〔第1の参考形態〕
まず、本発明の基になる一参考形態について図1ないし図9に基づいて説明すると以下の通りである。すなわち、本参考形態に係る液晶表示装置は、オフセットキャンセル機能および電圧レベルの増幅機能が設けられたバッファアンプを備えることにより、消費電力や回路のレイアウト面積を削減可能な液晶表示装置であって、液晶テレビジョン受像機や、液晶モニタをはじめとして、種々の液晶表示装置として広く使用されている。
以下では、バッファアンプの回路構成について説明する前に、液晶表示装置全体の概略構成および動作について簡単に説明する。また、説明の便宜上、例えば、i番目のデータ信号線SLi のように、位置を特定する必要がある場合にのみ、位置を示す数字または英字を付して参照し、位置を特定する必要がない場合や総称する場合には、位置を示す文字を省略して参照する。
すなわち、本参考形態に係る液晶表示装置1は、信号源VSからの映像信号VIDEOを表示する装置であって、図2に示すように、マトリクス状に配された画素PIX(1,1) 〜PIX(n,m) を有する画素アレイ2と、画素アレイ2のデータ信号線SL1〜SLnを駆動するデータ信号線駆動回路3と、画素アレイ2の走査信号線GL1〜GLmを駆動する走査信号線駆動回路4と、上記両駆動回路3・4の動作タイミングを決定するためのタイミング・ジェネレータ5と、上記映像信号VIDEOに基づいて、上記画素PIX(1,1) 〜PIX(n,m) の輝度を示すデジタルの映像データD(1,1) 〜D(n,m) を生成し、デジタルの映像信号DATとして、上記データ信号線駆動回路3に与えると共に、上記映像信号VIDEOに基づいて、上記タイミング・ジェネレータ5の動作タイミングを決定する制御信号を生成する制御回路6とを備えている。
本参考形態では、上記各部材2〜6が液晶モジュール11としてまとめられており、当該液晶モジュール11には、液晶モジュール11の外部の電源回路12からの電力供給を受けると共に、当該液晶モジュール内の各部材2〜6へ電力を供給するモジュール内電源回路7も設けられている。
また、上記データ信号線駆動回路3には、上記制御回路6からの映像データD(1,1) 〜D(n,m) を受け取るためのデジタルインターフェース(IF)回路31と、当該映像データD(1,1) 〜D(n,m) に応じた電圧レベルのアナログの映像信号O(1,1) 〜O(n,m) を生成するビデオ回路32とが設けられている。
上記画素アレイ2は、複数(この場合は、n本)のデータ信号線SL1〜SLnと、各データ信号線SL1〜SLnに、それぞれ交差する複数(この場合は、m本)の走査信号線GL1〜GLmとを備えており、1からnまでの任意の整数および1からmまでの任意の整数をjとすると、データ信号線SLiおよび走査信号線GLjの組み合わせ毎に、画素PIX(i,j) が設けられている。
なお、本参考形態の場合、各画素PIX(i,j) は、隣接する2本のデータ信号線SL(i-1) ・SLiと、隣接する2本の走査信号線GL(j-1) ・GLjとで囲まれた部分に配されている。
上記画素PIX(i,j) は、例えば、図3に示すように、スイッチング素子として、ゲートが走査信号線GLjへ、ソースがデータ信号線SLiに接続された電界効果トランジスタSW(i,j) と、当該電界効果トランジスタSW(i,j) のドレインに、一方電極が接続された画素容量Cp(i,j) とを備えている。また、画素容量Cp(i,j) の他端は、全画素PIX…に共通の共通電極線に接続されている。上記画素容量Cp(i,j) は、液晶容量CL(i,j) と、必要に応じて付加される補助容量Cs(i,j) とから構成されている。
上記画素PIX(i,j) において、走査信号線GLjが選択されると、電界効果トランジスタSW(i,j) が導通し、データ信号線SLiに印加された電圧が画素容量Cp(i,j) へ印加される。一方、当該走査信号線GLjの選択期間が終了して、電界効果トランジスタSW(i,j) が遮断されている間、画素容量Cp(i,j) は、遮断時の電圧を保持し続ける。ここで、液晶の透過率あるいは反射率は、液晶容量CL(i,j) に印加される電圧によって変化する。したがって、走査信号線GLjを選択し、当該画素PIX(i,j) への映像データDに応じた電圧をデータ信号線SLiへ印加すれば、当該画素PIX(i,j) の表示状態を、映像データDに合わせて変化させることができる。
上記構成において、図2に示す走査信号線駆動回路4は、各走査信号線GL1〜GLmへ、例えば、電圧信号など、選択期間か否かを示す信号を出力している。また、走査信号線駆動回路4は、選択期間を示す信号を出力する走査信号線GLjを、例えば、タイミング・ジェネレータ5から与えられるクロック信号GCKやスタートパルス信号GSPなどの制御信号に基づいて変更している。これにより、各走査信号線GL1〜GLmは、予め定められたタイミングで、順次選択される。
さらに、データ信号線駆動回路3のデジタルIF回路31は、上記タイミング・ジェネレータ5からの制御信号の示すタイミングで動作して、制御回路6からの映像信号DATから、各画素PIX…への映像データD…を取得する。
本参考形態では、例えば、上記制御回路6は、各画素PIX…への映像データD…を時分割で、データ信号線駆動回路3のデジタルIF回路31に伝送しており、この場合、上記デジタルIF回路31は、上記制御回路6からの映像信号DATを、各画素PIX…に応じたタイミングでサンプリングするなどして、それぞれの画素PIX…への映像データD…を取得する。
さらに、デジタルIF回路31は、走査信号線駆動回路4が選択中の走査信号線GLjに対応する各画素PIX(1,j) 〜PIX(n,j) への映像データD(1,j) 〜D(n,j) を、ビデオ回路32へ出力し、ビデオ回路32は、各映像データD(1,j) 〜D(n,j) に対応する電圧レベルの出力信号O(1) 〜O(n) を、各データ信号線SL1〜SLnへ出力する。
一方、各画素PIX(1,j) 〜PIX(n,j) は、自らに対応する走査信号線GLjが選択されている間に、自らに対応するデータ信号線SL1〜SLnに与えられた出力信号O(1) 〜O(n) に応じて、それぞれの透過率を調整して、自らの明るさを決定する。これにより、各画素PIX(1,j) 〜PIX(n,j) の輝度は、映像データD(1,j) 〜D(n,j) の示す輝度になるように制御される。
ここで、走査信号線駆動回路4は、走査信号線GL1〜GLmを順次選択している。したがって、画素アレイ2の全画素PIX(1,1) 〜PIX(n,m) を、それぞれへの映像データDが示す明るさに設定でき、画素アレイ2へ表示される画像を更新できる。
ここで、上記ビデオ回路32は、図4に示すように、上記映像データDの取り得る値、それぞれに対応する基準電位群を生成する基準電位生成回路41と、上記基準電位生成回路41が生成している基準電位群の中から、上記映像データDの値に応じた基準電位を選択して出力するセレクタ42と、セレクタ42の出力電圧Vinに応じた電圧レベルの出力信号Voutを、アナログの映像信号(出力信号)Oとして出力するバッファ回路43とを備えている。
ここで、図2の構成では、ビデオ回路32が各データ信号線SL…をそれぞれ駆動しているので、図4のセレクタ42およびバッファ回路43は、データ信号線SL毎に設けられている。なお、上記基準電位生成回路41もデータ信号線SL毎に設けてもよいが、本参考形態では、レイアウト面積をより削減するため、各セレクタ42およびバッファ回路43に共通に基準電位生成回路41を設けている。また、映像データD(i,j) は、画素PIX(i,j) の輝度を示す値であって、例えば、画素アレイ2がモノクロ表示の場合は、画素PIX(i,j) の輝度を示している。一方、画素アレイ2がカラー表示可能であり、複数の互いに隣接する画素(サブ画素)PIXから、1ピクセルが構成されている場合、映像データD(i,j) は、当該ピクセルの色成分(例えば、R成分、G成分、B成分)のうち、対応するサブ画素PIX(i,j) の色に対応する成分に応じた輝度になる。
また、本参考形態では、後述するように、黒表示時の電位と白表示時の電位との高低関係が、時間と共に切り換わっているので、上記セレクタ42は、現時点が、いずれを高く設定すべき期間に含まれているかに応じて、映像データDに対応する基準電圧を切り換えている。より詳細には、白表示時の電位の方を高くする場合は、映像データDによって特定される輝度の値が高い程、より高い基準電位を選択し、白表示時の電位の方を低くする場合は、映像データDによって特定される輝度の値が高い程、より低い基準電位を選択する。
上記基準電位生成回路41は、例えば、図5に示すように、互いに直列に接続された抵抗群51を備えており、抵抗群51の両端には、モジュール内電源回路7から供給される高電位Vhと低電位Vlとが印加されている。また、抵抗群51の両端、並びに、抵抗群51を構成する各抵抗の接続点のうちの複数は、それぞれ、基準電位を出力する端子に接続されている。なお、図5では、一例として、抵抗群51の両端、並びに、抵抗群51を構成する各抵抗の接続点の全てが、それぞれに対応する出力端子に接続されている場合を図示している。
詳細は後述するように、本参考形態に係るバッファ回路43は、図23に示すバッファ回路と同様に、出力インピーダンスよりも入力インピーダンスが高くなるように構成されているだけではなく、上記バッファ回路とは異なって、基準とするプリセット電位Vxに対する入力電圧Vinを、予め定められた定数α倍に増幅し、増幅後の電圧を出力できるように構成されている。すなわち、バッファ回路43は、出力電圧Voutが、以下の式(1)に示すように、
Vout=Vx+α・(Vin−Vx) …(1)
となるように構成されている。
これに伴なって、図6に示すように、本参考形態に係る基準電位生成回路41が出力している基準電位群のうち、最大レベルの基準電位Vi_maxと最小レベルの基準電位Vo_maxとの差(Vvideo)は、バッファ回路43が出力する必要のある最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの差(α・Vvideo)の1/αに抑えられている。言い換えると、モジュール内電源回路7の供給する高電位Vhと低電位Vlとの差は、上記最大レベルの基準電位と最小レベルの基準電位との差を上記最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの差と同じに設定する場合と比較して、1/αに設定されている。
本参考形態に係るバッファ回路43は、オフセットキャンセル機能および電圧レベルの増幅機能を有するものであって、図1に示すように、予め定められたプリセット電位Vxを基準にして、入力端子Tinに印加された入力電圧Vinを増幅し、増幅後の電圧Voutを、出力端子Toutから出力することができる。
また、上記バッファ回路43には、出力端子が上記出力端子Toutに接続された差動増幅器A1と、当該差動増幅器A1の反転入力端子に一端が接続されたオフセットキャンセル用のキャパシタC1とを備えている。また、当該キャパシタC1および上記反転入力端子の接続点となるノードNimは、キャパシタC2を介して接地されていると共に、スイッチSW1を介して上記差動増幅器A1の出力端子に接続されている。
さらに、上記キャパシタC1の他端となるノードNifは、スイッチSW2を介して上記差動増幅器A1の出力端子に接続されていると共に、当該ノードNifには、スイッチSW3を介して、プリセット電位Vxが印加されている。
また、上記差動増幅器A1の非反転入力端子は、スイッチSW4を介して、上記入力端子Tinに接続されていると共に、上記非反転入力端子およびスイッチSW4の接続点となるノードNipには、スイッチSW5を介して、上記プリセット電位Vxが印加されている。
さらに、上記バッファ回路43には、上記各スイッチSW1〜SW5の導通/遮断を制御する制御回路CNT1が設けられている。なお、制御回路CNT1による各スイッチSW1〜SW5の制御タイミングについては、動作の説明と共に記載する。
また、上記各キャパシタC1・C2の静電容量値を、それぞれCofs・Ctu、上記差動増幅器A1の反転入力端子および非反転入力端子の入力容量の静電容量値をCinとすると、それぞれの静電容量値Cofs、CtuおよびCinは、以下の式(2)に示すように、
α = (Cofs+Cin+Ctu)/Cofs …(2)
となるように設定されている。
上記構成において、制御回路CNT1は、オフセットキャンセル期間の開始時点(図7に示す時点t1)に、スイッチSW1を導通させ、スイッチSW2を遮断する。さらに、上記スイッチSW3およびSW5を導通させると共に、スイッチSW4を遮断する。
これにより、差動増幅器A1の反転入力端子と出力端子とが接続されると共に、キャパシタC1のスイッチSW3側の端部のノードNifは、差動増幅器A1の出力端子と切り離される。また、プリセット電位Vxは、キャパシタC1を介して、差動増幅器A1の反転入力端子に印加される。さらに、プリセット電位Vxは、差動増幅器A1の非反転入力端子にも印加される。
この状態では、上記ノードNifの電位Vifおよび差動増幅器A1の非反転入力端子の電位Vipは、プリセット電位Vxに保たれる。一方、差動増幅器A1の反転入力端子の電位Vimは、差動増幅器A1の出力端子の電位と同じ電位になる。ここで、差動増幅器A1のゲインの絶対値は、充分大きな値に設定されている。また、上述したように、差動増幅器A1の両入力端子の入力容量の静電容量値は、互いに同じ値(Cin)である。したがって、上記電位Vimは、差動増幅器A1のオフセット電圧をVofsとすると、Vx+Vofsとなり、上記オフセットキャンセル用のキャパシタC1の両端には、差動増幅器A1のオフセット電圧Vofsが印加される。
ここで、当該キャパシタC1の両端は、プリセット電位Vxに維持される端子または出力端子Toutに接続されており、キャパシタC1は、これらの端子を介して電荷を蓄積したり、電荷を放出したりできる。したがって、この状態では、当該キャパシタC1には、オフセット電圧Vofsに応じた量(=Cofs・Vofs)の電荷が蓄積される。
一方、時点t2になり、オフセットキャンセル期間が終了すると、制御回路CNT1は、上記スイッチSW1を遮断する。これにより、差動増幅器A1の反転入力端子のノードNimは、フローティングノードになる。
さらに、上記時点t2の後の時点t3になると、制御回路CNT1は、スイッチSW2およびSW4を導通させると共に、スイッチSW3およびSW5を遮断する。これにより、キャパシタC1のスイッチSW3側の端部のノードNifは、差動増幅器A1の出力端子に接続されると共に、差動増幅器A1の非反転入力端子には、入力端子Tinの電圧Vinが印加される。
ただし、時点t3における各スイッチSW2〜SW4の切り換えの際には、上記ノードNimは、フローティングノードになっているので、当該ノードNimの電荷は、保存されたまま、各キャパシタC1・C2、および、差動増幅器A1の入力容量に再分配される。
ここで、差動増幅器A1の動作点を0〔V〕とすると、時点t3から時点t4までの出力期間において、差動増幅器A1の出力電圧Voutは、以下の式(3)に示すように、
Vout=−A・(Vip−Vim+Vofs)
=−A・(Vin−Vim+Vofs) …(3)となる。なお、上式において、Aは、差動増幅器A1のゲインであり、Vofsは、差動増幅器A1のオフセット電圧である。
さらに、スイッチSW1の切り換え直前の時点における、上記ノードNimの電荷Qim1は、以下の式(4)に示すように、
Qim1=Vofs・Cofs+(Vx+Vofs)・(Cin+Ctu) …(4)
となる。一方、スイッチSW2〜SW4の切り換え後における、上記ノードNimの電荷Qim2は、以下の式(5)に示すように、
Qim2=(Vim−Vout)・Cofs+Vim・(Cin+Ctu) …(5)
となる。
したがって、Qim1=Qim2、および、上記式(3)〜式(5)を、差動増幅器A1の反転増幅端子の電位Vimについてとくと、以下の式(6)に示すように、
Vim=Vin・(A・Cofs)/(A・Cofs−Cofs−Cin−Ctu)
−Vx・(Cin+Ctu)/(A・Cofs−Cofs−Cin−Ctu)
+Vofs …(6)
となり、当該式(6)を式(3)に代入すると、以下の式(7)に示すように、
Vout=A/(A・Cofs−Cofs−Cin−Ctu)
・〔Vin・(Cofs+Cin+Ctu)
−Vx・(Cin+Ctu)〕 …(7)
なる。
ここで、差動増幅器A1のゲインAの絶対値は、充分大きな値に設定されているので、A/(A・Cofs−Cofs−Cin−Ctu)は、1/Cofsと見なすことができる。したがって、上記式(7)は、以下の式(8)に示すように、
Vout=Vx+(Cofs+Cin+Ctu)・(Vin−Vx)/Cofs
=Vx+α・(Vin−Vx) …(8)
となる。
これにより、出力期間(時点t3から時点t4までの期間)において、バッファ回路43は、差動増幅器A1固有のオフセット電圧Vofsがキャンセルされ、しかも、プリセット電位Vxを基準にして、入力電圧Vinを増幅した値の出力電圧Voutを出力することができる。
出力期間が終了し、次のオフセットキャンセル期間になると(t4の時点)、制御回路CNT1は、時点1と同様に、スイッチSW1、SW3およびSW5を導通させると共に、スイッチSW2およびSW4を遮断する。これにより、上記キャパシタC1には、再度、差動増幅器A1のオフセット電圧Vofsに応じた量の電荷が蓄積される。
なお、時点t4以降は、時点t1〜t4の動作が繰り返される。これにより、バッファ回路43は、各オフセットキャンセル期間になると、キャパシタC1にオフセット電圧Vofsに応じた量の電荷を蓄積し、各出力期間になると、上述した式(8)あるいは(1)に示すように、基準とするプリセット電位Vxに対する入力電圧Vinを、予め定められた定数α倍に増幅し、増幅後の電圧を出力する。
以上のように、本参考形態に係るバッファ回路43では、差動増幅器A1の反転入力端子が、キャパシタC2を介して接地されており、各キャパシタC1・C2、並びに、差動増幅器A1の各入力端子の静電容量値Cofs、CtuおよびCinは、上述の式(2)のように設定されている。
これにより、上記バッファ回路43は、上述の式(1)に示すように、各出力期間において、基準とするプリセット電位Vxに対する入力電圧Vinを、予め定められた定数α倍に増幅し、増幅後の電圧Voutを出力することができる。言い換えると、本参考形態に係るバッファ回路43は、基準電位生成回路41からの低振幅の入力信号を、所定の高振幅の信号に増幅して出力できる。
また、オフセットキャンセル期間になると、キャパシタC1にオフセット電圧Vofsに応じた量の電荷を蓄積すると共に、差動増幅器A1の反転入力端子のノードNimに蓄積された電荷を保存しつつ、各スイッチSW1〜SW5を切り換えているので、出力電圧Voutからは、オフセット電圧Vofsがキャンセルされている。
これらの結果、バッファ回路43が、最大電圧Vmaxから、最小電圧Vminまでの電圧を、何ら支障なく、出力できるにも拘わらず、基準電位生成回路41の出力している基準電位群のうち、最大レベルの基準電位と最小レベルの基準電位との差を、バッファ回路43の出力する必要のある最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの差の1/αに抑えることができる。
したがって、従来の構成、すなわち、最大レベルの基準電位と最小レベルの基準電位との差を、バッファ回路43の出力する必要のある最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの差と同じに設定する構成と比較して、基準電位生成回路41に設けられた抵抗群51(図5参照)の両端に印加する高電位Vhと低電位Vlとの電位差を、小さく設定することができる。この結果、上記抵抗群51における消費電力を削減できると共に、抵抗群51の形成に必要なレイアウト面積を縮小でき、バッファ回路43および基準電位生成回路41を含む液晶表示装置1の消費電力、並びに、当該液晶表示装置1のレイアウト面積を削減できる。
なお、バッファ回路43が低振幅の入力信号を増幅して出力しているので、出力電圧に、差動増幅器A1のオフセット電圧Vofsが残っていると、当該オフセットVofsも増幅され、出力電圧Voutに大きな誤差が発生する虞れがある。ところが、上記構成では、上記バッファ回路43の出力電圧Voutからは、差動増幅器A1のオフセット電圧がキャンセルされているため、基準電位生成回路41の消費電力およびレイアウト面積が削減されているにも拘わらず、バッファ回路43は、最大電圧Vmaxから、最小電圧Vminまでの電圧を、何ら支障なく、出力できる。
ここで、本参考形態のように、バッファ回路43が、液晶表示装置1の各画素PIXへ印加する電圧レベルを示す出力信号Oを生成するために使用されている場合、出力信号Oの電圧レベルは、画素アレイ2の構造(液晶の物性や構造等)によって決定される。また、液晶には、交流電圧を印加する必要があるので、出力信号Oとして出力すべき電圧レベルは、画素PIXの対向電極の電位、すなわち、共通電極線の電位Vcomによっても変化する。
例えば、図8に示すように、液晶を反転駆動するために、共通電極線の電位Vcomを、”+”極性時と”−”極性時との間で変更し、当該電位Vcomを、”+”極性時には、Vcom_L、”−”極性時には、Vcom_Hに設定する場合、”+”極性の場合は、画素の輝度が黒から白へ変化するに従って、出力信号Oの電圧レベルを、Vcom_L+Vblack〜Vcom_L+Vwhiteの間の範囲に設定する必要がある。同様に、”−”極性の場合は、画素の輝度が黒から白へ変化するに従って、出力信号Oの電圧レベルを、Vcom_H−Vwhite〜Vcom_H−Vblackまでの範囲に設定する必要がある。
この場合に、従来と同様に、バッファ回路(図23参照)が入力された電位と同じ電位の出力信号を生成する場合、基準電位生成回路は、画素の輝度を示す入力信号に基づいて、”+”極性時には、Vcom_L+Vblack〜Vcom_L+Vwhiteの間の範囲の電位、”−”極性時には、Vcom_H−Vwhite〜Vcom_H−Vblackの間の範囲の電位を生成する必要がある。ここで、各範囲の幅は、α×Vvideoである。
これに対して、本参考形態では、バッファ回路43が低振幅の入力信号を増幅して、出力信号Oを生成するので、本参考形態に係る基準電位生成回路41は、”+”極性時には、Vx+(Vcom_L+Vblack−Vx)/αから、Vx+(Vcom_L+Vwhite)/αまでの範囲の電位を生成できればよい。同様に、”−”極性時には、Vx+(Vcom_H−Vwhite)/αから、Vx+(Vcom_H−Vblack−Vx)/αまでの範囲の電位を生成できればよい。したがって、各範囲の幅は、Vvideoと、従来の場合の1/αとなり、バッファ回路43および基準電位生成回路41を含む液晶表示装置1の消費電力と、当該液晶表示装置1のレイアウト面積とを削減できる。
加えて、本参考形態に係るバッファ回路43は、上述の式(1)に示すように、プリセット電位Vxを基準にして、入力電圧Vinを増幅した値の出力電圧Voutを出力している。言い換えると、出力電圧Voutは、α・Vinと比較して、Vx−α・Vxだけシフトされている。したがって、0電位を基準にして入力電圧Vinを増幅し、増幅後の出力電圧Voutを出力する構成、すなわち、出力電位レベルをシフトしない構成と比較して、基準電圧生成回路41が出力する必要のある基準電位群の電位のレベルを、より自由に設定できる。
なお、”+”極性時と、”−”極性時とで、黒表示時の出力電位と、白表示時の出力電位との高低関係が変化しているが、上述したように、セレクタ42(図4参照)が、白表示時の電位の方を高くする場合は、映像データDによって特定される輝度の値が高い程、より高い基準電位を選択し、白表示時の電位の方を低くする場合は、映像データDによって特定される輝度の値が高い程、より低い基準電位を選択しているので、何ら支障なく、画素アレイ2へ印加する電圧を示す出力信号Oを出力できる。
ところで、上記では、図2に示すように、バッファ回路43を含むビデオ回路32がデータ信号線駆動回路3内に設けられており、各データ信号線SL毎に設けられたバッファ回路43が制御回路6からのデジタル映像信号をアナログ信号に変換して、対応するデータ信号線SLへの出力信号Oを生成している場合について説明したが、これに限るものではない。デジタル信号の示す値に応じた電位を生成して出力する回路(例えば、ビデオ回路)を備えていれば、同様の効果が得られる。
例えば、図9に示す液晶表示装置1aでは、図2に示すデータ信号線駆動回路3に代えて、アナログの映像信号DAT1をサンプリングして、各データ信号線SLへ出力すべき出力信号Oを生成するデータ信号線駆動回路3aが設けられている。
また、液晶表示装置1aには、制御回路6aからのデジタルの映像信号DATを、アナログの映像信号DAT1に変換するビデオ回路8aが設けられており、タイミング・ジェネレータ5aおよび制御回路6aも、それぞれの生成する制御信号やデジタルの映像信号によって、上記データ信号線駆動回路3aが、ビデオ回路8aの出力するアナログの映像信号DAT1を、正しくサンプリングできるように構成されている。
上記ビデオ回路8aも、上述したビデオ回路32と同様に、基準電位生成回路41と、セレクタ42とバッファ43とを備えている。ただし、当該ビデオ回路8aは、ビデオ回路32とは異なって、制御回路6aから時分割で与えられるデジタルの映像データを、それぞれアナログの電位に変換し、変換後のアナログの電位を時分割でデータ信号線駆動回路3aへ入力できればよい。したがって、セレクタ42およびバッファ回路43が充分に高速であれば(次の映像データが来るまでの間に、セレクタ42およびバッファ回路43が現在の映像データをアナログ電位に変換できれば)、セレクタ42およびバッファ回路43の個数は、1つでよい。
当該構成でも、バッファ回路43が、最大電圧Vmaxから、最小電圧Vminまでの電圧を、何ら支障なく、出力できるにも拘わらず、基準電位生成回路41の出力している基準電位群のうち、最大レベルの基準電位と最小レベルの基準電位との差を、バッファ回路43の出力する必要のある最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの差の1/αに抑えることができる。
したがって、図2の構成と同様に、基準電位生成回路41の抵抗群51における消費電力を削減できると共に、抵抗群51の形成に必要なレイアウト面積を縮小でき、バッファ回路43および基準電位生成回路41を含む液晶表示装置1aの消費電力、並びに、当該液晶表示装置1aのレイアウト面積を削減できる。
〔第2の参考形態〕
ところで、上記第1の参考形態では、図1に示すスイッチSW4・SW5を切り換えることによって、オフセットキャンセル期間には、差動増幅器A1の非反転入力端子にプリセット電位Vxを印加し、出力期間には、入力電圧Vinを印加していた。
これに対して、本参考形態では、バッファ回路43へ入力電圧Vinを出力する回路(例えば、図4に示すセレクタ42)が、オフセットキャンセル期間か出力期間かによって、バッファ回路43へ入力する電位を変更する構成について説明する。
すなわち、本参考形態に係るセレクタ42bは、オフセットキャンセル期間には、予め定められた電位Vinを出力し、出力期間には、当該電位VinをΔVinだけ変更した電位(Vin+ΔVin)を出力するように構成されている。また、本参考形態に係るバッファ回路43bは、詳細は後述するように、当該電位Vinを基準とし、上記電圧ΔVinを予め定められた定数α倍に増幅した電圧を出力できるように構成されている。
一例として、各映像データDが階調自体を示している場合、上記セレクタ42bは、例えば、オフセット期間中には、基準電位生成回路41の出力する基準電位群のうち、映像データD=0に対応する電位を選択して出力し、出力期間には、映像データDに対応する電位を選択して出力する。
一方、本参考形態に係るバッファ回路43bは、図10に示すように、図1に示すバッファ回路43と略同様の構成であるが、スイッチSW4およびSW5が省略されており、入力端子Tinが差動増幅器A1の非反転入力端子に直接接続されている。これに伴なって、制御回路CNT1も、スイッチSW4およびSW5を除いた各スイッチSW1〜SW3のみを制御可能な制御回路CNT1bに置き換えられている。
上記構成でも、第1の参考形態と同様、図11に示すように、オフセットキャンセル期間中には、スイッチSW1およびSW3が導通し、スイッチSW2が遮断される。これによって、キャパシタC1に、差動増幅器A1のオフセット電圧Vofsに応じた量の電荷が蓄積される。
さらに、時点t2において、スイッチSW1が遮断され、差動増幅器A1の反転入力端子のノードNimがフローティング状態になった後、時点t3において、スイッチSW2およびSW3が切り換えられる。これにより、上記ノードNimの電荷が保存されたまま、各キャパシタC1・C2、および、差動増幅器A1の入力容量に電荷が再分配される。
ここで、オフセットキャンセル期間におけるノードNifおよびNipの電位は、Vinであり、出力期間におけるノードNipの電位は、Vin+ΔVinである。また、オフセットキャンセル期間における各キャパシタC1・C2および差動増幅器A1相互の接続関係は、第1の参考形態と同様であり、出力期間における各キャパシタC1・C2および差動増幅器A1相互の接続関係も、第1の参考形態と同様である。したがって、式(1)〜(8)において、VxをVinで置き換え、Vin−VxをΔVinと置き換えれば、上記式(1)〜(8)と同様の式が成立し、出力期間(t3〜t4の期間)における出力電圧Voutは、以下の式(9)に示すように、
Vout=Vin+(Cofs+Cin+Ctu)・ΔVin/Cofs
=Vin+α・ΔVin …(9)
となる。
当該構成でも、バッファ回路43bが、最大電圧Vmaxから、最小電圧Vminまでの電圧を、何ら支障なく、出力できるにも拘わらず、基準電位生成回路41の出力している基準電位群のうち、最大レベルの基準電位と最小レベルの基準電位との差を、バッファ回路43bの出力する必要のある最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの差の1/αに抑えることができる。
したがって、第1の参考形態と同様に、基準電位生成回路41の抵抗群51における消費電力を削減できると共に、抵抗群51の形成に必要なレイアウト面積を縮小でき、バッファ回路43bおよび基準電位生成回路41を含む液晶表示装置1bの消費電力、並びに、当該液晶表示装置1bのレイアウト面積を削減できる。
〔第3の参考形態〕
ところで、上記第1および第2の参考形態では、差動増幅器(A1)の反転入力端子をキャパシタC2を介して接地させると共に、各キャパシタ(C1・C2)、並びに、差動増幅器の各入力端子の静電容量値Cofs、CtuおよびCinを、上述の式(2)のように設定することによって、バッファ回路(43〜43b)に、オフセットキャンセル機能および電圧レベルの増幅機能を設けた構成について説明した。
これに対して、本参考形態では、キャパシタC2を設けず、差動増幅器A1の入力容量およびキャパシタC1の静電容量値CinおよびCofsの設定によって、オフセットキャンセル機能および電圧レベルの増幅機能を設ける構成について説明する。なお、当該構成は、第1および第2の参考形態のいずれにも適用できるが、以下では、一例として、第1の参考形態に適用した場合について説明する。
すなわち、本参考形態に係るバッファ回路43cは、図12に示すように、図1に示すバッファ回路43と略同様の構成であるが、キャパシタC2が削除されており、差動増幅器A1の入力容量およびキャパシタC1の静電容量値CinおよびCofsが、以下の式(10)に示すように、
α = (Cofs+Cin)/Cofs …(10)
となるように設定されている。
一例として、上記静電容量値Cinは、差動増幅器A1の入力段に設けられた差動入力対を構成するMOSトランジスタにおいて、ゲート面積を増減することによって、増減させることができるので、上記式(10)を満たすように、当該MOSトランジスタのゲート面積を設定してもよい。
ここで、上記静電容量値Cinは、入力電圧と同じ電圧を出力するためではなく、増幅用途のために設定される。したがって、上記静電容量値Cinは、Cin/Cofsが、上記入力電位の取り得る値同士の差の最小値をA、入力電位の取り得る値の最大値と最小値との差をBとするとき、 α ≧ A/B に設定されている。
例えば、上記映像データDが6ビットの場合、映像データDは、64個の値を持つことができるので、デジタルの映像データDで表現可能な最大値に対する1ビット分の比率は、1/64である。したがって、上記Cin/Cofsは、少なくとも1/64以上の値に設定されている。
上記構成でも、図13に示すように、第1の参考形態と同様に、オフセットキャンセル期間中(t1〜t2の期間)には、スイッチSW1、SW3およびSW5が導通し、スイッチSW2およびSW4が遮断される。また、時点t2において、スイッチSW1が遮断され、差動増幅器A1の反転入力端子のノードNimがフローティング状態になった後、時点t3において、スイッチSW2〜SW5が切り換えられる。これにより、第1の参考形態と同様に、上記ノードNimの電荷が保存されたまま、各キャパシタC1、および、差動増幅器A1の入力容量に電荷が再分配される。
ただし、第1の参考形態とは異なり、キャパシタC2が省略されている。したがって、式(1)〜式(8)において、Cin+CtuをCinに置き換えれば、上記式(1)〜(8)と同様の式が成立し、出力期間(t3〜t4の期間)における出力電圧Voutは、以下の式(11)に示すように、
Vout=Vx+(Cofs+Cin)・(Vin−Vx)/Cofs
=Vx+α・(Vin−Vx) …(11)
となる。
当該構成でも、バッファ回路43cが、最大電圧Vmaxから、最小電圧Vminまでの電圧を、何ら支障なく、出力できるにも拘わらず、基準電位生成回路41の出力している基準電位群のうち、最大レベルの基準電位と最小レベルの基準電位との差を、バッファ回路43cの出力する必要のある最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの差の1/αに抑えることができる。
したがって、第1の参考形態と同様に、基準電位生成回路41の抵抗群51における消費電力を削減できると共に、抵抗群51の形成に必要なレイアウト面積を縮小でき、バッファ回路43cおよび基準電位生成回路41を含む液晶表示装置1cの消費電力、並びに、当該液晶表示装置1cのレイアウト面積を削減できる。
また、上記では、第1の参考形態に適用した場合について説明したが、第2の参考形態に適用すると、図14に示すようになる。
当該構成のバッファ回路43dにおいても、図15に示すように、オフセットキャンセル期間中(t1〜t2の期間)には、スイッチSW1およびSW3が導通し、スイッチSW2が遮断される。これによって、キャパシタC1に、差動増幅器A1のオフセット電圧Vofsに応じた量の電荷が蓄積される。
さらに、時点t2において、スイッチSW1が遮断され、差動増幅器A1の反転入力端子のノードNimがフローティング状態になった後、時点t3において、スイッチSW2およびSW3が切り換えられる。これにより、上記ノードNimの電荷が保存されたまま、各キャパシタC1、および、差動増幅器A1の入力容量に電荷が再分配される。
ただし、第2の参考形態とは異なり、キャパシタC2が省略されている。したがって、式(9)において、Cin+CtuをCinに置き換えれば、上記式(9)と同様の式が成立し、出力期間(t3〜t4の期間)における出力電圧Voutは、以下の式(12)に示すように、
Vout=Vin+(Cofs+Cin)・ΔVin/Cofs
=Vin+α・ΔVin …(12)
となる。
当該構成でも、バッファ回路43dが、最大電圧Vmaxから、最小電圧Vminまでの電圧を、何ら支障なく、出力できるにも拘わらず、基準電位生成回路41の出力している基準電位群のうち、最大レベルの基準電位と最小レベルの基準電位との差を、バッファ回路43dの出力する必要のある最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの差の1/αに抑えることができる。
したがって、第2の参考形態と同様に、基準電位生成回路41の抵抗群51における消費電力を削減できると共に、抵抗群51の形成に必要なレイアウト面積を縮小でき、バッファ回路43dおよび基準電位生成回路41を含む液晶表示装置1dの消費電力、並びに、当該液晶表示装置1dのレイアウト面積を削減できる。
〔第1の実施形態〕
ところで、上記第1ないし第3の参考形態では、オフセットキャンセル期間において、ノードNifおよびNipの電位を互いに同じ電位に維持する構成について説明したが、本発明の実施形態では、オフセットキャンセル期間において、ノードNifおよびNipの電位を互いに異なる電位に維持する構成に特徴を有し、その構成について説明する。なお、当該構成は、スイッチSW4・SW5が設けられた構成(図1または図12の構成)のいずれにも適用できるが、以下では、第1の参考形態(図1の構成)に適用した場合について説明する。
すなわち、本実施形態に係るバッファ回路43eは、図16に示すように、図1に示すバッファ回路43と略同様に構成されているが、スイッチSW3へ印加される電圧Vxと、スイッチSW5へ印加される電圧Vssとが異なっている。
当該構成でも、第1の参考形態と同様、図17に示すように、オフセットキャンセル期間中(t1〜t2の期間)には、スイッチSW1、SW3およびSW5が導通し、スイッチSW2およびSW4が遮断される。
ただし、第1の参考形態とは異なり、オフセットキャンセル期間において、ノードNipに印加される電位は、Vssであり、ノードNifに印加されるプリセット電位Vxと異なっている。
したがって、オフセットキャンセル期間における出力電圧Voutは、以下の式(13)に示すように、
Vout=Vim=−A・(Vss−Vim+Vofs) …(13)
となる。ここで、差動増幅器A1のゲインAの絶対値は、充分大きな値に設定されており、上述したように、差動増幅器A1の両入力端子の入力容量の静電容量値は、互いに同じ値(Cin)である。
したがって、差動増幅器A1の反転入力端子のノードNimの電位Vimは、Vss+Vofsとなる。この結果、上記オフセットキャンセル用のキャパシタC1の両端には、(Vss−Vx+Vofs)の電圧が印加され、キャパシタC1には、差動増幅器A1の上記両ノードNip・Nifの電位差と、オフセット電圧Vofsとの差に応じた量(=(Vss−Vx+Vofs)・Cofs)の電荷が蓄積される。
さらに、第1の参考形態と同様に、時点t2において、スイッチSW1が遮断され、差動増幅器A1の反転入力端子のノードNimがフローティング状態になった後、時点t3において、スイッチSW2〜SW5が切り換えられる。これにより、上記ノードNimの電荷が保存されたまま、各キャパシタC1、C2、および、差動増幅器A1の入力容量に電荷が再分配される。
ただし、第1の参考形態とは異なり、オフセットキャンセル期間において、ノードNipに印加される電位は、Vssであり、ノードNifに印加されるプリセット電位Vxと異なっている。
したがって、スイッチSW1の切り換え直前の時点における、上記ノードNimの電荷Qim1は、以下の式(14)に示すように、
Qim1=(Vss+Vofs−Vx)・Cofs
+(Vss+Vofs)・(Cin+Ctu) …(14)
となる。一方、スイッチSW2〜SW4の切り換え後(出力期間)における、上記ノードNimの電荷Qim2は、以下の式(15)に示すように、
Qim2=(Vim−Vout)・Cofs+Vim・(Cin+Ctu) …(15)
となる。また、差動増幅器A1の動作点を0〔V〕とすると、出力期間における出力電圧Voutは、以下の式(16)に示すように、
Vout=−A・(Vip−Vim+Vofs)
=−A・(Vin−Vim+Vofs) …(16)
となる。
さらに、Qim1=Qim2から、上記式(14)〜(16)を、差動増幅器A1の反転増幅端子の電位Vimについてとくと、以下の式(17)に示すように、
Vim=Vin・(A・Cofs)/(A・Cofs−Cofs−Cin−Ctu)
−Vss・(Cofs+Cin+Ctu)
/(A・Cofs−Cofs−Cin−Ctu)
+Vx・Cofs/(A・Cofs−Cofs−Cin−Ctu)
+Vofs …(17)
となり、当該式(17)を、上記式(13)に代入すると、以下の式(18)に示すように、
Vout=A/(A・Cofs−Cofs−Cin−Ctu)
・〔(Vin−Vss)・(Cofs+Cin+Ctu)
+Vx・Cofs〕 …(18)
となる。
ここで、差動増幅器A1のゲインAの絶対値は、充分大きな値に設定されているので、A/(A・Cofs−Cofs−Cin−Ctu)は、1/Cofsと見なすことができる。したがって、上記式(18)は、以下の式(19)に示すように、
Vout=Vx+(Cofs+Cin+Ctu)・(Vin−Vss)/Cofs
=Vx−α・Vss+α・Vin
=Vsft+α・Vin …(19)
となる。なお、上式において、Vsftは、Vx−α・Vssであり、各キャパシタC1・C2、並びに、差動増幅器A1の入力容量の静電容量値と、電圧VssおよびVxによって定められる。
また、上記式(17)は、差動増幅器A1のゲインのAの絶対値が充分大きな値であるので、以下の式(20)に示すように、
Vim=Vin+Vofs …(20)
と見なすことができる。
これにより、バッファ回路43eは、出力期間(時点t3から時点t4までの期間)において、入力電圧Vinを、予め定められた定数α倍に増幅すると共に、予め定められた電圧Vsftだけシフトした出力電圧Voutを出力できる。
また、オフセットキャンセル期間になると、キャパシタC1にオフセット電圧Vofsに応じた量の電荷(=(Vss−Vx+Vofs)・Cofs)を蓄積すると共に、差動増幅器A1の反転入力端子のノードNimに蓄積された電荷を保存しつつ、各スイッチSW1〜SW5を切り換えているので、出力電圧Voutからは、オフセット電圧Vofsがキャンセルされている。
これらの結果、第1の参考形態と同様に、バッファ回路43eが、最大電圧Vmaxから、最小電圧Vminまでの電圧を、何ら支障なく、出力できるにも拘わらず、基準電位生成回路41の出力している基準電位群のうち、最大レベルの基準電位と最小レベルの基準電位との差を、バッファ回路43eの出力する必要のある最大電圧Vmaxと最小電圧Vminとの差の1/αに抑えることができ、バッファ回路43eを含む液晶表示装置(1・1a)の消費電力およびレイアウト面積を削減できる。
さらに、本実施形態に係るバッファ回路43eは、第1の参考形態と同様に、オフセットキャンセル機能および電圧レベルの増幅機能だけではなく、出力期間において、入力電圧Vinを、予め定められた定数α倍に増幅すると共に、予め定められた電圧Vsftだけシフトした出力電圧Voutを出力できる。したがって、シフトしない構成と比較して、基準電圧生成回路41が出力する必要のある基準電位群の電位のレベルを、より自由に設定でき、液晶表示装置1eの消費電力を削減すると共に、当該液晶表示装置1eの構成を簡略化できる。
また、第1の参考形態とは異なって、電圧Vsftは、Vx・(1−α)ではなく、Vx−α・Vssによって設定されている。したがって、Vxのみによって、シフト量Vsftを設定する構成と比較して、モジュール内電源回路7の構成を余り複雑にすることなく、基準電圧生成回路41が出力する必要のある基準電位群の電位のレベルを、より自由に設定できる。
〔第2の実施形態〕
ところで、上記第1ないし第3の参考形態および第1の実施形態では、シフト量が固定されている場合について説明した。これに対して、本実施形態では、例えば、図8に示すように、”+”極性で駆動する期間と”−”極性時で駆動する期間とが設けられている液晶表示装置(1・1a)などに好適な構成として、シフト量Vshtを切り換え可能な構成について説明する。なお、本構成も、スイッチSW4・SW5が設けられた構成(図1または図12の構成)のいずれにも適用できるが、以下では、第1の参考形態(図1の構成)に適用した場合について説明する。
すなわち、本実施形態に係るバッファ回路43fは、図18に示すように、図1に示すバッファ回路43と略同様であるが、第1の実施形態と同様に、スイッチSW3へ印加される電圧Vxと、スイッチSW5へ印加される電圧Vssとが異なっている。
さらに、本実施形態に係るバッファ回路43fは、ノードNifに一端が接続され、他端に、上記Vssが印加されるスイッチSW6と、ノードNipに一端が接続され、他端に、上記Vxが印加されるスイッチSW7とを備えている。
また、本実施形態に係る制御回路CNT1fは、シフト量を第1の値Vsft1に設定する第1の期間(t1〜t4の期間)には、各スイッチSW6・SW7を遮断し続けると共に、シフト量を第2の値Vsft2に設定する第2の期間(t11〜t14の期間)には、各スイッチSW3およびSW5に代えて、スイッチSW6・SW7を導通/遮断すると共に、スイッチSW3およびSW5を遮断し続けることができる。
当該構成では、シフト量を第1の値Vsft1に設定する場合は、第1の実施形態と同様、図19に示すように、オフセットキャンセル期間において、スイッチSW1、SW3およびSW5が導通し、スイッチSW2、SW4、SW6およびSW7が遮断される。
さらに、時点t2において、スイッチSW1が遮断され、差動増幅器A1の反転入力端子のノードNimがフローティング状態になった後、時点t3において、スイッチSW2〜SW5が切り換えられる。これにより、上記ノードNimの電荷が保存されたまま、各キャパシタC1・C2、および、差動増幅器A1の入力容量に電荷が再分配される。この結果、第1の実施形態と同様に、出力期間における出力電圧Voutは、Vsft1+α・Vinとなる。なお、シフト量Vsft1は、第1の実施形態のシフト量Vsftであり、Vx−α・Vssである。
一方、シフト量を第2の値Vsft2に設定する場合は、オフセットキャンセル期間(t11〜t12の期間)において、スイッチSW1、SW6およびSW7が導通し、スイッチSW2〜SW5が遮断される。
さらに、時点t12において、スイッチSW1が遮断され、差動増幅器A1の反転入力端子のノードNimがフローティング状態になった後、時点t13において、スイッチSW2、SW4、SW6およびSW7が切り換えられる。これにより、上記ノードNimの電荷が保存されたまま、各キャパシタC1・C2、および、差動増幅器A1の入力容量に電荷が再分配される。
ここで、第1の実施形態と比較すると、オフセットキャンセル期間において、各ノードNip・Nicへ印加されるVssとVxとが入れ換わっているだけなので、上述した式(13)〜(20)において、VssとVxとを互いに入れ換えれば、式(13)〜(20)と同様の式が成立する。
したがって、この場合の出力期間(t13〜t14)における出力電圧Voutは、以下の式(21)に示すように、
Vout=Vss+(Cofs+Cin+Ctu)・(Vin−Vx)/Cofs
=Vss−α・Vx+α・Vin
=Vsft2+α・Vin …(21)
となる。なお、上式において、Vsft2は、Vss−α・Vxであり、各キャパシタC1・C2、並びに、差動増幅器A1の入力容量の静電容量値と、電圧VssおよびVxによって定められる。
したがって、第1の期間のシフト量Vsft1と、第2の期間のシフト量Vsft2とを互いに異なる値に設定できる。この結果、例えば、”+”極性で駆動するか”−”極性で駆動するかを示す信号に基づいて、バッファ回路43fの制御回路CNT1fが、スイッチSW6・SW7とスイッチSW3・SW5とのうち、どちらを遮断し続けるかを制御することによって、”+”極性時と”−”極性時とで、シフト量を互いに異なる値に設定できる。
これにより、図20に示すように、出力信号の電位Voutが取り得る範囲R11およびR12の幅(Vvideo×α)よりも、入力信号の電位Vinが取り得る範囲R10の幅(Vvideo)を小さくできるだけではなく、第1の期間T1における範囲R11の最大値(Vblack+Vsft1)と、第2の期間T1における範囲R12の最大値(Vblack−Vsft2)とを互いに異なる値に設定できる。この結果、液晶表示装置1fの消費電力を削減すると共に当該液晶表示装置1fの構成を簡略化できる。
したがって、例えば、図22に示すように、画素PIXの対向電極の電位Vcomを一定に保ち、データ信号線SLに印加する出力信号Oの電位の範囲を、”+”極性時と”−”極性時とで異ならせる場合、あるいは、図21に示すように、画素PIXの対向電極の電位Vcomを交流駆動すると共に、データ信号線SLに印加する出力信号Oの電位の範囲を、”+”極性時と”−”極性時とで異ならせる場合などに、特に好適に使用できる。
なお、図21および図22でも、”+”極性時と”−”極性時とで、白の電位が高いか黒の電位が高いかも切り換えられるているが、図8と同様に、セレクタ42が映像データDに対応する基準電位を切り換えているので、バッファ回路(43〜43f)は、何ら支障なく、画素アレイ2へ印加する電圧を示す出力信号Oを出力できる。
以下では、駆動電圧の数値の一例を挙げながら、図21のように駆動する場合の効果について、さらに詳細に説明する。すなわち、一般的には、画素アレイ(液晶パネル)2を駆動している外部ICの電源電圧Vicとして、2.7〔V〕あるいは3.3〔V〕が使用されることが多い。ここでは、一例として、電源電圧Vicが3.3〔V〕であり、液晶表示に必要な最大電圧Vsatが4〔V〕、ダイナミックレンジVdynが3〔V〕とする。なお、当該VsatとVdynとは、図8中のVblackと、Vvideo×αとに、それぞれ相当する。
この場合、図23に示す従来の構成では、電源回路7の生成する基準電位は、”+”極性ならびに”−”極性両方のビデオ電位を包括するように生成する必要があるので、Vcom_Lを0.0〔V〕、Vcom_Hを2.7〔V〕とすると、抵抗列51のHigh電位Vh≧VcomL+Vblack=4.0〔V〕、抵抗列51のLow電位Vl≦Vcom_H−Vblack=−1.3〔V〕とする必要がある。
これに対して、本実施形態に係るバッファ回路43fは、α=1.11、Vx=1.89〔V〕、Vss=0.81〔V〕と設定することにより、2.7〔V〕の電源にて、図21の駆動を実現できる。この場合は、電源回路7の生成する基準電位は、0.0〔V〕〜2.7〔V〕の範囲となり、上記従来の構成よりも消費電力を削減すると共に構成を簡略化できる。
さらに、上記では、セレクタ42が映像データDに対応する基準電位を切り換えることによって、白の電位が高いか黒の電位が高いかを変更する構成について説明したが、基準電位生成回路41が、抵抗群51の両端に印加する電位VhおよびVlの高低関係を入れ換えることによって、白の電位が高いか黒の電位が高いかを変更してもよい。
なお、上述の説明では、バッファ回路(43〜43f)が液晶表示装置(1・1a)に設けられている場合を例にして説明したが、これに限るものではない。上記バッファ回路は、低振幅の入力信号を高振幅の出力信号に変換して出力できるので、入力信号を生成する回路の消費電力を削減できる。したがって、液晶表示装置に限らず、消費電力の削減が要求される装置に広く一般に使用できる。
ただし、液晶表示装置は、上述したように、出力信号Oの電圧レベルは、画素アレイ2の構造(液晶の物性や構造等)によって決定されるので、比較的高い電圧を必要とすることが多い。また、出力電圧Voutの誤差は、画質の低下に結びつく。したがって、上記構成のバッファ回路を設けることによって、画質を低下させることなく、消費電力を削減でき、特に効果が大きい。