JP4501020B2 - 高速回転機用ロータの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速で回転するとともに、高速回転時におけるロータ用磁石の飛散を防止するためのシュリンクリングを備えた永久磁石式高速回転機用ロータ(以下単に「ロータ」という場合がある。)の製造方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
永久磁石式高速回転機では、ロータが高速回転しているときに、永久磁石で構成されるロータ用磁石が飛散してしまう事態を防止するために、ロータ磁石の外周にはシュリンクリングが取り付けられている。
【0003】
この高速回転機の一例を図2を用いて説明する。
図2は、高速回転機100の概略を示す一部縦断側面図である。
高速回転機100の主要構成としては、図2に示すように、110がロータ、120がステータ、130がコイルエンドである。
【0004】
また、ロータ110は、ロータシャフト112に、永久磁石で構成されるロータ用磁石114とバランスリング118が装着され、ロータ用磁石114の外周には、上述したように、ロータ用磁石114の飛散を防止するためのシュリンクリング116が取り付けられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、高速回転機用ロータは、上述したように、ロータシャフトに、ロータ用磁石を装着し、その外周には、シュリンクリングを取り付けた構成であるが、そのため、高速回転機では、高速回転時における遠心力や、大トルクの伝達等のためにロータ用磁石がロータシャフトから離れてしまう事態がある。
従って、高速回転機ではこの事態の発生を予め防止する工夫が必要である。
この工夫として、従来の高速回転機用ロータの製造方法では、円筒状のロータ用磁石が、シャフトの外周に接着剤により固定されている。
【0006】
従って、従来の製造方法で作られたロータは、高速回転時における遠心力で、シャフトとロータ用磁石に隙間が生じ、磁石の割れ等を誘発して、ロータのバランスが崩れ、安定した回転を得られなくなるということがあった。
また、接着剤としては有機物を使用しているために、高速回転機を長期に利用すると、接着剤が劣化し、ロータバランスに狂いが生じ、随時、ロータバランスを調整するメンテナンス作業の労力が過大になるという問題を備えていた。
【0007】
本発明は、上記課題(問題点)を解決し、簡単な工程で、回転バランスに優れ、メンテナンスの労力を軽減した高速回転機用ロータの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の高速回転機用ロータの製造方法では、上記課題を解決するために、請求項1に記載のものでは、ロータ用磁石の飛散防止のためのシュリンクリングを備えた永久磁石式高速回転機用ロータの製造方法において、ロータシャフトを所定の温度で冷却する工程と、ロータ用磁石を所定の温度で冷却し、その冷却されたロータ用磁石をシュリンクリング内に装着する工程と、前記シュリンクリングに装着されたロータ用磁石を、前記冷却されたロータシャフトに装着する工程とを備え、ロータシャフトを冷却する工程と、ロータ用磁石を冷却する工程の2回の冷却工程を含む構成とした。
【0009】
このように構成すると、ロータシャフト及びロータ用磁石が常温に戻ることにより、シュリンクリングがロータ用磁石に、また、ロータ用磁石がロータシャフトに強固に固定され、この結果、接着剤を用いないで済むので、簡単な工程で、回転バランスに優れ、メンテナンスの労力を軽減した高速回転機用ロータを製造することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の高速回転機用ロータの製造方法は、上記シュリンクリングの素材として、炭素繊維強化プラスチックを用いるように構成した。
【0011】
このように構成すると、高速回転機用ロータのシュリンクリングの素材としては、好適なものとすることができる。
【0012】
請求項3に記載の高速回転機用ロータの製造方法は、上記ロータシャフト及びロータ用磁石を冷却する冷媒として液体窒素を用いるように構成した。
【0013】
このような構成とすると、液体窒素は廉価に入手できるので、製造コストを削減することが可能となる。
また、窒素は不活性ガスであるので、作業工程を安全で簡易なものとすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の高速回転機用ロータの製造方法について、図1を用いて説明する。
図1は、本発明の高速回転機用ロータの製造方法を説明するための製造工程を示す流れ図である。
【0015】
図1には、本発明の製造方法により製造される高速回転機用ロータ110の主要構成である、ロータシャフト112、シュリンクリング116、ロータ用磁石114の製造工程の概略が、夫々示されている。
【0016】
ロータシャフト112は、先ず、図1に示すように、設計値に大まかに加工した粗加工品(RS1)を熱処理し(RS2)、研削仕上げにより、形状が設計値となるように研削加工(RS3)する。
なお、このRS1〜RS3の工程は、従来の製造方法と同様の工程を踏襲したものである。
【0017】
次に、研削仕上げされたロータシャフト112を液体窒素中に浸し、液体窒素(沸点:−195.8℃)温度で冷却する(RS4)。
冷却されたロータシャフト112は、ロータシャフト112に用いている素材の熱膨張率や冷却温度によっても相違するが、冷却による収縮のため設計値よりも縮小している。
【0018】
一方、シュリンクリング116は、図1に示すように、従来の製造方法通り、メーカー成形(SR1)、粗加工(SR2)、研削仕上げ(SR3)を経て製作されている。
シュリンクリング116は常温状態で保持され、従って、設計上の形状を保っている。
なお、ロータ用磁石114は、後述するように、ロータ110完成時より残留した周方向の圧縮応力と、遠心力により発生する周方向の引張応力とを相殺する。
【0019】
また、ロータ用磁石114は、図1に示すように、従来の製造方法通り粗加工(RM1)後、研削仕上げされ(RM2)、その後、本発明の特徴である冷却工程、即ち、ロータ用磁石114をロータシャフト112同様に液体窒素中に浸し、液体窒素温度で冷却する(RM3)。
冷却されたロータ用磁石114は、ロータシャフト112同様、冷却による収縮のため、設計値よりも縮小された形状となっている。
なお、ロータ用磁石114は、後述するように、後工程で着磁される。
【0020】
次に、常温のシュリンクリング116は、図1に示すように、冷却されたロータ用磁石114の外周面に取り付けられる(SR4)。
なお、SR4においては、シュリンクリング116が、2つのロータ用磁石114の外周面に取り付けられる例が示されている。
【0021】
このとき、上述したように、ロータ用磁石114は収縮しているために、シュリンクリング116の装着はスムーズに行うことができる。
その後、ロータ用磁石114は、シュリンクリング116を装着した状態で、常温まで放置される。
これにより、ロータ用磁石114は熱膨張し、シュリンクリング116はロータ用磁石114の外周面に強固に固定されるとともに、シュリンクリング116内には周方向の引張応力が残留する。ロータ用磁石114にはそれを相殺する圧縮応力が残留する。
【0022】
次に、シュリンクリング116を装着した常温のロータ用磁石114を、図1に示すように、冷却した状態のロータシャフト112に装着する(R1)。
なお、R1では、ロータシャフト112の外周に2つのシュリンクリング116及び4つのロータ用磁石114を取り付ける例が示されている。
このとき、ロータシャフト112も冷却され、冷却収縮された状態であるために、ロータ用磁石114の装着はスムーズに行われる。
【0023】
その後、ロータシャフト112は、シュリンクリング116及びロータ用磁石114を取り付けた状態で、常温まで放置される(R1)。
ロータシャフト112、ロータ用磁石114、シュリンクリング116は常温時での形状で設計されているので、ロータシャフト112、及び、ロータ用磁石114が常温に戻ることにより、これらの構成は、設計値通りの形状となる。
従って、シュリンクリング116を所定の割合で小さめに設計しておくと、シュリンクリング116の内部に残留した周方向の引張応力により、ロータ用磁石114内部に周方向の圧縮応力を残留させることができる。
【0024】
以下、従来の高速回転機用ロータの製造方法と同様に、バランスリング118をロータシャフト112の所定位置に装着して焼きばめを行う(R2)。
次に、ベアリング119をロータシャフトの所定位置に、拡大図Aに示すように装着し(R3)、バランス調整を行う(R4)。
最後に、ロータ用磁石114に着磁し(R5)、ベアリング119を再び装着することにより、高速回転機用ロータ110が完成する(R6)。
【0025】
即ち、本発明の高速回転機用ロータの製造方法は、従来の製造方法において、ロータシャフト112を研削仕上げした後に、所定の温度で冷却する工程(RS4)と、ロータ用磁石114を研削仕上げした後に、所定の温度で冷却し(RM3)、研削仕上げをした常温のシュリンクリング116内に装着する工程(SR4)と、このロータ用磁石114を冷却されたロータシャフトに装着する工程(R1)とを備えるようにした点に最大の特徴を有するものである。
【0026】
このようにすると、ロータシャフト112及びロータ用磁石114が常温に戻ることにより、シュリンクリング116がロータ用磁石114に、また、ロータ用磁石114がロータシャフト112に強固に固定される。
また、シュリンクリング116に残留した周方向の引張応力が、ロータ用磁石114の周方向の圧縮応力になり、ロータ110の高速回転により生じる遠心力により発生される引張応力を吸収するようにすることができるようになり、ロータ110の高速回転時でも、ロータ用磁石114とロータシャフト112との接触面に間隙が生じるのを防止することができる。
【0027】
従って、接着剤を用いないでも、ロータ110が高速回転している場合やロータ110に大トルクを伝達した場合でもロータシャフト112とロータ用磁石114との分離を防止できる。
これにより、上述した、接着剤を用いることにより発生する様々の問題点を解決でき、簡単な工程で、回転バランスに優れ、メンテナンスの労力を軽減した高速回転機用ロータを製造することが可能となる。
【0028】
本発明の高速回転機用ロータの製造方法は上記実施の形態に限定されず種々の変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、高速回転機用ロータのシュリンクリングの素材として、炭素繊維強化プラスチックを用いた例で説明したが、他の素材を用いるようにしても良い。
【0029】
また、ロータシャフト、ロータ用磁石を冷却する方法として、液体窒素を冷媒とする方法で説明したが、この冷却手段に本発明が限定されるものではないことは勿論のことである。
更に、ロータシャフト、ロータ用磁石を冷却する温度については、上記実施の形態では、液体窒素温度としたが、液体窒素温度であれば冷却温度として充分であるということであり、本願発明における冷却温度を限定するものではない。
【0030】
【発明の効果】
本発明の高速回転機用ロータの製造方法は上述のように構成したために、以下のような優れた効果を有する。
(1)請求項1に記載したように構成すると、ロータシャフト及びロータ用磁石が常温に戻ることにより、シュリンクリングがロータ用磁石に、また、ロータ用磁石がロータシャフトに強固に固定され、この結果、接着剤を用いないで済み、簡単な工程で、回転バランスに優れ、メンテナンスの労力を軽減した高速回転機用ロータを製造することが可能となる。
【0031】
(2)請求項2に記載したように、シュリンクリングの素材として、炭素繊維強化プラスチックを用いるようにすると、高速回転機用ロータのシュリンクリングの素材としては、好適なものとすることができる。
【0032】
(3)請求項3に記載したように、ロータシャフト及びロータ用磁石を冷却する冷媒として液体窒素を用いるようにすると、液体窒素は廉価に入手できるので、製造コストを削減することが可能となる。
(4)また、窒素は不活性ガスであるので、作業工程が安全で簡易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高速回転機用ロータの製造方法の一実施の形態を説明するための製造工程の概略を示す流れ図である。
【図2】従来の製造方法により製造された高速回転機の主要構成を示す一部縦断側面図である。
【符号の説明】
100:高速回転機
110:高速回転機用ロータ
112:ロータシャフト
114:ロータ用磁石
116:シュリンクリング

Claims (3)

  1. ロータ用磁石の飛散防止のためのシュリンクリングを備えた永久磁石式高速回転機用ロータの製造方法において、
    ロータシャフトを所定の温度で冷却する工程と、
    ロータ用磁石を所定の温度で冷却し、その冷却されたロータ用磁石をシュリンクリング内に装着する工程と、
    前記シュリンクリングに装着されたロータ用磁石を、前記冷却されたロータシャフトに装着する工程とを備え、
    ロータシャフトを冷却する工程と、ロータ用磁石を冷却する工程の2回の冷却工程を含むことを特徴とする高速回転機用ロータの製造方法。
  2. 上記シュリンクリングの素材として、炭素繊維強化プラスチックを用いるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の高速回転機用ロータの製造方法。
  3. 上記ロータシャフト及びロータ用磁石を冷却する冷媒として液体窒素を用いるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の高速回転機用ロータの製造方法。
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