本発明は、脚部の運動をバランスよくサポートする股付き衣類を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の股付き衣類は、少なくとも下半身の一部を被覆する股付き衣類であって、帯状に形成される緊締部は、大腿部の前側に対応する前側部分において、当該前側部分の外側上方から内側下方にかけて斜めに形成される大腿部前側緊締部と、大腿部の後側に対応する後側部分において、当該後側部分の外側上方から内側下方にかけて斜めに形成される大腿部後側緊締部とを少なくとも有し、前記大腿部前側緊締部と前記大腿部後側緊締部とは、それぞれの上部においては、大腿外側上方で連結し、それぞれの下部においては、大腿内側下方で連結していることを特徴とする。
着用者の大腿部が、緊締力の強い大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部とで挟まれるため、大腿部の前後にある筋肉をバランスよくサポートでき、脚部の内旋・外旋運動および内転・外転運動がしやすくなる。
本発明の股付き衣類は、大腿部の前側に対応する前側部分において、当該前側部分の外側上方から内側下方にかけて斜めに形成される大腿部前側緊締部と、大腿部の後側に対応する後側部分において、当該後側部分の外側上方から内側下方にかけて斜めに形成される大腿部後側緊締部とを少なくとも有し、大腿部前側緊締部と前記大腿部後側緊締部とは、それぞれの上部においては、大腿外側上方で連結し、それぞれの下部においては、大腿内側下方で連結している。
これによって、膝関節と股関節双方に緊締力をかけることができ、膝関節と股関節双方を安定させ、サポートすることができる。
本願明細書で、大腿部内側とは大腿部の内側の上方または下方をいい、大腿部外側とは大腿部の外側の上方または下方をいい、上記両方で連なるとは、大腿部内側上方と大腿部外側下方、または大腿部内側下方と大腿部外側上方で連なることをいう(以下、同様)。なお、本発明の股付き衣類における緊締部の一部が、大転子に対応する部分に形成されることが好ましい。
本発明の股付き衣類において、上記緊締部は、少なくとも大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部のいずれか一方の途中から、大腿部の内側下方または大腿部の外側下方にかけて斜めに形成される大腿下部緊締部をさらに備えることが好ましい。これにより、大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部のいずれか一方または両方にテンションをかけることができるため、大腿部前側緊締部および大腿部後側緊締部によるサポート効果を向上させることができる。また、この場合において、大腿下部緊締部の一部が膝の内側または膝の外側に対応する部分に形成されるか、大腿下部緊締部が大腿部前側緊締部または大腿部後側緊締部と膝の内側または膝の外側に対応する部分に形成されている他の緊締部とを連結することが好ましい。これにより、膝のサポート効果を向上させることができる。さらに、この場合における大腿下部緊締部は、大腿部における大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部のうち少なくともいずれか一方の長手方向の中央付近から形成されることが好ましい。これにより、各緊締部同士にテンションがよりかかりやすくなる。
本発明の股付き衣類において、上記緊締部は、少なくとも大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部のいずれか一方の途中から、大腿部の内側上方または大腿部の外側上方にかけて斜めに形成される大腿上部緊締部をさらに備えることが好ましい。これにより、大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部のいずれか一方または両方にテンションをかけることができるため、大腿部前側緊締部および大腿部後側緊締部によるサポート効果を向上させることができる。また、この場合における大腿上部緊締部は、大腿部における大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部のうち少なくともいずれか一方の長手方向の中央付近から形成されることが好ましい。これにより、各緊締部同士にテンションがよりかかりやすくなる。
また、本発明の股付き衣類においては、緊締部は、下腿部の前側に対応する前側部分において、当該前側部分の上方から下方にかけて斜めに形成される下腿部前側緊締部をさらに有する。
このような下腿部前側緊締部を設けることにより、長腓骨筋の動きがサポートされる。
本発明の股付き衣類における下腿部前側緊締部および下腿部後側緊締部は、前側または後側のいずれか一方から見て、上下方向に対してそれぞれが反対の方向に傾いていることが好ましい。また、本発明の股付き衣類における下腿部前側緊締部および下腿部後側緊締部は、前側または後側のいずれか一方から見て、上下方向に対してそれぞれが同じ方向に傾いていてもよく、この場合には、下腿部前側緊締部と下腿部後側緊締部が、下腿部の内側と下腿部の外側のうち少なくともいずれか一方で連なっていることが好ましく、さらに、下腿部内側と下腿部外側の両方で連なっていることがより好ましい。これにより、各緊締部同士にテンションがよりかかりやすくなる。
本発明の股付き衣類は、緊締部の一部が、膝の内側と膝の外側のうち少なくともいずれか一方に対応する部分に形成されることが好ましい。このようにすれば、膝の内側と膝の外側のうち少なくともいずれか一方が緊締部の一部によってサポートされるため、膝の左右方向への動きが抑えられ、脚部の前後方向への動きが安定する。それゆえ、膝関節の屈曲・伸展運動がしやすくなる。ここで、膝の上側、膝の下側、膝の内側、膝の外側が示す範囲は、膝関節内における位置、または膝蓋骨の外周から数cm以内の位置をいい、緊締部によって直接膝関節を安定させる程度に、近い位置をいう(以下、同様)。したがって、緊締部の少なくとも一部が、この位置に当接するように形成されればよい。
本発明の股付き衣類における緊締部は、膝の内側に対応する部分および膝の外側に対応する部分から膝の下側に対応する部分にかけて形成される膝下緊締部をさらに有し、膝下緊締部の上辺縁は、下腿部の下部方向に窪み状に形成されることが好ましい。このようにすれば、着用者の膝の内側、外側および下側が、緊締力の強い膝下緊締部によりしっかりとサポートされるため、膝を安定させることができ、膝の無駄な動きが抑えられる。また、膝上または膝下に緊締部が当接しないことにより、膝の自由度を確保することができる。
本発明の股付き衣類における緊締部は、膝の内側に対応する部分および膝の外側に対応する部分から膝の上側に対応する部分にかけて形成される膝上緊締部をさらに有し、膝上緊締部の下辺縁は、大腿部の上部方向に窪み状に形成されることが好ましい。これにより膝の安定性が向上する。
本発明の股付き衣類における緊締部は、腰部の左右両側部に対応する部分に形成される腰部緊締部と、腹部に対応する部分に形成される腹部緊締部とをさらに備え、腹部緊締部は、左右にある腰部緊締部を連結することが好ましい。これにより、腰部の左右両側部に当接する腰部緊締部を、身体中心方向に引っ張ることができ、股関節および骨盤を安定させることができる。
本発明の股付き衣類における大腿部前側緊締部は、大腿部の内側下方から、大腿部前面の上方を通り、大転子にかけて形成されるとともに、大腿部の上部方向に窪み状に湾曲して形成されることが好ましい。これにより、大腿前面の筋肉収縮をサポートすることができる。
本発明の股付き衣類において、膝上に対応する部分に形成される裾部を有し、大腿部前側緊締部の下端と大腿部後側緊締部の下端のうち少なくともいずれか一方は、裾部に位置することが好ましく、さらに、大腿部前側緊締部の上方と大腿部後側緊締部の上方とが腰部の側部に対応する部分において連結され、大腿部前側緊締部の下方と大腿部後側緊締部の下方とが大腿部の内側の下方に対応する部分において連結されることが好ましい。このように連結することで、大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部には互いにテンションがかかり、大腿部の筋肉へのサポート効果が増すとともに、股関節をサポートすることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。なお、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
まず、実施形態の説明に先立ち、図1および図2を参照し、本発明の機能を説明する際に用いる筋肉や骨格の配置について説明する。図1は、人体下肢部を前側から見たときの筋肉および骨格を表す図であり、図2は、人体下肢部を後側から見たときの筋肉および骨格を表す図である。図1に示すように、大腿部の前側には、長内転筋102、恥骨筋103および縫工筋104が配置され、下腿部の前側には、長腓骨筋108、前脛骨筋109、長指伸筋110、腓腹筋111およびヒラメ筋112が配置されている。また、図2に示すように、大腿部の後側には、大内転筋101、半腱様筋105、大腿二頭筋106および半膜様筋107が配置され、下腿部の後側には、腓腹筋111およびヒラメ筋112が配置されている。また、図1および図2には大転子113が示されている。なお、これらは代表的な筋肉や骨格を示したものであり、本発明においてサポートする筋肉や骨格を、これらに限定するものではない。
次に、図3および図4を参照して、本実施形態におけるスポーツ用スパッツ(スポーツ用股付き衣類)について説明する。図3は、スポーツ用スパッツ1の正面図であり、図4は、スポーツ用スパッツ1の背面図である。
図示のように、スポーツ用スパッツ1は、腰部から下腿部までを被覆するスパッツであり、帯状に形成された緊締部2を有する。このスポーツ用スパッツ1の本体および緊締部2は、伸縮性を有する素材により構成されている。伸縮性を有する素材としては、例えば、パワーネット、サテンネット、トリコネット、ツーウェイトリコットまたはツーウェイラッセルがある。本体および緊締部2における素材について、具体例を挙げて説明すると、例えば、本体布にはツーウェイトリコット(56dtexのポリエステル糸混率82%、55dtexのポリウレタン糸混率18%)を使用し、緊締部には、パワーネット(55dtexのナイロン糸混率82%、310dtexのポリウレタン糸混率18%)を使用する。このように、緊締部2は、スポーツ用スパッツ1の本体部分と同様に伸縮性を有する素材により構成されるが、生地の緊締力は、緊締部2の方が強い点に本発明の特徴がある。なお、本体布の素材は、二方向に伸びを有するものが好ましい。
緊締部の幅は、形成される部位や衣類のサイズによって異なるため、一概に数値で規定することは困難ではあるが、一般的には平均して2cm以上に形成することが好ましく、より好ましくは平均して3cm以上に形成することが好ましい。また、特に重点的にサポートする部位に対応する緊締部の幅は5cm以上に形成することが好ましい。具体的に説明すると、例えば、ふくらはぎに当接する緊締部の幅は2〜6cm程度にし、内膝や外膝に当接する緊締部の幅は3cm以上(より好ましくは5〜10cm程度)にすることが好ましい。また、大腿に当接する緊締部の幅は3〜8cm程度にし、大転子および腰部に当接する緊締部の幅は4cm以上(場合により8〜15cm程度)にすることが好ましい。さらに、部分的に20cm程度の広幅部分を形成することとしてもよい。なお、これらの数値は日本人男性のMサイズを基準とした場合の一例である(以下、同様)。また、上述した緊締部の幅に関しては、以下に説明する他の実施例においても同様である。
なお、緊締部2は、連続した布で形成してもよいが、複数の布で形成してもよい。また、緊締部2の形成方法としては、二方向への伸びを有する本体布の外側に緊締力の強い布を重ねることが好ましいが、本体布の内側に重ねてもよい。また、これらの緊締部2の形成方法に関しては、以下に説明する他の実施例においても同様である。
このような緊締部2は、例えば、大転子と膝の内側側面との間、大腿内側上方と膝の外側側面との間、または膝の側面とその逆側の足首側面との間をより短い距離で結ぶように形成すると、この緊締部2に当接する筋肉に対して、よりテンションがかかり易くなる。なお、例えば、上述した緊締部は、直線または直線に近い形状であれば、より短い距離で結ぶことができるが、必ずしも直線で形成される必要はなく、例えば、両点を支点にして、その最短ラインである直線を上側に膨らませた曲線に形成してもよく、下側に膨らませた曲線に形成してもよい。また、上述した緊締部2をより短い距離で結ぶことに関しては、以下に説明する他の実施例においても同様である。
図3に示すように、緊締部2は、大腿部の前側に対応する部分1aに、大腿部前側緊締部2bを有し、下腿部の前側に対応する部分1bに、下腿部前側緊締部2e,2fを有する。また、図4に示すように、緊締部2は、大腿部の後側に対応する部分1cに、大腿部後側緊締部2c,2dを有する。以下、各緊締部の特徴について説明する。
図3に示される大腿部前側緊締部2bは、大腿部の前側に対応する部分1aにおいて、当該部分1aの外側の上方から内側の下方にかけて斜めに形成されている。具体的に説明すると、大腿部前側緊締部2bの上部は、スパッツ1の大転子113に対応する部分に位置し、大腿部前側緊締部2bの下部は、膝関節の内側に対応する部分に位置する。大腿部前側緊締部2bは、上部の大転子113に対応する部分と、下部の膝関節の内側対応する部分にかけて、ほぼ直線状に形成されて大腿前面に当接している。このように当接することにより、その上部と下部との間で大腿部の前面の筋肉が束ねられる。なお、大腿部前側緊締部2bは、大腿部前面において、大腿部の内側下方から外側上方、好ましくは内膝から大転子に至る部分に当接されていれば、直線形状であっても、若干上下に湾曲した形状であってもよい。また、大腿部前側緊締部2bの大転子113から上の部分は、大転子113から腰の側部に沿って上方向に延びて形成されている。
図3に示される下腿部前側緊締部2eは、下腿部の前側に対応する部分1bにおいて、当該部分1bの内側の上方から外側の下方にかけて斜めに形成されている。具体的に説明すると、下腿部前側緊締部2eの上部は、膝関節の内側に対応する部分に位置し、下腿部前側緊締部2eの下部は、足首の外側に対応する裾部分に位置する。下腿部前側緊締部2eは、その上部と下部との間で、長腓骨筋108をサポートし得るように形成される。このような下腿部前側緊締部2eを設けることにより、長腓骨筋108の動きがサポートされる。なお、下腿部前側緊締部2eの上部は、必ずしも膝関節の内側に対応する部分に位置する必要はなく、少なくとも下腿部の前側表面上における中心付近よりも内側(股側)かつ上側に達していればよい。また、下腿部前側緊締部2eの上部と下部との間に形成される帯状部分の下部は、必ずしも下腿部の前側にのみ形成されている必要はなく、緊締部の大部分が下腿部の前側にあるならば、下腿部の後側に対応する部分1dにまで、その一部が連続して形成されてもよい(図4参照)。
図3に示される下腿部前側緊締部2fは、下腿部の前側に対応する部分1bにおいて、当該部分1bの外側の上方から内側の下方にかけて斜めに形成されている。具体的に説明すると、下腿部前側緊締部2fの上部は、膝関節の外側に対応する部分に位置し、下腿部前側緊締部2fの下部は、足首の内側に対応する裾部分に位置する。下腿部前側緊締部2fは、その上部と下部との間で、前脛骨筋109、長母指伸筋(不図示)、長指伸筋110および長腓骨筋108をサポートし得るように形成される。このような下腿部前側緊締部2fを設けることにより、前脛骨筋109、長母指伸筋、長指伸筋110および長腓骨筋108の動きがサポートされる。なお、下腿部前側緊締部2fの上部と下部との間に形成される帯状部分の下部は、必ずしも下腿部の前側にのみ形成されている必要はなく、下腿部の後側に対応する部分1dに、その一部が形成されてもよい(図4参照)。
図3に示すように下腿部前側緊締部2eと下腿部前側緊締部2fは、膝の下側で交差し、上辺縁がV字状に形成されている。また、図3に示すように膝の周辺に対応する部分において、膝の内側部分には、大腿部前側緊締部2bおよび下腿部前側緊締部2eが形成され、膝の外側部分には、下腿部前側緊締部2fおよび大腿部後側緊締部2d(図4参照)が形成されるが、膝の上方部分には、緊締部が形成されない。このように、膝を左右両側面および下方の三方向からサポートすることにより膝靭帯が的確にサポートされ、膝関節の屈伸・伸展運動がしやすくなる。また、膝の上方部分に緊締部を形成しないことで膝の運動追従性を確保することができる。
また、膝の周辺に対応する部分に形成される各緊締部の幅は3〜10cmであることが好ましい。この範囲の幅であれば、一定の幅により形成されてもよいし、異なる幅により形成されていてもよい。なお、異なる幅により形成する場合には、靭帯の弱い内膝に当接する部分の幅を他の部分の幅よりも、特に外膝や膝下の幅よりも広くすることが好ましい。また、膝の周辺に対応する部分に形成される各緊締部の幅に関しては、以下に説明する他の実施例においても同様である。
なお、上述した図3に示す緊締部の他に、次に記載する二つの緊締部をさらに形成することとしてもよい。一つ目の緊締部は、図3に示す下腿部前側緊締部2eの内膝部分から、ふくらはぎの内側面を通り、下腿部前側緊締部2fのふくらはぎ内側面当接箇所の上部にかけて形成されるものである。二つ目の緊締部は、図3に示す下腿部前側緊締部2fの外膝部分から、ふくらはぎの外側面を通り、下腿部前側緊締部2eのふくらはぎ外側面当接箇所の上部にかけて形成されるものである。これら二つの緊締部は、両方とも形成することとしてもよいし、いずれか一方のみを形成することとしてもよい。このような緊締部を形成することによって、膝の内側、外側および下側に当接している緊締部にテンションがかかりやすくなり、膝をサポートする効果が高められる。さらに、これらの緊締部が、ふくらはぎの側面に当接することにより、ふくらはぎをサポートすることができる。また、これら二つの緊締部は、直線に形成する場合が最もテンションがかかり易くなり好適であるが、多少湾曲していてもよい。また、これら二つの緊締部は、当該各緊締部に連結された他の緊締部との間にテンションがかかればよいため、他の緊締部よりも幅細に形成してもよい。
図4に示される大腿部後側緊締部2cは、大腿部の後側に対応する部分1cにおいて、当該部分1cの外側の上方から内側の下方にかけて斜めに形成されている。具体的に説明すると、大腿部後側緊締部2cの上部は、大転子113に対応する部分に位置し、大腿部後側緊締部2cの下部は、膝関節の内側に対応する部分に位置する。大腿部後側緊締部2cは、その上部と下部との間で、半腱様筋105をサポートし得るように形成される。このような大腿部後側緊締部2cを設けることにより、半腱様筋105の動きがサポートされる。なお、大腿部後側緊締部2cの上部は、必ずしも大転子113に対応する部分に位置する必要はなく、少なくとも大腿部上部の後側表面上における中心付近を超えていればよい。また、大腿部後側緊締部2cの大転子113から上の部分は、大転子113から腰部の側部に当接し、後中心の上部に向けて形成されるとともに、ヒップの膨らみの上部(腰部上部)に当接し、左右にある大腿部後側緊締部2cの端部がウェストライン(腰部上部)の後中心付近で連結して形成される。なお、大腿部後側緊締部2cは、腰部の側部において図3に示す大腿部前側緊締部2bと連結してもよい。このように大腿部後側緊締部2cと大腿部前側緊締部2bが腰部の側部で連結することにより、互いにテンションがかかり、大腿部の筋肉へのサポート効果が増すとともに、股関節をサポートすることができる。また、大腿部後側緊締部2cまたは大腿部前側緊締部2bが、大転子113を含めた腰部の側部に当接することにより、股関節をサポートすることができる。さらに、左右の大腿部後側緊締部2cが腰部の後中心で連結するか、左右の大腿部前側緊締部2bが腹部の前中心で連結することにより、股関節へのサポート効果がさらに増す。左右の大腿部後側緊締部2cを腰部の後中心で連結する場合には、連結箇所を腰部上方に設けることが好ましい。
図4に示される大腿部後側緊締部2dは、大腿部の後側に対応する部分1cにおいて、当該部分1cの内側の上方から外側の下方にかけて斜めに形成されている。具体的に説明すると、大腿部後側緊締部2dの上部は、坐骨結合点付近(臀裂下方部位)に対応する部分に位置し、大腿部後側緊締部2dの下部は、膝関節の外側に対応する部分に位置する。大腿部後側緊締部2dは、その上部と下部との間で、大腿二頭筋106、半膜様筋107および半腱様筋105をサポートし得るように形成される。このような大腿部後側緊締部2dを設けることにより、大腿二頭筋106、半膜様筋107および半腱様筋105の動きがサポートされる。また、左右の大腿部にある大腿部後側緊締部2dの上端は、坐骨結合点付近で連結されている。これにより、左右にある大腿部後側緊締部2dには相互にテンションがかかることになる。なお、大腿部後側緊締部2dの上部は、大腿部後側の内側上部(股下)に位置してもよい。また、大腿部後側緊締部2dの上部は、臀裂に当接してウェストラインに至ることとしてもよいし、臀裂に当接して腰部上方の後中心で他の緊締部と連結することとしてもよい。これにより、大腿部後側緊締部2dには、よりテンションがかかることとなり、筋肉へのサポート効果が向上する。
図4に示すように大腿部後側緊締部2cおよび大腿部後側緊締部2dは、臀裂上方には形成されていないため、腰部の伸びが確保される。したがって、例えば、着用者が前屈動作を行った場合であっても、衣類がその動作に容易に追随することが可能となる。
図3および図4に示すように、大腿部前側緊締部2bと大腿部後側緊締部2cは、それぞれの上部においては大腿外側上方から大転子を含む部分で連結し、それぞれの下部においては大腿内側下方から膝の内側で連結している。この場合は、大腿外側上方である股関節側部、および大腿内側下方である内膝のそれぞれにおいて、大腿部の前後に当接する緊締部が連結している。すなわち、大腿部の内側と外側の両方において大腿部の前後に当接する緊締部が連結している。これによって、膝関節と股関節双方に緊締力をかけることができ、膝関節と股関節双方を安定させ、サポートすることができる。さらに、この膝の内側においては、下腿部前側緊締部2eの上部が、上述した大腿部前側緊締部2bおよび大腿部後側緊締部2cに連結している。また、大腿部後側緊締部2dの下部と下腿部前側緊締部2eの上部は、膝の外側で連結している。なお、大腿部後側緊締部2dと大腿部後側緊締部2cは、必ずしも両方形成する必要はなく、いずれか一方の緊締部のみを形成することとしてもよい。また、大腿部後側緊締部2dと大腿部後側緊締部2cのうちのいずれか一方の緊締部については、両緊締部の交差部分から下側の部分のみを形成することとしてもよい。また、大腿部前側緊締部2bと大腿部後側緊締部2cのみを形成することとしてもよい。この場合に、大腿部前側緊締部2bと大腿部後側緊締部2cを、内膝と大転子で連結させることにより、内膝と腰側部を安定させることができる。また、大腿部前側緊締部2bと大腿部後側緊締部2dのみを形成することとしてもよい。この場合に、後述する膝下緊締部をさらに形成することにより、膝下緊締部および外膝・内膝に当接する部分を大腿の前後で逆方向に引っ張ることができ、膝を安定させることができる。また、大腿部前側緊締部2bを、膝のすぐ上の部分に当接しないように形成することで、膝の自由度を確保することができる。
このように、大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部とで大腿部を前後からサポートすることによって股関節や膝関節における内旋・外旋運動または内転・外転運動がしやすくなる。また、緊締部の一部で膝を左右および下方からサポートすることによって膝が安定し、膝関節における屈曲・伸展運動がしやすくなる。それゆえ、脚部を使う運動時の筋肉の働きをサポートするのに好適なスポーツ用スパッツを提供することが可能となる。
また、大腿部前側緊締部、大腿部後側緊締部および下腿部前側緊締部は、腰、大腿、膝および下腿のいずれかにおいて互いに連結(連続)し、腰部の後中心の上方と下方において左右の大腿部後側緊締部が連結している。これにより、各緊締部が、腰部の後中心(背骨と骨盤の接触する箇所)を支点にしてテンションをかける構造となるため、身体の芯を中心にして下半身にテンションがかかるようになる。したがって、腰、大腿、膝および下腿の筋肉と関節をバランス良くサポートすることができる。
なお、図3および図4に示すスポーツ用スパッツ1においては、大腿部の前側に1本の緊締部2bを設け、大腿部の後側に2本の緊締部2c,2dを設けている。このように大腿部の後側の緊締部を、大腿部の前側の緊締部よりも多く設けることにより、大腿部を前後に動作させる際のサポート効果を向上させることができる。このような効果は、以下に説明する他の実施例においても同様に得られる。
次に、図5〜図8を参照して、本実施形態におけるスポーツ用スパッツの緊締部2の変形例について説明する。
図5は、スポーツ用スパッツ1の正面図であり、大腿部の前側に対応する部分1aに形成される大腿部前側緊締部2aを表したものである。図5に示される大腿部前側緊締部2aは、大腿部の前側に対応する部分1aにおいて、当該部分1aの内側の上方から外側の下方にかけて斜めに形成されている。具体的に説明すると、大腿部前側緊締部2aの上部は、股下大腿内側(大腿内側上方)に対応する部分に位置し、大腿部前側緊締部2aの下部は、膝関節の外側に対応する部分に位置する。ここで、大腿部の筋肉を、その上部から下部にかけて斜めに束ねることにより、その間にある筋肉における収縮運動がサポートされる。したがって、大腿部前側緊締部2aを、大腿部の上部から下部にかけて斜めに形成し、恥骨筋103、短内転筋(不図示)、長内転筋102および大内転筋101をサポートし得るように形成することで、恥骨筋103、短内転筋、長内転筋102および大内転筋101の動きがサポートされることとなる。なお、大腿部前側緊締部2aの下部は、必ずしも膝関節の外側に対応する部分に位置する必要はなく、少なくとも大腿部の前側における上下方向の中心ラインよりも外側(脇側)、すなわち、大腿外側下部に達していればよい。
図6は、スポーツ用スパッツ1の背面図であり、下腿部の後側に対応する部分1dに形成される下腿部後側緊締部2gを表したものである。図6に示される下腿部後側緊締部2gは、下腿部の後側に対応する部分1dにおいて、当該部分1dの外側の上方から内側の下方にかけて斜めに形成されている。具体的に説明すると、下腿部後側緊締部2gの上部は、膝関節の外側あるいは膝関節外側より下方に対応する部分に位置し、下腿部後側緊締部2gの下部は、足首の内側に対応する裾部分に位置する。下腿部後側緊締部2gは、その上部と下部との間で、腓腹筋111、後脛骨筋(不図示)およびヒラメ筋112をサポートし得るように形成される。このような下腿部後側緊締部2gを設けることにより、腓腹筋111、後脛骨筋およびヒラメ筋112の動きがサポートされる。なお、下腿部後側緊締部2gの上部と下部との間に形成される帯状部分は、必ずしも下腿部の後側にのみ形成されている必要はなく、下腿部の前側に対応する部分に、その一部が形成されてもよい。
図7は、スポーツ用スパッツ1の背面図であり、下腿部の後側に対応する部分1dに形成される下腿部後側緊締部2hを表したものである。図7に示される下腿部後側緊締部2hは、下腿部の後側に対応する部分1dにおいて、当該部分1dの内側の上方から外側の下方にかけて斜めに形成されている。具体的に説明すると、下腿部後側緊締部2hの上部は、膝関節の内側あるいは膝関節内側より下方に対応する部分に位置し、下腿部後側緊締部2hの下部は、足首の外側に対応する裾部分に位置する。下腿部後側緊締部2hは、その上部と下部との間で、腓腹筋111およびヒラメ筋112をサポートし得るように形成される。このような下腿部後側緊締部2hを設けることにより、腓腹筋111およびヒラメ筋112の動きがサポートされる。なお、下腿部後側緊締部2hの上部と下部との間に形成される帯状部分は、必ずしも下腿部の後側にのみ形成されている必要はなく、下腿部の前側に対応する部分に、その一部が形成されてもよい。
図8は、スポーツ用スパッツの前面図であり、下腿部の前側に対応する部分1bに形成される膝下緊締部2vを表したものである。図8に示される膝下緊締部2v(実線部分)は、膝関節の内側に対応する部分および膝関節の外側に対応する部分から膝関節の下側に対応する部分にかけて形成され、膝下緊締部2vの上辺縁はV字状に形成されている。これにより、着用者の膝が、膝の内側、外側および下側からしっかりとサポートされるため、膝の無駄な動きが抑えられ、膝の伸展運動がしやすくなる。また、膝下緊締部2vを形成することで膝の屈曲運動が抑えられるため、膝下にある膝皿靭帯を保護することができる。なお、膝下緊締部2vの上辺縁の形状は、必ずしもV字状に形成されている必要はなく、例えば、U字状や三日月状に形成されていてもよい。すなわち、膝下緊締部2vの上辺縁の形状は、下腿部の下部方向に窪み状に形成されていればよい。また、膝下緊締部2vは、2本の緊締部を膝下で交差させることにより形成してもよい。また、図8に示すように膝の上側に対応する部分は、緊締部2よりも緊締力の弱い弱緊締部Hにより形成されているため、膝の運動追随性の低下を抑止することができる。なお、スポーツ用スパッツの本体部(緊締部2を除く)および弱緊締部Hは、緊締部2よりも緊締力の弱い生地により形成されていればよく、本体部(緊締部2を除く)と弱緊締部Hは、全く同じ生地で一体形成されていてもよい。
ここで、本実施形態における緊締部2は、上述した各部を以下に記載するように組み合わせても、図3および図4に示すように組み合わせた緊締部2と同様の効果が得られる。
まず、大腿部に対応する部分における組み合わせについては、大腿部前側緊締部2aと大腿部後側緊締部2dとを組み合わせてもよい。この組み合わせにより、膝の内転動作および外膝がサポートされる。特に、着地したときに膝が外側にいかないようにサポートする効果がある。また、大腿部前側緊締部2bと大腿部後側緊締部2cとを組み合わせてもよい。この組み合わせにより、大転子および内膝がサポートされる。大転子をサポートすることにより股関節がサポートされ、股関節の屈曲・伸展動作がしやすくなる。このように組み合わせた大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部は、スパッツ1の前側または後側のいずれか一方から見たときに、上下方向に対してそれぞれの緊締部が同じ方向に傾く関係となる。また、このように組み合わされた緊締部の大腿外側、大腿内側における連結部分の上下幅は、5cm以上であることが好ましい。さらに、より好ましくは、大腿外側における連結部分の上下幅を5〜15cm程度にし、大腿内側における連結部分の上下幅を5〜10cm程度にするとよい。これらの幅に関する記載は、他の実施例においても同様とする。なお、この緊締部の組み合わせに、中臀筋(臀部上部の筋肉)をサポートする緊締部を加えると、股関節の外旋動作をサポートすることができる。
また、大腿部前側緊締部2aと大腿部後側緊締部2cとを組み合わせてもよい。この組み合わせにより、膝の内転動作および股関節の内転動作がサポートされる。また、大腿部前側緊締部2bと大腿部後側緊締部2dとを組み合わせてもよい。この組み合わせにより、膝の外転・外旋動作がサポートされる。このように組み合わせた大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部は、スパッツ1の前側または後側のいずれか一方から見たときに、上下方向に対してそれぞれの緊締部が反対の方向に傾く関係となる。
このように、大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部とで大腿部を前後からサポートすることによって股関節や膝関節における内旋・外旋運動または内転・外転運動がしやすくなる。また、大腿部前側緊締部の一部と大腿部後側緊締部の一部とで膝を左右からサポートすることによって膝関節における屈曲・伸展運動がしやすくなる。
次に、下腿部に対応する部分における組み合わせについては、下腿部前側緊締部2eと下腿部後側緊締部2hとを組み合わせてもよい。この組み合わせにより、膝の内転動作および内膝がサポートされる。また、下腿部前側緊締部2fと下腿部後側緊締部2gとを組み合わせてもよい。この組み合わせにより、膝の外転動作および外膝がサポートされる。このように組み合わせた下腿部前側緊締部と下腿部後側緊締部は、スパッツ1の前側または後側のいずれか一方から見たときに、上下方向に対してそれぞれの緊締部が同じ方向に傾く関係となる。
また、下腿部前側緊締部2eと下腿部後側緊締部2gとを組み合わせてもよい。この組み合わせにより、膝の外旋動作および下腿の外旋がサポートされる。これにより、例えば、サッカーのインサイドキック動作等がサポートされる。また、下腿部前側緊締部2fと下腿部後側緊締部2hとを組み合わせてもよい。この組み合わせにより、膝の外旋動作がサポートされる。このように組み合わせた下腿部前側緊締部と下腿部後側緊締部は、スパッツ1の前側または後側のいずれか一方から見たときに、上下方向に対してそれぞれの緊締部が反対の方向に傾く関係となる。
このように、下腿部前側緊締部と下腿部後側緊締部とで下腿部を前後からサポートすることによって膝関節や足首における内旋・外旋運動または内転・外転運動がしやすくなる。また、下腿部前側緊締部の一部と下腿部後側緊締部の一部とで膝を左右からサポートすることによって膝関節における屈曲・伸展運動がしやすくなる。
また、上述した大腿部に対応する部分における各組み合わせと、上述した下腿部に対応する部分における各組み合わせとを、それぞれ組み合わせてもよい。この場合の具体例を、図9および図10を参照して説明する。図9(a)は、スポーツ用スパッツを正面から見た図であり、脚部の前側において、大腿部前側緊締部2aと下腿部前側緊締部2fとが組み合わされた状態を示すものである。図9(b)は、スポーツ用スパッツを背面から見た図であり、脚部の後側において、大腿部後側緊締部2dと下腿部後側緊締部2gとが組み合わされた状態を示すものである。図9(a),(b)に示されるスパッツは、大腿部においては、大腿部前側緊締部2aと大腿部後側緊締部2dとが、同じ方向に傾く関係で形成され、下腿部においては、下腿部前側緊締部2fと下腿部後側緊締部2gとが、同じ方向に傾く関係で形成されている。このように各緊締部を形成することにより、着用者の大腿部および下腿部が前後からしっかりとサポートされることになる。また、各緊締部は、膝の外側に対応する部分で連結されている。したがって、膝の外側に当接する緊締部が各緊締部により4方向に引っ張られるため、着用者の膝の外側がしっかりとサポートされる。なお、この場合において、さらに、膝の内側をサポートし得るように膝の内側に当接する他の緊締部を形成してもよい。これにより、着用者の膝が内側と外側からしっかりとサポートされることになる。また、下腿部前側緊締部2fと下腿部後側緊締部2gは、下腿内側下方で双方の緊締部を連結させることにより、各緊締部に、よりテンションをかけることができる。また、下腿部前側緊締部2fおよび下腿部後側緊締部2gの下端は、スパッツの裾に至っていることが好ましい。
図10(a)は、スポーツ用スパッツを正面から見た図であり、脚部の前側において、大腿部前側緊締部2bと下腿部前側緊締部2eとが組み合わされた状態を示すものである。図10(b)は、スポーツ用スパッツを背面から見た図であり、脚部の後側において、大腿部後側緊締部2cと下腿部後側緊締部2hとが組み合わされた状態を示すものである。図10(a),(b)に示されるスパッツは、大腿部においては、大腿部前側緊締部2bと大腿部後側緊締部2cとが、同じ方向に傾く関係で形成され、下腿部においては、下腿部前側緊締部2eと下腿部後側緊締部2hとが、同じ方向に傾く関係で形成されている。また、大腿部前側緊締部2bの上部と大腿部後側緊締部2cの上部は、大転子に当接し互いに連結している。このように各緊締部を形成することにより、着用者の大腿部および下腿部が前後からしっかりとサポートされることになる。また、膝の内側に当接する緊締部が各緊締部により4方向に引っ張られるため、着用者の膝の内側がしっかりとサポートされる。なお、この場合において、さらに、膝の外側をサポートし得るように他の緊締部を形成してもよい。これにより、着用者の膝が内側と外側からしっかりとサポートされることになる。また、下腿部前側緊締部2eと下腿部後側緊締部2hは、下腿外側下方で双方の緊締部を連結させることにより、各緊締部に、よりテンションをかけることができる。また、下腿部前側緊締部2eおよび下腿部後側緊締部2hの下端は、スパッツの裾に至っていることが好ましい。
また、上述した大腿部に対応する部分における各組み合わせと、上述した膝下緊締部2vとを、それぞれ組み合わせてもよい。この場合の具体例を、図11および図12を参照して説明する。図11(a)は、スポーツ用スパッツを正面から見た図であり、脚部の前側において、大腿部前側緊締部2aと膝下緊締部2vとが組み合わされた状態を示すものである。図11(b)は、スポーツ用スパッツを背面から見た図であり、脚部の後側において、大腿部後側緊締部2dが形成されている状態を示すものである。図11(a),(b)に示されるスパッツは、大腿部においては、大腿部前側緊締部2aと大腿部後側緊締部2dとが、同じ方向に傾く関係で形成されている。また、大腿部前側緊締部2aの下部、大腿部後側緊締部2dの下部および膝下緊締部2vの外膝側上部は、外膝の部分で連結されている。このように各緊締部を形成することにより、着用者の大腿部が前後からしっかりとサポートされることになる。また、膝下緊締部2vが膝の内側、外側および下側に当接し、かつ大腿部の前後に形成される緊締部により斜め上方に引っ張られるため、着用者の膝が三方向からしっかりとサポートされる。このように、膝上に緊締部が当接していない場合には、膝の自由度が確保され、運動追随性が向上する。これに対して、膝上に緊締部が当接している場合には、膝の安定性は向上するが、運動追随性が劣ることとなる。なお、図11(a),(b)に示されるスパッツに、大腿部後側緊締部2cをさらに形成してもよい。この場合には、大腿部後側緊締部2cの下部および膝下緊締部2vの内膝側上部は、内膝の部分で連結される。これにより、膝下緊締部2vの内膝に当接する部分が、大腿部前側緊締部2cにより大腿部の外側上方に向けて引っ張られるとともに、膝下緊締部2vの外膝に当接する部分が、大腿部前側緊締部2aおよび大腿部後側緊締部2dにより大腿部の内側上方に向けて引っ張られる。すなわち、膝下緊締部2vの内膝側当接部と外膝側当接部とが、大腿部前後においてそれぞれ逆方向に引っ張られるため、膝のサポート力がより増大する。また、膝下緊締部2vの内膝側上部に連結させて緊締部をさらに形成し、この緊締部の上部を大腿部前側緊締部2aまたは大腿部後側緊締部2dに連結してもよい。また、大腿部前側緊締部2b、大腿部後側緊締部2cおよび膝下緊締部2vを組み合わせてもよい。この場合には、大腿部前側緊締部2bの下部、大腿部後側緊締部2cの下部および膝下緊締部2vの内膝側上部は、内膝の部分で連結される。なお、膝下緊締部2vの下部とスポーツ用スパッツの裾を連結する緊締部をさらに設けることにより、膝下および膝の内外にある緊締部には、よりテンションがかかるようになるため、サポート効果が向上する。また、膝下緊締部2vの下部とスポーツ用スパッツの裾を連結する緊締部は、1本でもよいが、膝下緊締部2vを左右下方に引っ張るように2本形成することで、よりテンションがかかり易くなる。なお、膝下緊締部2vを形成せずに、大腿部前側緊締部2aと大腿部後側緊締部2dのみを形成することとしてもよい。
図12(a)は、スポーツ用スパッツを正面から見た図であり、脚部の前側において、大腿部前側緊締部2aと膝下緊締部2vとが組み合わされた状態を示すものである。図12(b)は、スポーツ用スパッツを背面から見た図であり、脚部の後側において、大腿部後側緊締部2cが形成されている状態を示すものである。図12(a),(b)に示されるスパッツは、大腿部においては、大腿部前側緊締部2aと大腿部後側緊締部2cとが、反対の方向に傾く関係で形成されている。また、大腿部前側緊締部2aの下部および膝下緊締部2vの外膝側上部は、外膝の部分で連結されている。また、大腿部後側緊締部2cの上部は、大転子に当接している。このように各緊締部を形成することにより、着用者の大腿部が前後からしっかりとサポートされることになる。また、膝下緊締部2vが、膝の内側、外側および下側に当接し、かつ大腿部の前後に形成される緊締部により斜め上方に引っ張られるため、着用者の膝が三方向からしっかりとサポートされる。このように、膝上に緊締部が当接していない場合には、膝の自由度が確保され、運動追随性が向上する。これに対して、膝上に緊締部が当接している場合には、膝の安定性は向上するが、運動追随性が劣ることとなる。なお、図12(a),(b)に示されるスパッツに、大腿部後側緊締部2cをさらに形成してもよい。この場合には、大腿部後側緊締部2cの下部および膝下緊締部2vの内膝側上部は、内膝の部分で連結される。また、膝下緊締部2vの内膝側上部に連結させて緊締部をさらに形成し、この緊締部の上部を大腿部前側緊締部2aまたは大腿部後側緊締部2cに連結してもよい。また、大腿部前側緊締部2b、大腿部前側緊締部2dおよび膝下緊締部2vを組み合わせてもよい。この場合には、大腿部前側緊締部2bの下部および膝下緊締部2vの内膝側上部は、内膝の部分で連結され、大腿部前側緊締部2dの下部および膝下緊締部2vの外膝側上部は、外膝の部分で連結される。なお、膝下緊締部2vの下部とスポーツ用スパッツの裾を連結する緊締部をさらに設けることにより、膝下および膝の内外にある緊締部には、よりテンションがかかるようになるため、サポート効果が向上する。また、膝下緊締部2vの下部とスポーツ用スパッツの裾を連結する緊締部は、1本でもよいが、膝下緊締部2vを左右下方に引っ張るように2本形成することで、よりテンションがかかり易くなる。なお、膝下緊締部2vを形成せずに、大腿部前側緊締部2aと大腿部後側緊締部2cのみを形成することとしてもよい。
次に、図13〜図16に示すスポーツ用スパッツの正面図を参照して、大腿部の前側における緊締部の変形例について説明する。図13は、大腿部の前側において、大腿部前側緊締部2bと大腿部前側緊締部2au(大腿上部緊締部)とが組み合わされた状態を示すものである。大腿部前側緊締部2bは、上述したように大腿部前面の上方から下方にかけて斜めに形成されている。大腿部前側緊締部2auは、大腿部の内側の上方から大腿部前側緊締部2bの途中にある両緊締部2b,2auの連結部分にかけて形成されている。このような大腿部前側緊締部2auを設けることにより、大腿部の前側の上方から下方にかけて斜めに形成されている大腿部前側緊締部2bにテンションをかけることができるため、大腿部前側緊締部2bによるサポート効果を向上させることができる。なお、大腿部前側緊締部2auの幅は、大腿部前側緊締部2bの幅よりも細くすることができる。具体的には、2〜4cm程度であってもよい。
図14は、大腿部の前側において、大腿部前側緊締部2bと大腿部前側緊締部2aw(大腿下部緊締部)とが組み合わされた状態を示すものである。大腿部前側緊締部2awは、大腿部の外側の下方から大腿部前側緊締部2bの途中にある両緊締部2b,2awの連結部分にかけて形成されている。また、大腿部前側緊締部2awの下方部は、膝部の外側に形成される下腿部前側緊締部2fの上方部と連結している。このような大腿部前側緊締部2awを設けることにより、大腿部の前側の上方から下方にかけて斜めに形成されている大腿部前側緊締部2bにテンションをかけることができるため、大腿部前側緊締部2bによるサポート効果を向上させることができる。また、膝部の外側に形成される下腿部前側緊締部2fにもテンションをかけることができるため、膝のサポート効果を向上させることができる。なお、大腿部前側緊締部2awの幅は、大腿部前側緊締部2bおよび下腿部前側緊締部2fの幅よりも細くすることができる。具体的には、2〜4cm程度であってもよい。また、大腿部前側緊締部2bが、大腿前面において大腿部の下部方向に窪み状に湾曲する曲線状であり、大腿部前側緊締部2awが、膝関節のすぐ上の箇所において大腿部前側緊締部2bと連結する場合には、この大腿部前側緊締部2bと大腿部前側緊締部2awとにより、膝上緊締部が形成される。すなわち、膝上緊締部は、膝関節の内側に対応する部分および膝関節の外側に対応する部分から膝関節の上側に対応する部分にかけて形成される。膝上緊締部の下辺縁は逆V字状に形成されている。なお、膝上緊締部の下辺縁の形状は、必ずしも逆V字状に形成されている必要はなく、例えば、逆U字状や三日月状に形成されていてもよい。すなわち、膝上緊締部の下辺縁の形状は、大腿部の上部方向に窪み状に形成されていればよい。このような膝上緊締部を形成することにより、膝の安定性を向上させることができる。
図15は、大腿部の前側において、大腿部前側緊締部2aと大腿部前側緊締部2bu(大腿上部緊締部)とが組み合わされた状態を示すものである。大腿部前側緊締部2aは、上述したように大腿部前面の上方から下方にかけて斜めに形成されている。大腿部前側緊締部2buは、大腿部の外側の上方から大腿部前側緊締部2aの途中にある両緊締部2a,2buの連結部分にかけて形成されている。このような大腿部前側緊締部2bwを設けることにより、大腿部の前側の上方から下方にかけて斜めに形成されている大腿部前側緊締部2aにテンションをかけることができるため、大腿部前側緊締部2aによるサポート効果を向上させることができる。なお、大腿部前側緊締部2buの幅は、大腿部前側緊締部2aの幅よりも細くすることができる。具体的には、2〜4cm程度であってもよい。
図16は、大腿部の前側において、大腿部前側緊締部2aと大腿部前側緊締部2bw(大腿下部緊締部)とが組み合わされた状態を示すものである。大腿部前側緊締部2bwは、大腿部の内側の下方から大腿部前側緊締部2aの途中にある両緊締部2a,2bwの連結部分にかけて形成されている。また、大腿部前側緊締部2bwの下方部は、膝部の内側に形成される下腿部前側緊締部2eの上方部と連結している。このような大腿部前側緊締部2bwを設けることにより、大腿部の前側の上方から下方にかけて斜めに形成されている大腿部前側緊締部2aにテンションをかけることができるため、大腿部前側緊締部2aによるサポート効果を向上させることができる。また、膝部の外側に形成される下腿部前側緊締部2eにもテンションをかけることができるため、膝のサポート効果を向上させることができる。なお、大腿部前側緊締部2bwの幅は、大腿部前側緊締部2aおよび下腿部前側緊締部2eの幅よりも細くすることができる。具体的には、2〜4cm程度であってもよい。また、大腿部前側緊締部2aが、大腿前面において大腿部の下部方向に窪み状に湾曲する曲線状であり、大腿部前側緊締部2bwが、膝関節のすぐ上の箇所において大腿部前側緊締部2aと連結する場合には、この大腿部前側緊締部2aと大腿部前側緊締部2bwとにより、膝上緊締部が形成される。すなわち、膝上緊締部は、膝関節の内側に対応する部分および膝関節の外側に対応する部分から膝関節の上側に対応する部分にかけて形成される。膝上緊締部の下辺縁は逆V字状に形成されている。なお、膝上緊締部の下辺縁の形状は、必ずしも逆V字状に形成されている必要はなく、例えば、逆U字状や三日月状に形成されていてもよい。すなわち、膝上緊締部の下辺縁の形状は、大腿部の上部方向に窪み状に形成されていればよい。
図13〜図16に示すように、大腿部の前側には、大腿部前面の上方から下方にかけて斜めに形成されている大腿部前側緊締部と交差可能な傾きを有し、大腿部の側部上方または側部下方から当該大腿部前側緊締部の途中にかけて形成される緊締部2au,2aw,2bu,2bwを設けることが好ましい。また、これらの緊締部2au,2aw,2bu,2bwは、膝部の外側または内側に形成される下腿部前側緊締部の上方部と連結するのが好ましい。また、上述した大腿部前側緊締部2a,2bの途中に形成される他の大腿部前側緊締部2au,2aw,2bu,2bwとの連結部分は、大腿部における大腿部前側緊締部2a,2bの長手方向の中央付近に形成されることが好ましい。これにより、各緊締部同士にテンションがよりかりやすくなる。
なお、上述した図13〜図16に示した緊締部2au,2aw,2bu,2bwは、大腿部の前側に設けた場合を例示したものであるが、大腿部の後側にもこれらと同様の緊締部を設けてもよい。すなわち、大腿部後面の上方から下方にかけて斜めに形成されている大腿部後側緊締部と交差可能な傾きを有し、大腿部の側部上方または側部下方から当該大腿部後側緊締部の途中にかけて形成される緊締部を大腿部の後側に設けてもよい。さらに、この緊締部は、膝部の外側または内側に形成される下腿部後側緊締部の上方部と連結させてもよい。
また、図14および図16に示す膝上緊締部は、下腿部前側緊締部2eおよび下腿部後側緊締部2gと組み合わせて形成してもよい。この場合に、膝上緊締部は、膝の内側または外側に当接する部分において、下腿部前側緊締部2eまたは下腿部後側緊締部2gと連結する。また、下腿部前側緊締部2eと下腿部後側緊締部2gは、下腿部において下腿の前側あるいは後側のいずれか一方から見て、上下方向に対してそれぞれが反対の方向に傾くように形成される。すなわち、下腿部前側緊締部2eは内膝から下腿前側に当接し、下腿下方の外踝にかけて形成される。一方、下腿部後側緊締部2gは外膝から下腿後側に当接し、下腿下方の内踝にかけて形成される。さらに、図14および図16に示す膝上緊締部は、下腿部前側緊締部2fおよび下腿部後側緊締部2hと組み合わせて形成してもよい。この場合に、膝上緊締部は、膝の内側または外側に当接する部分において、下腿部前側緊締部2fまたは下腿部後側緊締部2hと連結する。また、下腿部前側緊締部2fと下腿部後側緊締部2hは、下腿部において下腿の前側あるいは後側のいずれか一方から見て、上下方向に対してそれぞれが反対の方向に傾くように形成される。すなわち、下腿部前側緊締部2fは外膝から下腿前側に当接し、下腿下方の内踝にかけて形成される。一方、下腿部後側緊締部2hは内膝から下腿後側に当接し、下腿下方の外踝にかけて形成される。このように、下腿部の前後において強緊締部を互いに反対に傾くように形成して膝上緊締部と連結させることにより、膝上と膝の内側と膝の外側の3方に当接する各緊締部にテンションがかかるようになり、膝をサポートすることができる。なお、この場合、膝下に緊締部を設けない場合には、膝の自由度を確保することができる。これに対して、膝下に緊締部を設けた場合には、膝の安定性を向上させることができる。
また、図14および図16に示す膝上緊締部と、図8に示す膝下緊締部2vとを組み合わせてもよい。これにより膝の周辺がしっかりとサポートされる。この場合に、膝上緊締部の上部から大腿部の内側と外側のうち少なくともいずれか一方に対応する部分にかけて緊締部を形成し、かつ、膝下緊締部の下部から足首の内側と外側のうち少なくともいずれか一方に対応する部分にかけて緊締部を形成することが好ましい。なお、この緊締部は、膝上緊締部の上部から大腿部の内側および外側の上方まで形成され、膝下緊締部の下部から足首の内側および外側の下方(足首丈の場合には裾)まで形成されることが、より好ましい。これらの緊締部により、大腿部前側緊締部と下退部前側緊締部が形成される。一方、大腿部の後側に形成される大腿部後側緊締部は、スパッツ1の前側または後側のいずれか一方から見たときに、大腿部前側緊締部と反対の方向に傾けて形成されることが好ましい。また、下腿部の後側に形成される下腿部後側緊締部は、スパッツ1の前側または後側のいずれか一方から見たときに、下腿部前側緊締部と反対の方向に傾けて形成されることが好ましい。このように前後の緊締部を反対の方向に傾けて形成することにより、大腿、膝、ふくらはぎが、よりバランス良くサポートされる。
以上のように、大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部とで大腿部を前後からサポートするとともに、下腿部前側緊締部と下腿部後側緊締部とで下腿部を前後からサポートすることによって股関節、膝関節および足首における内旋・外旋運動または内転・外転運動がさらにしやすくなる。また、各緊締部の一部により膝が左右からサポートされるため膝関節における屈曲・伸展運動もしやすくなる。
また、大腿部の前側と下腿部の前側、または大腿部の後側と下腿部の後側のそれぞれにおける各緊締部の傾きの関係は、大腿部における緊締部の傾きと下腿部における緊締部の傾きとが、それぞれ反対方向になるようにすることがより好ましい。これにより、大腿およびふくらはぎを含めた足全体において、内旋・外旋運動および内転・外転運動に必要な筋肉をよりバランスよくサポートすることができる。
また、大腿部と下腿部に形成される緊締部は、大腿部または下腿部のいずれか一方に形成される緊締部が、前後から挟み込む状態で形成されていればよい。この場合に、他方に形成される緊締部は、大腿部または下腿部を左右から挟み込む状態で形成されていてもよい。具体的に説明すると、例えば、大腿部では、緊締部が前後から挟み込む状態で形成され、膝の内側および外側に当接し、下腿部では、緊締部が左右から挟み込む状態で形成され、裾に至るように形成されていればよい。また、大腿部では、緊締部が左右から挟み込む状態で形成され、膝の内側および外側に当接し、下腿部では、緊締部が前後から挟み込む状態で形成され、裾に至るように形成されていてもよい。このように緊締部を形成することで、大腿部または下腿部が前後からしっかりとサポートされ、さらに膝が左右からしっかりとサポートされるため、内旋・外旋運動、内転・外転運動および屈曲・伸展運動における各動作に必要な筋肉をバランスよくサポートすることができる。
また、大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部とで大腿部を前後からサポートする場合には、上述した下腿部前側緊締部か下腿部後側緊締部のいずれか一方を少なくとも有していればよい。
また、大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部とで大腿部を前後からサポートする場合には、大腿部の前側または後側に対応する部分において、大腿の前側または後側のいずれか一方から見て大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部のそれぞれがほぼ同位置になるように形成してもよいし、大腿部前側緊締部と大腿部後側緊締部が上下方向にずれるように形成してもよい。ここで、上下方向にずらして形成する場合について具体的に説明すると、例えば、大腿部前側緊締部を大腿部の前側に対応する部分の上方に形成し、大腿部後側緊締部を大腿部の後側に対応する部分の下方に形成する場合や、大腿部前側緊締部を大腿部の前側に対応する部分の下方に形成し、大腿部後側緊締部を大腿部の後側に対応する部分の上方に形成する場合がある。
また、下腿部前側緊締部と下腿部後側緊締部とで下腿部を前後からサポートする場合には、下腿部の前側または後側に対応する部分において、下腿の前側または後側のいずれか一方から見て下腿部前側緊締部と下腿部後側緊締部のそれぞれがほぼ同位置になるように形成してもよいし、下腿部前側緊締部と下腿部後側緊締部が上下方向にずれるように形成してもよい。ここで、上下方向にずらして形成する場合について具体的に説明すると、例えば、下腿部前側緊締部を下腿部の前側に対応する部分の上方に形成し、下腿部後側緊締部を下腿部の後側に対応する部分の下方に形成する場合や、下腿部前側緊締部を下腿部の前側に対応する部分の下方に形成し、下腿部後側緊締部を下腿部の後側に対応する部分の上方に形成する場合がある。
なお、本実施形態においては、緊締部2を大腿部分と下腿部分とに分けて説明しているが、これは、説明の便宜のために分けたものであって、緊締部2が大腿部分と下腿部分とに分断されていることを示すものではない。
また、上述した実施形態においては、腰部から下腿部までを被覆する足首丈のスポーツ用スパッツに適用した場合について説明しているが、腰部から大腿部までを被覆する膝上丈のスポーツ用スパッツや、腰部から膝下部分までを被覆する膝下丈のスポーツ用スパッツにも本発明を適用することは可能である。また、ウェストから上方に、上半身を被覆する部分を有するスポーツ用スパッツであってもよく、足首から下に足の裏を渡る部分を有するスポーツ用スパッツやタイツであってもよい。さらに、股間部に保護パッドを有するスポーツ用スパッツであってもよい。
ここで、膝上丈のスポーツ用スパッツの具体例を、図17〜図21を参照して説明する。図17(a)は、膝上丈のスポーツ用スパッツを正面から見た図であり、大腿部の前側に、上述した大腿部前側緊締部2bが形成されている状態を示すものである。図17(b)は、膝上丈のスポーツ用スパッツを背面から見た図であり、大腿部の後側に、上述した大腿部後側緊締部2cおよび大腿部後側緊締部2dが形成されている状態を示すものである。図17(a),(b)に示されるスパッツは、大腿部においては、大腿部前側緊締部2bと大腿部後側緊締部2cとが、同じ方向に傾く関係で形成されており、大腿部前側緊締部2bと大腿部後側緊締部2dとが、反対の方向に傾く関係で形成されている。大腿部前側緊締部2bは、大転子113を含めた腰部の側部に当接し、腰部の側部に沿って上方向に延びウェストに至る部分に形成されている。大腿部後側緊締部2cは、腰部の側部において大腿部前側緊締部2bと連結し、さらに、腰部上部にも当接し、左右の大腿部後側緊締部2cが腰部上部の後中心で連結している。このように連結することで、大腿部後側緊締部2cと大腿部前側緊締部2bには互いにテンションがかかり、大腿部の筋肉へのサポート効果が増すとともに、股関節をサポートすることができる。また、左右の大腿部にある大腿部後側緊締部2dの上端は、坐骨結合点付近(臀裂下方部位)で連結されている。これにより、左右にある大腿部後側緊締部2dには相互にテンションがかかることになる。なお、大腿部後側緊締部2dの上部は、大腿部後側の内側上部(股下)に位置してもよい。また、大腿部前側緊締部2bの下端、大腿部後側緊締部2cの下端が、大腿部の内側の裾部Sに位置し、大腿部後側緊締部2dの下端が、大腿部の外側の裾部Sに位置している。この大腿部前側緊締部2bの下端と大腿部後側緊締部2cの下端は、大腿部の内側で連結している。この連結箇所の上下幅は、5〜10cm程度であることが好ましい。このように各緊締部を形成することにより、着用者の大腿部が前後からしっかりとサポートされることになる。なお、大腿部前側緊締部2aの下端、大腿部後側緊締部2cの下端および大腿部後側緊締部2dの下端は、必ずしも全ての下端が、スポーツ用スパッツの裾部Sに位置している必要はなく、少なくともいずれか一の下端が裾部Sに位置していればよい。また、上述した緊締部2の下端位置に関しては、以下に説明する図18〜図21に示す膝上丈のスポーツ用スパッツにおいても同様である。
図18(a)は、膝上丈のスポーツ用スパッツを正面から見た図であり、大腿部の前側に上述した大腿部前側緊締部2bが形成され、腹部に腹部緊締部2xが形成されている状態を示すものである。図18(b)は、膝上丈のスポーツ用スパッツを背面から見た図であり、大腿部の後側に上述した大腿部後側緊締部2cの下方部分である大腿部後側緊締部2cwおよび大腿部後側緊締部2dが形成されている状態を示すものである。図18(a)に示す腹部緊締部2xは、腰部の側部において大腿部前側緊締部2bと連結する。左右にある腹部緊締部2xは、腹部中央において互いに連結する。これにより、腰部の両側部に当接する大腿部前側緊締部2bを、身体中心方向に引っ張ることができ、股関節を安定させることができる。すなわち、上述した腹部緊締部2xを形成することにより、腰部の両側部を内側に引っ張る力をかけることができ、骨盤を安定させることができる。腹部緊締部2xは、下腹部よりも上方に当接するように形成するのが好ましい。これにより、股に近い下腹部が圧迫されることを防止することができる。また、腹部緊締部2xの素材は、大腿部前側緊締部2bよりも緊締力の弱い別の素材であってもよいし、大腿部前側緊締部2bと同じ素材であってもよい。腹部緊締部2xと大腿部前側緊締部2bとを連続させ、同じ素材により構成してもよい。また、腹部緊締部2xの幅は、2cm以上に形成することが好ましいが、より好ましくは5〜15cm程度に形成するのがよい。腹部緊締部2xの幅は、等幅であってもよいが、腰部の側部側から身体中心に向けて細くなっていてもよいし、腰部の側部側から身体中心に向けて太くなっていてもよい。また、腹部緊締部2xは、本体布の内側に縫合してもよいし、外側に縫合してもよい。腹部緊締部2xの大腿部前側緊締部2bとの連結部分は、本体布に縫合されるが、腹部緊締部2xの上縁と下縁は、本体布に縫合されずに浮いた状態であってもよい。また、図18(b)に示す大腿部後側緊締部2cwは、大腿部後側緊締部2dの大腿部後側の中心付近に連結し、大腿部の内側下方にのみ形成される。また、大腿部後側緊備部2cwと、大腿部前側緊締部2bは、大腿内側下方で連結されている。
図19(a)は、膝上丈のスポーツ用スパッツを正面から見た図であり、大腿部の前側に上述した大腿部前側緊締部2bが形成され、腹部に腹部緊締部2yが形成されている状態を示すものである。図19(b)は、膝上丈のスポーツ用スパッツを背面から見た図であり、大腿部の後側に上述した大腿部後側緊締部2cの上方部分である大腿部後側緊締部2cuおよび大腿部後側緊締部2dが形成されている状態を示すものである。図19(a)に示す腹部緊締部2yは、腰部の側部において大腿部前側緊締部2bと連結する。腹部緊締部2yは、上腹部に当接するように形成される。これにより、腰部の両側部に当接する大腿部前側緊締部2bを、身体中心方向に引っ張ることができ、股関節を安定させることができる。すなわち、上述した腹部緊締部2xを形成することにより、腰部の両側部を内側に引っ張る力をかけることができ、骨盤を安定させることができる。腹部緊締部2yは、大腿部前側緊締部2bとの連結部分における幅が最も広く、身体の前中心に向かうにしたがって徐々に幅が狭くなり、身体の前中心を超えたところまで延在する。したがって、左右にある腹部緊締部2yは、互いに前中心を超えた部分において重なり合っている。なお、最も広い部分の幅は、10cm程度であることが好ましい。また、腹部緊締部2yの素材は、大腿部前側緊締部2bとは別の素材であってもよいし、大腿部前側緊締部2bと同じ素材であってもよい。腹部緊締部2yと大腿部前側緊締部2bとを連続させ、同じ素材により構成してもよい。また、腹部緊締部2yの大腿部前側緊締部2bとの連結部分は、本体布に縫合されるが、腹部緊締部2xの上縁と下縁のいずれか一方は、本体布に縫合されずに浮いた状態であってもよい。また、図19(b)に示す大腿部後側緊締部2cuは、大腿部後側緊締部2dの大腿部後側の中心付近に連結し、大腿部の外側上方に当接し、大転子付近で大腿部前側緊締部と連結し、腰部上方に形成される。
図20(a)は、膝上丈のスポーツ用スパッツを正面から見た図であり、大腿部の前側に上述した大腿部前側緊締部2bが形成され、腹部に腹部緊締部2zが形成されている状態を示すものである。図20(b)は、膝上丈のスポーツ用スパッツを背面から見た図であり、大腿部の後側に上述した大腿部後側緊締部2cおよび大腿部後側緊締部2dの下方部分である大腿部後側緊締部2dwが形成されている状態を示すものである。図20(a)に示す腹部緊締部2zは、大腿部前側緊締部2bと連続した素材により形成される。なお、腹部緊締部2zの素材は、大腿部前側緊締部2bとは別の素材であってもよい。腹部緊締部2zは、大腿部前側緊締部2bと連続する部分における幅が最も広く、身体の前中心に向かうにしたがって徐々に幅が狭くなる。なお、最も広い部分の幅は、10cm程度であることが好ましく、最も狭い部分の幅は、5cm程度であることが好ましい。また、左右にある腹部緊締部2zは、身体の前中心において互いに連結する。これにより、腰部の両側部に当接する大腿部前側緊締部2bを、身体中心方向に引っ張ることができ、股関節を安定させることができる。すなわち、上述した腹部緊締部2xを形成することにより、腰部の両側部を内側に引っ張る力をかけることができ、骨盤を安定させることができる。また、腹部緊締部2zの上縁と下縁のいずれか一方は、本体布に縫合されずに浮いた状態であってもよい。また、図20(b)に示す大腿部後側緊締部2dwは、大腿部後側緊締部2cの大腿部後側の中心付近に連結し、大腿部の外側下方にのみ形成される。また、大腿部前側緊締部2bと大腿部後側緊締部2cは、大腿内側下方、および大腿外側上方の大転子近傍で連結されている。なお、上述した3種類の腹部緊締部2x,2y,2zは、上述した他の実施例(足首丈のスポーツ用スパッツ)において説明した種々の緊締部と適宜組み合わせてもよい。
なお、上述した図18(a),図19(a),図20(a)に示される腹部緊締部2x,2y,2zは、腰部の左右両側部に対応する部分に形成された大腿部前側緊締部2bを、連結しているが、腹部緊締部2x,2y,2zが連結する緊締部は、大腿部前側緊締部2bに限られない。例えば、大腿部後側緊締部であってもよいし、腰部の左右両側部に対応する部分に形成された他の緊締部であってもよい。すなわち、上述した図18〜図20に関する説明においては、腹部緊締部2x,2y,2zが連結する緊締部として、便宜上、大腿部前側緊縮部2bを用いて説明しているが、腹部緊締部2x,2y,2zが連結する緊締部は、腰部の左右両側部に対応する部分に形成された腰部緊締部であればよい。このように、腹部緊締部2x,2y,2zを、腰部の左右両側部に対応する部分に形成された腰部緊締部と連結することにより、腰部緊締部にテンションをかけることができる。また、このような腹部緊締部と腰部緊締部は、他の実施例において説明した大腿部、膝部および下腿部において形成される種々の緊締部と組み合わせて形成させることができる。
図21(a)は、膝上丈のスポーツ用スパッツを正面から見た図であり、大腿部の前側に上述した大腿部前側緊締部2bを変形した大腿部前側緊締部2bxが形成されている状態を示すものである。図21(b)は、膝上丈のスポーツ用スパッツを背面から見た図であり、大腿部の後側に上述した大腿部後側緊締部2cおよび大腿部後側緊締部2dの上方部分である大腿部後側緊締部2duが形成されている状態を示すものである。図21(a)に示す大腿部前側緊締部2bxは、上述した大腿部前側緊締部2bのラインを、大腿部の前面において上部方向に窪み状に湾曲させて形成したものである。大腿部前側緊締部2bxは、大転子113近傍から、大腿部前面の上方を通り、大腿部の内側下方に至る部位に当接するように形成される。すなわち、大腿部前側緊締部2bxは、大腿直筋の筋腹を通らずに、大転子に至ることとなる。したがって、大腿部前側緊締部2bxを直線状に形成した場合に比べ、緊締部が大腿直筋の筋腹を通らない分、大腿直筋が膨らんだときに筋腹を圧迫しないという効果を奏する。大腿部前側緊締部2bxは、大転子113近傍から腰部の側部において図21(b)に示す大腿部後側緊締部2cと連結する。大腿部前側緊締部2bxの下方は、大腿部の内側下方において大腿部後側緊締部2cの下方と連結する。また、大腿部前側緊締部2bxの幅は、腰部の側部付近に当接する最も広い部分で10〜15cm程度であることが好ましく、大腿部に当接する最も細い部分で4〜5cm程度であることが好ましい。大腿部前側緊締部2bxの下方と大腿部後側緊締部2cの下方との大腿内側における連結部分の上下幅は、8cm程度であることが好ましい。このような大腿部前側緊締部2bxを形成することにより、大腿前面の筋肉収縮をサポートすることができる。また、図21(b)に示す大腿部後側緊締部2duは、大腿部後側緊締部2cの大腿部後側の中心付近に連結し、大腿部の内側上方にのみ形成される。
なお、上述した膝上丈のスポーツ用スパッツ(図17〜図21)に形成される各緊締部の具体例は、足首丈のスポーツ用スパッツおよび膝下丈のスポーツ用スパッツ等にも適用可能である。
また、スポーツ用スパッツにおいて、大腿部から上の腰部に形成される緊締部は、以下のように形成されていればよい。例えば、大腿部の外側においては、大転子を含んだ箇所に形成されていればよく、さらに大転子から腰側部に当接し、のウェストにかけてほぼ直線状に連続して形成してもよい。また、大転子から腰の側部および腰の膨らみの上方に当接し、ウェストライン上で終結してもよいし、腰の膨らみの上方から後中心に向けて延ばし、ウェストラインの後中心付近で左右が連結してもよい。また、大転子から腰の膨らみの一部を通り、ウェストラインの後中心付近で左右が連結してもよい。また、大転子から腹部を通り、腹部の中心で左右が連結してもよい。さらに、これらの緊締部を組み合わせて形成してもよい。
また、本発明の股付き衣類における緊締部の付与方法は、上述した実施形態において説明した方法に限られず、例えば、股付き衣類本体に所定形状の伸縮性生地を重ね合わせてそれを縫合させることによって形成してもよいし、股付き衣類本体に所定形状の伸縮性生地を重ね合わせてそれを接着することによって形成してもよい。これらの方法によれば、衣類本体と緊締部との緊締力差を適宜に設定しやすく、また、大きな緊締力差をつけることも可能である。また、緊締部とそれ以外の部分とをそれぞれ所定形状のパーツにして、それらを接ぎ合わせて本発明の股付き衣類を形成してもよい。また、股付き衣類本体に所定形状の伸縮性生地を引き伸ばして重ね合わせて縫合または接着する方法によって緊締部を形成してもよい。なお、股付き衣類本体に伸縮性生地を重ね合わせる場合には、緊締部を形成する伸縮性生地の緊締力が、股付き衣類本体の緊締力よりも強いことが好ましい。これらの方法によれば、緊締部により強力な緊締力を付与することができる。また、股付き衣類本体の所定部分に弾性樹脂含浸または弾性樹脂フィルムの貼り合わせによる方法によって緊締部を形成してもよい。これらの方法によれば、緊締部の厚みが比較的薄いものを得ることができる。弾性樹脂としてはポリウレタン樹脂やポリエステルエラストマー樹脂その他の弾性樹脂が適用可能である。これらの方法によれば、重ね合わせをしなくてもすむので、緊締部の厚みがより薄いものを得ることができる。また、股付き衣類本体を構成する伸縮性生地を経編や丸編のジャカードにより編み組織をかえることにより、緊締力の強弱差を設け、緊締力の強い編み組織によって緊締部を形成してもよい。これらの方法によれば、同様に重ね合わせをしなくてもすむので、緊締部の厚みがより薄いものを得ることができる。また、股付き衣類を形成する生地として丸編地などを用いる場合には、部分的に糸を足すカットボス編手法によって、比較的緊締力の強い緊締部を形成することもできる。丸編みによる場合は、編み組織を変える方法と部分的に糸を足すカットボス編方法とを組み合わせて緊締力の強弱差を設けることもできる。
また、上述した本実施形態においては、股付き衣類の代表例としてスポーツ用スパッツについて説明しているが、本発明は、スポーツ用スパッツ以外にも適用可能である。例えば、ガードル、スポーツ用タイツ、スパッツ型の水着、スポーツウェア、ストッキングおよびタイツ等の股付き衣類にも適用可能である。
本発明に係る股付き衣類によれば、帯状の緊締部により、屈曲・伸展運動、内旋・外旋運動および内転・外転運動に必要な筋肉の動きがサポートされるため、脚部の運動をバランスよくサポートすることができるという、優れた効果が期待できる。