの吸光度(A480)の変化量(ΔA480)で表せる。つまり、同グラフの接線の傾き(ΔA/ΔT)がSOD様活性を表す。したがって、被検体でのSOD様活性グラフについて、正の傾き(右肩上がりの特性)が大きい場合にはSOD様活性が小さく、逆に、小さい場合には大きいと判断できる。また、負の傾き(右肩下がりの特性)が大きい場合にはSOD様活性が大きく、逆に、小さい場合には小さいと判断できる。ただし、正の傾きが小さい場合と、負の傾き小さい場合とを、ラジカル消去活性の高低の観点で比較すると、前者よりも後者のほうが、よりラジカル消去活性が高いということができる。
以上が、エピネフリン酸化法を用いたラジカル消去活性(SOD様活性)の測定原理である。
(A−2) 使用する試薬類
エピネフリン酸化法を用いたラジカル消去活性(SOD様活性)試験に使用する試薬類を以下に列挙する。
▲1▼ダルベッコりん酸緩衝生理食塩末(PBS)・・・和光純薬工業製
▲2▼キサンチン(2,6−ジオキソプリン)・・・和光純薬工業製
▲3▼キサンチンオキシダーゼ懸濁液(バターミルク由来)・・・和光純薬工業製
▲4▼EDTA−2Na・2水和物・・・同仁化学研究所製・和光純薬工業販売
▲5▼1mol/L水酸化ナトリウム溶液・・・和光純薬工業製
▲6▼L(+)−アスコルビン酸・・・和光純薬工業製
▲7▼(±)エピネフリン(dl−エピネフリン)(dl−アドレナリン)・・・和光純薬工業製
(A−3) 試薬の調製方法
前記(A−2)で列挙した試薬の調製方法は下記の通りである。
▲1▼EDTA入りPBS緩衝原液の調製
蒸留水100mLに、ダルベッコりん酸緩衝生理食塩末(以下、「PBS」という。)500mL用2袋を溶解し、これを2等分する。一方の50mLに、EDTA−2Naを0.19g溶解する。これをEDTA原液とする。このEDTA原液を0.5mL、EDTAなしの溶液を49.5mLそれぞれ採り、これらを混合する。
このとき得られる混合溶液が、EDTA(1.9mg)入りPBS緩衝原液である。これは、PBS濃度からいうと、10倍希釈して使うものである。もし、被検定水中に金属イオン種が多い場合には、EDTA原液を、例えば直接10倍希釈して使用しても良い。この場合、EDTAの濃度が高いため、測定精度低下要因たる金属イオンをじゅうぶんに除去することができる。なお、EDTA入りPBS緩衝原液は、溶液のpHを生理的液性である約7.4付近に固定すること、並びに、金属イオンによる測定精度低下を未然に防ぐ目的で調製されている。
▲2▼1.5mMキサンチン溶液の調製
蒸留水350mLに、キサンチン=0.228≒0.23gおよび1(mol/L)水酸化ナトリウム水溶液80滴を加えて、キサンチンを溶解する。それを35mL採り、EDTA入りPBS緩衝原液を加えて100mLとする。
▲3▼キサンチンオキシダーゼ溶液の調製
キサンチンオキシダーゼ懸濁液を、EDTA入りPBS緩衝原液で100倍希釈する。これは、実験実施ごとに調製する。
▲4▼エピネフリン溶液の調製
スターラー用の攪拌子とともに、蒸留水100mLをバイアルびんに入れてゴム栓をし、ゴム栓には排気用の注射針と、窒素ガスボンベに通じた注射針を刺しておく。この状態で、蒸留水入りバイアルびんをスターラー台に乗せて、強く攪拌しながら、蒸留水に窒素ガスを封入し、蒸留水内部を完全に窒素ガス置換する。この窒素ガス置換処理を30分間行う。その後、エピネフリンを0.15グラム投入し、栓をして、スターラーにて緩やかに攪拌し、窒素ガスを封入しておく。この窒素ガス置換処理は実験終了まで継続する。これがエピネフリン溶液の調製である。かかる調製におけるポイントは、エピネフリン添加前では攪拌を強くし、エピネフリン添加後では攪拌を緩やかにすることである。
(A−4) 試験手順
従来のXOD実験系では、すべての試薬類と被検定水溶液を、順次セルに添加し、最後にキサンチンオキシダーゼ(XOD)を添加して、このXODの添加により反応を開始させるとともに、分光光度計による測定を開始させていた。
ところが、かかる従来の方法では、被検定水溶液を添加したときには、(・O )がまだじゅうぶんに生成されておらず、この時点では(・O )の生成原料である酸素分子がそのままの状態で存在している。つまり、酸素分子はXODの添加時点から経時的に(・O )へと変化していく結果、(・O )の生成量を増大させていくので、被検定液の添加直後では適量の(・O )が得られていない。また、従来の方法では、(・O )の生成原料である溶存酸素の量が明確に意識されていないので、毎回同じ量の(・O )が生成しているか否かが明確ではなかった。
これらを考慮すると、まず、EDTA入りPBS緩衝原液と、キサンチン溶液と、キサンチンオキシダーゼ溶液と、酸素供給用の蒸留水とを先にセルに添加して混合し、一定時間経過した後、つまり、適量の(・O )を生成させた後に、被検定水と、エピネフリン溶液とを添加して測定を開始することが望ましいであろうという考えに至った。
そこで、本エピネフリン酸化法では、以下の手順に従って、各試薬溶液又は被検定水等を順次セル内に投入していく。また、必要に応じた待機時間を入れることにする。なお、セルの容積は3mLであり、このうちのそれぞれ約1/3を、被検定水と酸素供給用の蒸留水が占め、残りの約1/3を、EDTA入りpH緩衝液等、キサンチン溶液、キサンチンオキシダーゼ溶液、及びエピネフリン溶液が占めている。
▲1▼EDTA入りPBS緩衝原液を300μL添加する。
▲2▼キサンチン溶液を300μL添加する。
▲3▼酸素供給用の蒸留水を900μL(セル容積の約1/3の量)添加する。
▲4▼キサンチンオキシダーゼ溶液を100μL添加する。
▲5▼適量の(・O )を生成させるため、5分間待つ。
▲6▼被検定水(液)を1mL(セル容積の1/3の量)添加する。
▲7▼エピネフリン溶液を400μL添加する。
▲8▼その後速やかに、分光光度計での吸光度(A480)の経時変化測定を開始する。
▲9▼セル内における試薬類の局所的な濃度勾配差を平準化するため、140秒間待つ。つまり、測定開始から140秒間経過後までの測定データを、後述するラジカル消去活性特性グラフから原則として除く。経時変化の観察時間は、上記▲9▼の待機時間140秒を除き15分間と設定した。これは、例えば5分や10分間程度では、白金とパラジウム間のラジカル消去活性に関する明確な差異傾向が認められない場合があるからである。
なお、実験を通して分かったことであるが、各試薬の添加時期は、従来の全部まとめて添加し、最後にキサンチンオキシダーゼを添加して、反応・測定を開始する方法でも、ある程度のラジカル消去活性傾向は把握できる。ただ、好ましくは、XOD実験系にて予め適量の(・O )を生成しておいた後に、被検定液を添加したほうが、実際のラジカル消去活性に近い傾向が把握できると考える。また、従来の方法では、キサンチンオキシダーゼの製造ロットにもよるが、(・O )を適量生成するのに比較的長時間を要する傾向があるので、短い時間で被検定水等のラジカル消去活性を把握することは難しい。特に、白金とパラジウムの触媒活性差異を把握する用途には、従来の方法では精度が悪い。このような実務的な要素も含めて、各試薬の添加タイミング乃至待機タイミング等は、上記のように行うことにする。
(B) XOD実験系におけるエピネフリン酸化法を用いたラジカル消去活性評価試験方法による実施例と参考例の開示
(参考例19)
被検定水として、蒸留水(和光純薬製)を採用したときの、(A−4)にて記載の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを参考例19とする。なお、本参考例19のラジカル消去活性測定データについて、製造ロットの異なるキサンチンオキシダーゼを使用した試験条件では、製造ロット間でそのラジカル消去活性特性がわずかに異なる場合があることを付言しておく。
(参考例20)
被検定水として、水素ガス置換した蒸留水(和光純薬製)を採用したときの、参考例19と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを参考例20とする。なお、本参考例20のラジカル消去活性測定データについて、参考例19と同様に、製造ロットの異なるキサンチンオキシダーゼを使用した試験条件では、製造ロット間でそのラジカル消去活性特性がわずかに異なる場合があることを付言しておく。
被検定水として、蒸留水(和光純薬株式会社製、以下同じ。)に、実施例3〜5に記載のPt基準液をPtコロイド濃度が48μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換した抗酸化機能水(AOW)を採用したときの、参考例19と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例26とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液をPtコロイド濃度が96μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例26と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例27とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液をPtコロイド濃度が192μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例26と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例28とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液をPtコロイド濃度が384μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例26と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例28とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液をPtコロイド濃度が768μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例26と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例30とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例6〜8に記載のPd基準液をPdコロイド濃度が48μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換した抗酸化機能水(AOW)を採用したときの、参考例19と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例31とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例31と同様のPd基準液をPdコロイド濃度が96μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例31と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例27とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例31と同様のPd基準液をPdコロイド濃度が192μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例31と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例33とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例31と同様のPd基準液をPdコロイド濃度が384μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例31と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例34とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例31と同様のPd基準液をPdコロイド濃度が768μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例31と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例35とする。
被検定水として、蒸留水に、前述の難波氏らによる論文「Ptコロイドの作り方と使い方」を元に本件出願人が製造した、その粒径分布が約1〜2nmである白金コロイド溶液を、Ptコロイド濃度が66μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、参考例19と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例36とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例36と同様の白金コロイド溶液をPtコロイド濃度が96μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例36と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例37とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例36と同様の白金コロイド溶液をPtコロイド濃度が144μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例36と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例38とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例36と同様の白金コロイド溶液をPtコロイド濃度が192μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例36と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例39とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例36と同様の白金コロイド溶液をPtコロイド濃度が384μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例36と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例40とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例36と同様の白金コロイド溶液をPtコロイド濃度が768μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例36と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例41とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液と実施例31と同様のPd基準液とがモル比で1:2となるように混合調製された(Pt+Pd)混合コロイドを、その濃度が96μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、参考例19と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例42とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例42と同様の(Pt+Pd)混合コロイドを、その濃度が192μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例42と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例43とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例42と同様の(Pt+Pd)混合コロイドを、その濃度が384μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例42と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例44とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例42と同様の(Pt+Pd)混合コロイドを、その濃度が768μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例42と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例45とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液と実施例31と同様のPd基準液とがモル比で1:5となるように混合調製された(Pt+Pd)混合コロイドを、その濃度が144μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、参考例19と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例46とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液と実施例31と同様のPd基準液とがモル比で1:10となるように混合調製された(Pt+Pd)混合コロイドを、その濃度が240μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例46と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例47とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液と実施例31と同様のPd基準液とがモル比で1:15となるように混合調製された(Pt+Pd)混合コロイドを、その濃度が336μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例46と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例48とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液と実施例31と同様のPd基準液とがモル比で1:20となるように混合調製された(Pt+Pd)混合コロイドを、その濃度が432μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例46と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例49とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液と実施例31と同様のPd基準液とがモル比で1:25となるように混合調製された(Pt+Pd)混合コロイドを、その濃度が528μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例46と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例50とする。
(参考例21)
被検定水として、水素ガス置換した蒸留水を採用したときの、(A−4)にて記載の手順の一部を改変した試験手順に従うラジカル消去活性測定データを参考例21とする。上記試験手順の改変部分は、キサンチン溶液300μLと、キサンチンオキシダーゼ溶液100μLとを試験セル内へ添加することに代えて、つまり、(・O )の生成系を除去した代わりに、酸素供給用の蒸留水を900μLから1300μLに増量した点である。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液と実施例31と同様のPd基準液とがモル比で1:5となるように混合調製された(Pt+Pd)混合コロイドを、その濃度が144μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、(A−4)にて記載の手順の一部を改変した試験手順に従うラジカル消去活性測定データを参考例51とする。上記試験手順の改変部分は、参考例21と同様である。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液と実施例31と同様のPd基準液とがモル比で1:10となるように混合調製された(Pt+Pd)混合コロイドを、その濃度が240μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例51と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例52とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液と実施例31と同様のPd基準液とがモル比で1:15となるように混合調製された(Pt+Pd)混合コロイドを、その濃度が336μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例51と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例53とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液と実施例31と同様のPd基準液とがモル比で1:20となるように混合調製された(Pt+Pd)混合コロイドを、その濃度が432μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例51と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例54とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液と実施例31と同様のPd基準液とがモル比で1:25となるように混合調製された(Pt+Pd)混合コロイドを、その濃度が528μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例51と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例55とする。
(参考例22)
和光純薬工業株式会社製の標準緩衝液6.86(リン酸塩水溶液)を精製水で10倍希釈したpH緩衝水溶液(基本水6.86)を被検定水とし、この被検定水の、(A−4)にて記載の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを参考例22とする。
(参考例23)
参考例22と同様の基本水6.86を、毎分1.5リットルの流量で5A定電流の電解条件にて連続通水式に電解処理した触媒無添加電解処理水を被検定水とし、この被検定水の、参考例22と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを参考例23とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例26と同様のPt基準液を、その濃度が48μg/Lとなる量だけ加えたPtコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPtコロイド入り基本水6.86を、参考例23と同様の電解条件にて連続通水式に電解処理した触媒前添加1パス電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、参考例22と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例56とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例26と同様のPt基準液を、その濃度が96μg/Lとなる量だけ加えたPtコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPtコロイド入り基本水6.86を、参考例23と同様の電解条件にて連続通水式に電解処理した触媒前添加1パス電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例56と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例57とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例26と同様のPt基準液を、その濃度が192μg/Lとなる量だけ加えたPtコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPtコロイド入り基本水6.86を、参考例23と同様の電解条件にて連続通水式に電解処理した触媒前添加1パス電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例56と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例58とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例26と同様のPt基準液を、その濃度が384μg/Lとなる量だけ加えたPtコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPtコロイド入り基本水6.86を、参考例23と同様の電解条件にて連続通水式に電解処理した触媒前添加1パス電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例56と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例59とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例26と同様のPt基準液を、その濃度が768μg/Lとなる量だけ加えたPtコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPtコロイド入り基本水6.86を、参考例23と同様の電解条件にて連続通水式に電解処理した触媒前添加1パス電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例56と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例60とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例31と同様のPd基準液を、その濃度が48μg/Lとなる量だけ加えたPdコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPdコロイド入り基本水6.86を、参考例23と同様の電解条件にて連続通水式に電解処理した触媒前添加1パス電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、参考例22と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例61とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例31と同様のPd基準液を、その濃度が96μg/Lとなる量だけ加えたPdコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPdコロイド入り基本水6.86を、参考例23と同様の電解条件にて連続通水式に電解処理した触媒前添加1パス電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例61と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例62とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例31と同様のPd基準液を、その濃度が192μg/Lとなる量だけ加えたPdコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPdコロイド入り基本水6.86を、参考例23と同様の電解条件にて連続通水式に電解処理した触媒前添加1パス電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例61と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例63とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例31と同様のPd基準液を、その濃度が384μg/Lとなる量だけ加えたPdコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPdコロイド入り基本水6.86を、参考例23と同様の電解条件にて連続通水式に電解処理した触媒前添加1パス電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例61と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例64とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例31と同様のPd基準液を、その濃度が768μg/Lとなる量だけ加えたPdコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPdコロイド入り基本水6.86を、参考例23と同様の電解条件にて連続通水式に電解処理した触媒前添加1パス電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例61と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例65とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例26と同様のPt基準液を、その濃度が48μg/Lとなる量だけ加えたPtコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPtコロイド入り基本水6.86を、毎分1.5リットルの流量で5A定電流の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した触媒前添加循環電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、参考例22と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例66とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例26と同様のPt基準液を、その濃度が96μg/Lとなる量だけ加えたPtコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPtコロイド入り基本水6.86を、実施例66と同様の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した触媒前添加循環電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例66と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例67とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例26と同様のPt基準液を、その濃度が192μg/Lとなる量だけ加えたPtコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPtコロイド入り基本水6.86を、実施例66と同様の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した触媒前添加循環電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例66と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例68とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例26と同様のPt基準液を、その濃度が384μg/Lとなる量だけ加えたPtコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPtコロイド入り基本水6.86を、実施例66と同様の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した触媒前添加循環電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例66と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例69とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例26と同様のPt基準液を、その濃度が768μg/Lとなる量だけ加えたPtコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPtコロイド入り基本水6.86を、実施例66と同様の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した触媒前添加循環電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例66と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例70とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例31と同様のPd基準液を、その濃度が48μg/Lとなる量だけ加えたPdコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPdコロイド入り基本水6.86を、毎分1.5リットルの流量で5A定電流の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した触媒前添加循環電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、参考例22と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例71とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例31と同様のPd基準液を、その濃度が96μg/Lとなる量だけ加えたPdコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPdコロイド入り基本水6.86を、実施例66と同様の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した触媒前添加循環電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例71と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例72とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例31と同様のPd基準液を、その濃度が192μg/Lとなる量だけ加えたPdコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPdコロイド入り基本水6.86を、実施例66と同様の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した触媒前添加循環電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例71と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例73とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例31と同様のPd基準液を、その濃度が384μg/Lとなる量だけ加えたPdコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPdコロイド入り基本水6.86を、実施例66と同様の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した触媒前添加循環電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例71と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例74とする。
参考例22と同様の基本水6.86を1リットル採り、これに実施例31と同様のPd基準液を、その濃度が768μg/Lとなる量だけ加えたPdコロイド入り基本水6.86を調製する。こうして調製したPdコロイド入り基本水6.86を、実施例66と同様の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した触媒前添加循環電解処理水を被検定水(AOW)とし、この被検定水(AOW)の、実施例71と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例75とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例26と同様のPt基準液をPtコロイド濃度が384μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、参考例21と同様に改変した試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例76とする。
被検定水として、蒸留水に、実施例31と同様のPd基準液をPdコロイド濃度が384μg/Lとなる量だけ加えた後、これを水素ガス置換したAOWを採用したときの、実施例76と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを実施例77とする。
(参考例24)
被検定水として、蒸留水にアスコルビン酸(AsA)を、その濃度が35.5μMとなる量だけ加えたAsA水溶液を採用したときの、参考例19と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを参考例24とする。
(参考例25)
被検定水として、蒸留水にアスコルビン酸(AsA)を、その濃度が71μMとなる量だけ加えたAsA水溶液を採用したときの、参考例19と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを参考例25とする。
(参考例26)
被検定水として、蒸留水にアスコルビン酸(AsA)を、その濃度が142μMとなる量だけ加えたAsA水溶液を採用したときの、参考例19と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを参考例26とする。
(参考例27)
被検定水として、蒸留水にアスコルビン酸(AsA)を、その濃度が284μMとなる量だけ加えたAsA水溶液を採用したときの、参考例19と同様の試験手順に従うラジカル消去活性測定データを参考例27とする。
(C) 実施例の考察
参考例19、20と、実施例26〜30とを対比している図26は、Ptコロイド(粒径分布が2〜4nm)濃度を主パラメータとした、Ptコロイド触媒含有水素溶存水(AOW)が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す。ここで、参考例19、20の両者を比較対照としたのは、3mL容量の試験セルのうち1/3の容量を占める被検定水(液)から酸素を除去したときの、ラジカル消去活性特性の傾向を把握しておく主旨である。なお、被検定水として、参考例20の水素ガス置換した蒸留水に代えて、窒素ガス置換した蒸留水を採用した場合であっても、両者のラジカル消去活性の経時変化特性はまったく重なることを、図示しない実験により確認済みである。これは、酸素の除去程度が一致している限りにおいて、比較対照としてのガスの種類は、ラジカル消去活性の経時変化特性に影響を及ぼさないことを意味する(以下同様)。さて、同図によれば、参考例19、20のラジカル消去活性特性(以下、比較例のものを「対照特性」と省略する。)と比較したとき、分光光度計での吸光度(A480)の経時変化測定開始時点(以下、「測定開始時点」と省略する。)から約680秒経過後において、実施例26〜30のAOWが呈するラジカル消去活性特性(以下、実施例のものを「主題特性」と省略する。)は、いずれの濃度でも対照特性を有意に下回っていることがわかる。つまり、実施例26〜30のAOWは、ある程度の経過時間さえおけば、広範な濃度範囲において良好なラジカル消去活性を発現しはじめることがわかる。また、実施例26〜30の主題特性をよく解析すると、Ptコロイドの濃度依存的に、濃度が濃いほどラジカル消去に要する時間が短くなっている。つまり、AOWが発現するラジカル消去活性は、Ptコロイドの濃度依存的に高まることがわかる。なお、貴金属触媒としてPtコロイドを採用した場合には、実施例26〜30の主題特性では、いずれの濃度でも対照特性を有意に上回る時間領域が存在する。この理由については、後述の「パラジウム(Pd)コロイドの対酸素難反応性・触媒活性・水素吸蔵能力」の項目部分で言及し、ここではこれ以上触れないこととする(以下同様)。
参考例19、20と、実施例31〜35とを対比している図27は、Pdコロイド濃度を主パラメータとした、Pdコロイド触媒含有水素溶存水(AOW)が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す。同図によれば、参考例19、20の対照特性と比較したとき、測定開始時点からほとんどすべての時間領域において、実施例31〜35の主題特性は、低濃度のもの(実施例31〜33)では対照特性とほぼ同等であるものの、高濃度(実施例34〜35)のものでは総じて対照特性を有意に下回る傾向があることがわかる。つまり、実施例31〜35のAOWは、高濃度のもの(実施例34〜35)では良好なラジカル消去活性を発現することがわかる。また、かかる実施例34〜35の主題特性をよく解析すると、Pdコロイドの濃度依存的に、濃度が濃いほどラジカル消去に要する時間が短くなっている。つまり、AOWが発現するラジカル消去活性は、Pdコロイドの濃度依存的に高まることがわかる。特に、高濃度のもの(実施例34〜35)の主題特性では、測定開始時点からそれぞれ約440秒、並びに約230秒の各時間経過後において、吸光度の下降傾向を有意に示しはじめる。この理由を推察すると、高濃度(実施例34〜35)のものでは、(・O )の存在濃度(存在量)があたかもスイッチのように働いて、これを積極的に消去しはじめるのではないかと推察される。なお、貴金属触媒としてPdコロイドを採用した場合には、実施例31〜35の主題特性が、いずれの濃度でも概ね対照特性を下回っている。この理由については、後述の「パラジウム(Pd)コロイドの対酸素難反応性・触媒活性・水素吸蔵能力」の項目部分で言及し、ここではこれ以上触れないこととする(以下、同様)。
参考例19、20と、実施例36〜41とを対比している図28は、Ptコロイド(粒径分布が1〜2nm)濃度を主パラメータとした、Ptコロイド触媒含有水素溶存水(AOW)が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す。同図によれば、参考例19、20の対照特性と比較したとき、測定開始時点から約920秒経過後において、実施例36〜41の主題特性は、いずれの濃度でも対照特性を有意に下回っていることがわかる。つまり、実施例36〜41のAOWは、ある程度の経過時間さえおけば、広範な濃度範囲において良好なラジカル消去活性を発現しはじめることがわかる。また、実施例36〜41の主題特性をよく解析すると、Ptコロイドの濃度依存的に、濃度が濃いほどラジカル消去に要する時間が短くなっている。つまり、AOWが発現するラジカル消去活性は、Ptコロイドの濃度依存的に高まることがわかる。
ここで、Ptコロイドの粒径パラメータ(粒径分布が2〜4nm/粒径分布が1〜2nm)とラジカル消去活性の関係を明らかにするために、粒径分布が2〜4nmのPtコロイド濃度を主パラメータとした図26と、粒径分布が1〜2nmのPtコロイド濃度を主パラメータとした図28を対比してみる。濃度パラメータの影響を除くために、例えば、Pt濃度パラメータが共通(96μg/L)の実施例27と実施例37を対比してみる。実施例27では、測定開始時点から約320秒経過付近で吸光度のピークを迎え、その後緩やかに主題特性が下降傾向を示してゆき、約440秒経過付近でいったんほとんど0まで吸光度が抑制されている。これに対し、実施例37では、測定開始時点から約760秒経過付近で吸光度のピークを迎え、その後緩やかに主題特性が下降傾向を示してゆくが、測定時間領域内では、ほとんど0まで吸光度が抑制されるには至らない。次に、Pt濃度パラメータが共通(384μg/L)の実施例29と実施例40を対比してみる。実施例29では、測定開始時点から約170秒経過付近で主題特性がほとんど0まで抑制され、その後も抑制傾向が継続している。これに対し、実施例40では、測定開始時点から約260秒経過付近で吸光度のピークを迎え、その後急速に主題特性が下降傾向を示してゆき、約340秒経過付近でほとんど0まで吸光度が抑制されている。これらを総合的に鑑みると、本発明に係る抗酸化機能水に用いるPtコロイド触媒としては、粒径分布が1〜2nmのものと比較して、粒径分布が2〜4nmのものの方が、良好なラジカル消去活性を発現(吸光度をほとんど0まで抑制するのに要する時間が短いことに由来)するという観点から、より好ましいといえる。
参考例19、20と、実施例42〜45とを対比している図29は、(Pt+Pd)混合コロイド(粒径分布が2〜4nm、Pt:Pdの混合モル比が1:2)濃度を主パラメータとした、(Pt+Pd)混合コロイド触媒含有水素溶存水(AOW)が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す。同図によれば、参考例19、20の対照特性と比較したとき、測定開始時点から約900秒経過後において、実施例42〜45の主題特性は、いずれの濃度でも対照特性を有意に下回っていることがわかる。つまり、実施例42〜45のAOWは、ある程度の経過時間さえおけば、広範な濃度範囲において良好なラジカル消去活性を発現しはじめることがわかる。また、実施例42〜45の主題特性をよく解析すると、(Pt+Pd)混合コロイドの濃度依存的に、濃度が濃いほどラジカル消去に要する時間が短くなっている。つまり、AOWが発現するラジカル消去活性は、(Pt+Pd)混合コロイドの濃度依存的に高まることがわかる。
参考例19、20と、実施例46〜50とを対比している図30は、(Pt+Pd)混合コロイド(粒径分布が2〜4nm)濃度を主パラメータとし、Pt:Pdの混合モル比を副主パラメータとした、(Pt+Pd)混合コロイド触媒含有水素溶存水(AOW)が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す。同図によれば、参考例19、20の対照特性と比較したとき、測定開始時点から約520秒経過後において、実施例46〜50の主題特性は、いずれの濃度でも対照特性を有意に下回っていることがわかる。つまり、実施例46〜50のAOWは、ある程度の経過時間さえおけば、広範な濃度範囲において良好なラジカル消去活性を発現しはじめることがわかる。また、実施例46〜50の主題特性をよく解析すると、(Pt+Pd)混合コロイドの濃度依存的に、濃度が濃いほどラジカル消去に要する時間が短くなっている。つまり、AOWが発現するラジカル消去活性は、(Pt+Pd)混合コロイドの濃度依存的に高まることがわかる。
参考例21と、実施例51〜55とを対比している図31は、(Pt+Pd)混合コロイド(粒径分布が2〜4nm)濃度を主パラメータとし、Pt:Pdの混合モル比を副主パラメータとした、(Pt+Pd)混合コロイド触媒含有水素溶存水(AOW)が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す。なお、参考例21と、実施例46〜50では、(・O )の生成系が除去されている。同図によれば、参考例21の対照特性と比較したとき、実施例51〜55の主題特性では、(・O )の生成系が除去されているにもかかわらず、(・O )の生成傾向が認められる。この点については、後述の図37に関する説明部分等で言及するため、ここではこれ以上触れないが、この(・O )の生成傾向は、(Pt+Pd)混合コロイドの濃度依存的に、濃度が濃いほど抑制されている。つまり、AOWが発現するラジカル消去活性は、(Pt+Pd)混合コロイドの濃度依存的に高まることがわかる。また、後述の図37に関する現象面等を総合的に勘案すると、Pdコロイドの混合モル比率が高くなるほど、(・O )の生成傾向が抑制されていると推断することができる。
参考例22、23と、実施例56〜60とを対比している図32は、Ptコロイド(粒径分布が2〜4nm)濃度を主パラメータとした、Ptコロイド触媒前添加1パス電解処理水(AOW)が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す。同図によれば、実施例56〜60の主題特性は、低濃度のもの(実施例56〜57)では対照特性とほぼ同等であるものの、高濃度(実施例58〜60)のものでは、測定開始時点から約740秒経過後において、いずれの濃度でも対照特性を有意に下回っていることがわかる。つまり、実施例58〜60のAOWは、ある程度の経過時間さえおけば、広範な濃度範囲において良好なラジカル消去活性を発現しはじめることがわかる。また、かかる実施例58〜60の主題特性をよく解析すると、Ptコロイドの濃度依存的に、濃度が濃いほどラジカル消去に要する時間が短くなっている。つまり、AOWが発現するラジカル消去活性は、Ptコロイドの濃度依存的に高まることがわかる。
参考例22、23と、実施例61〜65とを対比している図33は、Pdコロイド(粒径分布が2〜4nm)濃度を主パラメータとした、Pdコロイド触媒前添加1パス電解処理水(AOW)が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す。同図によれば、実施例61〜65の主題特性は、低濃度のもの(実施例61〜62)では対照特性とほぼ同等であるものの、高濃度(実施例63〜65)のものでは、測定開始時点から約320秒経過後において、いずれの濃度でも対照特性を有意に下回っていることがわかる。つまり、実施例63〜65のAOWは、ある程度の経過時間さえおけば、広範な濃度範囲において良好なラジカル消去活性を発現しはじめることがわかる。また、かかる実施例63〜65の主題特性をよく解析すると、Pdコロイドの濃度依存的に、濃度が濃いほどラジカル消去に要する時間が短くなる傾向が認められる。つまり、AOWが発現するラジカル消去活性は、Pdコロイドの濃度依存的に高まることがわかる。特に、最も高濃度(実施例65)の主題特性では、測定開始時点から約830秒経過後において、吸光度の下降傾向を有意に示しはじめる。この理由を推察すると、高濃度(実施例65)のものでは、(・O )の存在濃度(存在量)があたかもスイッチのように働いて、これを積極的に消去しはじめるのではないかと推察される。
参考例22、23と、実施例66〜70とを対比している図34は、Ptコロイド(粒径分布が2〜4nm)濃度を主パラメータとした、Ptコロイド触媒前添加循環電解処理水(AOW)が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す。同図によれば、実施例56〜60の主題特性は、低濃度のもの(実施例66〜67)では対照特性とほぼ同等であるものの、高濃度(実施例68〜70)のものでは、測定開始時点から約700秒経過後において、いずれの濃度でも対照特性を有意に下回っていることがわかる。つまり、実施例68〜70のAOWは、ある程度の経過時間さえおけば、広範な濃度範囲において良好なラジカル消去活性を発現しはじめることがわかる。また、かかる実施例68〜70の主題特性をよく解析すると、Ptコロイドの濃度依存的に、濃度が濃いほどラジカル消去に要する時間が短くなっている。つまり、AOWが発現するラジカル消去活性は、Ptコロイドの濃度依存的に高まることがわかる。
参考例22、23と、実施例71〜75とを対比している図35は、Pdコロイド(粒径分布が2〜4nm)濃度を主パラメータとした、Pdコロイド触媒前添加循環電解処理水(AOW)が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す。同図によれば、実施例71〜75の主題特性は、低濃度のもの(実施例71〜72)では、測定開始時点から約950秒経過後において、わずかな下降傾向を示しはじめる一方、高濃度(実施例73〜75)のものでは、測定開始時点から約650秒経過後において、いずれの濃度でも対照特性を有意に下回っていることがわかる。つまり、実施例71〜75のAOWは、ある程度の経過時間さえおけば、広範な濃度範囲において良好なラジカル消去活性を発現しはじめることがわかる。また、かかる実施例71〜75の主題特性をよく解析すると、Pdコロイドの濃度依存的に、濃度が濃いほどラジカル消去に要する時間が短くなる傾向が認められる。つまり、AOWが発現するラジカル消去活性は、Pdコロイドの濃度依存的に高まることがわかる。特に、高濃度(実施例73〜75)のものでは、測定開始時点からそれぞれ約650秒、約420秒、並びに約230秒の各経過後において、吸光度の下降傾向を有意に示しはじめる。この理由を推察すると、高濃度(実施例73〜75)のものでは、(・O )の存在濃度(存在量)があたかもスイッチのように働いて、これを積極的に消去しはじめるのではないかと推察される。
ここで、Ptコロイド触媒における電解条件パラメータ(1パス電解/循環電解)とラジカル消去活性の関係を明らかにするために、Ptコロイド触媒前添加1パス電解処理水を被検定水とした図32と、Ptコロイド触媒前添加循環電解処理水を被検定水とした図34を対比してみる。濃度パラメータの影響を除くために、例えば、Pt濃度パラメータが共通(192μg/L)の実施例58と実施例68を対比してみる。実施例58では、測定開始時点から約680秒経過付近で吸光度のピークを迎え、その後緩やかに主題特性が下降傾向を示してゆき、約880秒経過付近以降でほとんど0まで吸光度が抑制されている。これに対し、実施例68では、測定開始時点から約620秒経過付近で吸光度のピークを迎え、その後緩やかに主題特性が下降傾向を示してゆき、約830秒経過付近以降でほとんど0まで吸光度が抑制されている。次に、Pt濃度パラメータが共通(384μg/L)の実施例59と実施例69を対比してみる。実施例59では、測定開始時点から約530秒経過付近で吸光度のピークを迎え、その後緩やかに主題特性が下降傾向を示してゆき、約660秒経過付近以降でほとんど0まで吸光度が抑制されている。これに対し、実施例69では、測定開始時点から約400秒経過付近で吸光度のピークを迎え、その後緩やかに主題特性が下降傾向を示してゆき、約500秒経過付近以降でほとんど0まで吸光度が抑制されている。これらを総合的に鑑みると、本発明に係る抗酸化機能水を生成するための電解条件(ただし、Ptコロイド触媒前添加電解)としては、1パス電解のものと比較して、循環電解のものの方が、良好なラジカル消去活性を発現(吸光度をほとんど0まで抑制するのに要する時間が短いことに由来)するという観点から、より好ましいといえる。
一方、Pdコロイド触媒における電解条件パラメータ(1パス電解/循環電解)とラジカル消去活性の関係を明らかにするために、Pdコロイド触媒前添加1パス電解処理水を被検定水とした図33と、Pdコロイド触媒前添加循環電解処理水を被検定水とした図35を対比してみる。濃度パラメータの影響を除くために、例えば、Pd濃度パラメータが共通(192μg/L)の実施例63と実施例73を対比してみる。実施例63では、参考例22、23の対照特性と比較して、測定開始時点からすべての時間領域において、その主題特性が下回りつつも、緩やかな上昇傾向を示している。これに対し、実施例73の主題特性では、測定開始時点から約650秒経過付近(吸光度ピーク)にいたるまで緩やかな上昇傾向を辿った後、一転して緩やかに下降傾向を示してゆき、約860秒経過付近以降でほとんど0まで吸光度が抑制されている。次に、Pd濃度パラメータが共通(768μg/L)の実施例65と実施例75を対比してみる。実施例65では、測定開始時点から約680〜800秒経過付近(吸光度ピーク)にいたるまでごく緩やかな上昇傾向を辿った後、一転して緩やかに下降傾向を示してゆく。これに対し、実施例75では、測定開始時点にて吸光度のピークを迎え、その後徐々に主題特性が下降傾向を示してゆき、約320秒経過付近以降でほとんど0まで吸光度が抑制されている。これらを総合的に鑑みると、本発明に係る抗酸化機能水を生成するための電解条件(ただし、Pdコロイド触媒前添加電解)としては、1パス電解のものと比較して、循環電解のものの方が、良好なラジカル消去活性を発現(吸光度をほとんど0まで抑制するのに要する時間が短いことに由来)するという観点から、より好ましいといえる。
参考例19、20と、参考例24〜27とを対比している図36は、AsA水溶液濃度を主パラメータとした、AsA水溶液が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す。同図によれば、参考例24〜27のAsA水溶液が呈するラジカル消去活性特性は、いずれの濃度でも参考例19、20の特性を下回っていることがわかる。つまり、参考例24〜27のAsA水溶液は、従来知られているとおり、ひろい濃度範囲にわたってラジカル消去活性を発現することが確認できた。また、参考例24〜27のAsA水溶液が発現するラジカル消去活性は、これも従来知られているとおり、濃度依存的に高まることが確認できた。なお、かかるAsA水溶液が発現するラジカル消去活性と、本発明に係る抗酸化機能水が発現するラジカル消去活性を比較してみると、例えば実施例75の抗酸化機能水では、参考例24のAsA水溶液をはるかに凌駕し、参考例25〜27のAsA水溶液にも匹敵するラジカル消去活性を発現していることがわかる。
パラジウム(Pd)コロイドの対酸素難反応性・触媒活性・水素吸蔵能力
本発明に係る抗酸化方法、抗酸化機能水およびその用途を、例えば生体などの酸素溶存溶液系で実施しようと試みたとき、大きな障壁となるのが酸素の存在である。特に生体では、酸素は栄養素を酸化してエネルギーを獲得する目的で、または、生体にとって必須な各種の酸素添加反応を行う目的で用いられる関係上、酸素が豊富に存在している。ここでの問題の本質は、抗酸化機能水中に溶存する水素を、貴金属コロイド触媒を介して酸素が消費すること、換言すれば、貴金属コロイド触媒を介して水素と酸素が反応してふつうの水に戻ること、並びに、酸素自身が貴金属コロイド触媒を介して活性化された水素によって1電子還元されることで消去対象である(・O )を逆に生成してしまうことに由来するラジカル消去活性の減衰である。この命題に係る現象は、触媒活性が高まるほど増幅される傾向が認められる。つまり、触媒活性とラジカル消去活性はトレードオフ関係にあり、触媒活性が高まるほどラジカル消去活性が減衰していく。したがって、これは容易には解決し得ない根深い問題であると言える。
かかる本質的な問題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を推進した結果、貴金属コロイド触媒のなかでも、特にパラジウム(Pd)コロイドは、白金(Pt)コロイドと比較して、対酸素難反応性を示す傾向があることを見出し、この知見をもとにさらなる研究を進めていった結果、本発明で使用可能な貴金属コロイド触媒を探索する上で考慮すべき重要な要素として、対酸素難反応性、触媒活性、水素吸蔵能力の3つがあることを明らかにし、この3要素を考慮したとき、総合力の観点から優れた貴金属コロイド触媒はPdコロイドであることをついにつきとめ、発明を完成させた。
はじめに、Pdコロイドが、Ptコロイドと比較して、対酸素難反応性を示すと推断した根拠につき説明する。
参考例21と、実施例76、77とを対比している図37は、貴金属触媒の種類の相違を主パラメータ(濃度は固定)とした、触媒含有水素溶存水(AOW)が発現するラジカル消去活性の経時変化特性を示す。なお、参考例21と、実施例76、77では、(・O )の生成系が除去されている。同図によれば、実施例76の主題特性は、(・O )の生成系が除去されているにもかかわらず、測定開始時点から約140秒〜200秒経過の間に、約0.046程度に及ぶ吸光度のピーク(約160秒経過時点)が認められる。また、測定開始時点から約860秒経過後に、吸光度の緩やかな上昇傾向が認められる。これに対し、実施例77の主題特性は、参考例21の対照特性とほぼ同じ傾向を示し、吸光度の上昇は特に認められない。これらの意味するところは、実施例76の主題特性では、測定開始時点から約160秒経過するまでの間に、(・O )が活発に生成されて、こうして生成された(・O )が、本発明に係る抗酸化機能水が発現したラジカル消去活性によって消去されたものと考えられる。また、測定開始時点から約860秒経過後に、吸光度が緩やかな上昇傾向に転ずるのは、本発明に係る抗酸化機能水のラジカル消去活性が減衰ないしは用い尽くされてしまった結果、(・O )の発生を抑制消去できなくなったものと考えられる。
次に、水素と酸素が共存している水溶液系(本発明の水素溶存水に酸素が溶存している水溶液系)におけるPtコロイド触媒とPdコロイド触媒の作用機序に関する推論を展開する。
図38は、水素・酸素共存水溶液系におけるPtコロイド触媒の作用機序を示す。
同図に示すように、Ptコロイド触媒は、系に溶存している水素と酸素を吸着するとともに、活性化された水素(・H)から放出された1電子を酸素に渡す(酸素の1電子還元)。このとき、活性化された水素(・H)は1電子を失い、Hイオンとして系に放出される(以下では、これについての重複した説明を省略する)。すなわち、酸素自身がPtコロイド触媒を介して活性化された水素によって1電子還元されることにより、本来の消去対象である(・O )を逆に生成してしまう。その後、又はそれと同時に、Ptコロイド触媒は、系に溶存している水素と(・O )を吸着するとともに、活性化された水素から放出された1電子を(・O )に渡す((・O )の1電子還元、又は酸素の2電子還元)。つまり、(・O )自身がPtコロイド触媒を介して活性化された水素によって1電子還元されることにより、(O 2−)を生成する。こうして生成された(O 2−)は、系に存在しているHイオンふたつとイオン結合することによって、過酸化水素(H)となる。その後、又はそれと同時に、Ptコロイド触媒は、系に溶存している水素と過酸化水素(H)を吸着するとともに、活性化された水素から放出された1電子を(H)に渡す(((H)の1電子還元、又は酸素の3電子還元)。つまり、(H)自身がPtコロイド触媒を介して活性化された水素によって1電子還元されることにより、(・OH)を生成する。その後、又はそれと同時に、Ptコロイド触媒は、系に溶存している水素と(・OH)を吸着するとともに、活性化された水素から放出された1電子を(・OH)に渡す((・OH)の1電子還元、又は酸素の4電子還元)。つまり、(・OH)自身がPtコロイド触媒を介して活性化された水素によって1電子還元されることにより、OHイオンを生成する。こうして生成されたOHは、Hイオンとイオン結合することによって水(HO)を生成し、こうして一連の反応を停止する。以上が水素と酸素が共存している水溶液系におけるPtコロイド触媒の作用機序である。
これに対し、Pdコロイド触媒の作用機序は以下のとおりである。
図39は、水素・酸素共存水溶液系におけるPdコロイド触媒の作用機序を示す。なお、Pdコロイド触媒の作用機序の説明において、前記Ptコロイド触媒の作用機序と大きく異なる点は対酸素難反応性に由来する部分であるため、この点を中心に説明し、それ以外の重複した説明は省略する。
同図に示すように、Pdコロイド触媒は、系に溶存している水素は吸着するが、酸素を積極的に吸着しないか、または消極的な吸着(酸素のPdコロイド触媒への衝突)があったとしても、活性化された水素(・H)から放出された1電子を酸素には渡しにくい傾向がある(酸素分子を還元しない)。したがって、本来の消去対象である(・O )を生成することはほとんどない。これ以降の作用機序についてはPtコロイド触媒と同様であり、Pdコロイド触媒と系に溶存している水素の協働作業によって、系に存在している(・O )、過酸化水素(H)、又は(・OH)がそれぞれ還元され、最後は水(HO)を生成して一連の反応を停止する。
ここで、本発明に係る貴金属コロイド触媒として好ましいパラジウム(Pd)の特性等について述べると、パラジウムとは、原子番号46、原子量106.42で、1803年にWollastonによって発見された遷移金属原子である。その名前は前年に発見されていた小惑星Pallas(ギリシャ神話のアテネ)にちなんで付けられた。地球上には二万四千トンほどしか存在しない貴重な元素である。パラジウムは、水素を取り込む能力に優れており、自己の体積の740〜935倍もの水素を吸蔵することができる。水素化の触媒や、水素精製によく使用されている。パラジウムがもっとも多用されている分野は、触媒としての利用である。水素化触媒としての利用をはじめとして、パラジウムの錯体が、エチレンからアセトアルデヒドを作る触媒としても使用されてきた。そのほかの用途としては、歯科治療用の金属や装飾品としての利用がある。
さて、本発明に係る抗酸化機能水の反応対象について思考を巡らせてみると、例えば、不対電子をもち強い酸化力を有するフリーラジカルと、不対電子をもたないが酸化力を有する酸化物質と、に大きく分類することができる。このうち、前者の例では、ラジカルに対し、本発明に係る抗酸化機能水由来の強い還元力を有する原子状水素が対応(原子状水素の電子をラジカルに与える。)することにより、ラジカル消去活性が発現するものと考えられる。これに対し、後者の例では、酸化物質に対し、本発明に係る抗酸化機能水由来の強い還元力を有する原子状水素が相手に応じて選択的に対応(相手に応じて原子状水素の電子を与える場合がある。)することにより、還元活性が選択的に発現するものと考えられる。ここで、選択的に還元活性が発現するとは、原子状水素と酸化物質との相性、すなわち、フロンティア電子論に従った、原子状水素側の最高被占軌道を占めるフロンティア電子の、酸化物質側の最低空軌道への流れ込みやすさなどの条件に依存して、還元活性が選択的に発現するものと考えられる。参考までに具体例をあげれば、酸化物質としてのビタミンB2を、本発明に係るPdコロイド触媒含有(192μg/L濃度)水素溶存水(AOW)に溶解させた被検定水では、ビタミンB2の還元活性は認められなかった。この例では、酸化物質(ビタミンB2)に対し、本発明に係る抗酸化機能水由来の強い還元力を有する原子状水素は電子を与えることがなかったために、還元活性の発現は認められなかったものと考えられる。つまり、原子状水素と酸化物質(ビタミンB2)とは相性が悪いと言える。さらに、酸化物質としての酸化型メチレンブルーを、本発明に係るPdコロイド触媒含有(192μg/L濃度)水素溶存水(AOW)に溶解させた被検定水では、メチレンブルーの還元活性が認められた。この例では、酸化物質(酸化型メチレンブルー)に対し、本発明に係る抗酸化機能水由来の強い還元力を有する原子状水素が電子を与えたために、還元活性の発現が認められたものと考えられる。つまり、原子状水素と酸化物質(酸化型メチレンブルー)とは相性がよいと言える。
上述した反応対象に対しての、本発明に係る抗酸化機能水の反応性を高めるには、例えば、雰囲気圧力下で飽和濃度以上(酸化還元色素を用いた溶存水素濃度定量分析方法による溶存水素濃度実効値換算)の水素を溶存していること、及び/又は、水素溶存水中に含有させた貴金属触媒それ自体に多量の水素が吸蔵されていること、が好ましいものと考えられる。
酸化還元色素を用いたDH定量分析方法による追加実施例の開示
以下に、上述の酸化還元色素を用いたDH定量分析方法による追加の実施例を示す。
実施例73と同様の触媒前添加循環電解処理水を被検定水(AOW)とし、同被検定水200mLに、上述の窒素ガス置換した40倍濃度Pt基準液1mLを、シリンジを用いて被検定水収容室に注入して十分攪拌し混合させたあと、同被検定水に10g/L濃度(体積モル濃度;26773.8μM)のメチレンブルー水溶液を、被検定水の呈色変化を目視で観察しながら少量づつシリンジを用いて注入した。終点にいたるまでの同メチレンブルー水溶液の総注入量は7.8mLであり、上記式7に各値を代入して求めた溶存水素濃度DHの実測値は2.09(mg/L)であった。本実施例78に係る被検定水の、各種物性値を表4に示すとともに、溶存水素濃度DHの実効値を図40に示す。
参考例22と同様の基本水6.86を、実施例71と同様の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した触媒無添加循環電解処理水を被検定水とし、同被検定水200mLに、上述の窒素ガス置換した40倍濃度Pt基準液1mLを、シリンジを用いて被検定水収容室に注入して十分攪拌し混合させたあと、同被検定水に10g/L濃度(体積モル濃度;26773.8μM)のメチレンブルー水溶液を、被検定水の呈色変化を目視で観察しながら少量づつシリンジを用いて注入した。終点にいたるまでの同メチレンブルー水溶液の総注入量は8.5mLであり、上記式7に各値を代入して求めた溶存水素濃度DHの実測値は2.28(mg/L)であった。本実施例79に係る被検定水の、各種物性値を表4に示すとともに、溶存水素濃度DHの実効値を図40に示す。
藤沢市水道水を活性炭カラムに通して処理した活性炭処理水に、実施例31と同様のPd基準液を、その濃度が384μg/Lとなる量だけ加えたPdコロイド入り活性炭処理水を調製する。こうして調製したPdコロイド入り活性炭処理水を、実施例71と同様の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した触媒前添加循環電解処理水を被検定水(AOW)とし、同被検定水200mLに、上述の窒素ガス置換した40倍濃度Pt基準液1mLを、シリンジを用いて被検定水収容室に注入して十分攪拌し混合させたあと、同被検定水に10g/L濃度(体積モル濃度;26773.8μM)のメチレンブルー水溶液を、被検定水の呈色変化を目視で観察しながら少量づつシリンジを用いて注入した。終点にいたるまでの同メチレンブルー水溶液の総注入量は9.7mLであり、上記式7に各値を代入して求めた溶存水素濃度DHの実測値は2.60(mg/L)であった。本実施例80に係る被検定水の、各種物性値を表4に示すとともに、溶存水素濃度DHの実効値を図40に示す。
藤沢市水道水を活性炭カラムに通して処理した活性炭処理水を、実施例79と同様の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した触媒無添加循環電解処理水を被検定水とし、同被検定水200mLに、上述の窒素ガス置換した40倍濃度Pt基準液1mLを、シリンジを用いて被検定水収容室に注入して十分攪拌し混合させたあと、同被検定水に10g/L濃度(体積モル濃度;26773.8μM)のメチレンブルー水溶液を、被検定水の呈色変化を目視で観察しながら少量づつシリンジを用いて注入した。終点にいたるまでの同メチレンブルー水溶液の総注入量は10.6mLであり、上記式7に各値を代入して求めた溶存水素濃度DHの実測値は2.84(mg/L)であった。本実施例81に係る被検定水の、各種物性値を表4に示すとともに、溶存水素濃度DHの実効値を図40に示す。
藤沢市水道水を活性炭カラムに通して処理した活性炭処理水に、実施例31と同様のPd基準液を、その濃度が192μg/Lとなる量だけ加えたPdコロイド入り活性炭処理水を調製する。こうして調製したPdコロイド入り活性炭処理水を、実施例80と同様の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に3分間にわたり電解処理した触媒前添加循環電解処理水を被検定水(AOW)とし、同被検定水200mLに、上述の窒素ガス置換した40倍濃度Pt基準液1mLを、シリンジを用いて被検定水収容室に注入して十分攪拌し混合させたあと、同被検定水に10g/L濃度(体積モル濃度;26773.8μM)のメチレンブルー水溶液を、被検定水の呈色変化を目視で観察しながら少量づつシリンジを用いて注入した。終点にいたるまでの同メチレンブルー水溶掖の総注入量は12.0mLであり、上記式7に各値を代入して求めた溶存水素濃度DHの実測値は3.21(mg/L)であった。本実施例82に係る被検定水の、各種物性値を表4に示すとともに、溶存水素濃度DHの実効値を図40に示す。
Figure 0004511361
抗酸化機能水(AOW)が線虫C・エレガンスの寿命に与える影響を調べる
線虫の一種であるCaenorhabditis elegans(C.elegans、以下、「C.エレガンス」)は、ショウジョウバエやマウス・ラット等と並んで、多細胞生物の老化モデルとして世界中で広く使用されている。また、C.エレガンスでは、全ゲノムの塩基配列が決定されており、遺伝子破壊やGFP融合遺伝子による発現解析などの手法を組み合せて、ヒトの遺伝病原因遺伝子や癌遺伝子などの個体レベルでの機能や作用機構を調べるための「生きた試験管」として注目されている。
特筆すべきは、野生型のC.エレガンスの最長寿命が約25日程度ときわめて短いことである(「分子レベルで見る老化」石井直明著:講談社(2001)のP102〜P103参照)。実験動物としてC.エレガンスを用いた場合、抗酸化機能水が動物の寿命に与える影響を短期間で調べることができる。
そこで、本発明者らは、上記文献「分子レベルで見る老化」の著者である、東海大学医学部分子生命科学助教授石井直明氏らの指導・協力を得て、野生型C.エレガンスの飼育用水として抗酸化機能水(AOW)を用いたときの、C.エレガンスの寿命に与える影響を調べることを目的とした試験を実施した。ここでいう「飼育用水」とは、浄水並びに抗酸化機能水の各試験群に対して行う後述の(A−2)試験手順のうち、▲4▼項において虫を2〜3時間水の中に静置しておく操作と、▲8▼項において虫の生死判定時、又は寒天培地が乾燥してきた時に、寒天培地の表面に水を垂らす操作と、の各操作時に用いる水をいう。
本試験プロトコールの概要を下記(A)にて説明し、また、同試験の実施例と参考例を下記(B)にて説明し、同試験の結果・考察を下記(C)にて説明する。なお、本試験は、「活性酸素実験プロトコール−測定法・遺伝子解析・病態生理モデル−」谷口直之監修:細胞工学別冊実験プロトコールシリーズ、株式会社秀潤社発行(1994)のP288−P292に記載の「老化モデル」のうち、P290−P292に記載の「2.いろいろな酸素濃度下における寿命の測定」に準拠している(以下、この参考文献を「準拠手順」と省略する)。本引用により上記「老化モデル」の記載内容は本明細書中に取り込まれる。ただし、飼育用水を変えたときのC.エレガンスの寿命に与える影響を調べるといった本試験の特殊性に鑑みて、準拠手順の一部を改変している。そこで、本試験プロトコールの説明では、準拠手順のうち改変部分を中心に説明することとする。
(A) 試験プロトコールの概要
(A−1) 使用する試薬類
本試験に使用する試薬類は以下のとおりである。
▲1▼フルオロデオキシウリジン(5−fluoro−2’−deoxyuridine:FudR)・・・和光純薬工業(Wako Pure Chemical)製
▲2▼Sバッファ(S buffer)
塩化ナトリウム:NaCl(0.1M)
リン酸カリウム:Potassium phosphate(pH6.0)
C.エレガンスは雌雄同体であるため次世代と混同しない工夫が必要である。そこで、準拠手順に従って、試薬FudRを、C.エレガンスにおける次世代の出現を阻害する目的で使用している。また、Sバッファは、pHの相違による影響を除くため等の目的で使用する。
(A−2) 試験手順
▲1▼準拠手順に従って、同調培養した野生型の第1期幼虫を集める。寒天培地入り9cmシャーレに、500〜1000匹くらいの虫を入れる。この操作時における虫の日齢は約4日である。
▲2▼上記シャーレ内に、パスツールピペットにて適量採ったSバッファを注ぎ入れたのち、このSバッファを、同パスツールピペットにてシャーレ内の虫とともに吸引する。これをチューブ(1.5mm径)に移す。同チューブを縦置きの状態に静置しておくと、虫がチューブの底に沈殿していく。虫の沈殿後に、虫を吸わないように注意しながら、チューブ内のSバッファ(上清)を、パスツールピペットにて静かに吸引して除く。これにより、チューブ内のSバッファが除かれた状態で、チューブ内に虫が集められる。
▲3▼上記▲2▼でチューブ内に集められた虫を適量(100〜200匹程度)取り出し、これを2本のチューブ(1.5mm径、容量1〜2cc程度)にそれぞれ振り分けて入れる。そして、かかる2本のチューブのそれぞれに、一方にコントロール(後述する参考例28の浄水)を、他方に被検水(後述する実施例83の抗酸化機能水)を注ぎいれる。
▲4▼上記の両チューブの開口部にふたを装着し、同両チューブを横置きにして2〜3時間静置しておく。
▲5▼上記の横置き静置後の両チューブのそれぞれから、寒天培地入りの2つの9cmシャーレにそれぞれ虫を移し、一晩室温で静置する。
▲6▼表面が軽く乾いた寒天培地入り3cmシャーレ(20枚)を用意する。各3cmシャーレのほぼ中心に、虫の餌となる大腸菌をそれぞれ1滴づつ垂らしておく。こうすると虫が餌を求めて中央に集まるため観察しやすい。
▲7▼上記▲5▼で一晩室温で静置しておいた2つの9cmシャーレのそれぞれから、後述の単離用白金線を使って虫を、上記▲6▼で用意しておいたひとつの3cmシャーレに各10匹ずつ、都合10枚のシャーレに移す。この100匹を1つの試験群として使用する。試験群が2群の場合には、この操作を各試験群毎に行う。かかる虫の振り分け操作時に、試薬FudRの添加操作を併せて行う。なお、単離用白金線とは、長さ約3cm、直径50〜100μm程度の白金線を、3cmパスツールピペットの細口部に取り付け、白金線の先端をヤスリ等で鋭角に削り、先端から約5mmのところで直角に折り曲げた自作ツールである。その使用時毎に、バーナーの炎で先端(虫または寒天培地に触れる部分)を滅菌する。その使い方は、虫を下からすくい上げるようにして釣る。虫を釣り上げたあと、寒天上に先端を軽く接触させると、虫は自分から寒天培地に移動する。
▲8▼各群に属する虫の生死(日齢)を毎日(本試験では原則隔日)調べる。虫の生死判定は、単離用白金線で虫の頭部を軽く触れて刺激したり、水を垂らしてみてまったく反応しないものを死と判定する。寒天培地が乾燥してきたら、寒天培地の表面に、パスツールピペットにて水を1、2滴程度垂らす。
(B)実施例と参考例の開示
(参考例28)
飼育用水として、藤沢市水道水を活性炭カラムに通して処理した活性炭処理水(浄水)を採用したときの、(A−2)に記載の試験手順に従う線虫C.エレガンスの寿命データを参考例28とする。
参考例28と同様の活性炭処理水(浄水)を1リットル採り、これに実施例6〜8に記載のPd基準液を、Pdコロイド濃度が192μg/Lとなる量だけ加えた水を、毎分1.5リットルの流量で5A定電流の電解条件にて連続通水循環式(循環水量は0.8リットル)に1分間にわたり電解処理(2パス電解処理に相当)した触媒前添加循環電解処理水(AOW)を飼育用水として採用したときの、(A−2)に記載の試験手順に従う線虫C.エレガンスの寿命データを実施例83とする。
(C) 試験結果、並びに結果の考察
参考例28(飼育用水として浄水を用いた群)と、実施例83(飼育用水として抗酸化機能水を用いた群)とを対比している図41、42は、Ptコロイド触媒含有電解水(AOW)が、C.エレガンスの寿命に与える影響を示す。また、本試験に係る独立2群間における平均寿命の差の有意差検定を、スチューデントのt検定(Student’s t−test)にて行った結果を表5に示す。
Figure 0004511361
表5に示すように、危険率0.1%においてt=4.03>t境界値両側(3.34)であるから、「飼育用水として抗酸化機能水を用いた群と、浄水を用いた群の2つのグループの平均寿命は等しい」という帰無仮説は棄却された。したがって、飼育用水として抗酸化機能水を用いた群(標本数は99)の平均寿命(20.05日)は、浄水を用いた群(標本数は95)の平均寿命(17.75日)よりも2.3日だけ長く、この差は有意であった(t(192)=4.03,SD=0.57,p<0.001)。ここで、「t(192)=4.03」はt値を、このうち「192」は自由度を、SDは2群の平均寿命間における差の標準偏差を、pは危険率を表す。
この試験結果について考察すると、活性酸素種由来の酸化障害を抗酸化機能水が抑制した結果として、線虫C・エレガンスの寿命が延びたものと考えられる。活性酸素種は、蛋白質および核酸などの細胞内分子に対する酸化障害を介して生細胞に毒性を及ぼす。つまり、活性酸素種由来の酸化障害が老化に関与していることが、線虫並びにショウジョウバエを用いた研究により解明されている(石井直明「線虫における寿命決定のメカニズム」、細胞工学Vol.21 No.7 2002、Agarwal,S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、91、12332〜12335、1994、Larsen,P.L.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、90、8905〜8909、1993、Sohal,R.S.ら、J.Biol.Chem.、270、15671〜15674、1995等の文献参照)。これらの研究内容と同様、本試験においても、活性酸素種由来の酸化障害が老化に関与していることを示唆する結果が得られたものと確信する。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
具体的には、本発明の実施形態、参考例、または実施例の説明において、酸化還元色素としてメチレンブルーを例示して説明したが、本発明で使用可能な酸化還元色素としては本例に限定されず、例えば、接頭語がつく色素としては、アシッドイエロー3、アシッドイエロー23、アシッドイエロー25、アシッドイエロー36、アシッドオレンジ5、アシッドオレンジ6、アシッドオレンジ7、アシッドオレンジ10、アシッドオレンジ19、アシッドオレンジ52、アシッドグリーン16、アシッドグリーン25、アシッドバイオレット43、アシッドブラウン2、アシッドブラック1、アシッドブラック31、アシッドブルー3、アシッドブルー9、アシッドブルー40、アシッドブルー45、アシッドブルー47、アシッドブルー59、アシッドブルー74、アシッドブルー113、アシッドブルー158、アシッドレッド1、アシッドレッド2、アシッドレッド14、アシッドレッド18、アシッドレッド27、アシッドレッド37、アシッドレッド51、アシッドレッド52、アシッドレッド87、アシッドレッド88、アシッドレッド91、アシッドレッド92、アシッドレッド94、アシッドレッド95、アシッドレッド111、ソルベントイエロー2、ソルベントブラック3、ソルベントブルー7、ソルベントブルー11、ソルベントブルー25、ソルベントレッド3、ソルベントレッド19、ソルベントレッド23、ソルベントレッド24、ソルベントレッド73、ダイレクトイエロー1、ダイレクトイエロー9、ダイレクトイエロー12、ダイレクトイエロー59、ダイレクトグリーン1、ダイレクトグリーン6、ダイレクトグリーン59、ダイレクトブラウン1、ダイレクトブラウン6、ダイレクトブラック4、ダイレクトブラック22、ダイレクトブラック38、ダイレクトブルー1、ダイレクトブルー6、ダイレクトブルー53、ダイレクトブルー86、ダイレクトブルー106、ダイレクトレッド2、ダイレクトレッド28、ダイレクトレッド79、ディスパースイエロー3、ディスパースイエロー5、ディスパースイエロー8、ディスパースイエロー42、ディスパースイエロー60、ディスパースイエロー64、ディスパースオレンジ3、ディスパースオレンジ30、ディスパースバイオレット26、ディスパースバイオレット28、ディスパースブルー1、ディスパースブルー26、ディスパースレッド1、ディスパースレッド4、ディスパースレッド60、ディスパースレッド65、ディスパースレッド73、バットイエロー2、バットグリーン1、バットグリーン3、バットブラウン1、バットブラウン3、バットブラック25、バットブルー1、バットブルー4、バットブルー20、バットレッド10、バットレッド41、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー10、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー24、ピグメントイエロー55、ピグメントイエロー81、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー94、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー98、ピグメントイエロー99、ピグメントイエロー108、ピグメントイエロー109、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー116、ピグメントイエロー117、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー154、ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ13、ピグメントオレンジ14、ピグメントオレンジ16、ピグメントオレンジ36、ピグメントオレンジ38、ピグメントオレンジ40、ピグメントオレンジ43、ピグメントグリーン4、ピグメントグリーン7、ピグメントグリーン8、ピグメントグリーン10、ピグメントグリーン36、ピグメントバイオレット1、ピグメントバイオレット3、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23、ピグメントバイオレット33、ピグメントブラウン25、ピグメントブラック1、ピグメントブルー2、ピグメントブルー15、ピグメントブルー16、ピグメントブルー17、ピグメントブルー18、ピグメントブルー24、ピグメントレッド1、ピグメントレッド3、ピグメントレッド5、ピグメントレッド9、ピグメントレッド22、ピグメントレッド38、ピグメントレッド48:1、ピグメントレッド48:2、ピグメントレッド48:3、ピグメントレッド48:4、ピグメントレッド49:1、ピグメントレッド52:1、ピグメントレッド53:1、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド60、ピグメントレッド63:2、ピグメントレッド64:1、ピグメントレッド81、ピグメントレッド83、ピグメントレッド88、ピグメントレッド112、ピグメントレッド122、ピグメントレッド123、ピグメントレッド144、ピグメントレッド146、ピグメントレッド149、ピグメントレッド151、ピグメントレッド166、ピグメントレッド168、ピグメントレッド170、ピグメントレッド174、ピグメントレッド175、ピグメントレッド176、ピグメントレッド177、ピグメントレッド178、ピグメントレッド179、ピグメントレッド185、ピグメントレッド187、ピグメントレッド208、フードイエロー3、フードグリーン3、フードレッド6、フードレッド17、ベーシックイエロー1、ベーシックイエロー2、ベーシックイエロー11、ベーシックオレンジ1、ベーシックオレンジ11、ベーシックグリーン4、ベーシックバイオレット3、ベーシックバイオレット4、ベーシックバイオレット10、ベーシックバイオレット14、ベーシックブラウン1、ベーシックブルー1、ベーシックブルー3、ベーシックブルー9、ベーシックブルー24、ベーシックレッド1、ベーシックレッド2、ベーシックレッド5、ベーシックレッド9、ベーシックレッド18、モルダントイエロー1、モルダントイエロー3、モルダントオレンジ1、モルダントバイオレット26、モルダントブラック11、モルダントブルー13、モルダントブルー29、モルダントレッド3、モルダントレッド11、モルダントレッド15、リアクティブイエロー2、リアクティブイエロー3、リアクティブイエロー17、リアクティブオレンジ1、リアクティブオレンジ2、リアクティブオレンジ16、リアクティブバイオレット2、リアクティブブラック5、リアクティブブルー2、リアクティブブルー5、リアクティブブルー7、リアクティブブルー19、リアクティブレッド1、リアクティブレッド3、リアクティブレッド6、リアクティブレッド17、リアクティブレッド22、リアクティブレッド41、等が使用でき、接頭語がつかない色素としては、アクリジンイエローG、アリザリン、インダミン、インドアニリン、インドシアニングリーン、ウロチオン、ウロビリン、p−エトキシクリソイジン塩酸塩、m−クレゾールパープル、o−クレゾールフタレイン、クレゾールレッド、クロセイン酸、クロロフィル(a,b,c,d)、クロロフェノールレッド、ニューメチレンブルー、ニュートラルレッド、バリアミンブルーB塩酸塩、メチルビオロゲン、ピオシアニン、インジゴカルミン、サフラニンT、フェノサフラニン、カプリブルー、ナイルブルー、ジフェニルアミン、キシレンシアノール、ニトロジフェニルアミン、フェロイン、N−フェニルアントラニル酸、2,6−ジクロロインドフェノールナトリウム、4−ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウム、N,N’−ジフェニルベンジジン、シンナバリン(抗生物質)、トルイレンブルー、リボフラビン(ビタミンB2)、アクリジンイエローG、p−エトキシクリソイジン塩酸塩、ブルーテトラゾリウム、ジホルマザン(ブルーテトラゾリウムの還元型)等が使用でき、このうち特に、本滴定における色調の変化がメチレンブルーと同程度に明瞭な点から、メチルビオロゲン、バリアミンブルーB塩酸塩、ニュートラルレッド、ピオシアニン、2,6−ジクロロインドフェノールナトリウム、4−ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウム、N,N’−ジフェニルベンジジン、シンナバリン(抗生物質)、トルイレンブルーなどが好適に使用できる。
また、本発明の実施形態、参考例、または実施例の説明において、溶存水素濃度の定量分析に用いる貴金属コロイド触媒として白金(Pt)を例示して説明したが、貴金属コロイド触媒としては本例に限定されず、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、金、銀、レニウム、並びにこれら貴金属元素の塩、合金化合物、錯体化合物などのコロイド粒子それ自体、さらにはこれらの混合物を適宜使用することができる。
最後に、本発明に係る抗酸化方法を例えば患者の疾病治療に適用する際の変形例である、水素再圧治療方法について述べる。まず、患者の治療対象部位に、注射ないし点滴等の操作を介してPtコロイド溶液やPdコロイド溶液などの本発明に係る触媒溶液を送り込んでおく。次に、潜函病などの減圧症の治療に一般に用いられる再圧室内に患者をおいた状態で、室内又は室外において患者の様子を観察しながら、同再圧室内の気圧を徐々に昇圧していく。このとき、再圧室内に供給する気体を、その組成成分分圧比のうち、水素が1〜20%程度を占めるように調整しておく。そして、例えば水素:酸素:窒素(その他の気体成分は微量のため無視する。)の分圧比が1:2:7となる2〜3絶対気圧の気体雰囲気内に、室内又は室外において患者の様子を観察しながら約1時間程度患者をおき、その後、昇圧時と同様に、または昇圧時よりも長い時間をかけて徐々に大気圧まで減圧していく。この間、患者の生体内における治療対象部位(抗酸化対象)では、患者の肺呼吸や皮膚呼吸などを通じて生体液(水素溶存水)内に含まれる水素と、わらかじめ送り込まれていた触媒とが、同対象部位においてめぐりあい、同対象部位にあまねく電子が与えられる結果として、同対象部位に局在する活性酸素種を消去する。この水素再圧治療方法によれば、同対象部位の治療効果を期することができる。

Claims (9)

  1. 貴金属コロイド触媒と酸化還元色素を用いた、被検定水の溶存水素濃度の定量分析方法であって、
    所定量の被検定水中に貴金属コロイド触媒を加えるとともに酸化還元色素の溶液を滴下していったときの、貴金属コロイド触媒を介した前記酸化還元色素の還元反応による同色素の呈色変化終点までの滴下量から、被検定水中の溶存水素量を求め、前記所定量と前記滴下量に基づいて、被検定水の溶存水素濃度を定量分析することを特徴とする被検定水の溶存水素濃度の定量分析方法。
  2. 貴金属コロイド触媒と酸化還元色素を用いた、被検定水の溶存水素濃度の定量分析方法であって、
    所定量の被検定水中に貴金属コロイド触媒を加えるとともに酸化還元色素の所定濃度溶液を所定の量だけ滴下したときの、貴金属コロイド触媒を介した前記酸化還元色素の還元反応による同色素の呈色変化速度に基づいて、被検定水の溶存水素濃度を定量分析することを特徴とする被検定水の溶存水素濃度の定量分析方法。
  3. 請求項1または2に記載の被検定水の溶存水素濃度の定量分析方法であって、
    前記貴金属コロイド触媒が白金であることを特徴とする被検定水の溶存水素濃度の定量分析方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の被検定水の溶存水素濃度の定量分析方法であって、
    前記酸化還元色素がメチレンブルーであることを特徴とする被検定水の溶存水素濃度の定量分析方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の被検定水の溶存水素濃度の定量分析方法であって、
    前記被検定水には、前記被検定水に含まれる酸化物質を除去する還元剤が添加されることを特徴とする被検定水の溶存水素濃度の定量分析方法。
  6. 一方端が閉止されて他方端が開放された筒状容器と、
    前記開放端から前記筒状容器内へとピストン式に移動自在に挿入される押し子と、
    スターラー用攪拌子が動作可能である、外部環境から隔離されたガス不透過性試験器であって、前記筒状容器の閉止端、内側壁、及び前記押し子により区画される被検定水収容室内へと、外部環境から隔離した状態で液を注入し得るように、前記筒状容器の閉止端、側壁、又は前記押し子のいずれかに設けられた液注入部と、を備え、
    前記液注入部から少なくとも酸化還元色素を注入し、前記収容室内に収容された貴金属コロイド触媒を加えられた被検定水の溶存水素濃度を、前記酸化還元色素の溶液を注入していったときの、前記貴金属コロイド触媒を介した前記酸化還元色素の還元反応による同色素の呈色変化終点までの注入量から求めることを特徴とする被検定水の溶存水素濃度の定量分析装置。
  7. 請求項6に記載の被検定水の溶存水素濃度の定量分析装置であって、
    前記貴金属コロイド触媒が白金であることを特徴とする被検定水の溶存水素濃度の定量分析装置。
  8. 請求項6〜7のいずれか一項に記載の被検定水の溶存水素濃度の定量分析装置であって、
    前記酸化還元色素がメチレンブルーであることを特徴とする被検定水の溶存水素濃度の定量分析装置。
  9. 請求項6〜8のいずれか一項に記載の被検定水の溶存水素濃度の定量分析装置であって、
    前記被検定水には、前記被検定水に含まれる酸化物質を除去する還元剤が添加されることを特徴とする被検定水の溶存水素濃度の定量分析装置。
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