JP4495301B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は燃料噴射弁であって、行程運動を生じるためのアクチュエータと、液圧媒体によって充填されていて行程方向で変形可能な、アクチュエータの行程運動を弁ニードルへ伝達するための行程変換器とを備えた形式のものに関する。
【０００２】
【従来の技術】
ドイツ連邦共和国特許公開第１９５００７０６号明細書からは請求項１の上位概念に記載した形式の燃料噴射弁が公知である。その場合、アクチュエータ、例えば圧電式アクチュエータの比較的小さな調整距離を弁ニードルの比較的大きな行程へ変換する行程変換器または運動距離変換器が設けられている。その場合、アクチュエータの膨張が行程変換器の作動ピストンを介して増幅室内へ導入されて行程ピストンを介して弁ニードルへ伝達され、弁ニードルは増幅室を端面側で制限するピストン面に比例して増大する行程を実施する。アクチュエータの調整距離に及ぼす温度の影響、摩耗および製作誤差の影響を補償するために、増幅室はピストンと弁ケーシング壁との間の環状隙間によって実現されかつ十分に高い流れ抵抗を有する規定された漏れ隙間を有しており、その結果、アクチュエータの運動はほとんど減衰されずに弁ニードルへ伝達される。行程変換の液圧媒体として、ドイツ連邦共和国特許公開第１９５００７０６号明細書の場合には燃料自体が使用される。しかしこのことによって、燃料の粘度が比較的わずかであることに起因して、規定される漏れ隙間は著しく小さくなければならないという問題が生じる。この公知の噴射弁がガソリン式内燃機関のために使用されると、ガソリンは比較的低い温度で沸騰して泡を生じるため、もはや液圧媒体として作動することができないという別の問題が生じる。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は前述した問題点を解決することにある。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
上記課題は本発明によれば、請求項１に記載したように、冒頭に記載した形式の燃料噴射弁において、絞り開口を介して行程変換器の内室に連通していてカプセルによって囲われた、液圧媒体のための補償室が設けられていることによって解決される。
【０００５】
【発明の効果】
請求項１の特徴を備えた本発明に基づく燃料噴射弁の有する利点は、行程変換器の内室と補償室との間で液圧媒体が交換されることによって、温度の影響により生じるアクチュエータの準静的な変形が補償されることにある。絞り開口を十分に小さく選択すれば、行程変換器内に存在する液圧媒体はアクチュエータの比較的迅速な作動時に非圧縮性の液体のように作用し、その結果、アクチュエータの迅速な運動がほとんど減衰されずに弁ニードルへ伝達される。
【０００６】
本発明に基づく燃料噴射弁はさらに、液圧媒体が燃料に無関係に選択されることができ、従って、液圧媒体は高い沸点と比較的高い粘度とを有することができるという利点を有している。その上、液圧媒体の蒸発が回避されることができる。比較的大きな粘度は絞り開口の比較的大きな開口直径を許容し、これによって絞り開口が製作技術的に簡単に製作される。
【０００７】
請求項１以外の請求項に記載された手段によれば、請求項１に記載した燃料噴射弁の有利な構成が可能である。補償室の有利には弾性的なカプセルは有利には、行程変換器に液密に溶接された薄肉の金属体から成る。補償室は行程変換器の小直径区分を半径方向で囲むことができ、このことによって、コンパクトな構造が可能となる。
【０００８】
行程変換器の外壁は有利にはベローズとして形成されている。このことの有する利点は、外壁が半径方向では変形せずに行程方向でのみ変形することができることにある。このことによって、減衰なしにアクチュエータの行程運動が弁ニードルへ伝達される。
【０００９】
液圧媒体としては高い温度で沸騰する液体が適しており、従って、液体媒体の蒸発が回避される。絞り開口の直径は、有利にはアクチュエータの行程運動がほとんど減衰されることなしに伝達されるように、しかも弾性的な補償室との液圧媒体の交換によって準静的な変形が補償されるように、液圧媒体の粘度に依存して選択される。
【００１０】
アクチュエータは有利には積層された圧電式アクチュエータであり、このアクチュエータは時間的にも空間的にも規定された行程運動を許容する。
【００１１】
本発明に基づく燃料噴射弁は特にガソリン内燃機関のための噴射弁装置のために適している。その理由は、ガソリンはその沸点が低いことにより行程変換の液圧媒体としては不適当であるからである。
【００１２】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の１実施例を図面に示し、以下に詳細に説明する。
【００１３】
図１は本発明に基づく燃料噴射弁１の１実施例を断面して示す。ケーシング１１が半径方向の孔内に例えば積層された圧電式アクチュエータ２を有しており、このアクチュエータは（図示されていない）電気的な制御装置を介して、規定された（矢印１３で示された）行程運動を生じる。アクチュエータ２の起動制御のための電気的な制御信号が差込接続部１４を介して供給される。液圧的な接続は例えば横孔２５を介して行われる。液圧的な行程変換器３がアクチュエータ２から軸方向運動可能な弁ニードル４へ行程運動を伝達する。弁ニードル４に結合された弁閉鎖体１５が、弁座５に形成された弁座面１６と共にシール座を形成している。戻しばね１２がこのシール座の閉鎖を保っている。
【００１４】
図２は燃料噴射弁１の行程変換器３の拡大図を示す。この場合、アクチュエータ２は小さな行程ｈ₁ で行程変換器３の大きな面Ａ₁ へ作用する。このアクチュエータ３は液圧媒体６によって充填されるベローズ７として形成されており、かつ液圧媒体で充填されていることによりアクチュエータ２とは逆の側の端部における比較的小さな面Ａ₂ のところに相応して増大した行程ｈ₂ ＝ｈ₁・Ａ₁／Ａ₂ を生じてこれを弁ニードル４へ伝達する。その場合、ベローズ７は運動が半径方向では可能でなく行程方向でのみ可能なように十分剛性的に形成されていなければならない。これにより、力は圧電式アクチュエータ２から動的にかつほとんど減衰なしに弁ニードル４へ伝達される。その場合、ベローズ７は複数の半径方向で狭窄された領域１９と拡大された領域２０とを交互に備えている。ベローズ７はアクチュエータ２に隣接する区分２１に、本実施例では３つの拡大された領域２０と２つの狭窄された領域１９とにわたって比較的大きな直径を有している。これに続いて、小直径区分１７が設けられており、この小直径区分１７は端部側に補強部２２を備えている。
【００１５】
行程変換器３の小直径区分１７は、薄肉の金属的材料から成っていて行程変換器３に液密に溶接された弾性的なカプセル１０によって半径方向で囲われている。その場合、カプセル１０は大直径区分２１と小直径区分１７との間の移行部に形成された肩２４に溶接されることができる。カプセル１０は閉じた補償室９を囲んでおり、この補償室は絞り開口８を介して行程変換器３の内室１８に連通しており、その結果、特に図３から分かるように、行程変換器３の内室１８と補償室９との間の絞り開口８を通して液圧媒体６が流動的に出入りすることができる。
【００１６】
補償室９と内室１８との間の隔壁２３がベローズ７によって形成されている。これにより、補償室９は、特に温度に起因する長さ膨張、さらに製作誤差または摩耗現象による行程距離への準静的（quasistatisch）な影響の補償のために液圧媒体のための弾性的な貯蔵器を形成している。しかも、絞り開口８は使用液圧媒体の粘度に依存して十分小さく選択されており、その結果、行程変換器３内に存在する液圧媒体６は短い時間範囲内では非圧縮性の液体の性質を示す。それゆえ、アクチュエータ運動は補償室９による著しい圧力補償が行われることなしにミリ秒範囲内の持続時間で伝達される。しかし、アクチュエータ２の温度膨張（＞１秒）は液体移動によって補償されることができる。その場合、結合されたシステムであるアクチュエータ２、行程変換器３および弁ニードル４は戻しばね１２（図１）によって予負荷（vorspannen）されている。
【００１７】
本発明に基づく燃料噴射弁１は燃料とは異なる媒体を行程変換器３内の液圧媒体６として使用することを可能にする。このことによって、粘性および気化特性に関して使用目的に最良に適した液圧媒体６を選択することができる。液圧媒体としては特に沸点の高い比較的粘度の大きな例えば油圧オイルが適している。
【００１８】
本発明に基づく燃料噴射弁１は例えば温度の影響に起因する、行程方向での緩慢な変形の補償を許容し、他面において、アクチュエータ２の比較的迅速な行程運動が動的に減衰なしに増幅されて弁ニードル４へ伝達される。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に基づく燃料噴射弁の１実施例の縦断面を略示した図である。
【図２】図１の燃料噴射弁の行程変換器の拡大図である。
【図３】図２に符号ＩＩＩで示す円部分を拡大して示す図である。
【符号の説明】
１ 燃料噴射弁、 ２ アクチュエータ、 ３ 行程変換器、 ４ 弁ニードル、 ５ 弁座、 ６ 液圧媒体、 ７ ベローズ、 ８ 絞り開口、 ９ 補償室、 １０ カプセル、 １１ ケーシング、 １２ 戻しばね、 １３ 行程運動方向を示す矢印、 １４ 差込み結合部、 １５ 弁閉鎖体、 １６ 弁座面、 １７ 小直径区分、 １８ 内室、 １９ 狭窄された領域、２０ 拡大された領域、 ２１ 大直径区分、 ２２ 補強部、 ２３ 隔壁、 ２４ 肩、 ２５ 横孔

Claims (8)

1. 燃料噴射弁（１）、特に内燃機関の燃料噴射装置のための噴射弁であって、行程運動を生じるためのアクチュエータ（２）と、液圧媒体（６）によって充填されていて行程方向で変形可能な、アクチュエータ（２）の行程運動を弁ニードル（４）へ伝達するための行程変換器（３）とを備えており、弁ニードルに弁閉鎖体（１５）が配置されており、この弁閉鎖体が弁座面（１６）と共にシール座を形成している形式のものにおいて、絞り開口（８）を介して行程変換器（３）の内室（１８）に連通していてカプセル（１０）によって囲われた、液圧媒体（６）のための補償室（９）が設けられており、カプセル（１０）が弾性的に形成されていることを特徴とする燃料噴射弁。
2. カプセル（１０）が薄肉の金属体である、請求項１記載の燃料噴射弁。
3. カプセル（１０）が液密に行程変換器（３）に取付けられている、請求項１又は２記載の燃料噴射弁。
4. 補償室（９）が行程変換器（３）の小直径区分（１７）を半径方向で囲っている、請求項１から３までのいずれか１項記載の燃料噴射弁。
5. 行程変換器（３）の内室（１８）と補償室（９）との間の隔壁（２３）がベローズ（７）として形成されている、請求項１から４までのいずれか１項記載の燃料噴射弁。
6. 液圧媒体（６）が高い温度で沸騰する液体、例えば油圧オイルである、請求項１から５までのいずれか１項記載の燃料噴射弁。
7. アクチュエータ（２）の行程運動が行程変換器（３）からほとんど減衰されずに弁ニードル（４）へ伝達されるように、しかもアクチュエータ（２）、行程変換器（３）およびまたは弁ニードル（４）の、温度に起因する行程方向の変形が補償室（９）内へのもしくは補償室（９）からの液圧媒体（６）の流出もしくは流入によって補償されるように、絞り開口（８）の直径が液圧媒体（６）の粘度に依存して選択されている、請求項１から６までのいずれか１項記載の燃料噴射弁。
8. アクチュエータ（２）が圧電式または磁気ひずみ式のアクチュエータである、請求項１から７までのいずれか１項記載の燃料噴射弁。

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