JP4105343B2 - 半導体封止用樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱伝導性および難燃性に優れた半導体封止用樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トランジスタ,IC,LSI等の半導体素子は、従来からエポキシ樹脂組成物を用いて封止され電子部品化されている。この電子部品は、難燃性の規格であるUL94 V−0に適合することが必要不可欠であり、これまでは、その難燃作用を付与するため、臭素化エポキシ樹脂や酸化アンチモン等のアンチモン化合物を添加する方法が採られてきた。
【0003】
ところが、最近、環境保全の観点から、ハロゲン系難燃剤、酸化アンチモンを使用せずに難燃性を付与した難燃性エポキシ樹脂組成物が要求されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方で、半導体分野の技術革新により半導体デバイスの高密度化、高速化が進み、これらデバイスにおける消費電力は増加傾向にある。これに伴い、半導体装置としてのパッケージの熱放散性、つまるところ半導体封止用樹脂組成物自身の良好な熱放散性が求められている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、熱伝導性および難燃性に優れた半導体封止用樹脂組成物およびそれを用いて得られる信頼性の高い半導体装置の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の(A)〜(D)成分を含有する半導体封止用樹脂組成物を第1の要旨とする。
【0007】
(A)エポキシ樹脂。
(B)フェノール樹脂。
(C)下記の一般式(1)で表される多面体形状の複合化金属水酸化物。
【化2】
m(Ma Ob )・n(Qd Oe )・cH2 O …(1)
〔上記式(1)において、MとQは互いに異なる金属元素であり、Qは、周期律表のIVa,Va,VIa, VIIa,VIII,Ib,IIbから選ばれた族に属する金属元素である。また、m,n,a,b,c,d,eは正数であって、互いに同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。〕
(D)熱伝導率が4.0W/m・K以上である無機粉末。
【0008】
また、上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる半導体装置を第2の要旨とする。
【0009】
なお、本発明の半導体封止用樹脂組成物における(C)成分の、多面体形状の複合化金属水酸化物とは、図2に示すような、六角板形状を有するもの、あるいは、鱗片状等のように、いわゆる厚みの薄い平板形状の結晶形状を有するものではなく、縦,横とともに厚み方向(c軸方向)への結晶成長が大きい、例えば、板状結晶のものが厚み方向(c軸方向)に結晶成長してより立体的かつ球状に近似させた粒状の結晶形状、例えば、略12面体,略8面体,略4面体等の形状を有する複合化金属水酸化物をいい、通常、これらの混合物である。もちろん、上記多面体形状は、結晶の成長のしかた以外にも、粉砕や摩砕等によっても多面体の形は変化し、より立体的かつ球状に近似させることが可能となる。この多面体形状の複合化金属水酸化物の結晶形状を表す走査型電子顕微鏡写真(倍率50000倍)の一例を図1に示す。このように、本発明では、上記多面体形状の複合化金属水酸化物を用いることにより、従来のような六角板形状を有するもの、あるいは、鱗片状等のように、平板形状の結晶形状を有するものに比べ、樹脂組成物の流動性の低下を抑制することができる。
【0010】
本発明の複合化金属水酸化物の形状について、略8面体形状のものを例にしてさらに詳細に説明する。すなわち、本発明の複合化金属水酸化物の一例である8面体形状のものは、平行な上下2面の基底面と外周6面の角錐面とからなり、上記角錐面が上向き傾斜面と下向き傾斜面とが交互に配設された8面体形状を呈している。
【0011】
より詳しく説明すると、従来の厚みの薄い平板形状の結晶形状を有するものは、例えば、結晶構造としては六方晶系であり、図3に示すように、ミラー・ブラベー指数において(00・1)面で表される上下2面の基底面10と、{10・0}の型面に属する6面の角筒面11で外周が囲まれた六角柱状である。そして、〔001〕方向(c軸方向)への結晶成長が少ないため、薄い六角柱状を呈している。
【0012】
これに対し、本発明の複合化金属水酸化物は、図4に示すように、結晶成長時の晶癖制御により、(00・1)面で表される上下2面の基底面12と、{10・1}の型面に属する6面の角錘面13で外周が囲まれている。そして、上記角錘面13は、(10・1)面等の上向き傾斜面13aと、(10・−1)面等の下向き傾斜面13bとが交互に配設された特殊な晶癖を有する8面体形状を呈している。また、c軸方向への結晶成長も従来のものに比べて大きい。図4に示すものは、板状に近い形状であるが、さらにc軸方向への結晶成長が進み、晶癖が顕著に現れて等方的になったものを図5に示す。このように、本発明の複合化金属水酸化物は、正8面体に近い形状のものも含むのである。すなわち、基底面の長軸径と基底面間の厚みとの比率(長軸径/厚み)は、1〜9が好適である。この長軸径と厚みとの比率の上限値としてより好適なのは、7である。なお、上記ミラー・ブラベー指数において、「1バー」は、「−1」と表示した。
【0013】
このように、本発明の複合化金属水酸化物が、外周を囲む6つの面が、{10・1}に属する角錘面であることは、つぎのことからわかる。すなわち、本発明の複合化金属水酸化物の結晶を、c軸方向から走査型電子顕微鏡で観察すると、この結晶は、c軸を回転軸とする3回回転対称を呈している。また、粉末X線回折による格子定数の測定値を用いた(10・1)面と{10・1}の型面との面間角度の計算値が、走査型電子顕微鏡観察における面間角度の測定値とほぼ一致する。
【0014】
さらに、本発明の複合化金属水酸化物は、粉末X線回折における(110)面のピークの半価幅B110 と、(001)面のピークの半価幅B001 との比(B110 /B001 )が、1.4以上である。このことからも、c軸方向への結晶性が良いことと、厚みが成長していることが確認できる。すなわち、従来の水酸化マグネシウム等の結晶では、c軸方向への結晶が成長しておらず、(001)面のピークがブロードで半価幅B001 も大きくなる。したがって(B110 /B001 )の価は、小さくなる。これに対し、本発明の複合化金属水酸化物では、c軸方向の結晶性が良いために、(001)面のピークが鋭く、細くなり、半価幅B001 も小さくなる。したがって(B110 /B001 )の価が大きくなるのである。
【0015】
すなわち、本発明者らは、難燃性とともに熱伝導性に優れる封止材料を得るために一連の研究を重ねた。その結果、上記多面体形状を有する複合化金属水酸化物〔(C)成分〕を用いるとともに特定の値以上の熱伝導率を有する無機粉末〔(D)成分〕を併用すると、流動性の低下を招くことなく難燃性が付与され、しかも優れた熱伝導性が得られることを見出し本発明に到達した。本発明において、上記熱伝導率は、25℃にて測定した値である。
【0016】
そして、無機成分中、上記無機粉末〔(D)成分〕の含有割合を特定の割合に設定することにより、より一層優れた熱伝導性が得られるようになる。なお、本発明において、上記無機成分とは、上記多面体形状を有する複合化金属水酸化物〔(C)成分〕、上記特定の無機粉末〔(D)成分〕および場合により用いられる無機質充填剤等の無機成分をいう。
【0017】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0018】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A成分)と、フェノール樹脂(B成分)と、多面体形状の複合化金属水酸化物(C成分)と、特定の無機粉末(D成分)と、場合により無機質充填剤とを用いて得られるものであり、通常、粉末状あるいはこれを打錠したタブレット状になっている。または、樹脂組成物を溶融混練した後、略円柱状等の顆粒体に成形した顆粒状、さらにシート状に成形したシート状の封止材料となっている。
【0019】
上記エポキシ樹脂(A成分)としては、特に限定するものではなく従来公知の各種エポキシ樹脂が用いられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等があげられる。これら単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0020】
そして、上記ビフェニル型エポキシ樹脂としては、例えば、下記の一般式(2)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂があげられる。
【0021】
【化3】
【0022】
上記一般式(2)中のR1 〜R4 で表される、−H(水素)または炭素数1〜5のアルキル基のうち、上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の直鎖状または分岐状の低級アルキル基があげられ、特にメチル基が好ましく、上記R1 〜R4 は互いに同一であっても異なっていてもよい。なかでも、低吸湿性および反応性という観点から、上記R1 〜R4 が全てメチル基である下記の式(3)で表される構造のビフェニル型エポキシ樹脂を用いることが特に好適である。
【0023】
【化4】
【0024】
上記エポキシ樹脂(A成分)とともに用いられるフェノール樹脂(B成分)は、上記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであって、特に限定するものではなく従来公知のものが用いられる。例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビフェニル型ノボラック、トリフェニルメタン型、ナトフールノボラックおよびフェノールアラルキル樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、上記フェノール樹脂として下記の一般式(4)で表されるフェノールアラルキル樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
【化5】
【0026】
そして、上記エポキシ樹脂(A成分)と上記フェノール樹脂(B成分)の配合割合は、上記エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量当たり、フェノール樹脂中の水酸基が0.7〜1.3当量となるように設定することが好ましく、なかでも0.9〜1.1当量となるよう設定することが特に好ましい。
【0027】
そして、上記A〜B成分とともに用いられる多面体形状の複合化金属水酸化物(C成分)は、下記の一般式(1)で表され、かつ結晶形状が多面体形状を有するものである。
【0028】
【化6】
m(Ma Ob )・n(Qd Oe )・cH2 O …(1)
〔上記式(1)において、MとQは互いに異なる金属元素であり、Qは、周期律表のIVa,Va,VIa, VIIa,VIII,Ib,IIbから選ばれた族に属する金属元素である。また、m,n,a,b,c,d,eは正数であって、互いに同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。〕
【0029】
上記一般式(1)で表される複合化金属水酸化物に関して、式(1)中の金属元素を示すMとしては、Al,Mg,Ca,Ni,Co,Sn,Zn,Cu,Fe,Ti等があげられる。
【0030】
また、上記一般式(1)で表される複合化金属水酸化物中のもう一つの金属元素を示すQは、周期律表のIVa,Va,VIa, VIIa,VIII,Ib,IIbから選ばれた族に属する金属である。例えば、Fe,Co,Ni,Pd,Cu,Zn等があげられ、単独でもしくは2種以上併せて選択される。
【0031】
このような結晶形状が多面体形状を有する複合化金属水酸化物は、例えば、複合化金属水酸化物の製造工程における各種条件等を制御することにより、縦,横とともに厚み方向(c軸方向)への結晶成長が大きい、所望の多面体形状、例えば、略12面体、略8面体、略4面体等の形状を有する複合化金属水酸化物を得ることができる。
【0032】
本発明に用いられる多面体形状の複合化金属水酸化物は、その一例として結晶外形が略8面体の多面体構造を示し、アスペクト比が1〜8程度、好ましくは1〜7、特に好ましくは1〜4に調整されたもので、例えば、式(1)中の、M=Mg,Q=Znの場合について述べると、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、水酸化マグネシウム水溶液に硝酸亜鉛化合物を添加し、原料となる部分複合化金属水酸化物を作製する。ついで、この原料を、800〜1500℃の範囲で、より好ましくは1000〜1300℃の範囲で焼成することにより、複合化金属酸化物を作製する。この複合化金属酸化物は、m(MgO)・n(ZnO)の組成で示されるが、さらにカルボン酸、カルボン酸の金属塩、無機酸および無機酸の金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種を上記複合化金属酸化物に対して約0.1〜6mol%共存する水媒体中の系で強攪拌しながら40℃以上の温度で水和反応させることにより、m(MgO)・n(ZnO)・cH2 Oで示される、本発明の多面体形状を有する複合化金属水酸化物を作製することができる。
【0033】
上記製法において、原料としては、上述した方法で得られる部分複合化金属水酸化物だけでなく、例えば、共沈法によって得られる複合化金属水酸化物,水酸化マグネシウムとZnの混合物,酸化マグネシウムとZn酸化物の混合物,炭酸マグネシウムとZn炭酸塩との混合物等も用いることができる。また、水和反応時の攪拌は、均一性や分散性の向上、カルボン酸、カルボン酸の金属塩、無機酸および無機酸の金属塩からなる群から選ばれた少なくとも一種との接触効率向上等のため、強攪拌が好ましく、さらに強力な高剪断攪拌であればなお好ましい。このような攪拌は、例えば、回転羽根式の攪拌機において、回転羽根の周速を5m/s以上として行うのが好ましい。
【0034】
上記カルボン酸としては、特に限定されるものではないが、好ましくはモノカルボン酸、オキシカルボン酸(オキシ酸)等があげられる。上記モノカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸等があげられ、上記オキシカルボン酸(オキシ酸)としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、サリチル酸、安息香酸、没食子酸等があげられる。また、上記カルボン酸の金属塩としては、特に限定されるものではないが、好ましくは酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛等があげられる。そして、上記無機酸としては、特に限定されるものではないが、好ましくは硝酸、塩酸等があげられる。また、上記無機酸の金属塩としては、特に限定されるものではないが、好ましくは硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛等があげられる。
【0035】
上記多面体形状を有する複合化金属水酸化物の具体的な代表例としては、sMgO・(1−s)NiO・cH2 O〔0<s<1、0<c≦1〕、sMgO・(1−s)ZnO・cH2 O〔0<s<1、0<c≦1〕、sAl2 O3 ・(1−s)Fe2 O3 ・cH2 O〔0<s<1、0<c≦3〕等があげられる。なかでも、酸化マグネシウム・酸化ニッケルの水和物、酸化マグネシウム・酸化亜鉛の水和物、酸化マグネシウム・酸化銅の水和物が特に好ましく用いられる。
【0036】
そして、上記多面体形状を有する複合化金属水酸化物(C成分)としては、下記に示す粒度分布(c1)〜(c3)を有することが好ましい。なお、下記に示す粒度分布の測定には、レーザー式粒度測定機を使用する。
(c1)粒径1.3μm未満のものが10〜35重量%。
(c2)粒径1.3〜2.0μm未満のものが50〜65重量%。
(c3)粒径2.0μm以上のものが10〜30重量%。
【0037】
上記粒度分布において、粒度分布(c1)の粒径1.3μm未満のものが10重量%未満の場合は、難燃性の効果が乏しくなり、逆に35重量%を超え多くなると、流動性が損なわれる傾向がみられるようになる。また、粒度分布(c3)の2.0μm以上のものが10重量%未満では、流動性が低下し、逆に30重量%を超え多くなると、難燃性の効果が乏しくなる傾向がみられる。なお、上記粒度分布(c1)における粒径の通常の下限値は0.1μmであり、上記粒度分布(c3)における粒径の通常の上限値は15μmである。
【0038】
そして、上記C成分である多面体形状の複合化金属水酸化物では、上記粒度分布(c1)〜(c3)に加えて、その最大粒径が10μm以下であることが好ましい。特に好ましくは最大粒径が6μm以下である。すなわち、最大粒径が10μmを超えると、難燃性を有するために多くの量を必要とするようになる傾向がみられるからである。
【0039】
さらに、上記C成分である多面体形状の複合化金属水酸化物の比表面積が2.0〜4.0m2 /gの範囲であることが好ましい。なお、上記C成分の比表面積の測定は、BET吸着法により測定される。
【0040】
また、上記多面体形状を有する複合化金属水酸化物(C成分)のアスペクト比は、通常1〜8、好ましくは1〜7、特に好ましくは1〜4である。ここでいうアスペクト比とは、複合化金属水酸化物の長径と短径との比で表したものである。すなわち、アスペクト比が8を超えると、この複合化金属水酸化物を含有する樹脂組成物が溶融したときの粘度低下に対する効果が乏しくなる。そして、本発明の半導体封止用樹脂組成物の構成成分として用いられる場合には、一般的に、アスペクト比が1〜4のものが用いられる。
【0041】
なお、本発明においては、上記C成分である多面体形状の複合化金属水酸化物とともに従来の薄平板形状の複合化金属水酸化物を併用することができる。そして、本発明の半導体封止用樹脂組成物が溶融したときの粘度低下および流動性の効果の発現という点から、用いられる複合化金属水酸化物全体(従来の薄平板形状を含む)中の、多面体形状の複合化金属水酸化物の占める割合を30〜100重量%の範囲に設定することが好ましい。すなわち、多面体形状の複合化金属水酸化物の占める割合が30重量%未満では樹脂組成物の粘度低下の効果および流動性の向上効果が乏しくなる。
【0042】
上記多面体形状を有する複合化金属水酸化物(C成分)を含む複合化金属水酸化物の含有量は、樹脂組成物全体の1〜30重量%、特には3〜25重量%の範囲に設定することが好ましい。すなわち、上記複合化金属水酸化物が1重量%未満では、充分な難燃効果を得ることが困難であり、また、30重量%を超えると、流動性が低下し、ワイヤー流れ等の不良を引き起こす傾向がみられるからである。
【0043】
上記A〜C成分とともに用いられる特定の無機粉末(D成分)は、常温(25℃)での熱伝導率が4.0W/m・K以上を示す高熱伝導率を有する無機化合物の粉末であって、通常、結晶性シリカ粉末、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、炭化珪素等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、上記無機粉末(D成分)において、レーザー式粒度測定機による平均粒径が0.1〜50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜30μmである。すなわち、D成分の平均粒径が0.1μm以下では所望の流動性を得ることが困難であり、また50μmを超えると成形用金型摩耗の問題が生じる傾向がみられるからである。
【0044】
上記特定の無機粉末(D成分)の含有割合は、無機成分(上記C成分、D成分および場合により用いられる無機質充填剤等)の総和量(C成分+D成分+場合により無機質充填剤等)中、D成分が30重量%以上となるよう設定することが好ましく、特に好ましくは50〜80重量%である。すなわち、D成分の含有割合が30重量%を下回り少な過ぎると、目的とする熱放散性を得ることが困難となる傾向がみられるからである。
【0045】
そして、本発明の半導体封止用樹脂組成物には、上記A〜D成分とともに、場合により無機質充填剤を用いることができる。上記無機質充填剤としては、破砕状、摩砕状、球状等特に限定するものではなく従来公知の各種充填剤があげられる。例えば、石英ガラス粉末、タルク、溶融シリカ粉末等のシリカ粉末等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。この無機質充填剤は、前述の特定の無機粉末とは異なり、熱伝導率が4.0W/m・K未満のものをいう。そして、上記無機質充填剤としては、レーザー式粒度測定機による平均粒径が10〜70μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。すなわち、先に述べたように、複合化金属水酸化物が前記粒度分布(c1)〜(c3)を有するとともに、無機質充填剤の平均粒径が上記範囲内であると、樹脂組成物の良好な流動性が得られる。
【0046】
そして、無機成分(上記C成分、D成分および場合により用いられる無機質充填剤等)の含有量は、通常、半導体封止用樹脂組成物全体の60〜95重量%となるよう設定することが好ましい。
【0047】
なお、本発明に係る半導体封止用樹脂組成物には、上記A〜D成分および場合により用いられる無機質充填剤以外に、硬化促進剤、顔料、離型剤、表面処理剤、可撓性付与剤、イオントラップ剤、接着付与剤等を必要に応じて適宜に添加することができる。
【0048】
上記硬化促進剤としては、特に限定するものではなくエポキシ基と水酸基の反応を促進するものであればよく、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン系化合物、トリエチレンジアミン等の三級アミン類、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物等があげられる。これら化合物は単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0049】
上記顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン等があげられる。また、上記離型剤としては、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、パラフィンや脂肪酸エステル、脂肪酸塩等があげられる。
【0050】
さらに、上記表面処理剤としては、シランカップリング剤等のカップリング剤があげられる。また、上記可撓性付与剤としては、各種シリコーン化合物やブタジエン−アクリロニトリルゴム等があげられる。
【0051】
上記イオントラップ剤としては、水酸化ビスマス、ハイドロタルサイト類化合物等があげられる。
【0052】
また、本発明に係る半導体封止用樹脂組成物では、上記各成分に加えてさらに有機系難燃剤あるいは赤リン系難燃剤を併用すると、上記多面体形状を有する複合化金属水酸化物(C成分)を含有する複合化金属水酸化物の使用量を低減させることができ好ましい。上記有機系難燃剤としては、含窒素有機化合物、含リン有機化合物、ホスファゼン系化合物等があげられるが、特に含窒素有機化合物が好ましく用いられる。
【0053】
上記含窒素有機化合物としては、例えば、メラミン誘導体、シアヌレート誘導体、イソシアヌレート誘導体等の複素環骨格を有する化合物があげられる。これら有機系難燃剤は単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0054】
上記有機系難燃剤は、前記複合化金属水酸化物と予め機械的に混合した後配合してもよいし、有機系難燃剤を溶剤に溶解してこれに前記複合化金属水酸化物を添加して脱溶剤し表面処理したものを用いてもよい。
【0055】
そして、上記有機系難燃剤の含有量は、前記複合化金属水酸化物の使用量(多面体形状の複合化金属水酸化物と場合により使用される従来の薄平板形状の複合化金属水酸化物の合計量)の1〜10重量%の範囲に設定することが好ましい。特に好ましくは1〜5重量%である。
【0056】
一方、上記赤リン系難燃剤としては、赤リン粉末、あるいはこの赤リン粉末表面を各種有機物,無機物で保護コートした赤リン粉末をあげることができる。そして、上記赤リン系難燃剤の含有量は、上記有機系難燃剤の場合と同様、前記複合化金属水酸化物の使用量(多面体形状の複合化金属水酸化物と場合により使用される従来の薄平板形状の複合化金属水酸化物の合計量)の1〜10重量%の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは1〜5重量%である。
【0057】
上記有機系難燃剤は、前記複合化金属水酸化物と予め機械的に混合した後配合してもよいし、有機系難燃剤を溶剤に溶解してこれに前記複合化金属水酸化物を添加して脱溶剤し表面処理したものを用いてもよい。
【0058】
そして、本発明に係る半導体封止用樹脂組成物において、前記A〜D成分を含む各成分の好適な組み合わせは、つぎのとおりである。すなわち、エポキシ樹脂(A成分)のなかでも、流動性が良好であるという点からビフェニル系エポキシ樹脂が好ましく、またフェノール樹脂(B成分)としては、その流動性という観点からフェノールアラルキル樹脂が好ましい。そして、無機粉末(D成分)として、熱伝導率が4.0W/m・K以上を示す、特に熱伝導率が20〜40W/m・Kを示す窒化アルミニウム、窒化珪素を用いることが好ましい。また、これらA〜D成分とともに無機質充填剤として溶融シリカ粉末を用いることが好ましい。さらに、これら各成分に加えて、上記のような複合化金属水酸化物を用いた場合、離型性が低下する傾向がみられることから、ワックス類を用いることが好ましい。
【0059】
本発明に係る半導体封止用樹脂組成物は、例えばつぎのようにして製造することができる。すなわち、エポキシ樹脂(A成分)、フェノール樹脂(B成分)、多面体形状の複合化金属水酸化物(C成分)、特定の無機粉末(D成分)および場合により無機質充填剤ならびに必要に応じて他の添加剤を所定の割合で配合しミキサー等で充分に混合する。つぎに、この混合物をミキシングロール機やニーダー等の混練機を用いて加熱状態で溶融混練し、これを室温に冷却する。そして、公知の手段によって粉砕し、必要に応じて打錠するという一連の工程によって目的とする半導体封止用樹脂組成物を製造することができる。
【0060】
あるいは、上記半導体封止用樹脂組成物の混合物を混練機に導入して溶融状態で混練した後、これを略円柱状の顆粒体やペレット状に連続的に成形するという一連の工程によっても半導体封止用樹脂組成物を製造することができる。
【0061】
さらに、上記半導体封止用樹脂組成物の混合物をパレット上に受け入れし、これを冷却後、プレス圧延,ロール圧延,あるいは溶媒を混合したものを塗工してシート化する等の方法によりシート状の半導体封止用樹脂組成物を製造することができる。
【0062】
このようにして得られる半導体封止用樹脂組成物(粉末状,タブレット状,顆粒状等)を用いての半導体素子の封止方法は、特に限定するものではなく、通常のトランスファー成形等の公知の成形方法によって行うことができる。
【0063】
また、上記シート状の半導体封止用樹脂組成物を用いて、例えば、つぎのようにしてフリップチップ実装による半導体装置を製造することができる。すなわち、上記シート状半導体封止用樹脂組成物を、接合用バンプを備えた半導体素子の電極面側に、あるいは、回路基板のバンプ接合部側に配置し、上記半導体素子と回路基板とをバンプ接合するとともに両者を樹脂封止による接着封止を行うことによりフリップチップ実装して半導体装置を製造することができる。
【0064】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0065】
まず、下記に示す各材料を準備した。
【0066】
〔エポキシ樹脂〕
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量195、軟化点75℃)
【0067】
〔フェノール樹脂〕
前記式(4)で表されるフェノールアラルキル樹脂(水酸基当量174、軟化点70℃)
【0068】
〔硬化促進剤〕
トリフェニルホスフィン
【0069】
〔無機質充填剤〕
溶融シリカ粉末(球形、平均粒径25μm、熱伝導率1.4W/m・K)
【0070】
〔無機粉末A〕
窒化アルミニウム(平均粒径5.0μm、熱伝導率40W/m・K)
【0071】
〔無機粉末B〕
窒化珪素(平均粒径8.0μm、熱伝導率20W/m・K)
【0072】
〔シランカップリング剤〕
β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
【0073】
〔複合化金属水酸化物〕
つぎに、実施例に先立って下記の表1〜表2に示す多面体形状の複合化金属水酸化物を準備した。なお、多面体形状の複合化金属水酸化物は、先に述べた多面体形状の複合化金属水酸化物の製造方法に準じて作製した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【実施例1〜7、比較例1〜2】
ついで、下記の表3〜表4に示す各成分を同表に示す割合で配合し、ミキシングロール機(温度100℃)で3分間溶融混練を行い、冷却固化した後粉砕して目的とする粉末状エポキシ樹脂組成物を得た。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
このようにして得られた実施例および比較例のエポキシ樹脂組成物を用いて、タブレット化し、成形条件175℃×70kg/cm2 ×120秒間で難燃性用試験片を成形した。また、TOWA自動成形機でLQFP−114(大きさ:20mm×20mm×厚み1.4mm)のパッケージを成形した。これら難燃性用試験片およびパッケージを用いて、難燃性および熱伝導性を測定評価した。これらの結果を後記の表5〜表6に併せて示す。
【0080】
〔難燃性〕
UL94 V−0規格の方法に従って難燃性を評価した。なお、合格とは94−V0合格を意味する。
【0081】
〔熱伝導性〕
レーザ・フラッシュ法を用い、室温(25℃)にて測定した。
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
上記表5および表6の結果から、実施例品は優れた難燃性を示し、熱伝導性での測定値が高く、熱放散性に優れていることがわかる。これに対して、比較例品は、いずれも熱伝導性が悪く、しかも比較例2品においては難燃性に劣っていた。
【0085】
さらに、前記実施例1における、エポキシ樹脂成分を、前記式(2)中のR1 〜R4 が全て水素となるビフェニル型エポキシ樹脂と、前記式(2)中のR1 〜R4 が全てメチル基となるビフェニル型エポキシ樹脂を重量比率で1:1となるように配合した混合系のエポキシ樹脂に代えた。それ以外は実施例1と同様の配合割合に設定してエポキシ樹脂組成物を作製した。このエポキシ樹脂組成物を用いて、前記と同様の測定・評価を行った結果、上記実施例と略同様の良好な結果が得られた。
【0086】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、前記一般式(1)で表される多面体形状の複合化金属水酸化物(C成分)と、特定の無機粉末(D成分)を含有する半導体封止用樹脂組成物である。このように、上記多面体形状の複合化金属水酸化物(C成分)と特定の無機粉末(D成分)を併用するため、優れた難燃性および流動性を備えるとともに耐湿信頼性にも優れたものが得られる。さらに、上記特定の無機粉末(D成分)を含有することから、パッケージの優れた熱放散性がされる。
【0087】
そして、無機成分〔上記複合化金属水酸化物(C成分)、特定の無機粉末(D成分)および場合により用いられる無機質充填剤等〕の総和量中、上記特定の無機粉末(D成分)の含有割合を特定の割合に設定することにより、より一層優れた熱伝導性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いられる多面体形状の複合化金属水酸化物の結晶形状の一例を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率50000倍)である。
【図2】従来の複合化金属水酸化物の結晶形状の一つである六角板状形状を示す斜視図である。
【図3】従来の複合化金属水酸化物の外形を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図4】本発明の複合化金属水酸化物の外形の一例を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図5】本発明の複合化金属水酸化物の外形の他の例を示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
Claims (5)
- 無機成分中の(D)成分の含有割合が30重量%以上である請求項1記載の半導体封止用樹脂組成物。
- 上記(C)成分である多面体形状の複合化金属水酸化物が、下記に示す粒度分布(c1)〜(c3)を有する請求項1または2記載の半導体封止用樹脂組成物。
(c1)粒径1.3μm未満のものが10〜35重量%。
(c2)粒径1.3〜2.0μm未満のものが50〜65重量%。
(c3)粒径2.0μm以上のものが10〜30重量%。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、含窒素有機化合物を含有してなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体封止用樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる半導体装置。
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