JP4509340B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびその成形体に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタールなどの熱可塑性樹脂は、優れた加工性、耐薬品性、電気的性質、機械的性質などを有しているため、射出成形品、中空成形品、フィルム、シートなどに加工され各種用途に用いられている。しかしながら用途によっては、柔軟性、接着性、耐摩耗性などが充分とはいえない場合がある。
【0003】
柔軟性を有する熱可塑性樹脂としては、シンジオタクティックポリプロピレン、ジエン系ゴム、エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合ゴムなどが知られている。
シンジオタクティックポリプロピレンは、バナジウム化合物とエーテルおよび有機アルミニウムからなる触媒の存在下に低温重合により得られることが知られている。しかしながらこの方法で得られるポリマーは、そのシンジオタクティシティーが低く、本来のシンジオタックティックな性質を有しているとは言い難かった。またシンジオタックティックペンタッド分率が0.7を超えるようなタクティシティーの高いポリプロピレンは、非対称な配位子を有する遷移金属触媒とアルミノキサンからなる触媒の存在下にが得られることがJ.A.Ewenらにより初めて発見された(J.Am.Chem.Soc.,1988,110,6255-6256)。上記J.A.Ewenらの方法により得られたポリマーは、シンジオタクティシティーが高く、アイソタクティックポリプロピレンよりもエラスティックな性質を有していたが、これを軟質な成形材料として、例えば、軟質塩化ビニルや加硫ゴムなどが使用されている分野に利用しようとする場合、その柔軟性やゴム弾性、機械的強度は充分なものではなかった。
【0004】
ジエン系ゴムの代表例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴムなどが挙げられる。これらのジエン系ゴムのうち、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)は、加工性、強度などの特性に優れていることから、タイヤ、自動車部品、一般工業用部品などの用途に広く用いられている。しかしながら、これらのジエン系ゴムは、耐候性、耐オゾン性に劣っているため、その製品寿命が短いという問題がある。
【0005】
エチレン・プロピレン・ジエン共重合体に代表されるエチレン・α-オレフィン・ポリエン共重合体ゴムは、強度特性、耐熱性、耐候性などに優れているため、自動車部品、工業用ゴム部品、電気絶縁材、土木建材用品などの用途に広く用いられている。しかしながら、耐熱性、耐摩耗性などに劣っているため、用途に限られるという問題がある。
【0006】
上記問題を解決するために、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴムにアイソタクティックポリプロピレンなどを配合したり、またこの組成物を架橋したりする手法が報告されているが、この方法により得られる樹脂組成物からなる成形物は、耐熱性、柔軟性はある程度良好であるものの、耐摩耗性は未だ改善の余地があり、また成形性、特に流動性が低下したりする問題がある。
【0007】
本発明者らは、このような状況に鑑み鋭意研究した結果、特定のシンジオタクティックプロピレン共重合体の架橋物および該架橋物を含む熱可塑性樹脂組成物などは、耐熱性、耐摩耗性、柔軟性に優れることを見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の目的】
本発明は、耐熱性、耐摩耗性および柔軟のバランスに優れた樹脂材料および成形体を提供することを目的としている。
【0009】
【発明の概要】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、
(i)(a)プロピレンから導かれる繰り返し単位と、(b)プロピレン以外の炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる繰り返し単位と、(c)共役ポリエンおよび非共役ポリエンから選ばれる少なくとも1種のポリエンから導かれる繰り返し単位とからなり、前記(a)単位と(b)単位との合計量を100モル%としたとき前記(a)単位を99〜50モル%の量で含み、前記(b)単位を1〜50モル%の量で含み、前記(a)単位と(b)単位との合計量100モル%に対して前記(c)単位を0.01〜30モル%の量で含み、かつ実質的にシンジオタクティック構造であるシンジオタクティックプロピレン共重合体と、
(ii)アイソタクティックプロピレン共重合体とからなり、
前記シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)を60〜80重量部、前記アイソタクティックプロピレン共重合体(ii)を40〜20重量部(但し、(i)+(ii)=100重量部)の量で含有するプロピレン系樹脂組成物が架橋されてなることを特徴としている。
【0015】
本発明では上記架橋が架橋剤の存在下に行われたことが好ましく、電子線架橋により行われたことも好ましい。
本発明に係る成形体は、上記シンジオタクティックプロピレン共重合体の架橋物または上記熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴としている。
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン共重合体の架橋物および熱可塑性樹脂組成物は、耐熱性、耐摩耗性および柔軟性バランスに優れている。
【0016】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るシンジオタクティックプロピレン系共重合体の架橋物および熱可塑性樹脂組成物ならびにこれらの成形体について具体的に説明する。
シンジオタクティックプロピレン共重合体
本発明で用いられるシンジオタクティックプロピレン共重合体は、
(a)プロピレンから導かれる繰り返し単位と、
(b)プロピレン以外の炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる繰り返し単位と、
(c)共役ポリエンおよび非共役ポリエンから選ばれる少なくとも1種のポリエンから導かれる繰り返し単位とからなる。
【0017】
前記(b)単位は、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラドデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの直鎖状または分岐状のα-オレフィン;シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-エチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンなどの環状オレフィンなどのプロピレンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる繰り返し単位である。
【0018】
本発明では(b)単位は、エチレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる繰り返し単位であることが好ましく、特にエチレンまたはブテンから導かれる繰り返し単位であることが好ましい。(b)単位は、2種以上含まれていてもよい。
【0019】
前記(c)単位は、下記共役ポリエンおよび非共役ポリエンから選ばれる少なくとも1種のポリエンから導かれる繰り返し単位である。
共役ポリエンとして具体的には、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、1,3-オクタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-2,4-ペンタジエン、イソプレン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-プロピル-1,3-ブタジエン、2-ブチル-1,3-ブタジエン、2-ペンチル-1,3-ブタジエン、2-ヘキシル-1,3-ブタジエン、2-ヘプチル-1,3- ブタジエン、2-オクチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエンなどの共役ジエン;1,3,5-ヘキサトリエンなどの共役トリエンなどが挙げられる。これらのうちでは、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエンが好ましく、ブタジエン、イソプレンが共重合性に優れる点で特に好ましい。
【0020】
非共役ポリエンとして具体的には、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-エチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘプタジエン、5-エチル-1,4-ヘプタジエン、5-メチル-1,5-ヘプタジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、5-エチル-1,5-ヘプタジエン、4-メチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,4-オクタジエン、4-エチル-1,4-オクタジエン、5-エチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,5-オクタジエン、6-メチル-1,5-オクタジエン、5-エチル-1,5-オクタジエン、6-エチル-1,5-オクタジエン、6-メチル-1,6-オクタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、6-エチル-1,6-オクタジエン、4-メチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,4-ノナジエン、4-エチル-1,4-ノナジエン、5-エチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,5-ノナジエン、5-エチル-1,5-ノナジエン、6-エチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,6-ノナジエン、6-エチル-1,6-ノナジエン、7-エチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,7-ノナジエン、8-メチル-1,7-ノナジエン、7-エチル-1,7-ノナジエン、5-メチル-1,4-デカジエン、5-エチル-1,4-デカジエン、5-メチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,5-デカジエン、5-エチル-1,5-デカジエン、6-エチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,6-デカジエン、6-エチル-1,6-デカジエン、7-エチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,7-デカジエン、7-エチル-1,7-デカジエン、8-エチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,8-デカジエン、9-メチル-1,8-デカジエン、8-エチル-1,8-デカジエン、9-メチル-1,8-ウンデカジエンなどの非共役ジエン;
6,10-ジメチル-1,5,9-ウンデカトリエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、6,9-ジメチル-1,5,8-デカトリエン、6,8,9-トリメチル-1,5,8-デカトリエン、6-エチル-10-メチル-1,5,9-ウンデカトリエン、4-エチリデン-1,6-オクタジエン、7-メチル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、7-メチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、7-エチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、6,7-ジメチル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、6,7-ジメチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、4-エチリデン-1,6-デカジエン、7-メチル-4-エチリデン-1,6-デカジエン、7-メチル-6-プロピル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-1,7-ノナジエン、8-メチル-4- エチリデン-1,7-ノナジエン、4-エチリデン-1,7-ウンデカジエンなどの非共役トリエンなどが挙げられる。
【0021】
このような非共役ポリエンは、架橋した場合に耐磨耗性に優れるなどの点で好ましい。
これらのなかでは5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン(EMND)が望ましい。(c)単位は、2種以上含まれていてもよい。
【0022】
シンジオタクティックプロピレン共重合体は、(a)単位と(b)単位との合計量を100モル%としたとき(a)単位を通常99〜50モル%の量、好ましくは98〜60モル%の量、特に好ましくは90〜65モル%の量で含み、(b)単位を通常1〜50モル%の量、好ましくは1〜40モル%の量、さらに好ましくは5〜35モル%の量で含んでいる。
【0023】
このような量で(a)単位および(b)単位を含有するシンジオタクティックプロピレン共重合体が架橋されてなる架橋物は、耐傷付き性に優れる。またこのようなシンジオタクティックプロピレン共重合体は、熱可塑性樹脂との相溶性が良好となり、得られる熱可塑性樹脂組成物は、充分な柔軟性、ヒートシール性、耐衝撃性を発揮する傾向がある。
【0024】
またシンジオタクティックプロピレン共重合体は、前記(a)単位と(b)単位との合計量100モル%に対して前記(c)単位を通常0.01〜30モル%の量、好ましくは0.1〜30モル%の量、さらに好ましくは0.1〜20モル%の量で含んでいる。
本発明で用いられるシンジオタクティックプロピレン共重合体は、実質的にシンジオタクティック構造であり、シンジオタクティシティーパラメーターは0.6以上、好ましくは0.7以上であり、シンジオタクティシティーがこのような範囲にあると結晶化速度が速く、加工性に優れる。なお、本明細書において実質的にシンジオタクティック構造であるとは、シンジオタクティシティーパラメーターが0.6以上であることを意味する。
【0025】
ここでシンジオタクティシティーパラメーターについて説明する。
このシンジオタクティックプロピレン共重合体のシンジオタクティシティーパラメーター(以下「SP値」ということがある。)は、シンジオタクティックプロピレン共重合体の13C−NMRスペクトルおよび下記式(1)により、頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖部の第2単位目の側鎖メチル基の強度(面積)比として求められる。
【0026】
SP値=第三領域(19.5〜20.3ppm)のシグナル面積/{第一領域(21.0〜21.9ppm)のシグナル面積+第二領域(20.3〜21.0ppm)のシグナル面積+第三領域(19.5〜20.3ppm)のシグナル面積} …(1)
第1領域はPPP(mm)、第二領域はPPP(mr)、第三領域はPPP(rr)で示され、これらはそれぞれ下記構造の頭−尾結合したプロピレン3単位連鎖を示す。
【0027】
【化4】
【0028】
なおメチル炭素領域内(19〜23ppm)では、上記のような頭−尾結合プロピレン3連鎖中のプロピレン単位の側鎖メチル基以外にも、下記のような他の連鎖中のプロピレン単位の側鎖メチル基ピークが観測される。SP値を求める際には、このようなプロピレン単位3連鎖に基づかないメチル基のピーク面積を下記のように補正する。なお、Pはプロピレンから導かれる繰返し単位を示し、Eはエチレンから導かれる繰返し単位を示す。
【0029】
▲1▼第2領域内では、プロピレン同士が頭−尾結合したPPE3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目の側鎖メチル基に由来するピークが観測される。
このメチル基ピークの面積は、PPE連鎖中の第2単位(プロピレン単位)のメチン基(30.6ppm付近で共鳴)のピーク面積から求めることができる。
▲2▼第3領域内では、EPE3連鎖中の第2単位(プロピレン単位)目の側鎖メチル基に由来するピークが観測される。
【0030】
このメチル基ピーク面積は、EPE連鎖中の第2単位(プロピレン単位)のメチン基(32.9ppm付近で共鳴)のピーク面積から求めることができる。
▲3▼第2領域および第3領域内では、エチレン・エチレンランダム共重合体中に少量含まれる、下記部分構造(i)、(ii)および(iii)で示されるような位置不規則単位中のメチル基C〜E’に由来するピークが観察される。
【0031】
第2領域では、メチル基Cピーク、メチル基Dピークおよびメチル基D’ピークが観測され、
第3領域では、メチル基Eピークおよびメチル基E’ピークが観測される。
なお位置不規則単位(i)〜(iii)中のメチル基中、メチル基Aピークおよびメチル基Bピークは、それぞれ17.3ppm、17.0ppmで観測され、第1〜3領域内では観測されない。
【0032】
【化5】
【0033】
メチル基Cのピーク面積は、隣接するメチン基(31.3ppm付近で共鳴)のピーク面積より求めることができる。
メチル基Dのピーク面積は、構造(ii)のαβメチレン炭素に基づくピーク(34.3ppm付近および34.5ppm付近)のピーク面積の和の1/2より求めることができる。
【0034】
メチル基D’のピーク面積は、構造(iii)のメチル基E’に隣接するメチン基に基づくピーク(33.3ppm付近)の面積より求めることができる。
メチル基Eのピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.7ppm付近)のピーク面積より求めることができる。
メチル基E’のピーク面積は、隣接するメチン炭素(33.3ppm付近)のピーク面積より求めることができる。
【0035】
したがってこれらのピーク面積を第2領域および第3領域の全ピーク面積より差し引くことにより、頭−尾結合したプロピレン単位3連鎖中の第2プロピレン単位の側鎖メチル基のピーク面積を求めることができる。
なおスペクトル中の各炭素ピークは、文献(Polymer,30,1350(1989))を参考にして帰属することができる。
【0036】
なお、このシンジオタクティック構造は、具体的には以下のようにして測定される。
すなわち、試料0.35gをヘキサクロロブタジエン2.0mlに加熱溶解させる。この溶液をグラスフィルター(G2)で濾過した後、重水素化ベンゼン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに装入する。そして日本電子製GX−500型NMR測定装置を用い、120℃で13C-NMR測定を行う。積算回数は、10,000回以上とする。
【0037】
本発明の好ましい態様においては、(b)単位がエチレン単位であり、かつエチレン単位の含有量が(a)単位と(b)単位との合計量を100モル%としたときに1〜40モル%の範囲にあり、SP値が0.6以上、好ましくは0.7以上である。
このようなシンジオタクティックプロピレン共重合体は、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/gの範囲にあることが望ましい。シンジオタクティックプロピレン共重合体の極限粘度[η]が前記範囲内にあると、該シンジオタクティックプロピレン共重合体の架橋物は、耐候性、耐オゾン性、耐熱老化性、低温特性、耐動的疲労性などの特性に優れる。
【0038】
またシンジオタクティックプロピレン共重合体は、ヨウ素価が通常1〜50、好ましくは4〜40、さらに好ましくは6〜30の範囲内にあることが望ましい。
さらにシンジオタクティックプロピレン共重合体は、単一のガラス転移温度を有し、かつ示差走査熱量計(DSC)によって測定したガラス転移温度(Tg)が、通常30℃以下、好ましくは20℃以下の範囲にあることが望ましい。シンジオタクティックプロピレン共重合体のガラス転移温度(Tg)が前記範囲内にあるシンジオタクティックプロピレン共重合体の架橋物は、制振性、耐寒性、低温特性に優れる。
【0039】
またシンジオタクティックプロピレン共重合体は、DSCの吸熱曲線における最大ピーク位置の温度(Tm)が、110℃未満、好ましくはTmが存在しないことが好ましい。
Tmの測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持したのち、10℃/分で−150℃まで降温し、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求める。
【0040】
シンジオタクティックプロピレン共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は4.0以下であることが好ましい。
シンジオタクティックプロピレン共重合体の製法
このようなシンジオタクティックプロピレン共重合体を製造するに際し、触媒として後述するようなメタロセン系触媒が好ましく用いられる。
【0041】
また、シンジオタクティックプロピレン共重合体の製造の際には、上記触媒系に代えて特開平2-41303号公報、特開平41305号公報、特開平2-274703号公報、特開平2-274704号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平4-69394号公報、特開平5-17589号公報または特開平8−120127号公報に記載の触媒系を用いることもできる。
【0042】
具体的には、上記「発明の技術的背景」の項で述べたJ.A.Ewenらの文献「J.Am.Chem.Soc.,1988,110,6255-6256」に記載の触媒系を用いることもでき、また該文献に記載された化合物と異なる構造のものであっても、プロピレンの単独重合体を製造したときに、得られる重合体のシンジオタックティックtriad分率(A.ZambelliらMacromolecules vol 6 687(1973).同vol 8 925(1975))が例えば、0.5以上程度の比較的タクティシティーが高い重合体を与える触媒系であれば利用でき、このような触媒系としては例えば、互いに非対称な配位子を有する架橋型遷移金属化合物と有機アルミニウムなどの助触媒とからなる触媒系が挙げられる。
【0043】
このような触媒系を構成する互いに非対称な配位子を有する架橋型遷移金属化合物としては、例えば上記文献に記載されたジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル-1-フルオレニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル-1-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル(フルオレニル)シランチタンジメチル、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0044】
本発明で用いられるシンジオタクティックプロピレン共重合体は、例えば上記のような触媒の存在下に、プロピレンと、プロピレンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンと、共役ポリエンおよび非共役ポリエンから選ばれる少なくとも1種のポリエンとを、最終的に上記のような特性を有するように重合させることにより製造することができる。
【0045】
重合は懸濁重合、溶液重合などの液相重合法あるいは気相重合法いずれにおいても実施できる。
液相重合法では、重合媒体としてプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などの不活性炭化水素溶媒を用いることができ、またプロピレンを溶媒として用いることもできる。
【0046】
重合は、懸濁重合法を実施する際には、通常−50〜100℃、好ましくは0〜90℃の温度で行われることが望ましく、溶液重合法を実施する際には、通常0〜250℃、好ましくは20〜200℃の温度で行われることが望ましい。また、気相重合法を実施する際には、重合は通常0〜120℃、好ましくは20〜100℃の温度で行われることが望ましい。重合は、通常常圧〜10MPa 、好ましくは常圧〜5MPaの圧力下で行われる。
【0047】
重合は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
得られるシンジオタクティックプロピレン共重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、あるいは重合温度、重合圧力を変化させることによって調節することができる。
【0048】
本発明で用いられるシンジオタクティックプロピレン共重合体は、より具体的には、例えば
(A)下記一般式(I)または(II)で表される遷移金属錯体と、
(B)(B-1)前記(A)中の遷移金属Mと反応しイオン性の錯体を形成する化合物(以下「イオン化イオン性化合物」ということがある。)
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物と
からなる少なくとも1つの触媒系の存在下に、プロピレンと、プロピレンを除く炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンと、共役ポリエンおよび非共役ポリエンから選ばれる少なくとも1種のポリエンとを共重合させて得られる。
【0049】
(A)遷移金属錯体
メタロセン系触媒を形成する遷移金属錯体は、下記一般式(I)または(II)で表される。
【0050】
【化6】
【0051】
式(I)中、MはTi、Zr、Hf、Rn、Nd、SmまたはRuを示し、好ましくはTi、ZrまたはHfである。
Cp1およびCp2は、互いに同一でも異なっていてもよく、Mとπ結合しているシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはそれらの誘導体基である。さらに詳説すると、Cp1 およびCp2 は遷移金属Mに配位する配位子であり、シクロペンタジエニル基、インデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などのシクロペンタジエニル骨格を有する配位子であり、このシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は、アルキル基、シクロアルキル基、トリアルキルシリル基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。
【0052】
X1およびX2は、互いに同一でも異なっていてもよく、アニオン性配位子または中性ルイス塩基配位子である。具体的には、炭素原子数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホン酸含有基(−SO3Ra 、ただし、Ra はアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アリール基、ハロゲン原子で置換されたアリール基またはアルキル基で置換されたアリール基である。)、ハロゲン原子、水素原子などが挙げられる。
【0053】
Yは窒素原子、リン原子、酸素原子またはイオウ原子を含む配位子であり、ZとYとで縮合環を形成してもよい。
ZはC、O、B、S、Ge、SiもしくはSn原子、またはこれらの原子を含有する基を示す。これらの原子は、アルキル基、アルコキシ基などの置換基を有していてもよく、Zの置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。結合基Zとしては、例えば炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、−CO−、−SO−、−SO2 −、−BRb −(ただしRbは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基)などが挙げられ、好ましくは1個のO、SiまたはCを含有する基である。
【0054】
以下に、上記一般式(I)または(II)で表される遷移金属錯体の一例を示す。
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル-1-フルオレニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピル(シクロペンタジエニル-1-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、(t-ブチルアミド)ジメチル(フルオレニル)シランチタンジメチル、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリドなど。
【0055】
また、上記のような化合物においてジルコニウム金属を、チタニウム金属、ハフニウム金属に置き換えた遷移金属錯体を例示することもでき、ハフニウム金属を、ジルコニウム金属、チタニウム金属に置き換えた遷移金属錯体を例示することもできる。
上記のような遷移金属錯体は、単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0056】
粒子状担体
また上記のような遷移金属錯体(A)は、粒子状担体に担持させて用いることもできる。
このような粒子状担体としては、SiO2、Al2O3、B2O3、MgO、Zr O2、CaO、TiO2、ZnO、SnO2、BaO、ThOなどの無機担体;ポリα-オレフィン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体などの有機担体を用いることができる。これらの粒子状担体は、単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0057】
( B-1 )イオン化イオン性化合物
イオン化イオン性化合物は、遷移金属錯体(A)中の遷移金属Mと反応してイオン性の錯体を形成する化合物であり、このようなイオン化イオン性化合物としては、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物を例示することができる。
【0058】
ルイス酸としては、BR3 (式中、Rはフッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素原子である。)で示される化合物が挙げられ、例えばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0059】
イオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などが挙げられる。具体的に、トリアルキル置換アンモニウム塩としては、例えばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。ジアルキルアンモニウム塩としては、例えばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを挙げることもできる。
【0060】
ボラン化合物としては、デカボラン(14)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
カルボラン化合物としては、4-カルバノナボラン(14)、1,3-ジカルバノナボラン(13)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0061】
上記のようなイオン化イオン性化合物は、単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
( B-2 )有機アルミニウムオキシ化合物
有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0062】
従来公知のアルミノキサン(アルモキサン)は、具体的には、下記一般式で表される。
【0063】
【化7】
【0064】
式中、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基、特に好ましくはメチル基である。
mは2以上の整数であり、好ましくは5〜40の整数である。
ここで、アルミノキサンは式(OAl(R1))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位および式(OAl(R2))で表されるアルキルオキシアルミニウム単位(ここで、R1およびR2はRと同様の炭化水素基であり、R1およびR2は相異なる基を示す。)からなる混合アルキルオキシアルミニウム単位から形成されていてもよい。
【0065】
なお有機アルミニウムオキシ化合物は、少量のアルミニウム以外の金属の有機化合物成分を含有していてもよい。
上記のような有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
前記有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物は、上述した粒子状担体に担持させて用いることもできる。
【0066】
また触媒を形成するに際しては、イオン化イオン性化合物(B-1)または有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)とともに以下のような有機アルミニウム化合物(B-3)を用いてもよい。
( B-3 )有機アルミニウム化合物
有機アルミニウム化合物としては、分子内に少なくとも1個のAl−炭素結合を有する化合物が利用できる。このような化合物としては、例えば下記一般式で表される有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0067】
(R1 )m Al(O(R2 ))n Hp Xq
(式中、R1およびR2は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数通常1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3を満たす数であって、しかも、m+n+p+q=3である。)
本発明においては、上記シンジオタクティックプロピレン共重合体製造用の触媒としては、上記のようなメタロセン系触媒が好ましく用いられるが、場合によっては上記メタロセン系触媒以外の、従来より公知の▲1▼固体状チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなるチタン系触媒、▲2▼可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなるバナジウム系触媒を用いることもできる。
【0068】
本発明では、上記のようなメタロセン系触媒の存在下に、プロピレン、プロピレン以外のオレフィン、ポリエンを通常液相で共重合させる。この際、一般に上述したような不活性炭化水素溶媒が用いられるが、プロピレンを溶媒として用いてもよい。共重合はバッチ法または連続法のいずれの方法でも行うことができる。
【0069】
メタロセン系触媒を用い、共重合をバッチ法で実施する場合には、重合系内の遷移金属錯体(A)の濃度は、重合容積1リットル当たり、通常0.00005〜1ミリモル、好ましくは0.0001〜0.5ミリモルの量で用いられる。
イオン化イオン性化合物(B-1)は、遷移金属錯体(A)に対するイオン化イオン性化合物のモル比(B-1/A)で、0.5〜20、好ましくは1〜10となるような量で用いられる。
【0070】
有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)は、遷移金属錯体(A)中の遷移金属原子(M)に対するアルミニウム原子(Al)のモル比(Al/M)で、1〜10000、好ましくは10〜5000となるような量で用いられる。
また有機アルミニウム化合物が用いられる場合には、重合容積1リットル当たり、通常約0〜5ミリモル、好ましくは約0〜2ミリモルとなるような量で用いられる。
【0071】
共重合反応は、通常、温度が−20〜150℃、好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは0〜100℃の範囲で、圧力が0を超えて〜8MPa、好ましくは0を超えて〜5MPaの範囲の条件下に行われる。
また反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常5分間〜3時間、好ましくは10分間〜1.5時間である。
【0072】
上記のようにしてプロピレン、オレフィンおよびポリエンを共重合させると、シンジオタクティックプロピレン共重合体は通常これを含む重合液として得られる。この重合液は常法により処理され、シンジオタクティックプロピレン共重合体が得られる。
このようなシンジオタクティックプロピレン共重合体は、そのまま架橋して架橋物としてもよく、下記のような熱可塑性樹脂とブレンドしてポリプロピレン樹脂組成物としてから架橋して架橋物としてもよく、架橋物とした後下記のような熱可塑性樹脂とブレンドしてもよい。
【0073】
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン共重合体の架橋物は、上記シンジオタクティックプロピレン共重合体が架橋されてなる架橋物であり、その架橋法については後述する。
熱可塑性樹脂組成物
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)が架橋されてなる架橋物(i')を含む組成物であり、該組成物は架橋物(i')と、シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)以外の熱可塑性樹脂とを含んでいる。
【0074】
( ii )熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂(ii)としては、上記シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)以外の熱可塑性樹脂が用いられ、例えばポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルおよびポリアセタール、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、非晶性ゴムなどが挙げられる。
【0075】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、アイソタクティックホモポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテンなどのオレフィン単独重合体;アイソタクティックプロピレンランダム共重合体、エチレン共重合体などのオレフィン共重合体などが挙げられ、アイソタクティックホモポリプロピレン、アイソタクティックプロピレンランダム共重合体、エチレン(共)重合体、ポリ-1-ブテンが好ましい。
【0076】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル;ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートなどが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−10、ナイロン−12、ナイロン−46などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンより製造される芳香族ポリアミドなどが挙げられ、ナイロン−6が特に好ましい。
【0077】
ポリアセタールとしては、ポリホルムアルデヒド(ポリオキシメチレン)、ポリアセトアルデヒド、ポリプロピオンアルデヒド、ポリブチルアルデヒドなどを挙げることができ、ポリホルムアルデヒドが特に好ましい。
ポリスチレンは、スチレンの単独重合体であってもよく、スチレンとアクリロニトリル、メタクリル酸メチル、α-メチルスチレンとの二元共重合体であってもよい。
【0078】
ABSとしては、アクリロニトリルから誘導される繰り返し単位を20〜35モル%の量で含有し、ブタジエンから誘導される繰り返し単位を20〜30モル%の量で含有し、スチレンから誘導される繰り返し単位を40〜60モル%の量で含有するものが好ましく用いられる。
ポリカーボネートとしては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタンなどから得られるものを挙げることができ、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから得られるポリカーボネートが特に好ましい。
【0079】
ポリフェニレンオキシドとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)を用いることが好ましい。
非晶性ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化NBRが好ましい。
【0080】
これらの熱可塑性樹脂のなかでは、ポリオレフィン(上記シンジオタクティックプロピレン共重合体を除く。)または非晶性ゴムが好ましく、ポリオレフィンの場合は、シンジオタクティックホモポリプロピレンまたはアイソタクティックプロピレン共重合体、エチレン(共)重合体がより好ましく、特に230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが、0.001〜1000g/10分であることがさらに好ましい。
【0081】
天然ゴムとしては、グリーンブック(天然ゴム各種等級品の国際品質包装標準)により規格化された天然ゴムが一般に用いられる。
また、イソプレンゴムとしては、比重が0.91〜0.94であり、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]が30〜120であるイソプレンゴムが一般に用いられる。
【0082】
SBRとしては、比重が0.91〜0.98であり、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]が20〜120であるSBRが一般に用いられる。
BRとしては、比重が0.90〜0.95であり、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]が20〜120であるBRが一般に用いられる。
この他、クロロプレンゴム(CR)なども用いることができる。
【0083】
熱可塑性樹脂として用いられるニトリルゴム(NBR)は、ブタジエンとアクリロニトリルを主成分とする共重合体であり、具体的には、アクリロニトリル含量が10〜40重量%の範囲内で、かつムーニー粘度[ML1+4(100℃)]が20〜100の範囲内にあるニトリルゴムが用いられる。
また、水素化ニトリルゴムとしては、上記のようなニトリルゴムを水添して得られるゴムであり、具体的には、ヨウ素価が2〜40の範囲内にあるゴムが用いられる。
【0084】
上記のような熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。さらに上記の熱可塑性樹脂とともに、上記以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
このような熱可塑性樹脂組成物としては、
(i)シンジオタクティックプロピレン共重合体と、
(ii)熱可塑性樹脂とからなり、
前記シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)を1〜99重量部、好ましくは10〜90重量部、さらに好ましくは20〜80重量部、前記熱可塑性樹脂(ii)を99〜1重量部、好ましくは10〜90重量部、さらに好ましくは20〜80重量部(但し、(i)+(ii)=100重量部)の量で含有するプロピレン系樹脂組成物が架橋されてなるものがある。
【0085】
このような熱可塑性樹脂組成物は、例えばシンジオタクティックプロピレン共重合体(i)と、熱可塑性樹脂(ii)とを所定の割合で混合してプロピレン系樹脂組成物を調製し、次いで後述するような方法で該プロピレン系樹脂組成物を架橋することにより製造することができる。
シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)と熱可塑性樹脂(ii)との混合は、公知の任意の方法を採用して製造することができ、例えばシンジオタクティックプロピレン共重合体(i)と、熱可塑性樹脂(ii)および所望により添加される他成分を、種々公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダーなどで混合する方法、または混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練し、さらに造粒もしくは粉砕する方法を採用して製造することができる。
【0086】
また本発明に係る熱可塑性樹脂組成物には、
(i)シンジオタクティックプロピレン共重合体と、
(ii)熱可塑性樹脂と
からなるプロピレン系樹脂組成物が架橋されてなる架橋物と、
(ii)熱可塑性樹脂とからなり、
架橋前のシンジオタクティックプロピレン共重合体(i)および熱可塑性樹脂(ii)に換算して、前記シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)を1〜99重量部、好ましくは10〜90重量部、さらに好ましくは20〜80重量部、前記熱可塑性樹脂(ii)を99〜1重量部、好ましくは10〜90重量部、さらに好ましくは20〜80重量部(但し、(i)+(ii)=100重量部)の量で含有するものがある。上記シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)および熱可塑性樹脂(ii)の含有割合は、例えば熱可塑性樹脂組成物を調製する際の各原料樹脂の仕込量から求めることができる。
【0087】
このような熱可塑性樹脂組成物は、例えばシンジオタクティックプロピレン共重合体(i)と、熱可塑性樹脂(ii)とを所定の割合で混合してプロピレン系樹脂組成物を調製し、次いで後述するような方法で該プロピレン系樹脂組成物を架橋して架橋物とし、さらに該架橋物と熱可塑性樹脂(ii)とを所定の割合で混合することにより製造することができる。
【0088】
シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)と熱可塑性樹脂(ii)との混合および架橋物と熱可塑性樹脂(ii)との混合は、上述した方法と同様の方法で行うことができる。
さらに本発明に係る熱可塑性樹脂組成物には、
(i')シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)の架橋物と、
(ii)熱可塑性樹脂とからなり、
前記架橋物(i')を1〜99重量部、好ましくは10〜90重量部、さらに好ましくは20〜80重量部、前記熱可塑性樹脂(ii)を99〜1重量部、好ましくは10〜90重量部、さらに好ましくは20〜80重量部(但し、(i')+(ii)=100重量部)
の量で含有するものがある。
【0089】
このような熱可塑性樹脂組成物は、例えばシンジオタクティックプロピレン共重合体(i)を後述するような方法で架橋して架橋物(i')とし、さらに該架橋物(i')と熱可塑性樹脂(ii)とを所定の割合で混合することにより製造することができる。
架橋物(i')と熱可塑性樹脂(ii)との混合は、上述した方法と同様の方法で行うことができる。
【0090】
変性
本発明では熱可塑性樹脂組成物を製造するいずれかの段階において上記シンジオタクティックプロピレン共重合体またはプロピレン系樹脂組成物を変性してもよい。
本発明で用いられるシンジオタクティックプロピレン共重合体は主鎖と側鎖に2重結合を有しており、またポリプロピレン樹脂組成物はこのような共重合体を含有しているので各種変性が可能である。
【0091】
例えば過酸化物変性により、2重結合をエポキシ化し、共重合体中に反応性に富むエポキシ基を導入することができる。これにより熱硬化型樹脂としての利用、または反応性樹脂として利用も可能となる。さらには、ディールスアルダー反応、マイケル付加反応などにも2重結合は利用可能である。その他、主鎖の2重結合を選択的に水素添加し飽和にすることで、耐熱性、耐オゾン性もさらに向上する。
【0092】
本発明ではシンジオタクティックプロピレン共重合体またはポリプロピレン樹脂組成物の一部または全部を不飽和カルボン酸もしくはその誘導体、または芳香族ビニル化合物で変性してもよく、その変性量は0.01〜30重量%の範囲であることが好ましい。
上記シンジオタクティックプロピレン共重合体には2重結合が存在し、またポリプロピレン樹脂組成物にはこのような共重合体を含有しているため、変性に際して使用されるラジカル開始剤の低減が図れる。
【0093】
本発明で用いられるシンジオタクティックプロピレン共重合体、ポリプロピレン樹脂組成物中には、側鎖に末端2重結合が存在するためラジカル開始剤の使用量を低減することができると同時に、発生するラジカルは2重結合と反応するため、分解反応が抑制され、ひいては分子量の低下も抑えられる。これに対して側鎖2重結合の存在しない樹脂では、水素を引き抜き反応により生成するラジカルを開始点としている。開始剤すべてが水素引き抜き反応を誘起するわけではないため、多量の開始剤が必要となり、また分解反応も併発するため一般に分子量が低下する。
【0094】
変性に用いられるモノマー(以下、「グラフトモノマー」という。)としては、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体、または芳香族ビニル化合物が挙げられる。
不飽和カルボン酸として具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
【0095】
また不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩などが挙げられ、具体的には、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸-N- モノエチルアミド、マレイン酸-N,N-ジエチルアミド、マレイン酸-N-モノブチルアミド、マレイン酸-N,N-ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸-N-モノエチルアミド、フマル酸-N,N-ジエチルアミド、フマル酸-N- モノブチルアミド、フマル酸-N,N-ジブチルアミド、マレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウムなどが挙げられる。これらのグラフトモノマーの中では無水マレイン酸を使用することが好ましい。
【0096】
芳香族ビニル化合物としては、具体的には、スチレン;o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレンなどのモノもしくはポリアルキルスチレン;メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどの官能基含有スチレン誘導体;3-フェニルプロピレン、4-フェニルブテン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。これらのなかでは、スチレンまたは4-メトキシスチレンが好ましい。
【0097】
グラフトモノマーをシンジオタクティックプロピレン共重合体またはポリプロピレン樹脂組成物にグラフト共重合して変性共重合体を製造するには、公知の種々の方法を採用することができる。
例えばシンジオタクティックプロピレン共重合体またはポリプロピレン樹脂組成物およびグラフトモノマーを溶媒の存在下または不存在下で、ラジカル開始剤を添加してまたは添加せずに高温で加熱することによってグラフト共重合を行う方法がある。
【0098】
グラフト率が0.01〜30重量%の一部または全部が変性された変性シンジオタクティックプロピレン共重合体または変性ポリプロピレン樹脂組成物を製造するには、工業的製造上からは、グラフト率のより高い変性シンジオタクティックプロピレン共重合体または変性ポリプロピレン樹脂組成物を製造しておき、次にシンジオタクティックプロピレン共重合体またはポリプロピレン樹脂組成物にこの変性シンジオタクティックプロピレン共重合体または変性ポリプロピレン樹脂組成物を混合してグラフト率を調整する方法が、組成物中のグラフトモノマーの濃度を適当に調整できるため好ましい方法であるが、最初からシンジオタクティックプロピレン共重合体またはポリプロピレン樹脂組成物に所定量のグラフトモノマーを配合してグラフトしても差し支えない。
【0099】
シンジオタクティックプロピレン共重合体またはポリプロピレン樹脂組成物へのグラフトモノマーによる変性量は、上記のようなグラフト変性体、またはグラフト変性体および未変性体の混合物全体におけるグラフト率が0.01〜30重量%、特に0.05〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
架橋
本発明では、シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)およびポリプロピレン樹脂組成物の架橋は以下のようにして行われる。
【0100】
架橋する際には、必要に応じて加硫促進剤、加硫助剤などを添加してもよく、また必要に応じて充填剤、軟化剤などを添加することもできる。
架橋剤
架橋剤としては、イオウ系化合物、有機過酸化物、キノイドおよびフェノール樹脂などが挙げられる。
【0101】
イオウ系化合物としては、具体的には、イオウ、塩化イオウ、二塩化イオウ、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレンなどが挙げられる。なかでもイオウが好ましく用いられる。
イオウ系化合物は、シンジオタクティックプロピレン共重合体または熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の量で用いられる。
【0102】
有機過酸化物としては、従来ゴムの過酸化物加硫に使用されるものが広く用いられる。具体的には、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルヒドロパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、2,5-ジメチル-2,5-モノ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキサン、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンなどが挙げられる。なかでも、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンが好ましく用いられる。これらの有機過酸化物は、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0103】
有機過酸化物は、シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)またはプロピレン系樹脂組成物100gに対して、0.0003〜0.05モル、好ましくは0.001〜0.03モルの範囲で使用される。
加硫促進剤
架橋剤としてイオウ系化合物を使用するときは、加硫促進剤を併用することが好ましい。加硫促進剤として具体的には、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBZ)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドなどのチアゾール系化合物;ジフェニルグアニジン(DPG)、トリフェニルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン、オルソニトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレートなどのグアニジン化合物;アセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニアなどのアルデヒドアミンまたはアルデヒド−アンモニア系化合物;2-メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系化合物;チオカルバニリド、ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア、ジオルソトリルチオウレアなどのチオウレア系化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラム系化合物;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸テルルなどのジチオ酸塩系化合物;ジブトキシサントゲン酸亜鉛などのザンテート系化合物;亜鉛華などの化合物などが挙げられ。
【0104】
これらの加硫促進剤は、シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)またはプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部の量で用いられる。
加硫助剤
架橋剤として有機過酸化物を使用するときは、加硫助剤を併用することが好ましい。加硫助剤としては、具体的には、硫黄;p-キノンジオキシムなどのキノンジオキシム系化合物;ポリエチレングリコールジメタクリレートなどのメタクリレート系化合物;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、その他マレイミド系化合物;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0105】
このような加硫助剤は、使用する有機過酸化物1モルに対して、0.5〜2モル、好ましくは約等モルの量で用いられる。
軟化剤
軟化剤としては、従来ゴムに配合されている軟化剤が広く用いられる。
具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチなどのコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤;トール油;サブ;蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリンなどのロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛などの脂肪酸および脂肪酸塩;石油樹脂、アタクティックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂などの合成高分子物質が挙げられる。なかでも石油系軟化剤が好ましく用いられ、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。
【0106】
これらの軟化剤の配合量は、架橋物の用途により適宜選択できるが、通常、シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)またはプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、150重量部以下、好ましくは100重量部以下である。
本発明では、未加硫のシンジオタクティックプロピレン共重合体またはプロピレン系樹脂組成物に、さらにゴム補強剤、老化防止剤、加工助剤などを配合することができ、その種類および配合量は、架橋物の用途、意図する架橋物の性能などに応じて適宜選択できる。
【0107】
架橋物の製法
シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)またはプロピレン系樹脂組成物から架橋物を製造する方法としては、特に限定されないが、具体的には例えば以下のような方法が採用される。
架橋方法として、架橋剤を用いる方法を採用する場合は、バンバリーミキサーなどのミキサーを用いてシンジオタクティックプロピレン共重合体(i)またはプロピレン系樹脂組成物の他に、必要に応じて充填剤、軟化剤などを80〜170℃の温度で3〜10分間混練した後、オープンロールなどのロールを用い、加硫剤、必要に応じて加硫促進剤または加硫助剤を追加混合し、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出し、リボン状またはシート状の未加硫のシンジオタクティックプロピレン共重合体(i)またはプロピレン系樹脂組成物を調製する。
【0108】
このようにして調製された未加硫のシンジオタクティックプロピレン共重合体(i)またはプロピレン系樹脂組成物を、押出成形機、カレンダーロール、またはプレスにより意図する形状に成形し、成形と同時に150〜270℃の温度で1〜30分間加熱するか、または成形物を加硫槽内に導入し、150〜270℃の温度で1〜30分間加熱することにより架橋物を得る。加硫は金型内で行ってもよく、また金型を用いないで行ってもよい。金型を用いない場合は成形、加硫の工程は通常連続的に実施される。加硫槽における加熱方法としては熱空気、ガラスビーズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチームなどの加熱槽を用いることができる。
【0109】
架橋方法として、電子線を照射する方法を採用する場合は、バンバリーミキサーなどのミキサーを用い、シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)またはプロピレン系樹脂組成物の他に、必要に応じて充填剤、軟化剤などを80〜170℃の温度で3〜10分間混練した後、オープンロールなどのロール類を用い、ロール温度40〜80℃で5〜30分間混練した後、分出し、リボン状またはシート状の未加硫の配合ゴムを調製する。
【0110】
このようにして調製されたシンジオタクティックプロピレン共重合体(i)またはプロピレン系樹脂組成物は、押出成形機、カレンダーロールまたはプレスにより意図する形状に成形し、電子線を照射することにより加硫物が得られる。電子線の照射は、0.1〜10MeV(メガエレクトロンボルト)、好ましくは0.3〜2MeVのエネルギーを有する電子線を、吸収線量が0.5〜35Mrad(メガラッド)、好ましくは0.5〜10Mradになるように行うことが望ましい。
【0111】
本発明に係るシンジオタクティックプロピレン共重合体の架橋物および熱可塑性樹脂組成物は、耐熱性、耐摩耗性、柔軟性バランスに優れている。
配合剤
上記シンジオタクティックプロピレン共重合体の架橋物および熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、結晶核剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤などの添加剤が必要に応じて配合されていてもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない限り他の合成樹脂を少量ブレンドすることができる。
【0112】
結晶核剤
結晶核剤としては、従来知られている種々の核剤が特に制限されることなく用いられる。結晶核剤として下記に挙げる芳香族リン酸エステル塩、ベンジリデンソルビトール、芳香族カルボン酸、ロジン系核剤などが例示される。
芳香族リン酸エステル塩としては、下記式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0113】
【化8】
【0114】
(式中、R1 は酸素原子、硫黄原子または炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示し、R2 およびR3 は水素原子または炭素原子数は1〜10の炭化水素基を示し、R2 およびR3 は同種であっても異種であってもよく、R2 同士、R3 同士またはR2 とR3 とが結合して環状となっていてもよく、Mは1〜3価の金属原子を示し、nは1〜3の整数である。)
前記式(1)で表される化合物として具体的には、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-メチレン-ビス-(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4-i-プロピル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス[2,2'-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム-ビス[2,2'-チオビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム-ビス[2,2'-チオビス-(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2'-チオビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2'-チオビス-(4-t-オクチルフェニル)フォスフェート]、ナトリウム-2,2'-ブチリデン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-ブチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス-(2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート)、マグネシウム-ビス[2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム-ビス[2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム(4,4'-ジメチル-5,6'-ジ-t-ブチル-2,2'-ビフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス[(4,4'-ジメチル-6,6'-ジ-t-ブチル-2,2'-ビフェニル) フォスフェート]、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4-m-ブチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-エチルフェニル)フォスフェート、カリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フオスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム-ビス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウム-トリス[2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェル)フォスフェート]およびアルミニウム-トリス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]およびこれらの2個以上の混合物を例示することができる。特にナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートが好ましい。
【0115】
芳香族リン酸エステル塩としては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0116】
【化9】
【0117】
(式中、R4 は水素原子または炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示し、Mは1〜3価の金属原子を示し、nは1〜3の整数である。)
前記式(2)で表される化合物として具体的には、ナトリウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-エチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-i-プロピルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-t-オクチルフェニル)フォスフェート、カリウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、マグネシウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェートおよびこれらの2種以上の混合物を例示することができる。特にナトリウム-ビス(4-t-ブチルフェニル) フォスフェートが好ましい。
【0118】
ベンジリデンソルビトールとしては、下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0119】
【化10】
【0120】
(式中、R5 は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示し、mおよびnはそれぞれ0〜5の整数である。)
前記式(3)で表される化合物として具体的には、1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-n-プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-i-プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-n-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-s-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-t-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(2',4'-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-エトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3-ベンジリデン-2-4-p-クロルベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデンソルビトールおよび1,3,2,4-ジ(p-クロルベンジリデン)ソルビトールおよびこれらの2個以上の混合物を例示でき、特に1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-クロルベンジリデン)ソルビトールおよびそれらの2種以上の混合物が好ましい。
【0121】
上記のようなベンジリデンソルビトールの中では、下記式(4)で表される化合物を好ましい例として挙げられる。
【0122】
【化11】
【0123】
(式中、R5 は互いに同一でも異なっていてもよく、メチル基またはエチル基を示す。)
芳香族カルボン酸としては、下記式(5)で表されるアルミニウムヒドロキシジパラt-ブチルベンゾエートなどが挙げられる。
【0124】
【化12】
【0125】
ロジン系の結晶核剤としては、例えばロジン酸の金属塩があり、ロジン酸の金属塩とは、ロジン酸と金属化合物との反応生成物をいう。ロジン酸としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン;不均化ロジン、水素化ロジン、脱水素化ロジン、重合ロジン、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンなどの各種変性ロジン;前記天然ロジンの精製物、変性ロジンの精製物などを例示できる。なお、前記α,β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンの調製に用いられる不飽和カルボン酸としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などを挙げることができる。これらの中では、天然ロジン、変性ロジン、天然ロジンの精製物および変性ロジンの精製物からなる群より選ばれる少なくとも一種のロジン酸であることが好ましい。ここで、ロジン酸は、ピマル酸、サンダラコピマル酸、パラストリン酸、イソピマル酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ジヒドロピマル酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸などから選ばれる樹脂酸を複数含んでいる。
【0126】
前記ロジン酸と反応して金属塩を形成する金属化合物としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの金属元素を有し、かつ前記ロジン酸と造塩する化合物が挙げられる。具体的には、前記金属の塩化物、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
その他の結晶核剤としては、ポリマー核剤、芳香族カルボン酸や脂肪族カルボン酸や脂肪族アミドおよびこれらの金属塩、無機化合物などを例示できる。
【0127】
ポリマー核剤としては、含フッ素ポリマー、高密度ポリエチレン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリビニルシクロペンタンなどのポリビニルシクロアルカン、ポリ3-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、ポリアルケニルシランなどが挙げられる。
芳香族カルボン酸や脂肪族カルボン酸の金属塩としては、安息香酸アルミニウム塩、p-t-ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム、チオフェネカルボン酸ナトリウム、ピローレカルボン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0128】
無機化合物としては、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カルシウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデンなどが挙げられる。
【0129】
無機充填剤
また無機化合物を充填剤として用いる場合は、以下のようなものを用いることができる。
無機充填剤として、具体的には
微粉末タルク、カオリナイト、焼成クレー、パイロフィライト、セリサイト、ウォラスナイトなどの天然ケイ酸またはケイ酸塩、沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、酸化亜鉛、亜鉛華、酸化マグネシウムなどの酸化物、含水ケイ酸カルシウム、含水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸などの合成ケイ酸またはケイ酸塩などの粉末状充填材;マイカなどのフレーク状充填材;塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、セピオライト、PMF(Processed Mineral Fiber)、ゾノトライト、チタン酸カリ、エレスタダイトなどの繊維状充填材;ガラスバルン、フライアッシュバルンなどのバルン状充填材などを用いることができる。
【0130】
本発明では、これらのうちでもタルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物が好ましく用いられ、特に平均粒径0.01〜50μmの水酸化物が好ましく用いられる。
なお平均粒径は、液相沈降方法によって測定することができる。
また本発明で用いられる無機充填材特にタルクは、無処理であっても予め表面処理されていてもよい。この表面処理に例としては、具体的には、シランカップリング剤、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、不飽和有機酸、有機チタネート、樹脂酸、ポリエチレングリコールなどの処理剤を用いる化学的または物理的処理が挙げられる。このような表面処理が施されたタルクを用いると、ウェルド強度、塗装性、成形加工性にも優れた自動車用内外装材およびガソリンタンクを得ることができる。また水酸化物を無機充填材として用いると、難燃性の付与、低表面光沢化が可能となり、壁紙や建材等に好適に用いられる。
【0131】
上記のような無機充填材は、2種以上併用してもよい。
本発明で用いられる無機充填材の配合量は特に限定されないが、無機充填材がタルクである場合は、シンジオタクティックプロピレン共重合体100重量部に対して5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部の割合で配合することが好ましい。また無機充填材が水酸化物である場合は、シンジオタクティックプロピレン共重合体100重量部に対して100〜800重量部、好ましくは200〜600重量部の割合で配合することが好ましい。
【0132】
さらに本発明では、このような無機充填剤とともに、ハイスチレン類、リグニン、再ゴムなどの有機充填材を用いることもできる。
成形体
上記のような本発明に係るシンジオタクティックプロピレン共重合体の架橋物および熱可塑性樹脂組成物(以下これらを「本発明の架橋物」ということがある。)は、従来公知のポリオレフィン用途に広く用いることができ、例えばシート、未延伸または延伸フィルム(蓄冷袋、化粧フィルム、テーブルクロス、ブックカバー)、フィラメント、チューブとして医療器具、食品容器、文具、日用品(掃除機バンパー、カッティングマット、風呂蓋、輸液セット)、自動車内装材などを含む種々の形状の成形体に成形して利用することができる。
【0133】
成形体として具体的には、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形などの公知の熱成形方法により得られる成形体が挙げられる。
以下に数例挙げて発明に係る成形体を説明する。
本発明に係る成形体が例えば押出成形体である場合、その形状および製品種類は特に限定されないが、例えばシート、フィルム(未延伸)、タイヤサイドウォール、タイヤトレッド、ベルト、ワイパーブレード、各種パッキン(o-リングなど)、ダイヤフラム、グラスチャンネル、ベルト、パイプ、ホース、電線被覆、フィラメントなどが挙げられる。
【0134】
本発明の架橋物を押出成形する際には、従来公知の押出装置および成形条件を採用することができ、例えば単軸スクリュー押出機、混練押出機、ラム押出機、ギヤ押出機などを用いて、溶融した本発明の架橋物をTダイなど所望の形状のダイスから押出すことによりシートまたはフィルム(未延伸)、パイプ、チューブなどに成形することができる。
【0135】
延伸フィルムは、上記のような押出シートまたは押出フィルム(未延伸)を、例えばテンター法(縦横延伸、横縦延伸)、同時二軸延伸法、一軸延伸法などの公知の延伸方法により延伸して得ることができる。
シートまたは未延伸フィルムを延伸する際の延伸倍率は、二軸延伸の場合には通常20〜70倍程度、また一軸延伸の場合には通常2〜10倍程度である。延伸によって、厚み5〜200μm程度の延伸フィルムを得ることが望ましい。
【0136】
また、フィルム状成形体として、インフレーションフィルムを製造することもできる。本発明の架橋物をインフレーション成形するとドローダウンが生じにくい。
フィラメントは、例えば溶融した本発明の架橋物を、紡糸口金を通して押出すことにより製造することができる。このようにして得られたフィラメントを、さらに延伸してもよい。この延伸は、フィラメントの少なくとも一軸方向が分子配向する程度に行えばよく、通常5〜10倍程度の倍率で行うことが望ましい。
【0137】
射出成形体は、従来公知の射出成形装置を用いて公知の条件を採用して、本発明の架橋物を種々の形状に射出成形して製造することができる。本発明の架橋物からなる射出成形体は、自動車内装用トリム材、自動車用外装材、家電製品のハウジング、容器など幅広く用いることができる。
ブロー成形体は、従来公知のブロー成形装置を用いて公知の条件を採用して、本発明の架橋物をブロー成形することにより製造することができる。
【0138】
例えば押出ブロー成形では、本発明の架橋物を樹脂温度100℃〜300℃の溶融状態でダイより押出してチューブ状パリソンを形成し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、樹脂温度130℃〜300℃で金型に着装することにより中空成形体を製造することができる。延伸(ブロー)倍率は、横方向に1.5〜5倍程度であることが望ましい。
【0139】
また、射出ブロー成形では、本発明の架橋物を樹脂温度100℃〜300℃でパリソン金型に射出してパリソンを成形し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、樹脂温度120℃〜300℃で金型に着装することにより中空成形体を製造することができる。
延伸(ブロー)倍率は、縦方向に1.1〜1.8倍、横方向に1.3〜2.5倍であるであることが望ましい。
【0140】
プレス成形体としてはモールドスタンピング成形体が挙げられ、例えば基材と表皮材とを同時にプレス成形して両者を複合一体化成形(モールドスタンピング成形)する際の基材を本発明の架橋物で形成することができる。
このようなモールドスタンピング成形体としては、具体的には、ドアートリム、リアーパッケージトリム、シートバックガーニッシュ、インストルメントパネルなどの自動車用内装材が挙げられる。
【0141】
本発明の架橋物から得られる成形体は、耐熱性、耐摩耗性、柔軟性バランスに優れている。
【0142】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に物性試験条件などを記す。
1.引っ張り弾性率(ヤングモジュラス(YM)、MPa);
JIS K6301に準拠して、JIS 3号ダンベルを用い、スパン間:30mm、引っ張り速度:30mm/minで23℃にて測定した。
2.JIS A硬度;
JIS K 6301に従って、JIS A硬度(HS)を測定した。
3.針侵入温度(TMA、℃);
JIS K7196に準拠し、厚さ2mmの試験片を用いて、昇温速度5℃/minで1.8mmφの平面圧子に2kg/cm2 の圧力をかけ、TMA曲線より、針進入温度を求めた。
4.ヘイズ(HAZE、%);
厚さ1mmの試験片を用いて、日本電色工業(株)製のデジタル濁度計「NDH−20D」にて測定した。
5.耐摩耗性試験(ΔGloss、%)
東洋精機製、学振摩耗試験機を用いて、厚さ2mmの試験片を用いて、45R、SUS製の摩耗圧子470gの先端を綿帆布#10に覆い、これを23℃、往復回数100回、往復速度33回/min、ストローク100mmで試料を摩耗させ、その前後のグロス変化率ΔGlossを以下のようにして求めた。
【0143】
ΔGloss=(摩耗前のGloss−摩耗後のGloss)/摩耗前のGloss×100
6.耐油性(ΔV、%)
JIS K6258に準拠して、70℃で72時間、JIS 3号油に浸積した後の体積変化率を測定した。
7.融点(Tm、℃)およびガラス転移温度(Tg、℃)]
DSCの吸熱曲線を求め、最大ピーク位置の温度をTmとする。
【0144】
測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持したのち、10℃/分で−150℃まで降温し、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求めた。
8.極限粘度[η]
135℃、デカリン中で測定した。
【0145】
9.Mw/Mn
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、オルトジクロロベンゼン溶媒で、140℃で測定した。
【0146】
【合成例1】
(シンジオタクティックプロピレン・エチレン・DMDT共重合体の合成)
減圧乾燥および窒素置換してある1.5リットルのオートクレーブに、常温でヘプタンを606.8ml加え、続いてトリイソブチルアルミニウムの1.0ミリモル/mlトルエン溶液をアルミニウム原子に換算してその量が1.0ミリモルとなるように1.0ml加え、撹拌下にプロピレンを50.7リットル(25℃、1気圧)、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)を10.9ml装入し、昇温を開始し50℃に到達させた。その後、系内をエチレンで7.5kg/cm2Gとなるように加圧し、公知の方法で合成したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのヘプタン溶液(0.001mM/ml)を3.00ml、トリフェニルカルベニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.004mM/ml)を15ml加え、プロピレンとエチレンとDMDTの共重合を開始させた。この時の触媒濃度は、全系に対してジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドが0.004ミリモル/リットル、トリフェニルカルベニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートが0.08ミリモル/リットルであった。
【0147】
重合中、エチレンを連続的に供給することにより、内圧を7.2kg/cm2Gに保持した。重合を開始して10分後、重合反応をメチルアルコールを添加することにより停止した。脱圧後、ポリマー溶液を取り出し、このポリマー溶液に対して、「水1リットルに対して濃塩酸5mlを添加した水溶液」を1:1の割合で用いてこのポリマー溶液を洗浄し、触媒残渣を水相に移行させた。この触媒混合溶液を静置したのち、水相を分離除去しさらに蒸留水で2回洗浄し、重合液相を油水分離した。次いで、油水分離された重合液相を3倍量のアセトンと強撹拌下に接触させ、重合体を析出させたのち、アセトンで十分に洗浄し固体部(共重合体)を濾過により採取した。窒素流通下、130℃、350mmHgで12時間乾燥した。
【0148】
以上のようにして得られたプロピレン・エチレン・DMDT共重合体の収量は70gであり、極限粘度[η]は1.7dl/gであり、ガラス転移温度は−27℃であり、エチレン含量はプロピレン含量とエチレン含量との合計100モル%に対して20モル%であり、DMDT含量はプロピレン含量とエチレン含量との合計100モル%に対して0.98モル%であり、ヨウ素価は6.1g/100gであり、SP値は0.91であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、Tmは観測されなかった。
【0149】
【参考例1】
上記プロピレン・エチレン・DMDT共重合体100重量部に架橋剤(PH25B:日本油脂製)を0.2重量部加え、ロール混練機にて、均一に架橋剤を分散させた。このようにして作成した試料を熱板温度190℃、余熱6分、加圧(100kg/cm2 )2分で成形、架橋させたのち、熱板温度20℃のプレス成形機に移して加圧(100kg/cm2 )冷却することによりプレスのシートを作製した。シート物性を表1に示す。
【0150】
【合成例2】
(シンジオタクティックプロピレン・エチレン・DCPD共重合体の合成)
減圧乾燥および窒素置換してある1.5リットルのオートクレーブに、常温でヘプタンを610.5ml加え、続いてトリイソブチルアルミニウムの1.0ミリモル/mlトルエン溶液をアルミニウム原子に換算してその量が1.0ミリモルとなるように1.0ml加え、撹拌下にプロピレンを50.7リットル(25℃、1気圧)、ジシクロペンタジエン(DCPD)を6.5ml装入し、昇温を開始し50℃に到達させた。その後、系内をエチレンで7.5kg/cm2Gとなるように加圧し、合成例1と同様な操作を行った。
【0151】
得られたプロピレン・エチレン・DCPD共重合体の収量は93gであり、極限粘度[η]は1.3dl/gであり、ガラス転移温度Tgは−36℃であり、エチレン含量はプロピレン含量とエチレン含量との合計100モル%に対して34モル%であり、DCPD含量はプロピレン含量とエチレン含量との合計100モル%に対して1.6モル%であり、ヨウ素価は10.3g/100gであり、SP値は0.92であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であり、Tmは観測されなかった。
【0152】
【参考例2】
上記プロピレン・エチレン・DCPD共重合体を用い、参考例1と同様にしてプレスのシートを作製した。シート物性を表1に示す。
【0153】
【合成例3】
(シンジオタクティックプロピレン・エチレン・ブタジエン共重合体の合成)
減圧乾燥および窒素置換してある1.5リットルのオートクレーブに、常温でヘプタンを612.6ml加え、続いてトリイソブチルアルミニウムの1.0ミリモル/mlトルエン溶液をアルミニウム原子に換算してその量が1.0ミリモルとなるように1.0ml加え、撹拌下にプロピレンを50.7リットル(25℃、1気圧)、ブタジエン(BD)を4.4ml装入し、昇温を開始し50℃に到達させた。その後、系内をエチレンで7.5kg/cm2Gとなるように加圧し、合成例1と同様な操作を行った。
【0154】
得られたプロピレン・エチレン・BD共重合体の収量は75gであり、極限粘度[η]は1.6dl/gであり、ガラス転移温度は−34℃であり、エチレン含量はプロピレン含量とエチレン含量との合計100モル%に対して28モル%であり、BD含量はプロピレン含量とエチレン含量との合計100モル%に対して0.2モル%であり、ヨウ素価は1.3g/100gであり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、Tmは観測されなかった。
【0155】
【参考例3】
上記プロピレン・エチレン・BD共重合体を用い、参考例1と同様にしてプレスのシートを作製した。シート物性を表1に示す。
【0156】
【比較例1】
エチレン・プロピレン・ENB共重合体(グレード:13092P、三井化学(株)製)を用い、参考例1と同様にして、プレスシートを作製した。シート物性を表1に示す。
【0157】
【実施例1】
合成例1で得られたシンジオタクティックプロピレン・エチレン・DMDT共重合体60重量部と、アイソタクティックポリプロピレン(F327D、グランドポリマー(株)製)40重量部とを混合し、これに架橋剤(PH25B、日本油脂製)を0.2重量部添加し、溶融混練により熱可塑性樹脂組成物の架橋物であるペレットを得た。
【0158】
上記ペレットを用い、熱板温度190℃、余熱6分、加圧(100kg/cm2 )2分で成形したのち、熱板温度20℃のプレス成形機に移して加圧(100kg/cm2 )冷却することにより1mm厚のシートを作製した。シート物性を表1に示す。
【0159】
【比較例2】
実施例1において合成例1で得られたシンジオタクティックプロピレン・エチレン・DMDT共重合体に代えてエチレン・プロピレン・ENB共重合体(グレード:13092P、三井化学(株)製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして組成物の架橋物のペレットを得た。またこのペレットを用い、実施例1と同様にしてプレスシートを作製した。シート物性を表1に示す。
【0160】
【合成例4】
(シンジオタクティックプロピレン・エチレン共重合体の合成)
減圧乾燥および窒素置換してある1.5リットルのオートクレーブに、常温でヘプタンを750ml加え、続いてトリイソブチルアルミニウムの1.0ミリモル/mlトルエン溶液をアルミニウム原子に換算してその量が0.3ミリモルとなるように0.3ml加え、撹拌下にプロピレンを50.7リットル(25℃、1気圧)装入し、昇温を開始し30℃に到達させた。その後、系内をエチレンで5.5kg/cm2Gとなるように加圧し、公知の方法で合成したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのヘプタン溶液(0.0002mM/ml)を3.75ml、トリフェニルカルベニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.002mM/ml)を2.0ml加え、プロピレンとエチレンの共重合を開始させた。この時の触媒濃度は、全系に対してジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリドが0.001ミリモル/リットル、トリフェニルカルベニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートが0.004ミリモル/リットルであった。
【0161】
重合中、エチレンを連続的に供給することにより、内圧を5.5kg/cm2Gに保持した。重合を開始して30分後、重合反応をメチルアルコールを添加することにより停止した。脱圧後、ポリマー溶液を取り出し、このポリマー溶液に対して、「水1リットルに対して濃塩酸5mlを添加した水溶液」を1:1の割合で用いてこのポリマー溶液を洗浄し、触媒残渣を水相に移行させた。この触媒混合溶液を静置したのち、水相を分離除去しさらに蒸留水で2回洗浄し、重合液相を油水分離した。次いで、油水分離された重合液相を3倍量のアセトンと強撹拌下に接触させ、重合体を析出させたのち、アセトンで十分に洗浄し固体部(共重合体)を濾過により採取した。窒素流通下、130℃、350mmHgで12時間乾燥した。
【0162】
以上のようにして得られたプロピレン・エチレン共重合体の収量は50gであり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は2.4dl/gであり、ガラス転移温度は−28℃であり、エチレン含量は24モル%であり、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は2.9であった。
【0163】
【比較例3】
合成例4で得られたプロピレン・エチレン共重合体100重量部に架橋剤(PH25B:日本油脂製)を0.2重量部加え、ロール混練機にて、均一に架橋剤を分散させた。このようにして作成した試料を熱板温度190℃、余熱6分、加圧(100kg/cm2 )2分で成形、架橋させたのち、熱板温度20℃のプレス成形機に移して加圧(100kg/cm2 )冷却することによりプレスのシートを作製した。シート物性を表1に示す。
【0164】
【比較例4】
合成例4で得られたプロピレン・エチレン共重合体60重量部、アイソタクティックポリプロピレン(F327D、グランドポリマー(株)製)40重量部とを混合し、これに架橋剤(PH25B:日本油脂製)を0.2重量部加え、溶融混練により熱可塑性重合体組成物の架橋物であるペレットを得た。
【0165】
上記ペレットを用い、熱板温度190℃、余熱6分、加圧(100kg/cm2 )2分で成形したのち、熱板温度20℃のプレス成形機に移して加圧(100kg/cm2 )冷却することにより1mm厚のシートを作製した。シート物性を表1に示す。
【0166】
【表1】
Claims (4)
- (i)(a)プロピレンから導かれる繰り返し単位と、(b)プロピレン以外の炭素原子数2〜20のオレフィンから選ばれる少なくとも1種のオレフィンから導かれる繰り返し単位と、(c)共役ポリエンおよび非共役ポリエンから選ばれる少なくとも1種のポリエンから導かれる繰り返し単位とからなり、前記(a)単位と(b)単位との合計量を100モル%としたとき前記(a)単位を99〜50モル%の量で含み、前記(b)単位を1〜50モル%の量で含み、前記(a)単位と(b)単位との合計量100モル%に対して前記(c)単位を0.01〜30モル%の量で含み、かつ実質的にシンジオタクティック構造であるシンジオタクティックプロピレン共重合体と、
(ii)アイソタクティックプロピレン共重合体とからなり、
前記シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)を60〜80重量部、前記アイソタクティックプロピレン共重合体(ii)を40〜20重量部(但し、(i)+(ii)=100重量部)の量で含有するプロピレン系樹脂組成物が架橋されてなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - 上記架橋が架橋剤の存在下、または電子線架橋により行われた請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記シンジオタクティックプロピレン共重合体(i)が、135℃のデカリン中で測定した極限粘度が0.01〜10dl/gの範囲にあり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めた分子量分布が4以下であり、ガラス転移温度が30℃以下である請請求項1ないし2のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。
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