JP4493236B2 - ウエハ支持部材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体や液晶の製造装置において、半導体ウエハや液晶用ガラス等のウエハを支持するのに用いるウエハ支持部材及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体ウエハに成膜を施すPVD装置やCVD装置等の成膜装置、あるいは半導体ウエハに微細加工処理を施すエッチング装置等の半導体製造装置では、チャンバー内で半導体ウエハを支持するため、サセプターや静電チャックと呼ばれるウエハ支持部材が用いられている。
【0003】
図3に一般的な半導体製造装置の概略断面図を示すように、この半導体製造装置50は、サセプターと呼ばれるウエハ支持部材51をチャンバー63内に設置したもので、上記ウエハ支持部材51は、セラミック板状体52の一方の主面(最も広い面)を、半導体ウエハWを載せる載置面53とし、上記セラミック板状体52中に発熱抵抗体54を有するとともに、上記セラミック板状体52の他方の主面55に、金属製筒状体58の一方端側に備えるフランジ部59をロウ材層61を介して気密接合したもので、金属製筒状体58の他方端側に備えるフランジ部60をOリング62を介してチャンバー63の底面に気密接合することにより、ウエハ支持部材51をチャンバー63内に設置するとともに、チャンバー63内の気密性を維持するようになっている。
【0004】
また、セラミック板状体52の他方の主面55には、発熱抵抗体54への通電端子57や温度検出素子56を取着してあり、これらの導線が金属製筒状体58の内側を通ってチャンバー63の外側に導出されるようになっている。
【0005】
そして、この半導体製造装置50を用いて、半導体ウエハWに成膜加工やエッチング加工を施すには、半導体ウエハWをウエハ支持部材51の載置面53に載せた後、チャンバー63内を例えば10 − 11Pa以下程度の真空とし、抵抗発熱体54に通電してセラミック板状体52を発熱させ、温度検出素子56により得られる温度を基に半導体ウエハWを各種加工温度に加熱した状態でチャンバー63内に成膜用ガスやエッチング用ガスを供給することにより、半導体ウエハWに各種加工を施すようになっている。
【0006】
また、この時、ウエハ支持部材51は、チャンバー63と気密に接合してあるため、セラミック板状体52に備える通電端子57や温度検出素子56が成膜用ガスやエッチング用ガス中に含まれている塩素系やフッ素系の腐食性ガスに曝されることがない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、成膜加工やエッチング加工を行う半導体製造装置50では、半導体ウエハWを100〜300℃、さらには600℃程度の高温に加熱することが多く、ウエハ支持部材51には、常温から上記加工温度の間での熱サイクルが加わることになる。
【0008】
そして、この熱サイクルによる繰り返し応力は、強度的に弱い金属製筒状体58のフランジ部59とセラミック板状体52との接合部に集中して発生し、図4(a)(b)に示すように、金属製筒状体58のフランジ部59がクリープ変形を起こして接合部に剥離が発生し、数サイクルから数十サイクルの使用で、チャンバー63内の成膜用ガスやエッチング用ガスが金属製筒状体58内にガスリークが発生し、半導体製造装置に要求される高真空状態を維持できなくなるとともに、成膜用ガスやエッチング用ガス中に含まれている腐食性ガスによって通電端子57や温度検出素子56が腐食したり破損したりするといった課題があった。
【0009】
そこで、このような問題点を解決するため、金属製筒状体58をセラミックス製板状体52の材質に近い熱膨張係数を有する金属により形成することで、両者間の熱膨張差を小さくし、接合部に集中する熱応力を緩和したり、セラミック板状体52と金属製筒状体58のフランジ部59とを接合するロウ材層61として低ヤング率のロウを用いることで、接合部に集中する熱応力を吸収したり、金属製筒状体58のフランジ部59の下面に、セラミック板状体52と同種のセラミックスからなる応力緩和リングをロウ付けし、フランジ部をセラミック板状体52と応力緩和リングで挟み込むことで接合部に集中する熱応力を緩和し、接合部の剥離を防止することが提案されている(特開平9−213775号公報、特開平9−262734号公報参照)。
【0010】
しかしながら、これらの手段を用いたとしても、チャンバー63内には成膜用ガスやエッチング用ガス中に含まれている腐食性ガスが存在し、この腐食性ガスの存在によってロウ材層61が腐食を受け、さらに熱サイクルによって繰り返し加わる熱応力によってロウ材層61とセラミック板状体52や金属製筒状体58のフランジ部59との間の気密性が損なわれ、或いは金属製筒状体58自身が破損し50サイクル程度の使用でガスリークが発生するといった課題があり、未だ十分に満足できるものは得られていなかった。
【0011】
さらに、この種のウエハ支持部材51には、載置面53に載せる半導体ウエハWの温度分布を均一にすることが要求されており、セラミック板状体52の熱が金属製筒状体58を伝って逃げることにより、半導体ウエハWの均熱化が阻害されることを防止するため、金属製筒状体58の厚みを0.1〜2mm程度と薄くし、セラミック板状体52からの熱引けを抑えることが行われているが、このような薄肉の金属製筒状体58では、腐食性ガスによる腐食や熱サイクルによって繰り返し加わる熱応力によって疲労が蓄積され、破壊するといったおそれもあった。
【0012】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、セラミック板状体の一方の主面を、ウエハを載せる載置面とするとともに、上記セラミック板状体の他方の主面にロウ材層を介して筒状体を接合したウエハ支持部材において、少なくとも上記ロウ材層の外側露出部を覆うように、微小な空孔を有する、気孔率が3〜7%でかつ厚みが0.2〜0.5mmであるセラミック多孔質膜を被着したことを特徴とする。
【0013】
また、好ましくは上記セラミック板状体が窒化物系セラミック焼結体からなり、かつ上記筒状体がFe−Co−Ni合金又は窒化物系セラミック焼結体からなり、上記セラミック多孔質膜がアルミナからなるものが良い。
【0014】
また、このようなウエハ保持部材は、一方の主面をウエハを載せる載置面としたセラミック板状体の他方の主面に筒状体をロウ材層を介して接合した後、少なくとも上記ロウ材層の外側露出部を覆うように溶射法にて微小な空孔を有するセラミック多孔質膜を被着して製造することを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は本発明に係るウエハ支持部材を備える半導体製造装置を示す概略断面図である。図2は図1のA部を拡大した断面図である。
【0017】
この半導体製造装置1は、サセプターと呼ばれるウエハ支持部材2をチャンバー14内に設置したもので、ウエハ支持部材2は、セラミック板状体3の一方の主面(最も広い面)を半導体ウエハWを載せる載置面4とし、セラミック板状体3中に発熱抵抗体5を有するとともに、セラミック板状体3の他方の主面6に、筒状体9の一方端側に備えるフランジ部10をロウ材層12を介して気密接合したもので、筒状体9の他方端側に備えるフランジ部11をOリング15を介してチャンバー14の底面に気密接合することにより、ウエハ支持部材2をチャンバー14内に設置するとともに、チャンバー14内の気密性を維持するようにしてある。
【0018】
また、セラミック板状体3の他方の主面6には、発熱抵抗体5への通電端子8や温度検出素子7を取着してあり、これらの導線は筒状体9の内側を通ってチャンバー14の外側に取り出すようになっている。
【0019】
さらに、本発明のウエハ支持部材2は、少なくともセラミック板状体3と筒状体9のフランジ部10を接合するロウ材層12の外側露出部を覆うように微少な空孔を有するセラミック多孔質膜13を被着したことを特徴とし、図1ではロウ材層12の外側露出部を覆うように、セラミック板状体3の他方の主面6から筒状体9の外側面全体にセラミック多孔質膜13を被着してある。
【0020】
また、図1に示すウエハ支持部材2では、繰り返し加わる熱サイクルによって、セラミック板状体3と筒状体9のフランジ部10との接合部における剥離を防ぐため、筒状体9のフランジ部10の下面に、セラミック板状体3と同種のセラミックスからなる応力緩和リング16をロウ材層17を介して接合してあり、このように、筒状体9のフランジ部10を、セラミック板状体3と応力緩和リング16で挟むことによりフランジ部10の変形を防止し、また、セラミック板状体3と応力緩和リング16とは同種のセラミックスからなり、熱膨張係数が近似しているため、セラミック板状体3と筒状体9のフランジ部10との接合部に作用する熱応力を緩和することができ、気密性を高めることができる。
【0021】
そして、この半導体製造装置1を用いて、半導体ウエハWに成膜加工やエッチング加工を施すには、半導体ウエハWをウエハ支持部材2の載置面4に載せた後、チャンバー14内を例えば10 − 11Pa以下程度の真空とし、発熱抵抗体5に通電してセラミック板状体3を発熱させ、温度検出素子7により得られる温度を基に半導体ウエハWを各種加工温度に加熱した状態でチャンバー14内に成膜用ガスやエッチング用ガスを供給することにより、半導体ウエハWに各種加工を施すことができる。
【0022】
また、チャンバー14内には成膜用ガスやエッチング用ガスとともに、腐食性ガスが存在するが、本発明のウエハ支持部材は、腐食性ガスによる腐食を受け易いロウ材層12、ロウ材層17の外側露出部を覆うように、セラミック板状体3の他方の主面6から筒状体9の外側面全体にセラミック多孔質膜13を被着してあるため、ロウ材層12やロウ材層17の外側露出部が腐食性ガスに曝されず、ロウ材層12の腐食を防止することができる。その為、ロウ材層12やロウ材層17による本来の耐久性を維持することができ、過酷な条件下ではあるものの、寿命の長いウエハ支持部材とすることができる。
【0023】
その為、本発明のウエハ支持部材を用いれば、チャンバー14との気密性を長期間にわたって維持することができるとともに、セラミック板状体3に備える通電端子8や温度検出素子7が成膜用ガスやエッチング用ガス中に含まれている塩素系やフッ素系の腐食性ガスに曝されるようなことがない。
【0024】
ところで、このような効果を奏するためには、上述したように、少なくともロウ材層12やロウ材層17の外側露出部に被着する膜としては緻密なセラミック膜ではなく、セラミック多孔質膜13であることが重要である。
【0025】
なぜなら、緻密なセラミック膜は、通常、CVD法やPVD法、スパッタリング法等の膜形成手段によって成膜されるのであるが、このような成膜手段によって被着されたセラミック緻密質膜では、膜そのものの剛性が大きいため、熱によってロウ材層12、ロウ材層17や筒状体9が変形しようとする力を吸収することができず、繰り返し熱応力が作用すると膜の剥離が発生するからである。
【0026】
また、膜厚みを薄くして変形し易くすることも考えられるが、この場合、セラミック膜の膜厚みを1μm程度にまで薄くする必要がある。しかしながら、ロウ材層12やロウ材層17の外側露出部はその表面粗さが算術平均線粗さ(Ra)で約2μm程度と粗く、このような表面を完全に覆うように膜厚みが1μmのセラミック膜を被着することは困難であった。
【0027】
これに対し、本件発明者は種々の研究の結果、セラミック多孔質膜13を用いれば、熱応力が繰り返し作用しても十分な密着力が得られ、しかも気孔率と厚みを調整すれば腐食性ガスの侵入を十分に抑えることができることを見出したのである。
【0028】
即ち、セラミック多孔質膜13には微小な空孔が多数存在するため、緻密なセラミック膜と比較して剛性が小さいため、熱によってロウ材層12、ロウ材層17や筒状体9が変形しようとする力が働くと、セラミック多孔質膜13も変形し、ロウ材層12、ロウ材層17や筒状体9との間に作用する熱応力を吸収することができるため、剥離することなく、十分な密着力を得ることができる。そして、セラミック多孔質膜13であれば、ある程度厚みを厚くしても剥がれ難いため、微小な空孔を有するものの、腐食性ガスの侵入を防止することができる。
【0029】
そして、このようなロウ材層12、ロウ材層17や筒状体9との密着性と腐食性ガスの侵入を効果的に防止するには、セラミック多孔質膜13の気孔率を3〜7%とするとともに、その厚みtを0.2〜0.5mmとすることが好ましい。
【0030】
即ち、セラミック多孔質膜13の気孔率が7%を超えると、腐食性ガスがセラミック多孔質膜13中を通過し易くなり、ロウ材層12、ロウ材層17を腐食させるとともに、セラミック多孔質膜13の強度も低下し、熱応力によって破損するおそれがあるからで、逆にセラミック多孔質膜13の気孔率が3%未満となると、膜剛性が高くなり、繰り返し加わる熱応力によって膜の剥離が発生する確率が高くなるからである。
【0031】
また、セラミック多孔質膜13の膜厚みtが0.5mmを超えると、セラミック板状体3との間の熱膨張差あるいは筒状体9との間の熱膨張差による熱応力がセラミック多孔質膜13の密着強度より大きくなり、膜の剥離が発生し易くなり、逆にセラミック多孔質膜13の膜厚みtが0.2mm未満となると、腐食性ガスがセラミック多孔質膜13中を通過し易くなり、ロウ材層12、ロウ材層17を腐食させるからである。
【0032】
なお、好ましいセラミック多孔質膜13の気孔率は3〜5%が良く、また、好ましい膜厚みtは0.2〜0.4mmが良い。また、セラミック多孔質膜15の変形を阻害しない程度に微小な空孔を埋める封孔処理を行えばより効果的である。
【0033】
また、セラミック多孔質膜13を形成する材質としては、セラミック板状体3や筒状体9との熱膨張差ができるだけ近似しており、かつ塩素系やフッ素系等のハロゲン系腐食性ガスに対する耐食性に優れたものが良く、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化硼素、サイアロン、窒化珪素等を用いることができ、セラミック板状体3や筒状体9を形成する材質に合わせて適宜選択して用いれば良いが、これらの中でもハロゲン系腐食性ガスに対し、極めて優れた耐食性を有するアルミナからなるセラミック多孔質膜13を用いることが好ましい。
【0034】
なお、セラミック多孔質膜13を被着する方法としては、CVD法やPVD法を用いることもできるが、好ましくは溶射法により成膜することが良い。
【0035】
溶射法は気孔率を調整した多孔質のセラミック膜を三次元的に複雑な形状を有する部分にも容易に成膜でき、比較的短時間で厚みの厚い膜を形成することができる。例えば、気孔率が3〜7%のセラミック多孔質膜13を得るには、膜原料として平均粒径が10〜45μmのセラミック原料を用い、プラズマ電力を30kW、被投射物との距離を100〜150mmとすれば良い。
【0036】
一方、セラミック板状体3や応力緩和リング16を形成するセラミックスとしては、Al2O3、AlN、ZrO2、SiC、Si3N4等を主成分とするセラミック焼結体を用いることができ、これらの中でも特にハロゲン系腐食性ガスに対する耐食性に優れるアルミナ質焼結体あるいは窒化アルミニウム質焼結体を用いることが良く、例えば、アルミナ質焼結体の場合、Al2O3含有量99重量%以上に対し、SiO2、MgO、CaO等の焼結助剤を含有したものを用いれば良く、また、窒化アルミニウム質焼結体の場合、AlNを主成分とし、周期表2a族元素酸化物や周期表3a族元素酸化物を0.5〜20重量%の範囲で含有したもの、あるいはAlNを99重量%以上含有したものを用いれば良い。
【0037】
また、筒状体9は、室温から600℃の間で加わる熱サイクルによってセラミック板状体3との接合部にクラックが発生することを防止するため、セラミック板状体3と同程度の熱膨張を有するとともに、ハロゲン系腐食性ガスに対する耐食性を有する金属又はセラミック焼結体により形成したものが良く、具体的にはセラミック板状体3との熱膨張率差が6×10 − 6/℃以下であるものが良く、金属の場合、Mo、Fe−Ni−Co合金、Fe−Ni合金等を用いることができ、またセラミック焼結体の場合、セラミック板状体3と同種のセラミック焼結体により形成すれば良い。なお、セラミック板状体3と同種のセラミック焼結体とは、セラミック板状体3と主成分が同じセラミック焼結体からなることを言う。
【0038】
さらに、セラミック板状体3や応力緩和リング16と筒状体9とを接合するロウ材層12,17の材質としては、Ag−Cu系ロウ、Ti−Cu−Ag系ロウ、Au−Cu系ロウ、Ti−Cu−Au系ロウを使用温度に応じて適宜選択して用いれば良い。
【0039】
以上、本発明の実施形態について示したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で改良や変更できることは言うまでもない。
【0040】
【実施例】
(実施例1)
ここで、セラミック多孔質膜を有する本発明のウエハ支持部材と、セラミック多孔質膜を持たない従来のウエハ支持部材を用意し、気密性について調べる実験を行った。
【0041】
本実験で使用するウエハ支持部材は、セラミック板状体3を直径8インチ(約200mm)、厚み10mmの円板状体とし、AlN含有量99重量%の高純度窒化アルミニウム質焼結体により形成したものを用い、上記セラミック板状体中には、モリブデンコイルからなる抵抗発熱体を埋設したものを用いた。
【0042】
なお、セラミック板状体を形成する窒化アルミニウム質焼結体の比重は3.2、熱膨張率は5×10 − 6/℃であった。
【0043】
また、セラミック板状体に接合する筒状体は、直径190mm、厚み0.5mmの円筒状体とし、その両端側に厚みが0.5mmのフランジ部を備え、Fe−Ni−Co合金により形成したものを用いた。なお、筒状体を形成するFe−Ni−Co合金の熱膨張率は4.8×10-6/℃であった。
【0044】
さらに、応力緩和リング16は、セラミック板状体11と同じ窒化アルミニウム質焼結体からなるもので、外径が190mm、幅が5mm、厚みが5mmのリング状体をしたものを用いた。
【0045】
そして、セラミック板状体11と応力緩和リング16の接合面にCu−Ag−Ti系ロウ材を用い、800℃の温度でメタライズ層を形成し、さらにNiメッキを施すとともに、筒状体9のフランジ部10における接合面にはNiメッキを施した。
【0046】
そして、セラミック板状体の接合面にAg−Cu系ロウ材を塗布し、筒状体のフランジ部は押し付けた後、筒状体のフランジ部にAg−Cu系ロウ材を塗布し、応力緩和リングを押し付け、しかる後、850℃の真空中でロウ付け処理を行った。
【0047】
そして、本発明のウエハ支持部材においては、Ag−Cu系ロウ材からなるロウ材層の外側露出部を覆うように、セラミック板状体の接合面、ロウ材層の外側露出部、筒状体の外側面に溶射法にてアルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウムの3種類のセラミック多孔質膜をそれぞれ被着し、また、従来例のウエハ支持部材としてセラミック多孔質膜を被着しないものを用いた。なお、セラミック多孔質膜を被着したものにあっては、気孔率を4%、膜厚みを0.3mmとした。
【0048】
そして、これらのウエハ支持部材はCVD装置のチャンバー内にセットし、チャバー内にハロゲンガスを導入しプラズマを発生させた状態で、ウエハ支持部材を発熱、冷却させ、常温から550℃の熱サイクルを200サイクル加えた後のセラミック板状体と筒状体との間の接合部におけるガスリークの有無について調べる実験を行った。
【0049】
なお、ガスリークの測定は、ヘリウムリークテスターを使い測定した。ガスリークレートが1×10-12Pa・m3/sec以下をガスリークなしとして、ガスリークレートが1×10-12Pa・m3/secを超えるものはガスリークありとした。
【0050】
結果は表1に示す通りである。
【0051】
【表1】
【0052】
この結果、セラミック多孔質膜を持たない従来のウエハ支持部材は、200サイクルの試験において全く気密性を維持することができなかったのに対し、セラミック多孔質膜を被着した本発明のウエハ支持部材は、200サイクルの試験後においてもガスリークが見られず、気密性を維持することができた。
(実施例2)
そこで、本発明のウエハ支持部材2において、セラミック多孔質膜13の厚みを異ならせ、実施例1と同様の条件にて実験を行ない、セラミック板状体3と筒状体9との間の接合部におけるガスリークの有無及びセラミック多孔質膜の剥離の有無について調べる実験を行った。なお、セラミック多孔質膜の気孔率はいずれも5%とした。
【0053】
それぞれの結果は表2,3に示す通りである。
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
この結果、セラミック多孔質膜の膜厚みが0.1mmでは、ヘリウムガスの侵入を抑えることができず、ロウ材層が腐食してガスリークが発生し、セラミック多孔質膜の膜厚みが0.6mmでは、膜の剥離が見られ、その結果、ロウ材層が腐食してガスリークが発生した。
【0057】
これに対し、セラミック多孔質膜の膜厚みが0.2〜0.5mmの範囲にあるものは、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウムのいずれにおいても膜の剥離は見られず、また、ガスリークの発生もなかった。
【0058】
この結果、セラミック多孔質膜の膜厚みは0.2〜0.5mmとすることが良いことが判る。
(実施例3)
次に、セラミック多孔質膜の膜厚みを0.2mmとし、気孔率を異ならせ、実施例1と同様の条件にて実験を行ない、セラミック板状体と筒状体との間の接合部におけるガスリークの有無について調べる実験を行った。
【0059】
結果は表4に示す通りである。
【0060】
【表4】
【0061】
この結果、セラミック多孔質膜の気孔率が7%を超えたものは、ロウ材層の ガスにより腐食してガスリークが発生したが、気孔率を3〜7%としたものはロウ材層の腐食が見られず、ガスリークの発生がなかった。セラミック多孔質膜の気孔率が2%のものは熱サイクルにより膜にクラックが見られ、ガスリークが発生した。
【0062】
この結果、セラミック多孔質膜の気孔率は3〜7%の範囲することが良いことが判る。
(実施例4)
そこで、セラミック多孔質膜の膜厚みを0.2mm、気孔率を4%とし、熱サイクル回数を400回として実施例1と同様の実験を行った。
【0063】
結果は表5に示す通りである。
【0064】
【表5】
【0065】
この結果、セラミック多孔質膜にアルミナを用いたもののみが400回の熱サイクルにも耐え、ガスリークの発生が見られなかった。そこで、セラミック多孔質膜の状態について観察したところ、アルミナからなるセラミック多孔質膜が他の材料と比較して腐食が少なく、ロウ材層の腐食を抑えることができたものと思われる。
【0066】
この結果、セラミック多孔質膜としてアルミナを用いることが最も好ましかった。
【0067】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、セラミック板状体の一方の主面を、ウエハを載せる載置面とするとともに、セラミック板状体の他方の主面にロウ材層を介して筒状体を接合したウエハ支持部材において、少なくとも上記ロウ材層の外側露出部を覆うように微小な空孔を有するセラミック多孔質膜を被着したことから、ロウ材層がハロゲン系腐食性ガスに曝されることを防ぎ、セラミック板状体と筒状体との接合部からのガスリークの発生を長期間にわたって防止することができるため、寿命の長いウエハ支持部材を提供することができる。
【0068】
また、セラミック多孔質膜にアルミナを用いれば、ウエハ支持部材の寿命をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るウエハ支持部材を備えた半導体製造装置を示す概略断面図である。
【図2】図1のA部を拡大した断面図である。
【図3】従来のウエハ支持部材を備えた半導体製造装置を示す概略断面図である。
【図4】(a)(b)は従来のウエハ支持部材におけるセラミック板状体と筒状体との接合部における剥離状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1、50:半導体製造装置
2、51:ウエハ支持部材
3、52:セラミック板状体
4、53:載置面
5、54:抵抗発熱体
6、55:セラミック板状体の他方の主面
7、56:温度検出素子
8、57:通電端子
9、58:筒状体
10,11、59、60:フランジ部
12,17、61:ロウ材層
13:セラミック多孔質膜
14、63:チャンバー
15、62:Oリング
16:応力緩和リング
Claims (3)
- セラミック板状体の一方の主面を、ウエハを載せる載置面とするとともに、上記セラミック板状体の他方の主面にロウ材層を介して筒状体を接合したウエハ支持部材において、少なくとも上記ロウ材層の外側露出部を覆うように、微小な空孔を有する、気孔率が3〜7%でかつ厚みが0.2〜0.5mmであるセラミック多孔質膜を被着したことを特徴とするウエハ支持部材。
- 上記セラミック板状体が窒化物系セラミック焼結体からなり、かつ上記筒状体がFe−Co−Ni合金又は窒化物系セラミック焼結体からなり、上記セラミック多孔質膜がアルミナからなることを特徴とする請求項1に記載のウエハ支持部材。
- 請求項1に記載のウエハ支持部材の製造方法であって、一方の主面をウエハを載せる載置面としたセラミック板状体の他方の主面に筒状体をロウ材層を介して接合した後、少なくとも該ロウ材層の外側露出部を覆うように溶射法にて微小な空孔を有するセラミック多孔質膜を被着することを特徴とするウエハ支持部材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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