JP4509922B2 - 情報機器スピンドルモータ用の動圧型焼結含油軸受 - Google Patents

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本発明は情報機器スピンドルモータ用の動圧型焼結含油軸受に関するものである。情報機器のスピンドルモータには、特にレーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンミラー、磁気ディスクドライブ(HDD等)など、高速下で高回転精度が要求される機器のスピンドルモータやDVD、CD−ROMなど、ディスクが載ることによって大きなアンバランス荷重が作用し高速で駆動する機器のスピンドルモータが含まれる。
前記のような情報機器関連の小型スピンドルモータでは、回転性能のより一層の向上と低コスト化が求められている。スピンドルの軸受部に用いられているボールベアリングは、内輪、外輪、ボール、保持器、シール等の多数の構成部品からなるので、低コスト化に限界があり、性能面でも、特有のレース音(ボールが軌道面を転がる音)や、保持器の自励振動による騒音の発生があり、高速で使用すると騒音レベルが大きく、低騒音化は限界にきている。そのため、スピンドルの軸受部は、ボールベアリングから多孔質含油軸受、特に焼結含油軸受に置き換えることが検討されている。
焼結含油軸受は、焼結金属からなる軸受本体に潤滑油や潤滑グリースを含浸させたもので、軸受隙間と軸受本体との間を循環する油が、軸受隙間に油膜を形成し回転軸を非接触支持するものであるが、真円軸受の一種であるため、軸の偏心が小さいところでは、不安定振動が発生しやすく、回転速度の1/2の速度で振れ回るいわゆるホワールが発生しやすい等欠点がある。そこで、軸受面にヘリングボーン形やスパイラル形などの動圧溝を設け、軸の回転に伴う動圧溝の作用によって軸受隙間に動圧油膜を発生させて軸を浮上支持することが試みられている(動圧型焼結含油軸受)。
図5に示すように、従来、情報機器関連の小型スピンドルモータにおいて、この種の焼結含油軸受11は、ステータ12や下側フレーム13等の静止側部材を装着するハウジング14の内周面に圧入或いは接着といった手段で固定される。
特許2532365号
従来構成には、以下の改良すべき点がある。
軸受をハウジングの内周面に圧入等する際に、軸受面の動圧溝を崩してしまう可能性がある。
軸受をハウジングの内周面に圧入等した後、軸受の収縮度合い(軸受各部の偏肉、密度の違いなどに起因する。)が軸受精度やハウジングの形状(肉厚の変化など)に影響され、軸受面の円筒度や同軸度などが狂う可能性がある。
ハウジングと軸受とが別体であることは、部品点数の増大、組立工数の増大になる。
ハウジング、軸受のそれぞれについて、強度確保のための設計が必要であり、小型軽量化に限界がある。
そこで、本発明は、従来のスピンドルモータにおける前記のような問題点を解決することを目的とする。
本発明は、外周にステータコイルが装着され、内周面に、支持すべき回転軸の外周面と軸受隙間を介して対向し、かつ傾斜状の動圧溝を有する軸受面を備え、軸受面が軸方向に離隔した2箇所にあり、外周面に、端面が静止側部材への取り付け部となるつば部が形成された焼結金属からなる動圧型焼結含油軸受であって、軸受面を、焼結金属素材の内周に配置した成形型に焼結金属素材の内周面を加圧して成形型の形状を転写することにより成形し、つば部を2つの軸受面の間に設け、半径方向の肉厚を2つの軸受面の間のつば部で最も大きくしたことを特徴とする。

前記動圧型焼結含油軸受は、内部に含浸している油が外部に漏れるのを防ぐため、その内周面を除く外表面に封口処理を施すことが望ましい。
本発明によれば、動圧型焼結含油軸受の内周面に直接軸受面が形成されているので、従来のスピンドルモータにおいて必要であった軸受を固定する作業が不要となる。このため、軸受を固定する際に問題であった、軸受面の動圧溝が崩れることや、軸受面の円筒度や同軸度が狂うことが生じない。従って、スピンドルモータにおける高速回転性能や、回転精度の向上を図ることができる。
また、動圧型焼結含油軸受はハウジングと一体形成された形態であるので、部品点数、及び組立工数を低減でき、製造コストの低減が図られる。この一体品について、強度確保のための設計をすれば良いので、さらなる小型軽量化を図ることができる。
さらに、動圧型焼結含油軸受の内周面を除く外表面に封孔処理を施すことによって、動圧型焼結含油軸受の内部に含浸している油が外部に漏れるのを防ぐことができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、CD−ROM用スピンドルモータAを例示している。このスピンドルモータAは、回転軸1と、回転軸1が挿入されるハウジング3と、半径方向のギャップを介して対向配置されたロータ5及びステータコイル6を主要構成とする。
回転軸1の上端には、情報記録媒体となるディスクを装着するターンテーブル8が取付けられる。ターンテーブル8の下面には、筒状のロータケース9が取付けられ、その内周面にロータ5が固定される。
ハウジング3(動圧型焼結含油軸受)は、焼結金属からなる略円筒状の多孔質体で、内部に潤滑油或いは潤滑グリースを含浸させたものである。
ハウジング3は、金属粉を圧粉成形し、焼成して得られた焼結金属製の略円筒形の多孔質体である。具体的には、銅系或いは鉄系、またはその双方を主成分とする焼結金属で形成され、望ましくは銅を20〜95wt%使用し、密度が6.4〜7.2g/ 3 となるように形成される。なお、ハウジング3は、内部に含浸した油が外部に漏れないよう、内周面3bを除く外表面に封孔処理を施すことが望ましい。
ハウジング3の内周面3bには、回転軸1の外周面1aと所定の軸受隙間cを介して対向する軸受面3cが形成される。また、ハウジング3の外周面3dには、つば部3d1が一体成形され、つば部3d1を挟んで上側にステータコイル6が外挿固定され、下側にフレーム10が外挿固定される。本実施形態の場合、ロータ5とステータコイル6は、互いに半径方向に電磁力を及ぼすように所定のラジアルギャップを介して取付けられる。
図2に示すように、ハウジング3の内周面3bには、軸方向に離隔する2つの軸受面3cが形成され、2つの軸受面3cの双方に、それぞれ軸方向に対して傾斜させた複数の動圧溝3eが円周方向に配列形成される。軸受面3cにおける動圧溝3eとそれ以外の領域3fとの段差(動圧溝3eの深さ)は、例えば、3〜5μm程度である。なお、動圧溝3eは軸方向に対して傾斜して形成されていれば足り、この条件を満たす限り同図に示す形状には限定されない。
前記のような軸受面3cの成形には、種々の成形方法を適用することができる。例えば、図3に示すような所定形状の焼結金属素材3' の内周面3b' に、完成品3の軸受面3cに対向した形状の成形型を加圧することによって、軸受面3cの動圧溝3eの形成領域とそれ以外の領域3fとを同時成形することができる。この工程は以下のようなものである。
図4は、軸受面成形工程で使用する形成装置の概略構造を例示している。この装置は、円筒状のダイ20、焼結金属素材3' の内周面3b' を形成するコアロッド21、焼結金属素材3' の両端面を上下方向から押さえる上下の1次パンチ22、23、焼結金属素材3' を外周面から加圧する上下の2次パンチ24、25を主要な要素として構成される。コアロッド21の外周面には、完成品の軸受面3cの形状に対応した凹凸状の2つの成形型21aが軸方向に離隔して設けられている。各成形型21aの凸状になった第1成形部21a1は軸受面3cにおける動圧溝3eの領域を成形し、凹状になった第2成形部21a2は動圧溝3e以外の領域3fを成形するものである。成形型21aにおける第1成形部21a1と第2成形部21a2との段差は、軸受面3bにおける動圧溝3eの深さと同じ3〜5μmである。
焼結金属素材3' の円周面3b' にコアロッド21を隙間をもって挿入して位置合わせをした後、上1次パンチ22およびコアロッド21を降下させ、焼結金属素材3' をダイ20に圧入し、さらに下1次パンチ23に押し付ける。その後、上下2次パンチ24・25を圧入して、焼結金属素材3' を外周側から加圧する。
焼結金属素材3' は上下1次パンチ22・23および上下2次パンチ24・25から圧迫力を受けて変形を起こし、焼結金属素材3' の内周面3b' がコアロッド21の側に塑性流動を起こして成形型21aに食い付く。これにより、成形型21aの形状が焼結金属素材3' の内周面3b' に転写され、軸受面3cが図2に示す形状に成形される。
軸受面3cの成形が完了した後、上下2次パンチ24・25を抜き、上1次パンチ22を上昇させ、焼結金属素材3' にコアロッド21を挿入したままの状態で下1次パンチ23とコアロッド21を連動して上昇させ、焼結金属素材3' をダイ20から抜く。焼結金属素材3' をダイ20から抜くと、焼結金属素材3' にスプリングバックが生じ、その内径寸法が拡大するので、動圧溝3eを崩すことなく、焼結金属素材3' の内周面3b' からコアロッド21を抜き取ることができる。これにより、図2に示す形状のハウジング3が完成する。
スピンドルモータAは、上述のように形成されたハウジング3に、スラスト受け4やステータコイル6等を取付けた後、ターンテーブル8、ロータケース9、ロータ5を取付けた回転軸1をハウジング3内に挿入することによって完成する。
スピンドルモータAは、回転軸1の回転に伴い、ハウジング3の内部に保有された油が軸受面3bの軸方向両側から軸受隙間cに滲み出す。さらに、油は動圧溝3eによって軸受隙間cの軸方向中央に向けて引き込まれる。この油の引き込み作用によって軸受隙間cに介在する油膜の圧力が高められ、動圧油膜が形成される。この動圧油膜によって、回転軸1はホワール等の不安定振動を生じることなく、軸受面3bに対して浮上支持(非接触支持)される。軸受隙間cに滲み出した油は、回転軸1の回転に伴なう発生圧力により、軸受面3bの表面開孔(多孔質体組織の細孔が外表面に開口した部分をいう。)からハウジング3の内部に戻り、ハウジング3の内部を循環して、再び軸受面3bから軸受隙間cに滲み出す。
本実施形態におけるスピンドルモータは、CD−ROM用の構成であるから、前記に示したハウジング3の形状やその他の部品の形状、モータの構造等は、CD−ROM用に適したものを示したが、本発明のスピンドルモータは、用途に応じてこれらを変更して用いられるものである。
なお、ハウジングの製造方法は、前記実施形態において、焼結金属素材のスプリングバックを利用して動圧溝を崩すことなく、コアロッドから抜き取られる方法を示したが、本発明を実施するに当たり当該製造方法に限られるものではない。他の方法として、コアロッドの先端部にすり割(スリット)を形成すること等によって、拡縮自在に構成されたコアロッドを用い、ハウジング成形後、コアロッドを縮径させて、ハウジングをコアロッドから抜き取るようにしても良い。
本発明の一実施形態に係るCD−ROM用スピンドルモータの縦断面図。 本発明の一実施形態に係るCD−ROM用スピンドルモータのハウジングの縦断面図。 本発明の一実施形態に係る焼結金属素材の縦断面図。 本発明の一実施形態に係るハウジングの形成装置の概略断面図。 従来の情報機器関連の小型スピンドルモ−タの縦断面図。
符号の説明
1 回転軸
3 ハウジング
3b 内周面
3c 軸受面
3d 外周面
3d1 つば部
3e 動圧溝
3f 軸受面の溝以外の領域
4 スラスト受け
5 ロータ
6 ステータコイル
8 ターンテーブル
c 軸受隙間

Claims (2)

  1. 外周にステータコイルが装着され、内周面に、支持すべき回転軸の外周面と軸受隙間を介して対向し、かつ傾斜状の動圧溝を有する軸受面を備え、軸受面が軸方向に離隔した2箇所にあり、外周面に、静止側部材への取り付け部となるつば部が形成された焼結金属からなる動圧型焼結含油軸受であって、
    軸受面を、焼結金属素材の内周に配置した成形型に焼結金属素材の内周面を加圧して成形型の形状を転写することにより成形し、つば部を2つの軸受面の間に設け、半径方向の肉厚を2つの軸受面の間のつば部で最も大きくしたことを特徴とする情報機器スピンドルモータ用の動圧型焼結含油軸受。
  2. 内周面を除く外表面に封孔処理を施したことを特徴とする請求項1記載の情報機器スピンドルモータ用の動圧型焼結含油軸受。
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