JP4505998B2 - 移動ロボット及び移動ロボット間のデータ通信制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、2以上の脚部を備えて各脚部による両脚支持及び単脚支持を交互に繰り返すことにより脚式移動を行う移動ロボットに係り、特に、自律的な動作により所定の作業空間を自在に動き回る移動ロボットに関する。
【0002】
更に詳しくは、作業空間内で出会った他のロボットとデータ通信を行う移動ロボット及び移動ロボット間のデータ通信制御方法に係り、特に、複数のロボットを経由しながら単一の無線送信機だけでは送受信不能な場所に居るロボットに対してデータ転送を行う移動ロボット及び移動ロボット間のデータ通信制御方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
電気的若しくは磁気的な作用を用いて人間の動作に似せた運動を行う機械装置のことを「ロボット」という。ロボットの語源は、スラブ語の"ROBOTA(奴隷機械)"に由来すると言われている。わが国においてロボットが普及し始めたのは1960年代末からであるが、その多くは、工場における生産作業の自動化・無人化などを目的としたマニピュレータや搬送ロボットなどの産業用ロボット(industrial robot)であった。
【0004】
アーム式ロボットのように、ある特定の場所に植設して用いるような据置きタイプのロボットは、部品の組立・選別作業など固定的・局所的な作業空間でのみ活動する。これに対し、移動式のロボットは、作業空間は非限定的であり、所定の経路上または無経路上を自在に移動して、所定の若しくは任意の人的作業を代行したり、ヒトやイヌあるいはその他の生命体に置き換わる種々の幅広いサービスを提供することができる。なかでも脚式の移動ロボットは、クローラ式やタイヤ式の移動ロボットに比し不安定で姿勢制御や歩行制御が難しくなるが、階段や梯子の昇降や障害物の乗り越えや、整地・不整地の区別を問わない柔軟な歩行・走行動作を実現できるという点で優れている。
【0005】
最近では、イヌやネコのように4足歩行の動物の身体メカニズムやその動作を模したペット型ロボット、あるいは、ヒトのような2足直立歩行を行う動物の身体メカニズムや動作をモデルにしてデザインされた「人間形」若しくは「人間型」のロボット(humanoid robot)など、脚式移動ロボットに関する研究開発が進展し、実用化への期待もますます高まってきている。
【0006】
脚式移動ロボットを、産業活動・生産活動等における各種作業の代行に適用することができる。例えば、原子力発電プラントや火力発電プラント、石油化学プラントにおけるメンテナンス作業、製造工場における部品の搬送・組立作業、高層ビルにおける清掃、火災現場その他における救助といったような、人間が容易に踏み込むことができない現場での危険作業・難作業の代行である。
【0007】
また、脚式移動ロボットの他の用途として、人間と居住空間を同一にする「共生」若しく「エンターティンメント」と呼ばれるものが挙げられる。この種の用途では、ロボットは、作業代行などの生活支援というよりも、生活密着という性格が濃厚である。エンターティンメント指向のロボットは、産業上の特定用途を高速・高精度に実現することよりも、作業期間中に実行する動作パターンそのものが研究・開発上の主題となる。
【0008】
一般に、ロボットは、オペレータから与えられた命令(コマンド)に従うようにデザインされる。ロボットへのコマンド入力あるいはその他のデータ入力は、例えば機体上に操作パネルを設けてロボット本体に対して直接入力するようにしてもよい。あるいは、コントローラを有線ケーブルでロボット本体に接続して、ケーブル長だけ離れた場所からロボットを遠隔的に操作して、ケーブルを介してコマンドやデータを転送するようにしてもよい。
【0009】
しかしながら、移動ロボットにおいては、移動中に機体上の操作パネルを操作することは困難である。また、脚式移動ロボットなどのように、障害物を回避しながら不特定の経路上を自在に移動することができるインテリジェントなロボットにおいては、有線ケーブルを介した操作に頼ると、ケーブルが移動作業の著しい制約条件となってしまい、折角の長所すなわちインテリジェンシを阻害してしまうことになる。例えば、ケーブルと可動脚が絡まってロボットが転倒して、ロボットや衝突物を損壊させてしまいかねない。
【0010】
このような理由により、移動ロボットに対するコマンド入力やデータを送信する方式として無線データ通信を利用した遠隔制御方式が極めて有効であると思料される。
【0011】
例えば、特開平10−34570号公報には、ロボットの移動方向前方に向けられたカメラによる撮像画像をモニタ上で安全を確認しながら、操作子で遠隔操作することができるロボット遠隔制御システムについて開示されている。
【0012】
また、本出願人に既に譲渡されている特願2000−102634号明細書には、ロボットの仕様に合致した端末ソフトウェアを用いてロボットを操作することができる、ロボットのための遠隔制御システムについて開示されている。
【0013】
しかしながら、電波を利用した無線データ通信の場合、電波自体が公共性の高い媒体であるため電波法の規制を受ける。すなわち、電波の許容される出力が規制され、遠隔地にまで移動したロボットに対してデータを供給することができない。
【0014】
例えば、工場などのプラントあるいはその他の比較的広い作業空間や、壁など無線データ伝送上の障害物の多い複雑な作業空間においては、単一の無線送信機のみでは移動ロボットに対する無線データの供給を保証することができなくなる。
【0015】
作業空間に複数の中継局を設けてデータ受信可能なエリアを拡大させることも可能である。しかしながら、ロボットが居場所を時々刻々と自律的に変えるような場合、中継局の設置場所の選択が問題になり、やはり移動ロボットに対するデータ送信を保証することができなくなる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、自律的な動作により所定の作業空間を自在に動き回る、優れた移動ロボットを提供することにある。
【0017】
本発明の更なる目的は、作業空間内で出会った他のロボットとデータ通信を行うことができる、優れた移動ロボット及び移動ロボット間のデータ通信制御方法を提供することにある。
【0018】
本発明の更なる目的は、複数のロボットを経由しながら単一の無線送信機だけでは送受信不能な場所に居るロボットに対してデータ転送を行うことができる、優れた移動ロボット及び移動ロボット間のデータ通信制御方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段及び作用】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、作業空間を自在に動き回るタイプの移動ロボットであって、
前記移動ロボットの機体を作業空間内で移動させる駆動部と、
無線データを送信する送信部と、
無線データを受信する受信部と、
送受信するデータを一時格納する記憶部と、
前記駆動部並びに無線データの送受信を制御する制御部と、
を備え、前記制御部は、
ある無線データ送受信可能領域において前記受信部で受信したデータを前記記憶部に一時格納するとともに、他の無線データ送受信可能領域に移動したことに応答して前記記憶部に記憶しておいたデータを前記送信部から送信する、
ことを特徴とする移動ロボットである。
【0020】
本発明において想定する移動ロボットの作業空間には、移動ロボットに対して指令を与える無線送受信装置と、無線データを送受信する複数台の移動ロボットが配置されている。
【0021】
本発明の第1の側面によれば、各移動ロボットは、同じ周波数帯の無線データを受信して、そのデータを本体のメモリに保管する。そして、移動ロボットは、さらに場所を移動した先でデータ未受信のロボットに出会うと、保管しておいた受信データを送信する。このような移動ロボット間のデータ転送を繰り返し行うことにより、指令の発行元である無線送受信からは送信不能な場所の移動ロボットにまでデータを供給することができる。
【0022】
本発明の第1の側面に係る制御部は、前記記憶部上の受信データを解析する。そして、該受信データが自身宛てであれば該受信データが記述した指令に従って機体動作を制御する。他方、該受信データが自身宛てでなければ他の無線データ送受信可能領域に移動したことに応答して前記記憶部に記憶しておいたデータを前記送信部から送信するようにすればよい。
【0023】
また、前記制御部は、前記受信部でデータを成功裏に受信できたことに応答して、データの送信元に対して確認応答信号を前記送信部から送信するようにしてもよい。このような場合、データを送信すると、受信したすべての移動ロボット1からの確認応答(ACK)信号をその台数分だけ検出することができる。
【0024】
また、前記制御部は、前記受信部で受信したデータに欠陥があったことに応答して、データの送信元に対して否定応答(NACK)信号やストール(STALL)信号を前記送信部から送信して、データの送信元である無線送受信装置や他の移動ロボットに対してその旨を通知するようにしてもよい。このような場合、データの送信元は、これらSTALL信号やNACK信号を受信したことに応答して、再度同じデータを送信するなど、欠陥データの再送制御を行うことができる。
【0025】
また、前記制御部は、前記送信部からデータを送信した後に確認応答信号を前記受信部で受信できなかった場合には、データ受信可能領域に他の移動ロボットが存在しない可能性があるので、前記駆動部を作動させて機体の居場所を移動させるか又は所定時間経過した後に前記送信部からのデータ送信を再開させるようにしてもよい。
【0026】
また、前記受信部にて同じデータを所定回数以上受信した場合、送信先の移動ロボットが送信元の移動ロボットに対して受信データを送信し直すというハウリング現象が発生している可能性が高い。したがって、前記制御部は、前記受信部にて同じデータを所定回数以上受信したことに応答して、否定応答信号を所定回数以上前記送信部から送信させて、データ送信元に対してハウリングの発生を通知するようにしてもよい。また、他方の送信元にあたる移動ロボットの制御部においては、前記受信部にて否定応答信号を所定回数以上受信したことに応答して、前記駆動部を作動させて機体の居場所を移動させるか又は所定時間の経過を待つなど、ハウリングを引き起こす環境を解除した状態で前記送信部からのデータ送信を再開させるようにしてもよい。
【0027】
また、本発明の第2の側面は、作業空間を自在に動き回るタイプの移動ロボットが他の移動ロボットと無線データ通信を行うためのデータ通信制御方法であって、
ある無線データ送受信可能領域において無線データを受信するステップと、
該受信データを一時格納するステップ、
他の無線データ送受信可能領域に移動したことに応答して該格納しておいた受信データを送信するステップと、
を具備することを特徴とする移動ロボットによるデータ通信方法である。
【0028】
本発明において想定する移動ロボットの作業空間には、移動ロボットに対して指令を与える無線送受信装置と、無線データを送受信する複数台の移動ロボットが配置されている。本発明の第2の側面によれば、各移動ロボットは、同じ周波数帯の無線データを受信して、そのデータを本体のメモリに保管する。そして、移動ロボットは、さらに場所を移動した先でデータ未受信のロボットに出会うと、保管しておいた受信データを送信する。このような移動ロボット間のデータ転送を繰り返し行うことにより、指令の発行元である無線送受信からは送信不能な場所の移動ロボットにまでデータを供給することができる。
【0029】
本発明の第2の側面に係る移動ロボットによるデータ通信方法は、さらに、一時格納した受信データを解析するステップと、該受信データが自身宛てであれば該受信データが記述した指令に従って機体動作を制御するステップと、該受信データが自身宛てでなければ他の無線データ送受信可能領域に移動したことに応答して前記記憶部に記憶しておいたデータを前記送信部から送信するステップとを備えていてもよい。
【0030】
また、データを成功裏に受信できたことに応答して、データの送信元に対して確認応答信号を送信するステップをさらに備えてもよい。このような場合、データを送信すると、受信したすべての移動ロボット1からの確認応答(ACK)信号をその台数分だけ検出することができる。
【0031】
また、受信したデータに欠陥があったことに応答して、データの送信元に対して否定応答信号を送信するステップをさらに備えてもよい。このような場合、データの送信元は、これらSTALL信号やNACK信号を受信したことに応答して、再度同じデータを送信するなど、欠陥データの再送制御を行うことができる。
【0032】
また、データを送信した後に確認応答信号を受信できなかった場合には、機体の居場所を移動させるか又は所定時間経過した後にデータ送信を再開させるステップをさらに備えてもよい。このような場合、データ受信可能領域に他の移動ロボットが存在しない可能性がある場合には、データ送信する環境を変えて、より効率的にデータ転送を行うことができる。
【0033】
また、同じデータを所定回数以上受信したことに応答して、否定応答信号を所定回数以上送信するステップをさらに備えてもよい。このような場合、、否定応答信号を所定回数以上前記送信部から送信させて、データ送信元に対してハウリングの発生を通知するようにしてもよい。また、他方の送信元にあたる移動ロボット側においては、否定応答信号を所定回数以上受信したことに応答して、機体の居場所を移動させるか又は所定時間の経過を待つステップを実行することによって、ハウリングを引き起こす環境を解除した状態でデータ送信を再開させるようにしてもよい。
【0034】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施例や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳解する。
【0036】
図1及び図2には、本発明の実施に供される「人間形」又は「人間型」の脚式移動ロボット1が直立している様子を前方及び後方の各々から眺望した様子を示している。図示の通り、脚式移動ロボット1は、脚式移動を行う左右2足の下肢と、体幹部と、左右の上肢と、頭部とで構成される。
【0037】
左右各々の下肢は、大腿部と、膝関節と、脛部と、足首と、足平とで構成され、股関節によって体幹部の略最下端にて連結されている。また、左右各々の上肢は、上腕と、肘関節と、前腕とで構成され、肩関節によって体幹部上方の左右各側縁にて連結されている。また、頭部は、首関節によって体幹部の略最上端中央に連結されている。
【0038】
体幹部ユニット内には、図1及び図2では見えていない制御部が配備されている。この制御部は、脚式移動ロボット1を構成する各関節アクチュエータの駆動制御や各センサ(後述)などからの外部入力を処理するコントローラ(主制御部)や、電源回路その他の周辺機器類を搭載した筐体である。制御部は、その他、遠隔操作並びに無線データ送受信用の通信インターフェースや通信装置を含んでいてもよい。
【0039】
図示の脚式移動ロボット1は、首、肩、両肘、両手首、体幹、股関節、両膝、両足首など、多数の関節軸を備えた多軸構造の機械装置である。各関節自由度は例えば、指示値通りに回転位置や回転各速度を制御可能な関節アクチュエータによって実現される。関節アクチュエータとしては、小型ACサーボ・アクチュエータを適用することができる。(例えば、本出願人に既に譲渡されている特願平11−33386号明細書には、脚式ロボットに適用可能な小型ACサーボ・アクチュエータについて開示されている。同明細書に記載のサーボ・アクチュエータは、ギア直結型で且つサーボ制御系をワンチップ化してモータ・ユニットに内蔵して構成される。)
【0040】
図3には、脚式移動ロボット1の電気・制御系統の構成図を模式的に示している。同図に示すように、脚式移動ロボット1は、全体の動作の統括的制御やその他のデータ処理を行う制御部20と、入出力部40と、駆動部50と、電源部60とで構成される。以下、各部について説明する。
【0041】
入出力部40は、入力部として移動ロボット1の目に相当するCCD(Charge Coupled Device)カメラ15や、耳に相当するマイクロフォン16、触感に相当するタッチセンサ18、あるいは五感に相当するその他の各種のセンサを含む。また、出力部として、口に相当するスピーカ17、あるいは点滅の組み合わせや点灯のタイミングにより顔の表情を形成するLEDインジケータ19などを装備している。これら出力部は、脚などによる機械運動パターン以外の形式で移動ロボット1からのユーザ・フィードバックを表現することができる。
【0042】
脚式移動ロボット1は、カメラ15を含むことで、作業空間上に存在する任意の物体の形状や色彩を認識することができる。
【0043】
駆動部50は、制御部20が指令する所定の運動パターンに従って移動ロボット1の機械運動を実現する機能ブロックであり、首関節7、尻尾関節8、股関節11A〜11D、膝関節12A〜12Dなどのそれぞれの関節におけるロール、ピッチ、ヨーなど各軸毎に設けられた駆動ユニットで構成される。図示の例では、移動ロボット1はn個の関節自由度を有し、したがって駆動部50はn個の駆動ユニットで構成される。各駆動ユニットは、所定軸回りの回転動作を行うモータ51と、モータ51の回転位置を検出するエンコーダ52と、エンコーダ52の出力に基づいてモータ51の回転位置や回転速度を適応的に制御するドライバ53の組み合わせで構成される。
【0044】
電源部60は、その字義通り、脚式移動ロボット1内の各電気回路等に対して給電を行う機能モジュールである。本実施形態に係る脚式移動ロボット1は、バッテリを用いた自律駆動式であり、電源部60は、充電バッテリ61と、充電バッテリ61の充放電状態を管理する充放電制御部62とで構成される。
【0045】
充電バッテリ61は、例えば、複数本のニッケル・カドミウム(Ni−Cd)電池セルをカートリッジ式にパッケージ化した「バッテリ・パック」の形態で構成される。
【0046】
また、充放電制御部62は、バッテリ61の端子電圧や充電/放電電流量、バッテリ61の周囲温度などを測定することでバッテリ61の残存容量を把握し、充電の開始時期や終了時期などを決定するようになっている。充放電制御部62が決定する充電の開始及び終了時期は制御部20に通知され、移動ロボット1が充電オペレーションを開始及び終了するためのトリガとなる。
【0047】
制御部20は、「頭脳」に相当し、例えば移動ロボット1の頭部ユニット3あるいは胴体部ユニット2に搭載される。
【0048】
図3には、制御部20の構成をさらに詳細に図解している。同図に示すように、制御部20は、メイン・コントローラとしてのCPU(Central Processing Unit)21が、メモリその他の各回路コンポーネントや周辺機器とバス接続された構成となっている。バス27は、データ・バス、アドレス・バス、コントロール・バスなどを含む共通信号伝送路である。
【0049】
RAM(Random Access Memory)22は、DRAM(Dynamic RAM)などの揮発性メモリで構成された書き込み可能メモリであり、CPU21が実行するプログラム・コードをロードしたり、実行プログラムによる作業データの一時的な保存のために使用される。
【0050】
ROM(Read Only Memory)23は、プログラムやデータを恒久的に格納する読み出し専用メモリである。ROM23に格納されるプログラム・コードには、移動ロボット1の電源投入時に実行する初期化・自己診断プログラムや、移動ロボット1の動作を規定する動作制御プログラムなどが挙げられる。動作制御プログラムの中には、他の移動ロボットとの間でデータ送受信や受信データのメモリ保管などの処理手続(後述)を規定した制御プログラムが含まれる。
【0051】
不揮発性メモリ24は、例えばEEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)のように、電気的に消去再書き込みが可能なメモリ素子で構成され、逐次更新すべきデータを不揮発的に保持するために使用される。逐次更新すべきデータには、例えば、製造番号や暗号鍵などのセキュリティ情報や、移動ロボット1の行動パターンを規定する各種モデルなどが挙げられる。
【0052】
インターフェース25は、制御部20外の機器と相互接続し、データ交換を可能にするための装置である。インターフェース25は、例えば、カメラ15やマイクロフォン16、スピーカ17との間でデータ入出力を行う。また、インターフェース25は、駆動部50内の各ドライバ53−1…との間でデータやコマンドの入出力を行う。
【0053】
また、インターフェース25は、RS(Recommended Standard)−232Cなどのシリアル・インターフェース、IEEE(Institute of Electrical and electronics Engineers)1284などのパラレル・インターフェース、USB(Universal Serial Bus)インターフェース、i−Link(IEEE1394)インターフェース、SCSI(Small Computer System Interface)インターフェース、メモリ・カード・インターフェースなどのような、コンピュータの周辺機器接続用の汎用インターフェースを備え、ローカル接続された外部機器との間でプログラムやデータの移動を行うようにしてもよい。
【0054】
さらに、制御部20は、無線通信インターフェース26やネットワーク・インターフェース・カード(NIC)27などを含み、無線データ通信、あるいはLAN(Local Area Network:例えばEthernet)やインターネットを経由して、外部のホスト・コンピュータとデータ通信を行うことができる。
【0055】
このような脚式移動ロボット1とホストコンピュータ100間におけるデータ通信の1つの目的は、ロボット機外(すなわち遠隔)のコンピュータ資源を用いて、脚式移動ロボット1の複雑な動作制御を演算したり、リモート・コントロールすることである。また、該データ通信の他の目的は、動作モデルやその他のプログラム・コードなど脚式移動ロボット1の動作制御に必要なデータやプログラムを、ネットワーク経由で遠隔の装置から脚式移動ロボット1に供給することにある。
【0056】
制御部20は、テンキー及び/又はアルファベット・キーからなるキーボード29を備えておいてもよい。キーボード29は、ロボット1の作業現場においてユーザが直接的なコマンド入力のために使用する他、パスワードなどの所有者認証情報の入力に用いられる。
【0057】
次いで、複数の脚式移動ロボット1A,1B,…間で無線データ送受信を行う処理について説明する。
【0058】
図5及び図6には、本発明の実施に適した脚式移動ロボット1の作業空間を模式的に示している。
【0059】
同図に示す例では、作業空間には、データの発信元(イニシエータ)である無線送受信装置100と、無線データ送受信機能を備えた複数台の脚式移動ロボット1A,1B,…が配設されている。勿論、脚式移動ロボット1A,1B,…はそれぞれ自律的に脚式移動する能力を有しており、作業空間内での居場所は不定である。
【0060】
例えば、データの発信元である無線送受信装置100が、現在は無線データの送受信不能な場所に存在する脚式移動ロボット1Nに対してデータ送信したい場合について考えてみる。
【0061】
図示の例では、無線送受信装置100とデータ送受信可能な範囲内には脚式移動ロボット1Aが存在する。また、脚式移動ロボット1Aとデータ送受信可能な範囲内(あるいは、脚式移動ロボット1Aが無線送受信装置100からデータ受信後さらに移動した場所においてデータ送受信可能な範囲内)には、他の脚式移動ロボット1Bが存在する。
【0062】
各脚式移動ロボット1A,1B,…は、無線送受信装置100あるいは他の脚式移動ロボットなど無線データ送信元からデータ受信可能な範囲に突入すると、まず通信データをリアルタイムで受信し、さらにこの受信データを機体内のメモリ(例えばRAM22)に保管しておく。
【0063】
さらに、各脚式移動ロボット1A,1Bは、メモリに受信データを保管した後は無線データ送信元として機能する。例えば、脚式移動ロボット1Aは、現在の居場所(あるいはデータ受信後に移動した場所)においてデータ送受信可能な他の脚式移動ロボット1Bを発見すると、これに対して無線データ送信を行う。
【0064】
このような脚式移動ロボット間の無線データ送受信を繰り返し実行することによって、無線送受信装置100からはデータ送受信不能な場所にまで通信データが順次移動していき、最終的には脚式移動ロボット1Nにまでデータが届くこととなる。
【0065】
図7には、脚式移動ロボット1における無線データの送受信メカニズムを模式的に示している。
【0066】
(1)まず、上位からの送信データを、無線通信インターフェース26の受信部において受信する。
【0067】
(2)受信したデータが、当該脚式移動ロボット1自身に宛てられたデータであるとき、この受信データをメモリ22に記憶する。CPU21は、メモリ22上の受信データを解析し、データが記述した指令に従って、行動パターンの発現、音声処理、画像処理などを実行する。そして、無線通信インターフェース26の送信部から確認応答及びデータ信号を送信して、上位すなわち無線データ送信元に対して受信確認を行う。
【0068】
このとき、無線データ伝搬路の環境など何らかの原因で受信データに欠陥が発見された場合には、無線通信インターフェース26の送信部からストール(STALL)信号を送信して、上位に対してその旨を伝える。または、CPU21は受信データの処理中に継続して上位からデータ送信されるような場合には、無線通信インターフェース26の送信部からNACK信号を送信して、上位に対してその旨を伝える。上位すなわち無線データ送信側は、これらSTALL信号やNACK信号を受信したことに応答して、再度同じデータを送信する。
【0069】
(3)他方、受信したデータが脚式移動ロボット1自身に宛てられたものではない場合には、受信データをメモリ22に一旦記憶して、無線通信インターフェース26の送信部からACK信号並びにデータ信号を送出して、上位に対して受信確認データを送信する。
【0070】
このとき、無線データ伝搬路の環境など何らかの原因で受信データに欠陥が発見された場合には、無線通信インターフェース26の送信部からストール(STALL)信号を送信して、上位に対してその旨を伝える。または、CPU21は受信データの処理中に継続して上位からデータ送信されるような場合には、無線通信インターフェース26の送信部からNACK信号を送信して、上位に対してその旨を伝える。
【0071】
次に、ACK信号を発生した後、メモリ22に一旦記憶した上位からの受信データを、無線通信インターフェース26の送信部から送出する。もし送信先からACK信号が返されない場合、CPU21は、メモリ22に送信データを一時記憶して、機体動作により場所を移動するか又は所定時間経過後にデータ送信を再開し、上述の処理を繰り返す。
【0072】
(4)また、同じデータを3回(又は所定回数)以上受信した場合、NACK信号を3回(又は所定回数)だけ送出する。上位すなわちデータ送信側は、NACK信号を受信したことに応答して、同じデータを送信するが、3回(又は所定回数)以上のNACK信号を受信した場合は、ハウリングを生じた可能性が高いので、データ送信を中止する。ハウリングは、図8に示すように、送信先の脚式移動ロボット1Jが送信元の脚式移動ロボット1Kに対して受信データを送信し直す現象である。同図に示すようなデータ伝送上のループを放置すると、無限に信号が発信されてしまう。このような場合、送信先から3回(又は所定回数)以上のNACK信号を受信した場合は、CPU21はメモリ22に送信データを一時記憶して、機体動作により場所を移動するか又は所定時間経過後にデータ送信を再開し、上述の処理を繰り返す。
【0073】
上位すなわちデータ送信元となる無線送受信装置や脚式移動ロボットは、上述した(1)〜(4)の動作を利用して、通信可能な脚式移動ロボット1の台数を検出することができる。データを送信すると、受信したすべての脚式移動ロボット1からのACK信号をその台数分だけ検出することができる。
【0074】
[追補]
以上、特定の実施例を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施例の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0075】
本発明の要旨は、必ずしも「ロボット」と称される製品には限定されない。すなわち、電気的若しくは磁気的な作用を用いて人間の動作に似せた運動を行う機械装置であるならば、例えば玩具等のような他の産業分野に属する製品であっても、同様に本発明を適用することができる。
【0076】
また、本明細書中では、2足直立歩行を行う人間形の脚式移動ロボットを例に挙げて本発明について説明してきたが、4足歩行ロボットや他の構成の移動ロボットに対しても、本発明を同様に適用することが可能である。
【0077】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、限定的に解釈されるべきではない。本発明の要旨を判断するためには、冒頭に記載した特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【0078】
【発明の効果】
以上詳記したように、本発明によれば、作業空間内で出会った他のロボットとデータ通信を行うことができる、優れた移動ロボット及び移動ロボット間のデータ通信制御方法を提供することができる。
【0079】
また、本発明によれば、複数のロボットを経由しながら単一の無線送信機だけでは送受信不能な場所に居るロボットに対してデータ転送を行うことができる、優れた移動ロボット及び移動ロボット間のデータ通信制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に供される脚式移動ロボット1を前方から眺望した様子を示した図である。
【図2】本発明の実施に供される脚式移動ロボット1を後方から眺望した様子を示した図である。
【図3】脚式移動ロボット1の電気・制御系統の構成図を模式的に示した図である。
【図4】制御部20の構成をさらに詳細に示した図である。
【図5】本発明の実施に適した脚式移動ロボット1の作業空間を模式的に示した図である。
【図6】本発明の実施に適した脚式移動ロボット1の作業空間を模式的に示した図である。
【図7】脚式移動ロボット1における無線データの送受信メカニズムを模式的に示した図である。
【図8】送信元と送信先の脚式移動ロボット間でデータ伝送のハウリングが生じた様子を示した図である。
【符号の説明】
1…脚式移動ロボット
15…CCDカメラ
16…マイクロフォン
17…スピーカ
18…タッチセンサ
19…LEDインジケータ
20…制御部
21…CPU
22…RAM
23…ROM
24…不揮発メモリ
25…インターフェース
26…無線通信インターフェース
27…ネットワーク・インターフェース・カード
28…バス
29…キーボード
40…入出力部
50…駆動部
51…モータ
52…エンコーダ
53…ドライバ
Claims (4)
- 指令を与える無線送受信装置及び他の1以上の移動ロボットが存在する作業空間を自在に動き回るタイプの移動ロボットであって、
前記移動ロボットの機体を作業空間内で移動させる駆動部と、
無線データを送信する送信部と、
無線データを受信する受信部と、
送受信するデータを一時格納する記憶部と、
前記駆動部並びに無線データの送受信を制御する制御部と、
を備え、前記制御部は、
前記受信部で受信した受信データを解析し、
前記受信部でデータを成功裏に受信できたことに応答してデータの送信元に対して確認応答信号を前記送信部から送信させるが、前記受信部で受信したデータに欠陥があったことに応答してデータの送信元に対して否定応答信号を前記送信部から送信させ、
前記受信部にて同じデータを所定回数以上受信したことに応答して、否定応答信号を前記所定回数だけ前記送信部から送信させ、
前記送信部からデータを送信した後に、前記無線送受信装置又は他の移動ロボットのいずれからも該送信したデータに対する確認応答信号を前記受信部で受信できなかった場合、又は、前記無線送受信装置又は他の移動ロボットのいずれかから該送信したデータに対する否定応答信号を前記受信部で所定回数以上受信した場合には、前記駆動部を作動させて機体の居場所を移動させるか又は所定時間経過した後に前記送信部からのデータ送信を再開させる、
ことを特徴とする移動ロボット。 - 前記制御部は、
該受信データが前記移動ロボット自身宛てであれば該受信データが記述した指令に従って機体動作を制御し、
該受信データが前記移動ロボット自身宛てでなければ、該受信データを前記記憶部に一時格納し、他の無線データ送受信可能領域に移動したことに応答して前記記憶部に記憶しておいたデータを前記送信部から送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の移動ロボット。 - 指令を与える無線送受信装置及び他の1以上の移動ロボットが存在する作業空間を自在に動き回るタイプの移動ロボットが他の移動ロボットと無線データ通信を行うためのデータ通信制御方法であって、
ある無線データ送受信可能領域において無線データを受信し解析するステップと、
前記無線データを成功裏に受信できたことに応答して、データの送信元に対して確認応答信号を送信するステップと、
前記無線データに欠陥があったことに応答して、データの送信元に対して否定応答信号を送信するステップと、
同じデータを所定回数以上受信したことに応答して、否定応答信号を前記所定回数だけ送信するステップと、
データを送信した後に、前記無線送受信装置又は他の移動ロボットのいずれからも該送信したデータに対する確認応答信号を前記受信部で受信できなかった場合、又は、前記無線送受信装置又は他の移動ロボットのいずれかから該送信したデータに対する否定応答信号を前記受信部で所定回数以上受信した場合に、機体の居場所を移動させるか又は所定時間経過した後にデータ送信を再開するステップと、
を有することを特徴とする移動ロボットによるデータ通信方法。 - 該受信データが前記移動ロボット自身宛てであれば該受信データが記述した指令に従って機体動作を制御するステップと、
該受信データが前記移動ロボット自身宛てでなければ、該受信データを一時格納し、他の無線データ送受信可能領域に移動したことに応答して前記記憶部に記憶しておいたデータを前記送信部から送信するステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の移動ロボットによるデータ通信方法。
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