JP4505104B2 - 防水塗膜形成用ロボット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物屋上面等の目的の施工面に樹脂防水剤を吹き付けて防水塗膜を形成する防水塗膜形成用ロボットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば建物屋上面等の施工面に防水塗膜を形成する防水作業では、従来、樹脂防水剤の吹き付け施工用のスプレーノズルを作業員が手で持って樹脂防水剤を目的の施工面に吹き付け塗装する工法が一般的である。例えば、建物屋上面の防水では、ノズルを施工面から適当な高さに保ち、適当な振りスピード、適当な足運びで、施工面に目的の厚さの防水塗膜を形成する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のような工法では、作業員の勘が頼りであるため、膜厚の安定に限界があり、膜厚精度が求められる場合には好ましくない。例えば、日内変動(例えば同日の午前と午後とで膜厚が変動)や日間変動(複数日にわたる作業で日によって膜厚が変動)を完全に解消することは困難であるし、作業員間でも差が出やすいため、膜厚安定は容易では無いことが実情である。また、作業に熟練が要求されるため、熟練作業員の確保、育成が容易で無いといった問題もある。
さらに、前記工法では、作業員は、ノズルに樹脂防水剤を供給するホースを引き摺りながら移動しつつ吹き付け作業を行わねばならず、建物屋上面等の比較的大きい面積の防水作業では、苦渋な作業を長時間継続しなければならず、このため、施工面全体での膜厚安定には事実上限界があるといった問題もある。
【0004】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、防水塗膜の形成の自動化を実現でき、しかも、目的の膜厚が安定に得られて施工精度を向上できる防水塗膜形成用ロボットを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、建物屋上面等の目的の施工面に樹脂防水剤を吹き付けて防水塗膜を形成する防水塗膜形成用ロボットであって、定速走行可能な走行部に、往復動機構によって前記走行部の走行方向にほぼ垂直な方向に往復動されるアームが設けられ、このアーム先端に前記樹脂防水剤を噴射する吹付ノズルが設けられており、前記往復動機構による前記アームの可動範囲両側に存在する移動方向反転位置あるいはその近傍に前記アームが到達したときに、前記吹付ノズルからの樹脂防水剤の吹き付け方向を前記吹付ノズルから垂直下方への吹き付けから前記施工面に対する吹付幅の端部に向けて傾斜させる吹付方向変更機構を備え、前記往復動機構による前記アームの可動範囲両側に存在する移動方向反転位置あるいはその近傍の間では、前記吹付ノズルから垂直下方への液状防水剤の吹き付けにより前記防水塗膜を形成することを特徴とする防水塗膜形成用ロボットを前記課題の解決手段とした。また、本発明は、目的の施工面に樹脂防水剤を吹き付けて防水塗膜を形成する防水塗膜形成用ロボットであって、定速走行可能な走行部に、往復動機構によって前記走行部の走行方向にほぼ垂直な方向に往復動されるアームが設けられ、このアーム先端に前記樹脂防水剤を噴射する吹付ノズルが設けられており、前記往復動機構による前記アームの可動範囲両側に存在する移動方向反転位置あるいはその近傍に前記アームが到達したときに、前記吹付ノズルからの樹脂防水剤の吹き付け方向を前記吹付ノズルから垂直下方への吹き付けから前記施工面に対する吹付幅の端部に向けて傾斜させる吹付方向変更機構を備え、前記往復動機構による前記アームの可動範囲両側に存在する移動方向反転位置あるいはその近傍の間では、前記吹付ノズルから垂直下方への液状防水剤の吹き付けにより前記防水塗膜を形成することを特徴とする防水塗膜形成用ロボットを前記課題の解決手段とした。
この防水塗膜形成用ロボットでは、走行部が走行しつつ、この走行部に設けられたアームを往復動機構により前記走行部の走行方向にほぼ垂直な方向に往復動させ、前記アーム先端の吹付ノズルから樹脂防水剤を目的の施工面に向けて噴射する。これにより、前記施工面に目的膜厚の防水塗膜が順次形成される。当該ロボットにより作業が自動化されるため、作業員は、当該ロボットの正常な作動の監視、施工条件に対応した作動条件の設定等を行えば良く、苦渋な作業から解放される。
【0006】
本発明では、以下の構成を採用することがより好ましい。
請求項記載の発明は、請求項1または2記載の防水塗膜形成用ロボットにおいて、前記走行部の走行速度、前記往復動機構による前記アームの移動速度が変更可能になっていることを特徴する。
請求項記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の防水塗膜形成用ロボットにおいて、前記走行部の走行方向前方の障害物を検知する障害物検知センサから前記障害物を検知したときに出力される検知信号に基づいて駆動して前記走行部の走行方向を方向転換する方向転換機構を備えることを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項1からのいずれかに記載の防水塗膜形成用ロボットにおいて、前記走行部および前記往復動機構の一方または両方の駆動と、前記吹付ノズルに前記樹脂防水剤を供給する防水剤供給機構の駆動とが連動されていることを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項記載の防水塗膜形成用ロボットにおいて、前記走行部の走行が停止されると、これに連動して前記防水剤供給機構による前記樹脂防水剤の供給が停止されることを特徴とする
請求項7記載の発明は、請求項5又は6記載の防水塗膜形成用ロボットにおいて、前記防水剤供給機構による樹脂防水剤の供給停止に連動して、前記吹付ノズル内に高圧ガスを送り込んで洗浄するノズル洗浄機構を備えることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の防水塗膜形成用ロボットにおいて、前記吹付ノズル近傍に前記樹脂防水剤の飛散を防止するカバーが取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下本発明の1実施の形態の防水塗膜形成用ロボット1(以下「ロボット1」と略称する)を、図面を参照して説明する。
図1は、ロボット1を示す図であって、(a)は構造の概略を示す正断面図、(b)は構造の概略を示す平断面図である。
図1(a)、(b)において、このロボット1は、走行部2と、往復動機構5と、往復動機構5によって往復動されるアーム4先端の吹付ノズル7に樹脂防水剤を供給する防水剤供給機構8とから概略構成されている。
【0008】
前記走行部2は、モータ等の駆動装置3の駆動力で回転駆動される車輪2aによって定速走行可能になっている。この走行部2の走行方向(矢印A)後側に設けられたアーム4は、前記走行部2に搭載された往復動機構5によって、前記走行部2の走行方向Aにほぼ垂直な方向に往復動されるようになっている。このアーム4は、前記走行部2から走行方向後方へ突出されており、その突出方向先端には防水剤供給機構8から供給された樹脂防水剤6を噴射する吹付ノズル7が設けられている。吹付ノズル7に接続されたホース8iは、防水剤供給機構8の防水剤供給用の供給ラインの一部を構成するものであり、優れた可撓性を有するものであり、吹付ノズル7が往復動されても、走行部2に設けられたホース支持部2bと吹付ノズル7の間で適宜追従変形して捩れや屈曲等を生じないため、樹脂防水剤6の供給を安定に継続できる。
【0009】
前記往復動機構5による吹付ノズル7の可動範囲の周囲は防水剤の飛散防止用のカバー7cによって取り囲まれているから、走行部2や、施工面10以外の周囲への防水剤6の無駄な付着を防止できる。前記カバー7cは織布、不織布、網状構造体等からなり、図1(a)では、走行部2から突出されたステー7dによって、吹付ノズル7の可動範囲を取り囲む蚊帳状に配置されている。前記カバーとしては、吹付ノズル7の可動範囲を取り囲む構成に限定されず、例えば、吹付ノズル7と一体に設けられたものも採用可能であるが、往復動機構5による吹付ノズル7の往復動の精度、駆動安定性、振動防止等の面から、カバーは吹付ノズル7と別体にすることが好ましい。また、前記カバー7cや、カバー7cの支持体(図1(a)ではステー7d)は、走行部2の走行に掛かるエネルギの節約、横揺れ防止等の走行安定性、方向転換の容易性等に鑑みて、出来るだけ軽量の素材からなることが好ましい。
防水剤6は、吹き付け後に硬化すると除去に手間が掛かることから、カバー7cの設置により目的の施工面10以外への防水剤6飛沫の付着等を防止することで、後の除去作業等を省略あるいは軽減できる。また、カバー7cは横風対策にもなり、多少強い横風が存在する条件でも、施工面10の目的位置への防水剤6の吹き付け施工を可能にする。
【0010】
このロボット1は、例えば建物屋上面や床等の施工面10に対しては、この施工面10を走行部2が走行しつつ、前記施工面10側、すなわち下向きにした吹付ノズル7から樹脂防水剤6を噴射して、施工面10に吹き付け塗装する。この時、図4(a)、(b)に示すように、往復動機構5により吹付ノズル7を往復動させながら走行部2が走行することで、走行部2の走行に伴って、該走行部2の走行方向後側に順次防水塗膜6aが形成されることとなる。また、防水剤供給機構8からの防水剤6の供給量が一定である場合、走行部2の走行が定速であること、吹付ノズル7の往復動が定速であることによって、目的膜厚の防水塗膜6aを容易に得ることができる。
なお、アーム4は、その中央部が走行部2に設けられたガイド9(図1(a)、(b)参照)に支持されつつ、該ガイド9をスライドするようにして走行方向Aにほぼ垂直な方向に移動するようになっているので、往復動機構5による移動では、がたつきや傾斜等を生じること無く安定な移動が実現される。
また、前記走行部2の走行速度、前記往復動機構5による前記アーム4の移動速度は、設定により可変である。走行部2の走行、往復動機構5によるアーム4の移動(往復動)は、変更後も定速であることを基本とする。
【0011】
図2は、防水剤供給機構8の一例を示す。
図2に示す防水剤供給機構8は、2種類の液剤からなる反応硬化性の樹脂防水剤6の圧送・供給に対応するものであり、ポンプ8aによって2つのタンク8b、8cから吹付ノズル7へ液剤を供給する供給ライン8d、8eを液剤個別(タンク個別)に備えている。2種類の液剤は、吹付ノズル7内に設けられた混合部7aにて攪拌混合され、吹付ガス供給部8fから供給される高圧の吹付用ガスによって吹付ノズル7先端からスプレー状に噴射される。
樹脂防水剤6としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等の公知のものが採用される。例えば、ウレタン樹脂では、イソシアネート基を持つ化合物と、アルコール、アミン等の活性水素基を持つ化合物との反応により硬化するので、供給配管8d、8eによってタンク8b、8cから個別に供給した液剤を吹付ノズル7の混合部7aで混合し、これを吹付用ガスによって混合後速やかにノズル7から噴射することで吹き付け施工される。施工面10に吹き付けられた防水剤6が硬化することで、防水塗膜6aが形成される。
なお、樹脂防水剤6を構成する液剤に、難燃剤、光沢剤等を加えることは任意である。
また、1液からなる防水剤に対応する防水剤供給機構では、供給ラインは1本で済む。
【0012】
次に、往復動機構5の一例を、図1(a)、(b)、図3(a)、(b)、図4(a)を参照して説明する。
これら図において、往復動機構5は、走行部2の幅方向(走行方向に対して垂直な方向)両側に対向配置された一対のギア5a、5b間に無端条体5dを巻き掛け、この無端条体5dにアーム4を取り付けて一体的に移動できるようにした構成であり、駆動装置5c(本実施の形態ではモータ)から一方のギア5aに伝達した駆動力によって前記無端条体5dを回転駆動することで、前記無端条体5dと一体的になっているアーム4を移動する。具体的には、無端条体5dは、それぞれチェーンであり、走行部2幅方向に沿って2本平行に設けられており、アーム4は、各無端条体5dを連結するようにして設けられたアタッチメント5eに固定されている。アタッチメント5eは、本実施の形態において無端条体5dであるチェーンを構成する各連結プレート5fから突設された舌片5gにネジ等により固定される。
この往復動機構5による前記アーム4の可動範囲両端に存在する移動方向反転位置5h、5iに前記アーム4が到達すれば、駆動装置5aによる無端条体5dの移動方向が自動的に反転される。この反転を繰り返してアーム4を連続的に往復動させることで、従来作業員が行っていたノズルの振りと同様の動作が実現される。なお、アーム4が移動方向反転位置5h、5iに到達したことを検知する手段としては、例えば、往復動機構5の駆動装置5cとしてステッピングモータを採用して、その駆動信号でアーム4の移動量を管理することや、ギア5a、5bの回転数を監視すること等によって可能である。
【0013】
また、このロボット1では、アーム4が移動方向反転位置5h、5iあるいはその近傍(移動方向反転位置5h、5iよりも可動範囲中央部に若干に寄った位置)に到達したときに、吹付ノズル7からの樹脂防水剤6の吹き付け量を減少させたり、吹き付け面積を広げる構成等を採用することがより好ましい。これにより、移動方向の反転時に生じる重ね塗りにより吹付幅(図4(b)中矢印W参照)方向両端に膜厚が厚い部分や薄い部分が形成されることを防止でき、目的膜厚の防水塗膜6aをより安定に形成できることとなり、施工精度を向上できる。但し、吹付塗装された直後の樹脂防水剤6は流動性によって平坦化するため、従来作業員がノズルの振りで行っていた作業でも、重ね塗りによる膜厚の増大は問題にならない範囲に収まることが普通であるから、吹付ノズル7からの樹脂防水剤6の吹き付け量を減少させたり、吹き付け面積を広げる構成等を採用することで、目的膜厚の塗膜6aがより安定かつ確実に得られ、施工精度が向上するのである。
【0014】
前述の構成の往復動機構5によって往復動される前記アーム4は、可動範囲両端の移動方向反転位置5h、5i近傍を除く部分では直線的に移動されるが、移動方向反転位置5h、5i近傍に到達するとギア5a、5b外周に沿って移動されるため、ギア5a、5bの中心軸回りに回転される。そして、アーム4先端に固定されている吹付ノズル7もアーム4と一体的に回転されて向きが変更されるため、前記吹付ノズル7からの樹脂防水剤6の吹き付け方向が変化される。具体的には、図4(a)、(b)に示すように、移動方向反転位置5h、5iに到達したアーム4の向きがギア5a、5bの中心軸回りに変更されると、吹付ノズル7の吹き付け向きは、吹付幅Wの端部に向けて傾斜される。これにより、吹付ノズル7から施工面10に向けて斜めに吹き付けられる防水剤6は、施工面10に対する垂直の吹き付けに比べて広い範囲に分散されることとなる。これによって、移動方向反転位置5h、5iにて吹付ノズル7の移動方向が反転された際に生じる重ね塗り部分にも、目的の膜厚あるいはそれに極めて近い膜厚が容易に得られる。なお、図示していないが、移動方向反転位置5h、5i付近では、ガイド9は、アーム4の移動軌跡に合わせて湾曲されている。
【0015】
また、目的の吹付幅Wの端部へ向けた樹脂防水剤6の噴射では、吹付ノズル7を吹付幅Wの端部の真上では無く、吹付幅W中央部に寄った所に位置に配置して傾斜させるので、常に垂直下方への吹き付けにより防水塗膜6aを形成する場合に比べて、往復動機構5によるアーム4や吹付ノズル7の可動範囲を狭くすることができる。このため、走行部2の小型化が可能になり、例えば、走行部2の幅寸法を吹付幅Wよりも小さくすることも可能になる。走行部2が小型化されれば、例えば、後述する方向転換等にも有利であり、障害物が多数存在する施工現場や、防水塗膜6aを形成する領域の形状が複雑である場合であっても施工可能、施工容易となり、このロボット1の汎用性が向上する。
【0016】
前記ギア5a、5bは、吹付ノズル7からの樹脂防水剤6の吹き付け方向を変化させる吹付方向変更機構として機能する。なお、吹付方向変更機構としては、これに限定されず、例えば、アーム4を傾けずノズル7のみを傾ける構成や、走行部2の走行方向前方へ向けてノズル7を傾斜させる構成等、各種構成が採用可能である。
【0017】
図1(a)、(b)に示すように、走行部2の走行方向A前側には、走行方向A前方の障害物を検知する障害物検知センサ11が設けられている。障害物検知センサ11としては、接触型、非接触型の各種センサが採用可能であるが、障害物検知時の方向転換を容易にする等の点から、例えば超音波センサ等の非接触型センサを採用することがより好ましい。
【0018】
走行部2の中央部に設けられた方向転換機構12は、例えば建物屋上の各種構造物、各種役物等の障害物13を検知した障害物検知センサ11から出力される検知信号に基づいて駆動して、前記走行部2の走行方向を方向転換する。
前記方向転換機構12は、前記障害物検知センサ11からの検知信号に基いて駆動される昇降機構12aが、走行部2下方へ支持脚12bを突出させて前記施工面10を押圧することで走行部2をリフトアップした後、前記支持脚12bの周囲に設けられたマスターギア12cに噛み合わされたピニオンギア12dを駆動装置12e(本実施の形態ではモータ)によって回転駆動して前記支持脚12b回りに転動することで、このピニオンギア12dと一体的に走行部2を前記支持脚12b回りに回転して方向転換するようになっている。マスターギア12c、ピニオンギア12d、駆動装置12eは、リフトアップした走行部2の向きを変える向き変更機構12fを構成する。
なお、図1(a)、(b)では、昇降機構12aとして、エア圧あるいは油圧により駆動されて支持脚12bの走行部2下方への出没駆動を行うシリンダ装置を例示しているが、方向転換機構12としては、この構成に限定されず、例えば、シリンダ装置の駆動力で駆動されるリンク機構を介して支持脚12bの出没動作を行う構成等、各種構成が採用可能であることは言うまでも無い。
【0019】
走行部2に搭載されている各機器、防水剤供給機構8側の各機器等、このロボット1を構成する各機器の作動は、図5に示す制御部20によって制御される。なお、制御部20の設置位置は、走行部2、施工現場あるいはその近傍に設置されるタンク8b、8c近傍等、いずれであっても良い。
図5に示すように、この制御部20に設けられたCPU24(中央演算処理装置)には、ロボット1に設けられた各センサ14、11(速度センサ14、障害物検知センサ11)や、作業員によって操作される操作盤21からの信号や指令が入力される入力部22と、この入力部22に入力された信号に基いてロボット1の各作動部へ作動指令を出力する出力部23とが接続されている。
【0020】
このロボット1では、走行部2および往復動機構5の駆動と、防水剤供給機構8の駆動とが前記制御部20によって連動されている。すなわち、このロボット1によって得られる膜厚は、走行部2の走行速度と、往復動機構5によるアーム4の移動速度とに対する防水剤供給機構8による樹脂防水剤6の供給量の関係によって決まるから、例えば、予め設定しておいた防水剤6供給量(流量)に対して、操作盤21の操作により得たい膜厚を入力することで、走行部2の走行速度と、往復動機構5によるアーム4の移動速度とが自動的に設定される構成等が採用可能である。
【0021】
例えば、障害物検知センサ11からの障害物13の検知信号が制御部20に入力された場合には、走行部2の走行や防水剤供給機構8による樹脂防水剤6の供給が自動的に停止される。また、操作盤21から作業員が入力した停止指令や、障害物検知センサ11で検知されなかった障害物への乗り上げ、走行床(施工面10)に存在する段差や凹所へのはまり込み、走行駆動系の故障等、何等かの原因によって走行部2が停止した場合でも、この走行部2の走行停止に連動して、防水剤供給機構8による樹脂防水剤6の供給は停止される。例えば、タンク8b、8cの液剤の残量を検知できるようにしておき、液剤が無くなったことを知らせる信号によって、走行部2の走行や、樹脂防水剤6の供給を自動的に停止することも可能である。
【0022】
走行部2の走行が停止されたら、これに連動して往復動機構5の駆動も自動的に停止することが好ましい。これにより、非常停止の場合の原因調査等を安全かつ速やかに行うことができる。また、走行部2の走行停止と連動して、防水剤供給機構8による防水剤6の供給を停止することは、防水剤6の無駄な消費や、現場での防水剤6の飛散等による無用な汚れ等を防止できる点で好ましい。
防水剤供給機構8による樹脂防水剤6の供給が停止されると、これに連動してノズル洗浄機構15が作動され、前記吹付ノズル7内に高圧ガスを送り込んで洗浄する。この動作により、ノズル7先端に残留する樹脂防水剤6の硬化による詰まりを防止できる。したがって、一時中断を含む吹き付け作業であっても、防水剤6の吹き付けを円滑に再開できる。吹き付け作業完了後には、アーム4から取り外したノズル7の洗浄や交換等を行うのでノズル7の詰まりの問題は生じないが、走行部2の方向転換時、非常停止時等では、吹き付け再開までにノズル7内の残留防水剤6が硬化して詰まりの原因になるから、防水剤供給機構8の停止と同時、あるいは、停止後速やかにノズル洗浄機構15による洗浄を行うことで、ノズル7の詰まりを効果的に防止できるのである。
【0023】
次に、このロボット1の防水施工動作の一例を図6を参照して説明する。
例えば建物屋上等の平場の施工では、走行部2が目的の施工領域内をジグザグに走行しながら、施工面10への防水剤6を吹き付け塗装して防水塗膜6aを形成していく。走行部2の移動経路は、操作盤21からの指令入力等により設定可能であるが、建物屋上のパラペット部のように、目的の施工領域を取り囲むように延在するような障害物が存在する場合には、この障害物を障害物検知センサ11で検知する度に走行部2の走行方向を折り返すようにすることで、施工領域全体の施工面10の吹き付け施工を行うことも可能である。
【0024】
図6に示すように、樹脂防水剤6の吹き付け塗装を行いながら矢印B方向に直線的に走行する走行部2の障害物検知センサ11が障害物13を検知して検知信号が出力されると、この検知信号に基いて、まず、走行部2の走行、往復動機構5の駆動、防水剤供給機構8による防水剤6の供給が停止され、次いで、方向転換機構12の駆動により走行部2の走行方向が90度変更(矢印C)される。
防水剤6の供給停止は、各供給ライン8d、8e(図2参照)に設けられている電磁弁8g、8hを閉塞するとともに、防水剤供給機構8のポンプ8aの駆動を停止することでなされる。以降の記載においても、防水剤6の供給停止は、同様の動作を指す。また、防水剤6の供給停止後に、速やかにノズル洗浄機構15が自動で駆動されて、ノズル7内の残留防水剤が除去される。ノズル洗浄機構15によるノズル7内の洗浄は、以降の記載においても、防水剤6の供給停止に合わせて、その直後に必ず行うものとする。
【0025】
走行部2の方向転換は、まず、昇降機構12a(図1(a)参照)が駆動して走行部2をリフトアップし、次いで、向き変更機構12fが駆動して走行部2の向きを90度変更して、矢印Cとする。走行部2が矢印Cに向けられたら、再度昇降機構12aを駆動して走行部2を施工面10上へ降ろし、防水剤6の吹き付け施工、すなわち、走行部2の走行、往復動機構5の駆動、防水剤供給機構8による防水剤6の供給(ポンプ8aによる防水剤6の圧送再開と電磁弁8g、8hの開放)を再開する。
矢印C方向への走行部2の走行距離が防水剤6の吹付幅W(約1m)に達したら、吹き付け施工の停止後、再度、方向転換機構12の駆動により再度走行方向を90度変更し、今度は、矢印Bを丁度180度反転した方向である矢印D方向とする。走行部2の走行距離は速度センサ14(図2、図5中、「距離速度センサ」)からのデータに基いて制御部20にて把握できるから、走行部2の走行距離が防水剤6の吹付幅Wに達すると同時に、制御部20の制御によって、吹き付け施工の停止は自動でなされる。また、方向転換、矢印D方向への吹き付け施工の再開も、制御部20の制御により自動で行うことができる。
【0026】
矢印D方向への走行部2の走行による吹き付け施工も、パラペット部等の障害物の検知により、施工停止、走行部2の方向転換が自動になされる。これにより、障害物を検知する度に、走行部2が折り返すようにして方向転換され、これを繰り返すことで、結局、障害物で取り囲まれるような領域を走行部2がジグザグに走行しながら、目的の施工面10全体に防水塗膜6aを吹き付け施工することができる。また、前記方向転換機構12による方向転換では、矢印B、C間、矢印C、D間で塗膜を連続させるので、結局、施工面10全体に目的の膜厚が安定に得られる。
【0027】
なお、パラペット部等、施工領域縁部の目安となる適切な障害物が存在しない場合は、操作盤21からの指令入力等により走行部2の移動経路等をプログラムし、このプログラムに基く制御部20の制御により吹き付け施工を行うことも可能である。走行部2の走行距離等は、速度センサ14からのデータにより制御部20で把握できるので、これに基いて走行部2の走行移動を、操作盤21から入力された指令に基いて自動で制御することができる。
また、施工領域縁部の目安となるパラペット部等の適切な障害物が存在する場合でも、施工領域の形状(例えば建物屋上の形状等)が複雑で、障害物の形状や配置も複雑であると、走行部2の方向転換を制御プログラムによって制御することが困難な場合があるが、このような場合は、操作盤21の操作によって直接、方向転換機構12等を運転して、方向転換等を行うようにしても良い。
【0028】
走行部2の方向転換は、施工領域内に存在する障害物を検知した場合でも自動的に行うことができる。施工領域の内部に存在する障害物は、操作盤21からの指令入力によりその位置や、障害物検知センサ11による検知時の方向転換動作等を予め制御部20に教示しておく。なお、走行部2の方向転換は、図6に示したように、矢印B、C、Dの順にて走行部2の走行方向を180度反転させることに限定されず、方向転換後の走行部2の走行方向は適宜、設定される。
また、制御部20に教示していない障害物が障害物検知センサ11によって検知された場合は、異常が検知されたものとして、ロボット1全体の作動を停止する。すなわち、制御部20に教示していない障害物の検知とは、走行部2の進行方向前方への人の侵入や、不用意に放置された障害物の検知等が考えられるため、この場合には、検知と同時にロボット1(特に走行部2)を緊急停止して、事故防止等を図る必要がある。
【0029】
本実施の形態のロボット1によれば、防水剤6の吹き付けによる防水塗膜6aの形成を自動化できるので、作業員を苦渋な作業から解放するとともに、従来、作業員の勘に頼っていた施工に比べて、目的の膜厚を安定かつ確実に得ることができ、広範囲の施工であっても、施工面10全体に目的膜厚で均等の防水塗膜6aを得ることができる。例えば、施工面10全体の施工に数日を要する場合でも、ロボット1の条件設定を変更しない限り、一定膜厚の防水塗膜6aが安定に得られる。
また、作業員は、ロボット1の駆動を監視するだけで良いので、所要人員を削減することができ、低コスト化できる。しかも、条件設定により目的膜厚が安定に得られることにより、熟練工の確保の必要が無くなるから、人員確保も容易になるといった利点がある。
【0030】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されず、各種変更が可能である。
例えば、走行部や往復動機構の具体的構造等は適宜変更可能である。
前記実施の形態では、建物屋上面や床面等への防水塗膜の形成に適したロボット1を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、往復動機構によるアームやノズルの移動方向を変更すれば、建物壁面等の垂直面などへの防水塗膜の形成にも対応可能である。さらに、往復動機構等の構成を変更すれば、前記建物屋上面や床面等の水平あるいは水平に近い面からこれに連続する建物壁面等へ連続的に防水塗膜を形成することも可能となる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の防水塗膜形成用ロボットによれば、走行部の定速走行と、この走行部に設けられたアームの往復動機構による吹付ノズルの往復動とによって、吹付ノズルから噴射される樹脂防水剤の目的の施工面への吹き付け塗装を自動化できるので、作業員の作業量の軽減、作業員数の削減等により、防水塗膜の形成の省力化、低コスト化を実現できる。また、設定した施工条件により目的膜厚の防水塗膜が形成されるので、膜厚精度が要求される場合でも対応できるといった優れた効果を奏する。
また、前記往復動機構による前記アームの可動範囲両側に存在する移動方向反転位置あるいはその近傍に前記アームが到達したときに、前記吹付ノズルからの樹脂防水剤の吹き付け方向を変化させる吹付方向変更機構を備えるから、防水剤の吹付幅の端部に形成される塗膜に目的の膜厚あるいはそれに近い膜厚を自動で簡単に得られるようになるといった優れた効果を奏する。
【0032】
請求項記載の防水塗膜形成用ロボットによれば、前記走行部の走行速度、前記往復動機構による前記アームの移動速度の変更により、形成する膜厚の調整が容易であるといった優れた効果を奏する。
【0033】
請求項記載の防水塗膜形成用ロボットによれば、前記走行部の走行方向前方の障害物を検知する障害物検知センサから前記障害物を検知したときに出力される検知信号に基づいて駆動する方向転換機構により、前記走行部の走行方向の方向転換を自動で行うことができるといった優れた効果を奏する。
【0034】
請求項記載の防水塗膜形成用ロボットによれば、前記走行部および前記往復動機構の一方または両方の駆動と、前記吹付ノズルに前記樹脂防水剤を供給する防水剤供給機構の駆動とが連動されているので、形成する膜厚の調整を容易かつ高精度に行うことができる。しかも、前記走行部や前記往復動機構、防水剤供給機構の連動制御によって、施工条件の維持の自動化も可能になるなど、現場管理面でも有利であるといった優れた効果を奏する。
【0035】
請求項記載の防水塗膜形成用ロボットによれば、前記走行部の走行が停止されると、これに連動して前記防水剤供給機構による前記樹脂防水剤の供給が自動的に停止されるので、方向転換時や異常発生に伴う緊急停止時には樹脂防水剤が無駄に噴射されることを防ぐことができ、現場を汚す等の問題を生じない。また、方向転換や走行部の走行の一時停止等では、防水剤の吹き付け再開時に塗膜を連続させたい要求があるが、走行部の走行停止と同時に防水剤の供給を止めることで、目的膜厚の塗膜を連続させることが容易になるといった優れた効果を奏する。
【0037】
請求項7記載の防水塗膜形成用ロボットによれば、前記防水剤供給機構による樹脂防水剤の供給停止に連動して、前記吹付ノズル内に高圧ガスを送り込んで洗浄するノズル洗浄機構を備えるから、吹付ノズル内の残留防水剤の硬化によるノズルの詰まりを短時間で確実に防止できるといった優れた効果を奏する。
【0038】
請求項8記載の防水塗膜形成用ロボットによれば、前記吹付ノズル近傍に前記樹脂防水剤の飛散を防止するカバーが取り付けられているので、目的の施工面以外への防水剤飛沫の付着によって現場を汚したり、走行部や往復動機構等の作動に影響を与えるといった不都合を防止できる。しかも、多少の横風でも、防水剤の吹き付け施工を可能にできるため、作業の耐候性が向上するといった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の防水塗膜形成用ロボットの1実施の形態を示す図であって、(a)は正断面図、(b)は平断面図である。
【図2】 図1の防水塗膜形成用ロボットの防水剤供給機構と、その制御系とを示すブロック図である。
【図3】 図1の防水塗膜形成用ロボットに適用される吹付方向変更機構の一例を示す図であって、(a)は吹付幅中央部を施工時のノズル向き、(b)は吹付幅端部を施工時のノズル向きを示す。
【図4】 図1の防水塗膜形成用ロボットに適用される往復動機構の作用を示す図であって、(a)は前記往復動機構による吹付ノズルの移動を模式的に示した側面図、(b)は前記往復動機構で移動される吹付ノズルによる樹脂防水剤の吹き付け施工を示す平面図である。
【図5】 図1の防水塗膜形成用ロボットに適用される制御部の一例を示すブロック図である。
【図6】 図1の防水塗膜形成用ロボットの方向転換動作の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
1…ロボット、2…走行部、4…アーム、5…往復動機構,吹付方向変更機構、5h,5i…移動方向反転位置、6…樹脂防水剤、6a…防水塗膜、7…吹付ノズル、7c…カバー、8…防水剤供給機構、10…施工面、11…障害物検知センサ、12…方向転換機構、13…障害物(パラペット部)、15…ノズル洗浄機構。

Claims (8)

  1. 建物屋上面等の目的の施工面に樹脂防水剤を吹き付けて防水塗膜を形成する防水塗膜形成用ロボットであって、定速走行可能な走行部に、往復動機構によって前記走行部の走行方向にほぼ垂直な方向に往復動されるアームが設けられ、このアーム先端に前記樹脂防水剤を噴射する吹付ノズルが設けられており、
    前記往復動機構による前記アームの可動範囲両側に存在する移動方向反転位置あるいはその近傍に前記アームが到達したときに、前記吹付ノズルからの樹脂防水剤の吹き付け方向を前記吹付ノズルから垂直下方への吹き付けから前記施工面に対する吹付幅(W)の端部に向けて傾斜させる吹付方向変更機構を備え、前記往復動機構による前記アームの可動範囲両側に存在する移動方向反転位置あるいはその近傍の間では、前記吹付ノズルから垂直下方への液状防水剤の吹き付けにより前記防水塗膜を形成することを特徴とする防水塗膜形成用ロボット。
  2. 的の施工面に樹脂防水剤を吹き付けて防水塗膜を形成する防水塗膜形成用ロボットであって、定速走行可能な走行部に、往復動機構によって前記走行部の走行方向にほぼ垂直な方向に往復動されるアームが設けられ、このアーム先端に前記樹脂防水剤を噴射する吹付ノズルが設けられており、
    前記往復動機構による前記アームの可動範囲両側に存在する移動方向反転位置あるいはその近傍に前記アームが到達したときに、前記吹付ノズルからの樹脂防水剤の吹き付け方向を前記吹付ノズルから垂直下方への吹き付けから前記施工面に対する吹付幅(W)の端部に向けて傾斜させる吹付方向変更機構を備え、前記往復動機構による前記アームの可動範囲両側に存在する移動方向反転位置あるいはその近傍の間では、前記吹付ノズルから垂直下方への液状防水剤の吹き付けにより前記防水塗膜を形成することを特徴とする防水塗膜形成用ロボット。
  3. 前記走行部の走行速度、前記往復動機構による前記アームの移動速度が変更可能になっていることを特徴する請求項1または2記載の防水塗膜形成用ロボット。
  4. 前記走行部の走行方向前方の障害物を検知する障害物検知センサから前記障害物を検知したときに出力される検知信号に基づいて駆動して前記走行部の走行方向を方向転換する方向転換機構を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の防水塗膜形成用ロボット。
  5. 前記走行部および前記往復動機構の一方または両方の駆動と、前記吹付ノズルに前記樹脂防水剤を供給する防水剤供給機構の駆動とが連動されていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の防水塗膜形成用ロボット。
  6. 前記走行部の走行が停止されると、これに連動して前記防水剤供給機構による前記樹脂防水剤の供給が停止されることを特徴とする請求項記載の防水塗膜形成用ロボット。
  7. 前記防水剤供給機構による樹脂防水剤の供給停止に連動して、前記吹付ノズル内に高圧ガスを送り込んで洗浄するノズル洗浄機構を備えることを特徴とする請求項5又は6記載の防水塗膜形成用ロボット。
  8. 前記吹付ノズル近傍に前記樹脂防水剤の飛散を防止するカバーが取り付けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の防水塗膜形成用ロボット。
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