JP2004330146A - 活性水素溶存水の製造方法、その製造方法により得られる活性水素溶存水および発癌抑制剤 - Google Patents

活性水素溶存水の製造方法、その製造方法により得られる活性水素溶存水および発癌抑制剤 Download PDF

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Sanetaka Shirahata
實隆 白畑
Kazumichi Otsubo
一道 大坪
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Abstract

【課題】強力な抗酸化作用を長期間安定的に保持する活性水素溶存水を簡便に製造することのできる、活性水素溶存水の製造方法を提供する。
【解決手段】水溶液中の溶存水素を水素吸着・吸蔵金属コロイドによる触媒反応により活性化するステップを備える、活性水素溶存水の製造方法。ここで、この水素吸着・吸蔵金属コロイドは、白金コロイド、パラジウムコロイド、バナジウムコロイド、鉄コロイド、珪酸コロイドからなる群より選ばれる1種以上の水素吸着・吸蔵金属コロイドであることが好ましい。
【選択図】 図25

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、活性水素溶存水の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、触媒を用いた活性水素溶存水の製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は、活性水素溶存水に関する。より詳細には、本発明は、上記の活性水素溶存水の製造方法により得られる活性水素溶存水に関する。
【0003】
また、本発明は、発癌抑制剤に関する。より詳細には、本発明は、正常細胞が形質転換を起こして癌細胞に変異することを抑制する、発癌抑制剤に関する。
【0004】
【従来の技術】
近年、環境汚染に伴う水道水の品質低化が問題となっている。生体の約2/3は水であり、人間の体は毎日数リッターの新鮮な水を取り入れ、同量の水を体外に排泄している一種の川であると考えることができる。川の流れがよどめば川は腐り、流入する水の水質が低下すれば、川を浄化しようとしても限界がある。逆に、良質の水を大量に流すことにより、川を自然に浄化していくことも可能であると考えられる。
【0005】
一方、活性酸素が癌、糖尿病、動脈硬化症、肝炎・腎炎、アトピー性皮膚炎、脳機能障害など多くの疾病や老化の原因として注目されている。ここで、活性水素は活性酸素と反応して水となり反応を停止するので活性酸素の理想的な消去剤となる可能性がある。水はHとOHに弱く解離しているが、弱い電流により、Hは容易に還元されて活性水素H・になり、ついで水素分子Hとなる。
【0006】
この反応はOHから酸素が発生する反応より極めて容易に起こる。我々は水溶液中の活性水素を鋭敏に測定する方法を開発し、従来アルカリイオン水とも呼ばれ、胃腸内不定愁訴に改善効果をもつことが知られている電解還元水が活性水素を安定に含む水であり、活性酸素を消去し、DNAの酸化損傷を防ぐ機能をもつことを明らかにした(たとえば、非特許文献1参照。)。
【0007】
また、大分県日田市の地下水やドイツ・ノルデナウ地方の天然水など、病気改善効果を示すと言われている天然水が活性水素反応を示し、活性酸素を消去することを見いだした。
【0008】
こうした電解還元水や天然還元水中の還元性物質は極めて類似した性質を示し、筋肉細胞や脂肪細胞への糖取込みを促進した。電解還元水の糖取込み促進作用はPI−3キナーゼの特異的阻害剤により完全に阻害されることから、電解還元水はインスリンシグナル伝達系の酸化障害を軽減することにより作用するものと推定された。レプチン受容体に欠損をもつ2型糖尿病モデルマウス(db/db)に電解還元水を自由飲水させることにより耐糖能障害が改善されることも確認でき、電解還元水は抗糖尿病効果を持つと推定された(たとえば、特許文献1参照。)。
【0009】
また、電解還元水を癌細胞に作用させると、細胞内の高い酸化ストレスが軽減されるとともに、増殖速度の低下、形態の変化、軟寒天中でのコロニー形成能の低下、テロメアの可逆的短縮、MMP−2および9の発現および活性化の低下による転移浸潤の抑制などが観察された。また、担癌マウスに投与すると有意な癌細胞の増殖抑制効果が確認できた。
【0010】
そこで、癌細胞と同時に正常細胞も攻撃するため、副作用がひどい従来公知の抗癌剤の代わりに、副作用のない発癌抑制剤として、電解還元水を利用することができるのではないかと、医学、薬学、生物学の分野において、電解還元水が非常な注目を集めるに到っている。
【0011】
さらに、電解還元水の動脈硬化症、アレルギー症、脳細胞のアポトーシスに対する効果についても検討されている。抗酸化作用をもつ電解還元水は様々な生活習慣病の予防や医療への利用が期待できるだけでなく、食品の品質保持や農作物の生産性向上、環境浄化など今後幅広い研究及び産業への利用が期待される。
【0012】
電解還元水を製造する工程において、隔膜で隔てられた陰極室と陽極室のそれぞれにNaOHなどの電解質を溶解した水を導入して電気分解すると、反応性の大きい原子状水素である活性水素が陰極室に発生する。陰極室に発生した活性水素の豊富な水は一般に電解還元水(陰極水)と呼ばれ、電解還元水は様々な疾病の予防や治療に役立ち、老化の進行を抑制するほか、医療以外の分野でも、食品の保存や半導体の洗浄など、多くの分野で利用が期待されている(たとえば、特許文献2参照。)。
【0013】
電解還元水のこのような効用は、電解還元水中の活性水素が有する還元性(抗酸化性)によって起こる抗酸化作用によるものである。活性酸素とは、酸素分子に電子が1個入ったもの(O・−)、ヒドロキシル基(・OH)、過酸化水素(H)および一重項酸素()などを指し、活性水素によりつぎの機構で活性酸素は消去され、還元作用および抗酸化作用と呼ばれる。
【0014】
活性酸素消去作用は,つぎの反応式で示される。
・−+2H・→H+e
・OH+H・→H
+2H・→2H
また、フリーラジカル消去作用は、つぎの反応式で示される。
【0015】
R・+H・→RH
【0016】
【特許文献1】
特開2000−212784号公報
【0017】
【特許文献2】
特開平10−118653号公報
【0018】
【非特許文献1】
Shirahata S. et al. ”Electrolyzed−reduced water scavenges active oxygen species and protects DNA from oxidative damage.” Biochemical & Biophysical Research Communications. 1997, 234:269−274.
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
このような効能が期待される電解還元水であるが、従来の技術では強力な抗酸化作用を長期間安定的に保持する電解還元水は製造できなかった。活性水素自体は非常に不安定な物質であり、すぐに水素イオンまたは水素ガスとなるから、単体として活性水素が存在する時間はきわめて短く、通常の電解還元水の抗酸化作用は不安定だからである。そのため、電解還元水をたとえば癌の治療に用いた場合、多量の電解還元水を長期間にわたり飲用しなければ効果が得られなかった。
【0020】
上記の現状に基づき、本発明の課題は、強力な抗酸化作用を長期間安定的に保持する活性水素溶存水を簡便に製造することのできる、活性水素溶存水の製造方法を提供することである。
【0021】
また、本発明の別の課題は、強力な抗酸化作用を長期間安定的に保持する活性水素溶存水を提供することである。
【0022】
さらに、本発明のもうひとつの課題は、強力な抗酸化作用を長期間安定的に保持し、正常細胞が形質転換を起こして癌細胞に変異することを抑制し、公知の抗癌剤のような副作用のない、発癌抑制剤を提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
水は極めて安定な物質ではあるが、電気分解により容易に分解して水素と酸素を発生させる。そして、電気分解時に陰極側に生成する電解還元水は多量の水素分子を含有し、負の酸化還元電位を示す。発明者は、これまでこの還元水がさまざまな疾病に改善効果を示すという疫学的な報告に注目し、これらの水が実際、細胞内活性酸素を消去し、抗腫瘍効果や抗糖尿病効果など多様な生理機能を有することを明らかにしてきた。発明者は、このような生理機能について還元水中に安定に存在する活性水素(原子状水素)が細胞内活性酸素を直接消去するという活性水素還元水説を提唱している。
【0024】
本発明者は、この活性水素還元水説の実証をより確かなものとするために、電解還元水の研究を行なう過程において、抗酸化作用により生理活性を有する電解還元水に共通する特徴の一つは、白金を含有していることであり、その電解還元水中の白金の存在状態は微粒子の状態(すなわち金属コロイドを形成している状態)であることを見出した。
【0025】
すなわち、発明者は、電解還元水中における活性水素供与体本体は、電解還元水中に白金が有意に増加していることや、電解還元水中の白金量依存的に抗酸化性が増加することを見出し、白金が活性水素の供与体として働いていることを見出した。
【0026】
そこで、本発明者は、白金コロイドを作成し、白金コロイドを含有する電解還元水の抗酸化性について検討した。その結果、本発明者は、電子顕微鏡を用いた測定により、ヘキサクロロ白金酸の還元により生成した安定な白金コロイドは、約2−10nmの白金コロイドを形成することを見出した。また、白金コロイドを含有する電解還元水についてESRおよび化学発光法を用いた活性酸素消去実験を行い、白金コロイドを含有する電解還元水はO 、OH・、およびHなどの活性酸素を消去する能力を有することを見出した。
【0027】
さらに、本発明者は、白金コロイドが安定なラジカルであるDPPHに対し活性水素供与体として機能することを明らかにした。また、白金コロイド(4.5%/μg)を含有する電解還元水の活性酸素消去能はバルクの金属(白金黒)(20%/mg)を含有する電解還元水に比較して、白金換算量比で約200万倍優れていることを見出した。これらの結果から、本発明者は、微量な白金コロイドが電解還元水に含まれる活性水素を安定化させ、電解還元水の強力な抗酸化性を長期間安定に保持する機能を有することを見出した。
【0028】
そして、本発明者は、白金コロイドは、電解還元水の強力な抗酸化性を長期間安定に保持する機能を有するだけでなく、電解還元水をはじめとする各種の水素溶存水に触媒として作用して、水素溶存水中で活性水素を発生させて活性水素溶存水を生成する機能を有することを見出した。
【0029】
また、本発明者は、このような強力な抗酸化作用を長期間安定的に保持することのできる白金コロイドを含有する活性水素溶存水に発癌抑制作用があるのではないかと考え、フォーカスアッセイ法により、発癌抑制実験を行った。その結果、本発明者は、白金コロイドを含有する活性水素溶存水には、正常細胞が形質転換を起こして癌細胞に変異することを抑制する作用があることを見出し、本発明を完成した。
【0030】
すなわち、本発明の活性水素溶存水の製造方法は、水溶液中の溶存水素を水素吸着・吸蔵金属コロイドによる触媒反応により活性化するステップを備える、活性水素溶存水の製造方法である。
【0031】
ここで、この活性化するステップは、溶存水素を含む水溶液中に水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップを含むことが好ましい。
【0032】
また、この活性化するステップは、水素吸着・吸蔵金属コロイドを含む水溶液中に、溶存水素を発生させるステップを含むことが望ましい。
【0033】
そして、この溶存水素を発生させるステップは、電気分解、水素ガスバブリング、ミネラル溶解、超音波処理、磁化処理、物理的生得、マイクロ波原子振動、光照射からなる群より選ばれる1種以上の方法により、水溶液中に溶存水素を発生させるステップを含むことが好ましい。
【0034】
また、この水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップは、白金コロイド、パラジウムコロイド、バナジウムコロイド、鉄コロイド、珪酸コロイドからなる群より選ばれる1種以上の水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップを含むことが望ましい。
【0035】
さらに、この水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップは、結晶を含む岩石の溶解液に含まれる珪酸コロイドを添加するステップを含むことが好ましい。
【0036】
そして、この水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップは、平均粒子径が0.3nm〜1μmの範囲にある金属微粒子により形成される水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップを含むことが望ましい。
【0037】
また、この水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップは、平均粒子径が0.3nm〜3nmの範囲にある金属微粒子により形成される水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップを含むことがさらに望ましい。
【0038】
さらに、この水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップは、水素吸着・吸蔵金属の質量に換算して0.1μg/l〜500mg/lの範囲の濃度となるようにこの水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップを含むことが好ましい。
【0039】
そして、本発明の活性水素溶存水は、上記の活性水素溶存水の製造方法により得られる、活性水素溶存水である。
【0040】
ここで、本発明の活性水素溶存水は、哺乳類細胞に対して発癌抑制機能を有することが望ましい。
【0041】
そして、本発明の発癌抑制剤は、溶存水素を含む水溶液中に水素吸着・吸蔵金属コロイドを含有する発癌抑制剤である。
【0042】
ここで、本発明の発癌抑制剤に用いる溶存水素を含む水溶液は、活性水素溶存水であることが好ましい。
【0043】
また、本発明の発癌抑制剤に用いる溶存水素を含む水溶液は、電気分解、水素ガスバブリング、ミネラル溶解、超音波処理、磁化処理、物理的生得、マイクロ波原子振動、光照射からなる群より選ばれる1種以上の方法により得られる水素溶存水であることが望ましい。
【0044】
さらに、本発明の発癌抑制剤に用いる水素吸着・吸蔵金属コロイドは、白金コロイド、パラジウムコロイド、バナジウムコロイド、鉄コロイド、珪酸コロイドからなる群より選ばれる1種以上の水素吸着・吸蔵金属コロイドであることが好ましい。
【0045】
そして、本発明の発癌抑制剤に用いる水素吸着・吸蔵金属コロイドは、結晶を含む岩石の溶解液に含まれる珪酸コロイドであってもよい。
【0046】
また、本発明の発癌抑制剤に用いる水素吸着・吸蔵金属コロイドは、平均粒子径が0.3nm〜1μmの範囲にある金属微粒子により形成される水素吸着・吸蔵金属コロイドであることが好ましい。
【0047】
さらに、本発明の発癌抑制剤に用いる水素吸着・吸蔵金属コロイドは、平均粒子径が0.3nm〜3nmの範囲にある金属微粒子により形成される水素吸着・吸蔵金属コロイドであることがより好ましい。
【0048】
そして、本発明の発癌抑制剤における水素吸着・吸蔵金属コロイドの濃度は、水素吸着・吸蔵金属の質量に換算して0.1μg/l〜500mg/lの範囲であることが望ましい。
【0049】
また、本発明の発癌抑制剤に用いる溶存水素を含む水溶液は、酸化還元電位が−1000mV〜−5mVの範囲にあることが好ましい。
【0050】
さらに、本発明の発癌抑制剤に用いる溶存水素を含む水溶液は、pHが7〜11の範囲であることが望ましい。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を示して本発明をより詳細に説明する。
【0052】
<水素吸着・吸蔵金属コロイド>
本発明の活性水素溶存水の製造方法は、水溶液中の溶存水素を水素吸着・吸蔵金属コロイドによる触媒反応により活性化するステップを備える、活性水素溶存水の製造方法である。
【0053】
ここで、この活性化するステップは、溶存水素を含む水溶液中に水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップを含んでいてもよく、水素吸着・吸蔵金属コロイドを含む水溶液中に、溶存水素を発生させるステップを含んでいてもよい。
【0054】
通常の電解還元水などの溶存水素を含む水溶液中の活性水素は単体では不安定であり、すぐに水素イオンおよび水素ガスになり、抗酸化作用を喪失する傾向がある。しかし、本発明の活性水素溶存水の製造方法のように、溶存水素を含む水溶液が水素吸着・吸蔵金属のコロイドを含んでいると、活性水素は水素吸着・吸蔵金属のコロイドの中に取り込まれ、活性水素の状態で安定に存在する。
【0055】
また、活性水素は非常に小さな原子であるため、ほとんどすべての金属および金属コロイドに吸着および/または吸蔵されることが知られている。このため、本発明の活性水素溶存水の製造方法においては、水素吸着・吸蔵金属のコロイドが活性水素のキャリアとして機能し、溶存水素を含む水溶液の抗酸化作用を高い状態で、安定に保持することができる。
【0056】
さらに、このように、白金コロイドをはじめとする水素吸着・吸蔵金属コロイドを電解還元水をはじめとする溶存水素を含む水溶液に添加すると、水素吸着・吸蔵金属コロイドは溶存水素を含む水溶液の抗酸化性を長期間安定に保持するだけでなく、溶存水素を含む水溶液に触媒として作用して、水素溶存水中で活性水素を発生させて活性水素溶存水を生成する。
【0057】
また、ナノメータスケールの水素吸着・吸蔵金属のコロイドは、金属片や粉末状の金属に比べて表面に存在する原子の割合が大きいために、活性水素吸着および/または吸蔵能が大きい。また、ナノメータスケールの水素吸着・吸蔵金属のコロイドは、均一な分散体を形成する傾向があり、沈殿する傾向も小さいため、飲用にも適する。さらに、水素吸着・吸蔵金属をコロイド状態で用いることにより、金属を溶解して用いる場合に比べて金属を溶存水素を含む水溶液中に多量に配合することができ、濃度のコントロールも容易となる。
【0058】
本発明に用いる水素吸着・吸蔵金属のコロイドは、水素吸着・吸蔵金属の微粒子が水に分散した、いわゆる分散コロイドである。ここで、水素吸着・吸蔵金属とは、金属結晶の格子間に水素をたやすく吸着、吸蔵して金属水素化物を生成する金属をいう。水素吸着・吸蔵金属には、たとえば白金、パラジウム、バナジウム、マグネシウム、ジルコニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銀、銅、珪素などのほか、水素吸蔵合金などが含まれる。水素吸蔵合金としては、たとえばMgNi、LaNi、TiFeなどがある。
【0059】
本発明に用いる水素吸着・吸蔵金属は、これらの金属の中でも、溶存水素を含む水溶液中の活性水素を吸蔵しやすく、活性水素の状態で安定に保持できる点で、白金、パラジウムまたはバナジウムなどが好ましい。
【0060】
また、本発明に用いる水素吸着・吸蔵金属のコロイドは、これらの水素吸着・吸蔵金属のイオンを含むコロイドであってもよい。本明細書において、水素吸着・吸蔵金属のコロイドとは、水素吸着・吸蔵金属のイオンを含むコロイドも意味する概念である。
【0061】
ここで、本発明に用いる水素吸着・吸蔵金属のコロイドのうち、珪素コロイドとしては、珪酸結晶を含む岩石の溶解液に含まれる珪酸コロイドなどが挙げられる。
【0062】
また、本発明に用いる水素吸着・吸蔵金属のコロイドとして分散している金属微粒子の平均粒子径(粒子の直径または一辺の長さ)は、表面に存在する原子の割合が大きく、抗酸化作用および分散性が良好な点で、0.3nm〜1μmが好ましく、0.3nm〜3nmがより好ましい。
【0063】
これらの中でも、本発明の活性水素溶存水の製造方法に用いる溶存水素を含む水溶液中には、活性水素を吸蔵しやすく、活性水素の状態で安定に保持できる点で、白金、パラジウム、バナジウム、珪酸、またはこれらのイオンを含むコロイドを添加することが好ましい。
【0064】
本発明の溶存水素を含む水溶液中の金属イオンまたは金属コロイドの濃度は、たとえば0.1μg〜1000mg/lであり、好ましくは0.1μg/l〜500mg/lであり、より好ましくは1μg/l〜500mg/lであり、より一層好ましくは10μg/l〜500mg/lであり、さらに好ましくは100μg/l〜500mg/lであり、さらに一層好ましくは1mg/l〜500mg/lであり、特に好ましくは1mg/l〜300mg/lであり、特に一層好ましくは5mg/l〜200mg/lであり、最も好ましくは10mg/l〜100mg/lである。
【0065】
<溶存水素を含む水溶液>
本発明の活性水素溶存水の製造方法は、水溶液中の溶存水素を水素吸着・吸蔵金属コロイドによる触媒反応により活性化するステップを備える、活性水素溶存水の製造方法である。
【0066】
ここで、この活性化するステップは、溶存水素を含む水溶液中に水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップを含んでいてもよく、水素吸着・吸蔵金属コロイドを含む水溶液中に、溶存水素を発生させるステップを含んでいてもよい。
【0067】
本発明に用いる溶存水素を含む水溶液は、塩素(Cl)および次亜塩素酸(HClO)の含有量が少ないものが好ましい。塩素や次亜塩素酸は生体に有害な作用を及ぼし、水素吸着・吸蔵金属コロイドを含有する溶存水素を含む水溶液の有用な生理学的効果を減ずるからである。具体的には、塩素および次亜塩素酸は、0.1mg/l以下であることが好ましく、より好ましくは0.08mg/l以下であり、特に好ましくは0.01mg/l以下である。
【0068】
また、本発明に用いる溶存水素を含む水溶液における、その他の無機物質、重金属および一般有機化学物質の含有量は、日本国における上水道水の基準を満たすことが好ましい。たとえば、カドミウム0.01mg/l以下、水銀0.0005mg/l以下、ベンゼン0.01mg/l以下、総トリハロメタン0.1mg/l以下の条件を満たすことが好ましい。
【0069】
さらに、本発明に用いる溶存水素を含む水溶液の酸化還元電位は、活性水素を吸蔵する能力が大きい点で、12℃〜14℃において−5〜−1000mVが好ましく、より好ましくは−20〜−1000mVであり、特に好ましくは−50mV〜−1000mVである。酸化還元電位は、酸化還元電位計(東亜電波工業製)により測定することができる。
【0070】
そして、本発明に用いる溶存水素を含む水溶液のpHは、飲用される点および活性水素の安定性を高める点で、12℃〜14℃において7〜11が好ましく、より好ましくは8〜11である。pHの調整には、リン酸ナトリウムなどの緩衝剤、電気分解において陽極で得られる酸性水などを好適に使用することができる。
【0071】
また、本発明に用いる溶存水素を含む水溶液の活性水素は、十分な抗酸化作用を確保し、抗癌(制癌)作用、抗菌作用、あるいは酸化ストレス抑制作用を発揮させる点で、12℃〜14℃において0.01μM〜10mM(μMはμmol/l、mMはmmol/lである)が好ましく、0.01μM〜10μMがより好ましく、さらに好ましくは0.1μM〜10μM、特に好ましくは1μM〜10μMである。
【0072】
ここで、本発明に用いる溶存水素を含む水溶液中に存在する活性水素の定量は、3,5−ジブロモ−4−ニトロソベンゼンスルフォン酸のナトリウム塩(DBNBS)が活性水素と反応してDBNBSアゾ化合物を生成する着色反応を利用して行なうことができる。すなわち、DBNBSアゾ化合物は波長450nmに吸収ピークを有するから、吸光度より活性水素量を計算することができる。
【0073】
ここで、本発明の活性水素溶存水の製造方法は、水溶液中に溶存水素を発生させるステップをさらに備えていてもよい。本発明の活性水素溶存水の製造方法においては、あらかじめ溶存水素を含有する水溶液に水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加してもよいが、溶存水素を含有しないか、または溶存水素を非常に低濃度でしか含有しない水溶液中に溶存水素を発生させるステップを備えていれば、より効率的に溶存水素を水素ラジカルに活性化させることができるからである。
【0074】
そして、この溶存水素を発生させるステップは、電気分解、水素ガスバブリング、ミネラル溶解、超音波処理、磁化処理、物理的生得、マイクロ波原子振動、光照射からなる群より選ばれる1種以上の方法により、水溶液中に溶存水素を発生させるステップを含むことが好ましい。これらのいずれの方法によっても、水溶液中に溶存水素を発生させることができるからである。これらの方法の中では、コスト面および品質面などから電気分解、水素ガスバブリングなどの方法が特に好ましい。
【0075】
<活性水素溶存水の製造方法>
本発明の活性水素溶存水の製造方法は、水溶液中の溶存水素を水素吸着・吸蔵金属コロイドによる触媒反応により活性化するステップを備える、活性水素溶存水の製造方法である。
【0076】
ここで、この活性化するステップは、溶存水素を含む水溶液中に水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップを含んでいてもよく、水素吸着・吸蔵金属コロイドを含む水溶液中に、溶存水素を発生させるステップを含んでいてもよい。
【0077】
このように、白金コロイドをはじめとする水素吸着・吸蔵金属コロイドを電解還元水をはじめとする溶存水素を含む水溶液に添加すると、あるいは水素吸着・吸蔵金属コロイドを含む水溶液中に、溶存水素を発生させると、水素吸着・吸蔵金属コロイドは溶存水素を含む水溶液の抗酸化性を長期間安定に保持するだけでなく、溶存水素を含む水溶液に触媒として作用して、水素溶存水中で活性水素を発生させて活性水素溶存水を生成する。
【0078】
具体例を挙げて詳しく説明すると、本発明の活性水素溶存水の製造方法は、たとえば、電解質水溶液に水素吸着・吸蔵金属のコロイドを添加するステップと、隔膜で隔てられた陰極室と陽極室にその水溶液を導入するステップと、水溶液を電気分解するステップと、陰極室で得られた電解還元水を取出すステップと、を備えていてもよい。
【0079】
あるいは、本発明の活性水素溶存水の製造方法は、電解質水溶液を陰極室と陽極室に導入するステップと、水溶液を電気分解するステップと、陰極室で得られた陰極水を取出すステップと、陰極水に水素吸着・吸蔵金属のコロイドを添加すステップと、を備えていてもよい。
【0080】
図1は、本発明で使用する電解槽10の概念図である。電解槽10は、陰極11を含む陰極室12と陽極13を含む陽極室14とを備える。陰極室12と陽極室14とは隔膜15により分離されている。陰極室12には、電気分解により得られる陰極水(電解還元水)を取出す陰極水取出管16が接続されており、陽極室14には、電気分解により得られる陽極水(酸性水)を取出す陽極水排水管17が接続されている。陰極室12および陽極室14のそれぞれには、給水管18が接続されている。
【0081】
電気分解をする前に、給水管を通して陰極室と陽極室のそれぞれに電解質を含む水溶液を導入する。電解質とは、水に溶けてイオン伝導性を示す物質をいい、NaOHやNaClなどがある。
【0082】
電解質を溶解する水としては、比抵抗10×10Ω・cm以上の純水を使用することができるが、比抵抗100×10Ω・cm以上である超純水を使用することが好ましい。純水は、水素型強酸性陽イオン交換樹脂と水酸型強塩基性交換樹脂によるイオン交換脱塩法により製造することができる。超純水は、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合した混床式ポリシャにより製造することができる。
【0083】
電解質を含む水溶液を電気分解するステップでは、陰極室に陰極水(電解還元水)が発生し、陽極室に陽極水(酸性水)が発生する。電解質の水溶液を電気分解すると、陰極室には水素イオン(H)が集まり、水素イオンは陰極から供給された電子(e)と結合し、活性水素(原子状水素H・)となる。活性水素は反応性が大きいため、電気分解の条件によっては、2つの活性水素が結合して水素ガス(H)となる。電解還元水が癌の増殖抑制効果や転移抑制効果などを奏するのは、電解還元水中の活性水素が抗酸化作用を発揮するからである。したがって、抗酸化作用を高めるために、水素ガスになる前の状態、すなわち活性水素の状態で水中に多量に溶存させる必要がある。
【0084】
電気分解に使用する装置は、活性水素の濃度を高める点で、電解槽を直列に連結した装置や、電解還元水が電解槽を繰り返し何度も通過するようにした装置が好ましい。図2(a)に電解槽を2つ直列に連結した装置(日本トリム製TI−7000S)、図2(b)に電解槽を3つ直列に連結した装置(日本トリム製TI−7000 3S)、図2(c)に電解還元水が循環して3つの電解槽を何度も通過するようにした装置(循環電解還元装置)を示す。
【0085】
たとえば、図2(a)に示す電解槽を2つ直列に連結した装置では、第1の電解槽1において電気分解により得られた陰極水(電解還元水)は、第1の電解槽1の陰極室24から第2の電解槽2の陰極室29に導入され、さらに電気分解される。このため、活性水素の濃度の高い陰極水(電解還元水)を製造することができる。電解槽を3つ以上直列に連結した装置においても同様である。図2(c)に示す陰極水(電解還元水)が3つの電解槽を何度も通過するようにした装置においても、各電解槽の陰極室同士が連結され、陽極室同士が連結されているが、第3の電解槽3を通過した後、ただちに排水されることなく、配管に設けているコックを調整することにより、一つの系内を何度も循環するため、さらに活性水素濃度の高い陰極水(電解還元水)を製造することができる。図2(c)には、3つの電解槽を連結した例を示したが、2つの電解槽を連結した場合も、4つ以上の電解槽を連結した場合も同様である。電気分解後、陰極室より陰極水(電解還元水)を取出す。
【0086】
本発明の活性水素溶存水の製造方法では、水素吸着・吸蔵金属のコロイドは電気分解をする前に電解質水溶液に添加することができる。また電気分解後の陰極水に添加することもできる。水素吸着・吸蔵金属のコロイドを電気分解前に電解質水溶液に添加しておくと、電気分解により発生する寿命の短い活性水素を発生後ただちに水素吸着・吸蔵金属のコロイド内に取り込み安定化することができる。また、水素吸着・吸蔵金属のコロイドを電気分解後の陰極水に添加すると、作業効率を上げることができる。
【0087】
本発明に用いる水素吸着・吸蔵金属のコロイドのうち白金コロイドは、均一かつ微細なコロイドを形成でき、さらに、活性水素(H・)が白金コロイドの表面に安定して保持できる点で、ヘキサクロロ白金酸(HPtCl)を還元する方法により製造することが好ましい。たとえば、ヘキサクロロ白金酸水溶液の表面にブンゼンバーナの外炎を当てて還元する方法、ヘキサクロロ白金酸水溶液をヒドラジンまたはエタノールなどで還元する方法が好ましい。その他、純水の中に浸した2本の白金線の間でアークを飛ばす方法によっても白金コロイドを製造することができる。
【0088】
本発明に用いる水素吸着・吸蔵金属のコロイドのうちパラジウムコロイドは、パラジウムコロイド内に大量に水素を吸蔵することができる点で、塩化パラジウム(PdCl)を還元する方法により製造することが好ましい。たとえば、塩化パラジウムの水溶液をギ酸ナトリウムと炭酸ナトリウムで還元する方法および水素ガス(H)を吹き込み(バブリング)還元する方法が好ましい。
【0089】
本発明に用いる水素吸着・吸蔵金属のコロイドのうちバナジウムコロイドは、バナジウムコロイド内に大量に水素を吸蔵することができる点で、塩化バナジウム(VCl)を還元する方法により製造することが好ましい。たとえば、塩化バナジウムの水溶液をギ酸ナトリウムと炭酸ナトリウムで還元する方法および水素ガス(H)を吹き込み(バブリング)還元する方法が好ましい。
【0090】
本発明に用いる水素吸着・吸蔵金属のコロイドは、相溶性を高める点で、水系の分散体が好ましい。水素吸着・吸蔵金属のコロイドの添加量は、電解質水溶液全体に対して、たとえば0.1ppb〜1000ppmであり、0.1ppb〜500ppmが好ましく、1ppb〜500ppmがより好ましく、10ppb〜500ppmがより一層好ましく、100ppb〜500ppmがさらに好ましく、1ppm〜500ppmがさらに一層好ましく、1ppm〜300ppmが特に好ましく、5ppm〜200ppmが特に一層好ましく、10ppm〜100ppmが最も好ましい。水素吸着・吸蔵金属のコロイドの添加量が0.1ppb未満では吸蔵できる活性水素の量が少なくなり、十分な抗酸化作用が得られない。一方、水素吸着・吸蔵金属のコロイドの添加量が1000ppmより多くなると、微細なコロイドの安定した保持が困難になる。
【0091】
<活性水素溶存水>
本発明の活性水素溶存水は、上記の活性水素溶存水の製造方法により得られる、活性水素溶存水である。
【0092】
ここで、本発明の活性水素溶存水は、哺乳類細胞に対して発癌抑制機能を有することが望ましい。本発明の活性水素溶存水は、水素吸着・吸蔵金属コロイドを含有しているため、活性水素を安定に保持し、あるいはその触媒作用により活性水素を新たに発生させることにより、活性水素の濃度を高い状態で保持することができるため、後述する実施例で示すように、哺乳類細胞に対して優れた発癌抑制機能を有する。
【0093】
本発明の活性水素溶存水は、溶存水素を含む水溶液中に水素吸着・吸蔵金属コロイドに加えて、他の成分を、発癌抑制機能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0094】
本発明の活性水素溶存水に添加可能な他の成分としては、たとえば、他の発癌抑制作用を有する物質、他の薬効成分、香料、着色料、甘味料、保存料などが挙げられるが、飲用に適するように、食品添加物および/または医薬品として認められる成分であることが好ましい。
【0095】
<発癌抑制剤>
本発明の発癌抑制剤は、溶存水素を含む水溶液中に水素吸着・吸蔵金属コロイドを含有する発癌抑制剤である。すなわち、本発明の発癌抑制剤は、上記の活性水素溶存水の製造方法により得られる、活性水素溶存水を発癌抑制剤として用いるものである。
【0096】
ここで、この溶存水素を含む水溶液は、活性水素溶存水であることが好ましい。なお、このように、白金コロイドをはじめとする水素吸着・吸蔵金属コロイドを電解還元水をはじめとする溶存水素を含む水溶液に含有されている場合には、水素吸着・吸蔵金属コロイドは溶存水素を含む水溶液の抗酸化性を長期間安定に保持するだけでなく、溶存水素を含む水溶液に触媒として作用して、水素溶存水中で活性水素を発生させて活性水素溶存水を生成するため、この水素溶存水は活性水素溶存水となる。
【0097】
よって、本発明の発癌抑制剤は、上記の活性水素溶存水の製造方法と同様の製造方法により製造されることが好ましい。
【0098】
また、本発明の発癌抑制剤に含有される溶存水素を含む水溶液は、上記の本発明の活性水素溶存水の製造方法に用いられる溶存水素を含む水溶液と同様の溶存水素を含む水溶液であることが望ましい。
【0099】
さらに、本発明の発癌抑制剤に含有される水素吸着・吸蔵金属コロイドは、上記の本発明の活性水素溶存水の製造方法に用いられる水素吸着・吸蔵金属コロイドと同様の水素吸着・吸蔵金属コロイドであることが望ましい。
【0100】
本発明の発癌抑制剤は、溶存水素を含む水溶液中に水素吸着・吸蔵金属コロイドに加えて、他の成分を、発癌抑制機能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0101】
本発明の発癌抑制剤に添加可能な他の成分としては、たとえば、他の発癌抑制作用を有する物質、他の薬効成分、香料、着色料、甘味料、保存料などが挙げられるが、飲用に適するように、食品添加物および/または医薬品として認められる成分であることが好ましい。
【0102】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0103】
<発癌抑制剤についての実施例>
本発明の発癌抑制剤が、正常細胞が形質転換を起こして癌細胞に変異することを抑制し、優れた発癌抑制作用を有することを実証するために、フォーカスアッセイ法による二段階発癌抑制の検出方法を用いて、以下の実施例を行った。
【0104】
<発癌抑制剤の調製>
まず、超純水86mlを密閉容器に入れ、ウォーターバスで60℃まで昇温した。次いで、還元剤として99%エタノール10mlを加え、界面活性剤(和光純薬工業株式会社製、Tween80)100μlを加え、攪拌を続けながら、70℃まで昇温し、ヘキサクロロ白金酸106mgを加え、0.2gのNaHCOを超純水に溶解して4mlとしたものを緩衝剤として混合した。
【0105】
続いて、温度を70℃に維持し、ヘキサクロロ白金酸が白金に還元されて黒色になった時点で加温および攪拌を停止した。そして、12時間静置した後、超純水500mlを加えながら分画分子量10000の濾過膜を使い限外濾過し、洗浄と濃縮を行なった。
【0106】
限外濾過後、超純水50mlを加えた。透過型電子顕微鏡で観察したところ、図3に示すように、1nm〜5nmの微粒子が多数認められた。これらの微粒子が白金コロイドであることが電顕元素分析法により確認された。
【0107】
また、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)で測定したところ、波長220nmに吸収ピークがあった。ヘキサクロロ白金酸のイオンは220nmに吸収を持たないが、ヘキサクロロ白金酸が還元されて白金コロイドになると220nmに吸収を持つようになることから、図3に示した微粒子は、白金コロイドであることが確認できた。
【0108】
これらを確認した後、超純水中に、電解質(NaOH)を溶解して、5mMのNaOH水溶液を得た。この水溶液1000mlに前述の白金コロイドを2ppmとなるように添加した。図2(c)に示す陰極水が3つの電解槽を何度も通過するようにした装置((株)日本トリム製、電解還元装置TI200)に入れて、0.13A/cmで60分間電気分解し、陰極室から電解還元水中に白金コロイドを含有する発癌抑制剤を取出した。
【0109】
<フォーカスアッセイ>
フォーカスとは、癌ウイルスを培養細胞に感染させた場合、またウイルスや細胞性の癌遺伝子を含むDNA断片、あるいはその組換えDNAを細胞にトランスフェクションした時に形成される高密度の細胞コロニーを意味する。
【0110】
このようなフォーカスは、トランスフォーメーションを起こした細胞が接触阻止による抑制から脱して増殖し、正常細胞からなる単層の上に多層部分を形成することによって生ずる。
【0111】
そして、細胞を染色すると、フォーカスは濃染され数えられるので、フォーカスアッセイは癌ウイルスの定量に好適に用いられる公知の技術である。なお、本実施例では、フォーカスアッセイのために、以下の参考文献を用いた。
参考文献1:P.Percco et.al, ”Inhibitory activity of vitamin E and α−naphthoflavone on β−carotine−enhanced transformation of Balb/c 3T3 cells by benzo(a)pyrene and cigarette−smoke condensate”, Mutation Recearch, (2000), 465, p.151−158
参考文献2:石館 基 監修、祖父尼 俊雄 編集,「医薬品の変異原性・遺伝毒性」の培養細胞を用いる形質転換試験の章,廣川書店発行,平成3年6月25日初版発行,p.237〜256
ここで、後述の実施例で用いるマウス全胎仔由来細胞であるBALB/3T3細胞は、継代を続けられてディッシュに一杯になった時点で低い細胞密度を保ち、増殖がとまる現象が観察されている(図4)。
【0112】
そして、このような接触阻止現象を示す細胞は、ウイルス、放射線、化学物質による処理、さらには遺伝子導入により、周囲の単層の石畳状を示す細胞とは明らかに異なった形質転換巣を形成することが分かっている。
【0113】
すなわち、後述の実施例で用いる化学物質を用いるフォーカスアッセイ法は、細胞播種、化学物質処理、長期培養、染色した形質転換巣の判定、という一連の過程で成立っている(図5)。
【0114】
今回、形質転換巣を抑制するため、電解還元水ERW(日本トリム社製電解還元水作製装置TI200により作製)と白金(Pt)コロイドを処理し、発ガン化学物質による二段階変異抑制の検出を試みた。
【0115】
<実施例1>
TI200によるフォーカス形成抑制検出の予備的検討
本実施例では、BALB/3T3細胞の形質転換巣を抑制するため、上述の製造方法により得られた、白金コロイドと、電解還元水と、を含有する発癌抑制剤により、図5の実験計画図に示す処理手順に従ってBALB/3T3細胞を処理することとした。
【0116】
本実施例における実験計画においては、図5のaがイニシエーター物質を処理する1日目からプロモーター物質の処理が終わる3週間目の1日目まで、bはイニシエーターを処理する1日目からプロモーター物質を処理する8日目まで、cはイニシエーターを処理する8日目から3週間目の1日目まで、BALB/3T3細胞を、白金コロイドと、電解還元水と、を含有する発癌抑制剤により処理することとする。
【0117】
さらに、本実施例における実験計画においては、図5において、a,b,c,dについてそれぞれPMA(正式名称:phorbol 12−myristate 13−acetate)50ng/ml、100ng/ml、300ng/ml含有培地で処理したもの、およびPMAを含まないバリエーションを調製することとした。また、上記(a−1)〜(d−4)の他、(e)MCA(3−methyl cholantrene)処理およびPMA処理を行わないバリエーション、(f)電解還元装置((株)日本トリム製、TI200)により製造された電解還元水を用いないバリエーションをコントロールとして作成することとした。
【0118】
また、本実施例における実験計画においては、実験に用いるイニシエーターであるMCAは終濃度1μg/mlのみ、プロモーターであるPMAは終濃度50ng/ml(0.081μM)、100ng/ml(0.162μM)、300ng/ml(0.486μM)のバリエーションを調製することとした。
【0119】
さらに、本実施例における実験計画においては、コントロールとして(e)MCA処理およびPMA処理を行わないバリエーション、(f)TI200により製造された電解還元水を用いないバリエーションを加え、最終的に18組のバリエーションサンプルを作成することとした。表1は、各バリエーションサンプルでのMCA使用の有無とPMAの濃度、およびTI200により製造された電解還元水による処理の一覧を表わす表である。この表に示した他にも、多数の条件設定により、予備的な検討を行った。
【0120】
【表1】
Figure 2004330146
【0121】
表1に示す実験の結果はデータとしては示さないが、このような予備的な検討の結果、イニシエーター処理期間のみ、プロモーター処理期間のみに、ERWと白金コロイド10ppmを処理したサンプルを作製し、どの期間での処理が最も有効かを検出した。ERWと白金コロイド10ppmを処理したサンプルにおいて、全期間及び後期処理したサンプルで有為な形質転換巣の抑制が見られた。
【0122】
<実施例2>
白金コロイドおよびTI200含有培地でのフォーカス形成抑制検出
本実施例では、実施例1に示した予備的検討の結果に基づき、より詳細な実験を行なうこととした。具体的には、形質転換巣を抑制するため、電解還元水ERWおよび濃度を変えた白金コロイドを処理した。処理期間はイニシエーター物質を処理する1日目からプロモーター物質の処理が終わる3週間目の1日目までとした。
【0123】
まず、電解還元水中に白金コロイドを含有する発癌抑制剤のフォーカス形成抑制効果を調べるため、表3の(o−1)〜(r−4)のようなバリエーションを持ったサンプルを作成した。実験に先立って、白金コロイドを10ppm、3ppm、1ppm、0.3ppm、0.1ppm含有する培地でbalb/3T3細胞を培養し、細胞毒性を調査したところ、ほとんど毒性は見られなかった。表2は、白金コロイドと、電解還元水と、を含有する発癌抑制剤による検定系のバリエーションを示す表である。
【0124】
【表2】
Figure 2004330146
【0125】
表2の(o−1)〜(r−4)のようなバリエーションを持ったサンプルを用いて、実施例1と同様の方法で図6に示す実験計画図に基づいて、フォーカスアッセイを行った。図6に示すように、o,p,qについてはそれぞれERW処理したo−1,p−1,q−1と、ERW処理しないo−2,p−2,q−2を作製した。o,p,qはそれぞれPt1ppm、3ppm、10ppmのサンプルである。これに、コントロールとして、MCA、PMAのみ処理したr−3、MCA、PMA処理を行わないr−4を加え、最終的に8組作成した。
【0126】
なお、実験に用いるイニシエーターであるMCA(3−methyl cholantrene)は終濃度1μg/ml、プロモーターであるPMA(phorbol 12−myristate 13−acetate)は終濃度300ng/ml(0.486μM)処理した。ここで、イニシエーターは細胞のDNAに損傷を与えてガン化させる物質である。また、PMAはガン研究の分野ではDNAに損傷を受けた細胞のガン化を促進するプロモーター物質として良く使われる物質である。
【0127】
作業手順および観察結果
細胞播種(0日目)
形質転換用の細胞は60mmディッシュに10cells/dish播種した。播種後、直ちにトレイを前後左右に静かに数回ずつ振って、細胞を均一にディッシュに広げた。分散をしっかりやっておかないと、細胞が一箇所に集まり実験結果に影響を与えることになるので十分に分散させた。
【0128】
イニシエーター処理(1日目)
細胞を播種して20〜24時間後に、1000倍濃度のMCAを用いて10%FBS含有MEM培地を終濃度1μg/mlMCA含有培地に調整した。72時間培養後、培地を吸い取り、新しい培地を5mlずつ加えた。さらに4日間培養した。
【0129】
プロモーター処理(8日目)
処理条件をできるだけ均一にするため、ディッシュに分注した培地にPMAを添加するのではなく、培地瓶にPMA添加培地を作製し、培地交換した。PMA(phorbol−12−myristate acetate)はガン研究の分野ではDNAに損傷を受けた細胞のガン化を促進するプロモーター物質として有名であるが、同時にプロテインキナーゼCのシグナル誘導物質として低濃度で使用されることで有名である。また、主に免疫細胞を使用した実験系で終濃度100ng/ml前後で使用され、活性酸素を発生させることでも知られている。
【0130】
8日目の時点で、ディッシュ中の細胞は飽和密度状態になっていた。そこで、ここから固定するまでの培地交換は、吸引ピペットの先をディッシュの底に触れないように行った。ディッシュに接触すると、ピペットが単層状態の細胞を押しつぶし、形質転換巣と見間違えることがあるらしいので十分に注意して作業を行った。この際、少し培地を残すように注意して培地交換を続けた。
【0131】
長期培養
培地交換は始めの4週間は週に2回、後の2週間は週に1回行った。培地交換をする時は、形質転換巣が飛び散らないように必ず口先の広いピペットを使い、ディッシュに近づけ、円を描くように全体に培地を静かに分注した。カビなどによるコンタミを防ぐため、インキュベーターは隅々まで分解してSDSとアルコールを用いて丁寧に滅菌した。また、プレートを長期間換えないため、手袋を使用し、手からの細菌汚染に極力配慮して作業を行った。
【0132】
固定と染色
観察を予定していたそれぞれの培養日数において培地を吸い取り、洗浄瓶でメタノールを2ml添加し、5分以上放置した。形質転換巣ははがれやすくなっているので、形質転換巣に向かって勢いよく分注するのは避けるように注意して作業した。
【0133】
ここで、PBSで洗ってからメタノール固定を行わないと、培地中の血清タンパクは白く凝固するが、メタノールを除去後、乾燥しないうちにギムザ染色液を加えれば問題はない。手間を省くため、およびPBSで洗うことによる形質転換巣の剥離を避けるため、すぐメタノール固定するように注意して作業した。ただし、一度乾燥してしまうと血清タンパク質は固定されてしまい、形質転換巣の判定がしにくくなるため乾燥させないように注意して作業した。
【0134】
メタノールを除去後、乾燥しないうちにギムザ染色液を洗浄瓶で2mlずつ分注し、15分以上放置した。数時間放置すると濃く染まりすぎるため、形質転換巣の細胞の形態が分かりにくくなり、また、単層部分の色も濃くなるため、形質転換巣がバックと明瞭に区別しにくくなるのであまり長時間は放置しないように注意して作業した。
【0135】
次いで、ギムザ溶液を捨てて、水ですすいだ。水は各ディッシュに3ml分注し、ギムザ溶液を取り除いた。このとき、あまり強く流水を当てると形質転換巣がはげてしまうことがあるので注意して作業した。
【0136】
続けて、ディッシュをひっくり返して自然乾燥させた。ディッシュ表面がぬれている時に触れると細胞がはげてしまうので、完全に乾燥するまでは細胞表面は触らないよう注意して作業した。一度乾燥した細胞は長期間保存可能なので、ダンボール箱に入れ、お互いが混ざらないように気をつけて保存した。
【0137】
ちなみに、図6では最大6週間培養する実験計画予定していたが、細胞の状態によっては25日程度でコロニーを観察できる例も少なくなく、必ずしも6週間培養しなくてもよい。本実施例では、6週間を待たずしてコロニーの観察が可能となったため、6週間を待たずしてコロニーを回収して観察した。
【0138】
目視観察による判定
各プレートの形質転換巣の数を形質転換巣の直径ごとに目視にて判定し、集計した。結果を図7〜図16に示す。
【0139】
観察結果(培養22日目)
培養22日目(3週間と1日)の時点で図5の実験計画図の28日目に採取して培養したサンプルに肉眼で判別できるコロニーの形成が確認できた。r−4のコントロールのプレートではコロニーが確認できなかったため、この時点でのバックグラウンドはゼロに近いと思われる。r−3、o−2、p−2、q−2、q−1のそれぞれのディッシュで一桁台のコロニーが確認できた。大きさは大きなもので3mm程度と思われる。o−1、p−1ではコロニーが1つか2つで、r−3、o−2、p−2、q−2、q−1と比較するとコロニー形成が抑制されているのではないかと思われる。また、ポジティブコントロールのr−3に比べると白金のみ処理したo−2、p−2、q−2におけるコロニー形成が少し多いようだった。
【0140】
観察結果(培養29日目)
培養29日目(4週間と1日)の時点で、図5の実験計画図の28日目に採取して培養したサンプルを回収し、染色した。MCAとPMA処理のみを施したサンプルr−3において、肉眼ではっきりと判別できるほどコロニーが観察できた。それに対し、ERWと白金1ppm処理を施したサンプルo−1においてコロニーの抑制が見られ、さらにERWと白金3ppmのp−1、ERWと白金10ppmを施したq−1において、ほとんどコロニーが出ないほどの変異抑制が観察された。ただし、白金のみを処理したサンプルにおいてはr−3と比較してコロニー数が若干増え、大きなコロニーが観察される傾向が見られた。これらの培養29日目の観察結果を、実施例2のフォーカスアッセイの結果を集計したグラフ図である図13および図14にまとめる。
【0141】
また、実施例2のフォーカスアッセイにおける直径6mm以上のコロニーの比較を示すグラフ図として図15を、実施例2のフォーカスアッセイにおける直径4〜5mmのコロニーの比較を示すグラフ図として図16を、実施例2のフォーカスアッセイにおける直径2〜3mmのコロニーの比較を示すグラフ図として図17を、表示してこれらの観察結果をまとめる。
【0142】
繰返し実験
上述の実験の再現性を確認するために、さらに2回、同一の条件で実験を繰返した。ただし、コロニーの成長具合が早かったため、2回目と3回目の実験では、3週間半(24日目)で固定、染色、観察、判定を行った。これらの2回目と3回目の観察結果を、実施例2のフォーカスアッセイの結果を集計したグラフ図である図18〜図23にまとめる。
【0143】
図13〜図23の結果より、全体的にERWと白金を組み合わせたサンプルにおいて、MCAとPMAのみ処理したコントロールと比較して顕著な発ガンコロニーフォーカス形成の抑制傾向が見られた。特に、二回目のERWとPt1ppm、3ppmおよびPt10ppm処理したサンプルにおいて、MCAとPMAのみ処理したコントロールとの間でP<0.05の有意差が(図19)、三回目のERWとPt10ppm処理したサンプルでP<0.0005の有意差が見られた(図22)。また、比較的大きなコロニーの数が減少していることから、ERWと白金の組み合わせはコロニーを縮小する作用があることがうかがえる(図15、図16、図22、図23)。
【0144】
また、白金のみを濃度を変えて処理したサンプルにおいてはフォーカス形成抑制傾向は見られなかったことから、白金とERWの相互作用によりフォーカス形成の抑制が行われていると考えられる。
【0145】
今回、フォーカスアッセイの発ガンプロモーターとして用いられたPMAはプロテインキナーゼCの活性化剤として知られているが、一方で、細胞内でHやO などの活性酸素を誘導することも知られている。白金とERWの相互作用によりフォーカス形成の抑制が行われた原因として、白金がERWに含まれる水素をトラップし、還元作用を持った状態で細胞に取り込まれることで、HやO などの活性酸素を還元し、フォーカスの形成を抑制したのではないかと考えられる。
【0146】
また、二回目のフォーカスアッセイ(図20)では何も処理していないサンプルよりもERWと白金コロイド10ppmを処理したサンプルのフォーカス形成効率が落ちていたことから、ERWと白金コロイドを同時に処理することで、自然突然変異を誘起する活性酸素によるDNA損傷を抑制しているか、DNAの修復が促進される、あるいはガン細胞特異的にアポトーシスを起させている、発ガン性物質細胞への取り込みを抑制している、という4つの可能性が考えられる。
【0147】
<実施例3>
本実施例においては、まず、ERW、白金コロイドのT2−200S細胞の増殖曲線に与える影響を調べるため、表3および表4に示す条件で、T2−200S細胞の増殖曲線の比較を行った。
【0148】
【表3】
Figure 2004330146
【0149】
本実施例においては、次いで、ERW、白金コロイドのヒト白血病細胞であるKU−812細胞の増殖曲線に与える影響を調べるため、表3および表4に示す条件で、KU−812細胞の増殖曲線の比較を行った。
【0150】
【表4】
Figure 2004330146
【0151】
図24は、表3に示す実験結果におけるコントロール群(左上)、ERW群(右上)、窒素注入RW群(左下)、水素注入MQ群(右下)の細胞数の変化を示すグラフ図である。
【0152】
図25は、表4に示す実験結果におけるコントロール群(左上)、ERW群(右上)、NaOH群(左下)の細胞数の変化を示すグラフ図である。
【0153】
さらに、本実施例においては、ERW、白金コロイドのBalb/3T3細胞(マウス全胎仔由来細胞)の増殖曲線に与える影響を調べるため、細胞を1.0×10cells/mlの密度で播き、無処理のコントロール、ERW含有培地、10ppmのPtコロイド含有培地、ERWと10ppmのPtコロイド含有培地により培養されたサンプル間での増殖曲線の比較を9日間にわたって行った。
【0154】
図26および図27は、9日間にわたる実験結果におけるコントロール群、ERW群、Pt群、ERW+Pt群の細胞数の変化を示すグラフ図である。
【0155】
表3、表4、図24〜図26の結果より、Pt+ERW処理を行ったサンプルの増殖抑制が顕著に優れていることがわかる。また、増殖抑制能はPt濃度依存的であることもわかる。特に図26の結果においては、ERWにおける増殖増強が示唆された。また、白金濃度を10ppmと高めに設定したため、コントロールに比べてPt処理、Pt+ERW処理を行ったサンプルの増殖抑制が顕著に示された。
【0156】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0157】
<活性水素溶存水の製造方法についての実施例>
本発明の活性水素溶存水の製造方法の効果を実証するために、白金コロイドを電気分解または水素ガスバブリングなどにより得られる溶存水素を含む水溶液に添加すると、白金コロイドは溶存水素を含む水溶液の抗酸化性を長期間安定に保持するだけでなく、溶存水素を含む水溶液に触媒として作用して、水素溶存水中で活性水素を発生させて活性水素溶存水を生成すること示すデータを得る実験を行った。
【0158】
<実施例4>
本発明者は、本実施例において、超純水にNaOHを電解質として電解還元装置((株)日本トリム製、TI200)により作製した電解還元水中の白金を電子顕微鏡により観察した。電子顕微鏡による観察結果を図28に示す。
【0159】
図28に示すように、電解還元水中の白金は、白金の微粒子、白金ナノコロイドの状態で存在していることがわかる。
【0160】
また、この電解還元水中の白金の含有量を、コントロールの超純水のデータとともに、表5に示す。
【0161】
【表5】
Figure 2004330146
【0162】
このように、超微粒子である白金ナノコロイドなどの水素吸着・吸蔵金属コロイドは、金属でありながら溶液中に均一に分散することができることが明らかとなった。そして、その粒子サイズがナノメーターサイズの金属ナノコロイドは極めて強い触媒活性を有する。さらに、白金などの水素吸着・吸蔵金属は、活性水素に対して吸着能を有する。しかし、白金コロイドなどの水素吸着・吸蔵金属コロイドの生理活性については未知の点も多いため、本実施例では、電解還元水中に存在する活性水素供与体および/または活性水素生成触媒としての白金コロイドの機能および活性酸素消去能について実験を行った。
【0163】
白金コロイドの作製
エタノール還元によって白金コロイドを作製した。具体的には、ヘキサクロロ白金酸水素を、それぞれ終濃度として、0.5%Tween、10%エタノール、40mMリン酸緩衝液(pH7.0)と混合して、60℃で10〜15時間インキュベートして白金ナノコロイドを作製した。
【0164】
その結果、図29に示すような平均粒径2ナノメートルの白金が得られた。この白金ナノコロイドを用いて以下の実験を行った。
【0165】
活性水素供与体としての機能
白金ナノコロイドの活性水素供与体としての機能について、DPPH(1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル)を用いて実験を行った。DPPHは安定なラジカルとして知られており、水素の供与によりそのラジカル性を消失することが知られている。そこで、白金ナノコロイドでDPPHを処理することにより白金ナノコロイドが活性水素供与体として機能するかどうかの実験をESRによる測定により行った。ESRの測定結果を図30に示す。
【0166】
図30の結果から、白金ナノコロイドでDPPHを処理することによりDPPHのラジカル性が消失していることがわかる。
【0167】
ここで、白金ナノコロイドは強力な触媒能を有している。そのため、白金ナノコロイドがDPPHそのものを触媒作用により分解させてしまった結果、DPPHのESRシグナルが減少した可能性がある。そこで、白金ナノコロイドによってDPPHが分解されていないことを示すために、TLCを用いて確認した。TLCの結果を図31に示す。
【0168】
図31に示したように、UV照射によりDPPHは幾つかのスポットに分解されたのに対し、白金コロイドはASAと同様に活性水素補足DPPHの単一スポットを示したので、白金ナノコロイドによってDPPHは分解していないことが分かった。
【0169】
さらにこのDPPHラジカル補足活性の結果から推測される白金ナノコロイドの活性水素供与能力を算出した。その結果、白金ナノコロイド1ppmあたり約50μモルの水素を供与していると推測された。算出した白金ナノコロイドの活性水素供与能力のグラフを図32に示す。
【0170】
以上の結果から、水溶液中に遊離の水素分子の存在がない状態でも、白金ナノコロイドは単独で活性水素を供与することができると推測される。すなわち、白金ナノコロイドは活性水素による還元、たとえばエタノール由来の活性水素によってヘキサクロロ白金酸水素などが還元されることにより生成するため、その際に白金ナノコロイドは飽和濃度の活性水素を吸着することにより、単独で活性水素供与体として機能する能力を有することとなることが考えられる。
【0171】
もう一つの可能性として、白金ナノコロイドは、水素ガスなどの還元性物質が存在した場合に、水素ガスに対して触媒として作用して活性水素を生成し、活性水素を供与する可能性が考えられる。いずれにしても、白金ナノコロイドが活性水素供与体および/または活性水素生成触媒として働いていることは間違いないと考えられる。
【0172】
白金ナノコロイドの活性酸素消去能
白金ナノコロイドの活性酸素消去能について、スーパーオキシドラジカルを用いて実験を行った。
【0173】
具体的には、ヒポキサンチンおよびキサンチンオキシダーゼにより発生させたスーパーオキシドラジカルはスピントラップ剤であるDMPOにラジカルをトラップし、DMPOOHとなり、このラジカルをESRにより検出した。この際、白金ナノコロイドでスーパーオキシドラジカルを処理した場合に、ESRの信号強度が減少するかどうかの検討を行った。結果を図33に示す。
【0174】
図33に示したように、約10ppmの白金ナノコロイドによる処理により、ほぼ完全にスーパーオキシドラジカルは消去され、ESRのDMPOOH信号は減少した。また、図34に示すように、白金ナノコロイドのスーパーオキシド補足能力(活性酸素消去能)は白金ナノコロイド濃度依存的に増加した。この酵素反応では尿酸生成を伴うが、白金ナノコロイドの尿酸生成に及ぼす影響を別途検討し、酵素反応には影響していないことを確認している。
【0175】
これらの結果から他の抗酸化物質と比較、評価をするために、白金ナノコロイドの平均粒子径2nmから算出されるモル濃度を計算し、阻害率50%から算出される白金コロイドの2次反応速度定数を求めた。結果を表6に示す。
【0176】
【表6】
Figure 2004330146
【0177】
表6に示すように、白金ナノコロイドの2次反応速度定数は1.0×10(M−1−1)となり、他の抗酸化物質と比較した中でも高い活性を有する物質であることがわかった。
【0178】
ヒドロキシラジカルの消去能
次に、白金ナノコロイドのヒドロキシラジカル消去能について、フェントン反応により発生したヒドロキシラジカルを用いて実験を行った。
【0179】
具体的には、フェントン反応により発生したヒドロキシラジカルはスピントラップ剤であるDMPOにラジカルをトラップし、DMPOOHとなり、このラジカルをESRにより検出した。この際、白金ナノコロイドでヒドロキシラジカルを処理した場合に、ESRの信号強度が減少するかどうかの検討を行った。結果を図35に示す。
【0180】
図35に示したように、約5ppmの白金ナノコロイドによる処理により、ほぼ完全にヒドロキシラジカルは消去され、ESRのDMPOOH信号は減少した。また、図36に示すように、白金ナノコロイドのヒドロキシラジカル補足能力(活性酸素消去能)は白金ナノコロイド濃度依存的に増加した。
【0181】
過酸化水素の消去能
次に、白金ナノコロイドの過酸化水素消去能について、市販の過酸化水素を用いて実験を行った。
【0182】
具体的には、過酸化水素を白金ナノコロイドと5分間反応させ、その後の残存過酸化水素量についてABTS−POD法を用いて測定した。その結果、図37に示すように、白金コロイドは、濃度依存的に過酸化水素消去能を有することがわかった。
【0183】
以上の結果から、エタノール還元により合成された白金ナノコロイドはスーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素に対し、高い消去活性を有することが明らかとなった。
【0184】
すなわち、透過型電子顕微鏡による解析の結果、電解還元水中に白金ナノコロイドが存在することが明らかとなった。また合成白金ナノコロイドはDPPHラジカル補足能を示したことから、活性水素供与体および/または活性水素生成触媒として機能することがわかった。また白金ナノコロイドはスーパーオキシドラジカル、ヒドロキシラジカル、過酸化水素などの活性酸素を消去した。以上の結果から、白金ナノコロイドは活性水素供与体および/または活性水素生成触媒として機能し、こうして得られた活性水素が種々の生理活性機能を発揮するという活性水素還元水説が強く支持される。
【0185】
【発明の効果】
上記の結果より、水素吸着・吸蔵金属コロイドを電気分解または水素ガスバブリングなどにより得られる溶存水素を含む水溶液に添加すると、水素吸着・吸蔵金属コロイドは溶存水素を含む水溶液の抗酸化性を長期間安定に保持するだけでなく、溶存水素を含む水溶液に触媒として作用して、水素溶存水中で活性水素を発生させて活性水素溶存水を生成することがわかる。
【0186】
よって、本発明の活性水素溶存水の製造方法は、強力な抗酸化作用を長期間安定的に保持する活性水素溶存水を簡便に製造することのできる、活性水素溶存水の製造方法である。また、本発明の活性水素溶存水は、本発明の活性水素溶存水の製造方法により得られるため、強力な抗酸化作用を長期間安定的に保持する活性水素溶存水である。
【0187】
さらに、上記のフォーカスアッセイより、本発明の活性水素溶存水の製造方法により得られる活性水素溶存水は、強力な抗酸化作用を長期間安定的に保持するため、マウス、ヒトをはじめとする哺乳類動物の正常細胞が形質転換を起こして癌細胞に変異することを抑制し、優れた発癌抑制作用を有することがわかる。
【0188】
よって、本発明の発癌抑制剤は、本発明の活性水素溶存水を含有しているため、強力な抗酸化作用を長期間安定的に保持し、マウス、ヒトをはじめとする哺乳類動物の正常細胞が形質転換を起こして癌細胞に変異することを抑制し、さらに公知の抗癌剤のような副作用のない、発癌抑制剤である。
【図面の簡単な説明】
【図1】白金コロイドと、電解還元水と、を含有する発癌抑制剤を製造するために用いる、電解槽の概要を示す模式図である。
【図2】白金コロイドと、電解還元水と、を含有する発癌抑制剤を製造するために用いる、電気分解の効率を高めた電解槽の概要を示す模式図であり、(a)は、電解槽を2つ直列に連結した装置(日本トリム製TI−7000S)、(b)は、電解槽を3つ直列に連結した装置(日本トリム製TI−7000 3S)、また、(c)は、電解還元水が循環して3つの電解槽を何度も通過するようにした装置(循環電解還元装置)を示す。
【図3】透過型電子顕微鏡による実施例1〜4で用いられる白金コロイドの表面状態を表す図である。
【図4】BALB/3T3細胞の正常細胞(左上)と形質転換細胞(右下)の顕微鏡写真を示す図である。
【図5】実施例1で行なう化学物質を用いるフォーカスアッセイ法の一例を説明する実験計画図である。
【図6】実施例2で行なう化学物質を用いるフォーカスアッセイ法の一例を説明する実験計画図である。
【図7】実施例2におけるコントロールr−4(左2枚)とMCA+PMAのみ処理したプレートr−3(中央2枚)とERW+Pt1ppmを処理したプレートo−1(右2枚)との比較を示す図である。
【図8】実施例2におけるコントロールr−4(左2枚)とMCA+PMAのみ処理したプレートr−3(中央2枚)とERW+Pt3ppmを処理したプレートp−1(右2枚)との比較を示す図である。
【図9】実施例2におけるコントロールr−4(左2枚)とMCA+PMAのみ処理したプレートr−3(中央2枚)とERW+Pt10ppmを処理したプレートq−1(右2枚)との比較を示す図である。
【図10】実施例2におけるコントロールr−4(左2枚)とMCA+PMAのみ処理したプレートr−3(中央2枚)とPt1ppmを処理したプレートo−2(右2枚)との比較を示す図である。
【図11】実施例2におけるコントロールr−4(左2枚)とMCA+PMAのみ処理したプレートr−3(中央2枚)とPt3ppmを処理したプレートp−2(右2枚)との比較を示す図である。
【図12】実施例2におけるコントロールr−4(左2枚)とMCA+PMAのみ処理したプレートr−3(中央2枚)とPt10ppmを処理したプレートq−2(右2枚)との比較を示す図である。
【図13】実施例2の1回目のフォーカスアッセイの結果を集計したグラフ図である。
【図14】実施例2の1回目のフォーカスアッセイの結果を集計したグラフ図である。
【図15】実施例2の1回目のフォーカスアッセイにおける直径6mm以上のコロニーの比較を示すグラフ図である。
【図16】実施例2の1回目のフォーカスアッセイにおける直径4〜5mmのコロニーの比較を示すグラフ図である。
【図17】実施例2の1回目のフォーカスアッセイにおける直径2〜3mmのコロニーの比較を示すグラフ図である。
【図18】実施例2の2回目のフォーカスアッセイの結果を集計したグラフ図である。
【図19】実施例2の2回目のフォーカスアッセイの結果を集計したグラフ図である。
【図20】実施例2の2回目のフォーカスアッセイにおける直径2〜3mmのコロニーの比較を示すグラフ図である。
【図21】実施例3の2回目のフォーカスアッセイの結果を集計したグラフ図である。
【図22】実施例2の3回目のフォーカスアッセイの結果を集計したグラフ図である。
【図23】実施例2の3回目のフォーカスアッセイにおける直径2〜3mmのコロニーの比較を示すグラフ図である。
【図24】表4に示す実験結果におけるコントロール群(左上)、ERW群(右上)、窒素注入RW群(左下)、水素注入MQ群(右下)の細胞数の変化を示すグラフ図である。
【図25】表5に示す実験結果におけるコントロール群(左上)、ERW群(右上)、NaOH群(左下)の細胞数の変化を示すグラフ図である。
【図26】9日間にわたる実験結果におけるコントロール群、ERW群、Pt群、ERW+Pt群の細胞数の変化を示すグラフ図である。
【図27】9日間にわたる実験結果におけるコントロール群、ERW群、Pt群、ERW+Pt群の細胞数の変化を示すグラフ図である。
【図28】白金ナノコロイドの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図29】白金ナノコロイドの電子顕微鏡写真を示す図である。
【図30】白金ナノコロイドでDPPHを処理した場合のESRによる測定結果を示す図である。
【図31】白金ナノコロイドでDPPHを処理した場合のTLCの結果を示す図である。
【図32】ESRの測定結果から算出した白金ナノコロイドの活性水素供与能力を示すグラフ図である。
【図33】白金ナノコロイドでスーパーオキシドラジカルを処理した場合のESRによる測定結果を示す図である。
【図34】ESRの測定結果から算出した白金ナノコロイドのスーパーオキシドラジカル消去能を示すグラフ図である。
【図35】白金ナノコロイドでヒドロキシラジカルを処理した場合のESRによる測定結果を示す図である。
【図36】ESRの測定結果から算出した白金ナノコロイドのヒドロキシラジカル消去能を示すグラフ図である。
【図37】ABTS−POD法による測定結果から算出した白金ナノコロイドの過酸化水素消去能を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1 第1の電解槽、2 第2の電解槽、3 第3の電解槽、10 電解層、11 陰極、12 陰極室、13 陽極、14 陽極室、15 隔膜。

Claims (15)

  1. 水溶液中の溶存水素を水素吸着・吸蔵金属コロイドによる触媒反応により活性化するステップを備える、活性水素溶存水の製造方法。
  2. 前記活性化するステップは、溶存水素を含む水溶液中に水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップを含む、請求項1に記載の活性水素溶存水の製造方法。
  3. 前記活性化するステップは、水素吸着・吸蔵金属コロイドを含む水溶液中に、溶存水素を発生させるステップを含む、請求項1に記載の活性水素溶存水の製造方法。
  4. 前記水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップは、白金コロイド、パラジウムコロイド、バナジウムコロイド、鉄コロイド、珪酸コロイドからなる群より選ばれる1種以上の水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップを含む、請求項2に記載の活性水素溶存水の製造方法。
  5. 前記水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップは、結晶を含む岩石の溶解液に含まれる珪酸コロイドを添加するステップを含む、請求項4に記載の活性水素溶存水の製造方法。
  6. 前記水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップは、平均粒子径が0.3nm〜1μmの範囲にある金属微粒子により形成される水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップを含む、請求項2に記載の活性水素溶存水の製造方法。
  7. 前記水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップは、水素吸着・吸蔵金属の質量に換算して0.1μg/l〜500mg/lの範囲の濃度となるように前記水素吸着・吸蔵金属コロイドを添加するステップを含む、請求項2に記載の活性水素溶存水の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の活性水素溶存水の製造方法により得られ、哺乳類細胞に対して発癌抑制機能を有する、活性水素溶存水。
  9. 溶存水素を含む水溶液中に水素吸着・吸蔵金属コロイドを含有する発癌抑制剤。
  10. 前記溶存水素を含む水溶液は、活性水素溶存水である、請求項9に記載の発癌抑制剤。
  11. 前記水素吸着・吸蔵金属コロイドは、白金コロイド、パラジウムコロイド、バナジウムコロイド、鉄コロイド、珪酸コロイドからなる群より選ばれる1種以上の水素吸着・吸蔵金属コロイドである、請求項9に記載の発癌抑制剤。
  12. 前記水素吸着・吸蔵金属コロイドは、結晶を含む岩石の溶解液に含まれる珪酸コロイドである、請求項9に記載の発癌抑制剤。
  13. 前記水素吸着・吸蔵金属コロイドは、平均粒子径が0.3nm〜1μmの範囲にある金属微粒子により形成される水素吸着・吸蔵金属コロイドである、請求項9に記載の発癌抑制剤。
  14. 前記水素吸着・吸蔵金属コロイドの濃度は、水素吸着・吸蔵金属の質量に換算して0.1μg/l〜500mg/lの範囲である、請求項9に記載の発癌抑制剤。
  15. 前記溶存水素を含む水溶液は、酸化還元電位が−1000mV〜−5mVの範囲にある、請求項9に記載の発癌抑制剤。
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