まず、本発明の第一は、前記のとおり、基材上にフォトレジスト層(L1)と保護層(L2)を有し、該保護層(L2)が積層体の最表面側に形成されており、かつ保護層(L2)が、
(1)波長193nm以上の紫外光での吸光係数が1.0μm-1以下、
(2)現像液溶解速度が50nm/sec以上、かつ
(3)純水に対する溶解速度が10nm/min以下
であることを特徴とする。
これら、レジスト積層体は波長193nm以上の紫外光で露光する、純水を液状媒体として用いる液浸リソグラフィーの露光工程で効果的に利用可能である。
つまり、本発明の第一のレジスト積層体は、ArFレジスト、KrFレジストなど、従来のレジスト材料を含むフォトレジスト層(L1)を有するレジスト被膜の最表面に、さらに、保護層(L2)を形成したものであり、保護層(L2)に特定の性質のものを使用することで、純水が接触することで生じる問題点を改善できるものである。
本発明の第一のレジスト積層体において、最外層を形成する保護層は、波長193nm以上の光線に対して透明であることが必要である。
それによって、例えば、193nm波長を用いるArFリソグラフィー、248nm波長を用いるKrFリソグラフィーにおいても純水を用いる液浸露光プロセスが有用に利用できる。
具体的には、193nm以上の波長において、吸光係数で1.0μm-1以下、好ましくは、0.8μm-1以下、より好ましくは、0.5μm-1以下、最も好ましくは0.3μm-1以下である。
保護層(L2)の吸光係数が大きすぎると、レジスト積層体全体の透明性を低下させるため微細パターン形成時の解像度を低下させたり、パターン形状を悪化させたりするため好ましくない。
また保護層(L2)は、現像液、例えば2.38%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38%TMAH水溶液)に対して良好な溶解性を有しながら、純水に対して溶解しにくい、または溶解速度が遅い性質のものが好ましい。
具体的には、現像液に対する溶解速度は、後述するQCM測定法で測定した2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度で50nm/sec以上の層であり、好ましくは100nm/sec以上、より好ましくは200nm/sec以上、特に好ましくは300nm/sec以上である。
現像液に対する溶解速度が低すぎると、微細パターン形成時の解像度を低下させたり、パターン形状がT−トップ状などになりやすく目的のものが得られにくく、好ましくない。
一方、保護層(L2)は純水に対して、逆に溶解しにくいことが好ましく、QCM測定法で測定した、純水に対する溶解速度で10nm/min以下の層であり、好ましくは8nm/min以下、より好ましくは5nm/min以下、特に好ましくは2nm/min以下である。
純水に対する溶解速度が、大きすぎると、保護層(L2)による保護効果が不十分となり、前述の問題点の改善効果が不十分となるため好ましくない。
本発明において、純水に対する溶解速度の測定には通常のイオン交換膜により得られるイオン交換水を純水として使用した。
また、保護層(L2)は、現像液溶解速度を著しく低下させない範囲で、撥水性が高い方が好ましい。
例えば、好ましくは対水接触角で70°以上、より好ましくは75°以上、特に好ましくは80°以上であり、上限の好ましくは100°以下、より好ましくは95°以下、特に好ましくは90°以下である。
保護層(L2)表面の対水接触角が低すぎると、純水との接触後、水の浸透速度が早くなり、フォトレジスト層(L1)へ水が達しやすく、保護層(L2)による保護効果が不十分となるため好ましくない。
また、保護層(L2)表面の対水接触角が高すぎると、逆に現像液溶解速度が著しく低下するため好ましくない。
また、さらに、保護層(L2)は吸水性(吸水速度)の低いものが好ましい。
吸水性(吸水速度)が高すぎると純水との接触後、水の浸透速度が早くなり、フォトレジスト層(L1)へ水が達しやすく、保護層(L2)による保護効果が不十分となるため好ましくない。
例えば、吸水性(吸水速度)は、QCM法により測定でき、吸水による重量増加速度(吸水速度)として算出可能である。
これらの性質を有する保護層(L2)としては、撥水性または疎水性の部位と親水性の部位を有するポリマー材料からなるものが好ましく、例えば親水性の官能基Yを有するポリマー材料からなるものが好ましい。
なかでも、193nm以上の波長においても透明性が高く、撥水性または疎水性の部位を有することから、親水性の官能基Yを有する含フッ素重合体(A1)からなることが好ましい。
つまり、保護層(L2)は親水性官能基Yを有する含フッ素重合体(A1)からなる層であって、前述の特性を有するものが好ましい。
親水性の官能基は、現像液溶解性を付与できるものであれば良く、例えば、pKaで11以下の酸性OH基を含む官能基が好ましく、より好ましくはpKaで10以下、特には9.5以下である。
具体的に親水性官能基Yは、
なかでも、透明性が高い点で、−OH基、−COOH基が好ましく、さらに吸水性を低くできる点で−OH基が好ましい。
−OH基は、pKaを11以下の酸性とするために、OH基に直接結合する炭素原子に、含フッ素アルキル基または含フッ素アルキレン基が結合したものが好ましく、具体的には、下式:
(式中、Rf3は炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基;R2は水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基から選ばれるもの)で表される部位を有することが好ましい。
R2はなかでも炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基であることが好ましい。
さらには、Rf3、R2は共にパーフルオロアルキル基であることが好ましく、具体的には、
などの部位が好ましい。
またさらには、下式:
(式中、Rf3は炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基;R2は水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基から選ばれるもの)で表される部位を有するものが吸水性を低くし、現像液溶解性を大きくする面でより好ましく、具体的には、
などの部位を有するものが好ましい。
親水性官能基Yを有する含フッ素重合体(A1)は、フッ素含有率で30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。
フッ素含有率が低くなりすぎると、撥水性が低くなったり、吸水性が大きくなりすぎるため好ましくない。
一方、フッ素含有率の上限は75質量%であり、好ましくは70質量%、より好ましくは65質量%である。
フッ素含有率が高すぎると、被膜の撥水性が高くなり過ぎて、現像液溶解速度を低下させたり、現像液溶解速度の再現性を悪くしたりするため好ましくない。
本発明の第一のレジスト積層体の保護層(L2)に用いる、親水性官能基Yを有する含フッ素重合体(A1)の好ましい第一の具体例は、重合体主鎖に脂肪族環構造の構造単位(M2)を有するものである。
重合体主鎖の脂肪族環構造の構造単位(M2)は、通常、重合体主鎖に脂肪族環構造の構造単位(M2)を与え得る単量体(m2)を重合することによって得られ、単量体(m2)にフッ素原子を含まない場合は、他の含フッ素単量体、具体的には含フッ素エチレン性単量体(m1)と共重合することで重合体にフッ素原子が導入される。
親水性官能基Yは、構造単位M2に有していてもよいし、他の構造単位中に含んでいてもよい。
主鎖に脂肪族環構造の構造単位を有する含フッ素重合体(A1)の好ましいものは、式(M−1):
−(M1)−(M2)−(N1)−(N)− (M−1)
(式中、構造単位M1は炭素数2または3のエチレン性単量体であって、少なくとも1個のフッ素原子を有する含フッ素エチレン性単量体(m1)由来の構造単位;構造単位M2は重合体主鎖に脂肪族環構造を与え得る単量体(m2)由来の構造単位;構造単位N1は単量体(m1)および単量体(m2)と共重合可能な単量体(n1)由来の構造単位;構造単位Nは単量体(m1)、単量体(m2)および単量体(n1)と共重合可能な単量体(n)由来の構造単位であって、構造単位M2またはN1の少なくとも一方に親水性官能基Yを有し、構造単位M2にYを有する場合は構造単位N1とNは同じであってよい)であって、構造単位M1を1〜99モル%、構造単位M2を1〜99モル%、構造単位N1を0〜98モル%、構造単位Nを0〜98モル%含む(ただし、構造単位M2が親水性官能基Yを含まない場合は構造単位N1は必須である)含フッ素重合体である。
まず、式(M−1)の含フッ素重合体において、重合体主鎖にフッ素原子を導入できる含フッ素エチレン性単量体(m1)は重合性、特にラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を1つ有する炭素数2または3の含フッ素エチレン性単量体であって少なくとも1個のフッ素原子を有する単量体である。
かかる含フッ素エチレン性単量体(m1)は重合性の炭素−炭素二重結合を1つ有するモノエン化合物であって、重合によっても主鎖中に環構造を有する構造単位は形成しない。
これらの含フッ素エチレン性単量体(m1)由来の構造単位により、フッ素原子を効果的に導入できるため、保護層(L2)に用いる場合、良好な、撥水性、耐水性、防水性を付与できる点で好ましい。また、透明性においても特に効果的である。
好ましい含フッ素エチレン性単量体(m1)としては、エチレンまたはプロピレンの水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換したものがあげられる。他の水素原子はフッ素原子以外のハロゲン原子に置換されていてもよい。
なかでもフッ素原子が炭素−炭素二重結合を構成する炭素原子に少なくとも1個結合した単量体であることが好ましい。それによって、構造単位(M1)に、つまり重合体主鎖中にフッ素原子を導入でき、真空紫外領域において特に優れた透明性を与える含フッ素重合体が効果的に得られる。
具体的には、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、CH2=CFCF3から選ばれる少なくとも1種の単量体が好ましくあげられる。
なかでもテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデンまたはヘキサフルオロプロピレンの1種または2種以上の混合物であることが透明性の点で特に好ましく、とりわけテトラフルオロエチレンおよび/またはクロロトリフルオロエチレンが好ましい。
ついで、式(M−1)の含フッ素重合体において、重合体主鎖に脂肪族環構造の構造単位(M2)を与え得る単量体(m2)について説明する。
かかる単量体(m2)は、後で述べる本願の第二の発明のフォトレジスト層(L3)に用いた場合にドライエッチング耐性を向上させる脂肪族環構造の構造単位(M2)を重合体主鎖中に導入することができる。
単量体(m2)は、ラジカル重合性の炭素−炭素不飽和結合を環構造中に有する不飽和環状化合物から選ばれるものであってもよいし、ジエン化合物の環化重合により主鎖に環構造を形成させることができる非共役ジエン化合物から選ばれるものであってもよい。
また単量体(m2)は、その単量体中に親水性官能基Yを有していてもよいし有していなくてもよい。
この単量体(m2)を(共)重合することによって、主鎖に単環構造または複環構造の脂肪族環構造単位を有する重合体を得ることができる。
本発明において「複環構造」とは複数の環が含まれる構造のうち、ビシクロ環やトリシクロ環などの「架橋環(bridged ring)」は含むが、「縮合環(fused ring)」、「スピロ環(spiro ring)」および単縮合または多重縮合あるいはスペーサーにより複数の環が連結されたポリシクロヘキサンなどの「環集合(ring assemblies)は含まない。
単量体(m2)の好ましい第1は、ラジカル重合性の炭素−炭素不飽和結合を有し、ポリマー主鎖に単環または複環構造を形成できる単量体であって、かつ親水性官能基Yを有さない単量体(m2−1)である。
具体的には、親水性官能基Yを有さない単環状の脂肪族不飽和炭化水素化合物からなる単量体(m2−1a)、親水性官能基Yを有しない複環状の脂肪族不飽和炭化水素化合物からなる単量体(m2−1b)、または後述する親水性官能基Yを有しない環化重合可能な非共役ジエン化合物(m2−1c)から選ばれるものである。
親水性官能基Yを有しない単環状の単量体(m2−1a)は環構造中にエーテル結合を含んでいてもよい3員環〜8員環構造の脂肪族不飽和炭化水素化合物であることが好ましい。
単量体(m2−1a)は、具体的には、
などが好ましくあげられる。
さらに、これら単量体(m2−1a)の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された単量体であってもよく、たとえば、
などが好ましくあげられる。
前記、単量体(m2−1)のもう一方は、重合体主鎖中に脂肪族複環構造を有する構造単位を与え、かつ親水性官能基Yを有しない脂肪族複環構造を有する単量体(m2−1b)であり、好ましい単量体(m2−1b)はノルボルネン誘導体である。
親水性官能基Yを有していない脂肪族複環構造を有する単量体(m2−1b)は、具体的には、
などがあげられる。
上記例示のノルボルネン類の環構造にフッ素原子を導入したものであってもよく、フッ素原子を導入することによりドライエッチング耐性を低下させずに撥水性、耐水性、防水性を付与でき、さらには透明性を向上できる。
具体的には、式:
(式中、A、B、DおよびD’は同じかまたは異なり、いずれもH、F、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10の含フッ素アルキル基;mは0〜3の整数。ただし、A、B、D、D’のいずれか1つはフッ素原子を含む)で示される含フッ素ノルボルネンであり、具体的には、
などで示される含フッ素ノルボルネンがあげられる。
そのほか、
などのノルボルネン誘導体もあげられる。
単量体(m2)の好ましい第2は、ラジカル重合性の炭素−炭素不飽和結合を有し、ポリマー主鎖に単環または複環構造を形成できる単量体であって、かつ親水性官能基Yを有する単量体(m2−2)である。
詳しくは、親水性官能基Yを有する単環状の脂肪族不飽和炭化水素化合物からなる単量体(m2−2a)、親水性官能基Yを有する複環状の脂肪族不飽和炭化水素化合物からなる単量体(m2−2b)、または後述する環化重合可能な非共役ジエン化合物であって親水性官能基Yを有する単量体(m2−2c)から選ばれるものである。
なかでも親水性官能基Yを有する単環状の単量体(m2−2a)は環構造中にエーテル結合を含んでいてもよい3員環〜8員環構造の不飽和炭化水素化合物であることが好ましい。また前述と同様、単量体(m2−2a)の水素原子の一部またはすべてがフッ素原子で置換された単量体であってもよい。
親水性官能基Yを有する単環状の単量体(m2−2a)は、具体的には、
などの単量体があげられる。
前記、親水性官能基Yを有する単量体(m2−2)のもう一方は、重合体主鎖中に脂肪族複環構造を有する構造単位を与え、かつ親水性官能基Yを有する脂肪族複環構造を含む単量体(m2−2b)であり、より好ましい単量体(m2−2b)は親水性官能基Yを有するノルボルネン誘導体である。
親水性官能基Yを有している脂肪族複環構造を含む単量体(m2−2b)は、具体的には、
などがあげられる。
さらに親水性官能基Yを有する脂肪族複環構造を含む単量体(m2−2b)は、環構造に結合した水素原子の一部またはすべてをフッ素原子に置換したものであってもよく、このものは重合体にさらなる撥水性、耐水性、防水性、さらには透明性を付与できる点で好ましい。
具体的には、
(式中、A、BおよびDは同じかまたは異なり、いずれもH、F、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基;Rは炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;aは0〜5の整数;bは0または1。ただし、bが0またはRがフッ素原子を含まない場合はA、B、Dのいずれか1つはフッ素原子または炭素数1〜10のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基である)で表わされる含フッ素ノルボルネン誘導体があげられる。
これらのなかでも、A、B、Dのいずれかがフッ素原子またはフッ素原子を含むものであることが好ましく、またはA、B、Dにフッ素原子が含まれない場合はRのフッ素含有率が50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特には70重量%以上であることが好ましく、さらにはパーフルオロアルキレン基であることが、重合体に透明性を付与できる点でさらに好ましい。
具体的には、
などで示されるノルボルネン誘導体があげられる。
またさらに、
(式中、A、BおよびDは同じかまたは異なり、いずれもH、F、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のエーテル結合を有していもよい含フッ素アルキル基;Rは炭素数1〜20の2価の炭化水素基、炭素数1〜20の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;aは0〜5の整数;bは0または1)で表わされる含フッ素ノルボルネン誘導体などがあげられる。
またさらに、親水性官能基Yを有する脂肪族複環構造を含む単量体(m2−2b)の好ましいものとして、式:
(式中、Rf1、Rf2は同じかまたは異なり、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基または炭素数1〜10のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基;A、B、Dは同じかまたは異なり、いずれもH、F、Cl、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキル基;RはHまたは炭素数1〜10のアルキル基;nは0〜5の整数)で示される含フッ素ノルボルネン誘導体があげられる。
具体的には、たとえば
などがあげられる。
より具体的には、
などが好ましくあげられる。
その他、式:
(式中、Rf1、Rf2は同じかまたは異なり、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基または炭素数1〜10のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基;B、Dは同じかまたは異なり、いずれもH、F、Cl、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキル基;RはHまたは炭素数1〜10のアルキル基;nは0〜5の整数)で示されるノルボルネン誘導体もあげられる。
これら例示の脂肪族複環構造を含む単量体(m2−1b)、(m2−2b)は、重合体にドライエッチング耐性を付与できる点で、また撥水性、耐水性、防水性を付与できる点で、特に液浸露光用の保護層の原料として好ましい。
特にフッ素原子を複環構造に含むノルボルネン誘導体は、撥水性、耐水性、防水性さらには透明性の点で好ましい。
また、親水性官能基Yを有するノルボルネン誘導体(m2−2b)は重合体に効率的に現像液溶解性を付与する官能基を導入でき、結果的に透明性、ドライエッチング耐性において有利となるため好ましい。
単量体(m2)の好ましい第3は、重合により脂肪族環構造を形成し得るフッ素原子を有していてもよい非共役のジエン化合物である。非共役ジエン化合物は、主鎖中に環構造の構造単位を有する重合体を効率よく与えることができ、前述と同様、真空紫外領域の透明性も改善できるものである。
非共役ジエン化合物としては、たとえば環化重合し主鎖に単環構造を与える特定のジビニル化合物が好ましくあげられ、親水性官能基Yを有さないもの(m2−1c)、または親水性官能基Yを有するもの(m2−2c)である。
具体例としては、たとえばフッ素原子や親水性官能基Yを有していてもよい式:
(式中、Z1およびZ2は同じか異なり、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜5のエーテル結合を有していてもよい炭化水素基、炭素数1〜5のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基)で示されるジアリル化合物があげられる。
このジアリル化合物をラジカル環化重合することにより、
(式中、Z1、Z2は前記と同じ)で示される主鎖中に単環状の構造単位を形成することができる。
保護層(L2)に用いる親水性官能基Yを有する含フッ素重合体は、脂肪族環構造を与え得る単量体(m2)のうち親水性官能基Yを有する単量体(m2−2)、つまり前述の(m2−2a)、(m2−2b)または(m2−2c)の中から選ばれる少なくとも1種の単量体由来の構造単位を導入することで得ることができる。
または、単量体(m2)として親水性官能基Yを有さない単量体(m2−1)を用いる場合、共単量体(n1)のうちで親水性官能基Yを有する単量体(n1−2)を単量体(m2)に加えて共重合し、構造単位(M2)に加え、後述する親水性官能基Yを有する構造単位(N1−2)を導入してもよい。
構造単位(N1)および(N)はいずれも親水性官能基Yを有していてもいなくてもよい構造単位であって、単量体(m1)および(m2)、さらには相互に共重合可能な単量体(n1)および単量体(n)である。ただし、構造単位(N1)は構造単位(M2)が親水性官能基Yを有していない場合は親水性官能基Yをもっている。構造単位(M2)は構造単位(N1)が親水性官能基Yを有していない場合は親水性官能基Yをもっている。構造単位(N)は他の構造単位に関係なく親水性官能基Yを有していてもいなくてもよい。
つまり、構造単位(N1)のうち親水性官能基Yを有しない構造単位(N1−1)は親水性官能基Yを有しない単量体(n1−1)を共重合することにより導入できる。また構造単位(N1)のうち親水性官能基Yを有する構造単位(N1−2)は親水性官能基Yを有する単量体(n1−2)を共重合することにより導入できる。
任意の構造単位(N1−2)に親水性官能基Yを導入できる単量体(n1−2)としては、共重合可能な親水性官能基Yを有するエチレン性単量体が好ましい。
具体的には親水性官能基Yを有するアクリル系単量体、親水性官能基Yを有する含フッ素アクリル系単量体、親水性官能基Yを有するアリルエーテル系単量体、親水性官能基Yを有する含フッ素アリルエーテル系単量体、親水性官能基Yを有するビニルエーテル系単量体、親水性官能基Yを有する含フッ素ビニルエーテル系単量体などが好ましい。
より具体的には、
(メタ)アクリル酸、α−フルオロアクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、t−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル−α−フルオロアクリレート、t−ブチル−α−トリフルオロメチルアクリレート、
(式中、X1およびX2は同じかまたは異なり、いずれもHまたはF;X3はH、F、CH3またはCF3;X4はH、FまたはCF3;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;aは0または1〜3の整数;bは0または1)で示される含フッ素エチレン性単量体である。
なかでも式:
CH2=CF−CF2O−Rf−Y
(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素アリルエーテル化合物が好ましい。
より具体的には、
などの含フッ素アリルエーテル化合物が好ましくあげられる。
また、式:
CF2=CF−O−Rf−Y
(式中、Rfは前記と同じ)で示される含フッ素ビニルエーテル化合物が好ましい。
より具体的には、
などの含フッ素ビニルエーテル化合物があげられる。
その他、親水性官能基Yを含有する含フッ素エチレン性単量体としては、
CF2=CF−CF2O−Rf−Y、 CF2=CF−Rf−Y、
CH2=CH−Rf−Y、 CH2=CH−O−Rf−Y
(Rfは前記と同じ)
などの単量体があげられ、より具体的には、
などがあげられる。
任意の構造単位(N1−1)を与える単量体(n1−1)としては、共重合可能な親水性官能基Yを有さないエチレン性単量体が好ましい。
具体的には、酸で分解することの無いエステル部を持つ親水性官能基Yを有さないアクリル系単量体や含フッ素アクリル系単量体、親水性官能基Yを有さないアリルエーテル系単量体、親水性官能基Yを有さない含フッ素アリルエーテル系単量体、親水性官能基Yを有さないビニルエーテル系単量体、親水性官能基Yを有さない含フッ素ビニルエーテル系単量体などが好ましい。
より具体的には、
CX11X12=CX13COOR
(式中、X11、X12、X13はH、F、CH3、CF3から選ばれるもの;Rは1価の有機基)
で表される(メタ)アクリル酸エステル、α−フルオロアクリル酸エステル、α−トリフルオロメチルアクリル酸エステルであり、エステル部位Rが1級または2級炭素でOと結合している単量体が挙げられる。
ビニルエーテル系単量体、含フッ素ビニルエーテル系単量体では、
CH2=CHOR、CF2=CFORf
(Rは1価の有機基;Rfは1価の含フッ素有機基)などがあげられ、
より具体的には、
CH2=CHOCH2Rf(Rfは前記と同じ)、
CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3
などがあげられる。
その他、親水性官能基Yを含有する含フッ素エチレン性単量体としては、
CF2=CF−CF2O−Rf、 CF2=CF−Rf、
CH2=CH−Rf、 CH2=CH−O−Rf
(Rfは前記と同じ)
などがあげられる。
さらに任意の構造単位(N)を与える単量体(n)は前述のとおり、親水性官能基Yを有しない単量体(n−1)でも親水性官能基Yを有する単量体(n−2)でもよく、具体例としては前述の単量体(n1−1)および(n1−2)と同様のものが例示できる。
式(M−1)の含フッ素重合体は、なかでも脂肪族環構造を与え得る単量体(m2)のうち親水性官能基Yを有する単量体(m2−2)、つまり前述の(m2−2a)、(m2−2b)または(m2−2c)の中から選ばれる少なくとも1種の単量体由来の構造単位を有することが、ドライエッチング耐性が良好な点で好ましい。
具体的には、式(M−2):
−(M1)−(M2−2)−(M2)−(N)− (M−2)
(式中、構造単位M1、M2は前記式(M−1)と同じ;構造単位M2−2は重合体主鎖に脂肪族環構造を与え得る単量体であって、親水性官能基Yを有する単量体(m2−2)由来の構造単位;構造単位Nは単量体(m1)、(m2−2)および単量体(m2)と共重合可能な単量体(n)由来の構造単位)であって、構造単位M1を1〜99モル%、構造単位M2−2を1〜99モル%、構造単位M2を0〜98モル%、構造単位Nを0〜98モル%含む含フッ素重合体である。
式(M−2)において、構造単位(M2−2)は前述の(m2−2a)、(m2−2b)または(m2−2c)の具体例のなかから選ばれるものが同様に好ましく、なかでもノルボルネン誘導体(m2−2b)由来の構造単位であることが、ドライエッチング耐性が良好な点で好ましい。
構造単位(M1)、(M2)および(N)は、式(M−1)の含フッ素重合体における、好ましい具体例(ただし構造単位M2は前述の構造単位M2−2以外のもの)が同様に利用できる。
また、式(M−2)の含フッ素重合体において、任意の構造単位Nに親水性官能基Yを有する構造単位(N−2)を用いる場合の単量体(n−2)としては、前述の親水性官能基Yを有するエチレン性単量体(n1−2)と同様のものが好ましく例示できる。
本発明では、単量体(m1)、(m2)、(m2−2)および(n1−2)に加え、さらに任意の単量体(n)として、ラジカル重合性の単量体を、得られる含フッ素共重合体に別異の特性、たとえば機械的強度や塗工性などを改善する目的で共重合してもよい。
そうした任意の単量体(n)としては、親水性官能基Yを有する上記共単量体(n1−2)のほか、親水性官能基Yを有していてもいなくてもよく他の構造単位を構成するための単量体(m1)、(m2)および(m2−2)と共重合できるものから選ばれる。
たとえば、
アクリル系単量体(ただし(n1−2)で記載の単量体は除く):
スチレン系単量体:
エチレン系単量体:
CH2=CH2、CH2=CHCH3、CH2=CHClなど
マレイン酸系単量体:
アリル系単量体:
CH2=CHCH2Cl、CH2=CHCH2OH、CH2=CHCH2COOH、CH2=CHCH2Brなど
アリルエーテル系単量体:
その他の単量体:
などがあげられる。
本発明における式(M−1)、(M−2)の含フッ素重合体の分子量は、数平均分子量で1000〜100000、好ましくは2000〜50000、より好ましくは2000〜10000であり、重量平均分子量で2000〜200000、好ましくは3000〜50000、より好ましくは3000〜10000である。
親水性官能基Yを有する含フッ素重合体(A1)としては、より具体的には、つぎの重合体が好ましい。
(I)式:
−(M1)−(M2−2a)−
(式中、M1は炭素数2または3のエチレン性単量体であって少なくとも1個のフッ素原子を有する単量体(m1)由来の構造単位;M2−2aは単環状の脂肪族不飽和炭化水素化合物に親水性官能基Yを有するフッ素原子を有していてもよい単量体(m2−2a)に由来する構造単位)で示される含フッ素重合体。
構造単位(M1)と(M2−2a)との組成割合は、通常、80/20〜20/80モル%比、好ましくは70/30〜30/70モル%比、特に好ましくは60/40〜40/60モル%比である。
単量体の具体例としては、前述の単量体(m1)の具体例、および単量体(m2−2a)の具体例が好ましく例示できる。
(II)式:
−(M1)−(M2−2b)−
(式中、M1は前記と同じ;(M2−2b)は前述の親水性官能基Yを有する脂肪族複環構造含有単量体(m2−2b)、特にノルボルネン誘導体由来の構造単位)で示される含フッ素重合体。
構造単位(M1)と(M2−2b)との組成割合は、通常、80/20〜20/80モル%比、好ましくは70/30〜30/70モル%比、特に好ましくは60/40〜40/60モル%比である。
具体的な単量体としては、前述の単量体(m1)の具体例、および単量体(m2−2b)の具体例が好ましく例示できる。
これら(I)、(II)の含フッ素重合体はその重合体自体、ドライエッチング耐性と撥水性、耐水性、防水性に優れており、さらには透明性に優れる。
(III)式:
−(M1)−(M2−1a)−(N1−2)−
(式中、M1は前記と同じ;M2−1aは重合性の炭素−炭素不飽和結合を環構造中に有し親水性官能基Yを有していない単環状の単量体(m2−1a)由来の構造単位;N1−2は親水性官能基Yを有する共重合可能なエチレン性単量体(n1−2)由来の構造単位)で示される含フッ素重合体。
構造単位(M1)と(M2−1a)と(N1−2)との組成割合は、(M1)+(M2−1a)+(N1−2)=100モル%としたとき、{(M1)+(M2−1a)}/(N1−2)が通常、90/10〜20/80モル%比、好ましくは80/20〜30/70モル%比、特に好ましくは70/30〜40/60モル%比である。
具体的な単量体としては、前述の単量体(m1)および(m2−1a)の具体例、および単量体(n1−2)の具体例が好ましく例示できる。
(IV)式:
−(M1)−(M2−1b)−(N1−2)−
(式中、M1、N1−2は前記と同じ;M2−1bは親水性官能基Yを有していない脂肪族複環構造含有単量体(m2−1b)、特にノルボルネン誘導体由来の構造単位)で示される含フッ素重合体。
構造単位(M1)と(M2−1b)と(N1−2)との組成割合は、(M1)+(M2−1b)+(N1−2)=100モル%としたとき、{(M1)+(M2−1b)}/(N1−2)が通常、90/10〜20/80モル%比、好ましくは80/20〜30/70モル%比、特に好ましくは70/30〜40/60モル%比である。
本発明の保護層に用いる含フッ素重合体(A1)の好ましい第二は、親水性官能基Yを有する含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位(M3)を有するものであり、純水に対する撥水性、耐水性、防水性と現像液溶解性を両立でき、さらに透明性においても好ましい。
具体的には式(M−3):
−(M3)−(N2)− (M−3)
〔式中、構造単位M3は式(1):
(式中、X1、X2は同じかまたは異なりHまたはF;X3はH、F、Cl、CH3またはCF3;X4、X5は同じかまたは異なりHまたはF;Rfは炭素数1〜40の含フッ素アルキル基に親水性官能基Yが1〜4個結合した1価の有機基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基に親水性官能基Yが1〜4個結合した1価の有機基;a、bおよびcは同じかまたは異なり0または1)で表される含フッ素単量体由来の構造単位;構造単位N2は前記式(1)の含フッ素単量体と共重合可能な単量体(n2)由来の構造単位であり、構造単位M1を30〜100モル%、構造単位N2を0〜70モル%含む含フッ素重合体である。
式(1)の含フッ素単量体は、側鎖に含フッ素アルキル基を含む1価の有機基Rfを有し、そのRf基に1〜4個の親水性官能基Yが結合していることを特徴とし、式(1)の含フッ素単量体自体で親水性官能基Yと多くのフッ素原子を含有することから、それを用いた重合体に純水に対する撥水性、耐水性、防水性および現像液溶解性を両立させることができる。
式(1)の含フッ素単量体におけるRfは、好ましくは親水性官能基が1〜4個結合した炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または親水性官能基が1〜4個結合した炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基であるが、親水性官能基Yは通常、1個有するものが好ましい。
また、Rfとしては親水性官能基が結合した炭素数1〜40のパーフルオロアルキル基または親水性官能基が結合した炭素数2〜100のエーテル結合を有するパーフルオロアルキル基が、重合体により一層の撥水性、耐水性、防水性を付与することができる点で好ましい。
親水性官能基Yとしては、具体的には前述の例示のものが同様に好ましい。
また、式(1)の含フッ素単量体は、それ自体、重合性が良好であり、それ自体の単独重合または、その他の含フッ素エチレン性単量体との共重合が可能である点でも好ましい。
式(1)の親水性官能基Yを有する含フッ素エチレン性単量体の具体的に好ましい第一は、式(2):
(式中、X1、X2、X3、X4、X5、aおよびcは前記式(1)と同じ;Rf1は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価の含フッ素アルレン基)で表される単量体であり、これらは特に重合性が良好であり、それ自体の単独重合または、その他の含フッ素エチレン性単量体との共重合が可能である点で好ましい。
式(2)の親水性官能基Yを有する含フッ素エチレン性単量体は、具体的には、式(2−1):
CH2=CFCF2−O−Rf1−Y (2−1)
(式中、Rf1は前記式(2)と同じ)で表される含フッ素エチレン性単量体があげられる。
式(2−1)の単量体は、具体的には、
(式中、Z1はFまたはCF3;Z2、Z3はHまたはF;Z4はH、FまたはCF3;p1+q1+r1が0〜10の整数;s1は0または1;t1は0〜5の整数、ただし、Z3、Z4がともにHの場合、p1+q1+r1+s1が0でない)で表される含フッ素エチレン性単量体であり、これらは、それ自体の単独重合性に優れ、含フッ素重合体に親水性官能基Yをより数多く導入でき、その結果、保護層(L2)に撥水性、耐水性、防水性と優れた現像液溶解性を付与できる点で好ましい。
また、テトラフルオロエチレンやフッ化ビニリデンなどの含フッ素エチレン類との共重合性も高く、保護層(L2)に撥水性、耐水性、防水性を付与できる。
さらに具体的には、
などが好ましくあげられ、なかでも
であることが好ましい。
式(2)の親水性官能基Yを有する含フッ素エチレン性単量体は、さらに式(2−2):
CF2=CF−O−Rf1−Y (2−2)
(式中、Rf1は前記式(2)と同じ)で表される含フッ素エチレン性単量体があげられる。
式(2−2)の単量体は、具体的には、
(式中、Z5はFまたはCF3;Z6はHまたはF;Z7はHまたはF;p2+q2+r2が0〜10の整数;s2は0または1;t2は0〜5の整数)で表される含フッ素エチレン性単量体であり、これらは、テトラフルオロエチレンやフッ化ビニリデンなどの含フッ素エチレン類との共重合性も高く、保護層(L2)に撥水性、耐水性、防水性を付与できる。
式(2−2)の単量体は、さらに具体的には、
などが好ましくあげられる。
式(2)の親水性官能基Yを有する他の含フッ素エチレン性単量体としては、
(式中、Rf1は前記式(2)と同じ)で表される含フッ素エチレン性単量体があげられ、具体的には、
などがあげられる。
これらの例示の含フッ素単量体における親水性官能基Yとしては、前述の例示の親水性官能基が好ましくあげられるが、特に好ましくは−OH、−COOHであり、特には−COOHが好ましい。
式(1)の親水性官能基Yを有する含フッ素エチレン性単量体の具体的に好ましい第二は、式(3):
(式中、X1、X2、X3、X4、X5およびaは前記式(1)と同じ;Rf2は炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基;R1はH、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種)で表される含フッ素エチレン性単量体である。
これらを用いた含フッ素重合体は、特に透明性、さらには撥水性、耐水性、防水性に優れ、保護層(L2)に用いた場合、液浸露光時の解像性、パターン形状において特に効果的である。
式(3)の含フッ素単量体は、具体的には、
(式中、Rf2、R1は式(3)と同じ)などが好ましくあげられ、さらに具体的には、
が好ましくあげられる。
本発明の保護層(L2)に用いる式(M−3)の含フッ素重合体は式(1)の親水性官能基を有する含フッ素単量体の単独重合体であっても、その他の単量体との共重合体であっても良い。
式(1)の単量体のうち単独重合可能な単量体の場合は、単独重合体である方が、保護層(L2)の現像液溶解速度を向上させることが可能であるためより好ましい。
また共重合体とする場合、共重合成分の構造単位(N2)は適宜選択できるが、現像液溶解性を維持する範囲で撥水性、耐水性、防水性を付与する目的で選択するのが好ましく、具体的には、含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位の中から選択される。
なかでも、つぎの(N2−1)および(N2−2)の構造単位から選ばれるものが好ましい。
(N2−1)炭素数2または3のエチレン性単量体であって、少なくとも1個のフッ素原子を有する含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位:
この構造単位N2−1は、現像液溶解性を低下させずに効果的に撥水性、耐水性、防水性を付与できたり、透明性を改善できる点で好ましい。また、保護層の被膜強度を改善できる点でも好ましい。
具体的には、CF2=CF2、CF2=CFCl、CH2=CF2、CFH=CH2、CFH=CF2、CF2=CFCF3、CH2=CFCF3、CH2=CHCF3などがあげられる。なかでも、共重合性が良好でかつ透明性、撥水性、耐水性、防水性を付与する効果が高い点で、テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)、クロロトリフルオロエチレン(CF2=CFCl)、フッ化ビニリデン(CH2=CF2)が好ましい。
(N2−2)式(n2−2):
(式中、X1、X2、X3、X4、X5、aおよびcは前記式(1)と同じ;Rf3は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される単量体由来の構造単位:
この構造単位は、効果的に撥水性、耐水性、防水性を付与したり、透明性を改善できる点で好ましい。
具体的には、
CH2=CFCF2−O−Rf3、
CF2=CF−O−Rf3、
CF2=CFCF2−O−Rf3、
CF2=CF−Rf3、
CH2=CH−Rf3、
CH2=CH−O−Rf3
(式中、Rf3は前記式(n2−2)と同じ)などが好ましくあげられる。
式(M−3)の含フッ素重合体における各構造単位の存在比率は、前記の好ましいフッ素含有率および親水性官能基の含有率に応じて適宜選択されるが、好ましくは構造単位M3が30〜100モル%、構造単位N2が0〜70モル%であり、さらに好ましくは構造単位M3が40〜100モル%、構造単位N2が0〜60モル%、より好ましくは構造単位M3が50〜100モル%、構造単位N2が0〜50モル%、特に好ましくは構造単位M3が60〜100モル%、構造単位N2が0〜40モル%である。
式(M−3)の含フッ素重合体の分子量は、数平均分子量で1000〜1000000、好ましくは2000〜200000、より好ましくは3000〜100000であり、特には5000〜50000である。
分子量が低すぎると保護層(L2)の被膜の強度が低くなりすぎたり、また下層のフォトレジスト層(L1)へ含フッ素重合体自体が浸透してしまうなどの問題が生じることがある。また、保護層の成膜性が悪くなって均一な薄膜形成が困難となることもある。
本発明の保護層(L2)に用いる含フッ素重合体(A1)の好ましい第三は、式(M−4):
−(M4)−(N3)− (M−4)
[式中、構造単位M4は親水性官能基Yとして−COOHを含む式(4):
(式中、X6、X7は同じかまたは異なりHまたはF;X8はH、F、Cl、CH3またはCF3であり、ただし、X6、X7、X8の少なくとも1つはフッ素原子を含む)で表される構造単位;構造単位N3は前記式(4)の含フッ素単量体と共重合可能な単量体(n3)由来の構造単位]で表され、構造単位M4を10〜100モル%、構造単位N3を0〜90モル%含む含フッ素重合体である。
この含フッ素重合体は、親水性官能基Yとして−COOHを含む含フッ素単量体である含フッ素アクリル酸由来の構造単位を現像液溶解性を付与する成分として含むもので、特に現像液溶解性に優れたものとなる点で好ましい。
式(4)の含フッ素単量体は、具体的には、
があげられ、なかでも
が重合性が良好な点で好ましい。
本発明の保護層(L2)に用いる含フッ素重合体(M−4)は、式(4)の含フッ素単量体の単独重合体であっても良いが、通常、共重合により任意の構造単位N3を含有させることが好ましい。
共重合成分の構造単位N3は、適宜選択できるが、現像液溶解性を維持する範囲で撥水性、耐水性、防水性を付与する目的で選択するのが好ましく、具体的には、つぎの含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位の中から選択される。
(N3−1)含フッ素アクリレート系単量体由来の構造単位:
具体的には、式(n3−1):
(式中、X9はH、FまたはCH3;Rf4は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素アクリレート単量体由来の構造単位であることが好ましく、これらは式(4)の含フッ素単量体との共重合性が高く、含フッ素重合体に撥水性、耐水性、防水性を付与できる点で好ましい。
式(n3−1)の含フッ素アクリレートにおいて、Rf4基は、
(式中、d3は1〜4の整数;e3は1〜10の整数)などがあげられる。
(N3−2)含フッ素ビニルエーテル系単量体由来の構造単位:
具体的には、式(n3−2):
CH2=CHO−Rf5 (n3−2)
(式中、Rf5は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素ビニルエーテル由来の構造単位であることが好ましく、これらは式(4)の含フッ素単量体との共重合性が高く、含フッ素重合体に撥水性、耐水性、防水性を付与できる点で好ましい。
式(n3−2)の単量体は、具体的には
(式中、e6は1〜10の整数)などが好ましくあげられる。
より具体的には、
などの単量体由来の構造単位があげられる。
その他、つぎの構造単位(N3−3)や(N3−4)もあげられる。
(N3−3)式(n3−3):
CH2=CHCH2O−Rf6 (n3−3)
(式中、Rf6は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素アリルエーテル由来の構造単位。
(N3−4)式(n3−4):
CH2=CH−Rf7 (n3−4)
(式中、Rf7は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素ビニル単量体由来の構造単位。
これらは含フッ素重合体に撥水性、耐水性、防水性を付与できる点で好ましい。
式(n3−3)、(n3−4)の単量体は、具体的には、
などがあげられる。
式(M−4)の含フッ素重合体における各構造単位の存在比率は、前記の好ましいフッ素含有率および親水性官能基の含有率に応じて適宜選択されるが、好ましくは構造単位M4が10〜100モル%、構造単位N3が0〜90モル%であり、さらに好ましくは構造単位M4が20〜80モル%、構造単位N3が20〜80モル%、より好ましくは構造単位M4が30〜70モル%、構造単位N3が30〜70モル%、特に好ましくは構造単位M4が40〜60モル%、構造単位N3が40〜60モル%である。
構造単位M4の存在比率が低すぎると、現像液溶解性が不充分となり、構造単位M4の存在比率が高くなりすぎると、撥水性、耐水性、防水性が悪くなりすぎるため好ましくない。
式(M−4)の含フッ素重合体の分子量は、数平均分子量で1000〜1000000、好ましくは2000〜200000、より好ましくは3000〜100000であり、特には、5000〜50000である。
分子量が低すぎると保護層(L2)の被膜の強度が低くなりすぎたり、また下層のフォトレジスト層(L1)へ含フッ素重合体自体が浸透してしまうなどの問題が生じることがある。また、保護層の成膜性が悪くなって均一な薄膜形成が困難となることもある。
本発明の保護層(L2)に用いる、親水性官能基Yを有する含フッ素重合体(A1)の好ましい第四は、親水性官能基Yが重合体主鎖からスペーサーを介して隔てられた炭素原子に置換した構造を与える構造単位(M5)を有する含フッ素重合体である。
具体的には、式(M−5):
−(M1)−(M5)−(N5)− (M−5)
(式中、構造単位M1は前記と同じ;構造単位M5は式(5):
(式中、Sは炭素数2〜40の2価の炭化水素基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価の炭化水素基;R5は親水性官能基Yまたは炭素数1〜40の有機基に親水性官能基Yが1〜4個結合した1価の有機基;a、b、cおよびdは同じかまたは異なり0または1)で表される単量体(m5)由来の構造単位;構造単位N5は単量体(m1)および単量体(m5)と共重合可能な単量体(n5)由来の構造単位であって、構造単位N5は親水性官能基Yを有していても良いし、フッ素原子を有していても良い)であって、構造単位M1を1〜99モル%、構造単位M5を1〜99モル%、構造単位N5を0〜98モル%含む含フッ素重合体である。
親水性官能基Yが重合体主鎖からスペーサー基Sを介して隔てられた炭素原子に置換した構造を与える構造単位(M5)は、通常、構造単位(M5)を与え得る単量体(m5)を重合することによって得られ、単量体(m5)にフッ素原子を含まない場合は、他の含フッ素単量体、具体的には含フッ素エチレン性単量体(m1)と共重合することで重合体にフッ素原子が導入される。
まず、式(M−5)の含フッ素重合体において、構造単位(M1)を与える重合体主鎖にフッ素原子を導入できる含フッ素エチレン性単量体(m1)の具体例としては、前述の単量体(m1)の具体例が好ましく例示できる。
ついで、式(M−5)の含フッ素重合体において、まず、構造単位(M5)を与え得る単量体(m5)について説明する。
かかる単量体(m5)は、高いアルカリ性現像液溶解性を与える親水性官能基Yが重合体主鎖からスペーサーを介して隔てられた炭素原子に置換した構造を与える構造単位(M5)を重合体中に導入することができる。
この単量体(m5)を(共)重合することによって、親水性官能基Yと重合体主鎖との間に導入されるスペーサー基Sによって、純水に対する溶解性を制限する効果を重合体に付与できる点で好ましい。
このスペーサー基Sの構造としては、芳香環構造を含まない環状、分岐状または直鎖状の炭化水素基であることが透明性の観点から好ましい。さらに、スペーサー基Sが直鎖状の構造を含む場合、重合体に環境応答性を付与できるため、液浸露光技術における露光の際の純水と保護層(L2)との接触時には対水接触角が大きく純水への溶解性を制限することができ、続く現像液との接触時には対水接触角が小さくなり重合体の現像液への親和性を高めることができる点で好ましい。スペーサー基Sが環状の構造を含む場合、撥水性を重合体に付与できる点で好ましく、さらに、後で述べる本願の第二の発明のフォトレジスト層(L3)に用いた場合にドライエッチング耐性を重合体に付与できる点で好ましい。環状の炭化水素基とは、単環構造または複環構造の脂肪族環構造を有する炭化水素基のことであり、複環構造の脂肪族環構造を有するものがさらにドライエッチング耐性が向上する点で好ましい。
かかるスペーサー基Sは、短くなるとその効果が減少し、純水に溶解したり膨潤する傾向にあり、長くなると撥水性が大きくなりすぎたり、現像液への溶解性がなくなる傾向にあるため、適度な長さをもつことが重要である。つまり、好ましいスペーサー基Sとしては、炭素数2以上40以下が好ましく、炭素数8以上20以下のものがさらに好ましい。
かかるスペーサー基Sの好ましい単環構造としては、たとえばシクロプロピル骨格、シクロブチル骨格、シクロペンチル骨格、シクロヘキシル骨格、シクロヘプチル骨格、シクロオクチル骨格などが好ましく例示できる。
複環構造としては、たとえば
などが好ましく例示できる。
単量体(m5)の好ましい第1は、ラジカル重合性の炭素−炭素不飽和結合を有し、親水性官能基Yを有し、重合体中の親水性官能基Yと重合体主鎖との間にスペーサー部を導入した構造を形成できる単量体であって、かつフッ素原子を有しない単量体(m5−1)である。
詳しくは、親水性官能基Yを有する単環状のαオレフィン系の単量体(m5−1a)、親水性官能基Yを有するビニルエーテル系の単量体(m5−1b)、親水性官能基Yを有するアリルエーテル系の単量体(m5−1c)から選ばれるものである。
これらの単量体(m5−1a)、(m5−1b)および(m5−1c)は、含フッ素エチレン性単量体(m1)との共重合性が優れている点で好ましい。
親水性官能基Yを有するαオレフィン系の単量体(m5−1a)は、具体的には、
CH2=CH−S−Y5
(Sは前述のスペーサー基;Y5は親水性官能基)の単量体があげられる。
親水性官能基Y5は、−OH基、−COOH基または−C(CF3)2OH基であり、スペーサーとしてSがあるために、親水性官能基Y5は−COOH基であることが重合体の現像液への溶解性が良い点で好ましい。
炭素数4以上のスペーサー基Sを含む単量体(m5−1a)を導入した含フッ素重合体は、撥水性、耐水性、防水性をさらに付与できる点で好ましく、さらに炭素数8以上のSを含む単量体(m5−1a)を導入した含フッ素重合体が液浸露光用の保護層の原料として好ましい。
親水性官能基Yを有するαオレフィン系の単量体(m5−1a)の具体例としては、
CH2=CH−(CH2)n−Y
(式中、nは2から20の整数)
が環境応答性を重合体に付与できる点で好ましくあげられる。
親水性官能基Yを有するビニルエーテル系の単量体(m5−1b)は、具体的には、
CH2=CH−O−S−Y5
(SおよびY5は前記(m5−1a)で例示のものと同じ)
の単量体があげられる。
親水性官能基Yを有しているビニルエーテル系の単量体(m5−1b)の具体例としては、
(式中、nは2から20の整数;mは1から4の整数;oは0または1)が好ましく例示される。
親水性官能基Yを有しているアリルエーテル系の単量体(m5−1c)は、具体的には、
CH2=CH−CH2−O−S−Y5
(SおよびY5は前記(m5−1a)で例示のものと同じ)の単量体があげられる。
具体的には、
CH2=CH−CH2−O−(CH2)n−Y
CH2=CH−CH2−O−(C=O)−(CH2)n−Y
(式中、nは2から20の整数)が好ましく例示される。
単量体(m1)および単量体(m5)と共重合可能な単量体(n5)は親水性官能基Y含んでいても良いし含んでいなくても良いが、含フッ素重合体に、撥水性、耐水性、防水性をさらに付与できる点で親水性官能基Yを含まない単量体が好ましい。親水性官能基Yを含まない単量体(n5)の好ましい例としては、前述の単量体(m2−1)、アクリル(またはメタクリル)系単量体、含フッ素アクリル(またはメタクリル)系単量体、アリルエーテル系単量体、含フッ素アリルエーテル系単量体、ビニルエーテル系単量体、含フッ素ビニルエーテル系単量体が、単量体(m1)との重合性が良い点で好ましい。中でも、含フッ素単量体は、含まれるフッ素原子の効果により、効果的に撥水性、耐水性、防水性をさらに付与できる点で好ましい。また、脂肪族環構造を有する単量体も効果的に撥水性、耐水性、防水性をさらに付与できる点で好ましい。
具体的に単量体(n5)の例としては、前述の単量体(n1)の例示のうちで親水性官能基Yを含まない単量体(n1−1)、前述の単量体(m2−1)、単量体(n2−2)、単量体(n2−3)、単量体(n2−4)、単量体(n3−1)、単量体(n3−2)が同様に挙げられる。
さらに、単量体(n3−1)の中でも
CH2=CHCOO−(CH2)n−(CF2)m−X、
CH2=C(CH3)COO−(CH2)n−(CF2)m−X、
CH2=C(CF3)COO−(CH2)n−(CF2)m−X、
CH2=CFCOO−(CH2)n−(CF2)m−X
(nは1または2;mは2から20の整数;XはHまたはF)
などが、効果的に撥水性、耐水性、防水性をさらに付与できる点で好ましく挙げられる。
式(M−5)の含フッ素重合体における各構造単位の存在比率は、前記の好ましいフッ素含有率および親水性官能基の含有率に応じて適宜選択されるが、好ましくは構造単位M1が10〜99モル%、構造単位M5が10〜99モル%、構造単位N5が0〜80モル%であり、さらに好ましくは構造単位M1が30〜70モル%、構造単位M5が30〜70モル%、構造単位N5が0〜30モル%、より好ましくは構造単位M1が40〜60モル%、構造単位M5が40〜60モル%、構造単位N5が0〜20モル%、特に好ましくは構造単位M1が45〜55モル%、構造単位M5が45〜55モル%、構造単位N5が0〜10モル%である。
構造単位M5の存在比率が低すぎると、現像液溶解性が不充分となり、構造単位M5の存在比率が高くなりすぎると、撥水性、耐水性、防水性が悪くなりすぎるため好ましくない。
本発明で得られる式(M−5)の含フッ素重合体の分子量は、数平均分子量で1000〜100000、好ましくは2000〜50000、より好ましくは2000〜10000であり、重量平均分子量で2000〜200000、好ましくは3000〜50000、より好ましくは3000〜10000である。
分子量が低すぎると保護層(L2)の被膜の強度が低くなりすぎたり、また下層のフォトレジスト層(L1)へ含フッ素重合体自体が浸透してしまうなどの問題が生じることがある。また、保護層の成膜性が悪くなって均一な薄膜形成が困難となることもある。
本発明の第一のレジスト積層体の保護層(L1)に用いる、親水性官能基Yを有する含フッ素重合体(A1)の好ましい第五は、重合体主鎖に脂肪族環構造を有しかつ親水性官能基Yが重合体主鎖からスペーサー基Sを介して隔てられた炭素原子に置換した構造を与える構造単位(M6)を有する式(M−6):
−(M1)−(M6)−(N)− (M−6)
(式中、構造単位M1、Nは前述の式(M−1)と同じ;構造単位M6は重合体主鎖に脂肪族環構造を与えかつ親水性官能基Yが重合体主鎖からスペーサー基Sを介して隔てられた炭素原子に置換した構造を与え得る単量体(m6)由来の構造単位)であって、構造単位M1を1〜99モル%、構造単位M6を1〜99モル%、構造単位Nを0〜98モル%含む含フッ素重合体である。スペーサー基Sは、炭素数2〜40の2価の炭化水素基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価の炭化水素基である。
まず、式(M−6)の含フッ素重合体において、重合体主鎖に脂肪族環構造かつ親水性官能基Yが重合体主鎖からスペーサー基Sを介して隔てられた炭素原子に置換した構造の構造単位(M6)を与え得る単量体(m6)について説明する。
かかる単量体(m6)は、後で述べる本願の第二の発明のフォトレジスト層(L3)に用いた場合ドライエッチング耐性を向上させる脂肪族環構造の構造単位(M6)を重合体主鎖中に導入することができる。単量体(m6)中のスペーサー基Sの構造としては、芳香環構造を含まない環状、分岐状または直鎖状の炭化水素基であることが透明性が良好である点から好ましい。さらに、スペーサー基Sが直鎖状の構造を含む場合、重合体に環境応答性を付与できるため、液浸露光技術における露光の際の純水と保護層(L2)との接触時には対水接触角が大きく純水への溶解性を制限することができ、続く現像液との接触時には対水接触角が小さくなり重合体の現像液への親和性を高めることができる点で好ましい。スペーサー基Sが環状の構造を含む場合、後で述べる本願の第二の発明のフォトレジスト層(L3)に用いた場合にドライエッチング耐性を重合体に付与できる点で好ましく、また、撥水性を重合体に付与できる点で好ましい。
かかるスペーサー基Sは、短くなるとその効果が減少し、純水に溶解したり膨潤する傾向があり、長くなると撥水性が大きくなりすぎたり、現像液への溶解性がなくなる傾向があるため、適度な長さをもつことが重要である。つまり、好ましいスペーサー基Sとしては、炭素数2以上40以下のものが撥水性、耐水性、防水性をさらに付与できる点で好ましく、炭素数4以上10以下のものがさらに液浸露光時の保護作用に優れている点で好ましい。
さらにスペーサー基Sは、芳香環構造を含まない環状、分岐状または直鎖状の炭化水素基であることが透明性が良好である点から好ましい。また、スペーサー基Sは環状の炭化水素基であることがドライエッチング耐性向上の観点から好ましい。環状の炭化水素基とは、単環構造または複環構造の脂肪族環構造を有する有機基をいい、複環構造の脂肪族環構造を有するものがさらにドライエッチング耐性が向上する点で好ましい。
単環構造としては、たとえばシクロプロピル骨格、シクロブチル骨格、シクロペンチル骨格、シクロヘキシル骨格、シクロヘプチル骨格、シクロオクチル骨格などが好ましく例示できる。
複環構造としては、たとえば
などが好ましく例示できる。
単量体(m6)は、ラジカル重合性の炭素−炭素不飽和結合を環構造中に有する不飽和環状化合物から選ばれるものであってもよいし、ジエン化合物の環化重合により主鎖に環構造を形成させることができる非共役ジエン化合物から選ばれるものであってもよい。
また単量体(m6)は、その単量体中に親水性官能基Yを有しており、この単量体(m6)を(共)重合することによって、主鎖に単環構造または複環構造の脂肪族環構造単位を有する重合体を得ることができる。
単量体(m6)の与えるポリマー主鎖中の単環または複環構造としては、たとえばシクロプロピル骨格、シクロブチル骨格、シクロペンチル骨格、シクロヘキシル骨格、シクロヘプチル骨格、シクロオクチル骨格、
などが好ましく例示でき、これらの構造単位の水素原子の一部が−S−R基で置換された誘導体の構造単位である。
好ましい単量体(m6)としては、ラジカル重合性の炭素−炭素不飽和結合を有し、ポリマー主鎖に単環または複環構造を形成できる単量体であって、かつスペーサー基Sと親水性官能基Yを有する単量体である。
つまり、親水性官能基Yを有する複環状の脂肪族不飽和炭化水素化合物からなる単量体(m6−1)、親水性官能基Yを有する単環状の脂肪族不飽和炭化水素化合物からなる単量体(m6−2)、または後述する環化重合可能な非共役ジエン化合物であって親水性官能基Yを有する単量体(m6−3)から選ばれるものである。
単量体(m6)の好ましい第1である単量体(m6−1)は、重合体主鎖からスペーサー基Sを介して隔てられた炭素原子に親水性官能基Yが置換した構造を与え得るノルボルネン誘導体であることが単量体(m1)との重合性が高い点で好ましい。さらに単量体(m6−1)はノルボルネン骨格中にフッ素原子を含まない構造のものがドライエッチング耐性の観点から好ましい。
具体的には、単量体(m6−1)が、式:
(式中、Sは炭素数2〜40の2価の炭化水素基または炭素数2〜100のエーテル結合を有する2価の炭化水素基であるスペーサー基;R6は親水性官能基Yまたは炭素数1〜40の有機基に親水性官能基Yが1〜4個結合した1価の有機基;m、oは0または1)であることが好ましい。単量体(m6−1)に含まれる親水性官能基Yが1つの場合には、重合体の現像液溶解性の観点からYはCOOH基であることが好ましい。
さらに具体的には、単量体(m6−1)が式:
(式中、Sは前記スペーサー基;m、oは0または1)であることが好ましい。
親水性官能基Y6は、−OH基、−COOH基または−C(CF3)2OH基であり、スペーサー基Sがあるために、親水性官能基Y6は−COOH基であることが重合体の現像液への溶解性が良い点で好ましい。
具体的には、単量体(m6−1)が式:
(式中、oは0または1;nは2から20の整数)であることが、重合体に適度な環境応答性を付与できる点で好ましい。さらにnは4以上10以下であることが、重合体の必要なガラス転移温度が保たれる点で好ましい。
つぎに単量体(m6)の好ましい第2である親水性官能基Yを有する単環状の脂肪族不飽和炭化水素化合物からなる単量体(m6−2)について述べる。単環状の単量体(m6−2)は環構造中にエーテル結合を含んでいてもよい3員環〜8員環構造の不飽和炭化水素化合物であることが好ましい。また前述と同様、単量体(m6−2)の水素原子の一部またはすべてがフッ素原子で置換された単量体であってもよい。
親水性官能基Yを有する単環状の単量体(m6−2)は、具体的には、
(式中、Sはスペーサー基、R6は前記と同じ)
などの単量体があげられる。
単量体(m6)の好ましい第3は、重合により脂肪族環構造を形成することができ、かつスペーサー基Sと親水性官能基Yを有する非共役のジエン化合物である。非共役ジエン化合物は、主鎖中に環構造の構造単位を有する重合体を効率よく与えることができ、前述と同様、真空紫外領域の透明性も改善できるものである。
非共役ジエン化合物(m6−3)としては、たとえば環化重合し主鎖に単環構造を与える特定のジビニル化合物が好ましくあげられる。
具体例としては、たとえばスペーサー基Sと親水性官能基Yを有する式:
(式中、SおよびR6は前記と同じ;Zは水素原子または炭素数1〜5のエーテル結合を有していてもよい炭化水素基;a、bは0または1)で表されるジアリル化合物があげられる。
このジアリル化合物をラジカル環化重合することにより、
(式中、SおよびR6は前記と同じ;Zは水素原子または炭素数1〜5のエーテル結合を有していてもよい炭化水素基;a、bは0または1)で示される単環状の構造単位を主鎖中に形成することができる。
式(M−6)の含フッ素重合体には、現像液溶解性の改善を目的に(m1)や(m6)と共重合可能な親水性官能基Yを有する単量体(n−2)を共重合させても良い。具体的な単量体(n−2)としては、式(M−1)に例示の単量体から選ばれるのが好ましい。
本発明では、単量体(m1)、(m6)および(n−2)に加え、または単量体(n−2)に換えて、さらに任意の構造単位(N)を与える親水性官能基Yを有しない任意の単量体(n−1)として、ラジカル重合性の単量体を、得られる含フッ素共重合体に別異の特性、たとえば機械的強度や塗工性などを改善する目的で共重合してもよい。
そうした任意の単量体(n−1)としては、式(M−1)に例示の単量体から選ばれるものが好ましい。
本発明における式(M−6)の含フッ素重合体の分子量は、数平均分子量で1000〜100000、好ましくは2000〜50000、より好ましくは2000〜10000であり、重量平均分子量で2000〜200000、好ましくは3000〜50000、より好ましくは3000〜10000である。
本発明の保護層(L2)に用いる含フッ素重合体(A1)の好ましい具体例は、つぎの式(M−3−1)、式(M−3−2)および式(M−4−1)で表される含フッ素重合体があげられる。
式(M−3−1):
−(M3−1)− (M−3−1)
[式中、構造単位M3−1は式(2−1):
CH2=CFCF2−O−Rf1−Y (2−1)
(式中、Rf1は前記式(2)と同じ)で表される単量体由来の構造単位]
で表され、数平均分子量で1000〜200000の含フッ素重合体である。つまり、式(2−1)の単量体から選ばれる1種または2種以上の単量体からなる、含フッ素アリルエーテル単独重合体である。これらは高いフッ素含有率と、高い親水性基含有率を両立できるため、撥水性、耐水性、防水性と現像液溶解性に優れる点で好ましい。
式(M−3−2):
−(M3−2)−(N2−1)− (M−3−2)
[式中、構造単位M3−2は式(3):
(式中、X1、X2、X3、X4、X5、Rf2、R1およびaは前記式(3)と同じ)で表される単量体由来の構造単位;構造単位N2−1は炭素数2または3のエチレン性単量体であって、少なくとも1個のフッ素原子を有する含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位]で表され、構造単位M3−2を30〜70モル%、構造単位N2−1を30〜70モル%含み、数平均分子量が1000〜200000の含フッ素重合体である。
構造単位M3−2は式(3)の単量体の中で、前述の例示のものが同様に好ましく、なかでも
(式中、Rf2、R1は式(3)と同じ)で表される単量体から選ばれる単量体由来の構造単位であることが好ましい。
構造単位N2−1は、上記のなかでもテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンから選ばれる単量体由来の構造単位であることが好ましい。
これらは、特に紫外領域の光に対して透明性が高く、かつ撥水性、耐水性、防水性を付与できる点で好ましい。
式(M−4−1):
−(M4)−(N3−2)− (M−4−1)
[式中、構造単位M4が式(4):
(式中、X6、X7およびX8は前記式(4)と同じ)で表される単量体由来の構造単位;構造単位N3−2は式(n3−2):
CH2=CHO−Rf5 (n3−2)
(式中、Rf5は前記式(n3−2)と同じ)で表される単量体由来の構造単位]で表され、構造単位M4を30〜70モル%、構造単位N3−2を30〜70モル%含み、数平均分子量が1000〜200000の含フッ素重合体である。
構造単位M4は式(4)の単量体の中で、前述の例示のものが同様に好ましく、なかでも特に、
が好ましい。
構造単位N3−2は式(n3−2)の単量体の中で、前述の例示のものが同様に好ましく、なかでも
(式中、Z9はHまたはF;e4は1〜10の整数)で表される単量体由来の構造単位であることが好ましい。
これらは、特に、現像液溶解性に優れたものとなる点で好ましい。
本発明の第一のレジスト積層体は、予め形成されたフォトレジスト層(L1)上に保護層(L2)が、前述の含フッ素重合体(A1)を含むコーティング組成物を塗布することで形成される。
保護層(L2)を形成するコーティング組成物は、前記親水性官能基Yを有する含フッ素重合体(A1)と溶剤(C1)とからなるものである。
溶剤(C1)は、含フッ素重合体(A1)を均一に溶解させるものから選ばれることが好ましく、成膜性の良好な溶剤を適宜選択し、利用される。
具体的には、セロソルブ系溶剤、エステル系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、水またはこれらの混合溶剤が好ましくあげられる。さらに含フッ素重合体(A1)の溶解性、成膜性を高めるために、CH3CCl2F(HCFC−141b)などの含フッ素炭化水素系溶剤やフッ素アルコール類などのフッ素系溶剤を併用してもよい。
コーティング組成物を塗布したとき、予め形成された下層のフォトレジスト被膜(L1)を再溶解させない溶剤から選ばれることが好ましく、その点からも水および/またはアルコール類であることが好ましい。
これらの溶剤(C1)の量は、溶解させる固形分の種類や塗布する基材、目標の膜厚、などによって選択されるが、塗布のし易さという観点から、フォトレジスト組成物の全固形分濃度が0.5〜70重量%、好ましくは1〜50重量%となるように使用するのが好ましい。
溶剤(C1)のうち、水は、水であれば特に制限されないが、蒸留水、イオン交換水、フィルター処理水、各種吸着処理などにより有機不純物や金属イオンなどを除去したものが好ましい。
アルコール類は、フォトレジスト層(L1)を再溶解させないものから選ばれ、下層のフォトレジスト層(L1)の種類に応じて適宜選択されるが、一般に低級アルコール類が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどが好ましい。
なお、これら溶剤(C1)に加えて、フォトレジスト層(L1)を再溶解させない範囲内で、塗布性等の改善を目的として、水に可溶な有機溶媒を併用しても良い。
水に可溶な有機溶媒としては、水に対して1質量%以上溶解するものであればとくに制限されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸エステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、カルビトールアセテートなどといった極性溶媒などが好ましく挙げられる。
水またはアルコール類に加えて添加される水溶性の有機溶媒の添加量は、溶剤(C1)全体量に対し、0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、特に好ましくは1〜10質量%である。
本発明の保護層(L2)を形成するコーティング組成物は、必要に応じて、塩基性の物質、例えばアンモニアまたは有機アミン類から選ばれる少なくとも1種を添加しても良い。この場合、コーティング組成物中でpKaが11以下の酸性OH基は、たとえばアンモニウム塩、アミン塩などの形で親水性誘導体部位になっていることもある。
塩基性物質の添加は、特に含フッ素重合体(A1)中の親水性官能基Yが−COOHまたは−SO3Hであるとき、水溶性・現像液溶解性を向上させる点で、また、現像液溶解速度の再現性を保つために有効である。また、コーティング組成物のpHを最適な範囲に調整するためにも有効である。
有機アミン類は水溶性の有機アミン化合物が好ましく、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンなどの第一級アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミンなどの第二級アミン類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどの第三級アミン類;モノエタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどのヒドロキシルアミン類;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどの第四級アンモニウム化合物などが好ましく挙げられる。
なかでも、現像液溶解速度の向上という面で、モノエタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどのヒドロキシルアミン類であることが好ましく、なかでも特にモノエタノールアミンが好ましい。
またさらに、本発明の保護層(L2)を形成するコーティング組成物には、必要に応じて、消泡剤、吸光剤、保存安定剤、防腐剤、接着助剤、光酸発生剤などを添加しても良い。
本発明の保護層(L2)を形成するコーティング組成物において、親水性基含有含フッ素重合体(A1)の含有率は、重合体の種類、分子量、添加物の種類、量、溶剤の種類などによって異なり、薄層被膜を形成可能となる適切な粘度となるように適宜選択される。例えばコーティング組成物全体に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、特には2〜10質量%である。
コーティング組成物はフォトレジスト層(L1)上に塗布され、保護層(L2)を形成しレジスト積層体の最外層を形成する。
塗布方法としては従来公知の方法が採用され、特に回転塗布法、流延塗布法、ロール塗布法などが好適に例示でき、なかでも回転塗布法(スピンコート法)が好ましい。
保護層の膜厚は親水性基含有含フッ素重合体(A1)の種類、液浸露光条件、水との接触時間などによって異なり、適宜選択されるが、通常1〜500nm、好ましくは10〜300nm、より好ましくは20〜200nm、特には30〜100nmである。
本発明の含フッ素重合体(A1)は、透明性が高いため、保護層を厚く施しても良好な微細パターン形成が可能となる。
本発明のレジスト積層体において、フォトレジスト層(L1)は従来のフォトレジスト組成物を用いて形成される層であり、後述するウエハなどの基板上に形成される。
例えばノボラック樹脂とジアゾナフトキノンを主成分とするポジ型フォトレジスト(g線、i線リソグラフィー)、ポリヒドロキシスチレンをバインダー樹脂に用いた化学増幅型ポジ型またはネガ型レジスト(KrFリソグラフィー)、側鎖に脂環式構造を有するアクリル系ポリマーやポリノルボルネン構造を有する脂環式重合体などを用いた化学増幅型ポジ型フォトレジスト(ArFリソグラフィー)を成膜して得られる層である。
フォトレジスト層(L1)の膜厚は、作製するデバイスの種類や目的、それを得るためのエッチングなどのプロセス条件、レジスト層の種類(透明性やドライエッチング耐性の程度など)によって異なり、適宜選択されるが、通常10〜5000nm、好ましくは50〜1000nm、より好ましくは100〜500nmである。
本発明の保護層(L2)は、純水を用いた液浸露光時、従来のフォトレジスト層を最外層に持つもの、または従来のレジスト用反射防止層を最外層にもつものなどに比べ、撥水性、耐水性、防水性の少なくとも1つについて優れているため、特に側鎖に脂環式構造を有するアクリル系ポリマーやポリノルボルネン構造を有する脂環式重合体などを用いた化学増幅型ポジ型フォトレジスト(ArFリソグラフィー)を用いた液浸フォトリソグラフィープロセスにおいて特に好ましく適用でき、精密なパターン形状やパターンの高寸法精度、さらにはそれらの再現性において効果的に目的を達成するものである。
本発明の第一のレジスト積層体における基板としては、例えばシリコンウェハー;ガラス基板;有機系または無機系反射防止膜が設けられたシリコンウェハーやガラス基板;表面に各種の絶縁膜、電極および配線などが形成された段差を有するシリコンウェハー;マスクブランクス;GaAs、AlGaAs等のIII−V族化合物半導体ウェハーやII−VI族化合物半導体ウェハー;水晶、石英またはリチウムタンタレイト等の圧電体ウェハーなどがあげられる。
また、いわゆる基板の上にて限定されるものではなく、基板上の導電膜あるいは絶縁膜など所定の層の上に形成されてよい。また、かかる基板上に例えばBrewer Science社製のDUV-30、DUV-32、DUV-42、DUV-44などの反射防止膜(下層反射防止層)を施すことも可能であるし、基板を密着性向上剤によって処理しても良い。
つぎに本発明の第一のレジスト積層体の製造法、つまりフォトレジスト層(L1)上に保護層(L2)を設けてレジスト積層体を形成する方法、さらにはそのフォトレジスト積層体を用いて液浸露光により微細パターンを形成する方法の一例を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第一のレジスト積層体の形成方法、および液浸露光微細パターン形成方法の各工程(a)〜(e)を説明するための概略図である。
(a)フォトレジスト層(L1)の形成工程:
まず、図1(a)に示すように基板(L0)にフォトレジスト組成物を回転塗布法等によって10〜5000nm、好ましくは50〜1000nm、より好ましくは100〜500nmの膜厚で塗布する。
ついで150℃以下、好ましくは80〜130℃の所定の温度でプリベーク処理を行って、フォトレジスト層(L1)を形成する。
(b)保護層(L2)の形成工程:
図1(b)に示すように、乾燥後のフォトレジスト層(L1)上に、前述の含フッ素重合体(A1)を含むコーティング組成物を回転塗布法等によって塗布する。ついで、必要に応じてプリベークを行ない、保護層(L2)を形成する。
プリベークは、保護層(L2)中の残留溶剤(C1)を蒸発させ、さらに均質な薄層被膜を形成するために適宜、条件選択される。例えばプリベーク温度は室温〜150℃の範囲内から選ばれ、好ましくは40〜120℃、より好ましくは60〜100℃である。
(c)液浸露光工程:
つぎに図1(c)に示すように、レジスト積層体(L1+L2)に、所望のパターンを有するマスク11および縮小投影レンズ14を介して、矢印13で示すようにエネルギー線を照射し、特定の領域12を選択的に露光することによってパターン描画を行なう。
本発明においては、縮小投影レンズ14とレジスト積層体の間に純水15を満たした状態で露光するものである。
本発明の第一のレジスト積層体は、これら純水で満たした状態において、保護層(L2)の効果により、精密なパターン形状やパターンの高寸法精度、さらにはそれらの再現性において目的を達成するものである。
このときエネルギー線(あるいは化学放射線)としては、例えばg線(436nm波長)、i線(365nm波長)、KrFエキシマレーザー光(248nm波長)、ArFエキシマレーザー光(193nm波長)などが使用可能であり、それぞれのプロセスにおいて解像度を向上させることができる。
なかでもArFエキシマレーザー光(193nm波長)において、液浸露光の高解像化効果がより発揮される。
続いて、70〜160℃、好ましくは90〜140℃で30秒間〜10分間程度の露光後ベーキング(PEB工程)を行うことによって、図1(d)に示すように、フォトレジスト層(L1)の露光領域12に潜像を形成させる。このとき、露光によって生じた酸が触媒として作用して、フォトレジスト層(L1)中の溶解抑止基(保護基)が分解されるため現像液溶解性が向上し、レジスト膜の露光部分が現像液に可溶化する。
(d)現像工程:
ついで露光後ベーキングを行ったフォトレジスト層(L1)に対して現像液で現像処理を行うと、フォトレジスト層(L1)の未露光部分は現像液に対する溶解性が低いため基板上に残存するが、一方、上述したように露光領域12は現像液に溶解する。
一方、上層の保護層(L2)は、露光部、未露光部に関わらず現像液溶解性に優れているため、現像工程で露光部と同時に除去される。
現像液としては2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好ましく用いられる。保護層(L2)表面、フォトレジスト層(L1)表面との濡れ性を調整するため、2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中に界面活性剤やメタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノールなどのアルコール類を添加したものを用いても良い。
ついで、純水、低級アルコールまたはそれらの混合物などで前記現像液を洗い流したあと、基板を乾燥させることにより、図1(e)に示すような所望のレジストパターンを形成することができる。
また、このように形成した微細レジストパターンをマスクとして、その下の所定の層をエッチングして導電膜あるいは絶縁膜の所望の微細パターンを形成し、さらに他の工程を重ねて半導体装置など電子装置を製造することができる。これらの工程はよく知られているところであるから、説明は省略する。
本発明の第二のレジスト積層体は、基材上にフォトレジスト層(L3)を有するレジスト積層体であって、該フォトレジスト層(L3)が該積層体の最表面に形成されており、該フォトレジスト層(L3)が酸で解離してアルカリ可溶性基に変換可能な保護基Y2を有する含フッ素重合体(A2)と光酸発生剤(B2)を含むことを特徴とする露光紫外光が波長193nm以上である液浸リソグラフィー用レジスト積層体である。
本発明者らは、これらフォトレジスト層(L3)を最表面に有するレジスト積層体を、純水を液状媒体として用いる液浸フォトリソグラフィープロセスに用いることで、従来のArFレジストやKrFレジストからなる被膜表面では解決困難であった液浸露光プロセスによるパターンの欠陥、不良を改善できることを見出した。
本発明の第二において、含フッ素重合体(A2)からなるフォトレジスト層(L3)は、それ自体、最表面に使用し純水に接触させても、撥水性、耐水性、防水性の少なくとも1つに優れるため、フォトレジスト層(L3)に含まれる光酸発生剤の拡散や溶出、クェンチャ−の拡散や溶出などを抑制することができると考えられる。
本発明のレジスト積層体は含フッ素重合体(A2)からなるフォトレジスト層(L3)を基材に直接施したものであってもよいし、従来のArFレジストやKrFレジストからなるフォトレジスト層(L3−1)上に、前述と同様保護の役割を有する層として施したものであってもよい。
なかでも最外層を形成するフォトレジスト層(L3)は、露光後の現像特性を著しく低下させない範囲で、撥水性が高い方が好ましい。
例えば、好ましくは対水接触角で70°以上、より好ましくは75°以上、特に好ましくは80°以上であり、上限の好ましくは110°以下、より好ましくは100°以下、特に好ましくは90°以下である。
フォトレジスト層(L3)表面の対水接触角が低すぎると、純水との接触後、水の浸透速度が早くなり、フォトレジスト層(L3)自体の吸水や膨潤が大きくなったり、または、フォトレジスト層(L3)に含まれる光酸発生剤やアミン類などの添加物が溶出し、解像度や微細パターンの形状に悪影響を与えるため好ましくない。また、従来のフォトレジスト層(L3−1)上に本発明の最外層を形成するフォトレジスト層(L3)を積層させる場合、下層のフォトレジスト層(L3−1)へ水が達しやすくなり、上記と同様、解像度や微細パターンの形状に悪影響を与えるため好ましくない。
また、フォトレジスト層(L3)表面の対水接触角が高すぎると、露光後、現像時の照射部分の現像液溶解速度が低下し、解像度や微細パターンの形状に悪影響を与えるため好ましくない。
また、さらに、最表面のフォトレジスト層(L3)は吸水性(吸水速度)の低いものが好ましい。
吸水性(吸水速度)が高すぎると純水との接触後、水の浸透速度が早くなり、フォトレジスト層(L3)への水の浸透速度が速くなるため好ましくない。
フォトレジスト層(L3)の吸水性(吸水速度)が高すぎる、純水との接触後、フォトレジスト層(L3)に含まれる光酸発生剤やアミン類などの添加物が溶出し、解像度や微細パターンの形状に悪影響を与えるため好ましくない。また、従来のフォトレジスト層(L3−1)上に本発明の最外層を形成するフォトレジスト層(L3)を積層させる場合、下層のフォトレジスト層(L3−1)へ水が達しやすくなり、上記と同様、解像度や微細パターンの形状に悪影響を与えるため好ましくない。
例えば、吸水性(吸水速度)は、QCM法により測定でき、吸水による重量増加速度(吸水速度)として算出可能である。
また本発明のレジスト積層体において最外層を形成するフォトレジスト層(L3)は、波長193nm以上の光線に対して透明であることが必要である。
それによって、例えば、193nm波長を用いるArFリソグラフィー、248nm波長を用いるKrFリソグラフィーにおいても純水を用いる液浸露光プロセスが有用に利用できる。
具体的には、193nm以上の波長において、吸光係数で1.0μm-1以下、好ましくは0.8μm-1以下、より好ましくは0.5μm-1以下、最も好ましくは0.3μm-1以下である。
フォトレジスト層(L3)の吸光係数が大きすぎると、レジスト積層体全体の透明性を低下させるため微細パターン形成時の解像度を低下させたり、パターン形状を悪化させたりするため好ましくない。
本発明の第二の積層体のフォトレジスト層(L3)に含まれる含フッ素重合体(A2)は、酸で解離してアルカリ可溶性基に変換可能な保護基Y2を有することが重要であり、つまりポジ型のレジストとして動作可能なものである。したがって、フォトレジスト層(L3)はさらに光酸発生剤(B2)を必須成分として含み、必要に応じて、アミン類やその他レジストとして必要な添加物を含んでなる。
含フッ素重合体(A2)に含まれる保護基Y2は、酸と反応する前はアルカリに不溶または難溶であるが酸の作用により、アルカリに可溶化させることができる官能基である。このアルカリへの溶解性の変化により、ポジ型のレジストのベース重合体として利用できるものになる。
酸またはカチオンの作用により−OH基、−COOH基、−SO3H基などに変化する能力をもち、その結果、含フッ素重合体自体がアルカリに可溶になるものである。
具体的には、
(式中、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R14、R18、R19、R20、R21、R22、R24、R25、R26、R27、R28、R29は同じかまたは異なり、炭素数1〜10の炭化水素基;R13、R15、R16は同じかまたは異なり、Hまたは炭素数1〜10の炭化水素基;R17、R23は同じかまたは異なり、炭素数2〜10の2価の炭化水素基)
が好ましく利用でき、さらに具体的には
などが好ましく例示される。
以上の保護基Y2のなかでも、酸でOH基に変換できる保護基Y3、酸で解離してCOOH基に変化させることができる保護基Y4の少なくとも1種が好ましい。
酸でOH基に変換できる保護基Y3としては、
(式中、R31、R32、R33およびR34は同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜5のアルキル基)で示される基が好ましくあげられる。
より具体的には、
が好ましく例示でき、なかでも酸反応性が良好な点で、
が好ましく、さらに透明性が良好な点で、−OC(CH3)3、−OCH2OCH3、−OCH2OC2H5が好ましい。
酸で−COOH基に変換できる保護基Y4としては、
(式中、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R46、R47、R48は同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜10の炭化水素基;R43、R44は同じかまたは異なり、いずれもHまたは炭素数1〜10の炭化水素基;R45は炭素数2〜10の2価の炭化水素基)などがあげられ、より詳しくは
が好ましくあげられる。
また、酸でOH基に変換できる保護基Y3は、なかでも、酸によりpKa=11以下の酸性を示すOHに変換可能なものが好ましく、さらにはpKa=10以下、特にはpKa=9以下のOH基に変換可能ものが好ましい。
それによって露光後の現像特性が良好となり、高解像度の微細パターンが可能となるため好ましい。
具体的には、OH基に変換可能な保護基Y3が直接結合する炭素原子に、含フッ素アルキル基または含フッ素アルキレン基が結合したものが好ましく、下式:
(式中、Rf3は炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基;R2は水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基から選ばれるもの)で表される部位を有することが好ましい。
R2はなかでも炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基であることが好ましい。
さらには、Rf3、R2は共にパーフルオロアルキル基であることが好ましく、具体的には、
などの部位が好ましい。
またさらには、下式:
(式中、Rf3は炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基;R2は水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のエーテル結合を有していても良い含フッ素アルキル基から選ばれるもの)で表される部位を有するものが、水溶性、現像液溶解性の面でより好ましく、具体的には、
などの部位を有するものが好ましい。
保護基Y2を有する含フッ素重合体(A2)は、フッ素含有率で30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。
フッ素含有率が低くなりすぎると、撥水性が低くなったり、吸水性が大きくなりすぎるため好ましくない。
一方、フッ素含有率の上限は75質量%であり、好ましくは70質量%、より好ましくは65質量%である。
フッ素含有率が高すぎると、被膜の撥水性が高くなり過ぎて、現像液溶解速度を低下させたり、現像液溶解速度の再現性を悪くしたりするため好ましくない。
本発明の第二の積層体で最表面のフォトレジスト層(L3)に用いる保護基Y2を有する含フッ素重合体(A2)は、前述の親水性官能基Y含有含フッ素重合体(A1)で例示した構造と同様のものが好ましく利用でき、つまり含フッ素重合体(A1)の親水性官能基Yの一部またはすべてが前述の保護基Y2の少なくとも1種に置き換えたものであって、その結果ポジ型レジストとしての動作を可能とするものである。
具体的には、前述の親水性官能基Y含有含フッ素重合体(A1)のうちの−OH基含有含フッ素重合体の例示のそれぞれに対し、OH基の一部またはすべてを前記酸でOH基に変換できる保護基Y3に置き換えたものが好ましく例示できる。
また、前述の親水性官能基Y含有含フッ素重合体(A1)のうちの−COOH基含有含フッ素重合体の例示のそれぞれに対し、−COOH基の一部またはすべてを、前記酸で−COOH基に変換できる保護基Y4に置き換えたものが好ましく例示できる。
保護基含有含フッ素重合体(A2)の好ましい第一は、保護基Y2(またはY3、Y4)を有し、重合体主鎖に脂肪族環状構造の構造単位を有する含フッ素重合体である。具体的には前述の式(M−1)、(M−2)の重合体、およびそれらのより具体的な例示の重合体の親水性官能基Yの一部またはすべてを前記例示の保護基Y2(またはY3、Y4)に置き換えたものが好ましい。
これらの保護基含有含フッ素重合体(A2)はドライエッチング耐性と透明性に優れる点で好ましく、さらに最表面のフォトレジスト層(L3)に利用することで、レジスト積層体に撥水性、耐水性、防水性の少なくとも1種の特性を付与できるため、液浸リソグラフィープロセスにおいて有用である。
さらに、保護基含有含フッ素重合体(A2)の好ましい第二は、保護基Y2(またはY3、Y4)を有する含フッ素エチレン性単量体由来の構造単位を有する重合体である。
具体的には前述の式(M−3)、(M−4)の重合体、およびそれらのより具体的な例示の重合体の親水性官能基Yの一部またはすべてを前記例示の保護基Y2(またはY3、Y4)に置き換えたものが好ましい。
これらの保護基含有含フッ素重合体(A2)は透明性に優れる点で好ましく、さらに最表面のフォトレジスト層(L3)に利用することで、レジスト積層体に撥水性、耐水性、防水性の少なくとも1種の特性を付与できるため、液浸リソグラフィープロセスにおいて有用である。
本発明の第二のレジスト積層体において、フォトレジスト層(L3)は前記保護基Y2含有含フッ素重合体(A2)に加えて、光酸発生剤(B)を含んでなる。
光酸発生剤(B)は国際公開公報第01/74916号パンフレットに記載の光酸発生剤(b)と同様のものが同様に好ましく例示でき、本発明でも有効に使用できる。
具体的には、光を照射することによって酸またはカチオンを発生する化合物であって、たとえば有機ハロゲン化合物、スルホン酸エステル、オニウム塩(特に中心元素がヨウ素、イオウ、セレン、テルル、窒素またはリンであるフルオロアルキルオニウム塩など)、ジアゾニウム塩、ジスルホン化合物、スルホンジアジド類など、またはこれらの混合物があげられる。
より好ましい具体例としては、つぎのものがあげられる。
(1)TPS系:
(式中、X-はPF6 -、SbF6 -、CF3SO3 -、C4F9SO3 -など;R1a、R1b、R1cは同じかまたは異なり、CH3O、H、t−Bu、CH3、OHなど)
(2)DPI系:
(式中、X-はCF3SO3 -、C4F9SO3 -、CH3−φ−SO3 -、SbF6 -、
など;R2a、R2bは同じかまたは異なり、H、OH、CH3、CH3O、t−Buなど)
(3)スルホネート系:
(式中、R4aは
など)
通常、フォトレジスト層(L3)は、例えば保護基Y2含有含フッ素重合体(A2)と前記光酸発生剤(B)からなるものを溶剤(C2)に溶解させたレジスト組成物を作成し、塗布することによって形成される。
本発明の第二の積層体でフォトレジスト層(L3)を形成するためのレジスト組成物における光酸発生剤(B)の含有量は、保護基Y2含有含フッ素重合体(A2)100重量部に対して0.1〜30重量部が好ましく、さらには0.2〜20重量部が好ましく、最も好ましくは0.5〜10重量部である。
光酸発生剤(B)の含有量が0.1重量部より少なくなると感度が低くなり、30重量部より多く使用すると光酸発生剤が光を吸収する量が多くなり、光が基板まで充分に届かなくなって解像度が低下しやすくなる。
フォトレジスト層(L3)を形成するためのレジスト組成物には、上記の光酸発生剤(B)から生じた酸に対して塩基として作用できる有機塩基を添加してもよい。有機塩基は国際公開第01/74916号パンフレットに記載のものと同様のものが好ましく例示でき、本発明でも有効に使用できる。
具体的には、含窒素化合物から選ばれる有機アミン化合物であり、たとえばピリジン化合物類、ピリミジン化合物類、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基で置換されたアミン類、アミノフェノール類などがあげられ、特にヒドロキシル基含有アミン類が好ましい。
具体例としては、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリアミルアミン、ピリジンなどが好ましくあげられる。
フォトレジスト層(L3)を形成するためのレジスト組成物における有機塩基の含有量は、光酸発生剤(B)の含有量に対して0.1〜100モル%が好ましく、さらに好ましくは、1〜50モル%である。0.1モル%より少ない場合は解像性が低くなり、100モル%よりも多い場合は低感度になる傾向にある。
その他、レジスト組成物に、必要に応じて国際公開第01/74916号パンフレットに記載の添加物、たとえば、溶解抑制剤、増感剤、染料、接着性改良剤、保水剤などこの分野で慣用されている各種の添加剤を含有させることもできる。
また、本発明の第二の積層体におけるフォトレジスト層(L3)を形成するためのレジスト組成物において、溶剤(C2)は、国際公開公報第01/74916号パンフレットに記載の溶剤(C2)と同様のものが同様に好ましく例示でき、本発明でも有効に使用できる。
具体的には、セロソルブ系溶剤、エステル系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、またはこれらの混合溶剤が好ましくあげられる。さらに保護基含有含フッ素重合体(A2)の溶解性を高めるために、CH3CCl2F(HCFC−141b)などの含フッ素炭化水素系溶剤やフッ素アルコール類などのフッ素系溶剤を併用してもよい。
これらの溶剤(C2)の量は、溶解させる固形分の種類や塗布する基材、目標の膜厚、などによって選択されるが、塗布のし易さという観点から、フォトレジスト組成物の全固形分濃度が0.5〜70重量%、好ましくは1〜50重量%となるように使用するのが好ましい。
本発明の第二の発明のレジスト積層体において、その層構成の好ましい第一は、基板上に、保護基含有含フッ素重合体(A2)を含むフォトレジスト層(L3)を形成されてなるレジスト積層体(X1)である。
これらのレジスト積層体(X1)は、基板上に、本質的にフォトレジスト層(L3)のみを積層したもので、フォトレジスト層(L3)自体、波長193nm以上の紫外線に対して透明性が高く、それらの紫外光を用いるリソグラフィープロセスにおいてポジ型レジストとして働き、良好なパターン形成が可能なものである。さらに液浸リソグラフィーにおいて用いられる水による悪影響を最小限にできる点で好ましい。
レジスト積層体(X1)において、フォトレジスト層(L3)の膜厚は、作製するデバイスの種類や目的、それを得るためのエッチングなどのプロセス条件、レジスト層の種類(透明性やドライエッチング耐性の程度など)によって異なり、適宜選択されるが、通常10〜5000nm、好ましくは50〜1000nm、より好ましくは100〜500nmである。
本発明の第二の発明のレジスト積層体において、その層構成の好ましい第二は、基材上にあらかじめ形成されたフォトレジスト層(L3−1)上に、保護基含有含フッ素重合体(A2)を含むフォトレジスト層(L3)が形成されてなるレジスト積層体(X2)である。
これらのレジスト積層体(X2)は、従来のレジスト材料からなるフォトレジスト層(L3−1)上に、水に対する保護層の役割で保護基含有含フッ素重合体(A2)を含むフォトレジスト層(L3)を積層したもので、フォトレジスト層(L3−1)、(L3)の両層が露光および現像工程によって、同時にパターン形成されるものである。
これらのレジスト積層体におけるフォトレジスト層(L3−1)は、従来のフォトレジスト組成物を用いて形成される層であり、例えばノボラック樹脂とジアゾナフトキノンを主成分とするポジ型フォトレジスト(g線、i線リソグラフィー)、ポリヒドロキシスチレンをバインダー樹脂に用いた化学増幅型ポジ型またはネガ型レジスト(KrFリソグラフィー)、側鎖に脂環式構造を有するアクリル系ポリマーやポリノルボルネン構造を有する脂環式重合体などを用いた化学増幅型ポジ型フォトレジスト(ArFリソグラフィー)を成膜して得られる層である。
なかでも、本発明の液浸リソグラフィーに用いる場合は、ポリヒドロキシスチレンをバインダー樹脂に用いた化学増幅型ポジ型レジスト、側鎖に脂環式構造を有するアクリル系ポリマーやポリノルボルネン構造を有する脂環式重合体などを用いた化学増幅型ポジ型フォトレジスト、特には側鎖に脂環式構造を有するアクリル系ポリマーやポリノルボルネン構造を有する脂環式重合体などを用いた化学増幅型ポジ型フォトレジストであることが好ましい。
レジスト積層体(X2)において、フォトレジスト層(L3)の膜厚は、保護基含有含フッ素重合体(A2)の種類、液浸露光条件、水との接触時間などによって異なり、適宜選択されるが、通常1〜500nm、好ましくは10〜300nm、より好ましくは20〜200nm、特には30〜100nmである。
レジスト積層体(X2)において、フォトレジスト層(L3−1)の膜厚は、作製するデバイスの種類や目的、それを得るためのエッチングなどのプロセス条件、レジスト層の種類(透明性やドライエッチング耐性の程度など)によって異なり、適宜選択されるが、通常10〜5000nm、好ましくは50〜1000nm、より好ましくは100〜500nmである。
このレジスト積層体(X2)は下層のフォトレジスト層(L3−1)が有するリソグラフィー性能(例えば成膜性、感度、解像度、パターン形状)およびドライエッチング耐性などを利用しながら、フォトレジスト層(L3−1)では不十分であった液浸露光時の水に対する問題点を解決できるものである。
なお、最表面の保護基含有含フッ素重合体(A2)からなるフォトレジスト層(L3)自体も同様の形状でパターン形成可能であるため、現像後のパターン表面の形態やラフネスなどを向上できる点で好ましい。
本発明の第二のレジスト積層体(X1)、(X2)における基板としては、例えばシリコンウェハー;ガラス基板;有機系または無機系反射防止膜が設けられたシリコンウェハーやガラス基板;表面に各種の絶縁膜、電極および配線などが形成された段差を有するシリコンウェハー;マスクブランクス;GaAs、AlGaAs等のIII−V族化合物半導体ウェハーやII−VI族化合物半導体ウェハー;水晶、石英またはリチウムタンタレイト等の圧電体ウェハーなどがあげられる。
また、いわゆる基板の上にて限定されるものではなく、基板上の導電膜あるいは絶縁膜など所定の層の上に形成されてよい。また、かかる基板上に例えばBrewer Science社製のDUV-30、DUV-32、DUV-42、DUV-44などの反射防止膜(下層反射防止層)を施すことも可能であるし、基板を密着性向上剤によって処理しても良い。
基材にフォトレジスト層(L3)を形成する方法、フォトレジスト層(L3−1)上にフォトレジスト層(L3)を設けてレジスト積層体を形成する方法、さらにはそのフォトレジスト積層体(X1)、(X2)を用いて液浸露光により微細パターンを形成する方法については、前述のフォトレジスト層(L1)上に保護層(L2)を設けてレジスト積層体を形成する方法、さらにはそのフォトレジスト積層体を用いて液浸露光により微細パターンを形成する方法が同様に採用できる。
たとえばレジスト積層体(X1)については、従来のレジスト層形成法および液浸露光を含む工程を行うことにより微細パターンが形成可能である。
またレジスト積層体(X2)については、前述のフォトレジスト層(L1)の代わりにフォトレジスト層(L3−1)を、保護層(L2)の代わりにフォトレジスト層(L3)を用い、同様にしてレジスト積層体を形成でき、それらレジスト積層体を用い、同様にして、液浸露光を含む工程を行うことにより微細パターンが形成可能である。
つぎに合成例、実験例、実施例などをあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる具体例のみに限定されるものではない。
合成例1(TFEとOH基含有含フッ素ノルボルネンとの共重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージ、攪拌器および温度計を備えた500mlのオートクレーブにOH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1):
の35.0g、HCFC−141bの250ml、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(TCP)の6.5gを入れ、ドライアイス/メタノール液で冷却しながら系内を窒素ガスで充分置換した。ついでバルブよりテトラフルオロエチレン(TFE)の52.0gを仕込み、40℃にて12時間、攪拌して反応させた。反応の進行と共にゲージ圧は反応前の0.96MPaG(9.7kgf/cm2G)から0.91MPaG(9.2kgf/cm2G)まで低下した。
未反応モノマーを放出したのち、重合溶液を取り出し濃縮後ヘキサンで再沈殿させ、共重合体を分離した。恒量になるまで真空乾燥を行い、共重合体6.0gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、TFE/前記OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)=50/50モル%であった。
GPC分析による数平均分子量は5500であった。
なお、物性の評価に使用した装置および測定条件は以下のとおりである。
(1)NMR
NMR測定装置:BRUKER社製
1H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
(2)数平均(重量平均)分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、東ソー(株)製のGPC HLC−8020を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF-801を1本、GPC KF-802を1本、GPC KF-806Mを2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を流速1ml/分で流して測定したデータより算出する。
合成例2(TFEとOH基含有含フッ素ノルボルネンとの共重合体の合成)
合成例1においてOH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)に代えて、OH基含有ノルボルネン(NB−2):
の32.5gを用いた以外は合成例1と同様にして重合反応、ポリマーの単離、精製を行い、共重合体4.5gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、TFE/−OH基含有ノルボルネン(NB−2)=50/50モル%であった。
GPC分析による数平均分子量は3800であった。
合成例3(TFEとOH基含有含フッ素ノルボルネンとの共重合体の合成)
合成例1において、OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)に代えてOH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−3):
を40.0g用いた以外は合成例1と同様にして反応を行い、同様にしてポリマーを分離精製し、共重合体5.5gを得た。
この共重合体の組成比は1H−NMR、19F−NMR分析の結果より、TFE/OH基含有含フッ素ノルボルネン(NB−3)=50/50モル%であった。
GPCによる数平均分子量は3500であった。
合成例4(TFEと−COOC(CH3)3基含有含フッ素ノルボルネンとの共重合体の合成)
300mLのオートクレーブに、−COOC(CH3)3基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NBC−1P):
の15.9g、HCFC−141bの140ml、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(TCP)の1.0gを入れ、ドライアイス/メタノール液で冷却しながら系内を窒素ガスで充分置換した。ついでバルブよりテトラフルオロエチレン(TFE)30.0gを仕込み、40℃にて12時間、振とうして反応させた。反応の進行と共にゲージ圧は反応前の1.00MPaG(10.2kgf/cm2G)から0.94MPaG(9.6kgf/cm2G)まで低下した。
未反応モノマーを放出したのち、重合溶液を取り出しメタノールで再沈殿させ、共重合体を分離した。恒量になるまで真空乾燥を行い、共重合体8.5gを得た。
この共重合体の組成比は、19F−NMR分析の結果より、TFE/−COOC(CH3)3基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NBC−1P)=50/50モル%であった。
GPC分析による数平均分子量は4800であった。
合成例5(ノルボルネンとTFEとtert−ブチル−αフルオロアクリレートとの共重合体の合成)
300mlのオートクレーブに2−ノルボルネンの10.5g、tert−ブチル−αフルオロアクリレートの9.8g、HCFC−141bの140ml、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(TCP)の0.5gを入れ、ドライアイス/メタノール液で冷却しながら系内を窒素ガスで充分置換した。ついでバルブよりテトラフルオロエチレン(TFE)36.0gを仕込み、40℃にて12時間、振とうして反応させた。反応の進行と共にゲージ圧は反応前の1.06MPaG(10.8kgf/cm2G)から0.88MPaG(9.0kgf/cm2G)まで低下した。
未反応モノマーを放出したのち、重合溶液を取り出しメタノールで再沈殿させ、共重合体を分離した。恒量になるまで真空乾燥を行い、共重合体20.9gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、TFE/2−ノルボルネン/tert−ブチル−αフルオロアクリレート=31/30/39モル%であった。
GPC分析による数平均分子量は9800であった。
合成例6(脱保護反応によるTFE、−COOH基含有含フッ素ノルボルネンおよび−COOC(CH3)3基含有含フッ素ノルボルネンとの共重合体の合成)
100mlのナス型フラスコに合成例4で得た保護基含有含フッ素重合体の5gを塩化メチレン80gに溶解させ、トリフルオロ酢酸の4gを加え、室温にて12時間攪拌した。反応終了後、過剰のトリフルオロ酢酸と塩化メチレンを減圧留去した。残った固体成分を蒸留水で洗った後、テトラヒドロフランに溶かしヘキサンにて再沈殿および乾燥し、共重合体を単離した。
この共重合体の組成比は、1H−NMR分析、19F−NMR分析により、TFE/−COOH基含有含フッ素ノルボルネン/−COOC(CH3)3基含有含フッ素ノルボルネン=50/5/45モル%であった。
合成例7(脱保護反応による、TFE、−COOH基含有含フッ素ノルボルネンおよび−COOC(CH3)3基含有含フッ素ノルボルネンとの共重合体の合成)
合成例6においてトリフルオロ酢酸を16g用いた以外は合成例6と同様にして、合成例4で得た保護基含有含フッ素重合体の脱保護反応および重合体の単離を行った。
この共重合体の組成比は、1H−NMR分析、19F−NMR分析により、TFE/−COOH基含有含フッ素ノルボルネン/−COOC(CH3)3基含有含フッ素ノルボルネン=50/37.5/12.5モル%であった。
合成例8(脱保護反応による2−ノルボルネン、TFE、tert−ブチル−αフルオロアクリレートおよびαフルオロアクリル酸との共重合体の合成)
100mlのナス型フラスコに合成例5で得た保護基含有含フッ素重合体の5gを塩化メチレン80gに溶解させ、トリフルオロ酢酸の4gを加え、室温にて12時間攪拌した。反応終了後、過剰のトリフルオロ酢酸と塩化メチレンを減圧留去した。残った固体成分を蒸留水で洗った後、テトラヒドロフランに溶かしヘキサンにて再沈殿および乾燥し、共重合体を単離した。
この共重合体の組成比は、1H−NMR分析、19F−NMR分析により、TFE/2−ノルボルネン/αフルオロアクリル酸/tert−ブチル−αフルオロアクリレート=31/30/13/26モル%であった。
合成例9(脱保護反応による2−ノルボルネン、TFE、tert−ブチル−αフルオロアクリレートおよびαフルオロアクリル酸との共重合体の合成)
合成例8においてトリフルオロ酢酸を16g用いた以外は合成例6と同様にして、合成例4で得た保護基含有含フッ素重合体の脱保護反応および重合体の単離を行った。
この共重合体の組成比は、1H−NMR分析、19F−NMR分析により、TFE/2−ノルボルネン/αフルオロアクリル酸/tert−ブチル−αフルオロアクリレート=31/30/33/6モル%であった。
合成例10(TFEと−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)と−OCH2OC2H5基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1P)との共重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージ、攪拌器および温度計を備えた500mlのオートクレーブに−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)の24.5gと−OCH2OC2H5基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1P):
の7.4g、HCFC−141bの250ml、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(TCP)の6.5gを入れ、系内を窒素ガスで充分置換した。ついでバルブよりTFE52.0gを仕込み、40℃にて12時間撹拌して反応させた。
未反応モノマーを放出したのち、重合溶液を取り出し濃縮後ヘキサンで再沈殿させ、共重合体を分離した。恒量になるまで真空乾燥を行い、共重合体7.2gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、TFE/−OH基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1)/−OCH2OC2H5基含有含フッ素ノルボルネン誘導体(NB−1P)=50/40/10モル%であった。
GPC分析による数平均分子量は3200であった。
合成例11(親水性官能基Yが−COOHである含フッ素重合体の合成)
攪拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四つ口フラスコに、パーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸:
を21.1gと
の8.0重量%パーフルオロへキサン溶液を21.6g入れ、充分に窒素置換を行ったのち、窒素雰囲気下20℃で24時間重合反応を行ったところ、高粘度の固体が生成した。
得られた固体をアセトンに溶解させたものをn−へキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体17.6gを得た。
この重合体を19F−NMR分析、1H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、上記含COOH基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなる含フッ素重合体であった。
GPC分析による数平均分子量は22,000であった。
合成例12(親水性官能基YがOH基である含フッ素重合体の合成)
合成例11においてパーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸)に代えて、(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネノール):
の20.4gを用いた以外は合成例11と同様にして、重合反応および重合体の単離を行い、無色透明な重合体17.1gを得た。
19F−NMR、1H−NMR分析により分析したところ、上記OH基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなる含フッ素重合体であった。
合成例13(親水性官能基YがCOOH基である含フッ素重合体の合成)
攪拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四つ口フラスコに、1,1,2,4,4,8−ヘキサハイドロ−3−オキサ−1−オクテン:
CH2=CHOCH2(CF2CF2)2−H
を5.0gと酢酸エチルを50g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.03g入れ、系内を窒素置換したのち、窒素気流下に2−(トリフルオロメチル)アクリル酸:
を5g仕込み、60℃にて攪拌させながら反応を行った。
得られた反応溶液を取り出し、ついでヘキサン溶剤で再沈殿させることにより固形分を分離した。この固形分を恒量になるまで真空乾燥し、白色粉末状の共重合体9.1gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−NMRおよび19F−NMRにより分析したところ、パーフルオロ−(1,1,2,4,4,8−ヘキサハイドロ−3−オキサ−1−オクテン)/2−(トリフルオロメチル)アクリル酸=50/50モル%であった。
またGPC分析による数平均分子量は87,000であった。
合成例14(親水性官能基YがOH基である含フッ素重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージ、温度計を備えた100ml内容量のステンレススチ−ル製オートクレーブに、1,1−ビストリフルオロメチル−3−ブテン−1−オール:
を5.2gとCH3CCl2F(HCFC−141b)を30ml、n−ヘプタフルオロブチリルパーオキサイド(HBP)の10モル%パーフルオロヘキサン溶液を10g入れ、ドライアイス/メタノール溶液で冷却しながら系内を窒素ガスで充分置換した。ついでバルブからテトラフルオロエチレン(TFE)を10g仕込み、30℃にて振とうさせながら反応を行った。反応中は、系内のゲージ圧に変化はなく(反応前9.0MPaG)、20時間後も9.0MPaGであった。
反応開始20時間後に未反応モノマーを放出し、析出した固形物を取り出し、アセトンに溶解させ、ついでヘキサン溶剤で再沈殿させることにより固形分を分離精製した。この固形分を恒量になるまで真空乾燥し、共重合体3.0gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−NMRおよび19F−NMRにより分析したところ、1,1−ビストリフルオロメチル−3−ブテン−1−オール/テトラフルオロエチレン=50/50モル%であった。
GPC分析による数平均分子量は4,900であった。
合成例15(保護基Y2を有する含フッ素重合体の合成)
撹拌装置、温度計、滴下ロートを備えた1リットルの四つ口フラスコに合成例1と同様にして得たOH基含有含フッ素重合体(NB−1)60gを投入し、反応系中をN2置換した後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)120mlを加え完全に溶解させた。
ついで、クロロメチル−2−メチルノルボルニルエーテル:
の55.5g(318mmol)を加え、内温20℃以下となるようにトリエチルアミンの120ml(862mmol)を滴下し、滴下終了後、室温で3時間攪拌を行った。
反応終了後、攪拌しながら反応混合物に純水600mlを加えたところ固形物が析出したため、静置し、上層の溶液層をデカンテーションにて除去し、その上からさらに純水600mlを加え、同じ操作をもう1回繰返し、析出した固体を濾取した。
この固体を酢酸エチル300mlに溶解し、純水150mlにて1回洗浄した。酢酸エチル層に酢酸10mlを加え、さらに純水150mlでpHが5以上になるまで洗浄した。
洗浄した酢酸エチル層にジオキサン50mlを加え、減圧下、温浴上で溶媒を留去し、固体を得た。この固体をHCFC−141bに溶解させ、1.5リットルのn−ヘキサン中で再沈澱を行い析出した固体を濾取し、真空乾燥することにより保護基Y2含有含フッ素重合体34.4gを得た。
1H−NMR、19F−NMR分析の結果より、保護基含有含フッ素重合体は式(NB−1P−1):
で表される保護基含有ノルボルネン誘導体由来の構造単位(NB−1P−1)を有する含フッ素重合体であった。また、重合体の組成比率は19F−NMR分析より、TFE/OH基含有ノルボルネン誘導体(NB−1)/保護基含有ノルボルネン誘導体(NB−1P−1)が50/31.5/18.5モル%であった。
GPC分析による重量平均分子量は3200であった。
実験例1(含フッ素重合体の溶剤溶解性の確認)
合成例1〜14でそれぞれ得た親水性官能基を有する含フッ素重合体を用いて、表1に示す各種溶剤への溶解性を確認した。
表1に示す各溶剤に各含フッ素重合体を重合体濃度が5質量%となるように混合し、攪拌を行いながら室温で24時間放置し、溶液の外観を観測した。評価は、つぎの基準で行った。結果を表1に示す。
○:完全に溶解し、透明で均一な溶液となった。
×:一部または全く不溶で、不透明な溶液であった。
実験例2(親水性官能基Y含有単量体のpKaの測定)
合成例1〜3、7、9および11〜14でそれぞれ用いた親水性官能基含有単量体について、以下の方法で親水性基のpKaを測定算出した。
(pKaの測定算出方法)
1,1−ビストリフルオロメチル−3−ブテン−1−オール(合成例14で使用):
を例にして測定算出法を記載する。
水/アセトン=10/15ml溶液にCH2=CHCH2C(CF3)2OHを0.7865g入れ、室温下攪拌した。均一溶液であることを確認した後、0.2mol/LのNaOH溶液で滴定を行った。滴定曲線は、0.15mlずつNaOH溶液を滴下し、そのときのpHを記録して得た。滴定曲線の変曲点(滴定曲線の微分値=dpH/dmlの最大値)から等量点を決定した。この場合、等量点は14.5mlであった。この半分の値7.25mlでのpHを滴定曲線から読み取ると、10.58であった。あらかじめブランクで測定した水/アセトン溶液と水溶液の滴定曲線から、7.25ml滴下時の液間電位差に由来するpH差は1.29であった。よって、10.98‐1.29=9.69から、このCH2=CHCH2C(CF3)2OHのpKaを9.69と決定した。
同様の操作で、1.0865gのCH2=CHCH2C(CF3)2OHを滴定した場合、等量点は20.15ml、1/2等量点は10.08mlとなり、1/2等量点でのpHは10.78となった。10.08mlでの両溶液間のpH差は1.14となり、10.78−1.14=9.64から、CH2=CHCH2C(CF3)2OHのpKaを9.64と決定した。
滴定溶液を約0.05mol/NaOH溶液に代えて同様の操作を行ったとき、0.115gのCH2=CHCH2C(CF3)2OHの等量点は8.00mlとなり、1/2等量点は4.00ml、このときのpHは10.92となった。4.00mlでの両溶液間のpH差は1.38となり、10.92−1.38=9.54から、CH2=CHCH2C(CF3)2OHのpKaを9.54と決定した。
この3回の実験から、CH2=CHCH2C(CF3)2OHのpKaを9.6とした。
表2に示す各種OH基含有含フッ素エチレン性単量体について上記と同様な方法でpKaを測定した。結果を表2に示す。
実験例3(塗布用組成物の調製)
(1)合成例1〜3、7、9、および11〜14で得た各種親水性官能基Y含有含フッ素重合体をメタノールに5重量%濃度となるように溶解した後、孔径0.2μmサイズのフィルターで濾過して均一な塗布用組成物を得た。
(2)合成例4〜6、8および10および15で得た各種保護基Y2含有含フッ素重合体をPGMEAに5重量%濃度となるように溶解した後、孔径0.2μmサイズのフィルターで濾過して均一な塗布用組成物を得た。
実験例4(193nmでの透明性の測定)
(1)コーティング
MgF2の基板上に、実験例3で得た各塗布用組成物をスピンコーターを用い乾燥後の膜厚が100nmとなるように調整しながら塗布した。塗布後100℃で5分間焼成し、透明な被膜を作製した。
(2)真空紫外領域の透明性測定
(2−1)測定装置
・瀬谷−波岡型分光装置(高エネルギー研究機構:BL−7B)
・スリット 7/8−7/8
・検出器 PMT
・グレーティング(GII:ブレーズ波長160nm、1200本/mm)
光学系は、H.NambaらのRev.Sic.Instrum.,60(7)、1917(1989)を参照。
(2−2)透過スペクトルの測定
各塗布用組成物から(1)の方法で得たMgF2基板上に形成した被膜の透過スペクトルを上記の装置を用いて測定した。
193nmにおける透過率と被膜の膜厚から分子吸光係数を算出した。結果を表3に示す。
実験例5(現像液溶解性の測定)
つぎの水晶振動子法(QCM法)により現像液溶解速度(nm/sec)を測定した。結果を表3に示す。
(1)試料の作製:
金で被覆された直径24mmの水晶振動子板に実験例3で調製した塗布用組成物のそれぞれを塗布し乾燥後、約100nm厚の被膜を作製した。
(2)現像液溶解速度の測定:
膜厚は水晶振動子板の振動数から換算して算出し測定する。
上記で作製した含フッ素重合体を塗布した水晶振動子板を標準現像液である2.38重量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)水溶液に浸し、浸漬させた時点から時間に対する被膜の膜厚変化を振動数の変化により測定し、単位時間あたりの溶解速度(nm/sec)を算出した(参考文献:Advances in Resist Technology and Proceedings of SPIE Vol. 4690, 904(2002))。
実施例1(レジスト積層体の形成)
(1)フォトレジスト層(L1)の形成
ArFリソグラフィー用フォトレジストTArF−P6071(東京応化工業(株)製)を、スピンコーターにて、8インチのシリコン基板上に回転数を変えながら200〜300nmの膜厚に調整して塗布した後、130℃で60秒間プリベークしてフォトレジスト層(L1)を形成した。
(2)保護層(L2)の形成
上記(1)で形成したフォトレジスト層(L1)上に、実験例3の(1)で得た親水性基含有含フッ素重合体(合成例1〜3、7、9および11〜14)を含む塗布用組成物を、スピンコーターで、初めに300rpmで3秒間、ついで4000rpmで20秒間ウェハーを回転させ膜厚約100nmに調整しながら保護層(L2)を形成し、フォトレジスト積層体を形成した。
(3)対水接触角の測定
上記(2)で得たレジスト積層体のうち合成例1〜3の重合体を含む塗布用組成物を用いて作製した積層体の表面について、室温にて、接触角計を用いて、純水に対する接触角を測定した。結果を表4に示す。
(4)現像液溶解性の確認
さらに、上記(2)で得たレジスト積層体のすべてについて、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド2.38重量%の現像液で温度23℃、時間60秒間で静止パドル現像を行った後純水リンスを行った。
その結果、いずれの塗布用組成物を使用した場合にも保護層(L2)が選択的に除去されたことが確認できた。
実施例2(レジスト積層体の作製)
(1)レジスト組成物の調製
合成例6、8、10および15で得た保護基含有含フッ素重合体(A2)のそれぞれについて含フッ素共重合体100重量部に光酸発生剤としてのトリフェニルスルホニウム・トリフルオロメチルスルホネートの2重量部を添加し、2−ヘプタノン(MAK)に溶解させ、ポリマー濃度10重量%のレジスト組成物を調製した。
(2)フォトレジスト層(L3−1)の形成
ArFリソグラフィー用フォトレジストTArF−P6071(東京応化工業(株)製)を、スピンコーターにて、8インチのシリコン基板上に回転数を変えながら200〜300nmの膜厚に調整して塗布した後、130℃で60秒間プリベークしてフォトレジスト層(L3−1)を形成した。
(3)フォトレジスト層(L3)の形成
上記(2)で形成したフォトレジスト層(L3−1)上に、上記(1)で得た保護基含有含フッ素重合体(合成例6、8、10および15)を含むレジスト組成物を、スピンコーターで、初めに300rpmで3秒間、ついで4000rpmで20秒間ウェハーを回転させ膜厚約100nmに調整しながらフォトレジスト層(L3)を形成し、フォトレジスト積層体を形成した。
(4)対水接触角の測定
上記(3)で得たレジスト積層体のうち合成例10の重合体を含む塗布用組成物を用いて作製した積層体の表面について、室温にて、接触角計を用いて、純水に対する接触角を測定した。結果を表4に示す。
実験例6(純水に対する溶解速度の測定)
合成例1〜3、合成例10および合成例15で合成した含フッ素重合体について、つぎの水晶振動子法(QCM法)により純水に対する溶解速度(nm/sec)を測定した。結果を表5に示す。
(1)試料の作製:
金で被覆された直径24mmの水晶振動子板に実験例3で調製した塗布用組成物(合成例1〜3、合成例10および合成例15の含フッ素重合体を用いたもの)のそれぞれを塗布し乾燥後、約100nm厚の被膜を作製した。
(2)純水に対する溶解速度の測定:
膜厚は水晶振動子板の振動数から換算して算出し測定する。上記で作製した含フッ素重合体を塗布した水晶振動子板を純水に約5分間浸し、浸漬させた時点から時間に対する被膜の膜厚変化を振動数の変化により測定し、単位時間(分)あたりの溶解速度(nm/min)を算出した。
合成例16(親水性官能基YがCOOH基とOH基である含フッ素重合体の合成)
合成例11においてパーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸)21.1gに代えて、パーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸)19.0gとパーフルオロ−(1,1,6,6−テトラハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキセノール):
1.3gとを用いた以外は合成例11と同様にして、重合反応および重合体の単離を行い、無色透明な重合体16.1gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、上記COOH基含有含フッ素アリルエーテル/上記OH基含有含フッ素アリルエーテル=90/10モル%からなる含フッ素重合体であった。
GPC分析による数平均分子量は20,000であった。
合成例17(親水性官能基YがCOOH基とOH基である含フッ素重合体の合成)
合成例11においてパーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸)に代えて、パーフルオロ−(6,6−ジハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキセン酸):
9.0gと合成例12で用いたパーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネノール)6.2gとを用いた以外は合成例11と同様にして、重合反応および重合体の単離を行い、無色透明な重合体12.1gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、上記COOH基含有含フッ素アリルエーテル/上記OH基含有含フッ素アリルエーテル=70/30モル%からなる含フッ素重合体であった。
GPC分析による数平均分子量は21,000であった。
合成例18(親水性官能基YがCOOH基とOH基である含フッ素重合体の合成)
合成例11においてパーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸)に代えて、合成例17で用いたパーフルオロ−(6,6−ジハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキセン酸)6.4gと合成例16で用いたパーフルオロ−(1,1,6,6−テトラハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキセノール)6.1gとを用いた以外は合成例11と同様にして、重合反応および重合体の単離を行い、無色透明な重合体10.5gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、上記COOH基含有含フッ素アリルエーテル/上記OH基含有含フッ素アリルエーテル=50/30モル%からなる含フッ素重合体であった。
GPC分析による数平均分子量は22,000であった。
実験例7(塗布用組成物の調製)
合成例16〜18でそれぞれ得た各種親水性官能基Y含有含フッ素重合体をメチルアミルケトン(MAK)に5重量%濃度となるように溶解した後、孔径0.2μmサイズのフィルターで濾過して均一な塗布用組成物を得た。
実験例8(193nmでの透明性の測定)
実験例4と同様にして実験例7で得た各塗布用組成物の193nmでの透明性を測定した。結果を表6に示す。
実験例9(現像液溶解性の測定)
実験例7で得た塗布用組成物を用いた以外は実験例5と同様にして、水晶振動子法(QCM法)により現像液溶解速度(nm/sec)を測定した。結果を表6に示す。
実験例10(純水に対する溶解速度の測定)
実験例7で得た塗布用組成物を用いた以外は実験例6と同様にして、水晶振動子法(QCM法)により純水に対する溶解速度(nm/min)を測定した。
実施例3(レジスト積層体の形成)
保護層(L2)に実験例7で調製した各塗布用組成物を用いた以外は実施例1と同様にレジスト積層体を形成し、それぞれの耐水接触角を測定した。結果を表7に示す。
合成例19(TFEとウンデシレン酸とシクロヘキシルビニルエーテルとの共重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージ、攪拌器および温度計を備えた500mlのオートクレーブを窒素―真空の順で数回置換した後、オートクレーブ内(系内)を真空にした。ウンデシレン酸:CH2=CH(CH2)8COOH を62.5g、シクロヘキシルビニルエーテル:CH2=CHOC6H11 を2.4g、アセトンの250gの溶液を系内に仕込んだ。ついでバルブよりテトラフルオロエチレン(TFE)の35.0gを仕込んだ。攪拌しながら系内を60℃まで昇温した後、t−ブチルパーオキシピバレート(パーブチルPV、日本油脂製)の1.9gを系内に圧入し、60℃にて6時間、攪拌して反応させた。
未反応モノマーを放出したのち、重合溶液を取り出し濃縮後ヘキサンで2回再沈殿させ、共重合体を分離した。恒量になるまで真空乾燥を行い、共重合体46.0gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、TFE/ウンデシレン酸/シクロヘキシルビニルエーテル=50/47/3モル%であった。
GPC分析による数平均分子量は4800であった。
合成例20(TFEとウンデシレン酸とヒドロキシブチルビニルエーテルとの共重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージ、攪拌器および温度計を備えた500mlのオートクレーブを窒素―真空の順で数回置換した後、オートクレーブ内(系内)を真空にした。ウンデシレン酸:CH2=CH(CH2)8COOH を62.5g、ヒドロキシブチルビニルエーテル:CH2=CHO(CH2)4OH を2.1g、アセトンの250gの溶液を系内に仕込んだ。ついでバルブよりテトラフルオロエチレン(TFE)の35.0gを仕込んだ。攪拌しながら系内を60℃まで昇温した後、t−ブチルパーオキシピバレート(パーブチルPV、日本油脂製)の1.9gを系内に圧入し、60℃にて6時間、攪拌して反応させた。
未反応モノマーを放出したのち、重合溶液を取り出し濃縮後ヘキサンで2回再沈殿させ、共重合体を分離した。恒量になるまで真空乾燥を行い、共重合体44.0gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、TFE/ウンデシレン酸/ヒドロキシブチルビニルエーテル=50/46/4モル%であった。
GPC分析による数平均分子量は5500であった。
合成例21(TFEとウンデシレン酸とパーフルオロプロピルビニルエーテルとの共重合体の合成)
バルブ、圧力ゲージ、攪拌器および温度計を備えた500mlのオートクレーブを窒素―真空の順で数回置換した後、オートクレーブ内(系内)を真空にした。ウンデシレン酸:CH2=CH(CH2)8COOH を62.5g、パーフルオロプロピルビニルエーテル:CF2=CFOCF2CF2CF3 を2.1g、アセトンの250gの溶液を系内に仕込んだ後、ついでバルブよりテトラフルオロエチレン(TFE)の35.0gを仕込んだ。攪拌しながら系内を60℃まで昇温した後、t−ブチルパーオキシピバレート(パーブチルPV、日本油脂製)の1.9gを系内に圧入し、60℃にて6時間、攪拌して反応させた。
未反応モノマーを放出したのち、重合溶液を取り出し濃縮後ヘキサンで2回再沈殿させ、共重合体を分離した。恒量になるまで真空乾燥を行い、共重合体44.0gを得た。
この共重合体の組成比は、1H−NMRおよび19F−NMR分析の結果より、TFE/ウンデシレン酸/パーフルオロプロピルビニルエーテル=50/46/4モル%であった。
GPC分析による数平均分子量は4900であった。
合成例22(親水性官能基Yが−OHである含フッ素重合体の合成)
温度計、冷却管および滴下ロートを備えた1L3口フラスコにパーフルオロ−(6,6−ジハイドロ−2−トリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキセン酸エチル):
314gを仕込み、窒素ガス雰囲気下氷浴中で冷却した。内温を5〜15℃に保ちながら、143gのCF3Si(CH3)3を2時間かけて滴下した。室温に戻し一晩攪拌した。反応液を氷浴に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を塩酸、飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過し、ろ液を濃縮し、再び温度計、冷却管および滴下ロートを備えた1L3口フラスコにこれを仕込み、窒素ガス雰囲気下氷浴中で冷却した。内温を5〜15℃に保ちながら、143gのCF3Si(CH3)3を2時間かけて滴下した。室温に戻し一晩攪拌した。反応液を氷浴に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を塩酸、飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過した後、蒸留により精製し、パーフルオロ−(6,6−ジハイドロ−1,1,2−トリストリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキサノール):
を240g得た。
次に、合成例11においてパーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸)に代えて、パーフルオロ−(6,6−ジハイドロ−1,1,2−トリストリフルオロメチル−3−オキサ−5−ヘキサノール)を18.1g用いた以外は合成例11と同様にして、重合反応および重合体の単離を行い、無色透明な重合体14.1gを得た。
この重合体を19F−NMR分析、1H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、上記OH基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなる含フッ素重合体であった。
GPC分析による数平均分子量は20,000であった。
合成例23(親水性官能基Yが−OHである含フッ素重合体の合成)
温度計、冷却管および滴下ロートを備えた1L3口フラスコにαフルオロアクリル酸フルオライド102gを仕込み、窒素ガス雰囲気下氷浴中で冷却した。内温を5〜15℃に保ちながら、CF3Si(CH3)3386gを2時間かけて滴下した。室温に戻し一晩攪拌した。反応液を氷浴に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。
有機層を塩酸、飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した。蒸留により精製し、1,1−ビストリフルオロメチル−2−フロロ−2−プロペン−1−オール:
CH2=CFC(CF3)2OH
10.2gを得た。
次に、合成例11においてパーフルオロ−(9,9−ジハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−8−ノネン酸)に代えて、1,1−ビストリフルオロメチル−2−フロロ−2−プロペン−1−オール10.2gを用いた以外は合成例11と同様にして、重合反応および重合体の単離を行い、無色透明な重合体6.5gを得た。
この重合体を19F−NMR分析、1H−NMR分析およびIR分析により分析したところ、上記OH基含有含フッ素アリルエーテルの構造単位のみからなる含フッ素重合体であった。
GPC分析による数平均分子量は24,000であった。
実験例11(塗布用組成物の調製)
合成例19〜23で得た各種親水性官能基Y1含有含フッ素重合体をメチルアミルケトン(MAK)に5重量%濃度となるように溶解した後、孔径0.2μmサイズのフィルターで濾過して均一な塗布用組成物を得た。
実験例12(193nmでの透明性の測定)
実験例4と同様にして実験例11で得た塗布用組成物の193nmでの透明性を測定した。結果を表8に示す。
実験例13(現像液溶解性の測定)
実験例11で得た塗布用組成物を用いた以外は実験例5と同様にして、水晶振動子法(QCM法)により現像液溶解速度(nm/sec)を測定した。結果を表8に示す。
実験例14(純水に対する溶解速度の測定)
実験例11で得た塗布用組成物を用いた以外は実験例6と同様にして、水晶振動子法(QCM法)により純水に対する溶解速度(nm/min)を測定した。結果を表8に示す。
実施例4(レジスト積層体の形成)
保護層(L2)に実験例11で調製した塗布用組成物を用いた以外は実施例1と同様にレジスト積層体を形成し、それぞれの耐水接触角を0秒後〜10秒後、60秒後〜70秒後に測定した。結果を表9に示す。