JP4510250B2 - 半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐半田性はもちろん、硬化性および流動性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、トランジスタ,IC,LSI等の半導体素子は、コスト,量産性の観点から、プラスチックを用いた樹脂封止型の半導体装置が主流になっている。この種の樹脂封止には、従来からエポキシ樹脂組成物が用いられており良好な成績を収めている。例えば、上記エポキシ樹脂組成物によりパッケージングされた半導体装置を表面実装する際には、赤外リフロー、ベーパーフェイズリフロー、半田浸漬の半田工程が採用されているが、これら実装工程では、半導体装置は220〜260℃の高温に曝されることとなる。従って、エポキシ樹脂組成物によりパッケージングされた半導体装置は、その内部にまで浸入した水分が急激に気化して封止樹脂部分にクラックが形成され、それが外部にまで達し、半導体装置の信頼性を著しく低下させてしまうという問題が発生する。このため、上記半田実装時のような高温での実装における優れた耐性が要求されている。
【0003】
このような要求に対して、例えば、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂を主剤とした、低吸湿化および低弾性率化を図った半導体封止用エポキシ樹脂組成物が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂を主剤としたエポキシ樹脂組成物は、低吸湿化および低弾性率化を図ることはできるものの、硬化性に劣るため、半導体素子を樹脂封止する際の成形時間が長くなり、成形サイクルが低下する、また金型が早く汚れるため成形を連続して行うことが困難になるという欠点を有している。また、高粘度タイプのジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂を用いると、硬化性は改善される傾向にあるもののそれでも充分であるとはいい難いものである。さらに、高粘度タイプのジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂を用いた場合、成形時にワイヤー流れやダイシフト等の問題が発生し易い。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、高い耐半田性はもちろん、優れた硬化性と流動性を有し、成形時間の短縮、金型汚れの低減を図ることのできる半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の(A)〜(C)成分を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂(X)と、下記の一般式(1)で表される、150℃におけるICI粘度が0.6〜1.0Pa・sであるジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(Y)とからなり、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂(X)とジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(Y)の重量混合割合(X/Y)が、X/Y=7/3〜8/2の範囲である混合エポキシ樹脂。
【化3】
(B)フェノール樹脂。
(C)無機質充填剤。
【0007】
また、本発明は、上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる半導体装置を第2の要旨とする。
【0008】
すなわち、本発明者らは、高い耐半田性と優れた硬化性および流動性を有するとともに、低吸湿化および低弾性率化が図られる封止材料を得るために一連の研究を重ねた。その結果、150℃におけるICI粘度が特定範囲の値のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂と、流動性に優れたビフェニル型エポキシ樹脂を併用した混合エポキシ樹脂を用いると、所期の目的が達せられることを見出し本発明に到達した。
【0009】
そして、上記混合エポキシ樹脂において、両者の重量混合割合を特定の範囲に設定するため、低吸湿性、低弾性化が図られ、耐半田性に優れるとともに成形時の硬化性に優れキュアサイクルを短縮することができるようになる。また、成形時の樹脂粘度が低いため、ワイヤー流れやダイシフト等の成形時のトラブルが生じ難くなることを突き止めた。
【0010】
さらに、前記一般式(2)で表される多面体形状の金属水酸化物を用いると、優れた難燃性が付与されるとともに従来の難燃剤である臭素化エポキシ樹脂やアンチモン化合物の使用と比較すると臭素の影響がなく半導体素子やアルミニウム配線の腐食等が生じず耐湿信頼性が向上して長寿命になり、また、環境汚染等の問題が生じないという効果が得られるようになる。さらに、従来のような平板状の結晶形状ではなく上記特殊な多面体の結晶形状を有するため、流動性に優れており成形性が一層向上するようになることを突き止めた。
【0011】
また、赤燐化合物を用いると、その難燃効果が高いために極微量の添加量で所望の難燃効果を得ることができることから、流動性および成形性に優れた封止材料を得ることができるようになる。
【0012】
なお、上記一般式(2)で表される多面体形状の金属水酸化物とは、図2に示すような、六角板形状を有するもの、あるいは、鱗片状等のように、いわゆる厚みの薄い平板形状の結晶形状を有するものではなく、縦,横とともに厚み方向(c軸方向)への結晶成長が大きい、例えば、板状結晶のものが厚み方向(c軸方向)に結晶成長してより立体的かつ球状に近似させた粒状の結晶形状、例えば、略12面体,略8面体,略4面体等の形状を有する金属水酸化物をいい、通常、これらの混合物である。もちろん、上記多面体形状は、結晶の成長のしかた以外にも、粉砕や摩砕等によっても多面体の形は変化し、より立体的かつ球状に近似させうることができる。この多面体形状の金属水酸化物の結晶形状を表す走査型電子顕微鏡写真(倍率50000倍)の一例を図1に示す。
【0013】
上記金属水酸化物の形状について、略8面体形状のものを例にしてさらに詳細に説明する。すなわち、上記金属水酸化物の一例である8面体形状のものは、平行な上下2面の基底面と外周6面の角錐面とからなり、上記角錐面が上向き傾斜面と下向き傾斜面とが交互に配設された8面体形状を呈している。
【0014】
より詳しく説明すると、従来の厚みの薄い平板形状の結晶形状を有するものは、例えば、結晶構造としては六方晶系であり、図3に示すように、ミラー・ブラベー指数において(00・1)面で表される上下2面の基底面10と、{10・0}の型面に属する6面の角筒面11で外周が囲まれた六角柱状である。そして、〔001〕方向(c軸方向)への結晶成長が少ないため、薄い六角柱状を呈している。
【0015】
これに対し、多面体形状の金属水酸化物は、図4に示すように、結晶成長時の晶癖制御により、(00・1)面で表される上下2面の基底面12と、{10・1}の型面に属する6面の角錘面13で外周が囲まれている。そして、上記角錘面13は、(10・1)面等の上向き傾斜面13aと、(10・−1)面等の下向き傾斜面13bとが交互に配設された特殊な晶癖を有する8面体形状を呈している。また、c軸方向への結晶成長も従来のものに比べて大きい。図4に示すものは、板状に近い形状であるが、さらにc軸方向への結晶成長が進み、晶癖が顕著に現れて等方的になったものを図5に示す。このように、本発明の金属水酸化物は、正8面体に近い形状のものも含むのである。すなわち、基底面の長軸径と基底面間の厚みとの比率(長軸径/厚み)は、1〜9が好適である。この長軸径と厚みとの比率の上限値としてより好適なのは、7である。なお、上記ミラー・ブラベー指数において、「1バー」は、「−1」と表示した。
【0016】
このように、多面体形状の金属水酸化物が、外周を囲む6つの面が、{10・1}に属する角錘面であることは、つぎのことからわかる。すなわち、多面体形状の金属水酸化物の結晶を、c軸方向から走査型電子顕微鏡で観察すると、この結晶は、c軸を回転軸とする3回回転対称を呈している。また、粉末X線回折による格子定数の測定値を用いた(10・1)面と{10・1}の型面との面間角度の計算値が、走査型電子顕微鏡観察における面間角度の測定値とほぼ一致する。
【0017】
さらに、多面体形状の金属水酸化物は、粉末X線回折における(110)面のピークの半価幅B110 と、(001)面のピークの半価幅B001 との比(B110 /B001 )が、1.4以上である。このことからも、c軸方向への結晶性が良いことと、厚みが成長していることが確認できる。すなわち、従来の水酸化マグネシウム等の結晶では、c軸方向への結晶が成長しておらず、(001)面のピークがブロードで半価幅B001 も大きくなる。したがって(B110 /B001 )の価は、小さくなる。これに対し、多面体形状の金属水酸化物では、c軸方向の結晶性が良いために、(001)面のピークが鋭く、細くなり、半価幅B001 も小さくなる。したがって(B110 /B001 )の価が大きくなるのである。
【0018】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0019】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、2種類のエポキシ樹脂からなる混合エポキシ樹脂(A成分)と、フェノール樹脂(B成分)と、無機質充填剤(C成分)を用いて得られるものであり、通常、粉末状あるいはこれを打錠したタブレット状になっている。または、エポキシ樹脂組成物を溶融混練した後、略円柱状等の顆粒体に成形した顆粒状、さらにシート状に成形したシート状の封止材料となっている。
【0020】
上記2種類のエポキシ樹脂からなる混合エポキシ樹脂(A成分)のうち、一方は、下記の一般式(1)で表される特定のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂であり、低吸湿性を示すものである。
【0021】
【化4】
【0022】
上記式(1)において、Rとしては、流動性および硬化性という点から、水素原子が特に好ましい。
【0023】
そして、上記ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂としては、ICI粘度計で測定される150℃での粘度が0.6〜1.0Pa・sでなければならない。すなわち、150℃での粘度が0.4Pa・s未満では、優れた硬化性を奏することができないからである。
【0024】
このような特定のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂としては、エポキシ当量が260〜300、軟化点が70〜90℃のものが好ましく、特に好ましくはエポキシ当量が270〜290、軟化点が80〜90℃である。
【0025】
つぎに、上記混合エポキシ樹脂のうち、他方のエポキシ樹脂成分は、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂であり、例えば、下記の一般式(3)で表されるものがあげられる。
【0026】
【化5】
【0027】
上記一般式(3)中のR1 〜R4 で表される、−H(水素)または炭素数1〜5のアルキル基のうち、上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の直鎖状または分岐状の低級アルキル基があげられ、特にメチル基が好ましく、上記R1 〜R4 は互いに同一であっても異なっていてもよい。なかでも、低吸湿性および反応性という観点から、上記R1 〜R4 が全てメチル基である下記の式(4)で表される構造のビフェニル型エポキシ樹脂を用いることが特に好適である。
【0028】
【化6】
【0029】
そして、A成分である混合エポキシ樹脂の、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂(X)とジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(Y)の重量混合割合(X/Y)は、X/Y=7/3〜8/2の範囲に設定する必要がある。すなわち、重量混合割合(X/Y)が上記範囲を外れる、例えば、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂(X)が8を超え多くなると、流動性には優れるものの、低吸湿性および低弾性率性に劣るようになる傾向がみられ、逆にビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂(X)が5未満と少なくなると、低吸湿性および低弾性率性に優れるものの流動性および硬化性に劣る傾向がみられるからである。
【0030】
さらに、本発明において、A成分である混合エポキシ樹脂以外に、他のエポキシ樹脂を用いてもよい。上記他のエポキシ樹脂としては、特に限定するものではなく従来公知のものが用いられる。例えば、ビスフェノールA型,フェノールノボラック型,クレゾールノボラック型等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0031】
そして、上記他のエポキシ樹脂を併用する際の、A成分である混合エポキシ樹脂の占める割合は、エポキシ樹脂成分全体中70〜100重量%の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくはエポキシ樹脂成分全体中90〜100重量%の範囲である。すなわち、A成分である混合エポキシ樹脂の占める割合が70重量%を下回ると、本発明の効果である、優れた耐半田性および硬化性、さらに低吸湿化および低弾性率化を図ることが困難となるからである。
【0032】
上記混合エポキシ樹脂(A成分)とともに用いられるフェノール樹脂(B成分)は、エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであれば特に限定するものではなく従来公知の各種のフェノール樹脂が用いられる。例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールA型ノボラック、ナフトールノボラック、フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノール樹脂等があげられる。これらフェノール樹脂は単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0033】
上記混合エポキシ樹脂(A成分)とフェノール樹脂(B成分)との配合割合は、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量に対してフェノール樹脂中の水酸基当量を0.7〜1.3の範囲に設定することが好ましい。より好ましくは0.9〜1.1の範囲に設定することである。
【0034】
上記混合エポキシ樹脂(A成分)およびフェノール樹脂(B成分)とともに用いられる無機質充填剤(C成分)としては、特に限定するものではなく従来公知の各種充填剤があげられる。例えば、石英ガラス粉末、タルク、シリカ粉末、アルミナ粉末、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素およびカーボンブラック粉末等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、上記無機質充填剤として、得られる硬化物の線膨張係数を低減できるという点からシリカ粉末を用いることが好ましい。なかでも、シリカ粉末として溶融シリカ粉末、とりわけ球状溶融シリカ粉末を用いることが樹脂組成物の良好な流動性という点から特に好ましい。また、上記無機質充填剤において、その平均粒径が10〜70μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。すなわち、上記無機質充填剤の平均粒径が上記範囲内であると、エポキシ樹脂組成物の良好な流動性が得られるようになるからである。また、上記シリカ粉末としては、場合によりシリカ粉末を摩砕処理してなる摩砕シリカ粉末を用いることもできる。
【0035】
上記無機質充填剤(C成分)の含有量は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物全体の60〜92重量%となるよう設定することが好ましい。特に好ましくは70〜90重量%である。
【0036】
本発明では、上記A〜C成分とともに多面体形状の金属水酸化物を用いてもよい。上記多面体形状の金属水酸化物は、下記の一般式(2)で表されるもので、いわゆる結晶形状が多面体形状を有するものである。
【0037】
【化7】
【0038】
上記一般式(2)で表される金属水酸化物に関して、式(2)中の金属原子を示すMとしては、Mg,Ca,Sn,Tiからなる群から選ばれた少なくとも一種があげられる。
【0039】
また、上記一般式(2)で表される金属水酸化物中のもう一つの金属原子を示すQとしては、Mn,Fe,Co,Ni,CuおよびZnからなる群から選ばれた少なくとも一種があげられる。
【0040】
このような結晶形状が多面体形状を有する金属水酸化物は、例えば、金属水酸化物の製造工程における各種条件等を制御することにより、縦,横とともに厚み方向(c軸方向)への結晶成長が大きい、所望の多面体形状、例えば、略12面体,略8面体,略4面体等の形状を有する金属水酸化物を得ることができる。
【0041】
本発明に用いられる多面体形状の金属水酸化物は、その一例として結晶外形が略8面体の多面体構造を示し、アスペクト比が1〜8程度、好ましくは1〜7、特に好ましくは1〜4に調整されたもので、例えば、式(2)中の、M=Mg,Q=Znの場合について述べると、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、水酸化マグネシウム水溶液に硝酸亜鉛化合物を添加し、原料となる部分金属水酸化物を作製する。ついで、この原料を、800〜1500℃の範囲で、より好ましくは1000〜1300℃の範囲で焼成することにより、複合化金属酸化物を作製する。この複合化金属酸化物は、m(MgO)・n(ZnO)の組成で示されるが、さらにカルボン酸、カルボン酸の金属塩、無機酸および無機酸の金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種が上記複合化金属酸化物に対して約0.1〜6mol%共存する水媒体中の系で強攪拌しながら40℃以上の温度で水和反応させることにより、Mg1-X ZnX (OH)2 (Xは0.01〜0.5の正の数)で示される、本発明の多面体形状を有する金属水酸化物を作製することができる。
【0042】
上記製法において、原料としては、上述した方法で得られる部分金属水酸化物だけでなく、例えば、共沈法によって得られる金属水酸化物,水酸化マグネシウムとZnの混合物,酸化マグネシウムとZn酸化物の混合物,炭酸マグネシウムとZn炭酸塩との混合物等も用いることができる。また、水和反応時の攪拌は、均一性や分散性の向上、カルボン酸、カルボン酸の金属塩、無機酸および無機酸の金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種との接触効率向上等のため、強攪拌が好ましく、さらに強力な高剪断攪拌であればなお好ましい。このような攪拌は、例えば、回転羽根式の攪拌機において、回転羽根の周速を5m/s以上として行うのが好ましい。
【0043】
上記カルボン酸としては、特に限定されるものではないが、好ましくはモノカルボン酸、オキシカルボン酸(オキシ酸)等があげられる。上記モノカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸等があげられ、上記オキシカルボン酸(オキシ酸)としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、サリチル酸、安息香酸、没食子酸等があげられる。また、上記カルボン酸の金属塩としては、特に限定されるものではないが、好ましくは酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛等があげられる。そして、上記無機酸としては、特に限定されるものではないが、好ましくは硝酸、塩酸等があげられる。また、上記無機酸の金属塩としては、特に限定されるものではないが、好ましくは硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛等があげられる。
【0044】
上記多面体形状を有する金属水酸化物の具体的な代表例としては、Mg1-X NiX (OH)2 〔0.01<X<0.5〕、Mg1-X ZnX (OH)2 〔0.01<X<0.5〕等があげられる。これら金属水酸化物の市販品の例としては、例えば、タテホ化学工業社製のエコーマグがあげられる。
【0045】
そして、上記多面体形状の金属水酸化物は、平均粒子径が0.5〜3μmの範囲であることが好ましく、その最大粒径が10μm以下であることが好ましい。特に好ましくは最大粒径が6μm以下である。すなわち、最大粒径が10μmを超えると、難燃性を有するために多くの量を必要とするようになる傾向がみられるからである。
【0046】
さらに、上記多面体形状の金属水酸化物の比表面積が2.0〜4.0m2 /gの範囲であることが好ましい。なお、上記比表面積の測定は、BET吸着法により測定される。
【0047】
また、上記多面体形状を有する金属水酸化物のアスペクト比は、通常1〜8、好ましくは1〜7、特に好ましくは1〜4である。ここでいうアスペクト比とは、金属水酸化物の長径と短径との比で表したものである。すなわち、アスペクト比が8を超えると、この金属水酸化物を含有する樹脂組成物が溶融したときの粘度低下に対する効果が乏しくなる。そして、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の構成成分として用いられる場合には、一般的に、アスペクト比が1〜4のものが用いられる。
【0048】
なお、本発明においては、上記多面体形状の金属水酸化物とともに従来の薄平板形状の金属水酸化物を併用することができる。そして、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物が溶融したときの粘度低下および流動性の効果の発現という点から、用いられる金属水酸化物全体(従来の薄平板形状を含む)中の、多面体形状の金属水酸化物の占める割合を30〜100重量%の範囲に設定することが好ましい。すなわち、多面体形状の金属水酸化物の占める割合が30重量%未満では樹脂組成物の粘度低下の効果および流動性の向上効果が乏しくなる。
【0049】
上記多面体形状を有する金属水酸化物を含む金属水酸化物の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の1〜30重量%、特には2〜28重量%の範囲に設定することが好ましく、この含有量の範囲内でその優れた難燃化効果を発揮することができる。すなわち、上記金属水酸化物が1重量%未満では難燃化効果が不充分となり、30重量%を超えると、エポキシ樹脂組成物硬化体中の塩素イオン濃度が高くなるということから耐湿信頼性が低下する傾向がみられるからである。
【0050】
なお、本発明に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、上記A〜C成分および金属水酸化物以外に、硬化促進剤、顔料、離型剤、表面処理剤、可撓性付与剤等を必要に応じて適宜に添加することができる。
【0051】
上記硬化促進剤としては、従来公知のもの、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン等の三級アミノ類、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のリン系化合物等があげられる。
【0052】
上記顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン等があげられる。また、上記離型剤としては、ポリエチレンワックス、パラフィンや脂肪酸エステル、脂肪酸塩等があげられる。
【0053】
さらに、上記表面処理剤としては、シランカップリング剤等のカップリング剤があげられる。また、上記可撓性付与剤としては、シリコーン樹脂やブタジエン−アクリロニトリルゴム等があげられる。
【0054】
また、本発明に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物では、上記各成分に加えてさらに有機系難燃剤、あるいは赤燐系難燃剤である赤燐化合物を併用してもよい。上記難燃剤を併用すると、例えば、上記多面体形状を有する金属水酸化物を含有する金属水酸化物の使用量を低減させることができ好ましい。上記有機系難燃剤としては、含窒素有機化合物、含リン有機化合物、ホスファゼン系化合物等があげられるが、特に含窒素有機化合物が好ましく用いられる。
【0055】
上記含窒素有機化合物としては、例えば、メラミン誘導体、シアヌレート誘導体、イソシアヌレート誘導体等の複素環骨格を有する化合物があげられる。これら有機系難燃剤は単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0056】
上記有機系難燃剤は、例えば、前記金属水酸化物と予め機械的に混合した後配合してもよいし、有機系難燃剤を溶剤に溶解してこれに前記金属水酸化物を添加して脱溶剤し表面処理したものを用いてもよい。
【0057】
そして、上記有機系難燃剤の含有量は、前記金属水酸化物の使用量(多面体形状の金属水酸化物と場合により使用される従来の薄平板形状の金属水酸化物の合計量)の1〜10重量%の範囲に設定することが好ましい。特に好ましくは1〜5重量%である。
【0058】
一方、上記赤燐化合物としては、赤燐粉末、あるいはこの赤燐粉末表面を各種有機物,無機物で保護コートした赤燐粉末をあげることができる。そして、上記赤燐化合物の含有量は、上記有機系難燃剤の場合と同様、前記金属水酸化物の使用量(多面体形状の金属水酸化物と場合により使用される従来の薄平板形状の金属水酸化物の合計量)の1〜100重量%の範囲に設定することが好ましい。
【0059】
そして、本発明に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物において、前記A〜C成分を含む各成分の好適な組み合わせは、つぎのとおりである。すなわち、A〜C成分とともに、前記多面体形状の金属水酸化物および赤燐化合物を用いることが好ましい。さらに、上記多面体形状の金属水酸化物を用いる場合、離型性が低下する傾向がみられることから、ワックス類、特に酸価30以上(通常の上限値は200)という高酸価のポリエチレン系ワックスまたはエステル系ワックスを用いることが好ましい。あるいは、上記多面体形状の金属水酸化物とともに難燃剤として赤燐化合物を併用することが好ましい。
【0060】
本発明に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、例えばつぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂と前記ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂を所望の混合割合となるよう混合して混合エポキシ樹脂(A成分)を準備し、これとともにフェノール樹脂(B成分),無機質充填剤(C成分)および多面体形状の金属水酸化物,赤燐化合物ならびに必要に応じて他の添加剤を所定の割合で配合する。つぎに、この混合物をミキシングロール機等の混練機を用いて加熱状態で溶融混練し、これを室温に冷却する。そして、公知の手段によって粉砕し、必要に応じて打錠するという一連の工程によって目的とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0061】
あるいは、上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物の混合物を混練機に導入して溶融状態で混練した後、これを略円柱状の顆粒体に連続的に成形するという一連の工程によって顆粒状の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0062】
さらに、上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物の混合物をパレット上に受け入れし、これを冷却後、プレス圧延,ロール圧延,あるいは溶媒を混合したものを塗工してシート化する等の方法によりシート状の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0063】
このようにして得られる半導体封止用エポキシ樹脂組成物(粉末状,タブレット状,顆粒状等)を用いての半導体素子の封止方法は、特に限定するものではなく、通常のトランスファー成形等の公知の成形方法によって行うことができる。
【0064】
また、上記シート状の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、例えば、つぎのようにしてフリップチップ実装による半導体装置を製造することができる。すなわち、上記シート状半導体封止用エポキシ樹脂組成物を、接合用バンプを備えた半導体素子の電極面側に、あるいは、回路基板のバンプ接合部側に配置し、上記半導体素子と回路基板とをバンプ接合するとともに両者を樹脂封止による接着封止を行うことによりフリップチップ実装して半導体装置を製造することができる。
【0065】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0066】
まず、下記に示す各材料を準備した。
【0067】
〔エポキシ樹脂a〕
前記式(4)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂〔式(3)中のR1 〜R4 が全てメチル基:エポキシ当量192〕
【0068】
〔エポキシ樹脂b〕
前記一般式(1)で表されるジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂〔エポキシ基当量290、軟化点88℃、式(1)中のRは全てH、1分子当たりの平均官能基数3.5、ICI粘度(150℃)0.85Pa・s〕
【0069】
〔エポキシ樹脂c〕
前記一般式(1)で表されるジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂〔エポキシ基当量260、軟化点60℃、式(1)中のRは全てH、1分子当たりの平均官能基数2.3、ICI粘度(150℃)0.06Pa・s〕
【0070】
〔フェノール樹脂d〕
フェノールノボラック樹脂(水酸基当量107、軟化点85℃)
【0071】
〔フェノール樹脂e〕
フェノールアラルキル樹脂(水酸基当量174℃、軟化点70℃)
【0072】
〔多面体形状の金属水酸化物〕
組成式 :Mg0.8 Zn0.2 (OH)2
平均粒径:1.7μm
粒度分布:粒径1.3μm未満14重量%、粒径1.3μm以上2.0μ m未満61重量%、粒径2.0μm以上25重量%
【0073】
〔赤燐化合物〕
平均粒径30μm、赤燐含有率94%の赤燐系化合物(燐化学工業社製、ノーバエクセル140)
【0074】
〔シリカ粉末〕
平均粒径30μmの球状溶融シリカ粉末
【0075】
〔硬化促進剤〕
1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7
【0076】
〔カップリング剤〕
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
【0077】
〔エステル系ワックス〕
カルナバワックス
【0078】
〔オレフィン系ワックス〕
ポリエチレン系ワックス(酸価17)
【0079】
【実施例1〜2、比較例1〜2】
ついで、下記の表1に示す各成分を同表に示す割合で配合し、ミキシングロール機(温度100℃)で3分間溶融混練を行い、冷却固化した後粉砕して目的とする粉末状エポキシ樹脂組成物を得た。
【0080】
【表1】
【0081】
このようにして得られた実施例および比較例のエポキシ樹脂組成物を用い、その硬化体の難燃性を評価した。すなわち、各エポキシ樹脂組成物を用い、175℃×2分間、後硬化175℃×5時間の条件で厚み1/16インチの試験片を成形した。そして、この成形品について、UL94 V−0規格の方法に従って難燃性を評価した。なお、合格とは94−V0合格を意味する。
【0082】
また、上記のようにして得られた実施例および比較例のエポキシ樹脂組成物を用い、175℃におけるゲルタイム、175℃での熱時硬度およびフローテスター粘度の各評価試験に供した。
【0083】
〔175℃におけるゲルタイム〕
熱板式ゲルタイム測定法に従って測定した。すなわち、規定温度(175℃)の熱平板上に試料(200〜500mg)を載せ、撹拌しながら熱平板上に薄く引き伸ばし、試料が熱平板上に溶融した時点から硬化するまでの時間を読み取りゲル化時間とした。
【0084】
〔175℃での熱時硬度〕
175℃×60秒の条件で成形した直後、ショアーD硬度計を用いて、熱時の硬度を測定した。
【0085】
〔フローテスター粘度〕
上記各エポキシ樹脂組成物を2g精秤し、タブレット状に打錠成形した。そして、これを高化式フローテスターのポット内に入れ、10kgの荷重をかけて測定した。溶融したエポキシ樹脂組成物がダイスの穴(直径1.0mm×10mm)を通過して押し出されるときのピストンの移動速度からサンプルの溶融粘度を求めた。
【0086】
つぎに、上記実施例および比較例で得られたエポキシ樹脂組成物を用い、半導体素子をトランスファー成形(条件:175℃×2分)し、175℃×5時間で後硬化することにより半導体装置を得た。この半導体装置は、80ピンQFP(クワッドフラットパッケージ、サイズ:20×14×2mm)であり、ダイパッドサイズは8×8mmである。
【0087】
上記半導体装置について、超音波探傷装置を用い非破壊にて評価した。その測定評価後、内部剥離の生じた個数(10個中)をカウントした。そして、上記測定後、良品をつぎに示す半田試験に供した。すなわち、良品の半導体装置を用いて、120℃×1時間のプリベーク後、これを85℃/85%RH×168時間吸湿させた後、240℃の半田浴に10秒間浸漬するという評価試験(耐半田クラック性)を行った。そして、クラックが発生した個数(10個中)を測定した。
【0088】
これらの評価結果を下記の表2に併せて示す。
【0089】
【表2】
【0090】
上記表2から、全ての実施例は樹脂の溶融粘度が低くかつ熱時硬度が高く硬化性に優れ、さらに内部剥離および耐半田クラック性試験においても良好な結果が得られたことがわかる。
【0091】
一方、比較例1品は、樹脂の溶融粘度が低くかつ硬化性にも優れているが内部剥離が生じ耐半田クラック性に劣っている。また、比較例2品は、熱時硬度が低く硬化性に劣っており、フローテスター粘度が特に高かった。
【0092】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂と、150℃におけるICI粘度が特定範囲の値のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂との混合エポキシ樹脂(A成分)を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物である。このため、優れた樹脂流動性および硬化性を有するとともに、低吸湿化および低弾性率化も図られるようになり、得られる半導体装置は優れた耐半田性を備えたものとなる。したがって、従来のように、硬化性に劣ることに起因した問題、例えば、成形サイクルの低下や、連続成形性が困難となるという問題を解決することができる。
【0093】
そして、上記混合エポキシ樹脂において、両者の重量混合割合を特定の範囲に設定するため、低吸湿性、低弾性化が図られ、耐半田性に優れるとともに成形時の硬化性に優れキュアサイクルを短縮することができるようになる。また、成形時の樹脂粘度が低いため、ワイヤー流れやダイシフト等の成形時のトラブルが生じ難くなる。
【0094】
さらに、前記一般式(2)で表される多面体形状の金属水酸化物を用いると、優れた難燃性が付与されるとともに従来の難燃剤である臭素化エポキシ樹脂やアンチモン化合物の使用と比較すると臭素の影響がなく半導体素子やアルミニウム配線の腐食等が生じず耐湿信頼性が向上して長寿命になり、また、環境汚染等の問題が生じないという効果が得られるようになる。さらに、従来のような平板状の結晶形状ではなく上記特殊な多面体の結晶形状を有するため、流動性に優れており成形性が一層向上するようになる。
【0095】
また、赤燐化合物を用いると、その難燃効果が高いために極微量の添加量で所望の難燃効果を得ることができることから、流動性および成形性に優れた封止材料を得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で用いられる多面体形状の金属水酸化物の結晶形状の一例を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率50000倍)である。
【図2】 従来の金属水酸化物の結晶形状の一つである六角板状形状を示す斜視図である。
【図3】 従来の金属水酸化物の外形を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図4】 本発明の金属水酸化物の外形の一例を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図5】 本発明の金属水酸化物の外形の他の例を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
Claims (5)
- ショアーD硬度計を用いての175℃での熱時硬度(ショアーD)が、77〜80の範囲である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 赤燐化合物を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる半導体装置。
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