JP4507036B2 - スチレン系ブロック共重合体用改質剤ならびに該改質剤を含有してなる粘着剤組成物およびシーリング材組成物。 - Google Patents

スチレン系ブロック共重合体用改質剤ならびに該改質剤を含有してなる粘着剤組成物およびシーリング材組成物。 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチレン系ブロック共重合体用改質剤ならびに該改質剤を添加した粘着剤組成物およびシーリング材組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等のスチレン系ブロック共重合体(ベースポリマー)に、タック、濡れ、柔軟性等を与えるための粘着付与剤を加え、さらに可塑剤、その他添加剤を加えた組成物が紙おむつ、生理用ナプキンなどの衛生材料用途の粘着剤として、また、シーリング材等として使用されている。
【0003】
これらの粘着剤やシーリング材等の組成物は一般的には、接着性、タック、保持力等のバランスが良く、総合的な性能としては良好なものである。しかしながら、特に耐熱クリープ力、保持力が必要とされる用途に関しては性能的に不十分であった。具体的には加熱時における、粘・接着剤のはがれ、ずり落ち等が生じる問題、また、シーリング材として使用した場合にも温水との接触、太陽光による加熱等が原因となり、シール性や組立物の強度が低下するという問題点があった。
【0004】
そのため、スチレン系ブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤、シーリング材等の耐熱クリープ力を向上させる方法として、粘着剤、シーリング材等の組成物に軟化点の高い芳香族系オリゴマーを添加するといった方法が知られている。具体的には軟化点100℃程度以上のC9系石油樹脂、C9系石油樹脂の低水素化物、α−メチルスチレンオリゴマー、スチレンオリゴマー等のピュアモノマー樹脂、低分子量ポリスチレン等を添加することにより、耐熱クリープ力向上を達成することが可能である。
【0005】
しかし、C9系石油樹脂を用いた場合には、樹脂そのものが、濃褐色であるため、得られる粘着剤やシーリング材の外観が悪く、また臭気も強いといった問題がある。従来のC9系石油樹脂の低水素化物を用いた場合にも、樹脂中のフェノール類の影響で熱安定性が悪いといった問題がある。また、ピュアモノマー樹脂を用いた場合には、ピュアモノマー樹脂中の残存オレフィンが耐候性を悪くする場合があり、さらにピュアモノマー樹脂は、純粋に精製したモノマーを使用するために一般にコストが高いといった問題点を有する。低分子量ポリスチレンを用いた場合には、低分子量ポリスチレンの分子量が大きく、またその分子量分布も広いため、ベースポリマーとの相溶性が悪く、粘着剤、シーリング材等の組成物が濁ってしまうといった問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述の問題点をことごとく解決しうる新規なスチレン系ブロック共重合体用改質剤およびその組成物を与えるものである。すなわち、組成物の色調が良好であり、熱安定性、耐候性に優れ、耐熱クリープ力を向上させる安価かつ製造容易なスチレン系ブロック共重合体用改質剤を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、C9系石油留分をフェノール類の不存在下に重合させて得られるC9系石油樹脂を、限定された水素化率の範囲内に水素化することにより前記目的をことごとく達成しうる、水素化C9系石油樹脂すなわち、スチレン系ブロック共重合体用改質剤を見出すに至った。
【0008】
すなわち本発明は、フェノール類を含有しないC9系石油樹脂を水素化することにより、オレフィン含有率を0.3%以下かつ芳香環水素化率を0〜1.1%とした、軟化点100℃以上の水素化C9系石油樹脂であることを特徴とするスチレン系ブロック共重合体用改質剤;スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、該スチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)5〜100重量部および粘着付与剤(C)20〜300重量部を配合してなる粘着剤組成物;スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、該スチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)5〜100重量部、粘着付与剤(C)20〜300重量部および可塑剤(D)を0重量部を超えて200重量部以下配合してなる粘着剤組成物;スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、該スチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)5〜100重量部および粘着付与剤(C)20〜300重量部を配合してなるシーリング材組成物;スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、該スチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)5〜100重量部、粘着付与剤(C)20〜300重量部および可塑剤(D)0重量部を超えて200重量部以下を配合してなるシーリング材組成物、に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、発明の詳細について説明する。本発明のスチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)は、フェノール類を含有しないC9系石油樹脂をオレフィン含有率0.3%以下かつ芳香環水素化率0〜1.1%となるように水素化した軟化点100℃以上の水素化C9系石油樹脂を用いるものである。
【0010】
前記フェノール類を含有しないC9系石油樹脂はC9系石油留分をフェノール類の不存在下で重合させることにより得られる。重合方法としては特に制限されず、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等の公知の重合方法を採用できるが、反応制御が容易なことからカチオン重合が好ましい。なお、カチオン重合をする際の反応条件は、特に制限されず各種公知の反応条件を採用することができる。
【0011】
本発明で言う、フェノール類の不存在下とは、重合触媒、重合停止剤等として重合反応系にフェノール類を含有しないことを意味する。なお、ここでいうフェノール類としてはフェノールおよびクレゾール、キシレノール、p−tert―ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、ノニルフェノール等のアルキル置換フェノール類等の分子中にフェノール性水酸基を有する通常炭素数6〜20のものがあげられる。これらのフェノール類は、重合触媒としては、例えば三弗化ホウ素−フェノラート錯体のようなフェノール類錯体として用いられるのが一般的であり、一方、重合停止剤としては、フェノール、クレゾール等をそのまま用いられるのが一般的である。前記フェノール含有重合触媒や重合停止剤としてフェノール類を使用した場合は、得られた樹脂の加熱安定性が悪くなり、好ましくない。本発明における好適な重合触媒の具体例としては三弗化ホウ素、三弗化ホウ素エチルエーテル錯体、三弗化ホウ素ブチルエーテル錯体、三弗化ホウ素酢酸錯体、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズ等のルイス酸、硫酸、りん酸、過塩素酸等のプロトン酸等をあげることができる。工業的な供給面を考慮すると、三弗化ホウ素、三弗化ホウ素エチルエーテル錯体が好ましい。
【0012】
また、C9系石油留分とは、ナフサのクラッキングにより得られたものをいい、重合性モノマーとして、例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン類、その他高沸点の化合物等を含有している。一般的なC9系石油留分は、通常、ビニルトルエン、インデンをそれぞれ30〜40重量%程度含有し、残り20〜40重量%程度がスチレン、α−メチルスチレン及びその他の成分からなる。本発明においては上述のC9系石油留分を用いて製造したC9系石油樹脂を特定の水素化率の範囲に水素化することで、本発明の目的を十分達成しうる水素化樹脂を得ることが出来るが、以下に述べる精製C9系石油留分を使用することにより、更に、得られる水素化石油樹脂の耐候性を向上することもできる。精製C9系石油留分とは、通常は上述した一般的なC9系石油留分を蒸留することにより、C9系石油留分中のインデン類や高沸点の化合物等を除去し、重合性モノマー中のビニルトルエン含有量を50重量%以上、インデンの含有量を25重量%以下としたものである。ビニルトルエン含有量は、好ましくは55重量%以上であり、インデンの含有量は好ましくは20重量%以下である。なお、ビニルトルエンの含有量が多く、インデン成分が少なくなるほど耐候性が良好になるが、ビニルトルエン成分が多くなり、インデン成分が少なくなると軟化点が低下する傾向にある。得られる精製C9系石油樹脂の軟化点が100℃程度以上になるよう、本発明の範囲内で任意に調整して良い。通常、軟化点が120℃の樹脂では、ビニルトルエンの含有量は50〜55重量%程度、インデン含有量は20重量%程度である。なお、本発明の精製C9系石油留分を調製するにあたってはビニルトルエン等各種成分を配合する方法も採用できる。
【0013】
このようにして得られたフェノール類を含有しないC9系石油樹脂を、公知の方法により、オレフィン含有率を0.3%以下かつ芳香環の水素化率が0〜1.1%となるように、水素化触媒の存在下に、条件を適宜調整して水素化を行なう。
【0014】
水素化触媒としては、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ロジウム、ルテニウム、モリブデン等の金属またはこれらの酸化物、硫化物等の金属化合物等の各種のものを使用できる。かかる水素化触媒は多孔質で表面積の大きなアルミナ、シリカ(ケイソウ土)、カーボン、チタニア等の担体に担持して使用してもよい。本発明ではこれら触媒の中でも、水素化率を前記範囲内に調整し易いことや費用面からニッケル−シリカ(ケイソウ土)触媒を使用するのが好ましい。触媒の使用量は特に限定されないが、原料樹脂であるC9系石油樹脂の0.01〜3.0重量%程度、好ましくは0.1〜1.0重量%である。一般的にC9系石油樹脂に含まれる硫黄不純物の量が増えると触媒量を多くしなければ水素化が進行しにくくなる傾向にあるため触媒量を多くする必要がある。
【0015】
水素化反応の条件は、特に限定されない。一般的には、水素化圧力は通常3〜30MPa程度の範囲、反応温度は通常150〜300℃程度の範囲で行う。好ましくは水素化圧力は10〜20MPaであり、反応温度は200〜280℃である。水素化圧力が3MPaに満たない場合または反応温度が150℃に満たない場合には水素化が進み難く、水素化圧力が30MPaを超える場合または反応温度が300℃を超える場合には分解が起こり軟化点が低下する傾向がある。また反応時間は通常1〜7時間程度、好ましくは2〜7時間である。前記水素化反応はC9系石油樹脂を溶融して、または溶剤に溶解した状態で行う。溶剤としては、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、デカリン等を使用できる。
【0016】
なお、触媒の使用量および反応時間については、反応形式として回分式を採用した場合について説明したが、反応形式としては流通式(固定床式、流動床式等)を採用することもできる。
【0017】
このようにして得られた水素化C9系石油樹脂の軟化点は通常100℃以上、好ましくは115℃以上である。軟化点が100℃未満では、スチレン相の補強効果は小さくなり、耐熱クリープ力の向上が起こらない。また得られた水素化C9系石油樹脂の数平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値)は300〜2000程度が好ましい。数平均分子量が300より小さくなると軟化点が低くなるため、耐熱クリープ力が低下する傾向がある。また、数平均分子量が2000を超える場合にはスチレン系ブロック共重合体との相溶性が劣ることとなり、目的とした性能が十分に発現せず、また組成物が濁るおそれがある。
【0018】
水素化C9系石油樹脂をスチレン系ブロック共重合体用改質剤として用いるためには、オレフィン含有率を0.3%以下かつ芳香環水素化率を30%以下にすることが必要である。オレフィン含有率が0.3%を超える場合には得られるスチレン系ブロック共重合体用改質剤の耐候性が低下するため好ましくない。また芳香環の水素化率が30%を超える場合には、耐熱クリープ力が低下するため好ましくない。オレフィン含有率は水素化C9系石油樹脂のNMRスペクトル測定により得られる全プロトンのスペクトル面積に対する、5.0〜6.5ppmに認められるオレフィン二重結合に由来するプロトンのスペクトル面積により算出できる。すなわち、オレフィン含有率=(5.0〜6.5ppmに認められるオレフィン二重結合に由来するプロトンのスペクトル面積/樹脂の全プロトンのスペクトル面積の和)×100(%)で表される。芳香環水素化率は、C9系石油樹脂及び得られた水素化C9系石油樹脂のNMRスペクトル7ppm付近に現れる芳香環由来のプロトンのスペクトルの面積から算出できる。すなわち、水素化率={1−(水素化C9系石油樹脂の芳香環由来スペクトル面積/C9系石油樹脂の芳香環由来スペクトル面積)}×100(%)により導き出せる。本発明のスチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)には、さらに必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を加えることができる。
【0019】
本発明の粘着剤組成物に用いられるスチレン系ブロック共重合体(A)とは、スチレン、メチルスチレン等のスチレン類とブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類を、使用目的に応じて適宜に選択して共重合したブロック共重合体である。通常、スチレン類/共役ジエン類の重量比は、10/90〜55/45である。このようなブロック共重合体の好ましい具体例としては、たとえばスチレン(S)/ブタジエン(B)の重量比が10/90〜55/45の範囲にあるSBS型ブロック共重合体、スチレン(S)/イソプレン(I)の重量比が10/90〜30/70の範囲にあるSIS型ブロック共重合体等があげられる。また、本発明のスチレン系ブロック共重合体としては、前記スチレン系ブロック共重合体の共役ジエン成分を水素化したものも含まれる。スチレン系ブロック共重合体の共役ジエン成分を水素化したものの具体例としては、いわゆるSEBS型ブロック共重合体、SEPS型ブロック共重合体などがあげられる。またこれらの他にSBS、SIS、SEBSおよびSEPSの変性物も使用できる。
【0020】
本発明に用いられる粘着付与剤(C)としては特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的にはロジン系樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としてはガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンといったロジン類、これらロジン類を(無水)マレイン酸(無水マレイン酸および/またはマレイン酸を表す。)やフマル酸、(メタ)アクリル酸(メタクリル酸および/またはアクリル酸を表す。)等の不飽和脂肪酸やフェノールで変性した変性ロジン類、前記ロジン類を水素化した水素化ロジンや不均化ロジン、重合ロジンといったものがあげられる(ロジン類、変性ロジン類、水素化ロジン、不均化ロジン、重合ロジンなどを以後ロジン化合物という)。また、これらロジン化合物をグリセリンやペンタエリスリトール、エチレングリコール等の各種アルコールと反応させたロジンエステル類も使用することができる。石油系樹脂としてはC5系石油留分から得られるC5系石油樹脂、C9系石油留分から得られるC9系石油樹脂やジシクロペンタジエンを原料とするジシクロペンタジエン系石油樹脂、クマロン・インデン系樹脂の他これらの水素化物があげられる。また、テルペン系樹脂としてはテレピン油に含まれるα−ピネンやβ−ピネン、柑橘類の果皮より得られるリモネン等を単独または数種をフリーデル・クラフト触媒で重合させて得られるテルペン樹脂の他、テルペンフェノール樹脂、芳香族モノマーと共重合させた芳香族変性テルペン樹脂、前記各種テルペン樹脂を水素化した水添テルペン樹脂等が上げられる。これら粘着付与剤は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これら粘着付与樹脂の中では、組成物の初期色調、耐候性を考慮するのであれば、石油系樹脂の水素化物が好ましい。
【0021】
また、本発明の粘着剤組成物には必要に応じて可塑剤(D)を使用することができる。可塑剤は、粘着付与樹脂のみでは粘着剤組成物の可塑化が不充分な場合に使用する。可塑剤(D)としては、たとえば、炭化水素系可塑剤等があげられる。炭化水素系可塑剤の具体例としては、流動パラフィン、ポリブテン、液状ポリブタジエン等を例示できる。また、フタル酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、グリコールエステル、りん酸エステル、エポキシ系可塑剤等の各種公知の可塑剤があげられる。
【0022】
本発明における粘着剤組成物の配合比は、スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、スチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)5〜100重量部程度、粘着付与剤(C)20〜300重量部程度、可塑剤(D)0重量部を超えて200重量部以下とするのが好ましく、さらに好ましくは、(A)100重量部に対して、(B)5〜100重量部程度、粘着付与剤(C)50〜250重量部程度および可塑剤(D)5〜150重量部程度である。
【0023】
前記スチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)の配合量が、スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、5部未満では耐熱クリープ力向上効果が十分ではなく、逆に100部を超えて配合すると、粘着剤組成物が硬くなり、タック、接着力が低下する傾向がある。
【0024】
前記粘着付与剤(C)の配合量が、スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、20部未満ではタック、接着力が十分ではなく、逆に300部を超えて配合すると、粘着剤組成物が柔らかくなるため、耐熱クリープ力が低下する傾向にあり、前記スチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)の改質効果が発揮されない可能性がある。
【0025】
前記可塑剤(D)を用いる場合には配合量が、スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、200部を超えて配合すると、粘着剤組成物が柔らかくなり、組成物の強度、耐熱クリープ力が低下する傾向がある。なお、可塑剤(D)を5部以上用いることで粘着剤組成物の溶融粘度を適度に保つことができるため好ましい。
【0026】
なお、本発明の粘着剤組成物には、さらに必要に応じて、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を加えることができる。
【0027】
本発明のシーリング材組成物の配合比は、スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、スチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)5〜100重量部程度、粘着付与剤(C)20〜300重量部程度、可塑剤(D)0重量部を超えて200重量部以下とするのが好ましく、特に好ましい配合は、スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、スチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)5〜100重量部程度、粘着付与剤(C)50〜250重量部程度および可塑剤(D)5〜150重量部程度である。ここで、クリアシーリング材用途など特に耐候性、透明性を重視する用途においては、スチレン系ブロック共重合体(A)として、SEBS、SEPS等のスチレン−共役ジエン系ブロック共重合体の水素化物やこれらの変性物が好ましく、さらに耐候性を重視する場合には粘着付与剤(C)として水素化石油樹脂や水素化テルペン樹脂等を用いることが好ましい。
【0028】
前記スチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)の配合量が、スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、5部未満では耐熱クリープ力向上効果が十分ではなく、逆に100部を超えて配合すると、粘着剤組成物が硬くなり、タック、接着力が低下する傾向がある。
【0029】
前記粘着付与剤(C)の配合量が、スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、20部未満ではタック、接着力が十分ではなく、逆に300部を超えて配合すると、シーリング材組成物が柔らかくなるため、耐熱クリープ力が低下する傾向にあり、前記スチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)の改質効果が発揮されない可能性がある。
【0030】
前記可塑剤(D)を用いる場合には配合量が、スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、200部を超えて配合すると、粘着剤組成物が柔らかくなり、組成物の強度、耐熱クリープ力が低下する傾向がある。なお可塑剤を5部以上使用することによりシーリング材組成物の溶融粘度を適度に保つことができるため好ましい。
【0031】
なお、本発明のシーリング材組成物には、さらに必要に応じて、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を加えることができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱クリープ力を向上させ、耐候性も良好なスチレン系ブロック共重合体用改質剤および該改質剤を添加したスチレン系ブロック共重合体をベースポリマーとしてなる耐熱クリープ力に優れた粘着剤、シーリング材等を提供できる。本発明のスチレン系ブロック共重合体用改質剤は、スチレン系ブロック共重合体中のスチレン類相の補強効果に優れることから特に耐熱性を必要とされるスチレン系ブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤、シーリング材等として有用である。また、本発明のスチレン系ブロック共重合体用改質剤は、初期色調、加熱安定性、耐候性等も良好で、粘着剤、シーリング材等に少量添加し耐熱クリープ力を向上させる樹脂であるため、タック・接着力といった各種組成物独自の特性低下を抑え、その特性に加えさらに耐熱クリープ力に優れた粘着剤、シーリング材等を安価に提供できる。
【0033】
【実施例】
以下に、実施例および比較例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら各例に制限されるものではない。なお、各例中、部は重量基準である。
【0034】
実施例1
ナフサのクラッキングで得られた通常のC9系石油留分(重合性モノマー組成:ビニルトルエン37%、インデン35%、その他28%)を蒸留することにより、高沸点成分を減少させた精製C9系石油留分(重合性モノマー組成:ビニルトルエン50%、インデン23%、その他27%)100部を、反応温度20℃で三弗化ホウ素ガスを0.3部用いカチオン重合によって重合して特殊C9系石油樹脂(軟化点120℃,数平均分子量840)を得た。得られた特殊C9系石油樹脂100部およびニッケルーシリカ触媒(「SNO−709」、堺化学工業(株)製)0.3部をオートクレーブに仕込み、水素圧19.6MPa、反応温度265℃、反応時間5時間の条件下に、水素化反応を行った。反応終了後、得られた樹脂をシクロヘキサン300部に溶解し、ろ過により触媒を除去した。その後、撹拌羽根、還流コンデンサー、温度計、温度調節器及び圧力表示計の取り付けられた1リットル容のセパラブルフラスコにろ液および、酸化防止剤(「イルガノックス1010」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.35部を入れ、200℃、2.7kPaまで徐々に昇温・減圧して溶媒を除去し、数平均分子量820、軟化点117.0℃、オレフィン含有率0.0%、芳香環の水素化率0.0%、色調60Hの水素化C9系石油樹脂(改質剤a)98部を得た。得られたスチレン系ブロック共重合体用改質剤(a)の物性を表1に示す。
【0035】
実施例2
実施例1において原料樹脂を軟化点120℃(ビニルトルエン38%、インデン34%)に変えた他は、実施例1と同様にして改質剤(b)を製造した。得られた改質剤(b)の物性を表1に示す。
【0036】
実施例3
実施例1において、反応条件を表1に示すように変えた他は、実施例1と同様にして(c)を製造した。得られた改質剤(c)の物性を表1に示す
【0037】
実施例4
実施例1において原料樹脂をネオポリマーS−110(日本石油化学(株)製)に変えた他は、実施例1と同様にして改質剤(d)を製造した。得られた改質剤(d)の物性を表1に示す。
【0038】
実施例5
実施例1において原料樹脂をネオポリマーS−100(日本石油化学(株)製)に変えた他は、実施例1と同様にして改質剤(e)を製造した。得られた改質剤(e)の物性を表1に示す。
【0039】
比較製造例1
実施例1において、ナフサのクラッキングで得られた通常のC9系石油留分(重合性モノマー組成:ビニルトルエン37%、インデン35%、その他28%)100部を反応温度20℃で三弗化ホウ素フェノール錯体を0.5部用いカチオン重合によってC9系石油樹脂(軟化点120℃、数平均分子量850)を得た。該樹脂を用い、水素化条件を表1に示すように変えた他は実施例1と同様にして芳香環の水素化率5.5%の改質剤(f)を製造した。得られた改質剤(f)の物性を表1に示す。
【0040】
比較製造例2
実施例1において、原料樹脂の軟化点を90℃(数平均分子量580)にした他は実施例1と同様にして改質剤(g)を製造した。得られた改質剤(g)の物性を表1に示す。
【0041】
比較製造例3
実施例1において、反応条件を表1にように変えた他は実施例1と同様にして、芳香環の水素化率が39%の改質剤(h)を製造した。得られた改質剤(h)の物性を表1に示す。
【0042】
【表1】
Figure 0004507036
【0043】
表1中の原料樹脂において、Aは特殊C9系石油樹脂(重合性モノマー組成:ビニルトルエン50%、インデン23%、その他27%、軟化点120℃、数平均分子量840)を示し、BはC9系石油樹脂(重合性モノマー組成:ビニルトルエン38%、インデン34%、その他28%、軟化点120℃、数平均分子量850)、CはC9系石油樹脂(重合性モノマー組成:ビニルトルエン37%、インデン35%、その他28%、軟化点120℃、数平均分子量850)、Dは特殊C9系石油樹脂(重合性モノマー組成:ビニルトルエン60%、インデン9%、その他31%、軟化点90℃、数平均分子量580)を示す。また、水素化反応において水素化圧力は19.6MPa、反応時間は5時間で全て同じである。なお、改質剤(i)としてスチレン系モノマーと脂肪族系モノマーの共重合体樹脂であるFTR6100(軟化点102℃、三井化学(株)製)を用いた。
【0044】
表1中の原料樹脂中のフェノール分の検出方法については以下の方法で行なった。C9系石油樹脂中に含まれる、フェノール成分を、塩化鉄(III)を使用する呈色法(船久保英一著 有機化合物確認法I 第1章 第9〜12頁 (株)養賢堂発行)によって検出した。即ち、C9系石油樹脂0.3gをクロロホルムに溶解させた後、塩化鉄(III)試薬を5滴加えた後の、色調の変化の度合いで、フェノール類の有無を判定した。クロロホルム溶液の色調(淡黄色)に変化が無かった場合、すなわちフェノールが存在しない場合を○として、濃黄色に変化した場合、すなわちフェノールが存在する場合を×とした。なお、塩化鉄(III)試薬は、無水塩化鉄(III)1.0gをクロロホルム100mlに溶解し、これにピリジンを8ml加え十分に混合した後に、濾過した溶液を使用した。
【0045】
実施例6
SIS型ブロック共重合体(商品名「カリフレックスTR1107」、シェル化学(株)製)50部およびパラフィン系オイル(商品名「DIプロセスPW90」、出光興産(株)製)50部を溶融混合してゴム状物を調製した。このゴム状物100部に、表1の改質剤(a)30部と粘着付与剤(商品名「アルコンP−100」荒川化学工業(株)製)120部を加え180℃で混練し、SIS系粘着剤組成物を調製した。
【0046】
実施例7〜実施例10および比較例1〜比較例5
改質剤を表2の様に代えた他は実施例6と同様にしてSIS系粘着剤組成物を得た。
【0047】
実施例11
SBS型ブロック共重合体(商品名「タフプレンA」、旭化成工業(株)製)50部およびナフテン系オイル(商品名「シェルフレックス371JY」、シェルジャパン(株)製)50部を溶融混合してゴム状物を調製した。このゴム状物100部に改質剤(a)30部および粘着付与剤(商品名「アルコンM−100」荒川化学工業(株)製)120部を加え180℃で混練し、SBS系粘着剤組成物を調製した。
【0048】
実施例12〜実施例15および比較例6〜比較例10
改質剤を表3の様に代えた他は実施例11と同様にしてSBS系粘着剤組成物を得た。
【0049】
実施例16
SEBS型ブロック共重合体(商品名「クレイトンG−1652」シェル化学(株)製)、旭化成工業(株)製)50部およびポリブテン(商品名「HV−100」、日本石油化学(株)製)50部を溶融混合してゴム状物を調製した。このゴム状物100部に、改質剤a30部および粘着付与剤(商品名「アルコンP−100」荒川化学工業(株)製)120部を加え180℃で混練しSEBS系粘着剤組成物を調製した。
【0050】
実施例17〜実施例20および比較例11〜比較例15
改質剤を表4の様に代えた他は実施例16と同様にしてSEBS系粘着剤組成物を得た。
【0051】
SIS系粘着剤組成物およびSBS系粘着剤組成物、SEBS系粘着剤組成物の性能評価を以下の試験により評価した。SIS系粘着剤組成物の評価結果を表2、SBS系粘着剤組成物の評価結果を表3、SEBS系粘着剤組成物の評価結果を表4に示す。なお、試験片は粘着剤組成物10部をトルエン10部で溶解させ、150μmサイコロ型アプリケーターを用い、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し(以下、粘着フィルムという)作製した。
【0052】
接着力:JIS Z 0237法に従い、上記粘着フィルムを、2kgのゴムローラーを用いて、被着体であるステンレス鋼板に接着面積25mm×125mmで圧着後、23℃で24時間放置した。その後テンシロンで180度剥離試験を行い接着力(N/cm)を測定した。
【0053】
タック:JIS Z 0237法に従い、30度の角度を有する斜面から、No.14の鋼球を転がし、水平面に置いた上記粘着フィルム面上で鋼球が転がる距離(cm)を測定した。距離(cm)が短いほどタックに優れる。測定雰囲気温度は、23℃である。
【0054】
保持力:JIS Z 0237法に従い、上記粘着フィルムとステンレス鋼板を2kgのゴムローラーを用いて、接着面積25mm×25mmで圧着した後、23℃で24時間放置した。その後クリープテスターで60℃、0.5kg、1時間の条件で荷重をかけたときの粘着フィルムとステンレス鋼板とのズレ(cm)を測定した。なお、表中「剥れる」とは測定終了時に試験片が荷重により引き剥がされたことを意味する。また、ズレ(cm)が短いほど保持力に優れる。
【0055】
耐候性:粘着剤組成物10gを溶融後、内径55mmの軟膏缶に入れ、放冷後、キセノンランプ(Heraeus社製、「SUNTEST」)を72時間連続照射し、色調を以下の基準により目視判定した。◎:着色無し。○:ほとんど着色無し。△:僅かに着色あり。×:著しく着色。
【0056】
加熱着色性:粘着剤組成物5gを試験管に入れ、180℃循風乾燥機中に静置し、12時間後の粘着剤組成物の色調を目視判定した。◎:1ガードナーカラー未満。○:2ガードナーカラー未満。△:3ガードナーカラー未満。×:3ガードナーカラー以上。
【0057】
【表2】
Figure 0004507036
【0058】
【表3】
Figure 0004507036
【0059】
【表4】
Figure 0004507036

Claims (9)

  1. フェノール類を含有しないC9系石油樹脂を水素化することにより、オレフィン含有率を0.3%以下かつ芳香環水素化率を0〜1.1%とした、軟化点100℃以上の水素化C9系石油樹脂であることを特徴とするスチレン系ブロック共重合体用改質剤。
  2. C9留分中のモノマー比がビニルトルエンを50重量%以上、インデンを25重量%以下の割合で含有してなることを特徴とする請求項1記載のスチレン系ブロック共重合体用改質剤。
  3. 軟化点が115℃以上である請求項1または2に記載のスチレン系ブロック共重合体用改質剤。
  4. スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)5〜100重量部および粘着付与剤(C)20〜300重量部を配合してなる粘着剤組成物。
  5. スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)5〜100重量部、粘着付与剤(C)20〜300重量部および可塑剤(D)を0重量部を超えて200重量部以下配合してなる粘着剤組成物。
  6. スチレン系ブロック共重合体(A)がSBS、SIS、SEBS、SEPSおよびこれらの変性物からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項4または5記載の粘着剤組成物。
  7. スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)5〜100重量部および粘着付与剤(C)20〜300重量部を配合してなるシーリング材組成物。
  8. スチレン系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン系ブロック共重合体用改質剤(B)5〜100重量部、粘着付与剤(C)20〜300重量部および可塑剤(D)0重量部を超えて200重量部以下を配合してなるシーリング材組成物。
  9. スチレン系ブロック共重合体(A)がSEBS、SEPS、またはこれらの変性物からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項7または8記載のシーリング材組成物。
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