以下、図面を参照して、本発明に係るエアバッグ装置の実施の形態を説明する。
本実施の形態に係るエアバッグ装置は、バッグ全体の形状、厚さ、受圧面積を変化させるために2つのバッグを備え、バッグ個々の内圧を変化させるために各バッグにそれぞれ2個のガス発生室を有するインフレータを備える。本実施の形態には、3つの形態があり、第1の実施の形態が基本となる構成であり、第2の実施の形態がインフレータから第1バッグにガスを直接供給する構成であり、第3の実施の形態がベントホール及びベントホールワンウエイカバーを備える構成である。
なお、第1〜第3の実施の形態に係るエアバッグ装置は、インフレータを制御するためのインフレータ制御部については略同様の構成を有しており、制御についても同様の制御を行うので、この点については後で共通して説明する。
図1〜図9を参照して、第1の実施の形態に係るエアバッグ装置10について説明する。図1は、第1の実施の形態に係るエアバッグ装置の構成を示す第1バッグ展開状態における断面図である。図2は、第1の実施の形態に係るエアバッグ装置の構成を示す全バッグ展開状態における断面図である。図3は、図1におけるインフレータ及びガス分配環周辺の拡大図である。図4は、図1の制御筒及び導管の平面図である。図5は、図4のA−A線断面図である。図6は、図4のB−B線断面図である。図7は、図1のガス分配環の斜視図である。図8は、図1のガス分配環の平断面図である。図9は、図1のインフレータの平断面図である。
エアバッグ装置10では、乗員側に第1バッグ11が配置され、そのインフレータ側に第2バッグ12が配置される。エアバッグ装置10では、この2つのバッグ11,12により、バッグ全体としての形状、厚さ、受圧面積を変化させる。また、エアバッグ装置10では、第1バッグ11のインフレータ側かつ第2バッグ12の内側に制御筒13が配置される。さらに、エアバッグ装置10では、インフレータ14の外周にガス分配環15が配置され、ガス分配環15に導管16,16が接続される。エアバッグ装置10では、インフレータ14に各バッグに対応して2個のガス発生室が設けられ、第1バッグ11及び第2バッグ12の内圧を変化させる。
第1バッグ11は、インフレータ側バッグ11aと乗員側バッグ11bからなる。インフレータ側バッグ11aは、大径の円形状であり、中央にガスの流入口となる開口部11cが開口されている。乗員側バッグ11bも、大径の円形状である。インフレータ側バッグ11aと乗員側バッグ11bとは、外縁部が合わされて、縫合糸11dで縫合される。第1バッグ11は、第2バッグ12に比べて、展開高さが高く(厚さが厚く)、径が小さい(受圧面積が小さい)。第1バッグ11は、1番目に展開するバッグであり、乗員を最初にしっかりと受け止め、衝突の衝撃を吸収する。特に、第1バッグ11は、真っ直ぐに移動してきた乗員を受け止めることができ、大きな衝撃を吸収できる。
第1バッグ11の内部には、展開高さを規制するために、2本のストラップ11e,11eが設けられる。ストラップ11eは、布製であり、帯状である。ストラップ11e,11eは、開口部11cの外側の対角位置にそれぞれ配置される。各ストラップ11eの一端は、縫合糸11fによってインフレータ側バッグ11aに縫合される。各ストラップ11eの他端は、縫合糸11gによって乗員側バッグ11bに縫合される。
第2バッグ12は、両端部の開口部12a,12bの大きさが異なる円筒形状のバッグである。インフレータ14側の開口部12aは、インフレータ14の径より若干大きい径を有する。第2バッグ12のインフレータ14側の開口端部は、ガス分配環15と共にインフレータ14に取り付けられる。第2バッグ12の第1バッグ11側の開口端部は、縫合糸12cによってインフレータ側バッグ11aの外面に縫合される。第2バッグ12は、制御筒13によって展開高さが規制され、展開時にはドーナツ状となる。この展開高さの規制によって、第2バッグ12は、第1バッグ11に比べて、展開高さが低く(厚さが薄く)、径が大きくなる(受圧面積が大きくなる)。第2バッグ12は、2番目に展開するバッグであり、体格な大きな乗員や衝突の衝撃が大きい場合、さらに、シートベルト非着用時や乗員との距離が遠い場合に乗員を受け止める。特に、第2バッグ12は、受圧面積が大きいので、斜めに移動してきた乗員を受け止めることができる。ちなみに、第2バッグ12は、非展開時には、外側に折りたたまれてぺたんとしている。
制御筒13は、布製であり、インフレータ14より若干大きな径を有する円筒形状である。制御筒13のインフレータ14側の開口端部は、ガス分配環15と共にインフレータ14に取り付けられる。制御筒13の第1バッグ11側の開口端部は、縫合糸11fによってインフレータ側バッグ11aの外面にストラップ11eと共に縫合される。したがって、第1バッグ11は、制御筒13及びインフレータ14によって、閉空間が構成される。第2バッグ12は、制御筒13及びインフレータ14によって、ドーナツ状の閉空間が構成される。このように、制御筒13は、第1バッグ11と第2バッグ12との隔壁となり、第1バッグ11に確実にガスを供給するためのガス供給通路の機能を有する。
制御筒13は、第2バッグ12が非展開時には、弛んだ状態で内側に折り込まれ、折り込まれて重ねられた外端部が縫合糸13aによって縫合されている。したがって、制御筒13には、ドーナツ状の閉空間部13bが構成され、その中心部には開口部13cを有する(図4、図5参照)。縫合糸13aは、閉空間部13bの極めて高い内圧で容易に破断する材質のものが選ばれる。あるいは、閉空間部13bの極めて高い内圧によって破断するように縫合される。閉空間部13bは、第2バッグ12に対して開口している開口端部13dが縫合糸13aによって縫合されることにより、密閉された袋状となっている。開口部13cは、第1バッグ11にガスを供給する場合、ガス分配環15から第1バッグ11へのガスの流路となる(図1参照)。
また、制御筒13は、ドーナツ状の閉空間部13bの開口端部13dの対角位置に2本の導管16,16が取り付けられ、導管16,16によって袋状の閉空間部13b内にガスが供給されるようになっている。ガスの供給によって閉空間部13bの内圧が極めて高くなると、縫合糸13aが破断し、閉空間部13bが消滅する。すると、導管16,16からのガスによって第2バッグ12が展開し、制御筒13は、第2バッグ12の展開に従って折り込んだ状態から徐々に延び、やがて、緊張状態となる。したがって、制御筒13は、円筒形状となる(図2参照)。この制御筒13の円筒形状の内側の内圧は、第1バッグ11と同じ圧力となる。第2バッグ12の内圧は第1バッグ11の内圧より高くなるように設定されているので、制御筒13は、内側に窪んだ状態の円筒形状となる(図2参照)。また、制御筒13は、第2バッグ12の内周面を形成し、第2バッグ12の展開高さを規制する機能を有する。そのため、制御筒13の円筒形状の高さは、第2バッグ12の展開高さをどの程度にするかに応じて適宜設定される。さらに、バッグ11,12間の内圧差により円筒形状が窪んだ状態となることにより、第2バッグ12の展開高さが調整される。
インフレータ14は、円筒部14aとこの円筒部14aの外周に設けられるフランジ部14bからなる(図3、図9参照)。円筒部14aは、平面視して4つのガス発生室に区画され、第1ガス発生室14c,14c及び第2ガス発生室14d、14dが形成される(図9参照)。フランジ部14bは、第2バッグ12、制御筒13、ガス分配環15及び導管16,16を取り付けるために用いられる。
第1ガス発生室14c,14cは、第2バッグ12より容量の大きい第1バッグ11にガスを供給しなければならないので、第2ガス発生室14d,14dより大きい。また、第1ガス発生室14c,14cは、バッグ内に一様にガスを供給するために、対角位置に配置される。第1ガス発生室14cの側面には、ガス分配環15内にガスを流し込むために、長方形状のガス流出口14eが2個開口されている(図9参照)。そして、第1ガス発生室14cでは、ガス流出口14e,14eからガスをガス分配環15に流し込む。また、第1ガス発生室14cは、2個のスクイブがそれぞれ設けられており、各スクイブによって各ガス発生剤に点火し、ガスが発生する。第1ガス発生室14c,14cでは、第1バッグ11の内圧を低圧、中圧、高圧の3段階の出力レベルに調整可能であり、低圧レベルの場合には1つの第1ガス発生室14cの1つのスクイブのみを点火させ、中圧レベルの場合には2つの第1ガス発生室14c,14cの各1つのスクイブを点火させ、高圧レベルの場合には2つの第1ガス発生室14c,14cの各2つのスクイブを点火させる。
第2ガス発生室14d,14dは、制御筒13の閉空間部13b及び第1バッグ11より小さい容量の第2バッグ12にガスを供給するので、第1ガス発生室14cより小さい。しかし、第2ガス発生室14d,14dは、閉空間部13bの内圧を極めて高い内圧にするとともに第2バッグ12の内圧を第1バッグ11の内圧より高くする必要があるので、高圧ガスを発生する。第2ガス発生室14d,14dは、閉空間部13b及び第2バッグ12内に一様にガスを供給するために、対角位置に配置される。第2ガス発生室14dの側面には、ガス分配環15内にガスを流し込むために、長方形状のガス流出口14fが1個開口されている(図9参照)。そして、第2ガス発生室14dでは、ガス流出口14fからガスをガス分配環15に流し込む。また、第2ガス発生室14dは、2個スクイブがそれぞれ設けられており、各スクイブによって各ガス点火剤に点火し、ガスが発生する。第2ガス発生室14d,14dでも、第1ガス発生室14c,14cと同様に、第2バッグ12の内圧を低圧、中圧、高圧の3段階の出力レベルに調整可能である。
フランジ部14bは、板状であり、平面視してドーナツ形状である。フランジ部14bには、複数個のボルト孔14g,・・・が開口されている(図9参照)。このボルト孔14gは、少なくとも第2ガス発生室14d,14dの位置に対応して配置される。
ガス分配環15は、インフレータ14の第1ガス発生室14c,14cで発生したガスを制御筒13(ひいては、第1バッグ11)内に分配するとともに、第2ガス発生室14d,14dで発生したガスを導管16,16(ひいては、制御筒13の閉空間部13b及び第2バッグ12)内に分配する。ガス分配環15は、インフレータ14の外周面に嵌合する内周面を有するドーナツ形状である(図7参照)。ガス分配環15は、インフレータ14のフランジ部14bから円筒部14aの制御筒13側の面までの高さより少し低い高さを有する(図3参照)。ガス分配環15は、インフレータ14の4つのガス発生室14c,14c,14d,14dに対応して4つに区画され、第1ガス分配室15a,15a及び第2ガス分配室15b,15bが形成される(図8参照)。
第1ガス分配室15a,15aは、第1ガス発生室14c,14cからの多量のガスを分配しなければならないので、第2ガス分配室15b,15bより大きい。第1ガス分配室15aの内周面には、第1ガス発生室14cのガス流出口14e,14eの位置に対応して、ガス流出口14eと同一の大きさ及び形状のガス導入口15c,15cが開口されている(図8参照)。また、第1ガス分配室15aの制御筒13側の面には、制御筒13内にガスを分配するために、円形状のガス分配口15d,15dが2個開口されている(図7参照)。
第2ガス分配室15b,15bは、第2ガス発生室14d,14dからのガスを分配するので、第1ガス分配室15a,15aより大きい。第2ガス分配室15bの内周面には、第2ガス発生室14dのガス流出口14fの位置に対応して、ガス流出口14fと同一の大きさ及び形状のガス導入口15eが開口されている(図8参照)。また、第2ガス分配室15bの外周面には、導管16にガスを分配するために、円形状のガス分配口15fが1個開口されている(図8参照)。
このように、ガス分配環15では、第1ガス発生室15aにおいてガス導入口15c,15cとガス分配口15d,15dとが空間的に繋がっており、第2ガス分配室15bにおいてガス導入口15eとガス分配口15fとが空間的に繋がっている。また、ガス分配環15では、ガス導入口15cとガス分配口15fとが空間的に遮断されており、ガス導入口15eとガス分配口15dとが空間的に遮断されている。また、ガス分配環15は、インフレータ14のガス流出口14eとガス導入口15cとの位置及びインフレータ14のガス流出口14fとガス導入口15eとの位置が合わされ、その内周面がインフレータ14の外周面に密着した状態で取り付けられる。したがって、インフレータ14とガス分配環15との間では、ガス流出口14eとガス導入口15cとが空間的に繋がっており、ガス流出口14fとガス導入口15eとが空間的に繋がっている。
また、ガス分配環15の全てのガス分配室15a,・・・内には、積層された多数枚のクーラント15g,・・・が設けられる。一枚のクーラント15gは、外形状が各ガス分配室15a又は15bの内周形状に沿った形状であり、厚さが薄い。各クーラント15gは、網目の大きさが非常に小さいメッシュ状に形成され、各層のクーラント15g,・・・のメッシュの網目の位置がそれぞれ異なっている。したがって、クーラント15g,・・・が多数枚積層されたガス分配室15a,・・・では、各層間におけるメッシュの網目の位置が不規則となり、ガスが通過すると燃えカス等の微粒子がガスから除去される。このように、ガス分配環15は、クーラント15g,・・・によるガスを冷却する機能及びガスの微粒子を除去するフィルタ機能を有している。したがって、インフレータ14にクーラントやフィルタを設ける必要はない。
導管16は、内部が空洞であり、細い管状である(図5参照)。導管16,16は、第2バッグ12内に2本設けられ、インフレータ14の対角位置に形成された第2ガス発生室14d,14dと制御筒13の閉空間部13bとを接続する(図1参照)。導管16は、第2ガス発生室14dでガスが発生すると、その発生したガスを閉空間部13bまで導く。導管16は、1枚の細長い布からなり、その布の幅方向の中央部を折り返して長手方向の端部を合わせ、その端部部分を縫合糸16aで縫合することによって形成される(図4参照)。導管16の一端は、ガス分配環15の第2ガス分配室15bに配置され、インフレータ14のフランジ部14bに取り付けられる。導管16の他端は、閉空間部13bの開口端部13dに取り付けられる(図5参照)。また、導管16の他端は、閉空間部13bが消滅後、第2バッグ12内で自由端となる。このように、閉空間部13b及び第2バッグ12には、第2ガス発生室14d,14dで発生したガスがガス分配環15で分配された後、導管16,16を経由して供給される。
制御筒13の閉空間部13bへの導管16,16の取り付け方について説明する。導管16は、閉空間部13bの開口端部13dに挿入される(図5参照)。そして、導管16の折り返した一方側の布と開口端部13dの内側に折り込んだ一方側の布とを合わせた部分が縫合糸16bによって縫合され、導管16の他方側の布と開口端部13dの他方側の布とを合わせた部分が縫合糸16bによって縫合される(図6参照)。このように、閉空間部13bと導管16とは、空間的に繋がるように取り付けられる。縫合糸16bは、閉空間部13bの極めて高い内圧で容易に破断する材質のものが選ばれる。あるいは、閉空間部13bの極めて高い内圧によって破断するように縫合される。
図3を参照して、第2バッグ12、制御筒13、ガス分配環15及び導管16,16のインフレータ14への取り付け方について説明する。まず、インフレータ14のフランジ部14bの一面に、第2バッグ12の一端部が配置される。2本の導管16,16は、ガス分配環15の第2ガス分配室15b,15b(ガス分配口15f,15f)の位置に、ガス分配環15を覆うように設けられる。そして、インフレータ14にガス分配環15が嵌め込まれ、第2バッグ12の上側に導管16,16を取り付けた状態でガス分配環15が重ねられる。この際、ガス流出口14eとガス導入口15cとの位置及びガス流出口14fとガス導入口15eとの位置が合わされる。さらに、ガス分配環15の上側には、制御筒13の一開口端部が重ねられる。この制御筒13の端部には、ガス分配口15dの位置に対応して、ガス導入口13eが開口されている。そして、複数組のボルト17,・・・とナット18,・・・によって、フランジ部14bにボルト締め固定される。
このように構成されたエアバッグ装置10では、車両が衝突した場合、まず、インフレータ14の第1ガス発生室14c,14cでガスを発生させる。この際、衝突の衝撃の大きさや乗員の体格等に応じて第1バッグ11の出力レベルを変化させるので、出力レベルに応じて第1ガス発生室14c,14cにおいて点火させるスクイブが選ばれる。その発生させたガスは、インフレータ14のガス流出口14eからガス分配環15のガス導入口15cを通って第1ガス分配室15aに入り、ガス分配口15dから分配される。この分配されたガスは、ガス導入口13eから制御筒13の内側に導入され、制御筒13の開口部13cを通って第1バッグ11内に供給される。そして、第1バッグ11が展開していく(図1参照)。この際、制御筒13の閉空間部13bにはガスが供給されず、縫合糸13aは破断しないので、第2バッグ12は展開しない。
衝突の衝撃の大きさや乗員の体格等に応じて第2バッグ12を展開させる必要がある場合、エアバッグ装置10では、インフレータ14の第2ガス発生室14d,14dでガスを発生させる。この際、衝突の衝撃の大きさや乗員の体格等に応じて第2バッグ12の出力レベルを変化させるので、出力レベルに応じて第2ガス発生室14d,14dにおいて点火させるスクイブが選ばれる。その発生させたガスは、インフレータ14のガス流出口14fからガス分配環15のガス導入口15eを通って第2ガス分配室15bに入り、ガス分配口15fから分配される。この分配されたガスは、導管16によって制御筒13の閉空間部13b内に導入される。この際、閉空間部13bの内圧が所定圧力を超えると、縫合糸13aが容易に破断し、閉空間部13bが消滅する。そして、導管16によって第2バッグ12内にガスが供給され、第2バッグ12が展開していく(図2参照)。この第2バッグ12の展開によって、縫合糸13aの破断が促進される。
次に、図10及び図11を参照して、第2の実施の形態に係るエアバッグ装置20について説明する。図10は、第2の実施の形態に係るエアバッグ装置のインフレータ及びガス分配環周辺の断面図である。図11は、図10のインフレータの平面図である。なお、エアバッグ装置20では、第1の実施の形態に係るエアバッグ装置10と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
エアバッグ装置20では、エアバッグ装置10と比較すると、インフレータ24から制御筒13(第1バッグ)にガスを直接供給する点が異なる。そのため、エアバッグ装置20は、エアバッグ装置10とインフレータ24及びガス分配環25の構成のみが異なる。
インフレータ24は、第1の実施の形態に係るインフレータ14と略同様の構成を有するが、第1ガス発生室24のガス流出口24eの位置が異なる。第1ガス発生室14cの制御筒13側の面には、制御筒13内にガスを直接流し込むために、円形状のガス流出口24e,24eが2個開口されている(図11参照)。
ガス分配環25は、第1の実施の形態に係るガス分配環25と略同様の構成を有するが、第1ガス発生室24からのガスを分配する機能を有しない。したがって、ガス分配環25は、第1の実施の形態に係るガス分配環15の第1ガス分配室15a,15aに相当する部屋が区画されているが、その部屋にはガス導入口及びガス分配口が開口されていない。したがって、ガス分配環25では、第2ガス分配室25bにおいてガス導入口25eとガス分配口25fとが空間的に繋がっている。また、インフレータ24とガス分配環25との間では、ガス流出口24fとガス導入口25eとが空間的に繋がっている。
なお、第1ガス発生室24c,24cで発生したガスはガス分配環25を通らないので、このガスの温度を低下させるためのクーラントや微粒子を除去するためのフィルタをインフレータ24に設ける必要がある。また、ガス分配環25から制御筒13内にガスを導入しないので、制御筒13の端部にはガス導入口が開口されていない。
このように構成されたエアバッグ装置20では、車両が衝突した場合、まず、インフレータ24の第1ガス発生室24c,24cでガスを発生させる。その発生させたガスは、ガス流出口24eから制御筒13の内側に直接導入され、制御筒13を通って第1バッグ(図示せず)内に供給される。そして、第1バッグが展開していく。第2バッグ12を展開させる必要がある場合については、エアバッグ装置10と同様である。
次に、図12〜図14を参照して、第3の実施の形態に係るエアバッグ装置30について説明する。図12は、第3の実施の形態に係るエアバッグ装置の構成を示す第1バッグ展開状態における断面図である。図13は、図12のC−C線断面図である。図14は、図12のエアバッグ装置のベントホールワンウエイカバーが縫合されている場合のベントホールワンウエイカバー周辺の断面図であり、(a)が縫合破談前であり、(b)が縫合破談後である。なお、エアバッグ装置30では、第1の実施の形態に係るエアバッグ装置10と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
エアバッグ装置30は、エアバッグ装置10と比較すると、ベントホール及びベントホールワンウエイカバーを備える点が異なる。そのため、エアバッグ装置30は、エアバッグ装置10と第1バッグ31及び第2バッグ32の構成のみが異なる。
第1バッグ31は、第1の実施の形態に係る第1バッグ11と同様に、インフレータ側バッグ31aと乗員側バッグ31bからなり、縫合糸31dで縫合されてバッグが形成される。インフレータ側バッグ31aには、ストラップ31eが取り付けられる位置と第2バッグ32と縫合糸32cによって縫合される位置との間に、円形状のベントホール31fが2個開口されている。ベントホール31f,31fは、開口部31cを挟んで対角位置に配置される。ベントホール31f,31fは第2バッグ32に導通し、ベントホール31f,31fを介して第1バッグ31と第2バッグ31とが空間的に繋がることができる。ベントホール31fは、第1バッグ31による反力が大きくなり過ぎないように、第1バッグ31内のガスを第2バッグ32に逃がす機能を有する。ちなみに、第1バッグ31の内圧が高圧レベルに調整された場合、第1バッグ31による反力が必要以上に大きくなる場合がある。
第2バッグ32は、第1の実施の形態に係る第2バッグ12と略同様の構成であるが、ベントホールワンウエイカバー32dが形成される。第2バッグ32の第1バッグ31側の開口端部は、ベントホール31f,31fを覆うために一部が延長され、その延長部分がベントホールワンウエイカバー32d,32dとなる。したがって、第2バッグ12の開口部32bは、単純な円形状ではなく、2箇所に凸部(ベントホールワンウエイカバー32d,32d)を有する(図13参照)。第2バッグ32の第1バッグ31側の開口端部は、ベントホールワンウエイカバー32d,32dがベントホール31f,31fを覆う位置に配置され、ベントホール31f,31fより外周側が縫合糸32cによってインフレータ側バッグ31aの外面に縫合される。ベントホールワンウエイカバー32dは、第1バッグ31からベントホール31fを介して流出するガスを許容し、第2バッグ32からベントホール31fを介して流出するガスを遮断する機能を有する。
図14(a)に示すように、ベントホールワンウエイカバー32dの外端部は、インフレータ側バッグ31aのベントホール31fの外周部に沿って縫合糸32eで縫合される構成としてもよい。この場合、この縫合糸32eが破断するまで、第1バッグ31から第2バッグ32にガスが流出しない。縫合糸32eは、第1バッグ31の内圧が所定圧力より高くなると(つまり、第1バッグ31による反力が大きくなり過ぎると)破断する材質のものが選ばれる。あるいは、第1バッグ31の内圧が所定圧力より高くなると破断するように縫合される。
このように構成されたエアバッグ装置30では、エアバッグ装置10と同様に、衝突の衝撃の大きさや乗員の体格等に応じて第1バッグ31や第2バッグ32を展開させる。この際、第1バッグ31、第2バッグ32の各内圧は、衝突の衝撃の大きさや乗員の体格等に応じて所定のレベルに調整される。第1バッグ31の内圧が高レベルに調整された場合、第1バッグ31の内圧が所定圧力を超えると、第1バッグ31からベントホール31f,31fを介して第2バッグ32内にガスが流出する。なお、縫合糸32eで縫合されている構成では、第1バッグ31の内圧が所定圧力未満のときには縫合糸32eが破断せず、第1バッグ31からのガスの流出が遮断され(図12(a)参照)、第1バッグ31の内圧が所定圧力を超えると縫合糸32eが破断し、第1バッグ31からのガスの流出が許容される(図12(b)参照)。しかし、第2バッグ32の内圧が高レベルに調整された場合でも、ベントホールワンウエイカバー32d,32dによって、第2バッグ32から第1バッグ31へのガスの流出が遮断される。
次に、図15を参照して、第1〜第3の実施の形態に係るエアバッグ装置のインフレータ制御部40について説明する。図15は、本実施の形態に係るエアバッグ装置のインフレータ制御部の構成図である。
インフレータ制御部40では、衝突時の衝撃の大きさ及び乗員の体格に応じてインフレータ14,24を制御し、バッグと乗員との距離及びシートベルト着用/非着用も考慮して制御を行う。そのために、インフレータ制御部40は、乗員体格センサ41、乗員距離センサ42、バックルスイッチ43、クラッシュシベラティセンサ44及びECU[Electronic Control Unit]45を備えている。乗員体格センサ41は、乗員の体格を検出するセンサであり、例えば、シート荷重計である。乗員体格センサ41では、乗員の体格を示す乗員体格信号PSをECU45に送信する。乗員距離センサ42は、乗員とバッグ搭載位置との距離を検出するセンサであり、例えば、CCDカメラや赤外線センサである。乗員距離センサ42では、距離情報を示す乗員距離信号DSをECU45に送信する。バックルスイッチ43は、シートベルト着用時にはオン信号を出力し、シートベルト非着用時にはオフ信号を出力する。バックルスイッチ43では、オン/オフを示すバックル信号BSをECU45に送信する。クラッシュシベラティセンサ44は、衝突時の衝撃の大きさ(衝突の厳しさ)を検出するセンサである。クラッシュシベラティセンサ44では、衝突の厳しさを示す衝突信号SSをECU45に送信する。
ECU45は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等からなる電子制御ユニットであり、エアバッグ装置の制御装置として機能する。ECU45では、乗員体格センサ41からの乗員体格信号PSを取り入れ、乗員体格信号PSに基づいて乗員の体格を小、中、大の三段階に設定する。ECU45では、乗員距離センサ42からの乗員距離信号DSを取り入れ、乗員距離信号DSに基づいてバッグ搭載位置と乗員との距離を近、中、遠の三段階に設定する。ECU45では、バックルスイッチ43からバックル信号BSを取り入れ、バックル信号BSに基づいてシートベルトの着用、非着用を設定する。ECU45では、クラッシュシベラティセンサ44からの衝突信号SSを取り入れ、衝突信号SSに基づいて衝突の厳しさを中速、高速の二段階に設定する。そして、ECU45では、体格、距離、シートベルト着用/非着用、衝突の厳しさの4つのパラメータと展開させるバッグの数及びその展開させるバッグの出力レベル(内圧レベル)との関係を示す制御マップにより、展開するバッグの数(1又は2)及びその展開させるバッグの出力レベル(低レベル、中レベル、高レベル)を決定する。さらに、ECU45では、展開するバッグの数及び出力レベルに応じて点火するスクイブ46,・・・を選択し、その選択したスクイブに点火電流CIを各々供給する。展開するバッグの数が2の場合、ECU45では、第1ガス発生室のスクイブ46,・・・に点火電流CIを供給し、極短時間経過後に第2ガス発生室のスクイブ46,・・・に点火電流CIを供給する。
最後に、図16に示す制御マップによるインフレータ制御部40における制御の一例について説明する。図16は、本実施の形態に係るエアバッグ装置における制御の一例を示す制御マップである。図16の制御マップは、乗員の体格(小、中、大)、バッグ搭載位置と乗員間距離(近、中、遠)、シートベルト(着用、非着用)、衝突の厳しさ(中速、高速)に応じて、展開させるバッグの数(1、2)を上段に示し、その展開させるバッグの出力レベル(低、中、高)を下段に示している。
乗員の体格については、乗員の体格が大きいほど、乗員のマスが大きく、運動エネルギが大きくなるので、バッグの反力及びバッグの受圧面積や厚さを大きくしなければならない。バッグ−乗員間距離が遠くなるほど、乗員の移動距離が長くなり、バッグによる拘束が遅れるので、バッグが吸収すべきエネルギ吸収量が大きくなる。また、斜め衝突等の場合には、乗員がバッグの中心から大きくずれる。したがって、バッグ−乗員間距離については、遠くなるほど、バッグの反力及びバッグの受圧面積や厚さを大きくしなければならない。衝突の厳しさについては、衝突が厳しきなるほど、バッグの反力及びバッグの受圧面積や厚さを大きくしなければならない。シートベルトについては、非着用の場合にはバッグの反力及びバッグの受圧面積や厚さを大きくしなければならない。この考え方を基本として、体格、距離、シートベルトの着用/非着用、衝突の厳しさの様々な組み合せに応じて、乗員を保護するための最適な状態にバッグを変化させるために制御マップが設定されている。
展開させるバッグの数について説明する。乗員の体格が小の場合、展開させるバッグの数を1とする。乗員の体格が中の場合、距離が近のときには展開させるバッグの数を1とし、距離が中のときにはシートベルト非着用かつ衝突の厳しさが高速のときを除いて展開させるバッグの数を1とし、距離が遠のときにはシートベルト着用かつ衝突の厳しさが中速のときだけ展開させるバッグの数を1とする。乗員の体格が大の場合、距離が近のときには展開させるバッグの数を1とし、距離が中のときには衝突の厳しさが中速のときだけ展開させるバッグの数を1とし、距離が遠のときにはシートベルト着用かつ衝突の厳しさが中速のときだけ展開させるバッグの数を1とする。上記以外の場合、展開させるバッグの数を2とする。展開させるバッグの数が1の場合、エアバッグ装置では、第1バッグだけしか展開させないので、受圧面積は小さく、厚さも薄くなり、形状は第1バッグのみからなる形状となる。展開させるバッグの数が2の場合、エアバッグ装置では、第1バッグ及び第2バッグを展開させるので、受圧面積は大きくなり、厚さも厚くなり、形状は第1バッグと第2バッグからなる形状となる。
展開させるバッグの出力レベルについて説明する。第1バッグのみを展開させる場合、シートベルト着用かつ衝突の厳しさが中速のときには低レベルとし、シートベルト着用かつ衝突の厳しさが高速のときには体格が中かつ距離が中の場合を除いて低レベルとし、シートベルト着用かつ衝突の厳しさが高速かつ体格が中かつ距離が中のときには中レベルとし、シートベルト非着用かつ衝突の厳しさが中速かつ体格が小または中のときには中レベルとし、シートベルト非着用かつ衝突の厳しさが中速かつ体格が大のときには低レベルとし、シートベルト非着用かつ衝突の厳しさが高速かつ体格が大のときには低レベルとし、シートベルト非着用かつ衝突の厳しさが高速かつ距離が近のときには中レベルとし、シートベルト非着用かつ衝突の厳しさが高速かつ体格が小かつ距離が中又は遠のときには高レベルとする。第1バッグ及び第2バッグを展開させる場合、シートベルト着用かつ衝突の厳しさが高速かつ体格が中のときには第1バッグを低レベル及び第2バッグを中レベルとし、シートベルト着用かつ衝突の厳しさが高速かつ体格が大かつ距離が中のときには第1バッグを低レベル及び第2バッグを中レベルとし、シートベルト着用かつ衝突の厳しさが高速かつ体格が大かつ距離が遠のときには第1バッグを中レベル及び第2バッグを高レベルとし、シートベルト非着用かつ衝突の厳しさが中速かつ体格が中のときには第1バッグ及び第2バッグを高レベルとし、シートベルト非着用かつ衝突の厳しさが中速かつ体格が大のときには第1バッグを中レベル及び第2バッグを高レベルとし、シートベルト非着用かつ衝突の厳しさが高速のときには第1バッグ及び第2バッグを高レベルとする。エアバッグ装置では、バッグの出力レベル(内圧)が大きくなるほど、バッグの反力も大きくなり、大きな衝撃のエネルギを吸収することができる。
第1〜第3の実施の形態に係るエアバッグ装置によれば、衝撃の厳しさ、乗員の体格、バッグと乗員との距離、シートベルトの着用/非着用に応じてバッグの形状、受圧面積、厚さ及び内圧を変化させることができ、衝突時の条件に応じて乗員を保護するための最適な状態にバッグを変化させることができる。さらに、このエアバッグ装置によれば、制御筒により、第1バッグのみに確実にガスを供給できるとともに、第2バッグの展開高さを規制することができる。特に、第1バッグと第2バッグとの内圧差により、展開高さを調整することができる。また、このエアバッグ装置によれば、ガス分配環にクーラントやフィルタ機能を備える構成としたので、インフレータを小型化できる。
さらに、第3の実施の形態に係るエアバッグ装置によれば、ベントホールによって第1バッグから第2バッグにガスを流出させることにより、第1バッグの反力が必要以上に大きくなることはなく、ガスが大気中に放出されない。また、このエアバッグ装置によれば、ベントホールワンウエイカバーにより、第1バッグから第2バッグの一方向のみに確実にガスを流出させることができる。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では第1段バッグと第2段バッグの2個のバッグで構成したが、バッグの個数については3個以上でもよく、各バッグの形状についても特に限定しない。
また、本実施の形態ではガス分配環を備える構成としたが、ガス分配環を備えない構成としてもよい。この場合、インフレータの各ガス発生室に設けられたガス流出口から直接あるいはガス流出口に接続した導管等から対応するバッグにガスを供給する。
また、本実施の形態ではインフレータを円筒形状とし、1つのインフレータに第1ガス発生室と第2ガス発生室を構成したが、インフレータの形状等は適宜設定可能であり、第1ガス発生部と第2ガス発生部とを別々のインフレータで構成してもよい。また、各バッグに対してガス発生室がそれぞれ2つづつ構成したが、特にその数を限定しない。各ガス発生室のガス流出口の数も、特にその数を限定しない。
また、本実施の形態ではガス分配環にクーラント及びフィルタを設ける構成としたが、インフレータにクーラント及び又はフィルタを設ける構成としてもよい。
また、本実施の形態では円筒状の制御布を内側に折り込んで開口部を制御糸で縫合することによって制御筒(ガス制御手段)を構成したが、第1バッグと第2バッグとの隔壁となり、第1バッグのガス供給通路となればよいので、このような機能を有するガス制御手段であれば、特にその構成を限定しない。
また、本実施の形態では制御マップにより制御の一例を示したが、制御については、構成するバッグの数、形状、配置、出力レベル等を考慮し、衝突の厳しさや乗員の体格等に応じて適宜行ってよい。
また、第3の実施の形態ではベントホールワンウエイカバーを備える構成としてが、ベントホールワンウエイホールを備えない構成としてもよい。
10,20…エアバッグ装置、11,31…第1バッグ、11a,31a…インフレータ側バッグ、11b,31b…乗員側バッグ、11c,31c…開口部、11d,11f,11g,31d…縫合糸、11e,31e…ストラップ、31f…ベントホール、12,32…第2バッグ、12a,12b,32b…開口部、12c,32c,32e…縫合糸、32d…ベントホールワンウエイカバー、13…制御筒、13a…縫合糸、13b…閉空間部、13c…開口部、13d…開口端部、13e…ガス導入口、14,24…インフレータ、14a…円筒部、14b…フランジ部、14c,24c…第1ガス発生室、14d,24d…第2ガス発生室、14e,14f,24e,24f…ガス流出口、14g…ボルト孔、15…ガス分配環、15a…第1ガス分配室、15b,25b…第2ガス分配室、15c,15e,25e…ガス導入口、15d,15f,25f…ガス分配口、15g…クーラント、16…導管、16a,16b…縫合糸、17…ボルト、18…ナット、40…インフレータ制御部、41…乗員体格センサ、42…乗員距離センサ、43…バックルスイッチ、44…クラッシュシベラティセンサ、45…ECU、46…スクイブ