JP4477208B2 - 半導体封止用樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性、耐湿信頼性および流動性に優れた半導体封止用樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トランジスタ,IC,LSI等の半導体素子は、従来からエポキシ樹脂組成物を用いて封止され電子部品化されている。この電子部品は、難燃性の規格であるUL94 V−0に適合することが必要不可欠であり、これまでは、その難燃作用を付与するため、臭素化エポキシ樹脂や酸化アンチモン等のアンチモン化合物を添加する方法が採られてきた。
【0003】
ところが、最近、環境保全の観点から、ハロゲン系難燃剤、酸化アンチモンを使用せずに難燃性を付与した難燃性エポキシ樹脂組成物が要求されている。この要求に対して、例えば、難燃剤として、金属水酸化物、硼素化合物、赤燐化合物等を用いることが検討されてきたが、これら化合物の多くは、不純物の多さによる耐湿性の低下、流動性の低下による成形性不良により実用化には至っていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記化合物のなかで、金属水酸化物に関しては、金属水酸化物と金属酸化物あるいはこれらの金属水酸化物とを併用した半導体封止用エポキシ樹脂組成物を本出願人は提案している(WO95/06085号公報)。さらに、本出願人は、上記提案において流動性問題を解決した半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提案している(WO98/47968号公報)。しかしながら、上記難燃剤の含有比率の多い半導体封止用エポキシ樹脂組成物においてはその添加量の多さから、従来のものに比べると良好な流動性を有してはいるが、それでも若干の流動性の低下を引き起こす傾向があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、難燃性、流動性および耐湿信頼性に優れた半導体封止用樹脂組成物およびそれを用いて得られる信頼性の高い半導体装置の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の(A)〜(D)成分およびシリカ粉末を含有する半導体封止用樹脂組成物であって、上記(C)成分の含有量が樹脂組成物全体の3.9〜18重量%であり、上記(D)成分の含有量が樹脂組成物全体の0.3〜1.1重量%であり、上記シリカ粉末の含有量が樹脂組成物全体の60〜95重量%である半導体封止用樹脂組成物を第1の要旨とする。
【0007】
(A)ビフェニル型エポキシ樹脂。
(B)フェノールアラルキル樹脂。
(C)下記の一般式(1)で表される金属水酸化物。
【化3】
(D)下記の一般式(イ)で表される有機燐化合物。
【化4】
【0008】
また、上記半導体封止用樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる半導体装置を第2の要旨とする。
【0009】
すなわち、本発明者らは、難燃性はもちろん、流動性および耐湿信頼性に優れる封止材料を得るために一連の研究を重ねた。その結果、上記金属水酸化物と上記特定の有機燐化合物とを併用すると、金属水酸化物のみの使用による弊害、例えば、金属水酸化物のみの使用では難燃性付与のために添加量を多くしなければならず、上記両者の併用ではそれに起因する流動性の低下を抑制することができるようになることを見出し本発明に到達した。
【0010】
そして、上記金属水酸化物および特定の有機燐化合物の含有量をそれぞれ特定の範囲に設定するため、難燃性を損なうことなく流動性および耐湿性に一層優れるようになる。
【0011】
さらに、半導体封止用樹脂組成物にフェノール性水酸基を有する窒素含有化合物を含有させた場合、より優れた難燃性を奏することとなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0013】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、ビフェニル型エポキシ樹脂(A成分)と、フェノールアラルキル樹脂(B成分)と、特定の金属水酸化物(C成分)と、特定の有機燐化合物(D成分)と、シリカ粉末とを用いて得られるものであり、通常、粉末状あるいはこれを打錠したタブレット状になっている。または、樹脂組成物を溶融混練した後、略円柱状等の顆粒体に成形した顆粒状、さらにシート状に成形したシート状の封止材料となっている。
【0014】
上記ビフェニル型エポキシ樹脂(A成分)としては、例えば、下記の一般式(2)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂が用いられる。
【0015】
【化5】
【0016】
上記一般式(2)中のR1 〜R4 で表される、−H(水素)または炭素数1〜5のアルキル基のうち、上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の直鎖状または分岐状の低級アルキル基があげられ、特にメチル基が好ましく、上記R1 〜R4 は互いに同一であっても異なっていてもよい。なかでも、低吸湿性および反応性という観点から、上記R1 〜R4 が全てメチル基である下記の式(3)で表される構造のビフェニル型エポキシ樹脂を用いることが特に好適である。
【0017】
【化6】
【0018】
上記ビフェニル型エポキシ樹脂(A成分)とともに用いられるフェノールアラルキル樹脂(B成分)は、上記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであって、なかでも、下記の一般式(4)で表されるフェノールアラルキル樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
【化7】
【0020】
そして、上記ビフェニル型エポキシ樹脂(A成分)および上記フェノールアラルキル樹脂(B成分)の配合割合は、上記エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量当たり、フェノール樹脂中(フェノール水酸基を有する窒素含有化合物を含有する場合はこの水酸基も含む)の水酸基が0.7〜1.3当量となるように設定することが好ましく、なかでも0.9〜1.1当量となるよう設定することが特に好ましい。
【0021】
そして、上記AおよびB成分とともに用いられる特定の金属水酸化物(C成分)は、下記の一般式(1)で表される。
【0022】
【化8】
【0023】
そして、上記金属水酸化物のなかでも、結晶形状が多面体形状を有する金属水酸化物を用いることが、流動性低下の抑制という観点から特に好ましい。
【0024】
本発明において、上記結晶形状が多面体形状を有する金属水酸化物とは、図2に示すような、六角板形状を有するもの、あるいは、鱗片状等のように、いわゆる厚みの薄い平板形状の結晶形状を有するものではなく、縦,横とともに厚み方向(c軸方向)への結晶成長が大きい、例えば、板状結晶のものが厚み方向(c軸方向)に結晶成長してより立体的かつ球状に近似させた粒状の結晶形状、例えば、略12面体,略8面体,略4面体等の形状を有する金属水酸化物をいい、通常、これらの混合物である。もちろん、上記多面体形状は、結晶の成長のしかた以外にも、粉砕や摩砕等によっても多面体の形は変化し、より立体的かつ球状に近似させることが可能となる。この多面体形状の金属水酸化物の結晶形状を表す走査型電子顕微鏡写真(倍率50000倍)の一例を図1に示す。このように、本発明では、上記多面体形状の金属水酸化物を用いることにより、通常の金属水酸化物、例えば、上記六角板形状を有するもの、あるいは、鱗片状等のように、平板形状の結晶形状を有するものに比べ、樹脂組成物の流動性の低下を一層抑制することができより好ましい。
【0025】
本発明での、多面体形状の金属水酸化物の形状について、略8面体形状のものを例にしてさらに詳細に説明する。すなわち、本発明の金属水酸化物の一例である8面体形状のものは、平行な上下2面の基底面と外周6面の角錐面とからなり、上記角錐面が上向き傾斜面と下向き傾斜面とが交互に配設された8面体形状を呈している。
【0026】
より詳しく説明すると、厚みの薄い平板形状の結晶形状を有するものは、例えば、結晶構造としては六方晶系であり、図3に示すように、ミラー・ブラベー指数において(00・1)面で表される上下2面の基底面10と、{10・0}の型面に属する6面の角筒面11で外周が囲まれた六角柱状である。そして、〔001〕方向(c軸方向)への結晶成長が少ないため、薄い六角柱状を呈している。
【0027】
これに対し、上記多面体形状の金属水酸化物は、図4に示すように、結晶成長時の晶癖制御により、(00・1)面で表される上下2面の基底面12と、{10・1}の型面に属する6面の角錘面13で外周が囲まれている。そして、上記角錘面13は、(10・1)面等の上向き傾斜面13aと、(10・−1)面等の下向き傾斜面13bとが交互に配設された特殊な晶癖を有する8面体形状を呈している。また、c軸方向への結晶成長も従来のものに比べて大きい。図4に示すものは、板状に近い形状であるが、さらにc軸方向への結晶成長が進み、晶癖が顕著に現れて等方的になったものを図5に示す。このように、上記多面体形状の金属水酸化物は、正8面体に近い形状のものも含むものである。すなわち、基底面の長軸径と基底面間の厚みとの比率(長軸径/厚み)は、1〜9が好適である。この長軸径と厚みとの比率の上限値としてより好適なのは、7である。なお、上記ミラー・ブラベー指数において、「1バー」は、「−1」と表示した。
【0028】
このように、多面体形状の金属水酸化物が、外周を囲む6つの面が、{10・1}に属する角錘面であることは、つぎのことからわかる。すなわち、多面体形状の金属水酸化物の結晶を、c軸方向から走査型電子顕微鏡で観察すると、この結晶は、c軸を回転軸とする3回回転対称を呈している。また、粉末X線回折による格子定数の測定値を用いた(10・1)面と{10・1}の型面との面間角度の計算値が、走査型電子顕微鏡観察における面間角度の測定値とほぼ一致する。
【0029】
さらに、多面体形状の金属水酸化物は、粉末X線回折における(110)面のピークの半価幅B110 と、(001)面のピークの半価幅B001 との比(B110 /B001 )が、1.4以上である。このことからも、c軸方向への結晶性が良いことと、厚みが成長していることが確認できる。すなわち、従来の水酸化マグネシウム等の結晶では、c軸方向への結晶が成長しておらず、(001)面のピークがブロードで半価幅B001 も大きくなる。したがって(B110 /B001 )の価は、小さくなる。これに対し、多面体形状の金属水酸化物では、c軸方向の結晶性が良いために、(001)面のピークが鋭く、細くなり、半価幅B001 も小さくなる。したがって(B110 /B001 )の価が大きくなるのである。
【0030】
このような結晶形状が多面体形状を有する金属水酸化物は、例えば、金属水酸化物の製造工程における各種条件等を制御することにより、縦,横とともに厚み方向(c軸方向)への結晶成長が大きい、所望の多面体形状、例えば、略12面体,略8面体,略4面体等の形状を有する金属水酸化物を得ることができる。
【0031】
上記多面体形状の金属水酸化物は、その一例として結晶外形が略8面体の多面体構造を示し、アスペクト比が1〜8程度、好ましくは1〜7、特に好ましくは1〜4に調整されたもので、例えば、式(1)中の、M=Mg,Q=Znの場合について述べると、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、水酸化マグネシウム水溶液に硝酸亜鉛化合物を添加し、原料となる部分金属水酸化物を作製する。ついで、この原料を、800〜1500℃の範囲で、より好ましくは1000〜1300℃の範囲で焼成することにより、金属酸化物を作製する。この金属酸化物は、m(MgO)・n(ZnO)の組成で示されるが、さらにカルボン酸、カルボン酸の金属塩、無機酸および無機酸の金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種を上記金属酸化物に対して約0.1〜6mol%共存する水媒体中の系で強攪拌しながら40℃以上の温度で水和反応させることにより、Mg1-X ZnX (OH)2 (Xは0.01〜0.5の正の数)で示される、多面体形状を有する金属水酸化物を作製することができる。
【0032】
上記製法において、原料としては、上述した方法で得られる部分金属水酸化物だけでなく、例えば、共沈法によって得られる金属水酸化物,水酸化マグネシウムとZnの混合物,酸化マグネシウムとZn酸化物の混合物,炭酸マグネシウムとZn炭酸塩との混合物等も用いることができる。また、水和反応時の攪拌は、均一性や分散性の向上、カルボン酸、カルボン酸の金属塩、無機酸および無機酸の金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種との接触効率向上等のため、強攪拌が好ましく、さらに強力な高剪断攪拌であればなお好ましい。このような攪拌は、例えば、回転羽根式の攪拌機において、回転羽根の周速を5m/s以上として行うのが好ましい。
【0033】
上記カルボン酸としては、特に限定されるものではないが、好ましくはモノカルボン酸、オキシカルボン酸(オキシ酸)等があげられる。上記モノカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸等があげられ、上記オキシカルボン酸(オキシ酸)としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、サリチル酸、安息香酸、没食子酸等があげられる。また、上記カルボン酸の金属塩としては、特に限定されるものではないが、好ましくは酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛等があげられる。そして、上記無機酸としては、特に限定されるものではないが、好ましくは硝酸、塩酸等があげられる。また、上記無機酸の金属塩としては、特に限定されるものではないが、好ましくは硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛等があげられる。
【0034】
上記多面体形状を有する金属水酸化物の具体的な代表例としては、Mg1-X NiX (OH)2 〔0.01<X<0.5〕、Mg1-X ZnX (OH)2 〔0.01<X<0.5〕等があげられる。これら金属水酸化物の市販品の例としては、例えば、タテホ化学工業社製のエコーマグがあげられる。
【0035】
そして、上記多面体形状を有する金属水酸化物としては、下記に示す粒度分布(c1)〜(c3)を有することが好ましい。なお、下記に示す粒度分布の測定には、レーザー式粒度測定機を使用する。
(c1)粒径1.3μm未満のものが10〜60重量%。
(c2)粒径1.3〜2.0μm未満のものが30〜65重量%。
(c3)粒径2.0μm以上のものが5〜30重量%。
【0036】
上記粒度分布において、粒度分布(c1)の粒径1.3μm未満のものが10重量%未満の場合は、難燃性の効果が乏しくなり、逆に60重量%を超え多くなると、流動性が損なわれる傾向がみられるようになる。また、粒度分布(c3)の粒径2.0μm以上のものが5重量%未満では、流動性が低下し、逆に30重量%を超え多くなると、難燃性の効果が乏しくなる傾向がみられる。なお、上記粒度分布(c1)における粒径の通常の下限値は0.1μmであり、上記粒度分布(c3)における粒径の通常の上限値は15μmである。
【0037】
そして、上記多面体形状の金属水酸化物では、上記粒度分布(c1)〜(c3)に加えて、その最大粒径が10μm以下であることが好ましい。特に好ましくは最大粒径が6μm以下である。すなわち、最大粒径が10μmを超えると、難燃性を有するために多くの量を必要とするようになる傾向がみられるからである。
【0038】
さらに、上記多面体形状の金属水酸化物の比表面積が2.0〜4.0m2 /gの範囲であることが好ましい。なお、上記多面体形状の金属水酸化物の比表面積の測定は、BET吸着法により測定される。
【0039】
また、上記多面体形状を有する金属水酸化物のアスペクト比は、通常、1〜8、好ましくは1〜7、特に好ましくは1〜4である。ここでいうアスペクト比とは、金属水酸化物の長径と短径との比で表したものである。すなわち、アスペクト比が8を超えると、この金属水酸化物を含有する樹脂組成物が溶融したときの粘度低下に対する効果が乏しくなる。そして、本発明の半導体封止用樹脂組成物の構成成分として用いられる場合には、一般的に、アスペクト比が1〜4のものが用いられる。
【0040】
なお、上記C成分として、多面体形状の金属水酸化物を用いる場合、半導体封止用樹脂組成物が溶融したときの粘度低下および流動性の効果の発現という点から、金属水酸化物(C成分)全体中多面体形状の金属水酸化物の占める割合を30〜100重量%の範囲に設定することが好ましい。すなわち、多面体形状の金属水酸化物の占める割合が30重量%未満では樹脂組成物の粘度低下の効果および流動性の向上効果が乏しくなる傾向がみられるからである。
【0041】
上記金属水酸化物(C成分)の含有量は、樹脂組成物全体の3.9〜18重量%の範囲に設定する。なお、上記金属水酸化物が0.1重量%未満では、後述の特定の有機燐化合物(D成分)と併用してもその併用による難燃効果は不充分であることから特定の有機燐化合物(D成分)を多量に用いる必要が生じ、その結果、耐湿性の低下を引き起こす傾向がみられる。また、30重量%を超えると、流動性が低下し、ワイヤー流れ等の不良を引き起こす傾向がみられる。
【0042】
上記A〜C成分とともに用いられる特定の有機燐化合物(D成分)は、下記の一般式(イ)で表される化合物である。
【0043】
【化9】
【0044】
上記一般式(イ)で表される有機燐化合物として、具体的には、例えば、下記の式(a)〜(c)で表される化合物があげられる。
【0045】
【化10】
【0046】
【化11】
【0047】
【化12】
【0048】
上記特定の有機燐化合物(D成分)の含有量は、半導体封止用樹脂組成物全体の0.3〜18重量%の範囲に設定する。なお、0.1重量%未満では目的とする難燃性を得るためには相対的に前記金属水酸化物(C成分)の添加量が増大して流動性の低下を引き起こす傾向がみられ、5重量%を超えると耐湿性低下の傾向がみられる。
【0049】
そして、本発明の半導体封止用樹脂組成物には、上記A〜D成分、および場合により、従来の薄平板形状の金属水酸化物とともにシリカ粉末を用いる。上記シリカ粉末を用いると、得られる硬化物の線膨張係数を低減できるという点から好ましい。なかでも、シリカ粉末として溶融シリカ粉末、とりわけ球状溶融シリカ粉末を用いることが樹脂組成物の良好な流動性という点から特に好ましい。また、上記シリカ粉末において、その平均粒径が10〜70μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。すなわち、先に述べたように、金属水酸化物が前記粒度分布(c1)〜(c3)を有するとともに、シリカ粉末の平均粒径が上記範囲内であると、樹脂組成物の良好な流動性が得られる。また、上記シリカ粉末としては、場合によりシリカ粉末を摩砕処理してなる摩砕シリカ粉末を用いることもできる。
【0050】
上記シリカ粉末の含有量は、半導体封止用樹脂組成物全体の60〜95重量%となるよう設定する。
【0051】
さらに、本発明の半導体封止用樹脂組成物では、上記A〜D成分およびシリカ粉末に加えて、フェノール性水酸基を有する窒素含有化合物を併用してもよい。上記フェノール性水酸基を有する窒素含有化合物は難燃剤としての作用を奏するものであって、例えば、下記の一般式(ロ)で表される繰り返し単位を主要構成成分とする化合物があげられる。
【0052】
【化13】
【0053】
上記式(ロ)において、繰り返し単位mと繰り返し単位nとの重合態様は、ランダム、ブロック、交互のいずれであってもよい。さらに、R2 のアミノ基としては、1級,2級および3級アミノ基のいずれであってもよい。
【0054】
上記一般式(ロ)で表される化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物とトリアジン環を有する化合物の共縮合物であって、具体的には下記の式(d)で表される化合物があげられる。なお、式(d)中のm,nは上記一般式(ロ)と同様である。
【0055】
【化14】
【0056】
さらに、上記式(d)の繰り返し単位n中の−NH2 に代えて、メチル基、フェニル基を有するもの等があげられる。
【0057】
また、上記フェノール性水酸基を有する窒素含有化合物中の窒素原子含有量は5〜30重量%であることが好ましい。特に好ましくは5〜20重量%である。すなわち、窒素原子含有量が5重量%未満では充分な難燃性効果を得ることが困難となり、30重量%を超えると組成物中への分散性が低下して、流動性や熱時硬度等が低下する傾向がみられるからである。さらに、上記フェノール性水酸基を有する窒素含有化合物としては、軟化点が50〜110℃の範囲のものを用いることが好ましく、より好ましくは60〜100℃である。すなわち、50℃未満ではブロッキング性が悪く、また成形に際してボイド等を発生する傾向がみられ、110℃を超えると組成物中への分散性が低下して、流動性や熱時硬度等が低下する傾向がみられるからである。
【0058】
そして、上記フェノール性水酸基を有する窒素含有化合物の含有量は、樹脂組成物全体に対して窒素原子の量が0.02〜1.5重量%の範囲となるように設定することが好ましい。特に好ましくは0.05〜1.0重量%である。すなわち、0.02重量%未満では、上記フェノール性水酸基を有する窒素含有化合物を配合した目的の難燃性効果を得るには不充分であり、1.5重量%を超えると成形性や耐湿性の低下を引き起こす傾向がみられるからである。
【0059】
さらに、本発明の半導体封止用樹脂組成物には、上記A〜D成分、シリカ粉末およびフェノール性水酸基を有する窒素含有化合物以外に、硬化促進剤、顔料、離型剤、表面処理剤、可撓性付与剤等を必要に応じて適宜に添加することができる。
【0060】
上記硬化促進剤としては、特に限定するものではなくエポキシ基と水酸基の反応を促進するものであればよく、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン系化合物、トリエチレンジアミン等の三級アミン類、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物等があげられる。これら化合物は単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0061】
上記顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン等があげられる。また、上記離型剤としては、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンや脂肪酸エステル、脂肪酸塩等があげられる。
【0062】
さらに、上記表面処理剤としては、シランカップリング剤等のカップリング剤があげられる。また、上記可撓性付与剤としては、各種シリコーン化合物やブタジエン−アクリロニトリルゴム等があげられる。
【0063】
そして、本発明に係る半導体封止用樹脂組成物において、前記A〜D成分を含む各成分の好適な組み合わせは、つぎのとおりである。すなわち、流動性が良好であるという点からビフェニル型エポキシ樹脂(A成分)が好ましく、また、その流動性という観点からフェノールアラルキル樹脂(B成分)が好ましい。そして、前記金属水酸化物(C成分)として、多面体形状の金属水酸化物、特に前述の粒度分布や最大粒径を有する多面体形状の金属水酸化物を用いることが好ましく、これら各成分とともに、シリカ粉末として球状溶融シリカ粉末を用いることが好ましい。さらに、これら各成分に加えて、上記のような金属水酸化物を用いた場合、離型性が低下する傾向がみられることから、ワックス類を用いることが好ましい。
【0064】
本発明に係る半導体封止用樹脂組成物は、例えばつぎのようにして製造することができる。すなわち、ビフェニル型エポキシ樹脂(A成分)、フェノールアラルキル樹脂(B成分)、金属水酸化物(C成分)、特定の有機燐化合物(D成分)およびシリカ粉末ならびに必要に応じてフェノール性水酸基を有する窒素含有化合物や他の添加剤を所定の割合で配合する。つぎに、この混合物をミキシングロール機等の混練機を用いて加熱状態で溶融混練し、これを室温に冷却する。そして、公知の手段によって粉砕し、必要に応じて打錠するという一連の工程によって目的とする半導体封止用樹脂組成物を製造することができる。
【0065】
あるいは、上記半導体封止用樹脂組成物の混合物を混練機に導入して溶融状態で混練した後、これを略円柱状の顆粒体に連続的に成形するという一連の工程によって顆粒状の半導体封止用樹脂組成物を製造することができる。
【0066】
さらに、上記半導体封止用樹脂組成物の混合物をパレット上に受け入れし、これを冷却後、プレス圧延,ロール圧延,あるいは溶媒を混合したものを塗工してシート化する等の方法によりシート状の半導体封止用樹脂組成物を製造することができる。
【0067】
このようにして得られる半導体封止用樹脂組成物(粉末状,タブレット状,顆粒状等)を用いての半導体素子の封止方法は、特に限定するものではなく、通常のトランスファー成形等の公知の成形方法によって行うことができる。
【0068】
また、上記シート状の半導体封止用樹脂組成物を用いて、例えば、つぎのようにしてフリップチップ実装による半導体装置を製造することができる。すなわち、上記シート状半導体封止用樹脂組成物を、接合用バンプを備えた半導体素子の電極面側に、あるいは、回路基板のバンプ接合部側に配置し、上記半導体素子と回路基板とをバンプ接合するとともに両者を樹脂封止による接着封止を行うことによりフリップチップ実装して半導体装置を製造することができる。
【0069】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0070】
まず、下記に示す各材料を準備した。
【0071】
〔エポキシ樹脂〕
4,4′−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3′,5,5′−テトラメチルビフェニル
【0072】
〔フェノール樹脂〕
前記式(4)で表されるフェノールアラルキル樹脂(軟化点70℃、水酸基当量175)
【0073】
〔有機燐化合物〕
下記の構造式(ハ)で表される有機燐化合物
【0074】
【化15】
【0075】
〔フェノール性水酸基を有する窒素含有化合物〕
下記の構造式(ニ)で表される繰り返し単位を主要構成成分とする化合物(窒素含有量15重量%、軟化点100℃)
【0076】
【化16】
【0077】
〔ブロム化エポキシ樹脂〕
ノボラック型ブロム化エポキシ樹脂(エポキシ当量275、軟化点84℃)
【0078】
〔シリカ粉末〕
溶融シリカ粉末(球形、平均粒径25μm、比表面積1.4m2 /g)
【0079】
〔シランカップリング剤〕
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
【0080】
〔硬化促進剤〕
トリフェニルホスフィン
【0081】
〔金属水酸化物〕
つぎに、実施例に先立って下記の表1〜表2に示す多面体形状の金属水酸化物を準備した。なお、多面体形状の金属水酸化物は、先に述べた多面体形状の金属水酸化物の製造方法に準じて作製した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【実施例1〜6、参考例1、比較例1〜4】
ついで、下記の表3〜表4に示す各成分を同表に示す割合で配合し、ミキシングロール機(温度100℃)で3分間溶融混練を行い、冷却固化した後粉砕して目的とする粉末状エポキシ樹脂組成物を得た。
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
このようにして得られた実施例および比較例のエポキシ樹脂組成物を用いて、タブレット化し、成形条件175℃,686×104 Pa,120秒間で難燃性用試験片を成形した。また、TOWA自動成形機でLQFP−114(大きさ:20mm×20mm×厚み1.4mm)のパッケージを成形した。これら難燃性用試験片およびパッケージを用いて、難燃性、ワイヤー流れおよび耐湿性を測定評価した。これらの結果を後記の表5〜表6に併せて示す。
【0088】
〔難燃性〕
UL94 V−0規格の方法に従って難燃性を評価した。なお、合格とは94−V0合格を意味する。
【0089】
〔ワイヤー流れ〕
上記パッケージについて、まず、軟X線装置により、パッケージ内部の透過画像を観察することにより、金ワイヤーの変形等の不良の発生を測定した。測定した結果、金ワイヤーの変形が確認されたものを×、金ワイヤーの変形が確認されず良好なパッケージが得られたものを○として評価し表示した。
【0090】
〔耐湿性〕
このようにして作製した半導体装置を用いて、プレッシャークッカー試験(PCTテスト)をバイアスを印加して行った(条件:130℃/85%RH、30Vバイアス)。なお、不良モードはリーク不良およびオープン不良を測定し、不良発生までの時間を求めた。
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
上記表5および表6の結果から、実施例品は優れた難燃性を示すことはもちろん、ワイヤー流れにおいて問題が生じず、しかも耐湿性においても良好な結果が得られた。これらのことから、難燃性、流動性および耐湿性の全てにおいて優れていることがわかる。これに対して、比較例1品は難燃剤が有機燐化合物単独の系であり、難燃性および流動性に関しては良好な結果が得られたが、耐湿性に関して劣る結果となった。また、比較例2品は難燃剤が金属水酸化物単独の系でありその配合量を少なく設定しているため、流動性および耐湿性に関しては問題は無かったが、難燃性試験において不合格となった。さらに、比較例3品は難燃剤が金属水酸化物単独の系であるが比較例2品よりもその配合量を多く設定しているため良好な難燃性を示した。しかし、ワイヤー流れで問題が発生していることから流動性に劣っていることがわかる。そして、比較例4品は、難燃剤が金属水酸化物とノボラック型ブロム化エポキシ樹脂との併用であり、難燃性,流動性および耐湿性に関しては実施例品と略同等の特性を示しており問題はなかったが、ハロゲン元素を含むノボラック型ブロム化エポキシ樹脂を難燃剤として用いたため、廃棄物処理炉等で燃焼するとダイオキシン類等が発生するという懸念があり、いわゆる環境保全という点から好ましいものではない。
【0094】
さらに、前記実施例1における、エポキシ樹脂成分を、前記式(2)中のR1 〜R4 が全て水素となるビフェニル型エポキシ樹脂と、前記式(2)中のR1 〜R4 が全てメチル基となるビフェニル型エポキシ樹脂を重量比率で1:1となるように配合した混合系のエポキシ樹脂に代えた。それ以外は実施例1と同様の配合割合に設定してエポキシ樹脂組成物を作製した。このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記と同様の測定・評価を行った結果、上記実施例と略同様の良好な結果が得られた。
【0095】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、前記特定の金属水酸化物(C成分)と、前記特定の有機燐化合物(D成分)を含有する半導体封止用樹脂組成物である。このように、難燃剤成分として上記特定の金属水酸化物と特定の有機燐化合物とを併用するため、難燃性付与のための上記C成分およびD成分の個々の添加量を抑制することができる。すなわち、金属水酸化物のみの使用では、難燃性の付与におけるその添加量の多さに起因した流動性の低下があげられるが、この流動性の低下を抑制することができるようになる。したがって、優れた難燃性とともに、優れた流動性および耐湿信頼性を備えたものが得られる。
【0096】
そして、上記特定の金属水酸化物(C成分)および上記特定の有機燐化合物(D成分)の含有量をそれぞれ特定の範囲に設定するため、一層優れた流動性および耐湿性が得られる。
【0097】
さらに、半導体封止用樹脂組成物にフェノール性水酸基を有する窒素含有化合物を含有させると、より優れた難燃性を奏するようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 多面体形状の金属水酸化物の結晶形状の一例を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率50000倍)である。
【図2】 金属水酸化物の結晶形状の一つである六角板状形状を示す斜視図である。
【図3】 金属水酸化物の外形を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図4】 多面体形状の金属水酸化物の外形の一例を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図5】 多面体形状の金属水酸化物の外形の他の例を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
Claims (4)
- フェノール性水酸基を有する窒素含有化合物を含有してなる請求項1記載の半導体封止用樹脂組成物。
- 上記フェノール性水酸基を有する窒素含有化合物の含有量が、樹脂組成物全体の0.02〜1.5重量%である請求項2記載の半導体封止用樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体封止用樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる半導体装置。
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