JP4500567B2 - ガスハイドレート製造方法および製造装置 - Google Patents

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本発明は、ガスハイドレート製造方法および製造装置に係り、高圧下で生成されたガスハイドレートを大気圧下に取出す技術に関する。
ガスハイドレートは、水分子の作る籠の中にガスを取り込んでなる固体として安定な水和物である。例えば、メタンガスを取り込んだものをメタンハイドレート、天然ガスを取り込んだものは天然ガスハイドレートと呼ばれる。このガスハイドレートは、原料ガス(例えば、メタンガス、天然ガス、炭酸ガス)と原料水を生成器内で低温および高圧下で接触させて反応させることで生成される。
高圧下で生成された粉状のガスハイドレートは、輸送する際の経済的見地から、大気圧下で分解しない温度(例えば氷点下)に冷却後、大気圧下に取出される。例えば、生成器に接続した冷却器に開閉弁Aを介して脱圧容器を接続すると共に、脱圧容器を開閉弁Bを介してガスハイドレート槽に接続し、開閉弁Bを閉じて開閉弁Aを開けることにより、冷却器のガスハイドレートを脱圧容器に移動させる。そして、開閉弁Aを閉じて開閉弁Bを開けることにより、脱圧容器からガスハイドレートが大気圧下のガスハイドレート槽に抜き出される。
ところで、脱圧容器の粉状のガスハイドレートをガスハイドレート槽に抜き出すとき、そのガスハイドレートに同伴して比較的多量の原料ガスも抜き出される。したがって、抜き出された原料ガスを有効利用するために、その原料ガスを昇圧した後に、生成器に戻すことが行われる(例えば、特許文献1)。
特開2003−105362号公報
しかしながら、特許文献1などでは、脱圧容器から抜き出されるガス量は比較的多量であることから、そのガスを昇圧するための圧縮動力が増大する。
また、粉状のガスハイドレートが例えば配管内面や脱圧容器内に付着しないように、生成容器側と脱圧容器側の圧力差を大きく設定すると、その差圧に起因して脱圧時に急な圧力変化や温度変化が生じ、ガスハイドレートが分解するおそれがある。
本発明の課題は、粉状のガスハイドレートを大気圧下に取り出す過程で消費されるエネルギーを低減し、かつガスハイドレートの分解を抑えることにある。
上記課題を解決するため、本発明のガスハイドレート製造方法は、原料ガスと原料水とを低温および高圧下で接触させて生成される粉状のガスハイドレートを大気圧に減圧する場合、高圧のガスハイドレートを低温高圧の液中に投入してスラリーを形成し、スラリーを冷却減圧した後に液からガスハイドレートを分離することを特徴とする。
これによれば、粉状のガスハイドレートはスラリーとして移送されるため、ガスハイドレートに同伴するガスは大幅に低減される。したがって、ガスを昇圧するエネルギーに代えて、スラリー溶液を昇圧するエネルギーで済むことになる。ここで、スラリー溶液は、ガスよりも例えば体積変化が小さいことから、液体を昇圧する動力は、ガスを昇圧するエネルギーよりも相当小さいため、消費エネルギーを大幅に低減できる。
また、スラリー溶液を介してガスハイドレートが冷やされることから、ガスを介してガスハイドレート粉末を冷やす通常の冷却器のときよりも、冷却効率が向上することになり、冷却に必要なエネルギーを低減できる。
また、ガスハイドレートは、スラリー(液状)の状態で脱圧されるから、ガスハイドレートに同伴するガス量が多いときよりも、脱圧時の圧力変化や温度変化が小さくなり、ガスハイドレートの分解を抑制でき、また周辺機器の耐圧構造やシール構造を簡素にできる。さらに、ガスを搬送媒体とするときよりも、配管等を通流するガスハイドレートの移動速度が小さくなるから、配管等に磨耗が生じることや配管や脱圧器内等にガスハイドレートが付着することを抑制できる。
この場合において、スラリー溶液として、例えば、灯油、シリコンオイルなどの油や、親油性を有する液体(例えば、トルエンやベンゼン等)を用いることができる。これにより、スラリー溶液からガスハイドレートを確実に分離することができる。しかも、取出したガスハイドレートの表面に油が付着し、付着した油が、ハイドレートの大気中での分解を低減する保護膜として作用して自己保存効果を向上させるから、ガスハイドレートの分解をより一層抑えることができる。自己保存効果とは、分解して発生した水が分解熱により凍結してガスハイドレートを覆うことにより分解が抑制されることである。
具体的なガスハイドレート製造装置は、原料ガスと原料水とを低温および高圧下で接触させてガスハイドレートを生成する生成手段と、生成手段から排出されるガスハイドレートを大気圧下のガスハイドレート槽に移送する冷却脱圧装置とを備え、冷却脱圧装置は、生成手段に連通されガスハイドレートが投入される高圧のスラリー溶液が貯留されたスラリー冷却容器と、スラリー冷却容器に配管および開閉弁を介して接続されガスハイドレートを大気圧下に脱圧する脱圧容器と、脱圧容器に配管および開閉弁を介して接続されガスハイドレートとスラリー溶液とを分離する分離手段と、分離したスラリー溶液を昇圧ポンプを介して容器に戻す循環手段と、循環手段に配設されスラリー溶液を冷却する冷却手段とを備えた構成とする。
本発明によれば、ガスハイドレートを大気圧下に取り出す過程で消費されるエネルギーを低減し、かつガスハイドレートの分解を抑制することができる。
本発明を適用したガスハイドレート製造装置の実施形態について図1を参照して説明する。図1は、本実施形態のガスハイドレート製造装置の構成図である。図1に示すように、ガスハイドレート製造装置は、原料ガス(例えば、メタンガス)と原料水(例えば、蒸留水)とを低温(例えば、0℃〜7℃)および高圧下(例えば、2〜10MPa)で接触させてメタンガスハイドレート(以下、MGHという。)を生成する生成手段としての生成器10と、生成器10から排出されるMGHを大気圧下のガスハイドレート槽12に移送する冷却脱圧装置14などから構成されている。なお、生成器10は、メタンガスと蒸留水を反応させる反応槽と、反応槽で生成されたMGHを乾燥する脱水装置などから構成されている。
冷却脱圧装置14は、生成器10からMGHが投入される高圧のスラリー溶液(例えば、灯油)が貯留された容器であるスラリー冷却容器16と、スラリー冷却容器16から供給されるMGHと灯油のスラリーを大気圧下に脱圧するロックホッパ型の脱圧器18と、脱圧器18から抜き出されるスラリーをMGHと灯油に分離する分離手段としての固液分離機20と、固液分離機20により分離した灯油を昇圧液ポンプ22を介してスラリー冷却容器16に戻す循環手段としての循環配管24と、循環配管24を通流する過程で昇圧液ポンプ22により昇圧された灯油を例えば冷媒により冷却する冷却手段26などを有して構成される。なお、スラリー溶液として、灯油を用いた例を説明するが、シリコンオイルなどの油や親油性を有する物質(例えば、トルエン、ベンゼンなどの液体)を用いてもよい。また、固液分離機20としては例えば遠心分離機等を用いる。
スラリー冷却容器16は、生成器10と同圧に保持されており、鉛直方向に起立する胴部を有している。胴部の頂部は、閉塞して形成され、生成器10に接続する配管27が配設されている。胴部の底部は、逆円錐状に形成されており、鉛直方向下向きに延在するスラリー管28が配設されている。また、胴部の側部に溶液投入管31の投入口側が接続されている。なお、胴部の内部に攪拌機33が配設されている。
脱圧器18は、スラリー管28を介してスラリー冷却容器16に接続されている。スラリー管28に、開閉弁32が配設されている。また、脱圧器18は、配管34を介して、スラリー冷却容器16の頂部近傍、つまり内部が気相である位置に相当する器壁に接続されている。配管34に、圧力調整バルブ36が配設されている。
固液分離機20は、スラリー管38を介して脱圧器18に接続し、配管42を介してガスハイドレート槽12に接続している。スラリー管38に、開閉弁40が配設されている。また、固液分離機20に循環配管24が接続されている。
ここで、本発明のガスハイドレート製造装置の動作について説明する。開閉弁32、40を閉じた状態で、生成器10により生成されたMGHが、スラリー冷却容器16内に貯留した低温(例えば、−5℃〜−30℃以下)かつ高圧(例えば、2MPa〜10MPa)の灯油に投入される。投入されたMGHは、攪拌機33により灯油と混ぜられる。これによって、MGHと灯油のスラリーが形成されると共に、MGHが大気圧下でも分解しない所定温度に冷却される。なお、スラリー冷却容器16の液相の液面レベルを所定範囲に維持するように、溶液投入管31を介して投入されるスラリー溶液の流量が調整されている。
次に、圧力調整バルブ36の開度を調整することにより、スラリー冷却容器16内の圧力と脱圧器18との圧力差が小さくされる。次いで、開閉弁40を閉じた状態で開閉弁32を開けることにより、スラリー冷却容器16のスラリーは、比較的遅い速度でスラリー管28を通って脱圧器18に移動する。脱圧器18に所定量のスラリーが移動した後、開閉弁32が閉じられる。開閉弁32、40を閉じた状態で、脱圧器18内のスラリーが大気圧下に脱圧される。脱圧した後、開閉弁32を閉じた状態で開閉弁40を開けることにより、スラリーは、脱圧器18からスラリー管38を通って固液分離機20に移送される。固液分離機20により分離されたMGHは、ガスハイドレート槽12に回収される。一方、分離された灯油は、昇圧液ポンプ22により昇圧(例えば、2〜10Mパスカル)された後、冷却手段26により低温(例えば、−5〜−30℃以下)に冷やされる。このような動作を繰り返すことによって、高圧下で生成されたガスハイドレートが大気圧下に取出される。
本実施形態によれば、生成器10により生成されたMGHを灯油に投入してスラリーとして冷却し、このスラリーを大気圧下に脱圧してMGH粉末を分離していることから、脱圧器18からMGHを抜き出す際に同伴するガス量を大幅に低減できる。したがって、灯油を昇圧するエネルギーだけで済むことになり、ガスを昇圧する場合よりも消費エネルギーを大幅に低減できる。
例えば、従来のようにガスをMGHの搬送媒体とした場合、MGHを抜き出す際に同伴するガス量は、MGHの生成に必要なガス量の例えば3.5倍になる。この点、本実施形態によれば、必要な圧縮ガス量を大幅に低減して消費エネルギーを例えば数十分の1〜数百分の1に減らすことができる。
また、スラリー冷却容器16では、伝熱係数が比較的大きい灯油を介してMGHが冷やされることから、伝熱係数が比較的小さいガスを介してMGH粉末を冷やす通常の冷却器よりも、冷却効率が向上して消費エネルギーを低減できる。また、例えばMGHの冷却用ジャケット等の冷却器具をスラリー冷却容器16に配設する必要がないため、装置構成を簡素にすることができる。
また、MGHがスラリー状(液状)で脱圧されることから、周囲に多量のガスが充満する場合よりも、脱圧時の差圧を小さくできるため、脱圧器18における圧力変化や温度変化も小さくなる。したがって、MGHの分解を抑制でき、また周辺機器の耐圧構造やシール構造を簡素にできる。さらに、圧力調整バルブ36によりスラリー冷却容器16側と脱圧器18側の圧力差が小さくされるから、例えばスラリー管28、脱圧器18を移動するMGHの移動速度を小さくできる。これにより、MGHが通流する例えばスラリー管28や脱圧器18の開閉弁32、40に磨耗が生じることを一層抑制できる。
また、MGHがガスハイドレート槽12に取り出されたとき、取り出されたMGHの表面に若干の灯油が付着したままになるから、付着した灯油が、ハイドレートの大気中での分解を低減する保護膜として作用する。これにより、MGHの自己保存効果が一層向上するから、MGHの分解をさらに抑制することができる。なお、自己保存効果とは、分解して発生した水が周囲温度により凍結してガスハイドレートを覆うことにより分解が抑制されることである。例えば、MGHの場合、−10℃〜−20℃程度で自己保存効果が得られる。
なお、本実施形態では、メタンガスハイドレートの製造装置に本発明を適用した例を説明したが、天然ガスハイドレートや炭酸ガスハイドレートなど他のガスハイドレートにも適用することができる。
以上、第1の実施形態に基づいて本発明を説明したが、これに限られるものではない。例えば、図1の脱圧器18及び開閉弁32、40を複数並列に配設し、各開閉弁の開閉タイミングを制御することにより、MGHを連続的に大気圧下に取出すことができる。その場合、脱圧器18と固液分離機20との間に、ガスハイドレートを一時的に貯留する受け器を設けるのがよい。
本発明を適用した実施形態のガスハイドレート製造装置の構成図である。
符号の説明
10 生成器
12 ガスハイドレート槽
14 冷却脱圧装置
16 スラリー冷却容器
18 脱圧器
20 固液分離機
22 昇圧液ポンプ
26 冷却手段
32、40 開閉弁

Claims (3)

  1. 原料ガスと原料水とを低温および高圧下で接触させて生成されるガスハイドレートを大気圧に減圧するガスハイドレート製造方法において、前記高圧のガスハイドレートを低温高圧の液に投入してスラリーを形成すると共に、前記液によりガスハイドレートを大気圧下で分解しない所定温度に冷却し、前記スラリーを減圧した後、前記スラリーから前記ガスハイドレートを分離して取り出し、ガスハイドレートが分離された前記スラリーの液を昇圧及び冷却して前記低温高圧の液として循環させることを特徴とするガスハイドレート製造方法。
  2. 前記液は、灯油、シリコンオイルその他の油及び親油性を有する液体であることを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレート製造方法。
  3. 原料ガスと原料水とを低温および高圧下で接触させてガスハイドレートを生成する生成手段と、該生成手段から排出される前記ガスハイドレートを大気圧下のガスハイドレート槽に移送する冷却脱圧装置とを備えたガスハイドレート製造装置において、
    前記冷却脱圧装置は、前記生成手段に連通され前記ガスハイドレートが投入される高圧のスラリー溶液が貯留されたスラリー冷却容器と、該スラリー冷却容器に配管および開閉弁を介して接続され前記ガスハイドレートを大気圧下に脱圧する脱圧容器と、該脱圧容器に配管および開閉弁を介して接続され前記ガスハイドレートと前記スラリー溶液とを分離する分離手段と、該分離したスラリー溶液を昇圧ポンプを介して前記スラリー冷却容器に戻す循環手段と、該循環手段に配設され前記スラリー溶液を冷却する冷却手段とを備えてなることを特徴とするガスハイドレート製造装置。
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