JP4496134B2 - 旋盤 - Google Patents

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Description

本発明は、旋盤に関するものである。
ワークに複合加工する旋盤には、特許文献1或いは特許文献2に記載されたものがある。
特開平11−138374号公報 特開2003−117701号公報
特許文献1の旋盤は、主軸が固定されている複合加工型旋盤であり、ワークを把持する主軸と、テールストックと、往復台と、工具主軸とを備えている。テールストックは、主軸に対向する位置に配置されている。
往復台は、主軸又はテールストックの中心線に平行に往復移動する台である。往復台上に、工具主軸が取付けられている。工具主軸は、工具を把持するものであり、工具の方向を変化させることが可能になっている。工具により、主軸又はテールストックで把持したワークが、斜め上方から加工される。
この特許文献1に示された旋盤のように、主軸が固定されている旋盤では、長尺のワークを加工する時には、ワークが工具で押されて撓むことにより、精度の高い加工ができない。そのため、長尺のワークを加工するときには、テールストックに、ワークの先端面に当接して主軸と相俟ってワークを支持するセンタを取付ける。
しかし、テールストックにセンタを取付けることにより、次のような問題が起きる。
(1) テールストックにセンタを取付けてワークを支持するので、ワークの先端面(正面)に加工ができない。
(2) テールストックにセンタが取付けてあるため、ワークを把持するためのチャックをテールストックに取付けることができない。そのため、テールストックのチャックでワークを把持してワークの後端面(背面)を加工することができない。
(3) 工具とテールストックとが干渉するため、テールストックの近傍が加工できない。
このように、主軸が固定されている旋盤では、長尺の複合加工を行うことは困難であった。
さらに、特許文献1の複合加工型旋盤では、加工可能なワークの長さが、主軸とテールストックの距離で決まり、その距離以上の長さのワークを加工することができないという問題もある。
また、斜め上から工具でワークに加工を行うことで、切り粉が機械内に堆積しにくいが、温度変化の影響で加工精度が劣化することがあった。即ち、温度変化により、ワーク及び工具の高さ方向の位置が変化するが、その位置の変化の割合が、ワークと工具とで異なる。ワークより上方にある工具の方が温度変化の影響を受けやすい。
一方、長尺のワークをテールストックで支持しないで加工する方法として、特許文献2のように、工具の近傍に長尺のワークの撓みを防止するためのガイドブッシュを設けて、主軸を移動させながら長尺のワークを加工する技術がある。
特許文献2の旋盤は、ワークを回転可能に把持する第1の主軸台と、背面主軸台上に配置された第2の主軸台及び正面刃物台と、ガイドブッシュと、ワークを切り落とすバイトが取付けられた刃物台と、第3の主軸台と、第3の主軸台に取付けられてワークの背面を加工する工具と、ワークの軸方向に対して垂直に移動可能な回転工具台とを備えている。
背面主軸台は、第1の主軸台に把持されたワークの軸方向に平行に移動する機能とその軸方向に垂直に移動する機能とを持つ。ガイドブッシュは、第1の主軸台と背面主軸台との間に配置され、回転するワークを摺動可能に支持するものである。第2の主軸台は、ワークの先端側(正面側)を把持するものである。第2の主軸台と共に背面主軸台に配置された刃物台には、ワークの正面を加工するドリルが取付けられる。第3の主軸台は、ガイドブッシュの概ね側方に配置されている。
この特許文献2に記載された旋盤では、背面主軸台をワークの軸方向に移動させ、第1の主軸台が把持してガイドブッシュが支持するワークの先端面(正面)を、正面刃物台に取付けられた工具で加工する。その後、背面主軸台を移動して第2の主軸台でワークの先端側を把持させ、これと同時に第2の主軸台で把持していたワークを第3の主軸台に把持させる。第3の主軸台に把持されたワーク先端面を、刃物台に取付けられた工具で再度加工する。
ワークの後端面(背面)を加工する場合には、背面主軸台を移動させ、第2の主軸台で把持したワークの後端面(背面)を第3の主軸台に取付けられたドリルで加工する。
この特許文献2のように主軸が移動する旋盤では、長尺のワークの先端面と後端面とを加工できるが、次のような問題がある。
(1) ワークに斜めの穴をあけるためには、斜め穴加工用のアタッチメントを刃物台に取付ける必要がある。
(2) ワークの先端面を加工する工具とワークの後端面を加工する工具とを別に用意する必要がある。
(3) 刃物台上に工具を配置する時に、工具が隣の工具と干渉しないかを十分に考慮しなければならない。
(4) ワークの先端面を加工する工具を取付ける場所の他に、ワークの後端面を加工する工具とを取付ける場所を確保しなければならないので、機械の小型化が困難になり、作業性もわるい。
(5) 刃物台及び第3の主軸台に取付けられる工具の数には限界があるため、工具を交換しないで複雑な加工ができるワークの種類が限られていた。
(6) 各工具を交換する時には、機械を停止する必要があり、効率的な加工ができなかった。
前述したように、特許文献1のような主軸固定の旋盤では、長尺のワークを加工する時、ワークの先端面及びワークの後端面及びテールストックの近傍の加工ができない。また、加工精度の問題もあった。
一方、特許文献2のような主軸移動の旋盤では、長尺のワークの先端面及び後端面の加工ができるが、ワークに斜め穴をあけるためには、斜め穴加工用のアタッチメントが必要であると共に、刃物台に取付け可能な工具数が限られる。そのため、加工可能な加工種類の数が少なく、自在に複雑形状に加工することができなかった。
本発明は、以上のような現状を鑑みてなされた発明であり、短尺から長尺までのすべての長さのワークに対して、両端面を含み、複雑形状に高精度に全加工することができる旋盤を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の観点に係る旋盤は、ワークを回転軸が水平になるように把持して回転させる機能を持つと共に、該ワークの回転軸に平行なZ方向に往復移動可能な主軸と、前記主軸に対向して配置されると共に、前記主軸で把持したワークが貫通する穴が形成され、該ワークを把持して回転させる機能を持ち、前記Z方向に往復移動可能な背面主軸と、記Z方向に往復移動可能であると共に該Z方向とは異なる方向のX方向に往復移動可能であり、前記ワークを加工するための工具を回転可能にかつ該工具の中心線の高さと前記ワークの中心線の高さとが等しくなるように把持し、かつ該Z方向及び該X方向を含むXZ平面内で回転して該工具の向きを変化させることが可能な工具主軸と、前記主軸から突出した前記ワークを回転可能に支持すると共に前記回転軸の方向に摺動させるガイドブッシュと、任意数の前記工具を収容する工具マガジンと、
すでに前記工具主軸に取付けられている工具を、前記工具マガジンに収容されている工具に交換する工具交換手段と、前記工具主軸の一端部に取り付けられると共に前記Z方向及びX方向とは異なる方向のY方向に移動可能な支持体に回転可能に支持された第1軸、及び該一端部とは異なる該工具主軸の他端部に前記第1軸と同軸に取り付けられると共に前記Y方向に移動しない支持体に形成された穴に回転可能かつY方向に摺動可能に支持された第2軸を有し、該第1軸と第2軸とにより前記工具主軸を支持すると共に該第1軸と第2軸とが回転することより前記工具主軸を前記XZ平面内で回転させる両持ち手段とを備え、前記工具主軸は、前記Y方向に往復移動可能である、ことを特徴とする。
このような構成を採用したことにより、工具主軸が工具の向きを変えられるので、主軸或いは背面主軸で把持するワークの外周面と端面とに種々の角度から加工をすることが可能となる。また、ワークが長尺で撓みやすくても、ガイドブッシュがその撓みを防止するので、加工精度が悪化しない。また、主軸で把持したワークを移し替えて、背面主軸に把持させることにより、1本のワークの両端面を加工できる。
これにより、段取り替えや他の機械での後工程がなくなる。そのため、ワークの取付け誤差がなくなり、加工精度を高くすることができる。
また、任意数の工具を収容する工具マガジンと、すでに工具主軸に取付けられている工具を、工具マガジンに収容されている工具に交換する工具交換手段と、を備えることにより、工具を交換するごとに機械を停止する必要がなくなり、アイドル時間を低減できる。
また、前記背面主軸には、前記ワークが貫通する穴が形成されていることにより、さらに長尺のワークの加工が可能になる。
このようにすると、加工位置を任意に設定でき、複雑形状に加工できる。
また、工具の中心線がワークの中心線の高さになるように、工具主軸が工具を支持する。そのため、温度変化による工具主軸の高さの変位量と、ワークの高さの変位量とが等しくなる。よって、工具とワークの高さ方向の相対位置に差がないので、所定の加工精度を維持できる。また、両持ち手段により、工具主軸が両持ちにされる。そのため、工具がワークに当接したときの応力に対し、抗性が向上して加工精度を向上できる。
また、任意数の工具を搭載し、前記工具主軸とは独立して移動し、該搭載した工具を用いて前記主軸又は前記背面主軸の把持するワークを加工する刃物台を備えてもよい。
このようにすると、工具主軸の工具ばかりでなく、刃物台の工具を使用することもでき、加工効率が向上する。
この場合、前記刃物台は、前記X方向に往復移動可能であってもよい。また、前記刃物台は、前記Z方向に往復移動可能であってもよい。また、前記刃物台は、前記Z方向及びX方向とは異なる方向のY方向に往復移動可能であってもよい。
本発明によれば、長尺から短尺までのワークを、その両端を含み、複雑形状に全加工することができる。また、本発明によれば、加工精度を向上できる。
図1は、本発明の実施形態に係る旋盤の正面図である。図2は、旋盤の平面図である。図3は、図1中の工具主軸及び刃物台の構成例を示す図である。
この旋盤はワークWに対して複雑な加工が可能な機械であり、図1及び図2のように、ベッド10と、ワークWを把持する主軸30と、工具主軸40と、ワークWを把持する背面主軸50と、図示しない制御部を備えている。制御部は、旋盤全体の制御を行うものである。
主軸30を支持する主軸台30Aが、ベッド10上にZ1軸方向に平行に取付けられた2本のレール11,12上に載せられ、Z1軸モータ13を駆動することにより、Z1軸方向に移動する構成になっている。主軸台30Aには、ワーク回転モータ31が内蔵されている。ワーク回転モータ31は、主軸30の把持するワークWを回転させるものである。
工具主軸40は、取替え可能な工具41を回転可能に把持するものであり、工具主軸台40Aに支持されている。
図4は、工具主軸台40Aを動かす機構の概要を示す図である。
ベッド10上には、Z1軸方向に平行なZ2軸方向に、2本のレール15,16が取付けられている。そのレール15,16の上に、ベース40aが取付けられ、Z2軸モータ17を駆動することにより、ベース40aがZ2軸方向に移動する。
ベース40aには、Z2軸方向に垂直なX1軸方向に、ボールねじ40bが組込まれている。ボールねじ40bの端部には、そのボールねじ40bを回転させて工具主軸台40AをX1軸方向に移動させるX1軸モータ18が配置されている。
ベース40aの上に、コラム40cが配置されている。コラム40cの底部には、ボールねじ40bと係合したブラケット40dが取付けられ、X1軸モータ18が回転すると、コラム40cがX1軸方向に移動する。
コラム40cの上方には、Y1軸モータ42を支持するモータブラケット40eが固定されている。Y1軸モータ42は、鉛直方向のY1軸方向のボールねじ40fを回転させるものである。
ボールねじ40fは、ハウジング40gから延びたブラケット40hに係合している。Y1軸モータ42が回転することにより、ボールねじ40fが回転してハウジング40gが上下方向に移動する構成である。
ハウジング40gの内部には、スピンドル40iが回転可能に組込まれている。ハウジング40gの上端側で、スピンドル40iの一端と方向変換モータ43とがカップリング40jにより結合している。
スピンドル40iの他端には、取付け板40kを介して工具主軸台40Aの一端が取付けられている。工具主軸台40Aの取付け板40kの反対側には、シャフト40mが取付けられている。シャフト40mは、ホルダ40nを介して、回転可能にコラム40cに軸支されている。
方向変換モータ43が回転することにより、工具主軸台40Aがスピンドル40i及びシャフト40mと共に回転し、工具主軸40に把持された工具41の向きが変化する構成である。
背面主軸50は、主軸30と対向してワークWを把持するものであり、背面主軸台50Aに支持されている。背面主軸台50Aは、ベッド10上にZ1軸方向と平行なZ3軸方向に取付けられた2本のレール20,21上に載せられている。Z3軸モータ22を駆動することにより、背面主軸台50AがZ3軸方向に移動する構成になっている。背面主軸台50Aにはワーク回転モータ51が内蔵されている。ワーク回転モータ51は、背面主軸50の把持するワークWを回転させるものである。
主軸30及び背面主軸50には、ワークWが貫通する穴が形成されている。
この旋盤には、さらに、刃物台60と、工具マガジン70と、工具交換機構80と、ガイドブッシュ90とが設けられている。
刃物台60は、レール20,21上に載せられ、Z4軸モータ24を駆動することにより、Z2軸方向と平行なZ4軸方向に移動する構成である。刃物台60の側方には、刃物台60をX1軸方向に平行なX2軸方向に移動させるX2軸モータ25が取付けられている。
刃物台60は、ワークWを加工する複数の工具61を保持するものであり、図3のように、回転体部62を備えている。回転体部62に工具61が取付けられ、回転体部62の回転角度に応じた工具61が選択される。刃物台60上部には、刃物台60の位置をY1軸方向と平行なY2軸方向(高さ方向)に変化させるY2軸モータ63が取付けられている。
ガイドブッシュ90は、主軸30の背面主軸50側に配置され、主軸30から突出したワークWを摺動自在に支持するものである。
なお、ここでは、刃物台60は、回転体部62を備えるタレット型にしているが、これに限定されず、例えば図5のように、複数の工具66を櫛歯形に配列してもよい。図5は、刃物台の変形例を示す図である。
一方、工具マガジン70は、工具主軸40に取付ける工具41を必要数収容するものである。工具交換機構80は、工具主軸40に取付けられている工具41を、工具マガジン70で収容している工具41に交換する機構である。
次に、加工事例を説明しつつ、旋盤の動作を説明する。
図6は、主軸30に把持されたワークWと、背面主軸50に把持されたワークWとの両方に外径加工を行う加工例1の説明図である。
この場合、主軸30及び背面主軸50にそれぞれワークWを把持させる。
続いて、ワークWを把持した例えば主軸30を、Z1軸モータ13とZ2軸モータ17を駆動することにより、ワークWの加工箇所を工具主軸40の前方に位置させる。ワーク回転モータ31を駆動してワークWを回転させつつ、Z1軸モータ13及びX1軸モータ18とを駆動制御する。これにより、工具41がワークWに当接し、主軸30に把持されたワークWの外周が加工される。主軸30側のワークWの加工が終了した後、X1軸モータ18を駆動して工具主軸40を退避させる。
そして、工具主軸40の工具を180°回転させ、Z3軸モータ22とZ2軸モータ17を駆動することにより、背面主軸50の把持するワークWの加工箇所を工具主軸40の前方に位置させる。ワーク回転モータ51を駆動してワークWを回転させつつ、Z3軸モータ22及びX1軸モータ18とを駆動制御する。
これにより、工具41がワークWに当接し、背面主軸50に把持されたワークWの外周が加工される。ここで、工具41の種類やZ1軸モータ13、Z2軸モータ17、Z3軸モータ22、X1軸モータ18の駆動制御方法により、種々の加工が可能であり、ワークWの外径を直線にしたり、テーパー、円弧等の所望の形状にすることができる。
図7は、主軸30に把持されたワークWと、背面主軸50に把持されたワークWとの両方の先端面に穿孔加工を行う加工例2の説明図である。
この場合、工具主軸40の工具41はドリルである。X1軸モータ18と方向変換モータ43とを駆動して工具41の先端が、主軸30で把持するワークWの先端を向くようする。次に、ワーク回転モータ31を駆動してワークWを回転させつつ、Z1軸モータ13を駆動し、工具41の先端を主軸30側に移動させる。これにより、工具41が主軸30の把持するワークWの先端に当接して切削し、ワークWが穿孔される。
主軸30側のワークWの加工が終了した後、X1軸モータ18を駆動して工具主軸40を退避させる。方向変換モータ43を駆動し、工具41の先端が、背面主軸50の把持するワークWの先端を向くようにする。そして、ワーク回転モータ51を駆動してワークWを回転させつつ、Z3軸モータ22を駆動し、工具41の先端を背面主軸50側に移動させる。これにより、工具41が背面主軸50の把持するワークWの先端に当接して切削し、ワークWが穿孔される。
ここでは、主軸30に把持されたワークWと、背面主軸50に把持されたワークWとの両方の先端面に穿孔加工を行う場合の概要を示したが、1つのワークWの両端に穿孔することも可能である。
この場合には、最初、ワークWを主軸30にのみ把持させておき、ワークWの先端面の穿孔が終了した段階で、X1軸モータ18を駆動して工具主軸40を退避させ、Z3軸モーター22を駆動して、背面主軸50を主軸30側に移動させ、ワークWの先端側を把持させる。そののち、主軸30にワークWを放させ、Z3軸モーター22を駆動して所定位置に移動させ、X1軸モータ18を駆動して工具主軸40を元の加工位置に戻す。以降、前述と同様の処理を行うことにより、背面主軸50に把持されたワークWの後端面が穿孔される。
図8は、斜め穴を穿孔する加工例3の説明図である。
この場合、工具主軸40に取付けられる工具41は、ドリルである。主軸30で把持するワークWを加工する前に、方向変換モータ43を駆動して工具41が、主軸30の把持するワークWの軸に対して所望角度になるように駆動制御する。次に、Z1軸モータ13又はZ2軸モータ17を駆動し、ワークWを所定位置にする。その後、工具41を回転させつつ、Z1軸モータ13とX1軸モータ18とを同時駆動し、前記所望角度で工具41が先端からワークWに入るように、ワークWと工具41とを相対移動させる。これにより、主軸30の把持するワークWに斜めの穴が穿孔される。
背面主軸50で把持するワークWに斜めの穴を穿孔する場合には、加工する前に、方向変換モータ43を駆動して工具41が、背面主軸50の把持するワークWの軸に対して所望角度になるように駆動制御する。次に、Z3軸モータ22又はZ2軸モータ17を駆動し、ワークWを所定位置にする。その後、工具41を回転させつつ、Z3軸モータ22とX1軸モータ18とを同時駆動し、前記所望角度で工具41が先端からワークWに入るように、ワークWと工具41とを相対移動させる。これにより、背面主軸50の把持するワークWに斜めの穴が穿孔される。
図9は、内径加工する加工例4の説明図である。
主軸30が把持するワークWと背面主軸50が把持するワークWとに内径加工を施す場合、工具主軸40には、内径工具を取付け、先端面に穿孔加工を行うときと同様の処理を行う。即ち、X1軸モータ18と方向変換モータ43とを駆動し、工具41の軸と主軸30に把持されたワークWの軸とを一致させ、工具41の先端が、主軸30の把持するワークWの先端を向くようする。次に、ワーク回転モータ31を駆動してワークWを回転させつつ、Z1軸モータ13又はZ2軸モータ17を駆動し、工具41の先端を主軸30側に相対移動させる。そして、Z1軸モータ13とX1軸モータ18を駆動することにより、工具41がZ1軸方向とX1軸方向に移動するので、主軸30に把持されたワークWが、所望の内径に切削される。
主軸30側のワークWの加工が終了した後、X1軸モータ18を駆動して工具主軸40を退避させる。方向変換モータ43を駆動し、工具主軸40を180°回転させ、工具41の先端が、背面主軸50の把持するワークWの先端を向くようにする。そして、ワーク回転モータ51を駆動してワークWを回転させつつ、Z3軸モータ22を駆動し、工具41の先端を背面主軸50側に移動させる。そして、Z3軸モータ22とX1軸モータ18を駆動することにより、工具41がZ3軸方向とX1軸方向に移動するので、背面主軸50に把持されたワークWが、所望の内径に切削される。
以上の加工事例は、工具主軸40に取付けられた工具41を用いた加工である。工具41を用いることにより、他の加工も可能である。他の加工例を簡単に説明する。
図10は、ワークWを直線的にカットする加工例5の説明図である。
ワークWの一部をカットしてワークWの断面をD形にする場合には、工具主軸40に工具41としてエンドミルを取付け、工具主軸40を所定位置に移動させた後に、工具41を回転させつつ、図10のように、Y1軸モータ42を駆動してエンドミルをY1軸方向に移動させる。これにより、ワークWがカットされ、ワークWの断面がD形になる。
図11は、偏心穴を穿孔する加工例6の説明図である。
ワークWの中心軸からずれた位置を穿孔して偏心穴を形成する場合、工具主軸40に工具41としてドリルを取付け、Z2軸モータ17を駆動して工具主軸40を所定位置に移動させた後に、Y1軸モータ42を駆動して工具41の高さをワークWの中心からずらす。そして、工具41を回転させつつ、図11のように、X1軸モータ18を駆動して工具41を前進させる。これにより、ワークWに偏心穴が形成される。
図12は、ワークの端部を斜めにカットする加工例7の説明図であり、同図(a)は正面図を示し、同図(b)は側面図を示している。
ワークWの端部を斜めにカットする場合、工具主軸40には、工具41としてエンドミルを取付ける。方向変換モータ43を駆動して工具41が主軸30の把持するワークWの軸に対して所望角度になるように駆動制御する。そして、Y1軸モータ42を駆動し、工具41をY1軸方向に移動させる。これにより、工具41が斜めに、ワークWの先端部に当たり、ワークWの先端部が斜めにカットされる。
図13は、ワークにホブ加工をする加工例8の説明図であり、同図(a)は正面図を示し、同図(b)は側面図を示している。
ワークWに歯車を形成するホブ加工を行う場合、工具41としてホブを工具主軸40に取付ける。次に、工具主軸40を所定位置に移動した後に、方向変換モータ43を駆動して工具41の向きを所定角度に駆動制御する。工具41の回転とワークWの回転とを所定の回転比で同期制御させつつ、Z1軸モータ13を駆動してワークWを前進させる。これにより、ワークWが工具41により切削されながら移動し、ワークWに歯車が形成される。
図14は、工具41と工具61により、ワークの外径加工を行う加工例9の説明図である。
工具主軸40の工具41と刃物台60に取付けられた工具61によって、ワークWの外径加工を行う場合、工具主軸40には、工具41として外径工具が取付けられ、工具61として外径工具が選択される。主軸30及び背面主軸50と工具主軸40とを、工具41のみでワークWの外径加工を行う場合と同様に制御する。
一方、刃物台60に対しては、選択した工具61がワークWの外周面に対向するように、回転体部62を回転させておき、X2軸モータ25を駆動し、工具61でワークWの外周を切削させる。これにより、ワークWの外径が工具41,61によって加工される。工具41と工具61とは、ワークWを間において対向してワークWを切削するので、ワークWがぶれることが防止され、精度の高い加工が可能である。また、ワークWの外径が同時に2本の工具41,61で加工されるので、総加工時間も短縮される。
図15は、工具41と工具61とにより、ワークに穿孔加工を行う加工例10の説明図である。
ワークWに穿孔加工をする場合、工具主軸40の工具41としてドリルを取付け、刃物台60の工具61としてドリルを選択し、回転体部62を回転させて選択した工具61をワークWに対向させる。そして、Z2軸モータ17とZ4軸モータ24とを駆動して、工具41及び工具61を所定位置に移動させる。その後、工具41及び工具61を回転させつつ、X1軸モータ18とX2軸モータ25とを駆動し、ワークWに向けて、工具41及び工具61を前進させる。
前進することにより、工具41及び工具61がワークWに当接して切削する。これにより、ワークWに対称に穴が形成される。工具41と工具61とは、ワークWを間において対向してワークWを切削するので、ワークWがぶれることが防止され、精度の高い加工が可能である。また、ワークWが同時に2本の工具41,61で加工されるので、工具41のみで加工する場合よりも、総加工時間が短縮される。
図16は、2本のワークを同時に加工する加工例11の説明図である。
例えば主軸30で把持するワークWの先端に、偏心した穴を空ける加工を行い、同時に、背面主軸50で把持するワークWに外径加工を行う場合、工具主軸40の工具41として外径工具を取付ける。X1軸モータ18を駆動して工具41を所定位置に前進させる。刃物台60の工具61としては、ドリルを選択し、回転体部62を回転させると共にX2軸モータ25を駆動し、選択した工具61の先端が主軸30で把持するワークWの加工位置に向くように調整する。そして、工具61を回転させつつ、Z1軸モータ13を駆動して主軸30のワークWを前進させる。
また、これと同時に、ワーク回転モータ51を駆動して背面主軸50側のワークWを回転させつつ、Z3軸モータ22を駆動して背面主軸50側のワークWを前進させる。これにより、主軸30側のワークWの先端には、偏心した穴が形成され、背面主軸50側のワークWの外周面が切削される。
図17は、2本のワークを同時に加工する加工例12の説明図である。
主軸30で把持するワークWと背面主軸50で把持するワークWとに、例えば外径加工を行う場合、工具主軸40に取付けた工具41と刃物台60の工具61で同時に一方のワークWを加工してもよいが、工具41と工具61とでそれぞれ別のワークWを加工させてもよい。
図18は、スパナがけ部を形成する加工例13の説明図である。
ワークWにスパナがけ部を形成する場合、工具主軸40に工具41としてエンドミルを取付け、刃物台60で工具61としてエンドミルを選択させる。各工具41,61を所定位置に移動させた後、Y1軸方向モータ42及びY2軸モータ63を駆動し、各工具41,61をそれぞれY1軸方向,Y2軸方向に移動させる。これによりワークWの両側が切削されてスパナがけ部が形成される。
図19は、偏心穴を形成する加工例14の説明図である。
ワークWに2カ所の偏心穴を形成する場合、工具主軸40に工具41としてドリルを取付け、刃物台60で工具61としてドリルを選択させる。各工具41,61をZ2軸方向及びZ4軸方向の所定位置に移動させた後、Y1軸方向モータ42及びY2軸モータ63を駆動して、各工具41,61がY1軸方向及びY2軸方向の所定位置になるように位置調整する。次に、X1軸モータ18とX2軸モータ25を駆動して工具41,61を前進させる。これにより、ワークWが穿孔され、2つの偏心穴が同時に形成される。
以上のように、本実施形態の旋盤では、次のような作用効果を奏する。
(1) 主軸30と、工具主軸40と、背面主軸50と、ガイドブッシュ90とを備えるので、長尺のワークWに加工する際にも、ワークWが撓むことが防止され、精度の高い加工が可能になる。また、ワークWの先端面の加工も可能になるばかりでなく、主軸30で把持したワークWを突切りした後に、主軸30及び背面主軸50間でワークWの移し替えを行うことにより、ワークWの両端面の加工も可能になる。よって、短尺から長尺までの種々の長さのワークに対して、両端を含み、複雑形状に全加工できる。
(2) 主軸30で把持したワークWと、背面主軸50で把持したワークWの両方を、機械を停止せずに加工できる。
(3) 主軸30で把持したワークWと、背面主軸50で把持したワークWの両方を、共通の工具41で加工できるので、同じ種類の工具41を複数用意する必要がない。
(4) 工具マガジン70を備えるので、複数種類の工具41を事前に用意しておくことが可能である。
(5) 工具交換機構80を備えているので、機械を停止することなく、工具41の交換が可能である。
(6) 工具主軸40をY1軸方向に移動させることができるので、工具41の位置を3次元的に自在に移動させることが可能であり、ワークWに偏心穴をあけたり、斜め穴をあける加工や、ホブ加工等の複雑な加工が可能になる。
(7) 刃物台60を設けたので、例えば工具主軸40の工具41で、加工を行っている間に、次に使用する工具を、刃物台60側で準備することが可能になる。逆に、例えば刃物台60の工具61で、加工を行っている間に、次に使用する工具を、工具主軸40側で準備することが可能になる。これにより、工具交換のアイドル時間を短縮できる。
(8) 工具41と工具61とを同時に用いて加工できるので、加工時間を短縮できる。
(9) 工具41と工具61とを同時に用いて加工できるので、一方を粗加工、他方を仕上用として使用することができる。
(10) 工具41と工具61とを同時に用いて加工できるので、ワークW上の異なる場所の加工が同時にできる。
(11) 背面主軸50には、ワークWが貫通する穴が形成されているので、さらに長尺のワークWも取付けられる。これにより、機械を大型化する必要がなくなる。
(12) 工具主軸40は、工具主軸台40Aに支持されている。そして、工具主軸台40Aの一端が、取付け板40kを介してスピンドル40iに取付けられ、工具主軸台40Aの他端が、ホルダ40nを介してコラム40cに支持されている。スピンドル40iは、ハウジング40g、ブラケット40h、モータブラケット40eを介してコラム40cに支持されている。則ち、工具主軸台40Aは、コラム40cに両持ちで支持されている。このように、工具主軸台40Aを両持ちで支持するため、工具41をワークWに当接したときの応力に対し、抗性が向上し、加工精度を向上できる。
(13) Y1軸モータ42により、工具主軸台40A及び工具主軸40の高さを調整し、ワークWの中心線と工具41の中心線の高さをほぼ同じに設定し、工具41をワークWに当接させることにより、次のような利点が得られる。
図20(a),(b)は、ワークWと工具主軸台40Aの高さの説明図である。
機械が稼働すること等により、機械の温度が上昇すると、主軸台30A等が熱膨張し、主軸30及びワークWの高さが高くなる。これに対し、工具41及び工具主軸40を支持するベース40a、コラム40c等も同様に熱膨張し、工具主軸40、工具41の高さが高くなる。例えば図20(a)のように、工具主軸台40AをワークWの上方で支持してワークWを上方から加工する場合には、熱膨張による工具主軸40の高さの変位量が、熱膨張によるワークWの高さの変位量
よりも大きい。そのため、工具主軸40とワークWの相対位置が変化し、加工精度が低下する。
これに対し、本実施形態では、図20(b)のように、工具41をワークWと同じの高さにして加工するので、熱膨張による工具41の変位量は、熱膨張によるワークWの変位量と同じになる。よって、機械の温度が変化しても、工具41とワークWの相対位置が変化しないので、加工精度を維持できる。
なお、本発明は上記実施形態にかかわらず、種々の変形が可能である。その変形例としては、例えば次のようなものがある。
(i) 上記実施形態では、X1,X2軸方向と、Z1,Z2,Z3,Z4軸方向と、Y1,Y2軸方向とを、互いに垂直であるものとしているが、方向が異なれば垂直になっている必要はない。
(ii) 上記実施形態では、X1軸方向とX2軸方向とを平行とし、Y1軸方向とY2軸方向とを平行としているが、これらを平行にしなくてもよい。例えば、工具主軸40を斜め上方から下降させて工具41を前進させ、これとは対称に、刃物台60を斜め上方から下降させて工具61を前進させる構成にしてもよい。
(iii) ワークWに対する加工は、工具主軸40或いは刃物台60の位置を固定し、主軸30或いは背面主軸50を移動して行ってもよいし、逆に、主軸30或いは背面主軸50の位置を固定して工具主軸40或いは刃物台60を移動して行ってもよい。
(iv) 工具主軸台40Aを、刃物台60のように回転体部62と工具61とを持つ構成とし、これをZ2軸方向及びX1軸方向を含む平面内で回転させるようにしてもよい。
本発明の実施形態に係る旋盤の正面図である。 旋盤の平面図である。 図1中の工具主軸と刃物台の構成例を示す図である。 工具主軸台を動かす機構の概要を示す図である。 刃物台の変形例を示す図である。 加工例1の説明図である。 加工例2の説明図である。 加工例3の説明図である。 加工例4の説明図である。 加工例5の説明図である。 加工例6の説明図である。 加工例7の説明図である。 加工例8の説明図である。 加工例9の説明図である。 加工例10の説明図である。 加工例11の説明図である。 加工例12の説明図である。 加工例13の説明図である。 加工例14の説明図である。 ワーク及び工具主軸の高さの説明図である。
符号の説明
10 ベッド
13 Z1軸モータ
17 Z2軸モータ
18 X1軸モータ
22 Z3軸モータ
24 Z4軸モータ
25 X2軸モータ
30 主軸
31,51 ワーク回転モータ
40 工具主軸
42 Y1軸モータ
43 方向変換モータ
50 背面主軸
60 刃物台
70 工具マガジン
80 工具交換機構
90 ガイドブッシュ

Claims (5)

  1. ワークを回転軸が水平になるように把持して回転させる機能を持つと共に、該ワークの回転軸に平行なZ方向に往復移動可能な主軸と、
    前記主軸に対向して配置されると共に、前記主軸で把持したワークが貫通する穴が形成され、該ワークを把持して回転させる機能を持ち、前記Z方向に往復移動可能な背面主軸と、
    記Z方向に往復移動可能であると共に該Z方向とは異なる方向のX方向に往復移動可能であり、前記ワークを加工するための工具を回転可能にかつ該工具の中心線の高さと前記ワークの中心線の高さとが等しくなるように把持し、かつ該Z方向及び該X方向を含むXZ平面内で回転して該工具の向きを変化させることが可能な工具主軸と、
    前記主軸から突出した前記ワークを回転可能に支持すると共に前記回転軸の方向に摺動させるガイドブッシュと、
    任意数の前記工具を収容する工具マガジンと、
    すでに前記工具主軸に取付けられている工具を、前記工具マガジンに収容されている工具に交換する工具交換手段と、
    前記工具主軸の一端部に取り付けられると共に前記Z方向及びX方向とは異なる方向のY方向に移動可能な支持体に回転可能に支持された第1軸、及び該一端部とは異なる該工具主軸の他端部に前記第1軸と同軸に取り付けられると共に前記Y方向に移動しない支持体に形成された穴に回転可能かつY方向に摺動可能に支持された第2軸を有し、該第1軸と第2軸とにより前記工具主軸を支持すると共に該第1軸と第2軸とが回転することより前記工具主軸を前記XZ平面内で回転させる両持ち手段とを備え、
    前記工具主軸は、前記Y方向に往復移動可能である
    ことを特徴とする旋盤。
  2. 任意数の工具を搭載し、前記工具主軸とは独立して移動し、該搭載した工具を用いて前記主軸又は前記背面主軸の把持するワークを加工する刃物台を備える、
    ことを特徴とする請求項に記載の旋盤。
  3. 前記刃物台は、前記X方向に往復移動可能であることを特徴とする請求項に記載の旋盤。
  4. 前記刃物台は、前記Z方向に往復移動可能であることを特徴とする請求項又はに記載の旋盤。
  5. 前記刃物台は、前記Y方向に往復移動可能であることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の旋盤。
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