JP4501274B2 - 自動ブレーキ制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動的にブレーキ動作を行う自動ブレーキ装置に関するもので、例えば、自動走行時におけるブレーキ制御に用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】
自動走行に用いられる自動ブレーキ装置としては、例えば、通電量に応じて電磁弁の開弁度を調整することでホイールシリンダ(以下、W/Cという)側に流動するブレーキ液量を調整するブレーキ装置や、ブレーキ駆動用アクチュエータ(例えば、ブレーキパッドをブレーキディスク方向に移動させるためのモータ)への通電によってブレーキ力を発生させる電気ブレーキ装置が用いられる。これらのブレーキ装置は、電磁弁もしくはブレーキ駆動用アクチュエータに対して決定された指示電流を供給することにより、その指示電流の大きさに応じたブレーキ力を発生させるようになっている。
【0003】
このような構成の自動ブレーキ装置による自動走行時のブレーキ制御においては、例えば坂路で車両がずり落ちないように、平坦路に要求されるブレーキ出力よりも大きなブレーキ出力が設定され、平坦路、坂路いずれにおいても十分なブレーキ力が得られるようにされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、平坦路、坂路の区別なくブレーキ出力を大きく設定していることから、ブレーキ部品の耐久性を低下させるという問題を発生させると共に、大きな指示電流が必要となって消費電力が増大するという問題を発生させる。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、坂路でのずり落ちを防止しつつ、ブレーキ部品の耐久性の低下の問題や消費電力増大の問題を解決できる自動ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、目標ブレーキ圧に応じた指示電流を算出する指示電流演算手段(12)を有し、指示電流によってブレーキ駆動用アクチュエータ(6)を駆動することで、目標とする制動力を発生させるように構成された自動ブレーキ装置において、車両の加速度および減速度を検出する加減速度検出手段(3)を備え、車両が停止しているときにおける加減速度検出手段の検出結果を指示電流演算手段にフィードバックし、加減速度検出手段での検出結果に応じて指示電流を調整するようになっていることを特徴としている。
【0007】
このように、加減速度検出手段での検出結果を指示電流演算手段にフィードバックすることで、車両が停止している路面の勾配がフィードバックされ、路面が平坦路であるか坂路であるかに応じたブレーキ圧を発生させることができる。これにより、坂路でのずり落ちを防止しつつ、ブレーキ部品の耐久性の低下の問題や消費電力増大の問題を解決できる。
【0008】
具体的には、加減速度検出手段によって検出された加速度および減速度の絶対値を演算する絶対値演算手段(9)を備え、車両が停止しているときに、絶対値演算手段によって演算された加速度および減速度の絶対値を指示電流演算手段にフィードバックし、加速度および減速度の絶対値に応じて指示電流を調整する。
また、請求項1に記載の発明においては、加速度および減速度の絶対値を時間に対して積分する積分演算手段(10)を備え、指示電流演算手段は、積分演算手段による演算結果に応じて指示電流を調整するようになっていることを特徴としている。
このように、積分演算手段による演算結果に応じて指示電流を増大させるようにすることで、坂路の勾配に応じたブレーキ圧を設定することができる。
この場合、例えば、請求項2に示すように、車両が平坦路で停止しているときに必要とされる基準ブレーキ圧を演算する初期ブレーキ圧演算手段(8)を備え、車両が停止している場合に、初期ブレーキ圧演算手段で演算された基準ブレーキ圧に対して積分演算手段での演算結果を加えた値を目標ブレーキ圧として設定するようにしてもよい。
【0009】
請求項3に記載の発明においては、指示電流演算手段により、加速度および減速度の絶対値が大きい程、指示電流を大きく設定することを特徴としている。加速度および減速度の絶対値は、坂路の勾配を示している。このため、この絶対値が大きくなる程、指示電流を大きくすることで、坂路の勾配に応じたブレーキ圧を設定することができる。
【0012】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1に、本発明の一実施形態における自動ブレーキ装置の概略構成を示す。以下、図1に基づき、本実施形態における自動ブレーキ装置の構成について説明する。
【0014】
自動ブレーキ装置には、各車輪(左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL、右後輪RR)1a、1b、1c、1dの車輪速度に対応した車輪速度信号を検出する車輪速度センサ2a、2b、2c、2dと、車両の前後方向の加速度に応じた信号を検出する加減速度検出手段としての加速度センサ3とが備えられている。
【0015】
また、自動ブレーキ装置には、自動走行制御に用いられるクルーズコンピュータ4と、各車輪速度センサ2a〜2dや加速度センサ3からの検出信号およびクルーズコンピュータ4からの制御信号が入力されるブレーキ制御用電子制御装置(以下、ブレーキ制御用ECUという)5と、ブレーキ制御用ECU5によって制御されるブレーキ駆動用アクチュエータ6が備えられている。
【0016】
クルーズコンピュータ4は、例えば高速道路などにおけるクルーズ制御の際に、先行車両との距離を一定に保つようにエンジン制御、ブレーキ制御等の自動走行制御を行うものである。本実施形態の場合、このクルーズコンピュータ4は、ブレーキ制御用に演算した目標減速度に関する信号をブレーキ駆動用ECU5に送る役割を果たす。このクルーズコンピュータ4から送られる目標減速度に関する信号が、自動ブレーキ装置の制御に使用される。
【0017】
ブレーキ駆動用ECU5は車両走行時と車両停止時における指示電流を演算すると共に、演算された指示電流をブレーキ駆動用アクチュエータ6に出力するようになっている。具体的には、ブレーキ駆動用ECU5は図2のように構成されている。
【0018】
図2に示すように、ブレーキ制御用ECU5には、走行時ブレーキ圧演算部7、初期ブレーキ圧演算部8、絶対値演算部9、積分演算部10、スイッチ部11、指示電流演算部12が備えられている。
【0019】
走行時ブレーキ圧演算部7は、車両走行時におけるブレーキ圧の演算を行うもので、クルーズコンピュータ4から入力される目標減速度に関する信号に基づいて、目標減速度にするために必要とされるブレーキ圧の演算を行う。すなわち、車両走行時には、通常のクルーズ制御におけるブレーキ制御が成される。
【0020】
初期ブレーキ圧演算部8は、車両停止時におけるブレーキ圧の演算を行うもので、クルーズコンピュータ4から入力される目標減速度に関する信号に基づき、車両停止時に必要とされる基準ブレーキ圧の演算を行う。この基準ブレーキ圧は、例えば、車両停車時における路面が平坦路である場合に必要とされるブレーキ圧に相当する。なお、この初期ブレーキ圧演算部8が初期ブレーキ圧演算手段に相当する。
【0021】
絶対値演算部9は、加速度センサ2a〜2dでの検出に基づいて、加減速度の絶対値を演算するものである。この絶対値演算部9により、車両が停止している路面の勾配を検出する。すなわち、車両が停止している路面が平坦路である場合には、加速度センサ2a〜2dから重力の影響による出力が得られないが、坂路である場合には、加速度センサ2a〜2dに坂路の勾配に応じた重力が加えられ、加速度センサ2a〜2dから重力の影響による出力が得られることになるため、加速度センサ2a〜2dからの検出信号に基づいて坂路の勾配を検出することが可能となる。この絶対値演算部9が絶対値演算手段に相当する。
【0022】
積分演算部10は、絶対値演算部9での演算結果の積分を行う。この積分演算部10での演算結果が初期ブレーキ圧演算部8での演算結果に加算されるようになっている。この積分演算部10が積分演算手段に相当する。
【0023】
スイッチ部11は、車速に応じて、具体的には車両が停止しているか否かに応じて切替えられるようになっており、車両が停止していない場合(つまり車両走行時)には走行時ブレーキ圧演算部7での演算結果を採用し、停止している時には初期ブレーキ圧演算部8と積分演算部10との演算結果を足し合せたものを採用するようになっている。
【0024】
指示電流演算部12は、走行時演算部7での演算結果、もしくは初期ブレーキ圧演算部8と積分演算部10との演算結果を足し合せたものを目標ブレーキ圧として、目標ブレーキ圧に応じた指示電流の演算を行う。そして、この指示電流演算部12による演算結果に応じた大きさの指示電流がブレーキ駆動用アクチュエータ6に流されるようになっている。なお、この指示電流演算部12が指示電流演算手段に相当する。
【0025】
また、ブレーキ駆動用アクチュエータ6は、例えば、油圧ブレーキの場合には、通電量に応じて電磁弁の開弁度を調整することでホイールシリンダ(以下、W/Cという)側に流動するブレーキ液量を調整するソレノイドで構成され、電気ブレーキの場合には、ブレーキパッドをブレーキディスク方向に移動させるためのモータによって構成される。このブレーキ駆動用アクチュエータ6は、ブレーキ駆動用ECU5が出力する指示電流に基づいて駆動され、指示電流の大きさに応じたブレーキ力を発生させるようになっている。
【0026】
続いて、図3に、上記構成の自動ブレーキ装置に備えられたブレーキ駆動用ECU5によって実行される自動ブレーキ制御のフローチャートを示し、この図に基づいて自動ブレーキ制御の詳細について説明する。
【0027】
まず、ステップS100では、車両が停止中であるか否かを判定する。この処理は、例えば各車輪速度センサ2a〜2dでの検出結果から車輪速度が0であるか否かによって行われる。
【0028】
ステップS100で否定判定されればステップS110に進む。このステップでは、走行時ブレーキ圧演算部7にて、クルーズコンピュータ4から送られてきた目標減速度に関する信号に基づいて走行時ブレーキ圧の演算を行う。これにより、目標減速度となるのに必要とされる目標ブレーキ圧が演算される。そして、ステップS150に進む。
【0029】
一方、ステップS100で肯定判定されればステップS120に進み、絶対値演算部9にて、加速度センサ3での検出結果から加減速度の絶対値を演算する。これにより、車両が停止している路面が平坦路である場合には、加速度センサ3に重力の影響が現われず加減速度絶対値が0となり、坂路である場合には、加速度センサ3に重力の影響が現われ、坂路の勾配に応じた加減速度絶対値が得られる。
【0030】
次に、ステップS130に進み、積分演算部10にて、ステップS120で演算された加減速度絶対値を時間に対して積分する。この積分演算を行うと、車両が停止している路面が平坦路である場合には、時間経過があっても加減速度絶対値の積分値が0となるが、坂路である場合には、時間経過と共に加減速度絶対値の積分値が増大するという結果が得られる。
【0031】
続いて、ステップS140に進み、初期ブレーキ圧演算部10にて、クルーズコンピュータ4から送られてきた目標減速度に関する信号に基づき、初期ブレーキ圧の演算を行うと共に、この演算結果に対してステップS130で求められた加減速度絶対値の積分値を加算する。これにより、車両停止時に必要とされる基準ブレーキ圧が演算されると共に、車両が停止している路面が坂路である場合には加減速度絶対値の積分値分が加算され、車両が停止している路面の種別に応じた目標ブレーキ圧が演算される。そして、ステップS150に進む。
【0032】
ステップS150では、指示電流演算部12にて、ステップS110やステップS140で求められた目標ブレーキ圧に基づき、目標ブレーキ圧を得るために必要とされる指示電流値の演算を行う。その後、ステップS160に進み、ステップS150で演算された指示電流をブレーキ駆動用アクチュエータ6に出力する。
【0033】
以上の処理により、車両が走行中および停止中における自動ブレーキ制御が成される。この制御を実行した際のタイミングチャートを、走行路面が平坦路である場合、坂路である場合、それぞれ図4(a)、(b)に示す。
【0034】
図4(a)に示されるように、車両走行路面が平坦路である場合には、まず走行中に目標減速度に応じた目標ブレーキ圧が演算されたのち、その目標ブレーキ圧に応じた指示電流が演算され、ブレーキ駆動用アクチュエータ6に出力される。このため、目標減速度に応じて車速が減少し車両が停止状態となる。このとき、車両が停止した路面も平坦路となることから、加速度センサ3に重力の影響が現われず、加減速度絶対値が0となるため、初期ブレーキ圧のみが目標ブレーキ圧となり、車両停止中一定のブレーキ圧が加えられる。
【0035】
一方、図4(b)に示されるように、車両走行路面が坂路である場合には、まず、上記平坦路の場合と同様に走行中の目標減速度に応じた目標ブレーキ圧および指示電流が演算され、ブレーキ駆動用アクチュエータ6に出力される。これにより、目標減速度に応じて車速が減少し車両が停止状態となる。このとき、車両が停止した路面が坂路となることから、加速度センサ3に重力の影響が現われ、坂路の勾配に応じた加減速度絶対値が得られる。このため、初期ブレーキ圧に加減速度絶対値の積分値を加算した分が目標ブレーキ圧となり、車両停止中に時間経過と共に目標ブレーキ圧が増大する。
【0036】
このように、加速度センサ3の検出信号に基づくフィードバック制御を行い、車両が停止している路面が平坦路である場合には、過大なブレーキ圧を発生させないようにしつつ、坂路である場合には、発生させるブレーキ圧を平坦路の場合よりも増加させるようにしている。このため、坂路でのずり落ちを防止しつつ、ブレーキ部品の耐久性の低下の問題や消費電力増大の問題を解決することができる。
【0037】
また、坂路である場合に、加速度センサ3にかかる重力に基づいて増大させるブレーキ圧を変化させているため、坂路の勾配に応じてブレーキ圧の増大量を変化させることができる。このため、より好適に坂路でのずり落ちを防止することができると共に、ブレーキ部品の耐久性の低下の問題や消費電力増大の問題を解決することができる。
【0038】
なお、上記説明では、加減速度絶対値の積分値をずっと初期ブレーキ圧に加算するようにしているが、車両停止時間が長く、目標ブレーキ圧が過大となってしまうような場合には、上限値設定手段を備え、図4(b)中の点線で示したように目標ブレーキ圧に上限値を設けておくことで、目標ブレーキ圧が過大となることを防止することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態における自動ブレーキ装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示すブレーキ駆動用ECU5の具体的な構成を示す図である。
【図3】図2に示すブレーキ駆動用ECU5が実行する自動ブレーキ制御処理の詳細を示すフローチャートである。
【図4】図3に示す自動ブレーキ制御処理を実行した時のタイミングチャートであり、(a)は平坦路を走行しているときのタイミングチャート、(b)は坂路を走行しているときのタイミングチャートである。
【符号の説明】
2a〜2d…車輪速度センサ、3…加速度センサ、
4…クルーズコンピュータ、5…ブレーキ駆動用ECU、
6…ブレーキ駆動用アクチュエータ、7…走行時ブレーキ圧演算部、
8…初期ブレーキ圧演算部、9…絶対値演算部、10…積分演算部、
12…指示電流演算部。

Claims (3)

  1. 目標ブレーキ圧に応じた指示電流を算出する指示電流演算手段(12)を有し、前記指示電流によってブレーキ駆動用アクチュエータ(6)を駆動することで、目標とする制動力を発生させるように構成された自動ブレーキ装置において、
    車両の加速度および減速度を検出する加減速度検出手段(3)と、
    前記加減速度検出手段によって検出された加速度および減速度の絶対値を演算する絶対値演算手段(9)とを備え、
    車両が停止しているときに、前記絶対値演算手段によって演算された前記加速度および減速度の絶対値を前記指示電流演算手段にフィードバックし、前記加速度および減速度の絶対値に応じて前記指示電流を調整するようになっており、
    さらに、前記加速度および減速度の絶対値を時間に対して積分する積分演算手段(10)を備え、
    前記指示電流演算手段は、前記積分演算手段による演算結果に応じて前記指示電流を調整するようになっていることを特徴とする自動ブレーキ装置。
  2. 車両が平坦路で停止しているときに必要とされる基準ブレーキ圧を演算する初期ブレーキ圧演算手段(8)を有し、
    車両が停止している場合には、前記初期ブレーキ圧演算手段で演算された基準ブレーキ圧に対して前記積分演算手段での演算結果を加えた値を前記目標ブレーキ圧として設定するようになっていることを特徴とする請求項に記載の自動ブレーキ装置。
  3. 前記指示電流演算手段は、前記加速度および減速度の絶対値が大きい程、前記指示電流を大きく設定するようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動ブレーキ装置。
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