JP2951689B2 - 結晶性プロピレン系共重合体およびその製造方法 - Google Patents

結晶性プロピレン系共重合体およびその製造方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、長鎖分岐構造を有する新規な結晶性シンジ
オタクチックプロピレン系共重合体およびその製造方法
に関する。
〔従来の技術〕
ユーエンらは高度にシンジオタクチックなポリプロピ
レンを発明し、その製造法を明らかにした。(特開平2
−41303および特開平2−41305)このものは結晶性で高
い融点と高い分子量をもち、透明で軟らかく強靱で延伸
性もよいなど成型物として使用する上で好ましい物性を
備えている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし欠点として、上記先行技術の方法で得られたシ
ンジオタクチックポリプロピレンは加工が難しいことが
認められた。
すなわち、溶融状態で樹脂を扱うとき、同一固有粘度
(135℃のテトラリン溶液で測定される)あるいは同一
重量平均分子量(高温ゲルパーミエーション・クロマト
グラフで測定される)比較したとき、従来の市販ポリプ
ロピレン(13C−NMRで測定したペンタッド分率でアイソ
タクチック分が0.96程度)に比べ、はるかに高粘度であ
り、ずり速度の変化に対して粘度の変化が小さい。
この溶融ポリマーをダイスから押出すときのダイスエ
ルが極めて小さく、溶融張力も小さく、通常ポリプロピ
レンで行われている加工法では加工しにくいという欠点
があった。
本発明は加工性が良好なシンジオタクチックプロピレ
ン共重合体、ならびにその製造方法を提供することにあ
る。
〔課題を解決するための手段〕
これらの欠点を直すため、プロピレンおよび少なくと
も一種の炭素数6〜20の両末端ビニル結合を有するアル
カジエンのランダム共重合体が有効であることを見出し
本発明に到達した。
本発明は、改良された溶融粘弾性特性をもつ新規な結
晶性プロピレン系共重合体を提供するとともに、上記熱
可塑性樹脂の製造方法を提供することを目的としてい
る。
本発明によれば、 1)プロピレンおよび少なくとも一種の炭素数6〜20の
両末端ビニル結合を有するアルカジエンからなり、13C
−NMRで測定したプロピレン連鎖のシンジオタクチック
・ペンタッド分率が0.6以上であり、該アルカジエンモ
ノマー単位の含有率が0.01〜5モル%の範囲にあり、13
5℃のテトラリン溶液で測定した固有粘度が0.4〜10dl/g
の範囲にある結晶性シンジオタクチックプロピレン系共
重合体、および 2)プロピレンおよび少なくとも一種の炭素数6〜20の
両末端ビニル結合を有するアルカジエンを下記式で表さ
れるメタロセン化合物 R″(CpRn)(CpR′m)MeQk (ただし、各Cpはシクロペンタジエニルまたは置換され
たシクロペンタジエニル環であり;各Rnは同一または異
なっていてもよく、1〜20炭素原子を有するヒドロカル
ビル残基であり;各R′mは同一または異なっていても
よく、1〜20炭素原子を有するヒドロカルビル残基であ
り、R″は触媒に立体剛性をもたらすCp環の間の構造的
架橋であり;MeはTi、ZrまたはHfであり;各Qは1〜20
炭素原子を有するヒドロカルビル残基またはハロゲンで
あり、0≦k≦3;0≦n≦4;1≦m≦4であり、;および
R′mは(CpR′m)が(CpRn)と立体的に相違している
ように選択される) および助触媒よりなる触媒を用いることによって共重合
させることを特徴とする結晶性シンジオタクチックプロ
ピレン系共重合体の製造方法が提供される。
以下、本発明に係わるプロピレンとアルカジエン、共
重合用触媒および共重合方法について、具体的に説明す
る。
本発明で用いられるアルカジエンは炭素数6〜20の両
末端ビニル結合を有するアルカジエンが用いられる。こ
のアルカジエンは両末端ビニル結合を有していれば直鎖
でも、分岐があっても特に制限はなく使用でき、好適な
例として、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,
9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデ
カジエンなどが挙げられる。
これらモノマーの共重合体中の上記アルカジエン含有
量は、0.01〜5モル%の範囲であることが好ましい。
その含有量が0.01モル%以下では、本発明の効果が達
せられない。また5モル%以上含有させると生成ポリマ
ー中に高度に分岐した構造をもつゲル分が含まれてくる
ため、ポリマーは溶媒に一部不溶となり、また加熱して
も不融部分が存在するようになり、工業的な利用価値が
なくなる。
プロピレンと上記アルカジエンの共重合のとき、さら
に少量のエチレンを存在させて多元共重合体とするとア
ルカジエンの共重合性が良好になり好ましく、これも本
願の共重合体の中に含まれる。
本発明で用いられる触媒はプロピレンを高度にシンジ
オタクチックに重合させる公知のものであれば特に限定
はない。
本願発明ではメタロセン化合物と助触媒としてアルモ
キサン化合物が使用できる。
使用できる上記メタロセン化合物は下記一般式 R″(CpRn)(CpR′m)MeQk で示される化合物が使用され、R″は好適には、エチレ
ン基、イソプロピリデン基、ジメチルシリル基あるいは
ジエチルシリル基であり;(CpRn)は好適にはシクロペ
ンタジエニル基であり、(CpR′m)は好適にはフルオレ
ニル基、あるいは4,5−メチレン−フェナントレニル基
であり;MeはTi,ZrまたはHfであり;Qは好適には塩素原
子、メチル基あるいはフェニル基であり;kは好適には1
または2である。
特に好適な化合物の場合の例は、イソプロピル(シク
ロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウム・ジ
クロリド,イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フ
ルオレニル)ハフニウム・ジクロリド,イソプロピル
(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウム
・ジクロリド,イソプロピル(シクロペンタジエニル)
(フルオレニル)ジルコニウム・ジメチル,イソプロピ
ル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウ
ム・ジメチルなどである。これらメタロセン化合物は特
に好適には助触媒としてアルモニサン化合物と組合せて
用いられる。
アルモキサン化合物としては 一般式、 あるいは (式中Rは炭素数1から3の炭化水素残基を示す)で表
される化合物が例示でき、特にRがメチル基であるメチ
ルアルモキサンでnが5以上、好ましくは10以上のもの
が使用される。
上記遷移金属化合物に対するアルモキサンの使用割合
としては10から1000000モル倍、通常は50から5000倍で
ある。
また、上記遷移金属化合物と組み合わせる助触媒とし
てテトラフェニルボレート(例えばトリ(s−ブチル)
アンモニウム・テトラ(p−トリル)ホウ素)を用いる
特開平1−502036に開示されている触媒系、特開平1−
501950に開示されているように助触媒として7,8−ジカ
ルバ・ウンデカホラン(13)を用いてもよい。
本発明で行われる重合法は、不活性炭化水素(例えば
ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエンなど)あるい
は液化プロピレンを溶媒として用いるスラリー重合法で
もよいし、いわゆる気相重合法でもよい。
アルカジエンの装入は通称、触媒溶液を重合機に仕込
んだ後、単独にあるいはプロピレンとともに行われるが
特に制限はない。
本発明で得られるポリマーは主としてシンジオタクチ
ック連鎖構造からなる結晶性プロピレン系共重合体であ
る。高度にシンジオタクチックな連鎖構造をもつポリプ
ロピレンはユーエンらにより始めて明らかにされたもの
である(特開平2−41305および特開平2−41303)。
これ以前に知られていたシンジオタクチックポリプロ
ピレンはシンジオタクチックペンタット分率が0.6以下
(土肥ほか:Macromolecules,12,248(1979);Makromol.
chem.,186,2529(1985);Zambelliほか;Macromolecule
s,7,750(1974))であり、ポリマーは36.5℃のn−ヘ
キサンに可溶で(Marchettiほか;J.Polymer sci.,Polym
er Physics ed,12,1949(1979))の場合はポリマーの
融点は65〜131℃(Boorほか;Polymer Letters,3,577(1
965))と比較的低く、分子量も数平均分子量で3.4×10
4(土肥ほか;Makromol,chem.,185,1827(1984))(こ
れは135℃テトラリン溶液で測定した固有粘度として約
0.34dl/gに相当する)と低いものであった。
固有粘度が0.4以下ではポリマーは軟いワックス状で
あり、単独で成形することには困難があり、また固有粘
度が10以上では溶融粘度が高すぎて通常の成形機で加工
することが困難になる。
本発明のシンジオタクティシティがペンタッド分率で
0.6以上で固有粘度0.4〜10のポリマーは結晶性に優れ、
融点がポリエチレンよりも高く、通常の成形機で熱加工
でき、成形品は透明で強靱であるという特徴をもつ。
本発明によるとアルカジエンの少なくとも一方の末端
ビニル基がプロピレンと共重合して分岐構造をもった共
重合体が提供される。反応条件の調節により、残ったも
う一方のビニル基もプロピレンと共重合体して長鎖分岐
構造を形成することも可能である。従来知られていたチ
グラナ・ナッタ型の触媒(例えば三塩化チタンや塩化マ
グネシウムに担持された四塩化チタン)を用いるとき
は、プロピレンと長鎖アルカジエンの共重合性は極めて
低く、エチレン存在下で始めてある程度の三元共重合体
が生成するに過ぎなかった。
本発明のメタロセン触媒では、これらアルカジエンの
プロピレンとの共重合性が高く、また共重合体の組成分
布も均一で、ここに始めて工業的に有用な共重合体を製
造しうるようになった。
〔実施例〕
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
メルトインデックスはASTM D−1238(JIS K7210)に
準じて、230℃、荷重2.16kgの条件で径2.09mm、長さ8mm
のノズルを用いて測定した。
ダイスエルは上記メルトインデックス測定時の押出さ
れたレジン径とノズル口径との比として求めた。
メルト強さは上記メルトインデックス測定装置にレジ
ン巻取装置と張力測定用ロードセルを設置して測定し
た。
溶融体の粘弾性はボーリン粘度計(Bohlin VOR Rheom
eter,Bohlin Reologia AB製)を用いて測定した。
シンジオタクチック・ペンダッド分率測定はユーエン
らの方法(特開平2−41303)に従って行った。
1H−NMRの測定はC6D6を溶媒として270MHZの分光器を
用いて行った。
実施例1 イソプロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニ
ル)ジルコニウム・ジクロリド20mgを平均重合度17.7を
有するメチルアルミノキサンの20%トルエン溶液(東ソ
ー・アクソ社製)14.4mlとともに計35mlのトルエンに溶
解して触媒溶液を調製した。
3lオートクレーブを窒素置換した後、ペンタン1と
1,7−オクタジエン0.60gを装入し系内をプロピレンで置
換した。
上記触媒溶液をZr原子換算9.2×10-3ミリモル加え、
さらにプロピレンを加え系内を9kg/cm2に保ちながら
(この条件でプロピレンは450g溶解する)40℃で1時間
共重合行った。イソプロパノール15mlを加えて反応を停
止し、冷却後スラリーを取出し、ペンタン1を加えて
濾過し、さらに1のペンタンでケーキを洗浄したあと
パウダーを乾燥して149gのポリマーを得た。別に洗浄溶
媒をまとめて真空で乾固して12.02gのヘプタン可溶分を
得た。パウダーの一部をとり、0.2重量%のテトラリン
溶液として135℃で固有粘度を測定した。
ポリマーは熱テトラリンに完全に溶解し、固有粘度は
1.48(dl/g)、シンジオタクチックペンダッド分率は0.
87、メルトインデックスは1.6(g/10分)、ダイスエル
は1.60(−)、220℃で測定したメルト強さは2.2(g)
(引取速度150(m/分))であった。
実施例2 1,7−オクタジエンの使用量を0.60gの変え0.40gを使
用した以外は実施例1と同様に操作して、パウダー152g
を得た。
得られたパウダーの固有粘度は1.40(dl/g)、シンジ
オタクチック・ペンタッド分率は0.28、メルトインデッ
クスは3.0(g/10分)、ダイスエルは1.43(−)、220℃
で測定したメルト強さは1.8(g)であった。
比較例 1,7−オクタジエンを使用しないこと以外は実施例1
と同様に操作してパウダー140g、溶媒可溶分0.1gを得
た。パウダーの固有粘度は1.40(dl/g)シンジオタクチ
ック・ペンタッド分率は0.86であった。
メルトインデックスは3.6(g/10分)ダイスエルは1.0
9(−)、220℃におけるメルト強さは0.78(g)であっ
た。
実施例3 1,7−オクタジエンを3.0g使用した以外は実施例1と
同様に操作して、パウダー127gと溶媒可溶分0.2gを得
た。
得られたパウダーは135℃のテトラリンには完全に溶
解し固有粘度2.68(dl/g)を示し、シンジオタクチック
ペンタッド分率は0.84、メルトインデックスは0.08(dl
/10分)であった。
得られた共重合体に安定剤を配合し230℃、120kg/cm2
で3分保ってプレス・シートを作成した。シートは透明
であったがやや透明度のむらが認められ、この重合条件
ではゲルが生成しかかっていると判定された。
第1図は0.70mm厚のプレスシートのIR吸収スペクトル
を示す。第2図は比較例のポリマーのIR吸収スペクトル
である。
本願発明の方法でえた共重合体は1640cm-1にビニル基
の吸収があり、1,7−オクタジエンが共重合しているこ
とが明確に認められた。
次にH−NMRを測定してビニル基の定量を行った。測
定は270MHZの分光器を用いて、C6D6を溶媒として140℃
で実施した。ポリマーに組込まれたジエンの定量法につ
いては特開平2−64111の方法を参考とした。第3図に
示すように6.0ppm付近にビニルプロトンに基づく吸収が
認められ、その量(ペンダントビニル基)は0.5モル%
と算出された。
高分子ゲル化の理論より、ペンダントビニル基の50%
以上が反応した点でゲル化が起ることから、この時点で
の架橋したビニル基の量も0.5モル%であり、結局プロ
ピレンコポリマーの1,7−オクタジエン含有量は1.0モル
%と見積られる。
装入した量が3.0gであり、ポリマー量が127gであった
から、1,7−オクタジエンの反応量はほぼ定量的であ
る。
参考例 第4図と第5図に実施例1のコポリマーと比較例のシ
ンジオタクチックポリプロピレン・ホモポリマーの溶融
粘度(η)の振動数依存性を示す。
ホモポリマーは振動数による粘度の変化が少なく、ニ
ュートン粘性に近い挙動を示すが、実施例1のコポリマ
ーは粘度の振動数依存性が大きく、非ニュートン挙動が
顕著である。
第6図と第7図には上記サンプルの貯蔵弾性率
(G′)の振動数に対してプロフトしたものである。長
鎖分岐構造をもつポリマーに対して予想されるように、
実施例のサンプルは大きな貯蔵弾性率の数値を示す。
〔発明の効果〕
長鎖分岐構造をもつポリマーの特徴は、溶融時の粘弾
性挙動に示される。すなわち同一の固有粘度をもつ直線
状のポリマー(シンジオタクチック・ポリプロピレン・
ホモポリマー)と比較したとき、(1)メロトインデッ
クスが小さい(溶融粘度が高い)、(2)ノズルから押
出されるときのダイスエルが大きい、(3)メルト強さ
が大きい、(4)溶融粘度のずり速度依存性が大きい、
(5)溶融体の弾性率が大きい、などの特性を示す。実
用的には溶融紡糸、中空成形、シートの熱成形などが容
易になる。
【図面の簡単な説明】 第1図、第2図は実施例3と比較例のポリマーに対して
測定したIR吸収スペクトルを示す。 第3図は実施例3のポリマーに対して測定したH−NMR
スペクトルを示す。 第4図〜第7図は溶融ポリマーの粘弾性を温度および振
動数を変えて測定した結果である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08F 210/06 C08F 4/642 C08F 17/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プロピレンおよび少なくとも一種の炭素数
    6〜20の両末端ビニル結合を有するアルカジエンからな
    り、1,2,4−トリクロロベンゼン溶液で測定した13C−NM
    Rにおいてテトラメトキシシランを基準として20.2ppmに
    観測されるシンジオタクチック構造に帰属されるピーク
    強度がプロピレンのメチル基に帰属される全ピーク強度
    の0.6以上であり、該アルカジエンモノマー単位の含有
    率が0.01〜5モル%の範囲にあり、135℃のテトラリン
    溶液で測定した固有粘度が0.4〜10dl/gの範囲にある結
    晶性シンジオタクチックプロピレン系共重合体。
  2. 【請求項2】プロピレンおよび少なくとも一種の炭素数
    6〜20の両末端ビニル結合を有するアルカジエンを下記
    式で表されるメタロセン化合物、 R″(CpRn)(CpR′m)MeQk (ただし、各Cpはシクロペンタジエンまたは置換された
    シクロペンタジエニル環であり;各Rnは同一または異な
    っていてもよく、1〜20炭素原子を有するヒドロカルビ
    ル残基であり;各R′mは同一または異なっていてもよ
    く、1〜20炭素原子を有するヒドロカルビル残基であ
    り、R″は触媒に立体剛性をもたらすCp環の間の構造的
    架橋であり;MeはTi、ZrまたはHfであり;各Qは1〜20
    炭素原子を有するヒドロカルビル残基またはハロゲンで
    あり、0≦k≦3;0≦n≦4;及び1≦m≦4であり、;
    およびR′mは(CpR′m)が(CpRn)と立体的に相違し
    ているように選択される) および助触媒よりなる触媒を用いることによって共重合
    させることを特徴とする結晶性シンジオタクチックプロ
    ピレン系共重合体の製造方法。
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