JP4506957B2 - 誘電体粒子及びその製造方法、複合誘電体材料並びに基板 - Google Patents

誘電体粒子及びその製造方法、複合誘電体材料並びに基板 Download PDF

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Description

本発明は、例えば誘電体粒子として用いられる酸化物粒子及びその製造方法に関するものであり、さらには、この酸化物粒子を用いて形成される複合材料及び基板に関する。
例えば高周波用途の回路基板等の材料である複合材料は、有機材料と無機材料とを混合して構成され、有機材料と無機材料の両方の利点を併せ持つ新規な材料として注目を集めている。従来の複合材料の概略図を、図18に示す。複合材料は、樹脂材料101中に誘電体材料等の酸化物からなる酸化物粒子102を混合し、分散することにより形成される。
回路基板やその材料である複合材料には様々な特性が求められるが、そのうち重要なものの1つに、高誘電率の実現が挙げられる。高誘電率の基板材料の使用が高周波部品の小型化に有利なためである。複合材料の誘電率を高めるためには、高誘電率を示す誘電体材料からなる誘電体フィラーの使用が有効であると考えられるが、高誘電率を示す誘電体フィラーは一般に、損失特性が高い、誘電率の温度特性が悪い等の問題を抱えている。すなわち、高誘電率、損失特性及び誘電率温度特性の3つの特性のいずれも満足するような誘電体フィラーを得ることは極めて難しいのが実情である。複合材料の誘電率を高める別の方法として、複合材料中の誘電体フィラーの充填量を増やすといった対策も考えられるが、誘電体フィラーを大量に充填した場合には複合材料の流動性や回路基板の強度が悪化するといった別の問題が生じる。
ところで、非特許文献1によると、樹脂材料中で誘電体フィラー同士が互いに接触することにより3次元的にネットワークを構築した場合、その複合材料(基板)を等価回路としてみたとき誘電体フィラーの容量成分と誘電体フィラー間の樹脂材料の容量成分が並列的に接続した、いわゆる「並列モデル」回路に近づくとされる。そして、高い誘電率を得るためには、複合材料をできるだけ「並列モデル」に近い状態とすることが、限られた誘電率を持つ誘電体フィラーを限られた充填量しか使用できない複合材料においては極めて有効と考えられる。誘電率の向上は次のような理由によるものと考えられる。
例えば樹脂材料中に2つの誘電体フィラーが分散してなる複合材料において、各誘電体フィラーの誘電率をε1、ε2としたときの複合材料全体での誘電率εとし、これらが並列に接続される場合、複合材料の誘電率εは、単純化するとε=ε1+ε2として表される。これに対し、図18に示すように、樹脂材料中に単純に誘電体フィラーが分散した状態の複合材料は、誘電体フィラーの容量成分と、誘電体フィラー間の樹脂材料の容量成分が直列的に接続した、「直列モデル」回路に近いものである。そして、各誘電体フィラー(誘電率ε1、ε2)が直列に接続される場合、複合材料の誘電率εは、単純化すると1/ε=1/ε1+1/ε2として表される。以上のことから「直列モデル」に近い複合材料では、「並列モデル」に比べて著しく低い誘電率しか得られないことがわかる。
このような考えを利用したものとして、誘電体フィラーとともに、柔らかい金属からなる導電体フィラーを含んだ高誘電複合材料が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の発明では、誘電体フィラー間に加圧により潰れた導電体フィラーを介在させて前記の並列モデルに近い状態を作り出すことにより、複合材料全体での誘電率を高めるようにしている。
また、特許文献2には、誘電体粉末の表面に金属の導電体を部分的に付着させ、この導電体同士が隣接する誘電体粉末を接合するとともに、表裏面の間では短絡しないように導電体が誘電体粉末の上に形成されている誘電体膜が記載されている。特許文献2の誘電体膜は、誘電体粉末を分散させた溶剤を塗布し、加熱乾燥後、導電体の溶融温度にさらに加熱することにより誘電体粉末同士を導電体で接合し、固めることによって形成される。特許文献2によれば、電極間で短絡しないように導電体を設けることで、見かけの誘電率が向上するとされている。
特開2002−93954号公報 特開平11−53944号公報 R.E.Newnham et.al.,Mat.Res.Bull.vol13,p.525〜536.,1978.
しかしながら、先ず、特許文献1の技術では、前記並列モデルの実現によってある程度高い誘電率が得られる可能性はあるが、複合材料の抵抗値が著しく低下し、絶縁性や耐圧性の低下を招くといった大きな問題がある。抵抗値の低下は、樹脂材料中に添加した導電体フィラー同士により3次元ネットワークが形成され、膜内に導通回路が形成されるため生ずるものと推測され、誘電体材料においては致命的な欠陥となる。
一方、特許文献2記載の発明は、金属間化合物を利用して結合強度を高めるとともに、結合させるための温度を低いものすることで、誘電体粉末を固めた誘電体膜の誘電率の上昇を狙ったものであり、複合材料の等価回路をいわゆる「並列モデル」に近づけることについては、全く想定されていない。勿論、特許文献2記載の誘電体膜においても、誘電体粉末の表面に導電体を付着させているので、ある程度は前記並列モデルが実現され、誘電率が上昇することも予想されるが、特許文献2では蒸着やめっき等により導電性材料を誘電体粉末の表面に付着させているので、導電性材料が誘電体フィラー表面に適度に分散し3次元ネットワーク構築に適した状態を作り出すことは極めて難しく、その効果には限度がある。例えば、メッキや蒸着の場合、導電体の付着量が多くなると連続膜になり易く、短絡の問題が顕著になる。逆に、付着量が少なすぎると、誘電体粉末の表面には極めて薄い導電体膜しか形成されず、これが他の誘電体粉末と接触して3次元ネットワーク化する確率は著しく小さい。したがって、特許文献2記載の技術では、酸化物粒子のネットワークを構築して高誘電率を実現し、しかも複合材料からなる基板等を電極で挟んだときの短絡を確実に防止するような状態を作り出すことは、不可能に近い。
さらに、特許文献2記載の誘電体膜は、誘電体粉末を溶剤中に分散し、溶剤除去後、焼き固めてなるいわゆる焼付け型の誘電体膜であって、樹脂材料をベースとした複合材料(いわゆるコンポジット)についての記載は一切ない。つまり、特許文献2では誘電体粉末を複合材料に適用することは完全に想定外である。なお、通常、焼付け型と複合材料型とでは膜の基本構成が全く異なることから、最適な誘電体粉末も当然に異なってくる。したがって、仮に、特許文献2記載の誘電体粉末を樹脂材料に分散して複合材料を構成したとしても、単に特許文献2記載の誘電体粉末を樹脂材料に分散しただけでは、所望の高い誘電率を得ることは到底不可能である。
そこで本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、例えば樹脂材料中に混合されて複合材料を構成したときに、極めて高い誘電率を実現するとともに、導電体同士の接続による抵抗値の低下を抑制することが可能な酸化物粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、この酸化物粒子を用いた複合材料を提供することを目的とし、さらには、この複合材料を用いた基板を提供することを目的とする。
本発明者らが長期にわたり検討を重ねた結果、導電性材料が誘電体フィラー、すなわち酸化物母粒子表面に適度に分散し、酸化物粒子の3次元ネットワーク形成に適した状態を得るためには、粒子状の導電性材料を酸化物母粒子表面に固定することが極めて有効であるとの結論に至った。
本発明は以上の知見に基づいて完成されたものである。すなわち、本発明に係る誘電体粒子は、酸化物母粒子の表面に導電性微粒子が不連続に固定されており、前記酸化物母粒子の平均粒径が0.5μm以上、30μm以下であり、前記導電性微粒子の平均粒径が30nm以上、前記酸化物母粒子の平均粒径の1/5以下であることを特徴とする。また、本発明に係る複合誘電体材料は、前記誘電体粒子と樹脂材料とが混合されてなることを特徴とする。さらに、本発明に係る基板は、前記複合誘電体材料を用いて形成される層を有することを特徴とする。
本発明の酸化物粒子は、導電性材料を粒子の状態で酸化物母粒子表面に固定している点に特徴がある。蒸着やメッキ等を採用した場合、導電性材料は連続膜か、又は薄膜状にしかならないのに対し、導電性微粒子を酸化物母粒子表面に固定した場合、酸化物母粒子表面に導電性材料が適度な高さをもってほぼ均一に分散し、樹脂材料に分散させて複合材料を構成した場合に酸化物粒子の3次元ネットワーク形成に非常に適した状態が実現される。このような酸化物粒子を例えば複合材料及び基板に適用すると、適度に分散した導電性材料により酸化物粒子同士が高確率で接触し、酸化物粒子の3次元ネットワークが構築される。このため、複合材料の等価回路が理想的な「並列モデル」に近づき、複合材料全体で高い誘電率が得られる。
酸化物粒子間に導電性材料を介在させる場合、導電性材料のネットワーク化による抵抗値の著しい低下が懸念されるが、導電性微粒子を酸化物母粒子表面に固定して得られる導電性材料の分散状態は、導電性材料同士のネットワーク化を抑制する観点でも非常に適したものである。したがって、本発明の酸化物粒子を複合材料に適用したとき、複合材料の抵抗値の著しい低下が抑制され、優れた絶縁性及び高い耐圧性が実現される。
また、本発明に係る酸化物粒子の製造方法は、酸化物母粒子の表面に導電性微粒子を固定させることを特徴とする。
酸化物母粒子の表面に導電性微粒子を固定することで、酸化物母粒子表面に導電性材料が適度な高さをもって均一に分散した状態の酸化物粒子が製造される。このように製造される酸化物粒子は、例えば複合材料に適用されたときに3次元ネットワークを構築し、理想的な「並列モデル」に近い状態を実現する。また、酸化物母粒子の表面に導電性微粒子を固定して得られた導電性材料の分散状態は、酸化物粒子同士の3次元ネットワーク構築のみならず、導電性材料同士の接続による短絡防止にも適したものである。したがって、本発明により製造される酸化物粒子は、例えば複合材料に適用されたとき、導電性材料同士の接続に起因する抵抗値の著しい低下を抑制する。
特に、前記導電性微粒子の固定が、前記酸化物母粒子と導電性微粒子との混合物に機械的エネルギーを加えることにより行われることが好ましい。機械的エネルギーを利用して酸化物母粒子と導電性微粒子とを複合化することにより、例えば複合材料に適用したときに酸化物粒子の3次元ネットワーク形成に適した導電性材料の分散状態を、容易に実現できる。
本発明の酸化物粒子は、導電性材料を粒子の状態で酸化物母粒子表面に固定することで、酸化物粒子の3次元ネットワーク形成に適した状態が実現され、例えば複合材料に適用した場合にその等価回路を理想的な「並列モデル」に近づけて複合材料全体で極めて高い誘電率を実現することができる。また、導電性材料を粒子の状態で酸化物母粒子表面に固定することで、導電性材料同士の接続に起因する短絡の問題も解消される。したがって、本発明によれば、これまでにない高誘電率を示し、絶縁性及び耐圧性にも優れた複合材料を提供することができる。さらには、この複合材料を用いることで、高誘電率を示し、絶縁性及び耐圧性にも優れた基板を提供することが可能である。
また、本発明に係る酸化物粒子の製造方法によれば、導電性微粒子を酸化物粒子表面へ固定することで、酸化物粒子の3次元ネットワーク形成に適した状態を作り出し、例えば複合材料に適用した場合に複合材料全体で高い誘電率を実現し、しかも抵抗値の大幅な低下のない優れた特性を示すことが可能な酸化物粒子を製造することができる。
以下、本発明を適用した酸化物粒子及びその製造方法、この酸化物粒子を含む複合材料、及びこの複合材料を用いて形成される基板について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明を適用した酸化物粒子は、酸化物母粒子の表面に導電性微粒子が固定されているものである。本発明の酸化物粒子は、例えば樹脂材料中に混合されることにより、複合材料を形成し、この複合材料により基板を形成することができる。
導電性微粒子は、例えば本発明の酸化物粒子が複合材料や基板に適用されたときに酸化物母粒子間に介在し、酸化物粒子同士を電気的につなぐ導体としての役割を果たすものである。導電性微粒子は、例えば機械的エネルギーや沈殿法等によって、酸化物母粒子表面に粒子状の導電性材料が固定されることにより形成される。導電性微粒子はいかなる形状でも構わないが、蒸着やメッキ等により形成されるような連続膜状の導電性材料は、酸化物母粒子間に介在してこれらを接触させる効果に乏しいため、本発明でいう導電性微粒子に含まれない。導電性微粒子を介して酸化物母粒子同士を接触させる確率をさらに高め、且つ導電性微粒子の接続による導通回路の形成を確実に防止するためには、導電性微粒子は、酸化物母粒子の表面に偏りなく、ほぼ均一に分散していることが重要である。導電性微粒子が酸化物母粒子の表面に偏って存在すると、導電性微粒子を介して酸化物母粒子同士を接触させる効果が不十分となり、誘電率向上効果が見込めない。
また、酸化物母粒子の表面に導電性微粒子が固定した状態とは、導電性微粒子の一部と酸化物母粒子の一部とが互いに融合又は結合した状態、酸化物母粒子の表面に導電性微粒子が付着又は固着した状態等、いずれの状態も含むものである。
導電性微粒子を構成する材料としては、例えば金属、カーボン、導電性酸化物等の導電性を持つ材料が挙げられる。金属としては導電性を持つ通常の金属をいずれも使用可能であり、例えばNi、Ag、Ni、Ag、Pd、Cu、Fe、Co、Ti、Zn、Al、Sn、In、Ga、Pt、Au等を単独又は複数種類組み合わせて用いることができる。金属を複数種類用いる場合、単体又は合金のいずれの状態でも構わない。導電性酸化物としては、例えばITO(In23−SnO2)、ATO(Sb23−SnO2)、SnO2−ZnO、(Ni,Sr)xNbO3等が挙げられる。
本発明においては、酸化物母粒子表面に存在する導電性微粒子の高さを、30nm以上、酸化物母粒子の平均粒径の1/5以下に規定することが好ましい。導電性微粒子の高さとは、導電性微粒子が固定された酸化物母粒子の表面から、導電性微粒子頂点までの距離をいう。導電性微粒子の高さが30nm未満であると、例えば複合材料に適用したとき導電性微粒子を挟んで酸化物母粒子同士を接触させることが困難となり、酸化物粒子の3次元ネットワーク形成が不十分となる。逆に、導電性微粒子の高さが酸化物母粒子の平均粒径の1/5を超える場合も、例えば複合材料を構成したときに前記接触が困難となる。導電性微粒子の高さは、50nm以上、酸化物母粒子の平均粒径の1/10以下であることが好ましい。
酸化物母粒子を構成する酸化物としては、例えば誘電率εが10以上である誘電体等を用いることができる。誘電率εが10以上である誘電体としては、高誘電率が求められる複合材料や基板等に用いられる公知の誘電体材料を制限なく使用でき、例えばチタン酸塩、ジルコン酸塩や、酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物等を単独又は複数種類組み合わせて用いることができる。また、酸化物の結晶構造についても、ペロブスカイト構造、タングステンブロンズ構造、パイロクロア構造等、任意の構造をとることができる。
酸化物母粒子の平均粒径は、基本的には0.5μm以上、30μm以下であることが好ましく、0.5μm以上、10μm以下であることがより好ましく、1μm以上、5μm
以下であることが最も好ましい。
次に、本発明を適用した酸化物粒子の製造方法について説明する。前述のような酸化物粒子は、酸化物母粒子の表面に粒子状の導電性材料を固定することにより製造される。酸化物粒子は、例えば、酸化物母粒子と、予め導電性材料を造粒してなる導電性微粒子とを混合して混合物を得、この混合物に機械的エネルギーを加え、酸化物母粒子の表面に導電性微粒子を固定することにより製造される。
原料に用いる酸化物母粒子の平均粒径は、例えば0.5μm以上、30μm以下であることが好ましく、0.5μm以上、10μm以下であることがより好ましく、1μm以上、5μm以下であることが最も好ましい。酸化物母粒子は球状でも非球状でもよいが、酸化物母粒子表面のくぼみへの導電性微粒子の集中を防止することで導電性微粒子の使用量を削減できるため、球状に近い形状が好ましい。また、導電性微粒子の平均粒径は、30nm以上、酸化物母粒子の平均粒径の1/5以下であることが好ましく、50nm以上、酸化物母粒子の平均粒径の1/10以下であることがより好ましい。
酸化物母粒子と導電性微粒子との混合物に機械的エネルギーを加えてこれら粒子を複合化する方法としては、酸化物母粒子と導電性微粒子との混合物に加えられた機械的エネルギーの作用により、酸化物母粒子と導電性微粒子との間に一定の付着力を生じさせる方法をいずれも採用できる。機械的エネルギーは、例えば圧縮、せん断、摩擦、延伸、曲げ、衝突等によって酸化物母粒子と導電性微粒子との混合物に加えられる。
酸化物母粒子と導電性微粒子との複合化は、例えばメカノフュージョン(登録商標)装置、オングミル(登録商標)装置、ハイブリダイゼーション装置等として知られている装置を用いて実現される。例えば高速で回転する容器と、容器の内壁に対して一定の隙間を持って固定されており、容器内壁より曲率半径の小さいインナーチップとを有するオングミル(登録商標)装置を用いる場合、酸化物母粒子と導電性微粒子との混合物を入れた容器を高速で回転させ、このとき生じた遠心力で容器内壁に粒子混合物を圧密し、この状態の粒子混合物を容器内壁とインナーチップとで作られる間隙に押し込むようにする。インナーチップと回転容器内壁の隙間を粒子混合物が通過する際、粒子が高速で擦り合うことにより強い圧縮作用や摩擦作用を受けて酸化物母粒子と導電性微粒子との間に付着力が生じ、複合化が進行する。メカノフュージョン(登録商標)装置、ハイブリダイゼーション装置の場合も同様である。
酸化物母粒子と導電性微粒子とを複合化する際の雰囲気や酸素分圧は、用いる酸化物母粒子及び導電性微粒子の種類に応じて適宜設定すればよい。例えば酸化物母粒子の還元を防ぐ雰囲気や、導電性微粒子が金属又は合金である場合には金属又は合金の酸化を防ぐ雰囲気等に設定する。
本発明の酸化物粒子は、例えば前記のような酸化物母粒子と導電性微粒子との複合化により得られるが、酸化物母粒子表面へ導電性微粒子を確実に固定するためには、酸化物母粒子と導電性微粒子とを複合化した後、さらに熱処理を施すことが好ましい。熱処理を施すことで、誘電率のさらなる向上が可能である。また、熱処理を施すことで酸化物母粒子表面に導電性微粒子が強く固定され、酸化物粒子と樹脂材料とを混練するプロセスで酸化物母粒子から導電性微粒子が脱落することが防止されるため、損失特性の低下を抑制できる。熱処理は、300℃以上、1000℃以下で実施することが好ましい。前記温度範囲で熱処理を行なうことで焼結が進行して酸化物母粒子と導電性微粒子とが強く結合し、前記効果をより確実に得ることができる。
以上のように、酸化物母粒子と導電性微粒子との複合化に機械的エネルギーを利用することで、酸化物母粒子の表面に適度な高さの導電性微粒子(導電性材料)を均一に分散させ、酸化物粒子の3次元ネットワーク形成に適した状態を作り出すことができる。したがって、極めて高い誘電率と高い抵抗値とを両立した酸化物粒子を得ることができる。このように酸化物粒子表面で導電性材料が適度な高さをもって均一に分散した状態は、前記のような機械的エネルギーを利用することによって極めて容易に実現される。
なお、本発明の酸化物粒子は、沈殿法により製造することも可能である。沈殿法は、例えば、導電性材料である金属を含む水溶液中に酸化物母粒子を存在させ、酸化物母粒子表面に粒子状の金属を沈着させ、熱処理等により還元することにより導電性微粒子を固定する方法である。酸化物母粒子の表面に導電性微粒子を効率よく沈着させ、固定させるためには、沈殿反応の速度制御や、場合によっては酸化物母粒子を予め薄いPdCl2溶液で表面処理し、粒子表面に沈殿形成のシードとなるPdのクラスターを作っておくことが好ましい。沈殿法は、酸化物母粒子表面に導電性材料からなる微粒子を偏りなく分布させられ、また沈殿させる金属微粒子の粒径も制御しやすいことから、特にPd、Agを含む導電性微粒子を形成する場合に適用されることが好ましい。
ただし、処理時間が長時間かかることや、導電性材料が水に接触して酸化物粒子としての特性劣化を引き起こすこと、導電性材料によっては3次元ネットワーク形成に適した分散状態が得られないおそれがある。したがって、本発明の酸化物粒子の製造方法としては、前述のように、予め用意しておいた導電性微粒子を機械的エネルギーにより酸化物母粒子表面に固定する方法を採用することが好ましい。
以上のような酸化物粒子は、例えば複合材料に用いられて好適である。本発明の酸化物粒子を用いた複合材料は、例えば図1に示すように、酸化物粒子1と、樹脂材料2とを含み、これらが混合されてなる。そして、酸化物粒子1として、前述したような酸化物母粒子3の表面に導電性微粒子4が固定された酸化物粒子を用いる。樹脂材料と酸化物粒子との配合比は、誘電率と電気抵抗値とを両立可能なように適宜設定すればよく、誘電率を高める観点からは、酸化物粒子の配合量を極力高めることが好ましい。ただし、酸化物粒子の充填率を高めすぎると複合材料の流動性や基板とした際の強度が損なわれるため、酸化物粒子の充填率は例えば70体積%以下とすることが好ましい。
複合材料に使用される樹脂材料としては、この種の複合材料に用いられる樹脂材料をいずれも使用可能であり、例えばエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂や、フェノキシ樹脂、フッ素系樹脂、PPS樹脂、PPE樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂等を単独又は混合して使用できる。特に、樹脂材料としてポリビニルベンジルエーテル化合物を用いることが好ましい。ポリビニルベンジルエーテル化合物は、他の樹脂材料と比較して、誘電率εが低く、Q値が高いという優れた電気特性(ε=2.5、Q=260)を有し、加工性や耐湿性にも優れている。よって、樹脂材料としてポリビニルベンジルエーテル化合物を用いた場合には、誘電特性が良好な複合材料を得ることができる。
複合材料において高誘電率と高抵抗値とを確実に両立させる観点では、導電性微粒子の存在量も重要である。導電性微粒子の存在量の最適値は、後述のような計算により求めることができ、例えば酸化物母粒子と導電性微粒子の体積比で表すことができる。例えば、酸化物母粒子を100体積%としたとき、導電性微粒子が0.1体積%以上、20体積%以下であることが好ましい。この導電性微粒子の存在量の規定を1個の酸化物母粒子表面に固定される導電性微粒子の個数に換算すると、4個以上、10000個以下である。また、この導電性微粒子の存在量の規定を酸化物母粒子表面に固定される導電性微粒子の面積の割合に換算すると、1%以上、80%以下である。導電性微粒子の存在量は前記のいずれで規定してもよいが、検証が容易である等の理由から、酸化物母粒子と導電性微粒子の体積比で表すことが最も好ましい。導電性微粒子の存在量が前記範囲を下回る場合、複合材料に適用したときに導電性微粒子を介して酸化物母粒子同士を接触させる確率が低くなり、誘電率の向上が不十分となるおそれがある。導電性微粒子の存在量が前記範囲を上回る場合、複合材料に適用したときに導電性微粒子により導通回路が形成され、抵抗値や耐電圧特性の著しい低下を招くおそれがある。
以下、導電性微粒子の存在量を前記の範囲に規定する理由を示す。例えば酸化物粒子が平均粒径1.5μmの球状粉であると仮定した場合、その面心最密充填率は74.05%であるので、この酸化物粒子を樹脂材料中に配合した複合材料の流動性が保たれる50体積%の充填率での酸化物母粒子間の距離は、以下の数1で表される。すなわち、0.2μm程度である。
Figure 0004506957
このような酸化物母粒子間を導電性微粒子で埋めるためには、それぞれの酸化物母粒子の表面に平均粒径が0.1μm程度の導電性微粒子を固定すればよい。言い換えると、平均粒径が0.1μmの導電性微粒子を酸化物母粒子の表面に満遍なく付着させれば、全ての酸化物母粒子が導電性微粒子を介して互いに接触した状態になる。なお、実際にはこのような状態になると充填率が変わってしまうが、ここでは大まかに以上のような考え方を採用して問題ない。この場合の粒径比は、導電性微粒子/酸化物母粒子=0.1/1.5=1/15である。
酸化物母粒子表面に少なくとも1つの導電性微粒子が付着していればこうした接触が可能だが、導電性微粒子を介した酸化物母粒子間の接触確率を高める効果をより大きく得るためには、酸化物母粒子表面に付着した導電性微粒子が互いに接触しない程度に、なるべく多数を付着させることが好ましい。一般的に、粒子充填物の中での粒子の配位数は、4〜12である。また、酸化物母粒子の表面積から計算される付着可能な導電性微粒子の数は、4(R/r)EXP2として表され、例えば上述のように15倍の粒径比の場合は900個となる。以上のように、複合材料中での酸化物粒子の充填率、酸化物母粒子と導電性微粒子との粒径比等の関係から、前記のように導電性微粒子の存在量が定められる。
なお、導電性微粒子の存在量は、例えば以下のようにして確認される。先ず、複合材料中の樹脂材料を除去する。複合材料から樹脂材料を除去するには、例えば一定量の複合材料をるつぼに入れ、空気中又は酸素中で300℃以上に加熱し、樹脂を燃やす方法か、一定量の複合材料を有機溶剤で処理し、樹脂材料を溶かす方法のいずれかを採用する。次に、樹脂材料除去後に残った粒子量を測定し、粒子と樹脂の比重を用いて複合材料中の粒子の占める体積割合を計算する。次に、複合材料から取り出した一定量の粒子を酸で洗浄し、金属等の導電性微粒子を溶かした後、さらに水で良く洗浄し、乾燥後の粉の重量減少から金属等の導電性材と酸化物の割合を確認することにより、導電性微粒子の存在量を知ることができる。
本発明の複合材料においては、酸化物母粒子表面に導電性微粒子が固定されることにより、酸化物粒子の3次元ネットワーク形成に適した状態とされた酸化物粒子を用いることで、導電性材料を介して酸化物粒子同士が高確率で接触し、複合材料中に複数の酸化物粒子からなる3次元ネットワークを確実に構築できる。詳細は明らかではないが、ネットワーク化した複数の酸化物粒子は、複合材料を等価回路で考えたとき、あたかも1の大きな酸化物粒子としてふるまうことで、樹脂材料中に並列成分を構成すると考えられる。以上のように、導電性微粒子が固定された酸化物粒子を用いることで複合材料を理想的な「並列モデル」の状態に近づけ、複合材料全体で極めて高い誘電率を実現することができる。また、酸化物母粒子表面に導電性微粒子が固定されることにより、酸化物粒子の3次元ネットワーク形成に適した状態とされた酸化物粒子は、導電性材料同士の接続による導通回路の形成を防止する点においても、非常に適したものである。したがって、導電性材料同士の接続に起因する抵抗値の大幅な低下を防ぎ、高い絶縁性や耐圧性を維持することができる。
本発明の複合材料は、所定量の酸化物粒子と樹脂とを混合することにより得られる。複合材料は、粉末状でも流動状でもよい。混合は、例えば乾式混合によっても行えるが、ボールミル、攪拌機等を用い、トルエン、キシレン等の有機溶剤中で十分に混合してスラリー状とすることが好ましい。このスラリーを90℃〜120℃で乾燥させ、酸化物粒子と樹脂との塊を得、この塊を粉砕して酸化物粒子と樹脂との混合粉末を得ることができる。また、スプレー・ドライヤ等の顆粒製造装置を用いてスラリーから混合粉末を得ることもできる。混合粉末の平均粒径は50μm〜1000μm程度とすればよい。
本発明の基板は、前記複合材料から形成される層を少なくとも1層備えるものである。本発明の複合材料を用いて形成される基板は、例えば高周波用途の単層又は多層配線用の回路基板、多層モジュール基板等に適用される。また、例えば多層基板の内層のキャパシタ層に本発明の複合材料を適用することも可能である。さらに、本発明を適用した複合材料を基板上に印刷して導体パターンを接続することや、板状に成形した基板の両面に電極を貼り付けること等により、例えばコンデンサを形成することもできる。
本発明の基板は、前述の複合材料を成形することによって得ることができる。例えば前述の複合材料の粉末を100℃〜150℃で例えば板状等の所望の形状にプレス成形し、この成形物を例えば100℃〜200℃、30分〜480分の条件で重合又は硬化させることにより、本発明の基板が得られる。硬化に際しては、例えば補強材を存在させてもよい。補強材を添加することで、基板等の機械的強度や寸法安定性を向上させることができる。なお、酸化物粒子の樹脂への添加時期は、樹脂の重合又は硬化前とすることが好ましいが、場合によっては、重合又は硬化後に混合してもよい。ただし、完全に硬化した後における誘電体粉末の混合は望ましくない。
次に、本発明の具体的な実施例について、実験結果を基に説明する。
<実施例1:機械的複合化による誘電体母粒子へのNi微粒子の付着>
先ず、原料粉末を混合、焼成して誘電体材料を得、これを粉砕して0.139BaO−0.172Nd23−0.023BiO3−0.666TiO2なる組成の誘電体母粒子を得た。組成はモル比で表す。次に、ホソカワミクロン社製のメカノフュージョン(登録商標)装置を用いた複合化により、誘電体母粒子の表面にNiの微粒子を固定させた。具体的には、粒径1.5μmの誘電体母粒子に対し、メカノフュージョンによって0.5重量%、1.0重量%、2.0重量%、又は5.0重量%のNi微粒子を固定させた。Ni微粒子としては、平均粒径0.1μmのものを用いた。複合化の条件は、インナーピースと容器内壁との隙間を0.5mmとし、900rpmで30分間とした。
複合化処理を行なう前の誘電体母粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2に、1重量%のNi微粒子を添加し複合化処理を行なった後の誘電体粒子のSEMによる写真を図3に、2重量%のNi微粒子を添加し複合化処理を行なった後の誘電体粒子のSEMによる写真を図4に、5重量%のNi微粒子を添加し複合化処理を行なった後の誘電体粒子のSEMによる写真を図5に示す。これらの結果より、粒径0.1μm前後の球状の超微粒子(Ni)が誘電体母粒子の表面に付着していることが確認された。Ni微粒子の付着量は、添加量にほぼ比例している。また、図2〜図5より、Ni微粒子が優先的に誘電体母粒子表面の窪んだ箇所に集まっているように見受けられるが、これは、粒子同士を擦り合わせながら互いに付着させる本方法の原理に起因するもので、母粒子(粒径の大きいほう、すなわち誘電体母粒子)の出っ張りに付着したNi微粒子が擦り合いによって母粒子表面から脱落し易いのに対し、窪みに付着したNi微粒子は擦り合いの影響を受けにくく、表面から脱落しないので、そのまま表面に残る確率が高いためと推測される。
次に、Ni微粒子の付着量が0、2重量%、4重量%又は6重量%とされた誘電体粒子を用意し、誘電体粒子の充填量が40体積%となるように誘電体粒子と樹脂材料とを混合し、複合材料を作製した。樹脂材料としてはポリビニルベンジルエーテルを用いた。混合には、ボールミルを用いて有機溶剤中で行い、スラリー状の複合材料を得た。次に、スラリー状の複合材料を加熱して乾燥させ、得られた固形物を粉砕して誘電体粉末と樹脂の混合粉末を得た。混合粉末の平均粒径は100〜500μm程度とした。
次に、複合材料の混合粉末をプレス成形し、熱硬化させて基板を作製した。
また、誘電体粒子の充填量が50体積%となるように誘電体粒子の配合量を変えたこと以外は、同様にして複合材料を作製し、これを用いて基板を作製した。
得られた基板について、付着させるNi量を変化させたときの誘電特性(誘電率ε及び損失特性Q)を測定した。誘電特性(2GHz)は、空洞共振器法(摂動法)により測定した(ヒューレットパッカード社製83260A、8757Cを使用)。誘電体粒子を40体積%含むときの結果を図6に、誘電体粒子を50体積%含むときの結果を図7に示す。図6及び図7より、はっきりとした傾向ではないものの、いずれの充填率でも、Ni量の増加に伴い複合材料の誘電率εが増加することが確認された。なお、Ni微粒子を固定させた誘電体粒子の、誘電率の温度依存性については、未処理のものと比較して大きな差は認められなかった(図8)。
<実施例2:機械的複合化による誘電体母粒子へのカーボンブラック微粒子の付着>
次に、実施例1で用いた誘電体母粒子の表面に、実施例1と同様にホソカワミクロン社製のメカノフュージョン装置を用いた複合化により、カーボンブラックの微粒子を付着させた。具体的には、粒径1.5μmの誘電体母粒子に対し、メカノフュージョン法で2.0重量%、10.0重量%の親水性カーボンブラックHA−3微粒子(粒径30nm〜80nm)を付着させた。
2重量%のカーボンブラック微粒子を添加したときの誘電体粒子のSEMによる写真を図9に、10重量%のカーボンブラック微粒子を添加したときの誘電体粒子のSEMによる写真を図10に示す。図9及び図10より、粒径30nm〜80nm程度のカーボンブラックの微粒子が誘電体粒子の表面に付着していることが確認された。カーボンブラック微粒子の付着量は、添加量にほぼ比例している。また、Ni微粒子の場合と同様に、カーボンブラック微粒子も、母粒子表面の窪みに優先的に集まっているように見受けられる。
次に、カーボンブラック微粒子の付着量が0、3重量%、9重量%とされた誘電体粒子を用意し、誘電体粒子の充填量が40体積%となるように誘電体粒子と樹脂材料とを混合し、実施例1と同様に、複合材料を作製し、これを用いて基板を作製した。また、誘電体粒子の充填量が50体積%となるように誘電体粒子の配合量を変えたこと以外は、同様にして複合材料を作製した。
得られた基板について、付着させるカーボンブラック量を変化させたときの誘電特性(誘電率ε及び損失特性Q)を測定した。誘電体粒子を40体積%含むときの結果及び誘電体粒子を50体積%含むときの結果を、合わせて図11に示す。図11より、いずれの充填率でも、カーボンブラック量の増加に伴って、複合材料の誘電率εを急激に高められることがわかる。また、損失特性Qが低下する傾向が見られた。なお、誘電体母粒子表面にカーボンブラック微粒子を固定させた誘電体粒子の、誘電率の温度依存性については、未処理のものと比較して大きな差は認められなかった。
<実施例3:沈殿法による誘電体母粒子へのPd微粒子の付着>
次に、実施例1と同様の誘電体母粒子(粒径1.5μm)を所定濃度のPdCl2溶液に分散し、加熱しながら水を蒸発させ、0.5重量%、1.0重量%、2重量%のPdを誘電体母粒子の表面に沈着させた後、空気中、850℃で30分熱処理し、PdCl2を金属Pdに還元することにより、誘電体母粒子の表面にPd微粒子を付着させた。
以上のように作製したPdの微粒子が付着した誘電体粒子のSEMによる写真を図12に示す。図12から、沈殿法により高さ数十nm程度のPd微粒子が母粒子表面に付着していることが確認された。
また、実施例1と同様にして沈殿法によりPd粒子を固定した誘電体粒子と樹脂材料とを混合し、複合材料を作製し、これを用いて基板を作製した。
以上のように作製した基板について、付着させるPd量を変化させたときの誘電特性(誘電率ε及び損失特性Q)を測定した。結果を図13に示す。図13から、誘電体粒子の充填率が40体積%の複合材料でははっきりとした傾向を示さないが、誘電体粒子の充填率が50体積%の複合材料ではPd量の増加に伴って、複合材料の誘電率ε及び損失特性Qが高くなる傾向が見られた。なお、Pd粒子を固定させた誘電体粒子の、誘電率の温度特性については、未処理のものと比較して大きな差異は認められなかった(図14)。
以上の実験結果から、例えば機械的エネルギーを利用する方法又は沈殿法の利用により、酸化物母粒子表面に導電性微粒子を固定した酸化物粒子を用いることで、複合材料の電気特性を向上させることが可能であると確認された。
<実施例4:機械的複合化による誘電体母粒子へのNi微粒子の付着>
先ず、原料粉末を混合、焼成して誘電体材料を得、これを粉砕して0.139BaO−0.172Nd23−0.023BiO3−0.666TiO2なる組成の誘電体母粒子を得た。組成はモル比で表す。次に、この誘電体母粒子に、球状化処理を施した。次に、球状化処理した誘電体母粒子の表面にNiの微粒子を固定させた。具体的には、粒径1.5μmの誘電体母粒子に対し、メカノフュージョンによって1.0重量%、5.0重量%のNi微粒子を固定させた。Ni微粒子としては、平均粒径0.1μmのものを用いた。複合化の条件は、実施例1と同様に、インナーピースと内壁の隙間を0.5mmとし、900rpmで30分間とした。さらに、この複合化後の誘電体粒子に、窒素雰囲気中で850℃、30分間熱処理を施した。
5重量%のNi微粒子を添加し複合化処理を行なった後であり、熱処理前の誘電体粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図15に示す。また、熱処理後の誘電体粒子のSEMによる写真を図16に示す。これらの写真より、粒径0.1μm前後の球状のNi微粒子が球状誘電体粒子の表面に付着していることが確認された。また、図15及び図16より、破砕粉の場合にNi微粒子が優先的に誘電体粒子表面の窪んだ箇所に集まっているように見受けられるが、球状粉の場合、この現象がないことが確認された。
次に、Ni微粒子の付着していない未処理の球状誘電体母粒子と、複合化Ni微粒子の付着量が1重量%又は5重量%とされた誘電体粒子とを用意し、誘電体粒子の充填量が50体積%となるように誘電体粒子と樹脂材料とを混合し、実施例1と同様に複合材料を作製し、これを用いて基板を作製した。
得られた基板について、付着させるNi量を変化させたときの誘電特性を実施例1と同様に測定した。誘電体粒子を50体積%含むときの結果を図17に示す。図17より、Ni量の増加に伴い複合材料の誘電率εが増加していることが確認された。また、Ni量の増加に伴い損失特性Qがやや低下するが300以上を確保していることが確認された。さらに、Ni微粒子を固定した誘電体粒子では、複合化後に熱処理することにより、誘電率の向上がみられた。以上の実施例4の結果から、球状に近い形状の誘電体母粒子を使用することが有効であること、及び複合化の後、熱処理することにより誘電率のさらなる向上が可能であることが確認された。
本発明を適用した複合材料を模式的に示す図である。 メカノフュージョンを施す前の誘電体粒子の写真である。 メカノフュージョン法で1重量%のNi微粒子を付着させた誘電体粒子の写真である。 メカノフュージョン法で2重量%のNi微粒子を付着させた誘電体粒子の写真である。 メカノフュージョン法で5重量%のNi微粒子を付着させた誘電体粒子の写真である。 メカノフュージョン法でNi微粒子を付着させた誘電体粒子を含む複合材料における、Ni存在量と複合材料の誘電特性との関係を示す特性図である。 メカノフュージョン法でNi微粒子を付着させた複合材料における、誘電体粒子に付着したNi存在量と、複合材料の誘電特性との関係を示す特性図である。 メカノフュージョン法でNi微粒子を付着させた誘電体粒子を40体積%含む複合材料における誘電率温度特性を示す特性図である。 メカノフュージョン法で2重量%のカーボンブラック微粒子を付着させた誘電体粒子の写真である。 メカノフュージョン法で10重量%のカーボンブラック微粒子を付着させた誘電体粒子の写真である。 メカノフュージョン法でカーボンブラック微粒子を付着させた誘電体粒子を含む複合材料における、カーボンブラック存在量と複合材料の誘電特性との関係を示す特性図である。 沈殿法で2重量%のPd微粒子を付着させた誘電体粒子の写真である。 沈殿法でPd微粒子を付着させた誘電体粒子を含む複合材料における、Pd存在量と複合材料の誘電特性との関係を示す特性図である。 沈殿法でPd微粒子を付着させた誘電体粒子を50体積%含む複合材料における誘電率温度特性を示す特性図である。 熱処理前のNi微粒子を付着させた誘電体粒子の写真である。 熱処理後のNi微粒子を付着させた誘電体粒子の写真である。 Ni微粒子を付着させた誘電体粒子を含む複合材料における、熱処理の有無とNi存在量と誘電特性との関係を示す特性図である。 従来の複合材料を模式的に示す図である。
符号の説明
1 酸化物粒子、2 樹脂材料、3 酸化物母粒子、4 導電性微粒子

Claims (11)

  1. 酸化物母粒子の表面に導電性微粒子が不連続に固定されており、
    前記酸化物母粒子の平均粒径が0.5μm以上、30μm以下であり、
    前記導電性微粒子の平均粒径が30nm以上、前記酸化物母粒子の平均粒径の1/5以下であることを特徴とする誘電体粒子。
  2. 前記導電性微粒子は、酸化物母粒子と導電性微粒子との混合物に機械的エネルギーを加えることにより固定されていることを特徴とする請求項1記載の誘電体粒子。
  3. 前記導電性微粒子が、金属、カーボン、又は導電性酸化物のうち少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1または2記載の誘電体粒子。
  4. 前記金属が、Ni、Ag、Pd、Cu、Fe、Co、Ti、Zn、Al、Sn、In、Ga、Pt又はAuであることを特徴とする請求項3記載の誘電体物粒子。
  5. 前記酸化物母粒子が誘電率εが10以上の誘電体を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の誘電体粒子。
  6. 平均粒径が0.5μm以上、30μm以下の酸化物母粒子の表面に、平均粒径が30nm以上、前記酸化物母粒子の平均粒径の1/5以下である導電性微粒子を不連続に固定させることを特徴とする誘電体粒子の製造方法。
  7. 前記導電性微粒子の固定が、前記酸化物母粒子と導電性微粒子との混合物に機械的エネルギーを加えて複合化することにより行われることを特徴とする請求項6記載の誘電体粒子の製造方法。
  8. 前記複合化の後に300℃以上、1000℃以下で熱処理を行うことを特徴とする請求項7記載の誘電体粒子の製造方法。
  9. 請求項1〜5のいずれか1項記載の誘電体粒子と樹脂材料とが混合されてなることを特徴とする複合誘電体材料。
  10. 前記酸化物母粒子を100体積%としたとき、前記導電性微粒子を0.1体積%以上、20体積%以下含むことを特徴とする請求項9記載の複合誘電体材料。
  11. 請求項9又は10記載の複合誘電体材料を用いて形成される層を有することを特徴とする基板。
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