JP4140184B2 - 燃料噴射装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の燃料噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジン等に高圧燃料を噴射するために、従来より、ピエゾアクチュエータ等を用いた油圧駆動式の燃料噴射装置が用いられている。かかる燃料噴射装置は、一般に、ピエゾアクチュエータの伸縮に伴って変位する大径のピストン部材と、作動油を充填した変位拡大室、および制御弁を駆動する小径のピストン部材を、この順に同軸的に配置しており、大径のピストン部材の変位を変位拡大室で油圧変換し、拡大して小径のピストン部材に伝達することができる。
【0003】
上記従来の燃料噴射装置において、ピエゾアクチュエータの伸長時、大径のピストン部材および変位拡大室を介して小径のピストン部材が下降し、制御弁を開弁すると、ノズルニードルの背圧室の圧力が低下し、ノズルニードルが上昇して噴孔から燃料が噴射される。その後、ピエゾアクチュエータを収縮させると、大径のピストン部材の上昇するのに伴い、小径のピストン部材が上昇し、制御弁が閉弁して燃料が停止される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の燃料噴射装置において、ピエゾアクチュエータの収縮時に、制御弁が再開弁して過剰な燃料が噴射されることがあった。これは、小径のピストン部材が上昇する際に、慣性によってオーバーシュートするためで、その反動で再下降して、制御弁を再開弁する現象が発生する。変位拡大室を有する上記構造では、小径のピストン部材が浮いた状態にあるため振動が収まりにくく、また、この振動の振幅が、ピエゾアクチュエータに印加される通電パルス幅に対して周期的に増減することから、噴射量も増減してしまう。すなわち、本来、通電パルス幅に比例して増加する噴射量が、振動の影響を受けて変動し、制御性が低下する問題があった。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、その目的は、小径のピストン部材の振動を抑制して、制御弁の再開弁による過剰な燃料噴射を抑制し、通電パルス幅に応じた精度よい噴射量制御を可能にすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の燃料噴射装置は、アクチュエータによって駆動される大径の第1のピストン部材と、制御弁を駆動する小径の第2のピストン部材の間に、作動流体を充填した変位拡大室を設けて、上記第1のピストン部材の変位を拡大して上記第2のピストン部材に伝達し、上記第2のピストン部材で上記制御弁を開閉することによりノズルニードルを上下動させる燃料噴射装置であり、上記第1のピストン部材を収容する大径の第1のシリンダと、上記第2のピストン部材を収容する小径の第2のシリンダとを、連続的にかつ偏心させて配置し、上記第1のシリンダと上記第2のシリンダの接続部に上記変位拡大室を設ける。そして、上記第1のシリンダと上記第2のシリンダの接続部に段差面を形成して、上記第2のピストン部材の上記変位拡大室側への移動量を規制するストッパ部となしたものである。
【0007】
上記ストッパ部を設けることで、噴射終了時、上記第2のピストン部材の上方への移動量が制限されるので、振動の振幅がそれ以上大きくならず、ストッパ部に当接することで、振動の減衰が行われやすくなる。よって制御弁の再開弁による過剰な燃料噴射が抑制され、精度よい噴射量制御が可能になる。また、上記第1のシリンダと上記第2のシリンダの接続部に段差面を形成して上記ストッパ部とすると、別部材を設ける必要がないので、簡易な構成で、ストッパ機能が得られる。
【0008】
請求項2では、上記変位拡大室内に、上記第2のピストン部材の振動を減衰させるダンパ部を設ける。上記ストッパ部に加えて、上記ダンパ部を設けることで、さらに、振動を減衰する効果が大きくなり、より精度よい噴射量制御が可能になる。
【0009】
請求項3では、上記ダンパ部を、上記変位拡大室内に配設したリング状部材の穴とする。上記変位拡大室内にリング状部材を固定あるいは遊嵌させて配すると、上記第2のピストン部材の変位に伴い、上記穴内を燃料が流通する際に、振動が減衰される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をディーゼルエンジンのコモンレール噴射システムに適用した例について説明する。図1は、本発明の燃料噴射装置の第1の実施の形態を示すもので、燃料噴射装置は、ピエゾアクチュエータ1が収容されるハウジングH1を有し、その下端に、流路形成部材H2、H3を介してノズルボディH4を配設し、リテーナH5で油密に固定してなる。ハウジングH1内には、上下方向に高圧燃料通路62が形成され、上側部に突設した燃料導入管63を介して、外部のコモンレール(図略)に連通している。ハウジングH1上側部には、また、ドレーン通路64に連通する燃料導出管65が突設され、燃料導出管65から流出する燃料は、燃料タンク(図略)へ戻される。
【0013】
ハウジングH1は略円柱状で、中心軸に対し偏心する縦穴61内に、上記ピエゾアクチュエータ1が脱着可能に挿通配設されている。縦穴61は、高圧燃料通路62の側方に平行に設けられ、ドレーン通路64は、縦穴61とピエゾアクチュエータ1の間の隙間を経由してさらに下方に延びている。ピエゾアクチュエータ1は、薄肉の金属管11内に収容されるピエゾスタック12と、ピエゾスタック12と一体に上下動するロッド部材13、ロッド部材13によって駆動されるプレート状の変位伝達部材14を有し、ロッド部材13周りには、金属管11下端に連続するベローズ15が延出して変位伝達部材14の外周に接続している。ベローズ15は、駆動部材13の変位に追従して上下方向に伸縮することにより変位伝達部14を変位可能となすとともに、ピエゾスタック12への予荷重を与える。
【0014】
ピエゾスタック12は、金属管11の上端に固定したコネクタ部16のリード線16a、16bに接続され、また、外周に絶縁部材(図略)を配設して金属管11との間の絶縁を確保している。ピエゾアクチュエータ1は、コネクタ部16の外周に配したリテーニングナット17を締め付けることによって縦穴21の上端に固定される。コネクタ部16外周のフランジ部と縦穴61の段付部の間には、リング状のシム18が介設されてこれらの間をシールするとともに、ピエゾアクチュエータ1の取付け高さの調整を行っている。
【0015】
図2は燃料噴射装置の下半部拡大図で、ピエゾアクチュエータ1の変位伝達部材14の変位は、ロッド21を介して第1のピストン部材である大径ピストン2に伝達される。大径ピストン2の下方には、変位拡大室3、第2のピストン部材である小径ピストン4が、同軸的に設けられ、小径ピストン4によって、制御弁である3方弁5の弁体51を駆動するようになしている。大小ピストン2、4は、これらの外径に対応する2つの異なる内径を有するシリンダ部材66内に摺動自在に配設され、変位拡大室3は、大小ピストン2、4間に形成される空間に、作動流体としての燃料を充填することにより形成される。変位拡大室3は、ピエゾアクチュエータ1の変位を油圧変換し、大小ピストン2、4の径差によって拡大して、小径ピストン4に伝達する。
【0016】
大径ピストン2の下端部には、逆止弁22が一体に設けられている。図3(a)に示すように、逆止弁22は、プレート状の弁体24と、弁体24を大径ピストン2側に付勢する皿ばね25と、これらを保持する逆止弁ホルダ26からなり、弁体24は、大径ピストン2内に設けられドレーン通路64に連通する低圧通路23を開閉する。逆止弁ホルダ26は、断面凹状で、断面凸状の大径ピストン2の下端部外周に固定され、中央に逆止弁ホルダ26内空間と変位拡大室3を連通させる貫通穴27を有している。燃料リーク等により、変位拡大室3内の圧力が低下すると、皿ばね25の付勢力に抗して弁体24が下降し、低圧通路23から変位拡大室3へ燃料が補充される。これにより、変位拡大室3内の気泡の発生等を防止することができる。なお、大径ピストン2は、ロッド21周りに設けたスプリング28によってアクチュエータ1側に付勢され、小径ピストン4は、その下端部周りに設けたスプリング29によって、弁体51側へ付勢されている。
【0017】
3方弁5は、ノズルニードル7の背圧室71への連通路52を、高圧通路53または低圧通路54に選択的に連通させることにより、背圧室71の圧力を増減する。高圧通路53は高圧燃料通路62に、低圧通路54はドレーン通路64にそれぞれ連通している。ピエゾアクチュエータ1が通電パルスの入力により伸長すると、その変位が大径ピストン2に伝えられ、変位拡大室3の燃料圧力を利用して変位を拡大して小径ピストン4に伝える。これにより、小径ピストン4とともに弁体51が下降すると、低圧流路54が開放されて、背圧室71内の燃料が3方弁5からドレーン通路64に流出し、ノズルニードル7が上昇して燃料が噴射される。一方、通電を終了して、ピエゾアクチュエータ1を収縮させると、大径ピストン2が上昇するのに伴い、小径ピストン4が上昇し、次いで弁体51が高圧通路53の燃料圧で上昇して、背圧室71に高圧燃料通路62から高圧燃料が流入し、ノズルニードル7を下降させる。
【0018】
通路72は、3方弁5を介さずに高圧燃料通路62と背圧室71を連通させる高圧通路で、高圧燃料通路62から高圧通路53へ至る通路の途中に、オリフィスを介して連通している。この通路により、高圧燃料通路62と背圧室71が常時連通するため、噴射開始時は、背圧室71の圧力低下を緩和し、ノズルニードル7を緩やかに開弁させる。一方、噴射終了時は、圧力を直ちに上昇させて、ノズルニードル7を迅速に閉弁させる効果がある。
【0019】
本発明では、変位拡大室3内に、中央の穴径が小径ピストン4の外径より小さい所定厚のリング状部材8(図3(b))を圧入固定し、一方の端面(下端面)を所定間隔で小径ピストン4に対向させて、小径ピストン4の上方への移動量を所定範囲に規制するストッパ部81となしている。また、リング状部材8中央の穴を、燃料の流通によって小径ピストン4の振動を減衰するダンパ部82としている。リング状部材8の上端面は、大径ピストン2と干渉しない位置にあり、その駆動を妨げることはない。
【0020】
大小ピストン2、4間に変位拡大室3を設けた構成において、ストッパ部81がない場合、大小ピストン2が上方に移動して駆動から開放されると、小径ピストン4は摺動方向に浮いた状態となる。このため、小径ピストン4が振動して再下降し、3方弁5の再開弁が生じやすくなるが、本発明では、ストッパ部81を設けたので、小径ピストン4の上方への移動量が規制され、それ以上、大きな振幅で振動できなくなる。従って、小径ピストン4による3方弁5の再開弁を抑制し、ノズルニードル7が下降し始めた後に、背圧室71の圧力低下により再び上昇すること、あるいは一時的に下降しなくなるのを防止して、噴射量が過剰に増加するのを防止できる。さらに、小径穴よりなるダンパ部82内を燃料が流通することにより、小径ピストン4の振動の減衰効果が高まる。
【0021】
図4は、本発明の効果を、リング状部材8を設けない従来構成と比較して示す図である。縦軸の噴射量は、本来、横軸の通電パルス幅に比例して増加することが望ましいが、ストッパ部がない従来構成では、小径ピストン4の振動により、3方弁5が再開弁し過剰な燃料が噴射される現象が生じる。しかも、この小径ピストン4の振幅は、周辺部品の質量とばね定数の関係から通電パルス幅に対し周期的に増減するため、図のように、通電パルス幅に対し噴射量が細かく増減することになり、これを繰り返しながら全体としては噴射量が増加するという関係にあった。これに対し、リング状部材8を設けた本実施の形態の構成では、小径ピストン4の振動が抑制され、かつ減衰が行われやすいために、通電パルス幅に対し噴射量がよりリニアに増加する。よって、噴射間の噴射量ばらつき、特に微小噴射量ばらつきが小さくなる利点がある。
【0022】
図5に本発明の第2の実施の形態を示す。図5(a)に示すように、本実施の形態では、ハウジングH1に大径ピストン2を摺動自在に保持する第1のシリンダ67を、縦穴61と同軸的に連続させて設け、小径ピストン4を摺動自在に保持する保持する第2のシリンダ68を、別部材H6に設ける。第1のシリンダ67は、ハウジングH1の中心軸と同軸上にあり、第1のシリンダ67と第2のシリンダ68は連続的に、かつ偏心させて設けられる。変位拡大室3は、第1のシリンダ67と第2のシリンダ68の接続部に設けられる。
【0023】
また、この時、第2のシリンダ68の外周縁が第1のシリンダ67の外周縁よりも外側に位置するように、つまり、図5(b)に示すように、第1および第2のシリンダ67、68の接続部の開口面積Aが上記第2のシリンダ68の断面積よりも小さくなるようにする。そして、本実施の形態では、第1のシリンダ67と第2のシリンダ68の接続部に形成され、小径ピストン4の上端面に対向位置する段差面を、ストッパ部83とする。このようにしても、上記第1の実施の形態と同様の振動防止効果が得られる。
【0024】
さらに、本実施の形態では、逆止弁22の逆止弁ホルダ26を、大径ピストン2に固定せず、変位拡大室3内(第1のシリンダ67の下端部内)に遊嵌させる。このようにすると、大径ピストン2に追従して逆止弁ホルダ26が上昇しないので、小径ピストン4の変位に伴い貫通穴27内を燃料が流通し、ダンパ部として機能させることができる。また、シリンダ67、68の接続部の開口面積が上記第2のシリンダの断面積よりも小さいため、この開口部を燃料が流通することによっても、ダンパ効果が得られる。
【0025】
逆止弁22としての機能は、上記第1の実施の形態と同様で、図6(a)のように、変位拡大室3に燃料が十分にある場合には、大径ピストン2が上昇しても、弁体24を大径ピストン2側に押圧する力〔皿ばね25のばね力+油圧力(大)〕が大きく、低圧通路23は閉鎖される。一方、変位拡大室3に燃料が十分ない場合、図6(b)のように、大径ピストン2が上昇すると、押圧力〔皿ばね25のばね力+油圧力(小)〕が小さくなり、弁体24は大径ピストン2から離れる。よって、低圧通路23が開放され、変位拡大室3が燃料の供給を受ける。変位拡大室3の、第1のシリンダ67側と第2のシリンダ68側とは、逆止弁ホルダ26外周クリアランスおよび中央の貫通穴27によって連通している。
【0026】
このように、本実施の形態では、シリンダ67、68の段差面によってストッパ部83を形成したので、ストッパ部の構成部材を別に設けて組付ける必要がなく、部品点数、組付けコストの削減が可能である。また、小径ピストン4を縦穴61内に設けず、別部材H6に設けたので、偏心穴で加工しにくい縦穴61の長さが短くなり、加工が容易になる。なお、本実施の形態では、高圧燃料通路62形状を変更することにより、流路形成部材H2、H3を一体化して流路形成部材H7とし、さらに部品点数を削減している。
【0027】
上記実施の形態では、ピエゾアクチュエータを用いたが、ピエゾ式に限らず、通電により変位を発生するものであれば、いずれのアクチュエータを用いてもよい。また、制御弁として3方弁を用いる必要はなく、他の方式でノズルニードルを開閉させる構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における燃料噴射装置の全体断面図である。
【図2】第1の実施の形態の燃料噴射装置の下半部拡大図である。
【図3】(a)は第1の実施の形態の燃料噴射装置の要部拡大図、(b)は筒状部材の全体斜視図である。
【図4】第1の実施の形態の効果を説明するための図である。
【図5】(a)は本発明の第2の実施の形態における燃料噴射装置の下半部拡大図、(b)はその要部拡大図である。
【図6】(a)、(b)は本発明の第2の実施の形態における逆止弁の作動を説明するための燃料噴射装置の要部拡大図である。
【符号の説明】
H1 ハウジング
1 ピエゾアクチュエータ(アクチュエータ)
11 金属管
12 ピエゾスタック
14 変位伝達部材
15 ベローズ
2 大径ピストン(第1のピストン部材)
22 逆止弁
26 逆止弁ホルダ
27 貫通穴(ダンパ部)
3 変位拡大室
4 小径ピストン(第2のピストン部材)
5 3方弁(制御弁)
51 弁体
61 縦穴
62 高圧燃料通路
63 導入管
64 ドレーン通路
65 導出管
67 第1のシリンダ
68 第2のシリンダ
7 ノズルニードル
71 背圧室

Claims (3)

  1. アクチュエータによって駆動される大径の第1のピストン部材と、制御弁を駆動する小径の第2のピストン部材の間に、作動流体を充填した変位拡大室を設けて、上記第1のピストン部材の変位を拡大して上記第2のピストン部材に伝達し、上記第2のピストン部材で上記制御弁を開閉することによりノズルニードルを上下動させる燃料噴射装置において、上記第1のピストン部材を収容する大径の第1のシリンダと、上記第2のピストン部材を収容する小径の第2のシリンダとを、連続的にかつ偏心させて配置して、上記第1のシリンダと上記第2のシリンダの接続部に上記変位拡大室を設け、上記第1のシリンダと上記第2のシリンダの接続部に形成した段差面を、上記第2のピストン部材の上記変位拡大室側への移動量を規制するストッパ部となしたことを特徴とする燃料噴射装置。
  2. 上記変位拡大室内に、上記第2のピストン部材の振動を減衰するダンパ部を設けた請求項1記載の燃料噴射装置。
  3. 上記ダンパ部が、上記変位拡大室内に固定または遊嵌されたリング状部材の穴よりなる請求項2記載の燃料噴射装置。
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