JP4510261B2 - 回分式水処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回分式水処理装置に関し、特に、放流水質の向上を図ることが可能となる回分式水処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の回分式水処理装置における上澄水排出装置には、フロートアーム型に分類される例として、特公昭59-1362号公報に示される構造を有するものがある。
【0003】
このフロートアーム型上澄水排出装置の稼働においては、排出工程での処理水排出時に、アーム位置によって、上澄水排出手段の下降速度が変化する。そこで、機械的にアーム位置を検出し、アーム位置が変化する都度、下降速度を変化させることで、上澄水排出装置の下降速度をなるべく一定に保つようにして越流量の変化を少なくする。この機械的なアーム位置の検出は、検出スイッチによって行われ、検出スイッチの個数によって精度が決定される。
【0004】
また、フロートアーム型上澄水排出装置は、フロートアーム型上澄水排出装置が下降するに従い、越流量が増加する機械的特性を有する。これは、鉛直方向の速度成分が、アームの速度v、およびアームの水平方向に対する角度θとから、vcosθで表され(θ:90°〜0°)、排出終了水位に近づく程(θが小さくなる程)、越流速度が増大するためである。回分槽下部に活性汚泥が沈降するが、沈降性の悪い活性汚泥では活性汚泥界面が高い位置にある。このような沈降性の悪い活性汚泥によって、活性汚泥界面が高い位置にあった場合では、越流量の増加に伴って、上澄水と共に活性汚泥の一部が巻き込まれ、活性汚泥が流出することがある。あるいは、上澄水排出が進んで、回分槽内に形成された活性汚泥界面が、排出終了水位近傍にあった場合、上澄水と共に活性汚泥の一部が巻き込まれ、活性汚泥が流出することがある。活性汚泥の流出は処理水を悪化させ、水処理装置において望ましくない。従って、排水終了水位近傍では、下降速度の微調整が望まれる。しかし、フロートアーム型上澄水排出装置は、前述のように排出終了水位に近づく程、下降速度が増加するので、微調整が困難である。
【0005】
また、従来のフロートアーム型上澄水排出装置の制御は、下降速度多段切換式により、変速段数は2ないし4段であり、段数が限られる。そのため、排出工程時間を処理水量(回分槽水位)に対応させることができない。このため、一般的には、最大処理水量を排出できるように、排出工程時間を最大に設定する必要があり、無駄時間を生じ、さらには、処理水量が少なくなった(回分槽水位が低くなった)時点で、撹拌・曝気工程や沈殿工程に早く入りたい場合でも、前記理由により排出工程時間を最大に設定しているために、撹拌・曝気工程や沈殿工程を長くできないという問題もあった。
【0006】
さらに、従来のフロートアーム型上澄水排出装置は、回分槽水位を排出工程時に活用しないオープンループ制御であるために、越流量が時間と共に増大する傾向があった。
【0007】
また、上記従来技術では下降速度多段切換式を採用しているものの、変速段数が有限のために、排出工程終了時の水位近傍では、フロートアーム型上澄水排出手段の下降速度が大きくなるという欠点が改善されていなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、越流量を一定にし、汚泥の巻き上げを防止する回分式水処理装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、フロートアーム型やフロートガイド型の上澄水排出手段の下降速度を水面位置に応じて制御することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、回分槽水位を計測し、上澄水排出手段の下降速度を任意に制御することで、回分槽からの越流量を制御する。
【0011】
すなわち、本発明の回分式水処理装置は、流入手段および排水手段を備えた回分槽と、上澄水を排水手段に導くための上澄水排出手段と、上澄水排出手段を動かす駆動手段と、回分槽水位を計測する回分槽水位計測手段と、駆動手段を制御する排出制御手段とからなる。前記排出制御手段に、回分槽水位計測手段からの出力信号を入力して、回分槽水位と、処理水の排出時間との関係を表現したアルゴリズムに基づいて、上澄水排出手段の下降量を演算する手段を設ける。
【0012】
上澄水排出手段は、回分槽水位の設定された最高位置と最低位置との間を移動するようになっており、上澄水排出手段が回分槽水位に着水したことを検知する着水検知手段を有し、上澄水排出手段が着水したことを検知する着水検知手段からの出力信号を、前記排出制御手段に入力できるようにすることが好ましい。
【0013】
汚泥界面を計測する回分槽汚泥界面計測手段を有し、前記排出制御手段に、回分槽汚泥界面計測手段からの出力信号を入力できるようにすることが好ましい。演算には、PID制御を取り入れるのが好ましい。制御因子は、回分槽水位及び汚泥界面位置である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の回分式水処理装置は、図1に示すように、被処理水を収容し、水の浄化を行う回分槽1(寸法:例えば、6800mm×6800mm×有効水深5000mm)に、上澄水排出手段5と、上澄水排出手段5を動かす駆動手段4と、回分槽水位を計測して排出制御手段3に出力する回分槽水位計測手段2と、回分槽水位計測手段2からの信号を受け、駆動手段4に出力する排出制御手段3と、流入手段6と、排水手段7とを備える。また、回分槽水位計測手段2は、上澄水排出手段5の着水位置を検知する機能も有することが好ましく、出力信号は排出制御手段3に出力する。
【0015】
上澄水排出手段5は、上澄水を排出手段に導くために、特公昭59−1362号公報のように構成され、最高位置と最低位置の間で、駆動装置4により下降量調整可能に上下できる。
【0016】
駆動装置4は、該上澄水排出手段5が常に水平であり、上下方向に移動できるように、例えば同期式電動機の回転を直線運動に変換する機構を備える。
【0017】
回分槽水位計測手段2は、回分槽1の最低水位より下に設置する圧力感知式の水位計や、回分槽上部より発信した超音波が水面で反射する往復時間を測定して、水位に換算して計測する方式の装置などでよい。
【0018】
図4に、排出制御手段3の構成ブロック図を示した。
【0019】
排出制御手段3には、データ収集部101と、演算部102と、制御信号変換部103と、工程制御部104と、パラメータ設定部105と、信号接点出力部106とを備える。具体的には、電子演算回路で実現してもよいし、市販の電子計算機とソフトウェアおよび適当なプログラムにより実現してもよい。
【0020】
前記回分槽水位計測手段2は、データ収集部101と接続しており、データを記憶する。後述する回分槽汚泥界面計測手段を付設する場合にも、同様に、データ収集部101に接続する。データ収集部101からの回分槽水位の信号と、パラメータ設定部105からの設定排出時間と、工程制御部104からの排出工程信号とにより、演算部102において、上澄水排出手段5の適切な下降量を算出する。
【0021】
下降量は、制御信号変換部103へ入力され、制御信号に変換した後、駆動手段4へ出力する。また工程制御部104から、上澄水排出手段5の上昇・下降信号が、信号接点出力部106を経由して駆動手段4へ出力される。
【0022】
下降量の算出は、工程制御部104において排出工程中、上澄水排出手段5が下降を始めてから、上澄水排出手段5の着水検知を回分槽水位計測手段2からの出力信号の変化から検知すると同時に、開始する。適切な下降量は、現在の回分槽水位と、パラメータ設定部105から出力される設定排出時間とを用いて、後述する実施例1のように算出する。
【0023】
本発明の回分式水処理装置では、以上のように、回分槽水位を計測して排出制御手段3に出力し、排出制御手段3で目標値・制御量を演算し、排出時間を設定して、上澄水排出手段5の制御量を変化させて越流量を制御するので、良好な処理水の排出を行うことができる。
【0024】
図2に示した本発明の回分式水処理装置の異なる実施例では、回分槽水位を計測して排出制御手段3に出力する回分槽水位計測手段2の出力信号の他に、上澄水排出手段5の着水を水位変化により検知し、出力信号を排出制御手段3に出力する上澄水排出手段5の着水を検知する着水検知手段8を回路として備える。着水検知手段8は、上記の回分槽水位計測手段2を用いた方法でもよいし、あるいは、上澄水排出手段5に取り付けられ、フロートと検出スイッチから構成されてもよい。その他の構成、動作および適切な下降量の算出については図1に示した実施例と同様にする。
【0025】
図3に示した本発明の回分式水処理装置の異なる実施例では、汚泥界面10を計測して排出制御手段3に出力する回分槽汚泥界面計測手段9を備える。回分槽汚泥界面計測手段9は、例えば、(株)西原環境衛生研究所製の「NU−AL」自動汚泥界面計でよい。これは、超音波の減衰量が汚泥界面10の変化に対して、比例関係にあることを利用して、内蔵モータが作動してセンサーを上下させ、センサー位置(界面)を出力する構成である。あるいは、汚泥界面10が測定できて、出力できる構成であればよい。その他の構成、動作については図1、2に示した実施例と同様にする。そして、適切な下降量の算出に、回分槽汚泥界面計測手段9が計測した汚泥界面10を加味し、後述する実施例2のように算出する。
【0026】
本発明の回分式水処理装置での水処理運転工程は下記の方法による。
【0027】
回分槽1へ汚水が流入手段6から投入され、撹拌・曝気工程、沈殿工程を経て、排出工程で上澄水が上澄水排出手段5を経由して排水手段7から排水される。排出制御手段3は、排出工程において、回分槽1に設置された回分槽水位計測手段2から回分槽水位を得て、予め設定された排出時間から、上澄水排出手段5の適切な単位時間当たりの下降量すなわち下降速度を算出する。その下降速度となるように、排出制御手段3から駆動手段4へ制御量が出力され、上澄水排出手段5の速度制御を行なう。具体的には、駆動装置4の電動機の回転数により速度制御する。排出工程終了時には、上澄水排出手段5を上昇させ、排出工程を終了する。
【0028】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0029】
(実施例1)
図1に示した回分式水処理装置を用いて、上澄水排出手段5の越流量一定制御運転を行った。
【0030】
図5は、回分式水処理装置の越流負荷一定制御運転時の回分槽水位の経時変化を説明するための概念図である。排出工程中の排出時間と回分槽水位変化に着目して図示している。
【0031】
HWLは排出工程開始時の回分槽高水位であり、LWLは排出工程終了時の回分槽排出水位である。t1は上澄水排出手段5の下降開始から着水までの時間であり、上澄水排出手段5が空中を移動する時間である。t2は着水から排出終了までの時間であり、このt2の間に越流負荷一定制御を行う。排出工程中の回分槽の水位低下を監視することにより、上澄水排出手段5の着水を検知し、着水から排出終了までの時間t2を算出する。
【0032】
越流負荷を一定にするということは、回分槽が直方体の場合には回分槽水位の時間変化を一定にすることと等価であるから、
【数1】
Figure 0004510261
となる。ただし、ΔHは微小水位変化、Δtは微小時間変化である。
【0033】
以下に、速度形制御・位置形制御について、説明する。
【0034】
速度形制御の場合には、HWLからLWLまでの平均の回分槽水位変化速度は前記(数1)で表され、回分槽高水位HWL、回分槽排出水位LWL、設定排出時間Td、下降開始から着水までの時間t1を用いて書き換えると、
【数2】
Figure 0004510261
となる。(数2)の一定値が、処理水排出時に目標とすべき平均勾配である。
【0035】
上澄水排出手段5の着水以降、(数2)の一定値を目標値(SV)とし、制御周期毎に計測されたΔHから、ΔH/Δtを演算した結果をプロセス値(PV)とし、駆動手段4をPID制御した。
【0036】
位置形制御の場合には、時刻tでの回分槽目標水位H(t)が、上澄水排出手段5の下降開始からの時間tの関数になり、
【数3】
Figure 0004510261
となる。
【0037】
上澄水排出手段5の着水以降、(数3)によって与えられる回分槽目標水位H(t)を目標値(SV)とし、制御周期毎に回分槽水位計測手段2により得られる回分槽水位をプロセス値(PV)とし、駆動手段4をPID制御した。
【0038】
図6は、水処理装置の越流負荷一定制御運転時の回分槽水位の経時変化を示すグラフである。回分槽初期水位が6.9[m]、5.8[m]の両者について、設定排出時間を105分とし、越流負荷一定制御を行った。速度形制御および位置形制御のいずれにおいても結果は同じで、初期水位が1.1[m]異なるにも関わらず、排出時間の等しいことが判る。
【0039】
本実施例においては回分槽形状が直方体であったが、回分槽形状が直方体以外でも、前記速度形制御・位置形制御のいずれも適用可能である。ただし、水平断面積が一定でない場合には、回分槽水位の下降速度が一定であっても、越流量が一定とは限らない。
【0040】
(実施例2)
図3に示した回分式水処理装置を用いて、排出制御手段3に、回分槽水位計測手段2からの計測信号と、回分槽汚泥界面計測手段9からの計測信号とを入力し、汚泥界面に近いほど、上澄水排出手段5の下降速度を減速させて、越流量を減少する運転を行った。ただし、汚泥界面はLWLより低い(LWL≧DWL)ことが必要である。
【0041】
時刻tでの回分槽目標水位H'(t)が、上澄水排出手段5の下降開始からの時間tおよび汚泥界面の水位DWLの関数であり、
【数4】
Figure 0004510261
とした。ただし、kは調整パラメータである。
【0042】
上澄水排出手段5の着水以降、時間tと汚泥界面水位DWLによる(数4)で与えられる回分槽目標水位を目標値(SV)とし、制御周期毎に計測される回分槽水位をプロセス値(PV)とし、駆動手段4をPID制御した。(数4)は、汚泥界面水位DWLが高い場合には、早めに減速し、汚泥界面DWLが低い場合には、減速がほとんどないように設定されている。
【0043】
図7は、回分槽汚泥界面計測手段9を併用した回分式水処理装置の制御運転時の回分槽水位の経時変化を示すグラフである。汚泥の沈降性がよい場合(a)でも、悪い場合(b)でも、排出時間の等しいことが分かる。
【0044】
上澄水の排出による汚泥巻き上げはほとんど見られなかった。従って、汚泥界面の上昇に伴う汚泥流出が防止できた。
【0045】
また、回分槽汚泥界面計測手段9の出力の変化により、上澄水排出手段5の下降を停止し、汚泥流出を防止する運転も可能である。これにより、バルキング等による汚泥界面の上昇に伴う汚泥流出による排出水の水質悪化を未然に防止することができる。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば以下の効果がある。
【0047】
(1)一定の越流量で上澄水を排出することができる。
【0048】
(2)任意の排出時間を設定できるので、撹拌・曝気工程、沈殿工程の設定時間を長めに設定できる。そのため、高負荷時の対応範囲が拡大する。
【0049】
(3)汚泥巻き上げが少なくなり水質が向上する。さらに、回分槽汚泥界面計測手段を併用することにより、汚泥界面の上昇に伴う汚泥流出による排出水質悪化を未然に防止可能となる。
【0050】
(4)上澄水排出手段の着水検出が回分槽水位計で代替できる。また、本発明は水処理装置以外でも、排出速度を一定に保ちたいような液体排出装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の回分式水処理装置の一実施例を示す概略縦断面図である。
【図2】 本発明の回分式水処理装置の異なる実施例を示す概略縦断面図である。
【図3】 本発明の回分式水処理装置の異なる実施例を示す概略縦断面図である。
【図4】 本発明の回分式水処理装置の排出制御手段の一実施例を示す構成ブロック図である。
【図5】 越流負荷一定制御運転の概念図である。
【図6】 本発明の回分式水処理装置による越流負荷一定制御運転時のグラフである。
【図7】 本発明の回分式水処理装置において、回分槽汚泥界面計測手段を併用した制御運転時のグラフである。
【符号の説明】
1 回分槽
2 回分槽水位計測手段
3 排出制御手段
4 駆動手段
5 上澄水排出手段
6 流入手段
7 排水手段
8 着水検知手段
9 回分槽汚泥界面計測手段
10 汚泥界面
101 データ収集部
102 演算部
103 制御信号変換部
104 工程制御部
105 パラメータ設定部
106 信号接点出力部

Claims (3)

  1. 流入手段および排水手段を備えた回分槽と、上澄水を排水手段に導くための上澄水排出手段と、上澄水排出手段を動かす駆動手段と、回分槽水位を計測する回分槽水位計測手段とを備える回分式水処理装置において、前記回分槽水位計測手段が計測した回分槽水位と、排出工程における処理水の設定排出時間とに基づき、前記上澄水排出手段の下降量を算出して、前記駆動手段を制御する排出制御手段を備えることを特徴とする回分式水処理装置。
  2. 前記上澄水排出手段水を検知する着水検知手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の回分式水処理装置。
  3. 汚泥界面を計測する回分槽汚泥界面計測手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回分式水処理装置。
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