JP4502467B2 - ポリアセタール樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

ポリアセタール樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性及び成形加工性に優れたポリアセタール樹脂組成物及びその製造方法、並びに前記樹脂組成物で成形した成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアセタール樹脂は、機械的性質、耐疲労性、耐摩擦・摩耗性、耐薬品性及び成形性に優れているため、自動車部品、電気・電子機器部品、その他の精密機械部品、建材・配管部材、生活・化粧用部品、医用部品などの分野において広く利用されている。しかし、用途の拡大、多様化に伴い、その品質に対する要求はより高度化している。例えば、ポリアセタール樹脂は、酸素指数が小さく、燃焼性が高いため、難燃化することが極めて困難である。そのため、ポリアセタール樹脂の用途が大きく制限される。
【0003】
ポリアセタール樹脂の難燃化について多くの提案がなされている。例えば、特開昭48−43446号公報には、オキシメチレン重合体に、Mn,Ba,Sr,Ca,Mgの硝酸塩を添加した難燃性組成物が開示されている。特公昭55−35421号公報には、ポリオキシメチレンに対して、メラミン、グアナミン、メラム、アメライド、アメリン及びそれらの誘導体(メチロール、アルキル又はアリール誘導体)ジシアンジアミド及びそのメチロール誘導体から選択された少なくとも一種のトリアジン難燃剤を添加した難燃性ポリオキシメチレン組成物が開示されている。この文献には、さらにホスファム、ホスファミド及びリンイミドから選択された少なくとも一種の難燃剤(リン酸源)を添加したポリオキシメチレン組成物も開示されている。特開昭54−85242号公報には、ポリアセタール樹脂と、シアヌール酸メラミンとを含む難燃性樹脂組成物が開示されている。米国特許第3,485,793号明細書には、ポリオキシメチレン樹脂と、アミン、アンモニウムホスフェートおよびアミジンホスフェートから選択された化合物5〜30重量%と、必要によりトリアジン化合物からなるホルムアルデヒド捕捉剤1〜20重量%とを含む難燃性組成物が開示されている。
【0004】
特開平9−324105号公報には、ポリオキシメチレン樹脂と、ポリリン酸アンモニウム単独又はポリリン酸アンモニウム及びメラミン化合物からなる難燃剤とを含む組成物において、ポリリン酸アンモニウムの体積平均粒子径が30(m以下である樹脂組成物が開示されている。特公昭43−22671号公報には、オキシメチレン重合体と、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム及びそれらの混合物とを含む難燃化されたオキシメチレン重合体組成物が開示されている。
【0005】
しかし、これらの文献に記載の難燃剤を用いても、酸素指数の低いポリアセタール樹脂を十分に難燃化することができない。
【0006】
特開昭48−26840号公報には、中性又は塩基性に調整された微細な赤リン5〜15重量%、及び1〜40重量%のガラス繊維を含むポリオキシメチレンをベースとする自己消火性成形材料が開示されている。特公昭53−31899号公報には、ポリオキシメチレンに対して、赤リンと、トリアジン化合物、グアニジン、シアノグアニジン又はそれらの誘導体(リン酸塩、縮合リン酸塩、メチロール体)との配合物を難燃剤として含む難燃性ポリオキシメチレン組成物が開示されている。特開昭55−84348号公報には、アセタール樹脂に、モリブデン化合物と、赤リン又はリン化合物とを含有させた難燃性アセタール樹脂組成物が開示されている。
【0007】
しかし、これらの文献に記載されている赤リン系難燃剤を用いても、ポリアセタール樹脂を高いレベルに難燃化することが困難である。特に、少量の添加によりポリアセタール樹脂を難燃化できないので、ポリアセタール樹脂本来の特性が大きく損なわれる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ポリアセタール樹脂に対して高い難燃性を付与できる樹脂組成物及びその製造方法、並びに成形体を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、樹脂本来の特性を損なうことなく、少量の添加でポリアセタール樹脂を高度に難燃化できる樹脂組成物およびその製造方法、並びに成形体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するため、ポリアセタール樹脂の難燃化について検討を行なった結果、リン含有化合物と特定の芳香族化合物とを組み合わせて難燃剤を構成すると、少量の添加であってもポリアセタール樹脂に対して高い難燃性を付与できることを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂と難燃剤とを含んでおり、前記難燃剤は、リン含有化合物と、このリン含有化合物と協働して難燃化を促進する芳香族化合物とで構成されている。前記リン含有化合物には、赤リン、(ポリ)リン酸塩、リン酸エステルなどが含まれ、芳香族化合物としては、ホルムアルデヒドに対して反応性の炭化水素環を有する化合物又はその誘導体(フェノール性ヒドロキシル基及び/又はアミノ基を有する化合物又はその誘導体など)が挙げられ、芳香族化合物は芳香環含有樹脂であってもよい。前記樹脂組成物は、さらに、ドリッピング防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、充填剤などを含有していてもよい。
【0012】
本発明は、ポリアセタール樹脂、及び前記難燃剤を混合して難燃性ポリアセタール樹脂組成物を製造する方法、前記ポリアセタール樹脂組成物で形成された成形体も包含する。
【0013】
【発明の実施の形態】
[ポリアセタール樹脂]
ポリアセタール樹脂とは、オキシメチレン基(−CH2O−)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、ポリアセタールホモポリマー又はポリオキシメチレン(例えば、米国デュポン社製,商品名「デルリン」、旭化成工業(株)製、商品名「テナック4010」など)、オキシメチレン単位とコモノマー単位とを含有するポリアセタールコポリマー(例えば、ポリプラスチックス(株)製,商品名「ジュラコン」など)が含まれる。コポリマーにおいて、コモノマー単位には、炭素数2〜6程度(好ましくは炭素数2〜4程度)のオキシアルキレン単位(例えば、オキシエチレン基(−CH2CH2O−)、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基など)が含まれる。コモノマー単位の含有量は、少量、例えば、ポリアセタール樹脂全体に対して、0.01〜20モル%、好ましくは0.03〜10モル%(例えば、0.05〜5モル%)、さらに好ましくは0.1〜5モル%程度の範囲から選択できる。
【0014】
ポリアセタールコポリマーは、二成分で構成されたコポリマー、三成分で構成されたターポリマーなどであってもよい。ポリアセタールコポリマーは、ランダムコポリマーの他、ブロックコポリマー(例えば、特公平2−24307号公報,旭化成工業(株)製,商品名「テナックLA」「テナックLM」など)、グラフトコポリマーなどであってもよい。また、ポリアセタール樹脂は、線状のみならず分岐構造であってもよく、架橋構造を有していてもよい。さらに、ポリアセタール樹脂の末端は、例えば、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸又はそれらの無水物とのエステル化、イソシアネート化合物とのウレタン化、エーテル化などにより安定化してもよい。ポリアセタールの重合度、分岐度や架橋度も特に制限はなく、溶融成形可能であればよい。ポリアセタール樹脂の分子量は特に制限されず、例えば、重量平均分子量5,000〜500,000、好ましくは10,000〜400,000程度である。
【0015】
前記ポリアセタール樹脂は、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、トリオキサン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキサンオキサイド、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマールなどの環状エーテルや環状ホルマールを重合することにより製造できる。さらには、共重合成分として、アルキル又はアリールグリシジルエーテル(例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテルなど)、アルキレン又はポリオキシアルキレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテルなど)、アルキル又はアリールグリシジルアルコール、環状エステル(例えば、β−プロピオラクトンなど)及びビニル化合物(例えば、スチレン、ビニルエーテルなど)を使用することもできる。
【0016】
[難燃剤]
本発明の特色は、難燃剤をリン含有化合物と特定の芳香族化合物とで構成し、ポリアセタール樹脂に添加することにより、高度に難燃化又は自己消火性とすることにある。このような難燃剤を用いると、リン含有化合物と芳香族化合物とが協働して樹脂の難燃化に寄与し、少量の添加により高い難燃性又は自己消化性をポリアセタール樹脂に付与できるので、ポリアセタール樹脂の特性を損なうことがない。
【0017】
[リン含有化合物]
リン含有化合物としては、有機リン化合物(モノマー型有機リン化合物、ポリマー型有機リン化合物など)、無機リン化合物などが挙げられる。これらのリン含有化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
前記有機リン化合物のうちモノマー型有機リン化合物には、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスフィン(トリフェニルホスフィン、トリクレジルホスフィンなど)、ホスフィンオキシド(トリフェニルホスフィンオキシド、トリクレジルホスフィンオキシドなど)などが含まれる。リン酸エステルとしては、脂肪族リン酸エステル[リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリイソブチル、リン酸ペンタエリスリトール(例えば、Great Lakes Chemical社製のNH−1197など)などのリン酸トリC1-10アルキルエステル;リン酸ジエチル、リン酸ジブチル、リン酸ジ(2−エチルヘキシル)などのリン酸ジC1-10アルキルエステル;リン酸モノC1-10アルキルエステルなど]、芳香族リン酸エステル[リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシリルなどのリン酸トリC6-20アリールエステルなど]、脂肪族−芳香族リン酸エステル(リン酸メチルジフェニル、リン酸フェニルジエチルなど)などが挙げられる。
【0019】
亜リン酸エステルとしては、前記リン酸エステルに対応して、例えば、芳香族亜リン酸エステル(亜リン酸トリC6-20アリールエステルなど)、脂肪族亜リン酸エステル(亜リン酸トリC1-10アルキルエステル;亜リン酸ジC1-10アルキルエステル;亜リン酸モノC1-10アルキルエステルなど)、脂肪族−脂肪族亜リン酸エステル[アルキルホスホン酸アルキルエステル(例えば、Albright & Wilson社製の「ANTIBLAZE 1045」など)など]、脂肪族−芳香族亜リン酸エステル(アルキルホスホン酸アリールエステルなど)などが含まれる。
【0020】
また、モノマー型有機リン化合物には、アルキル基及び/又はアリール基が置換していてもよい次亜リン酸エステル、ホスホノカルボン酸エステル、含窒素リン酸エステルなども含まれる。
【0021】
前記モノマー型有機リン化合物としては、酸性脂肪族リン酸エステル(例えば、ペンタエリスリトールジホスフェートなど)のアンモニウム塩、アミン含有化合物塩(例えば、グアニジン塩、メラミン塩、メラム塩、メレム塩など)なども含まれる。
【0022】
前記ポリマー型有機リン化合物としては、前記モノマー型有機リン化合物の縮合物を用いることができる。前記縮合物は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0023】
【化1】
Figure 0004502467
【0024】
(式中、R1〜R4は置換基を有していてもよいアリール基を、Zはアリーレン基を示す。mは1〜5の整数を示す)
式(1)において、R1〜R4で示されるアリール基としては、フェニル、ナフチル基などのC6-20アリール基が挙げられ、アリール基の置換基としては、メチル基、エチル基などのアルキル基が挙げられる。また、アリーレン基としては、フェニレン、ナフチレン基などのC6-20アリーレン基が挙げられる。
【0025】
上記式(1)で表される縮合物としては、例えば、レゾルシノールホスフェート類[レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)など]、ハイドロキノンホスフェート類[ハイドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジクレジルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジキシレニルホスフェート)など]、ビフェノールホスフェート類[ビフェノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビフェノールビス(ジクレジルホスフェート)、ビフェノールビス(ジキシレニルホスフェート)など]、ビスフェノールホスフェート類[ビスフェノール−Aビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノール−Aビス(ジクレジルホスフェート)、ビスフェノール−Aビス(ジキシレニルホスフェート)などのビスフェノール−Aホスフェート類;ビスフェノール−Sビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノール−Sビス(ジクレジルホスフェート)、ビスフェノール−Sビス(ジキシレニルホスフェート)などのビスフェノール−Sホスフェート類など]などが挙げられる。
【0026】
また、前記ポリマー型有機リン化合物は、ヒドロキシル基を有するポリマー(フェノール樹脂など)のリン酸エステル、例えば、下記式(2)で表される構造単位を有するポリマーであってもよい。
【0027】
【化2】
Figure 0004502467
【0028】
(式中、R5及びR6は置換基を有していてもよいアリール基を示す)
前記アリール基としては、C6-20アリール基(特にフェニル基)が挙げられ、置換アリール基としては、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基などのC1-4アルキル置換フェニル基などが挙げられる。
【0029】
さらに、前記ポリマー型有機リン化合物には、ポリホスフィニコカルボン酸エステル、ポリホスホン酸アミドも含まれる。ポリホスホン酸アミドとしては、例えば、下記式(3)で表される構造単位を有するポリマーが例示できる。
【0030】
【化3】
Figure 0004502467
【0031】
(式中、R7はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を示し、R8はアルキレン基、アリーレン基、又はアラルキレン基を示す。R9及びR10は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。また、R9及びR10は、結合して環を形成してもよい)
前記無機リン化合物としては、例えば、赤リン、リン酸塩などが含まれる。リン酸には、オルトリン酸、亜リン酸、ポリリン酸(メタリン酸、ピロリン酸など)、ポリ亜リン酸(メタ亜リン酸、ピロ亜リン酸など)などが含まれる。塩としては、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩など)、周期表3B族金属の塩(アルミニウム塩など)、アンモニウム塩などが例示できる。また、前記塩には、アミン塩、例えば、グアニジン塩又はトリアジン系化合物の塩(例えば、メラミン塩、メラム塩、メレム塩、メロン塩など)なども含まれる。
【0032】
なお、有機リン化合物及び無機リン化合物は、アルキル基及び/又はアリール基が置換していてもよい亜リン酸(例えば、メチルホスホン酸などのアルキルホスホン酸;フェニルホスホン酸、10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのアリールホスホン酸;1−ヒドロキシエチリデン−1,1’−ジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレン)ホスホン酸など)、次亜リン酸(例えば、メチルエチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、エチルブチルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、エタン−1,2−ジ(メチルホスフィン酸)などのジアルキルホスフィン酸、メチルフェニルホスフィン酸などのアルキルアリールホスフィン酸、1−ヒドロキシジヒドロホスホニルオキシド、1−ヒドロキシホスホランオキシドなど)、ホスホノカルボン酸(例えば、ホスホノ酢酸、3−ホスホノプロピオン酸など)、ホスフィニコカルボン酸(例えば、3−メチルホスフィニコプロピオン酸、3−フェニルホスフィニコプロピオン酸など)、含窒素リン酸などの酸又はそれらのエステルと金属との塩(例えば、Ca,Mg,Zn,Ba,Al塩など)、又はアミン含有化合物との塩(例えば、アンモニウム塩、グアニジン塩、グアナミン塩、メラミン塩、メラム塩、メレム塩など)などであってもよい。これらの有機リン化合物の金属塩及びアミン含有化合物塩の調製には、特開昭51−63848号公報,特開昭55−5979号公報,特開昭55−124792号公報,特開昭104949号公報,特開昭63−22866号公報,特開平1−226891号公報,特開平4−234893号公報,特開平8−73720号公報,特開平11−140228号公報などを参照できる。
【0033】
好ましいリン酸塩は、(ポリ)リン酸の塩、特にポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸とメラミン及びメラミン縮合物から選択された少なくとも一種との塩(ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩など)である。
【0034】
好ましいリン含有化合物としては、リン酸エステル(脂肪族リン酸エステル、芳香族リン酸エステルなど)、無機リン化合物(ポリリン酸アンモニウムなどの(ポリ)リン酸塩、赤リンなど)など、特に赤リンが挙げられる。
【0035】
赤リンは、難燃効果が高く、少量で効果が得られるため、樹脂の特性(例えば、機械的特性や電気的特性)を損うことなく難燃化できる。赤リンとしては、通常、安定化処理を施した安定化赤リンが好ましく用いられる。特に、赤リンの粉砕を行わず、赤リン表面に水や酸素との反応性が高い粉砕面を形成させずに微粒子化した赤リン、さらには赤リンの表面が、樹脂(例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂)、金属、金属化合物(例えば、金属水酸化物、金属酸化物など)などにより単独で又は2種以上組み合わせて被覆された赤リンが好ましい。
【0036】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられ、熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂などが挙げられる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンなどが挙げられ、金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化スズなどが挙げられる。
【0037】
さらに、赤リンの表面を金属で被覆し安定化する方法としては、無電解メッキ法により、金属(鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、亜鉛、マンガン、スズ、チタン、ジルコニウムなど)又はこれらの合金で被覆する方法が挙げられる。その他の赤リン表面の被覆方法として、金属塩(アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、チタン、銅、銀、鉄、ニッケルなどの塩)の溶液で赤リンを処理し、赤リンの表面に金属リン化合物を形成させて安定化する方法も含まれる。
【0038】
特に、赤リン表面に破砕面を形成させないで赤リンを微粒子化する方法を用い、金属成分(金属水酸化物や金属酸化物)の皮膜と樹脂の皮膜とを組み合わせて複数層で被覆処理、特に金属成分の皮膜で被覆した上に樹脂皮膜で多重に被覆処理した赤リンが好ましい。これらの安定化赤リンは、耐熱安定性、耐加水分解性に優れており、水分の存在下や高温下での分解反応によりホスフィンの生成が著しく少なく、本発明の樹脂組成物を製造する際、および成形品を製造する際の安全上の観点から使用が好ましい。
【0039】
これらの安定化赤リンの調製には、特開2000−169120号公報、特開平9−67467号公報、特開平6−115914号公報、特開平5−229806号公報、特開平3−259956号公報、特開平2−209991号公報、特開平1−150309号公報、特開昭62−21704号公報、特開昭52−125489号公報、EP296501A1号公報、EP249723A2号公報などを参照できる。
【0040】
赤リンとしては、通常、安定化赤リンを粉粒状で使用できる。安定化赤リンの平均粒子径としては、例えば、0.01〜100μm、好ましくは0.1〜50μm、さらに好ましくは0.1〜30μm程度である。また、平均粒子径が、0.01〜5μm程度である微粒子状(例えば、微細球状など)の安定化赤リンを使用してもよい。
【0041】
また、安定化赤リンは、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物、クロム系化合物などの表面改質剤によって処理してもよい。
【0042】
前記安定化赤リンは、単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。例えば、被覆処理の異なる赤リン、粒径の異なる赤リンなどを任意に組み合わせて使用できる。
【0043】
本発明の樹脂組成物を構成するリン含有化合物は、前記安定化赤リンとオレフィン系樹脂とで構成してもよく、安定化赤リンを含有するオレフィン系樹脂(例えば、安定化赤リンとオレフィン系樹脂とを含む安定化赤リン含有マスターバッチ)で構成してもよい。オレフィン系樹脂を用いることにより、さらに安定化赤リンの取り扱いを改善できるとともに、組成物としたとき、赤リンに起因する安定性の低下を制御できる。オレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、フェニルプロパジエン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジンエンなどのオレフィン系単量体の単独重合体(例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンなど)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、オレフィン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体[例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、プロピレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、1−ブテン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体など]、オレフィン−(メタ)アクリル酸共重合体[例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン−(メタ)アクリル酸共重合体など]、オレフィン−(メタ)アクリル酸金属塩共重合体[すなわち、アイオノマー、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩(Na,K,Mg,Ca,Znなどの金属塩)などのオレフィン−(メタ)アクリル酸金属塩共重合体など]、エチレン−α−オレフィン共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)、オレフィン−一酸化炭素−(メタ)アクリル酸アルキルエステル三元共重合体[例えば、エチレン−一酸化炭素−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、プロピレン−一酸化炭素−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体など]、あるいはこれらの(共)重合体と共重合可能な他のビニル系単量体により変性された変性オレフィン樹脂、さらにはポリエチレンワックスなどが挙げられる。
【0044】
前記変性オレフィン樹脂における共重合可能な他のビニル系単量体としては、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなど)、(メタ)アクリル酸グリシジル(例えば、アクリル酸グリシジル、メタアクリル酸グルシジルなど)、不飽和ニトリル化合物(例えば、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなど)、不飽和アミド化合物(例えば、アクリルアミド、メタアクリルアミドなど)、(メタ)アクリル酸、マレイン酸化合物(例えば、マレイン酸、マレイン酸ジアルキル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミドなど)、ビニルアルキルエーテル(例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなど)などが挙げられる。
【0045】
これらのオレフィン系樹脂は、一般的に知られている公知の重合方法により得られ、共重合体の形態はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体など任意である。
【0046】
前記オレフィン系樹脂は単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。ポリアセタール樹脂への分散性の点から、オレフィン系樹脂のうち、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど)、オレフィン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、オレフィン−(メタ)アクリル酸金属塩(アイオノマー)、オレフィン−一酸化炭素−(メタ)アクリル酸アルキルエステル三元共重合体が好ましく用いられる。
【0047】
安定化赤リンとオレフィン系樹脂とで構成された組成物(例えば、マスターバッチ)中の安定化赤リンの含有量は、3〜80重量%、好ましくは5〜70重量%(例えば、10〜60重量%、特に20〜60重量%)程度の範囲から選択できる。安定化赤リンマスターバッチの調製は、例えば、安定化赤リンとオレフィン系樹脂の所定量を、ニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングロール、押出機などを用いて、加熱混合して安定化赤リンがオレフィン樹脂中に分散された混練物を得ることにより行うことができる。この混練物の形状は、粉体状、ペレット状などいずれでもよい。なお、安定化赤リンマスターバッチの調製において、難燃剤を構成する芳香族化合物、その他の難燃剤、酸化防止剤、各種安定剤、ホスフィン抑制剤(例えば、金属水酸化物、金属酸化物、α位に電子吸引性基を有するオレフィン化合物など)、滑剤、染顔料などの添加剤を併用配合することもできる。
【0048】
[芳香族化合物]
芳香族化合物は、リン含有化合物と協働して難燃化を促進又は向上できる化合物であれば特に制限されず、リン含有化合物との組み合わせによりポリアセタール系樹脂の炭化を促進し、樹脂を難燃化する。すなわち、前記芳香族化合物単独ではポリアセタール系樹脂の難燃化に殆ど又はさほど寄与しないものの、リン含有化合物と組み合わせることにより難燃化を大きく向上できるため、芳香族化合物は、炭化助剤として機能するようである。このような芳香族化合物は、赤リン/芳香族化合物=60/40〜20/80(重量%)の難燃剤をポリアセタール系樹脂100重量部に対して20〜80重量部添加し、10秒間接炎して燃焼性を調べたとき、炎を離してから20秒以内、好ましくは10秒以内に消炎するか否かにより実験的に選択することができる。
【0049】
このような観点から、酸化防止剤、光安定剤及び耐候(光)安定剤などの一般的な添加剤は、芳香族化合物の範疇に属さない。すなわち、芳香族化合物は、通常、立体障害性基(例えば、t−ブチル基などのバルキーな第三級アルキル基)を有しておらず酸化防止能がないか又は小さく、紫外線領域のエネルギーを吸収して樹脂の劣化を防止する能力がないか又は小さい。
【0050】
代表的な芳香族化合物は、通常、ホルムアルデヒドに対して反応性の炭化水素環を有する化合物(例えば、フェノール性ヒドロキシル基及びアミノ基から選択された少なくとも一種を有する芳香族化合物)又はその誘導体である。
【0051】
さらに、芳香族化合物は、通常、室温(15〜30℃程度)で非揮発性であるとともに、成形加工温度よりも高い沸点を有するのが好ましい。また、芳香族化合物は、通常、室温で固体又は粘性である。芳香族化合物の分子量は特に制限されず、低分子量ないし高分子量のいずれであってもよく、芳香族化合物は、オリゴマーないし樹脂の領域の化合物も包含する。低分子量と高分子量とを区別するための指標は特になく、例えば、分子量250以上の化合物を高分子量の芳香族化合物とすることもできる。
【0052】
[低分子量の芳香族化合物]
低分子量の芳香族化合物には、リン含有化合物との組合せにより高い難燃性が発現する種々の化合物が含まれる。芳香族化合物は、通常、ヒドロキシル基、アミノ基などの電子供与性基を有していてもよい。ヒドロキシル基含有化合物としては、例えば、高沸点フェノール類[融点50℃以上(例えば、60〜230℃程度)及び沸点200℃以上(例えば、210〜350℃)の化合物、例えば、キシレノール、フェニルフェノール、クミルフェノール、ナフトール、ビナフトール類などの一価フェノール類、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレンなどの二価フェノール類、ビロガロール、フロログルシンなどの三価フェノール類、フェノールリグニンなど];ビスフェノール類[例えば、4,4−ビフェノール、3,3−ジフェニル−4,4−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−イソプロピルフェニル)メタン、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−ナフチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−メチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1−エチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4−メチル−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのジヒドロキシジアリールアルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのジヒドロキシジアリールシクロアルカン類;1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)ベンゼンなどのジヒドロキシアリールアルキルベンゼン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどのジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシフェンゾフェノンなどのジヒドロキシジアリールケトン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキルフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシジアリールフルオレン類;ポリフェノール類[例えば、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシフェニルエーテル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシフェニルエーテル、2,4,4’−トリヒドロキシジフェニル−2−プロパン、2,2’−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルメタン、2,4,4’−トリヒドロキシジフェニルメタン、1−[α−メチル−α−(4’−ジヒドロキシフェニル)エチル]−3−[α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1−[α−メチル−α−(4’−ジヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプタン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−イソプロピルベンジル)−4−イソプロピルフェノール、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシ−5’−イソプロピルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン、2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン、1,3−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニルイソプロピル)ベンゼン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)−アミル−s−トリアジン、トリス(4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、カリックスアレン(フェノール類とアルデヒド類より生成する環状オリゴマー)など];これらの誘導体[例えば、金属塩(アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表1B、2B、3B、4B、8属金属との塩)、有機酸とのエステル(アセテート誘導体など)、エポキシ化合物とのエーテル(グリシジルエーテル誘導体など)、ヒドロキシル基含有化合物とC2-4アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなど)との付加体(ビスフェノールA、2,6−ジヒドロキシナフタレンなどのエチレンオキサイド付加体)]などが例示できる。
【0053】
アミノ基及びヒドロキシル基含有化合物としては、例えば、アミノフェノール類(2−アミノフェノール、N,N−ジメチルアミノメチルフェノール、アミノナフトール、4,4’−ジアミノ−2”−ヒドロキシトリフェニルメタン、ベンゾオキサジンなど)、ヒドロキシフェニルトリアジン類[N−(p−ヒドロキシベンジル)メラミン、ヒドロキシフェニルトリアジン(例えば、DE2219012号公報に記載の化合物など)、ヒドロキシフェニル−ウレイド−トリアジン(例えば、特開昭50−65553号公報に記載の化合物など)、2,4−ジアミノ−6−(p−ヒドロキシフェニルエチル)−1,3,5−トリアジンなど]などが例示できる。
【0054】
アミノ基含有化合物としては、例えば、アリール化合物(1,4−ナフタレンジアミンなど)、ビスアリール化合物[4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニル(ビフェニレンジアミン)、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシビフェニル、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−エチルフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−アミノフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)ケトン、4,4’−ジアミノベンズアニリドなど]、トリアリール化合物[ロイコアニリンなど]などが例示できる。特に、ジアミノ基含有化合物については、成書「高分子データハンドブック−基礎編−p.247−257(1986)、(株)培風館発行」を参照できる。
【0055】
また、o−置換化合物(例えば、ジフェニルエーテル、ジフェノキシベンゼン、或いはそれらの化合物とアルデヒド類との縮合反応生成物など)やN−置換化合物[例えば、ジフェニルアミン、ジナフチルアミン、N,N’−ジフェニルベンジジン、4,4’−ジ(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなど]なども例示できる。
【0056】
[高分子量の芳香族化合物又は芳香環含有樹脂]
高分子量の芳香族化合物は、通常、芳香環を含んでおり、オリゴマー又は樹脂状である場合が多い。そのため、高分子量の芳香族化合物を単に芳香環含有樹脂という場合がある。
【0057】
このような芳香環含有樹脂は、通常、芳香環として、繰り返し単位中にアリール環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)又はビスアリール単位(例えば、ビスフェノール単位)を含んでいる。
【0058】
芳香環含有樹脂としては、例えば、(a)ヒドロキシル基及び/又はアミノ基含有芳香族環を有する樹脂、(b)芳香族ナイロン樹脂、(c)ポリカーボネート樹脂、(d)ポリアリレート樹脂、(e)芳香族エポキシ樹脂、(f)芳香族ポリエーテル樹脂などが例示できる。これらの樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0059】
(a)ヒドロキシル基及び/又はアミノ基含有芳香族環を有する樹脂
この樹脂において、前記ヒドロキシル基及び/又はアミノ基を有する芳香族環は樹脂の主鎖及び/又は側鎖に有していればよい。芳香族環を主鎖に有する樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、アラルキル樹脂、アニリン樹脂、低分子量のフェノール類やアニリン類(例えば、フェノール及びアニリンを含む前記低分子量の芳香族化合物)の酸化重合体(例えば、高分子加工、47巻、11号、p489-494(1998)及びそこに記載されている論文で報告されているペルオキシダーゼを酵素触媒として得られる樹脂など)、フェノール変性樹脂[例えば、テルペンフェノール樹脂(例えば、特開平7−292214号公報に記載の樹脂、ヤスハラケミカル(株)製,商品名「YSポリスターシリーズ」「マイティーシリーズ」、荒川化学工業(株)製、商品名「タマノル」など)、ロジン変性フェノール樹脂(多価アルコールとの反応生成物も含む)、シクロペンタジエン−フェノール重合体(日本石油化学(株)製,商品名「DPP−600M」など)、液状ポリブタジエン−フェノール重合体(日本石油化学(株)製,商品名「PP700−300」など)など]が例示でき、芳香族環を側鎖に有する樹脂としては、芳香族ビニル樹脂が例示できる。
【0060】
(ノボラック樹脂)
ノボラック樹脂は、下記式(4)で表される繰り返し単位を有している。
【0061】
【化4】
Figure 0004502467
【0062】
(式中、R11は水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、R12及びR13は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、nは1以上の整数を示す)
アルキル基としては、メチル、エチル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシルなどのC1-20アルキル基、好ましくはC1-12アルキル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル、ナフチルなどのC6-20アリール基、置換アリール基(メチルフェニル基、エチルフェニル基など)が挙げられる。
【0063】
ノボラック樹脂(特に、ランダムノボラック樹脂)は、一般に、フェノール類と、アルデヒド類との反応により得られる。フェノール類としては、例えば、フェノール、p−又はm−クレゾール、3,5−キシレノール、アルキルフェノール(例えば、t−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール、ノニルフェノールなどのC1-20アルキルフェノール)、アリールフェノール(例えば、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クミルフェノール)などが挙げられる。これらのフェノール類は、1種で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0064】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド、フェニルアセトアルデヒドなどの芳香族アルデヒドなどが挙げられる。好ましいアルデヒド類としては、ホルムアルデヒドなどが挙げられる。また、トリオキサン、パラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒドの縮合体も使用できる。フェノール類とアルデヒド類との割合は、前者/後者=1/0.5〜1/1(モル比)程度である。
【0065】
フェノール類と、アルデヒド類との縮合反応は、通常、酸触媒の存在下で行われる。酸触媒としては、例えば、無機触媒(例えば、塩酸、硫酸、リン酸など)、有機触媒(p−トルエンスルホン酸、シュウ酸、乳酸など)などが挙げられる。
【0066】
前述のノボラック樹脂としては、オルソ/パラ比が1以上のハイオルソノボラック樹脂も使用できる。ノボラック樹脂のメチレン結合の仕方としては、各々の芳香族環の水酸基に対して、(i)オルソ位同士で結合している場合、(ii)オルソ位とパラ位で結合している場合、(iii)パラ位同士で結合している場合がある。
【0067】
オルソ/パラ比とは、パラ位同士で結合しているメチレン結合数をMp、オルソ位とパラ位で結合しているメチレン結合数をMOP、オルソ位同士結合しているメチレン結合数をMOとするとき、下記式で表される。
【0068】
オルソ/パラ比=[MO+(1/2)MOP]/[MP+(1/2)MOP
具体的には、例えば、13C−NMRスペクトル測定から得られたメチレン結合数から、上式よりオルソ/パラ比が算出できる。
【0069】
特に、本発明のノボラック樹脂としては、オルソ/パラ比が、1以上、例えば、1〜20(特に1〜15)程度であるノボラック樹脂、すなわち、いわゆるハイオルソノボラック樹脂が好ましく用いられる。
【0070】
オルソ/パラ比が1以上のノボラック樹脂は、例えば、(1)金属塩、金属酸化物、金属水酸化物およびアミン化合物から選択された少なくとも1種の触媒の存在下、あるいは更に付加縮合反応の後、酸触媒を添加して、フェノール類とアルデヒド類とを反応させる方法[例えば、特開昭55−90523号公報、特開昭57−51714号公報、特開昭59−80418号公報、特開昭62−230815公報、米国特許第4113700号明細書など]、(2)非極性溶媒(例えば、キシレン、トルエン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素など)中、加圧下で、フェノール類とアルデヒド類とを反応させる方法[例えば、特開平6−345837号公報、Makromol. Chem. 182, 2973 (1981)など]、(3)無触媒で、製造方法と条件とを厳密に制御して、フェノール類とアルデヒド類とを反応させる方法[例えば、特開平10−195158号公報、特開平10−204139号公報など]、(4)フェノールのマグネシウムブロミドやマグネシウムメチラートなどの金属フェノラート類とアルデヒド類とを、上述の非極性溶媒中で反応させる方法[例えば、米国特許第4097463号明細書、Macromolecules, 17, 19 (1984) など]などにより合成できる。フェノール類とアルデヒド類との割合は、前者/後者=1/0.3〜1/1(モル比)程度である。
【0071】
金属塩触媒としては、例えば、有機酸(例えば、酢酸、ナフテン酸、シュウ酸などの脂肪族カルボン酸、メタンスルホン酸などのスルホン酸など)の多価金属塩(例えば、Zn,Mg,Mn,Cd,Ca,Co,Pb,Cu,Ni,Alなどの塩)が挙げられる。金属酸化物および金属水酸化物としては、例えば、多価金属酸化物、多価金属水酸化物(例えば、Zn,Mg,Mn,Cd,Ca,Co,Pb,Cu,Ni,Alなどの酸化物、水酸化物など)などが挙げられる。アミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン(例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミンなど)が挙げられる。これらの触媒は、単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0072】
ハイオルソノボラック樹脂は、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物などの前記触媒が残留していても使用することができるが、水洗などの処理により残留触媒の量を低減させることが望ましい。また、前述の(3)の方法で得られるハイオルソノボラック樹脂は、触媒を使用しないため、触媒除去が不要であり、好ましいハイオルソノボラック樹脂である。
【0073】
なお、前述のフェノール類と、ジオキシベンゼン類、ナフトール類、ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの前記例示のビスフェノール類など)、アルキルベンゼン類(例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレンなど)、アニリン類、フルフラール類、尿素類(例えば、尿素、メラミン類、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなど)、テルペン類、カシューナット類、ロジン類などの共縮合成分との共縮合体も使用できる。このような共縮合フェノール樹脂には、例えば、酸及び/又はアルカリ触媒下で調製したフェノール・メラミン・ホルムアルデヒド縮合体、フェノール・グアナミン・ホルムアルデヒド縮合体、フェノール・ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合体、特にフェノールメラミンノボラック樹脂などが含まれる。
【0074】
また、ノボラック樹脂(ランダムノボラック樹脂及びハイオルソノボラック樹脂)のフェノール性水酸基の一部又は全部が、リン化合物(例えば、リン酸、亜リン酸、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸塩化物、亜リン酸塩化物などのリン酸化合物や亜リン酸化合物など)、およびホウ素化合物(例えば、ホウ酸、ホウ酸エステル、ホウ酸塩化物などのホウ酸化合物など)から選択された少なくとも1種を用いて変性された変性ノボラック樹脂(例えば、リン酸変性ノボラック樹脂、ホウ酸変性ノボラック樹脂など)も使用できる。ノボラック樹脂の水酸基は、通常、リン酸エステル又はホウ酸エステルとして変性されている。
【0075】
さらに、ノボラック樹脂(ランダムノボラック樹脂及びハイオルソノボラック樹脂)のフェノール性水酸基の水素原子の一部又は全部が、金属イオン、シリル基もしくは有機基(アルキル基、アルカノイル基、ベンゾイル基などのアシル基など)で変性(又は置換)された変性ノボラック樹脂も使用できる。
【0076】
好ましいノボラック樹脂としては、フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(例えば、t−ブチルフェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂、p−オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂)、これらの共縮合体及びこれらの混合物、並びに前記共縮合フェノール樹脂などが挙げられる。
【0077】
ノボラック樹脂(ランダムノボラック樹脂及びハイオルソノボラック樹脂)の数平均分子量は、特に制限されず、例えば、300〜5×104、好ましくは300〜1×104、さらに好ましくは300〜8000(特に、300〜5000)程度の範囲から選択できる。
【0078】
(アラルキル樹脂)
本発明に使用されるアラルキル樹脂は、下記式(5)で表される構造単位を有している。
【0079】
【化5】
Figure 0004502467
【0080】
(式中、Arは芳香族基を示し、R14及びR15は同一又は異なってアルキレン基を示し、R16は水素原子又はアルキル基を示す。Xはヒドロキシル基、アミノ基、又はN−置換アミノ基を示す)
芳香族基としては、炭素数6〜20の芳香族基、例えば、フェニレン基(o−,m−,p−フェニレン基)、ナフチレン基など、好ましくはフェニレン基(特に、p−フェニレン基)が挙げられ、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などのC1-4アルキレン基、好ましくはC1-2アルキレン基が挙げられる。アルキル基としては、メチル、エチル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、ドデシルなどのC1-20アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基が挙げられる。Xで示されるN−置換アミノ基には、モノ又はジC1-4アルキルアミノ基、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基が含まれる。
【0081】
アラルキル樹脂としては、Xがアミノ基であるアニリンアラルキル樹脂であってもよいが、ヒドロキシル基であるフェノールアラルキル樹脂を用いる場合が多い。好ましいフェノールアラルキル樹脂には、R14及びR15がメチレン基、Arがフェニレン基、R16が水素原子であり、下記式(6)で表されるp−キシレン置換フェノールを繰り返し単位として有する樹脂が含まれる。
【0082】
【化6】
Figure 0004502467
【0083】
アラルキル樹脂は、一般に、下記式(7)で表される化合物とフェノール類又はアニリン類との反応により得ることができる。フェノール類を用いるとフェノールアラルキル樹脂が、アニリン類を用いるとアニリンアラルキル樹脂を得ることができる。
【0084】
Y−R17−Ar−R18−Y (7)
(式中、Yはアルコキシ基、アシルオキシ基、ヒドロキシル基又はハロゲン原子を示す。Ar、R17及びR18は前記に同じ)
式(7)において、Yで示されるアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ基などのC1-4アルコキシ基が含まれる。アシルオキシ基にはアセトキシ基などの炭素数が2〜5程度のアシルオキシ基が含まれる。また、ハロゲン原子には、塩素、臭素、ヨウ素などが含まれる。
【0085】
上記式(7)で表される化合物としては、例えば、キシリレングリコールC1-4アルキルエーテル(p−キシリレングリコールジメチルエーテル、p−キシリレングリコールジエチルエーテルなど)などのアラルキルエーテル類、p−キシリレン−α,α’−ジクロライド、p−キシリレン−α,α’−ジブロマイドなどのアラルキルハライド類が挙げられる。
【0086】
フェノール類としては、例えば、フェノール、アルキルフェノール(例えば、クレゾール、キシレノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノールなどのC1-20アルキルフェノール)が挙げられる。これらフェノール類は、1種で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0087】
アニリン類としては、例えば、アニリン、アルキルアニリン(例えば、トルイジン、キシリジン、オクチルアニリン、ノニルアニリンなどのC1-20アルキルアニリン)、及びN−アルキルアニリン(例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンなどのN−C1-4アルキルアニリン)が挙げられる。これらアニリン類は、1種で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0088】
上記式(7)の化合物と、フェノール類又はアニリン類との割合は、例えば、前者/後者=1/1〜1/3(モル比)程度、好ましくは1/1〜1/2.5(モル比)程度である。
【0089】
式(7)の化合物とフェノール類又はアニリン類との反応は、触媒の存在下で行ってもよく、触媒の非存在下で行ってもよい。例えば、式(7)の化合物としてアラルキルエーテル類を用いた場合、触媒の存在下で反応でき、アラルキルハライド類を用いた場合、触媒の非存在下で反応できる。
【0090】
触媒としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、塩化スズ、塩化アルミニウムなどのフリーデルクラフツ触媒が挙げられる。
【0091】
また、前記反応は溶媒の存在下、又は非存在下で行うことができる。反応温度は、例えば、50〜250℃程度、好ましくは100〜230℃程度である。なお、反応体としてアラルキルハライド類を用いた場合、反応温度は上記温度より低くてもよく、例えば、50〜150℃程度、特に70〜130℃程度であってもよい。
【0092】
なお、前記反応において、フェノール類及び/又はアニリン類に加えて、アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド;ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドなどの芳香族アルデヒドなど)、オキシ安息香酸類(例えば、p−オキシ安息香酸;p−オキシ安息香酸メチル、p−オキシ安息香酸エチルなどのp−オキシ安息香酸アルキルエステルなど)、オキシベンゼン類(ジオキシベンゼン、トリオキシベンゼンなど)、ナフトール類(例えば、1−ナフトール、2−ナフトール、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシナフトエ酸、ヒドロキシナフトエ酸アルキルエステルなど)、ビスフェノール類(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの前記例示のビスフェノール類など)、アルキルベンゼン類(例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレンなど)、アニリン類、フルフラール類、尿素類(例えば、尿素、メラミン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなど)、メラミン類などの共縮合成分などを併用してもよい。
【0093】
また、アラルキル樹脂としては、Xで示されるヒドロキシル基又はアミノ基の少なくとも一部が、リン化合物(例えば、リン酸、亜リン酸、有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸などのリン系の酸、及びこれらの無水物、ハロゲン化物、塩、又はエステルなど)、及びホウ素化合物(例えば、ホウ酸、有機ボロン酸、有機ボリン酸などのホウ酸類、及びこれらの無水物、ハロゲン化物、塩、又はエステルなど)から選択された少なくとも1種を用いて変性された変性アラルキル樹脂(例えば、リン酸変性フェノールアラルキル樹脂、リン酸変性アニリンアラルキル樹脂、ホウ酸変性フェノールアラルキル樹脂、ホウ酸変性アニリンアラルキル樹脂など)も使用できる。アラルキル樹脂のヒドロキシル基は、通常、リン酸エステル又はホウ酸エステルとして、アミノ基は、通常、リン酸アミド又はホウ酸アミドとして変性されている。
【0094】
さらに、アラルキル樹脂としては、Xで示されるヒドロキシル基の水素原子の一部又は全部が、金属イオン、シリル基もしくは有機基(例えば、アルキル基、アルカノイル基、ベンゾイル基などのアシル基など)で変性された変性フェノールアラルキル樹脂も使用できる。
【0095】
このようにして得られたアラルキル樹脂の軟化点は、例えば、40〜160℃程度、好ましくは50〜150℃程度、さらに好ましくは55〜140℃程度である。
【0096】
また、アラルキル樹脂は必要に応じて硬化又は変性してもよい。硬化又は変性は、通常、ポリアミン(ヘキサメチレンテトラミンなど)によるメチレン架橋、エポキシ化合物(多環エポキシドなど)によるエポキシ架橋などの慣用の方法により行うことができる。
【0097】
さらに、アラルキル樹脂は、必要に応じてエラストマー変性されていてもよい。エラストマー変性は、合成ゴム、ポリオレフィン(ポリイソブチレン、ポリエチレンなど)などのエラストーマーにより化学的に行うことができる。
【0098】
アラルキル樹脂のうち、フェノールアラルキル樹脂は、商品名「ミレックス」(三井化学(株)製)、「Xylok」(Albright & Wilson(株)製)または「スミライトレジンPR54443」(住友デュレズ(株)製)として入手できる。また、アニリンアラルキル樹脂は商品名「アニリックス」(三井化学(株)製)として入手できる。
【0099】
(アニリン樹脂)
アニリン樹脂は、一般に、アニリン類とアルデヒド類との反応により得られる。
【0100】
アニリン類としては、例えば、アニリン、ナフチルアミン、アルキルアニリン(例えば、トルイジン、キシリジン、オクチルアニリン、ノニルアニリンなどのC1-20アルキルアニリン)、N−アルキルアニリン(例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンなどのN−C1-4アルキルアニリン)、ビスアニリン(例えば、ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどの前記例示のビスアニリン類など)が挙げられる。これらのアニリン類は、一種で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0101】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド、フェニルアセトアルデヒドなどの芳香族アルデヒドなどが挙げられる。好ましいアルデヒド類としては、ホルムアルデヒドなどが挙げられる。また、トリオキサンやパラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒドの縮合体も使用できる。アニリン類とアルデヒド類との割合は、前者/後者=1/0.5〜1/1.5(モル比)程度である。
【0102】
アニリン類とアルデヒド類との縮合反応は、通常、酸触媒の存在下又は中性で行われる。酸触媒としては、例えば、無機触媒(例えば、塩酸、硫酸、リン酸など)、有機触媒(p−トルエンスルホン酸、シュウ酸など)などが挙げあられる。
【0103】
なお、前述のアニリン類と、ジオキシベンゼン類、フェノール類(例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、アルキルフェノール、アリールフェノールなど)、ナフトール類、ビスフェノール類(例えば。ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの前記例示のビスフェノール類など)、アルキルベンゼン類(例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレンなど)、フルフラール類、尿素類(例えば、尿素、メラミン類、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなど)、テルペン類、カシューナット類、ロジン類などの共縮合成分との共縮合体も使用できる。
【0104】
(芳香族ビニル樹脂)
芳香族ビニル樹脂としては、例えば、下記式(8)で表される構造単位を有する樹脂が使用できる。
【0105】
【化7】
Figure 0004502467
【0106】
(式中、R19は水素原子又はC1-3アルキル基、R20は芳香族環、Xはヒドロキシル基、アミノ基又はN−置換アミノ基を示し、pは1〜3の整数である)
式(8)において、好ましいC1-3アルキル基としては、メチル基が挙げられる。また、芳香族環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン環などのC6-20芳香族環があげられる。なお、芳香族環は、置換基(例えば、ヒドロキシル基;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル基などのアルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ基などのアルコキシ基など)を有していてもよい。
【0107】
式(8)において、Xがヒドロキシル基の場合、ヒドロキシル基の水素原子は、金属イオン、シリル基もしくはアルコキシ基、アルキル基、アルカノイル基、ベンゾイル基などの有機基(保護基)で保護されていてもよい。
【0108】
このような誘導体から得られる樹脂は、例えば、下記式(9)に示される構造単位を有する。
【0109】
【化8】
Figure 0004502467
【0110】
(式中、R19は前記に同じ。R21は−OH, −OSi(R223及び−OM(Mは金属カチオン、OR22及びOCOR22であり、R22は炭素原子、1〜5個のアルキル基又はアリールである)からなる群より選ばれる基である。また、qは1〜3の整数である。)
前記式において、Mは一価のアルカリ金属カチオン(ナトリウム、リチウム、カリウムなど)、又は二価のアルカリ土類金属カチオン(マグネシウム、カルシウムなど)もしくは遷移金属カチオンのいずれかであってもよい。
【0111】
式(8)において、XがN−置換アミノ基の場合、N−置換アミノ基には、モノ又はジC1-4アルキルアミノ基、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基が含まれる。
【0112】
前記式の置換基R21は、オルト位、メタ位又はパラ位のいずれか一つに位置していればよい。さらに、置換基R21に加えて、ペンダント芳香族環はC1-4のアルキル基で置換されていてもよい。
【0113】
芳香族ビニル系樹脂には、前記構造単位(8)に対応するヒドロキシル基、アミノ基、又はN−置換アミノ基を有する芳香族ビニルモノマーの単独又は共重合体、前記芳香族ビニルモノマーと共重合性モノマーとの共重合体、ニトロ基を有する芳香族ビニル重合体の還元体などが含まれる。
【0114】
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルフェノール、ジヒドロキシスチレン、ビニルナフトールなどのヒドロキシル基含有芳香族ビニルモノマー、又はビニルアニリン、ジアミノスチレン、N,N−ジメチルアミノスチレンなどのアミノ基又はN−置換アミノ基含有芳香族ビニルモノマーなどが含まれる。
【0115】
共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系モノマー[ (メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシルなどの(メタ)アクリル酸C1-18アルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのヒドロキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸グリシジルなど)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなど] 、スチレン系モノマー(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルナフタリン、ビニルシクロヘキサンなど)、重合性多価カルボン酸(フマル酸、マレイン酸など)、マレイミド系モノマー(N−アルキルマレイミド、N−フェニルマレイミドなど)、ジエン系モノマー(イソプレン、1,3 −ブタジエン、1,4 −ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなど)、ビニル系モノマー(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;ビニルイソブチルエーテル、ビニルメチルエーテルなどのビニルエーテル類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾールなどの窒素含有ビニルモノマーなど)などが挙げられる。これらの共重合性モノマーは1種で又は2種以上使用できる。
【0116】
芳香族ビニルモノマーと共重合性モノマーとの割合は、例えば、10/90〜100/0(重量%)、好ましくは30/70〜100/0(重量%)、さらに好ましくは50/50〜100/0(重量%)程度である。
【0117】
好ましい芳香族ビニル樹脂は、ビニルフェノール単独重合体(ポリヒドロキシスチレン)、特にp−ビニルフェノール単独重合体である。
【0118】
芳香族ビニル系樹脂の数平均分子量は、特に制限されず、例えば、300〜50×104、好ましくは400〜30×104、さらに好ましくは500〜5×104程度の範囲から選択できる。
【0119】
(b)芳香族ナイロン
本発明に使用される芳香族ナイロンは、下記式(10)で表される単位を有する化合物などが使用できる。
【0120】
【化9】
Figure 0004502467
【0121】
(式中、R23およびR24は、同一又は異なって、芳香族、脂環族、又は脂肪族単位から選択され、かつ少なくとも一方が芳香環を含む。R25およびR26は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。また、R25とR26は直結して環を形成してもよい)
芳香族ナイロンには、ジアミンとジカルボン酸とから誘導されるポリアミドであって、ジアミン成分およびジカルボン酸成分のうち、少なくとも一方の成分が芳香族又は脂環族化合物であるポリアミド;芳香族アミノカルボン酸、必要に応じてジアミン及び/又はジカルボン酸を併用して得られるポリアミドが含まれる。芳香族ナイロンには、少なくとも2種の異なったポリアミド形成成分により形成されるコポリアミドも含まれる。
【0122】
ジアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、ジアミノトルエン、2,4−ジアミノメシチレン、3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエン、キシリレンジアミン(特に、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン)、ビス(2−アミノエチル)ベンゼン、ビフェニレンジアミン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチルビフェニル、ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3−エチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−アミノフェニル)メタン、1,4−ナフタレンジアミンなどの芳香族ジアミンおよびそれらのN−置換芳香族ジアミン;1,3−シクロペンタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン;トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどの脂肪族アミンが挙げられる。これらのジアミンは1種で又は2種以上使用できる。ジアミンとしては、芳香族ジアミン(特に、キシリレンジアミン、N,N’−ジアルキル置換キシリレンジアミン)を使用するのが好ましい。
【0123】
ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸などのC2-20脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸やシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;二量体化脂肪酸(ダイマー酸)などが挙げられる。これらのジカルボン酸は1種又は2種以上使用できる。ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸(特に、アジピン酸などのC6-12脂肪族ジカルボン酸)を使用するのが好ましい。
【0124】
芳香族アミノカルボン酸としては、例えば、フェニルアラニン、チロシン、アントラニル酸、アミノ安息香酸などが例示される。アミノカルボン酸も一種又は二種以上使用できる。
【0125】
また、芳香族ナイロンとして、難燃剤の特性を損なわない範囲で、ラクタム及び/又はα,ω−アミノカルボン酸との縮合体を使用してもよい。ラクタムとしては、プロピオンラクタム、ブチロラクタム、バレロラクタム、カプロラクタム(ε−カプロラクタムなど)などのC3-12ラクタムなど、α,ω−アミノカルボン酸としては、7−アミノヘプタン酸、10−アミノデカン酸などが挙げられる。
【0126】
その他の芳香族ナイロンの副成分として、一塩基酸類(例えば、酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、ニコチン酸など)、モノアミン類(例えば、エチルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミンなど)から選択された少なくとも一種以上を粘度調整剤として使用できる。
【0127】
芳香族ナイロンには、ジアミン成分が芳香族化合物であるポリアミド(例えば、ジアミン成分としてキシリレンジアミンを含むポリアミド又はコポリアミド)、芳香族ジアミンとα,ω−C4-12ジカルボン酸とから得られるポリアミド(例えば、アジピン酸とメタキシリレンジアミンとから得られるポリアミド(MXD6)、スベリン酸とメタキシリレンジアミンとから得られるポリアミド、アジピン酸とパラキシリレンジアミンとから得られるポリアミド(PMD6)、スベリン酸とパラキシリレンジアミンとから得られるポリアミド、アジピン酸とN,N’−ジメチルメタキシリレンジアミンとから得られるポリアミド、スベリン酸とN,N’−ジメチルメタキシリレンジアミンとから得られるポリアミド、アジピン酸と1,3−フェニレンジアミンとから得られるポリアミド、アジピン酸と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとから得られるポリアミド、アジピン酸とメタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンとから得られるコポリアミド、アジピン酸とメタキシリレンジアミン及びN,N’−ジメチルメタキシリレンジアミンとから得られるコポリアミド、4,4’−ジアミノビフェニレンとアジピン酸とから得られるポリアミドなど)などが挙げられる。好ましい芳香族ナイロンは、芳香族ジアミン(特に、キシリレンジアミン)とα,ω−C6-12脂肪族ジカルボン酸から得られるポリアミド(特に、MXD6)が挙げられる。これらのポリアミドは単独で又は混合して使用できる。
【0128】
芳香族ナイロンの数平均分子量は、特に制限されず、例えば、300〜5×104、好ましくは500〜1×104、さらに好ましくは500〜8000(特に、500〜5000)程度の範囲から選択できる。
【0129】
(c)ポリカーボネート樹脂
ポリカーボネート樹脂としては、ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸ジエステル[ジアリールカーボネート(ジフェニルカーボネートなど)又はジアルキルカーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど)など]との反応により得られる重合体が使用できる。ジヒドロキシ化合物は、脂環族化合物などであってもよいが、好ましくはビスフェノール化合物である。また、副原料として、脂肪族又は芳香族ジカルボン酸、若しくはそれらの塩化物又はエステルを用いたポリエステルカーボネート樹脂も好ましく用いられる。
【0130】
ビスフェノール化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタンなどのビス(ヒドロキシアリール)C1-6アルカン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)C4-10シクロアルカン;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド;4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトンなどが挙げられる。さらに、このビスフェノール化合物は、先に示した低分子量の芳香族化合物であるビスフェノール類(但し、ここに示したビスフェノール化合物を除く)なども含まれる。
【0131】
好ましいポリカーボネート樹脂には、ビスフェノール型芳香族ポリカーボネート(特に、ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート)が含まれる。
【0132】
また、ポリカーボネート樹脂の末端は、アルコール類、メルカプタン類、フタルイミド類など(特に、一価のアルコール類)で封鎖(結合)されていてもよい。ポリカーボネート樹脂の末端を封鎖する一価のアルコール類としては、例えば、一価のアリールアルコール類(C1-10アルキル基及び/又はC6-10アリール基が置換していてもよい一価のフェノール類、例えば、フェノール、o,m,p−クレゾール、ジメチルフェノール、o,m,p−エチルフェノール、o,m,p−n−プロピルフェノール、o,m,p−イソプロピルフェノール、o,m,p−n−ブチルフェノール、o,m,p−s−ブチルフェノール、o,m,p−t−ブチルフェノール、o,m,p−フェニルフェノール、o,m,p−ベンジルフェノール、クミルフェノールなど)、一価のアルキルアルコール類(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコールなどのC1-20アルキルモノアルコール類)、一価のアラルキルアルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどのC7-20アラルキルモノアルコール類など)などが含まれる。
【0133】
さらに、末端を有さない環状オリゴカーボネートや環状ポリカーボネートも含まれる。
【0134】
ポリカーボネート樹脂の数平均分子量は、特に制限されず、例えば、300〜5×104、好ましくは400〜1×104程度の範囲から選択できる。
【0135】
(d)ポリアリレート樹脂
ポリアリレート樹脂には、下記式(11)
[−O−Ar−OC(O)−A−C(O)−] (11)
(式中、Arは芳香族基を示し、Aは芳香族、脂環族、又は脂肪族基を示す。)で表される構造単位を有する化合物が使用できる。
【0136】
このようなポリアリレート系樹脂は、ポリエステル化反応としてエステル交換法(例えば、アセテート法、フェニルエステル法など)、酸クロリド法、直接法、または重付加法などにより、溶融重合法、溶液重合法、または界面重合法などを使用して製造できる。
【0137】
ポリアリレート系樹脂は、芳香族ポリオール成分とポリカルボン酸成分(芳香族ポリカルボン酸成分、脂肪族ポリカルボン酸成分、脂環式ポリカルボン酸成分など)との反応により得ることができる。ポリカルボン酸成分は、通常、少なくとも芳香族ポリカルボン酸成分を含む。
【0138】
芳香族ポリオール(モノマー)としては、通常、単環式芳香族ジオール、多環式芳香族ジオールなどのジオール、又はそれらの反応性誘導体[例えば、芳香族ポリオールの塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、芳香族ポリオールのエステル(酢酸エステルなど)、シリル保護された芳香族ポリオール(トリメチルシリル化体など)など]が用いられる。
【0139】
単環式芳香族ジオールとしては、例えば、ベンゼンジオール(レゾルシノール、ハイドロキノン、m−キシリレングリコール、p−キシリレングリコールなど)、ナフタレンジオールなどの炭素数6〜20程度の芳香族環ジオールが挙げられる。
【0140】
多環式芳香族ジオールとしては、ビス(ヒドロキシアリール)類(ビスフェノール類)、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ビフェノール、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン[例えば、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、ビス(ヒドロキシフェニル)エタン(例えば、ビスフェノールADなど)、ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン(例えば、ビスフェノールAなど)などのビス(ヒドロキシアリール)C1-6アルカンなど]、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン[例えば、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)C3-12シクロアルカンなど]、ビス(ヒドロキシアリール)カルボン酸[例えば、ビス−4,4−(ヒドロキシフェニル)ブタン酸などのビス(ヒドロキシアリール)C2-6カルボン酸など]などが挙げられる。また、その他の多環式芳香族ジオールには、ビス(ヒドロキシアリール)骨格を有する化合物、例えば、ジ(ヒドロキシフェニル)エーテル、ジ(ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ジ(ヒドロキシフェニル)ケトン、ジ(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(C1-4アルキル置換ヒドロキシフェニル)アルカン[例えば、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなど]、テルペンジフェノール類(例えば、1,4−ジ(C1-4アルキル置換ヒドロキシフェニル)−p−メンタンなど)なども含まれる。
【0141】
これら芳香族ポリオールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0142】
好ましい芳香族ポリオールには、ビスフェノール類、例えば、ビス(ヒドロキシアリール)C1-6アルカン(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールADなど)などが含まれる。
【0143】
なお、前記芳香族ポリオールは、脂肪族又は脂環式ポリオールと併用してもよい。脂肪族ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2-10アルキレングリコール、ポリオキシC2-4アルキレングリコールが挙げられる。また、前記脂肪族ポリオールには、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのC3-10脂肪族環を有する脂肪族ポリオールも含まれる。脂環式ポリオールとしてはシクロヘキサンジオールなどのC3-10脂環式ポリオールが挙げられる。
【0144】
芳香族ポリカルボン酸としては、例えば、単環式芳香族ジカルボン酸、多環式芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸又はそれらの反応性誘導体[例えば、酸ハライド(酸クロライドなど)、エステル(アルキルエステル、アリールエステルなど)、酸無水物など]が挙げられる。
【0145】
単環式芳香族環ジカルボン酸には、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのベンゼンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸などの炭素数8〜20程度のアリールジカルボン酸が挙げられる。なお、ベンゼンジカルボン酸及びナフタレンジカルボン酸(特に、ベンゼンジカルボン酸)には1又は2個のC1-4アルキル基が置換していてもよい。
【0146】
多環式芳香族ジカルボン酸としては、ビス(アリールカルボン酸)類、例えば、ビフェニルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)メタン、ビス(カルボキシフェニル)エタン、ビス(カルボキシフェニル)プロパンなどのビス(カルボキシアリール)C1-6アルカン;ビス(カルボキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(カルボキシアリール)C3-12シクロアルカン;ビス(カルボキシフェニル)ケトン;ビス(カルボキシフェニル)スルホキシド;ビス(カルボキシフェニル)エーテル;ビス(カルボキシフェニル)チオエーテルなどが挙げられる。
【0147】
好ましい芳香族ポリカルボン酸成分には、単環式芳香族ジカルボン酸(特に、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのベンゼンジカルボン酸)、ビス(カルボキシアリール)C1-6アルカンなどが含まれる。
【0148】
脂肪族ポリカルボン酸(モノマー)としては、脂肪族ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC2-20脂肪族ジカルボン酸が挙げられ、ジカルボキシメチルシクロヘキサンなどのC3-10脂肪族環を有するジカルボン酸であってもよい。脂環式ポリカルボン酸としては、脂環式ジカルボン酸、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などのC3-20脂環式ジカルボン酸が含まれる。
【0149】
好ましいポリアリレート樹脂には、芳香族ポリオールがビスフェノール類であるポリアリレート樹脂、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールFなど)とベンゼンジカルボン酸(イソフタル酸、テレフタル酸など)とのポリエステル、ビスフェノール類とビス(アリールカルボン酸)類[例えば、ビス(カルボキシフェニル)メタン、ビス(カルボキシフェニル)エタン、ビス(カルボキシフェニル)プロパンなどのビス(カルボキシアリール)C1-4アルキル]とのポリエステルなどが挙げられる。これらポリアリレート樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0150】
また、ポリアリレート樹脂は、芳香族ジオール及び芳香族ジカルボン酸に加えて、必要に応じて、芳香族トリオール、芳香族テトラオール[例えば、1,1,2,2−テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンなど]、芳香族トリカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸などを併用してもよい。
【0151】
また、ポリアリレート樹脂の末端は、アルコール類、カルボン酸類など(特に、一価のアルコール類、一価のカルボン酸類など)で封鎖(結合)してもよい。ポリアリレート樹脂の末端を封鎖する一価のアルコール類としては、例えば、アリールアルコール類(C1-10アルキル基及び/又はC6-10アリール基が置換していてもよい一価のフェノール類、例えば、フェノール、o,m,p−クレゾール、ジメチルフェノール、o,m,p−エチルフェノール、o,m,p−n−プロピルフェノール、o,m,p−イソプロピルフェノール、o,m,p−n−ブチルフェノール、o,m,p−s−ブチルフェノール、o,m,p−t−ブチルフェノール、o,m,p−フェニルフェノール、o,m,p−ベンジルフェノール、クミルフェノールなど)、アルキルアルコール類(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコールなどのC1-20アルキルアルコール類)、アラルキルアルコール類(ベンジルアルコール、フェネチルアルコールなどのC7-20アラルキルアルコール類)などが含まれる。
【0152】
ポリアリレート樹脂の末端を封鎖(結合)する一価のカルボン酸類としては、脂肪族カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、オクタン酸などのC1-20脂肪族カルボン酸)、脂環式カルボン酸(シクロヘキサンカルボン酸などのC4-20脂環式カルボン酸)、一価の芳香族カルボン酸(安息香酸、トルイル酸、o,m,p−t−ブチル安息香酸、p−メトキシフェニル酢酸等のC7-20芳香族カルボン酸)などが含まれる。また、前記カルボン酸類は、フェニル酢酸などの芳香族基が置換した一価の脂肪族カルボン酸(特に、C6-20芳香族基が置換したC1-10脂肪族モノカルボン酸)であってもよい。
【0153】
ポリアリレート樹脂の数平均分子量は、例えば、300〜30×104程度、好ましくは500〜10×104程度、さらに好ましくは500〜5×104程度である。
【0154】
(e)芳香族エポキシ樹脂
芳香族エポキシ樹脂には、エーテル系エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂など)、芳香族アミン成分を用いたアミン系エポキシ樹脂などが含まれる。
【0155】
ビスフェノール型エポキシ樹脂を構成するビスフェノールは、前記ビス(ヒドロキシアリール)類に同じである。好ましいビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとの反応により生成するエポキシ樹脂、例えば、ビス(ヒドロキシアリール)C1-6アルカン、特にビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールFなどのグリシジルエーテルが挙げられる。また、ビスフェノール型エポキシ樹脂には、分子量の大きな前記ビスフェノールグリシジルエーテル(すなわち、フェノキシ樹脂)も含まれる。
【0156】
ノボラック型エポキシ樹脂を構成するノボラック樹脂としては、芳香族環にアルキル基(例えば、C1-20アルキル基、好ましくはメチル基、エチル基などのC1-4アルキル基)が置換していてもよいノボラック樹脂(例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂など)を挙げることができる。好ましいノボラック型エポキシ樹脂には、C1-2アルキル基が置換していてもよいノボラック樹脂のグリシジルエーテルが含まれる。
【0157】
アミン系エポキシ樹脂を構成する芳香族アミン成分には、単環式芳香族アミン(アニリン、トルイジンなど)、単環式芳香族ジアミン(ジアミノベンゼン、キシリレンジアミンなど)、単環式芳香族アミノアルコール(アミノヒドロキシベンゼンなど)、多環式芳香族性ジアミン(ジアミノジフェニルメタンなど)、多環式芳香族性アミンなどが挙げられる。
【0158】
エポキシ樹脂の数平均分子量は、例えば、200〜50,000程度、好ましくは300〜10,000程度、さらに好ましくは400〜6,000程度(例えば、400〜5,000程度)である。また、フェノキシ樹脂の数平均分子量は、例えば、500〜50,000程度、好ましくは1,000〜40,000程度、さらに好ましくは3,000〜35,000程度である。
【0159】
エポキシ樹脂は、アミン系硬化剤(例えば、エチレンジアミンなどの脂肪族アミン、メタフェニレンジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族アミンなど)、ポリアミノアミド系硬化剤、酸および酸無水物系硬化剤などの硬化剤により硬化して用いてもよい。
【0160】
(f)芳香族ポリエーテル樹脂
芳香族ポリエーテル樹脂としては、オルト,メタ,又はパラフェニレンエーテル樹脂及びオルト,メタ,又はパラキシリレンエーテル樹脂が使用できるが、特に、下記式(12)
【0161】
【化10】
Figure 0004502467
【0162】
(式中、R27,R28,R29およびR30は、各々独立して炭素数1〜6のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、水素原子を表す)で表される構造単位を有する単独重合体又は共重合体が好ましく使用できる。
【0163】
式(12)における置換基R27〜R30のうち、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基などの直鎖又は分岐鎖状C1-10アルキル基などが例示できる。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基などのヒドロキシC1-4アルキル基などが例示できる。アミノアルキル基としては、アミノメチル基、アミノエチル基などのアミノC1-4アルキル基などが例示でき、アリール基には、フェニル基、置換基を有するフェニル基などが例示できる。
【0164】
芳香族ポリエーテル樹脂のうち単独重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(1,3−キシリレン)エーテル、ポリ(1,4−キシリレン)エーテルなどが挙げられる。これらのうちポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル及びポリ(1,4−キシリレン)エーテルが経済性の点から好ましい。
【0165】
芳香族ポリエーテル樹脂のうち共重合体の例としては、2,6−ジメチルフェノールと共重合性単量体(例えば、2,3,6−トリメチルフェノール、o−クレゾールから選択された少なくとも一種の単量体)との共重合体及びスチレン系モノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0166】
芳香族ポリエーテル樹脂は単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0167】
芳香族ポリエーテル樹脂の数平均分子量は、特に制限されず、例えば、300〜5×104、好ましくは400〜1×104程度の範囲から選択できる。
【0168】
[リン含有化合物と芳香族化合物との割合]
リン含有化合物の使用量は、難燃性を付与できる範囲で選択され、芳香族化合物100重量部に対して、1〜250重量部、好ましくは5〜200重量部(例えば、10〜200重量部)、さらに好ましくは20〜200重量部程度の範囲から選択でき、通常、15〜150重量部(例えば、20〜150重量部)程度である。
【0169】
[難燃剤の割合]
本発明の難燃剤は、リン含有化合物と特定の芳香族化合物とを組み合わせることにより、酸素指数の低いポリアセタール樹脂に対して、少量であっても高い難燃性を付与できる。前記難燃剤の割合は、樹脂の特性を損わない限り特に制限されず、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、難燃剤1〜100重量部、好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは10〜100重量部(例えば、15〜90重量部)程度である。
【0170】
[添加剤]
本発明の樹脂組成物は、用途に応じて、種々の添加剤、例えば、ドリッピング防止剤、酸化防止剤および充填剤から選択された少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0171】
[ドリッピング防止剤]
ドリッピング防止剤の添加により、燃焼時の火種及び融液の滴下(ドリップ)を抑制できる。ドリッピング防止剤としては、種々のフッ素樹脂が使用でき、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどのフッ素含有モノマーの単独又は共重合体;前記フッ素含有モノマーと、エチレン、プロピレン、(メタ)アクリレートなどの共重合性モノマーとの共重合体が含まれる。このようなフッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドなどの単独重合体;テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体などの共重合体が例示される。これらのフッ素系樹脂は、一種で又は二種以上混合して使用できる。
【0172】
前記フッ素系樹脂は、粒子状で使用してもよく、平均粒径は、例えば、10〜5000μm程度、好ましくは100〜1000μm程度、さらに好ましくは200〜700μm程度であってもよい。
【0173】
ドリッピング防止剤の含有量は、例えば、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部程度、好ましくは0.1〜5重量部程度、さらに好ましくは0.1〜3重量部程度の範囲から選択できる。
【0174】
[酸化防止剤]
酸化防止剤には、例えば、フェノール系(ヒンダードフェノール類など)、アミン系、リン系、イオウ系、ヒドロキノン系、キノリン系酸化防止剤などが含まれる。
【0175】
フェノール系酸化防止剤には、ヒンダードフェノール類、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC2-10アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのジ又はトリオキシC2-4 アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、グリセリントリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC3-8 アルカントリオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC4-8 アルカンテトラオールテトラキス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−オクタデシル−3−(4′,5′−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、ステアリル−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート、ジステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンムアミド)、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタンなどが含まれる。
【0176】
アミン系酸化防止剤には、例えば、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N,N′−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−シクロヘキシル−1,4−フェニレンジアミンなどが含まれる。
【0177】
リン系酸化防止剤には、例えば、トリイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2−t−ブチルフェニル)フェニルホスファイト、トリス[2−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル]ホスファイト、トリス[2,4−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル]ホスファイト、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−フェニルフェニル)ホスファイトなどのホスファイト化合物;トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルビニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルフェニル−p−アニシルホスフィン、p−アニシルジフェニルホスフィン、p−トリルジフェニルホスフィン、ジ−p−アニシルフェニルホスフィン、ジ−p−トリルフェニルホスフィン、トリ−m−アミノフェニルホスフィン、トリ−2,4−ジメチルフェニルホスフィン、トリ−2,4,6―トリメチルフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−o―アニシルホスフィン、トリ−p−アニシルホスフィン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンなどのホスフィン化合物などが含まれる。
【0178】
ヒドロキノン系酸化防止剤には、例えば、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノンなどが含まれ、キノリン系酸化防止剤には、例えば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが含まれ,イオウ系酸化防止剤には、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどが含まれる。
【0179】
好ましい酸化防止剤には、フェノール系酸化防止剤(特に、ヒンダードフェノール類)、例えば、ポリオール−ポリ[(分岐C3-6 アルキル基及びヒドロキシ基置換フェニル)プロピオネート]などが含まれる。
【0180】
酸化防止剤は単独で又は二種以上使用できる。酸化防止剤の含有量は、例えば、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2.5重量部、特に0.1〜1重量部程度の範囲から選択できる。
【0181】
[充填剤]
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、充填剤を含有していてもよい。充填剤(補強剤又は強化剤)には、粉粒状充填剤、繊維状充填剤、板状充填剤などが含まれる。粉粒状充填剤としては、例えば、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、クレイ、タルクなどのケイ酸塩、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、二硫化モリブデン、カーボンブラック、黒鉛、金属粉などが例示できる。繊維状充填剤には、高融点有機繊維(例えば、ビニロン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維など)、無機繊維(ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、炭素繊維、金属繊維など)、ホイスカー(アルミナ、酸化ベリリウム、炭化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ケイ素などのホイスカー)などが例示できる。板状充填剤には、マイカ、カラスフレーク、金属箔などが含まれる。
【0182】
充填剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。充填剤の使用量は、例えば、ポリアセタール樹脂100重量部に対して1〜500重量部、好ましくは5〜250重量部、さらに好ましくは10〜100重量部程度の範囲から選択できる。
【0183】
前記ドリッピング防止剤、酸化防止剤、充填剤は、それぞれ単独で用いてもよく二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0184】
[その他の添加剤]
本発明の難燃性樹脂組成物は、他の難燃剤を含んでいてもよい。他の難燃剤としては、例えば、ハロゲン含有難燃剤、硫黄含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤、アルコール系難燃剤、無機系難燃剤(金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩など)などが例示できる。
【0185】
ハロゲン含有難燃剤には、塩素、臭素、ヨウ素含有有機難燃剤が含まれる。例えば、ハロゲン化ジフェニルエーテル、エチレンビスハロゲン化フタルイミド、トリハロゲン化フタルイミノエチルボレート、ハロゲン化ポリカーボネート、ハロゲン化エポキシ化合物、ハロゲン化スチレン、ハロゲン化ポリフェニレンオキシド、ポリハロゲン化ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0186】
硫黄含有難燃剤としては、硫酸エステルの他に、有機スルホン酸、スルファミン酸、有機スルファミン酸、及びそれらの塩、エステル、アミドなどが挙げられる。
【0187】
ケイ素含有難燃剤には、(ポリ)オルガノシロキサンが含まれる。(ポリ)オリガノシロキサンとしては、ジアルキルシロキサン(例えば、ジメチルシロキサンなど)、アルキルアリールシロキサン(フェニルメチルシロキサンなど)、ジアリールシロキサンなどのモノオルガノシロキサン及びこれらの単独重合体(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンなど)、又は共重合体などが含まれる。また、(ポリ)オルガノシロキサンとしては、分子末端や主鎖に、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エーテル基などの置換基を有する変性(ポリ)オルガノシロキサン(例えば、変性シリコーンなど)なども使用できる。
【0188】
アルコール系難燃剤としては、多価アルコール、オリゴマーの多価アルコール、エステル化された多価アルコール、置換されたアルコール、糖類(単糖類、多糖類など)、ビニルアルコールの単独又は共重合体(又はビニルエステル類の単独又は共重合体の加水分解物)などが挙げられる。
【0189】
無機系難燃剤のうち、金属酸化物としては、例えば、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化マンガン、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどが挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化スズ、水酸化ジルコニウムなどが挙げられる。金属炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛などが挙げられる。特に、金属酸化物及び金属水酸化物は、赤リンの安定剤としても機能するため、少量添加でも有用である。
【0190】
また、前記無機系難燃剤には、金属硫化物(二硫化モリブデン、二硫化タングステンなど)、金属スズ酸塩(例えば、スズ酸亜鉛など)、金属ホウ酸塩(例えば、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸バリウム、ホウ酸亜鉛[無水ホウ酸亜鉛及び含水ホウ酸亜鉛など(例えば、U.S.Borax社製のFire brake ZB,415又は500など)]、ホウ酸マンガン、ホウ酸ストロンチウムなど)、ポリ酸塩[モリブデン酸塩(モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛など)、タングステン酸塩(タングステン酸アンモニウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸亜鉛など)]、膨張性黒鉛なども含まれる。
【0191】
これらの他の難燃剤は、一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0192】
他の難燃剤の含有量は、例えば、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、0.01重量部〜70重量部程度、好ましくは0.1〜50重量部程度の範囲から選択できる。
【0193】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、各種ポリマー[例えば、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレートなどのC1-10アルキル(メタ)アクリレートの単独又は共重合体)、アイオノマー、ポリアルキレングリコール、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマーなど]を添加してもよい。
【0194】
さらに、樹脂組成物には、着色剤(染料、無機又は有機顔料)、安定剤[熱安定剤、耐候(光)安定剤、ホスフィン抑制剤など]、離型剤、核剤、帯電防止剤、界面活性剤、摺動剤などを添加してもよい。
【0195】
特に、熱安定剤を使用することにより、ポリアセタールの熱安定性を向上させてもよい。このような熱安定剤としては、窒素含有化合物(ポリアミド、ポリ−β−アラニン共重合体、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、メラミン、シアノグアニジン、メラミン−ホルムアルデヒド縮合体などの塩基性窒素含有化合物など)、アルカリ又はアルカリ土類金属含有化合物[特に、有機カルボン酸金属塩(ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなど)、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化カルシウムなど)、金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、金属炭酸塩など]、ゼオライト、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。
【0196】
特に、アルカリ又はアルカリ土類金属含有化合物(特にマグネシウム化合物やカルシウム化合物などのアルカリ土類金属含有化合物)、ゼオライト、ハイドロタルサイトなどが好ましい。
【0197】
前記ゼオライトとしては、特に制限されないが、H型やNH4型以外のゼオライト、例えば、特開平7−62142号公報に記載されているゼオライト[最小単位セルがアルカリ及び/又はアルカリ土類金属の結晶性アルミノケイ酸塩であるゼオライト(A型、X型、Y型、L型及びZSM型ゼオライト、モルデン沸石型ゼオライト;チャバザイト、モルデン沸石、ホージャサイトなどの天然ゼオライトなど)など]などが使用できる。
【0198】
なお、A型ゼオライトは、「ゼオラム3−A」、「ゼオラム4−A」「ゼオラム5−A」などとして、また、X型ゼオライトは、「ゼオラムF−9」、Y型ゼオライトは、「HSZ−320NAA」などとして東ソー(株)から入手可能である。
【0199】
また、ハイドロタルサイトとしては、特開昭60−1241号公報及び特開平9−59475号公報などに記載されているハイドロタルサイト類、例えば、下記式で表されるハイドロタルサイト化合物などが使用できる。
【0200】
[M2+ 1-x3+ x(OH)2x+[An- x/n・mH2O]x-
(式中、M2+はMg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+などの二価金属イオンを示し、M3+はAl3+、Fe3+、Cr3+などの三価金属イオンを示す。An-はCO3 2-、OH-、HPO4 2-、SO4 2-などのn価(特に1価又は2価)のアニオンを示す。xは、0<x<0.5であり、mは、0≦m<1である。)
なお、ハイドロタルサイトは、「DHA−4A」、「DHA−4A−2」、「アルカマイザー」などとして協和化学工業(株)から入手可能である。
【0201】
このような熱安定剤の使用量は、例えば、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部(例えば、1〜10重量部)程度である。
【0202】
前記添加剤やその他の添加剤は、一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0203】
[製造方法]
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、粉粒状混合物や溶融混合物であってもよく、ポリアセタール樹脂と、リン含有化合物および芳香族化合物と、必要により他の添加剤とを慣用の方法で混合することにより調製できる。例えば、(1)各成分を混合して、一軸又は二軸の押出機により混練して押出してペレットを調製した後、成形する方法、(2)一旦組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製し、そのペレットを所定量混合(希釈)して成形に供し、所定の組成の成形品を得る方法、(3)ポリアセタール樹脂のペレットに難燃剤を散布などにより付着させた後、成形し、所定の組成の成形品を得る方法などが採用できる。前記マスターバッチの調製においては、ポリアセタール樹脂、リン含有化合物および芳香族化合物から選択された少なくとも二種の成分で構成されたマスターバッチを調製し、ポリアセタール樹脂と溶融混合することにより樹脂組成物を調製してもよい。
【0204】
また、成形品に用いられる組成物の調製において、基体であるポリアセタール樹脂の粉粒体(例えば、ポリアセタール樹脂の一部又は全部を粉砕した粉粒体)と他の成分(難燃剤など)を混合して溶融混練すると、添加物の分散を向上させるのに有利である。
【0205】
本発明の樹脂組成物は、難燃性又は自己消化性が高く、ドリッピングも有効に防止できる。そのため、本発明の樹脂組成物は、慣用の成形方法、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形、ガスインジェクションモールディングなどの方法で、種々の成形体を成形するのに有用である。
【0206】
本発明の成形体は、難燃性が要求される種々の用途、例えば、自動車分野や電気・電子分野の機構部品(能動部品や受動部品や電線ケーブル部材など)、建材・配管分野、日用品(生活)・化粧品分野、及び医用分野(医療・治療分野)の部品・部材として好適に使用される。本発明の成形体は、通常、電気・電子部品、機械機構部品、自動車部品などに利用できる。
【0207】
より具体的には、自動車分野の機構部品としては、ノブ、レバーなどの自動車部品、インナーハンドル、フューエルトランクオープナー、シートベルトバックル、アシストラップ、各種スイッチ、ノブ、レバー、クリップなどの内装部品、メーターやコネクターなどの電気系統部品、オーディオ機器やカーナビゲーション機器などの車載電気・電子部品、ウインドウレギュレーターのキャリアープレートに代表される金属と接触する部品、ドアロックアクチェーター部品、ミラー部品、ワイパーモーターシステム部品、燃料系統の部品などが例示できる。
【0208】
電気・電子分野の機構部品としては、オーディオ機器、VTR(ビデオテープレコーダー)、8mmビデオ、ビデオカメラなどのビデオ機器、又はコピー機、ファクシミリ、ワードプロセサー、コンピューターなどのOA(オフィスオートメーション)機器、更にはモーター、発条などの駆動力で作動する玩具、電話機、コンピュータなどに付属するキーボードなどで使用される部品が例示できる。具体的には、シャーシ(基盤)、ギヤー、レバー、カム、プーリー、軸受けなどが挙げられる。さらに、少なくとも一部がポリアセタール樹脂成形品で構成された光及び磁気メディア部品(例えば、金属薄膜型磁気テープカセット、磁気ディスクカートリッジ、光磁気ディスクカートリッジなど)、更に詳しくは、音楽用メタルテープカセット、デジタルオーディオテープカセット、8mmビデオテープカセット、フロッピーディスクカートリッジ、ミニディスクカートリッジなどにも適用可能である。
【0209】
さらに、本発明のポリアセタール樹脂成形品は、照明器具、建具、配管、コック、蛇口、トイレ周辺機器部品などの建材・配管部品、一般的な容器、広範な生活関係部品に好適に使用される。
【0210】
【発明の効果】
本発明では、リン含有化合物と特定の芳香族化合物とを組み合わせて難燃剤を構成するので、ポリアセタール樹脂に対して高い難燃性を付与できる。また、樹脂本来の特性を損なうことなく、少量の添加でポリアセタール樹脂を高度に難燃化できる。
【0211】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0212】
実施例1〜36及び比較例1〜27
(樹脂組成物の調製)
ポリアセタール樹脂に、下記成分を表に示す割合で混合し、ラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて190℃で5分間混練し樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を圧縮成形し、燃焼試験用の成形品(120×13×3mm)を作製し、燃焼性を評価した。
【0213】
(燃焼性評価)
燃焼試験用の成形品をスタンドにクランプで水平に固定し、成形品の未固定側の端部(自由端部)の下から10秒間接炎して離した。炎を離してから燃焼が終わるまでの時間を測定し、下記の指標で難燃性を評価した。
【0214】
A:燃焼時間が10秒未満の自消性成形品
B:燃焼時間が10秒以上の自消性成形品
C:クランプ保持部まで燃焼した非自消性成形品
また、燃焼性評価時に樹脂の滴下(ドリッピング)を観察し、滴下の有無を評価した。
【0215】
(熱安定性評価)
燃焼試験用の成形品を、ギヤーオーブン中(120℃)で7日間熱処理し、成形品表面のクラックの有無を目視で観察し、下記の指標で熱安定性を評価した。
【0216】
○:クラックなし
×:クラックあり
実施例及び比較例では下記のポリアセタール樹脂、難燃剤などを使用した。
[ポリアセタール樹脂A]
A−1:ポリアセタールコポリマー(ジュラコンM90−44、ポリプラスチックス(株)製)
A−2:ポリアセタールコポリマー(ジュラコンM90、ポリプラスチックス(株)製)
A−3:ポリアセタールホモポリマー(デルリン500P、米国デュポン(株)製)
A−4:ポリアセタールコポリマー(ジュラコンGM20:ガラス繊維20%充填剤、ポリプラスチックス(株)製)
A−5:ポリアセタールコポリマー(ジュラコンGB25:ガラスビーズ25%充填剤、ポリプラスチックス(株)製)
[リン含有化合物]
B−1:赤リン(ノーバエクセル140、燐化学工業(株)製)
B−2:赤リン(ノーバエクセルF5、燐化学工業(株)製)
B−3:赤リンマスターバッチ
ベント付き2軸押出機を用いて、赤リン(B−1)と低密度ポリエチレンから調製した赤リン/(低密度ポリエチレン)=50/50(重量比)の赤リンマスターバッチ
B−4:赤リンマスターバッチ
ベント付き2軸押出機を用いて、赤リン(B−1)とポリアセタール樹脂(A−1)から調製した(B−1)/(A−1)=30/70(重量比)の赤リンマスターバッチ
B−5:ポリリン酸アンモニウム(テラージュC60、チッソ(株)製)
[芳香族化合物C]
C−1:ノボラック樹脂(タマノル759、荒川化学工業(株)製)
C−2:フェノールアラルキル樹脂(ミレックスXL−LL、三井化学(株)製)
C−3:ポリビニルフェノール(マルカリンカーS1P、丸善石油化学(株)製)
C−4:4,4’−ジアミノジフェニルメタン
C−5:2−アミノフェノール
C−6:ビスフェノールA
C−7:4,4’−ビスフェノール
C−8:1,3,5−トリス[2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル]ベンゼン(トリスTC、三井化学(株)製)
C−9:2,6−ナフトール エチレンオキサイド2モル付加体
C−10:4,4’−ジ(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
C−11:フェノールメラミンノボラック樹脂(フェノール・メラミン・ホルムアルデヒド縮合体)(窒素含有量12重量%、軟化点132℃)
C−12:アニリン樹脂[アニリン/ホルムアルデヒド=1/0.75(モル比)より調製したアニリンホルムアルデヒド縮合体]
C−13:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート1004K、油化シェルエポキシ(株)製)
C−14:ポリ2,6−ジメチルフェニレンオキサイド(ゼネラルサイエンスコーポレーション(株)製)
C−15:ビスフェノール型ポリカーボネート樹脂(分級粉体;平均粒子径30μm)
[酸化防止剤]
D−1:トリエチレングリコール ビス[3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](イルガノックス245、チバガイギー(株)製)
[ドリッピング防止剤]
E−1:ポリテトラフロオロエチレン
[熱安定剤]
F−1:ゼオライト3A(ゼオラムA−3,東ソー(株)製)
F−2:ゼオライト4A(ゼオラムA−4,東ソー(株)製)
F−3:ゼオライト5A(ゼオラムA−5,東ソー(株)製)
F−4:ゼオライト13X(ゼオラムF−9,東ソー(株)製)
F−5:Y型ゼオライト(HSZ−320NAA,東ソー(株)製)
F−6:ハイドロタルサイト(DHA−4A,協和化学工業(株)製)
F−7:ハイドロタルサイト(アルカマイザー,協和化学工業(株)製)
F−8:水酸化マグネシウム
F−9:酸化マグネシウム
F−10:12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム
結果を表に示す。
【0217】
【表1】
Figure 0004502467
【0218】
【表2】
Figure 0004502467
【0219】
【表3】
Figure 0004502467
【0220】
【表4】
Figure 0004502467
【0221】
【表5】
Figure 0004502467
【0222】
表より明らかなように、比較例に比べて、実施例の樹脂組成物は、難燃性が高く、ドリッピングも生じない。

Claims (7)

  1. ポリアセタール樹脂と難燃剤とフェノール系酸化防止剤と熱安定剤とを含む樹脂組成物であって、前記難燃剤が、リン含有化合物と、このリン含有化合物と協働して難燃化を促進する芳香族化合物とで構成されており、
    前記リン含有化合物が、赤リン、(ポリ)リン酸塩及びリン酸エステルから選択された少なくとも一種であり、
    前記芳香族化合物が、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、芳香族ビニル樹脂、フェノールメラミンノボラック樹脂、アニリン樹脂、ポリカーボネート樹脂、芳香族エポキシ樹脂及び芳香族ポリエーテル樹脂から選択された少なくとも一種の芳香環含有樹脂であり、
    前記熱安定剤が、窒素含有化合物、アルカリ又はアルカリ土類金属含有化合物、ゼオライト、およびハイドロタルサイトから選択された少なくとも1種であり、
    前記リン含有化合物の割合が、芳香族化合物100重量部に対して1〜250重量部であり、
    前記リン含有化合物及び芳香族化合物の総量が、ポリアセタール樹脂100重量部に対して1〜100重量部であるポリアセタール樹脂組成物。
  2. リン含有化合物が、安定化赤リン及びポリリン酸アンモニウムから選択された少なくとも一種である請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
  3. リン含有化合物が、安定化赤リンとオレフィン系樹脂とを含む安定化赤リン含有マスターバッチである請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
  4. リン含有化合物が、粉粒状の安定化赤リン及びポリリン酸アンモニウムから選択された少なくとも一種であり、リン含有化合物の割合が、芳香環含有樹脂100重量部に対して10〜200重量部であり、リン含有化合物及び芳香環含有樹脂の総量が、ポリアセタール樹脂100重量部に対して5〜100重量部である請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
  5. さらに、ドリッピング防止剤及び充填剤から選択された少なくとも一種を含む請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
  6. 請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物で形成された成形体。
  7. 成形体が、電気・電子部品、機械機構部品又は自動車部品である請求項記載の成形体。
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