JP4501269B2 - キャップ殺菌装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、無菌充填ライン等において使用されるキャップ殺菌装置に係り、特にキャップの内面を殺菌するキャップ殺菌装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
飲料等を充填する方法として、充填する容器およびキャップをそれぞれ殺菌した後、無菌雰囲気中で容器内への充填およびキャップの装着を行うようにした無菌充填ラインが広く用いられている。このような無菌充填ラインにおいて、従来は、前記キャップを殺菌するために、過酸化水素や、過酢酸等の殺菌剤を噴霧する方法が一般に行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記のようにキャップの殺菌に殺菌剤を用いる場合、噴霧した後殺菌剤が作用するまでに相当の時間がかかるため、保持時間を長くとる必要がある。このように保持時間を長くとろうとすると、ライン全体が大きくなってしまう。しかも、処理能力を向上させるために高速運転をしようとすると、さらに大型のラインが必要となってしまう。また、殺菌剤を噴霧して殺菌をする方法では、殺菌後に薬剤が残留するおそれがあるため、滅菌水等の洗浄液を噴射して洗浄をした後、乾燥をさせなければならない。そのため工程数が多くなり、装置が複雑化するという問題もあった。
【0004】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、殺菌を短時間で行うことができ、ラインの高速運転が可能であり、しかも、装置全体を大型化する必要のないキャップ殺菌装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るキャップ殺菌装置は、円筒部とこの円筒部の一端を閉塞する天面を有するキャップの内面を殺菌する装置であって、前記キャップを円筒部の周方向に回転させながら直線的に移動させるキャップ移動手段と、このキャップ移動手段によって移動しているキャップの内面に200〜300KeVの電子線を照射する電子線照射装置と、前記キャップ移動手段を設けた殺菌部を覆ってキャップに照射された電子線が外部に漏れないようにする電子線遮蔽部とを備え、前記電子線照射装置は、照射窓を介して前記電子線遮蔽部内を移動するキャップに電子線を照射するようになっており、キャップの天面に対して傾斜した照射角で、照射方向からみて、少なくとも天面の中心点から円筒部の開口端の最も遠い部分までを含む幅を有し、かつ、移動するキャップが少なくとも一回転する長さに渡る帯状の範囲に電子線を照射するようにしたものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示す実施の形態により本発明を説明する。図1は本発明の一実施の形態に係るキャップ殺菌装置の横断面図、図2はキャップ2を搬送する搬送シュート4の途中に設けられたキャップ移動手段6の平面図である。
【0007】
このキャップ殺菌装置によって殺菌されるキャップ2は、円筒部21と、この円筒部21の一方の端部(図1の下側)を閉塞する天面22とを有しており、図1に示すように、天面22を下に向け円筒部21の開口側を上方に向けた状態で、搬送方向に向けて下降するキャップ搬送シュート4によって搬送される。
【0008】
キャップ搬送シュート4上に設けられた殺菌部Aには、キャップ搬送シュート4によって搬送されているキャップ2を一定の方向に回転させつつ、直線的に移動させるキャップ移動手段6が設けられている。このキャップ移動手段6は、搬送シュート4の搬送面の上方両側に配置された一対の無端状ベルト61、62を備えている。これら両側のベルト61、62は、それぞれ前後のプーリー63、64および65、66間に掛け回されており、内側(キャップ2の搬送側)の対向している部分61a、62aがキャップ2の直径とほぼ同じか、またはやや狭い間隔で平行している。
【0009】
両側のベルト61、62は、別々のモータ67、68の駆動によってそれぞれ独立して走行できるようになっており、両ベルト61、62の走行速度を異ならせ、または、互いに逆方向に走行させることもできる。この実施の形態では、図2の下側に示すベルト62は、矢印R 方向に速い速度で走行するようになっており、一方、図2の上側に示すベルト61は、前記ベルト62と逆の矢印R 方向に、前記速度よりも遅い速度で走行するようになっている。従って、これら両側のベルト61、62間を搬送されるキャップ2は、図2の矢印B方向に移動しつつ矢印R方向に強制的に回転される。
【0010】
両側のベルト61、62の間を回転しつつ移動されるキャップ2の上方に、ピアノ線等の線状ガイド部材69が張られており、両ベルト61、62によって強制的に回転されつつ移動するキャップ2が浮き上がることを防止している。
【0011】
前記一対のベルト61、62が設置されている殺菌部Aは、電子線遮蔽部8によって覆われており、後に説明する電子線照射装置10からキャップ2に照射された電子線が外部に漏れないようになっている。
【0012】
前記キャップ移動手段6の上方に電子線照射装置10が設置されている。この電子線照射装置10は、電子線発生装置11から放射した電子線を、照射窓12を介して前記電子線遮蔽部8内を移動するキャップ2に照射する。この実施の形態では、前記キャップ移動手段6がキャップ搬送シュート4の搬送面と水平に配置され、この電子線照射装置10はキャップ2の移動方向に対して左右に傾斜して設置されており、電子線は、前記キャップ2に対して斜め方向から照射されるようになっている。
【0013】
電子線照射装置10から打ち出された電子線は、照射方向からみて、少なくともキャップ2の天面22の中心22aから円筒部21の開口端の最も遠い部分21bまでを含む幅を有するとともに、キャップ2の移動方向に対しては、少なくともキャップ2が一回転することができる長さに渡って連続する帯状の範囲(図2の斜線で示す範囲C参照)に照射されるようになっている。
【0014】
この電子線照射装置10は、キャップ2の表面だけを殺菌すればよく、素材の内部を透過する必要はないので、高エネルギーの電子線を用いる必要はなく、200〜300KeV程度の低エネルギーの電子線(ソフトエレクトロンビーム)を使用している。300KeV以上の高エネルギー電子線を用いると、電子線発生装置が大きくなり、大規模な遮蔽が必要となるが、このように低エネルギーの電子線であれば、小型でローコストである。
【0015】
また、電子線発生装置10は、その照射口からキャップまでの距離が37mm以下、線量が100〜300KGyになるように設定されている。さらに、キャップへの照射時間が0.15〜0.35秒、キャップの搬送速度が10ないし25m/minの範囲で殺菌を行うようにしている。これによれば6LRV(Log Reduction Value:対数減少値)の殺菌効果を確保することができる。
【0016】
以上の構成に係るキャップ殺菌装置の作動について説明する。キャップ搬送シュート4によって搬送されてきたキャップ2は、電子線遮蔽部8内に入り、キャップ移動手段6によって回転されつつ直線的に移動される。すなわち、キャップ2は、両側のベルト61、62間に進入すると、一方のベルト62(図2の下方側)が高速で図2の矢印R方向に走行するとともに、他方のベルト61が矢印R方向に低速で走行しているので、矢印R方向に強制的に回転されつつ下流側へ移動する。なお、両ベルト61、62の走行速度は、キャップ2が電子線の照射範囲Cを通過する間に、少なくとも一回転以上回転できるように設定されている。
【0017】
前記殺菌部Aには、上方に電子線照射装置10が設けられて、前述の照射範囲Cに電子線を照射しており、キャップ2は、この範囲C内を直線的に移動されつつ少なくとも一回転するので、その内面に電子線が照射されない部分がなく、内面全体がもれなく殺菌される。また、キャップ2の内面に電子線を照射して殺菌を行うので、殺菌を短時間で行うことができ、ラインの高速運転が可能である。しかも、殺菌剤を噴霧して殺菌を行う従来のキャップ殺菌装置と異なり、殺菌後のキャップ2に薬剤が残留することがないので、滅菌水等の洗浄液による洗浄や乾燥等の工程が必要なく、装置の構造が簡素化しコンパクトになる。さらに、キャップ2の回転と電子線の通過速度を制御できるためバリデーションが可能である。
【0018】
なお、前記第1の実施の形態では、キャップ2の天面22を下方にし、開口側を上方に向けて搬送するようにしていたが、キャップ2の開口側を下方に向けて搬送し、キャップ移動手段6の下方から電子線を照射するようにしても良い。無菌充填ラインでは、キャップを下向きにしてこのキャップ内にエアを吹き付け、付着している異物を落とす工程を設ける場合があるが、この工程に連続して設置することが可能である。
【0019】
図3および図4は第2の実施の形態に係るキャップ殺菌装置を示すもので、図3はその横断面図、図4はキャップ移動手段6の平面図である。なお、前記実施の形態と同一または相当する部分には同一の符号を付して説明する。前記実施の形態では、キャップ移動手段6をキャップ搬送シュート4の搬送面と水平に設置し、電子線照射装置10をキャップの移動方向に対して左右に傾斜させて配置したが、この実施の形態では、キャップ移動手段6をキャップの移動方向に対して左右に傾斜させて設置し、電子線照射装置(図示を省略)を、照射される電子線(図3中に符号Eで示す)が鉛直方向を向くように設置することにより、前記実施の形態と同様に、キャップ2に対して傾斜した照射角で電子線Eを照射するようになっている。
【0020】
この実施の形態でも一方のベルト62(図4の上方のベルト)はR方向に高速で走行し、他方のベルト61(同図の下方のベルト)はR方向に低速で走行しているので、キャップ2はR方向に強制的に回転されつつ、B方向に直線的に移動する。さらに、この実施の形態では、キャップ移動手段6がキャップ2を傾斜した状態で移動させているので、キャップ2の抜け出しを確実に防止するために、両側のベルト61,62間の上方に二本のピアノ線69,70が張られている。
【0021】
また、電子線照射装置からの電子線Eは、鉛直方向に照射されているが、前記実施の形態と同様に、キャップ2に対しては斜め方向から、しかも、照射方向からみて、少なくともキャップ2の天面22の中心22aから円筒部21の開口端の最も遠い部分21bまでを含む幅を有するとともに、キャップ2の移動方向Bに対しては、少なくともキャップ2が一回転することができる長さに渡って連続する帯状の範囲に、前記電子線Eを照射するようになっている。
【0022】
このようにキャップ移動手段6側を傾斜させた場合でも、前記実施の形態のように電子線照射装置側を傾斜させて配置した場合と同様に、キャップ2の内面全体にくまなく電子線を照射することができる。従って、前記実施の形態と同様の効果を奏することが可能である。
【0023】
なお、前記実施の形態では、一方(図2の下方、図4の上方)のベルト62を高速でR方向に走行させ、他方のベルト61は低速でR方向に走行させるようにしていたが、ベルト61、62の走行方向および速度は前記設定に限定されるものではなく、両ベルト61、62を同一の方向に走行させて、走行速度を大幅に異ならせても良く、また、一方側をベルトに変えて静止した摩擦部材とし、他方側をベルトとしてキャップ2の移動方向と同方向(図2,図4の矢印R 方向)に走行させるようにしても良い。但し、電子線を照射する範囲内で少なくともキャップ2を一回転させることができるようにする必要がある。
【0024】
このキャップ殺菌装置は、飲料等の容器のキャップ2に限らず、注射薬等の無菌製剤や、その他殺菌が必要な容器のキャップ2にも適用することができる。また、前記実施の形態では、殺菌作用を有する照射線として電子線を使用しているが、電子線に限定されるものではなく、殺菌作用を有するものであれば、紫外線その他の照射線を使用することもできる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、円筒部とこの円筒部の一端を閉塞する天面を有するキャップの内面を殺菌するキャップ殺菌装置において、前記キャップを円筒部の周方向に回転させながら直線的に移動させるキャップ移動手段と、このキャップ移動手段によって移動しているキャップの内面に200〜300KeVの電子線を照射する電子線照射装置と、前記キャップ移動手段を設けた殺菌部を覆ってキャップに照射された電子線が外部に漏れないようにする電子線遮蔽部とを備え、前記電子線照射装置は、照射窓を介して前記電子線遮蔽部内を移動するキャップに電子線を照射するようになっており、キャップの天面に対して傾斜した照射角で、照射方向からみて、少なくとも天面の中心点から円筒部の開口端の最も遠い部分までを含む幅を有し、かつ、移動するキャップが少なくとも一回転する長さに渡る帯状の範囲に電子線を照射するようにしたので、キャップの内面に、電子線等の殺菌作用のある照射線があたらない部分がないので、キャップ内面全体を確実に殺菌することができる。また殺菌を短時間で行うことができ、ラインの高速運転が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るキャップ殺菌装置の横断面図である。
【図2】前記キャップ殺菌装置のキャップ移動手段を示す平面図である。
【図3】第2の実施の形態に係るキャップ殺菌装置の一部を省略して示す横断面図である。
【図4】第2の実施の形態のキャップ移動手段を示す平面図である。
【符号の説明】
2 キャップ
6 キャップ移動手段
10 照射装置(電子線照射装置)
21 キャップの円筒部
21b 円筒部の開口端の最も遠い部分
22 キャップの天面
22a キャップの天面の中心

Claims (3)

  1. 円筒部とこの円筒部の一端を閉塞する天面を有するキャップの内面を殺菌するキャップ殺菌装置において、
    前記キャップを円筒部の周方向に回転させながら直線的に移動させるキャップ移動手段と、このキャップ移動手段によって移動しているキャップの内面に200〜300KeVの電子線を照射する電子線照射装置と、前記キャップ移動手段を設けた殺菌部を覆ってキャップに照射された電子線が外部に漏れないようにする電子線遮蔽部とを備え、
    前記電子線照射装置は、照射窓を介して前記電子線遮蔽部内を移動するキャップに電子線を照射するようになっており、キャップの天面に対して傾斜した照射角で、照射方向からみて、少なくとも天面の中心点から円筒部の開口端の最も遠い部分までを含む幅を有し、かつ、移動するキャップが少なくとも一回転する長さに渡る帯状の範囲に電子線を照射することを特徴とするキャップ殺菌装置。
  2. 前記キャップ移動手段を、キャップの移動方向に対して左右に傾斜させて設置したことを特徴とする請求項1に記載のキャップ殺菌装置。
  3. 前記電子線照射装置を、キャップの移動方向に対して左右に傾斜させて設置したことを特徴とする請求項1に記載のキャップ殺菌装置。
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