次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置の構成説明図、図2、図3は本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置における真空チャンバの側断面図、図4は本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置における真空チャンバの平面図、図5は本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置における真空チャンバの部分断面図、図6は本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置における下部電極の側断面図、図7は本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置における吸着プレートの平面図、図8は本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置における吸着プレートの底面図、図9は本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置における上部電極の動作説明図、図10は本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置における真空チャンバの開閉動作の動作説明図、図11は本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置に使用される電極部材の製造工程を示すフロー図、図12,図13は本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置に使用される電極部材の製造方法の工程説明図である。
まず図1を参照してプラズマ処理装置1の全体構成を説明する。プラズマ処理装置1は半導体ウェハなどの板状のワークを対象としてプラズマ処理を行う機能を有している。プラズマ処理装置1は減圧下でプラズマを発生させるための真空チャンバ2を備えている。真空チャンバ2の内部にはワークである半導体ウェハ5が載置される下部電極3が配置され、下部電極3の上方には、上部電極4が昇降自在に配設されている。上部電極4は真空チャンバ2の上部に当接する上部プレート6に設けられた昇降駆動部7によって昇降し、上部電極4が下降した状態では、下部電極3と上部電極4との間には密閉された処理空間2aが形成される。そしてこの状態において、上部電極4の上方は処理空間2aから隔離され、プラズマ放電が発生しない常圧空間2bとなる。
真空チャンバ2の側面には扉9によって閉じられたワーク出し入れ用の搬送口が設けられており、扉9を開放することにより、処理空間2a内への半導体ウェハ5の搬入・搬出を行うことができる。そして処理空間2a内において以下に説明するプラズマ発生手段によってプラズマを発生させることにより、下部電極3上に載置された半導体ウェハ5を対象としたプラズマ処理が行われる。ここでは、レジスト膜によるマスキングが施された半導体ウェハ5をプラズマエッチングすることにより半導体ウェハ5を個片に分割するプラズマダイシングや、プラズマダイシング後にレジスト膜をプラズマ処理によって除去するプラズマアッシングが行われる。
真空チャンバ2の内部空間には切換バルブ12が接続されており、切換バルブ12の吸引ポート12aには真空ポンプ11が接続されている。切換バルブ12を吸引ポート12a側に切り替えた状態で真空ポンプ11を駆動することにより、真空チャンバ2の内部空間が真空排気される。また切換バルブ12を吸気ポート12b側に切換えることにより、真空チャンバ2の内部には大気が導入され、処理空間2a内の真空破壊が行われる。
プロセスガス供給部13は流量制御バルブ14、開閉バルブ15を介して継手部材16に接続されており、プロセスガス供給部13を駆動することにより、上部電極4の下面から処理空間2a内に、プラズマ発生のためのプロセスガスが供給される。プラズマダイシングを行う場合にはSF6(6フッ化硫黄)などのフッ素系ガスが、またプラズマアッシングを行う場合には酸素ガスが、プロセスガスとして用いられる。半導体ウェハ5を対象としてフッ素系ガスを用いて行われるプラズマ処理において、処理効率を向上させるためには、処理空間2aにおいて上部電極4と下部電極3との間隔を挟間隔に設定することが望ましい。
下部電極3にはマッチング回路18を介して高周波電源17が電気的に接続されており、高周波電源17を駆動することにより下部電極3と上部電極4との間には高周波電圧が印加される。処理空間2a内を真空排気した後にプロセスガスを供給した状態で、高周波電圧を印加することにより、処理空間2aにおいてプラズマ放電が発生し処理空間2aに供給されたプロセスガスがプラズマ状態となる。これにより、下部電極3上に載置された半導体ウェハ5を対象としたプラズマ処理が行われる。マッチング回路18は、このプラズマ発生時において処理空間2a内のプラズマ放電回路と高周波電源17のインピーダンスを整合させる。上記構成において、真空ポンプ11、プロセスガス供給部13、高周波電源17、マッチング回路18は、処理空間2a内においてプラズマを発生させるプラズマ発生手段となっている。
下部電極3には、上面に設けられた吸引・ブロー用の貫通孔から真空吸引・エアブローを行うための、独立した2系統の吸引・ブローラインが接続されている。すなわち下部電極3の外周部と連通した継手部材27には、切換バルブ24を含む第1の吸引・ブローラインVB1が接続されており、下部電極3の中央部と連通した継手部材28には、切換バルブ25を含む第2の吸引・ブローラインVB2が接続されている。
第1の吸引・ブローラインVB1、第2の吸引・ブローラインVB2は、それぞれ切換バルブ24,25の吸引ポート24a、25aに吸引ポンプ26を接続し、切換バルブ24,25の給気ポート24b、25bに開閉バルブ22、23およびレギュレータ20、21を介して空圧源19を接続した構成となっている。切換バルブ24,25をそれぞれ吸引ポート側、給気ポート側に切り替えることにより、下部電極3の上面の貫通孔から真空吸引、エアブローを選択的に行わせることができる。この時、レギュレータ20、21を調整することにより、空圧源19からのエアーを任意圧力に設定することができる。
下部電極3、上部電極4にはそれぞれ内部に冷却水を循環させるための冷却孔が設けられており、下部電極3の冷却孔には継手部材30、31を介して、また上部電極4の冷却孔には継手部材32、33を介して冷却ユニット29が接続されている。冷却ユニット29を駆動することにより、下部電極3、上部電極4内の冷却孔内には冷媒が循環し、これによりプラズマ処理時の発熱による下部電極3、上部電極4の過熱が防止される。
上記構成において、昇降駆動部7、真空ポンプ11、切換バルブ12、流量制御バルブ14、開閉バルブ15、高周波電源17、マッチング回路18、開閉バルブ22、23、切換バルブ24、25および吸引ポンプ26は、制御部10によって制御される。制御部10が昇降駆動部7を制御することにより、上部電極4が昇降し、制御部10が真空ポンプ11、切換バルブ12を制御することにより、処理空間2a内の真空排気および真空破壊が行われる。
そして制御部10が流量制御バルブ14、開閉バルブ15を制御することにより、処理空間2aへのプロセスガスの供給オン・オフおよびガス流量制御が行われる。また制御部10が切換バルブ24、25、吸引ポンプ26を制御することにより、下部電極3の上面からの真空吸引のタイミングが制御され、さらに切換バルブ24、25、開閉バルブ22、23を制御することにより、下部電極3の上面からのエアブローのタイミングが制御される。
次に図2、図3、図4、図5を参照して、真空チャンバ2の詳細構造を説明する。なお図3は、図2におけるA−A断面を示している。図2〜図4において、真空チャンバ2の主体をなすチャンバ容器40は、平面視して略正方形状の矩形ブロック(図4参照)の内部を円形に切削除去することにより形成された筒状容器であり、外周部には環状に連なった側壁部40aが設けられている。
図2に示すように、側壁部40aの上部は側壁厚みが異なる側壁上部40bとなっており、側壁上部40bは側壁部40aの上端面Eよりも下方に設定された中間高さHLから上方に延出している。側壁部40aの下部と側壁上部40bとの側壁厚みの相違による環状の段差部は、上部電極4が下降した状態において上部電極4が径方向に延出した外縁部51aが当接する環状の密封面40dとなっている。そしてここでは密封面40dは、側壁部40aの上端面Eよりも下方に位置する中間高さHLに形成された形態となっている。
図5に示すように、外縁部51aの下面に設けられたシール装着溝51bには、シール部材61が装着されており、さらに外縁部51aの下面には導通フィン62が設けられている。上部電極4が下降するとシール部材61が密封面40dに押し付けられ、これにより処理空間2aは外部に対して密封される。そしてこれとともに、導通フィン62が密封面40dに押し付けられることにより、中間プレート51は、すなわち上部電極4は、接地部63に接地されたチャンバ容器40と電気的に導通する。
側壁部40aに包囲された底部40cには、上面に半導体ウェハ5が載置される下部電極3が配置されている。側壁部40aには、下端を下部電極3の上面の高さレベルに合わせて、ワーク出し入れ用の搬送口40fが、開口高さ寸法H1、開口幅寸法B(図4参照)の大きさで開口されている。ここで搬送口40fは、上端が側壁部40aにおいて密封面40dよりも所定の高さ寸法D1だけ下方に位置している。すなわち密封面40dは、側壁部40aにおいて搬送口40fよりも高い位置に形成されている。側壁部40aの外面には、搬送口40fを密閉する扉9が設けられており、扉開閉機構(図示省略)によって扉9を移動させることにより、扉9は開閉自在となっている。
下部電極3の構成を説明する。底部40cの上面には、誘電体41を介して下方に軸部42aが延出した形状の電極装着部42が保持されており、軸部42aは誘電体43を介して底部40cを下方に貫通している。電極装着部42の上面には、冷却プレート44と吸着部材45とを一体にした構造の電極部材46が、電極装着部42に対して着脱自在に装着されている。電極部材46の周囲は誘電体43によって囲まれており、さらに誘電体41、43の外周面と側壁部40aの内周面との間には、アルミニウムなどの金属で製作されたシールド部材47が装着されている。
シールド部材47は、誘電体41、43の外周面が嵌合する形状の略円筒状部材である。シールド部材47には、吸着部材45の上面高さに合わせて、外径方向に延出して側壁部40aと誘電体43との平面隙間を塞ぐ形状のフランジ部47aが設けられている。シールド部材47は、側壁部40aと誘電体41,43との間の隙間をシールドして、異常放電を防止する機能を有するものである。フランジ部47aには、通気孔47bが上下に貫通して設けられており、これにより、図3に示すように、下部電極3の上面側の処理空間2aと側壁部40aの下部に、切換バルブ12と接続して設けられた給排気口40eとの間のエアの流通が可能となっている。
下部電極3の内部構造の詳細を、図6、図7,図8を参照して説明する。まず、下部電極3において処理対象の半導体ウェハ5の下面に当接して吸着保持する機能を有する電極部材46について説明する。図6に示すように、電極部材46は、冷却プレート44の上面に吸着部材45をろう付けにより接合して形成されている。吸着部材45はアルミニウムなどの導電体を略円板形状に加工して製作された板状部材であり、上面には複数の貫通孔45aが形成されている。これらの貫通孔45aは、吸着部材45の下面側に形成された中央空間45b、外周空間45cと連通して設けられている。吸着部材45の上面には、後述するように、誘電体であるアルミナを溶射した誘電膜が形成されており、この誘電膜は、貫通孔45aが吸着部材45の上面に開口した孔部45d(図13参照)のエッジを覆う形状となっている。
中央空間45b、外周空間45cは、それぞれプラズマ処理の対象となる2種類の半導体ウェハ5、すなわち小型の半導体ウェハ5Aと大型の半導体ウェハ5Bに対応して設けられている。半導体ウェハ5Aを電極部材46上に載置した状態において、半導体ウェハ5Aによって覆われる範囲は中央エリアA1であり、中央空間45bは中央エリアA1に対応した径寸法で円形に設けられている。また半導体ウェハ5Bを載置した状態では、中央エリアA1とともに、更にその外周部分に位置する外周エリアA2が半導体ウェハ5Bによって覆われる。そして外周空間45cは外周エリアA2に対応した径寸法で、円環状に設けられている。
吸着部材45と冷却プレート44とを接着して一体化した状態では、中央空間45bは冷却プレート44の中央部に設けられた中央貫通孔44bと連通し、外周空間45cは冷却プレート44の外縁部に設けられた側方貫通孔44cと連通する。また冷却プレート44の下面には、冷却水が循環するための円環状の冷却孔44aが形成されている。
電極部材46を電極装着部42に装着した状態では、図2に示すように中央空間45bは、中央貫通孔44bおよび軸部42a内を上下に貫通して挿入された通気管49Aを介して継手部材28と連通する。そして外周空間45cは、側方貫通孔44cを介して、さらに誘電体41および底部40cを貫通する誘電体48に挿通する通気管49Bを介して、継手部材27と連通する。また冷却孔44aは、軸部42aの内部に設けられた冷媒流路42b、42cを介して、継手部材30、31と連通する。
継手部材27、継手部材28には、図1に示す2系統の吸引・ブローラインVB1,VB2がそれぞれ接続されており、図6に示す中央エリアA1、外周エリアA2内の各貫通孔45aから任意のタイミングにおいて真空吸引し、また正圧空気をブローすることが可能となっている。これにより、径サイズが異なる種類の半導体ウェハ5A、5Bを共通の電極部材46によって吸着保持し、また保持解除を行うことが可能となっている。
すなわち半導体ウェハ5Aを対象とする場合には、中央空間45bのみを吸引することによって半導体ウェハ5Aを吸着部材45に吸着保持する。そして半導体ウェハ5Aの吸着を解除する場合には、中央空間45b内に正圧空気を送給して貫通孔45aからエアブローすることにより、半導体ウェハ5Aを吸着部材45上面から剥離する。
また半導体ウェハ5Bを対象とする場合には、中央空間45b、外周空間45cの双方を吸引することによって半導体ウェハ5Bを吸着部材45に吸着保持する。そして半導体ウェハ5Bの吸着を解除する場合には、まず中央空間45b内に正圧空気を送給し、次いで時間差をおいて外周空間45c内に正圧空気を送給する。これにより、ウェハの中央部分から先に剥離させることができ、サイズの大きい半導体ウェハ5Bを対象とする場合にあっても、少いエアブロー量で短時間でスムーズにウェハ剥離を行うことができる。
次に図7、図8を参照して電極部材46に用いられる吸着部材45の詳細形状を説明する。図7、図8は吸着部材45の上面、下面をそれぞれ示している。図7、図8において、円板形状の吸着部材45の下面には、吸着部材45をそれぞれ所定深さだけ削り込むことにより、円形の中央空間45bおよび中央空間45bの外周に位置する円環状の外周空間45cが形成されている。外周空間45cの外縁は第1の環状接合面45eによって外周面と隔てられており、中央空間45bと外周空間45cとは、第2の環状接合面45fによって隔てられている。
中央空間45b、外周空間45cの内部には、貫通孔45aが格子配列で形成されており、さらにこれらの貫通孔45aのうち隣接する4つの貫通孔45aに囲まれた位置には、正方形状の島状接合面45gが同様に格子配列で設けられている。島状接合面45gの底面は、第1の環状接合面45e、第2の環状接合面45fと同一平面内にある。吸着部材45を冷却プレート44にろう付けによって接合する際には、これら第1の環状接合面45e、第2の環状接合面45f、島状接合面45gが、冷却プレート44の上面においてこれら接合面と対応する接合面にろう付けされる。
このように吸着部材45、冷却プレート44をろう付けにより接着して一体の電極部材46を形成する構成において、第1の環状接合面45e、第2の環状接合面45fに加えて、中央空間45b、外周空間45cの範囲に島状接合面45gを極力均一にしかも密に配置することにより、強固な接着強度を確保するとともに、プラズマ処理時の熱を吸着部材45から冷却プレート44に効率良く伝達することができるようになっている。なお吸着部材45の下面に接着面を形成する場合において、第1の環状接合面45eと第2の環状接合面45fとを連結する接合面を、外周空間45cを径方向に横切る形態で追加するようにしてもよい。
次に上部電極4および上部電極4を昇降させる昇降機構について説明する。図2に示すように、上部電極4はアルミニウムなどの導電体を上方に軸部50aが延出した形状に加工した保持部材50を有している。保持部材50の下面には、同じく導電体より成る略円板形状の中間プレート51が固着されており、さらに中間プレート51の下面には、保持リング53によって外周を保持されたシャワープレート52が装着されている。
中間プレート51には、密封面40dに当接する外縁部51aが外径方向に延出して設けられている。外縁部51aの内側に位置するシャワープレート52、保持リング53は、外縁部51aの下面よりも突出寸法D2だけ下方に突出した形状となっており、シャワープレート52、保持リング53の下面は、外縁部51aの下面よりも下方に突出した突出面となっている。
軸部50aは、上部プレート6に配設された軸受部54によって上下動自在に保持されており、さらに上部プレート6に配置された昇降駆動部7に結合部材55を介して結合されている。上部プレート6および軸受部54は、上部電極4を昇降自在に保持する支持機構となっている。昇降駆動部7を駆動することにより上部電極4は昇降し、下降位置において中間プレート51に設けられた外縁部51aが、チャンバ容器40に設けられた密封面40dに当接する。これにより、下部電極3の電極部材46と上部電極4のシャワープレート52との間には高さ寸法H2の処理空間2aが形成される。
このとき、真空チャンバ2内において上部電極4の上方は、常に外気圧と等しい常圧空間2bとなる。したがって、処理空間2a内でプラズマを発生させるために上部電極4と下部電極3との間に高周波電圧を印加した場合においても、上部電極4の上方で異常放電が発生することがない。これにより、上部電極4を昇降自在に構成するために必要な昇降代を確保しつつ、異常放電に起因する消費電力ロスやプラズマ放電のばらつきを防止することができ、安定したプラズマ処理を効率よく行うことが可能となっている。
上部電極4において、外縁部51aの下面から保持リング53の下面までの高さ寸法、すなわち突出面が外縁部51aの下面から下方に突出する突出寸法D2は、搬送口40fの上端部から搬送口40fの直上に位置する密封面40dまでの高さ寸法D1よりも大きくなるように設定されている。したがって上部電極4が下降した状態では、保持リング53の下面は搬送口40fの上端部よりも下方に位置する。これにより、処理空間2aにおけるシャワープレート52と吸着部材45との間の高さ寸法H2、すなわち電極間隙間を、半導体ウェハ5を対象としたフッ素系ガスによるプラズマ処理を効率よく行うのに適した挟隙間に設定することが可能となっている。
そして図9に示すように、昇降駆動部7を異動して上部電極4を上昇させた状態では、保持リング53は搬送口40fよりも上方に位置する。そしてこの状態で扉9を開放することにより搬送口40fは開状態となるが、このとき搬送口40fの開口高さ寸法H1の範囲には上部電極4は存在しない。したがって、基板搬送機構64によって半導体ウェハ5を処理空間2a内に搬入・搬出するワーク搬送動作において、基板搬送機構64と上部電極4との干渉を生じることがない。
すなわち本実施の形態に示すプラズマ処理装置においては、上部電極4における突出寸法D2が、チャンバ容器40における高さ寸法D1よりも大きくなるように寸法設定を行うことにより、半導体ウェハ5を対象としたプラズマ処理を高い効率で行うのに望ましい電極間の挟隙間を実現しつつ、搬送動作を支障なく行うのに必要な開口高さ寸法H1を確保することが可能となっている。
上記構成において、上部電極4は密封面40dに当接可能な環状の外縁部51aを有するとともに、外縁部51aよりも内側の下面側に外縁部51aの下面よりも下方に突出した突出面を備えた形態となっている。そして昇降駆動部7は、外縁部51aを密封面40dに当接させることにより、下部電極3と上部電極4との間に密閉された処理空間2aを形成する昇降機構となっている。そしてこの昇降機構は、上部電極4を昇降自在に保持する支持機構に装着された構成となっており、このような構成を採用することにより、真空チャンバ2の構造の簡易化・コンパクト化が実現されている。
図2において、シャワープレート52の上面側に対応する中間プレート51の下面には、ガス空間51cが形成されている。ガス空間51cは、軸部50aの内部を貫通する通気管49Cを介して、継手部材16に連通している。継手部材16は、図1に示す開閉バルブ15と接続されており、プロセスガス供給部13から送られるプロセスガスは、ガス空間51cまで到達した後、シャワープレート52の微細孔から処理空間2a内に吹き出される。
保持部材50の下面側には冷媒循環用の冷却ジャケット50dが形成されており、冷却ジャケット50dは軸部50aの内部に設けられた冷媒流路50b、50cを介して継手部材32、継手部材33と連通している。継手部材32、継手部材33は、図1に示す冷却ユニット29に接続されており、冷却ユニット29を駆動して冷却ジャケット50dに冷媒を循環させることにより、プラズマ処理によって昇温した中間プレート51を冷却して過熱を防止する。
次に上部プレート6を上部電極4とともに開閉する開閉機構について説明する。図2、図3において、側壁上部40bの上端面Eに当接した状態の上部プレート6の上面には、2本の開閉部材57が結合ブロック57aによって固着されており、2本の開閉部材57の一方側(図3において右側)の端部には、これらを連結する形で把持ロッド56が結合されている。チャンバ容器40の左側面にはヒンジブロック58が固着されており、ヒンジブロック58には水平なヒンジ軸59が軸支されている。
開閉部材57の他方側は、上部プレート6の外側まで延出して、ヒンジ軸59によって軸支されている。さらに開閉部材57の端部には、ダンパ60がピン60aを介して結合されている。開閉部材57、ヒンジブロック58、ヒンジ軸59は、上部プレート6を回動させて開閉するヒンジ機構を構成している。上部プレート6を開放する際には、把持ロッド56を把持して上方に持ち上げ、図10に示すように、上部プレート6を上部電極4とともに、ヒンジ軸59廻りに回動させる。
これにより、チャンバ容器40は上面の開口部分が全面的に開放された状態となり、下部電極3における電極部材の交換や内部のクリーニングなどのメンテナンス作業を作業性良く行うことができる。すなわち、本実施の形態においては、上部電極4を保持する支持機構は、上述のヒンジ機構によって水平軸廻りに回動自在に装着された構成となっている。ダンパ60は、開放された上部プレート6を閉じる際に上部電極4や上部プレート6の自重を支えるのに必要とされる保持力を軽減して、開閉作業動作を容易にする機能を有している。
次に下部電極3に使用される電極部材46の製造方法について、図11、図12、図13を参照して説明する。ここでは、電極部材46を構成する吸着部材45、冷却プレート44を一体化して、下部電極3に装着される電極部材46を製造する過程を示している。まず個別部品としての冷却プレート44、吸着部材45を、それぞれ機械加工により製作する(ST1A),(ST1B)、すなわち図12(a)に示すように、円板状部材に貫通孔45a、中央空間45b、外周空間45c、第1の環状接合面45e、第2の環状接合面45fを形成して吸着部材45を製作し、同様に冷却ジャケット50d、中央貫通孔44b、側方貫通孔44c、ろう付け面44dを機械加工により形成して冷却プレート44を製作する。ここで、吸着部材45の下面の平面形状と冷却プレート44のろう付け面44dの平面形状が同一となるように、機械加工が行われる。
次いでろう付けが行われる(ST2)。すなわち図12(a)、(b)に示すように、ろう付け面44dに第1の環状接合面45e、第2の環状接合面45fをろう付けにより接合することにより、冷却プレート44、吸着部材45を一体化する。次いでアルミナ溶射が行われる(ST3)。すなわち冷却プレート44と一体化された吸着部材45の上面を対象として、誘電体であるアルミナを溶射して誘電膜を形成する。すなわち図13(a)に示す状態の吸着部材45の上面に、図13(b)に示すように、アルミナの溶射膜65を形成する。
このとき、貫通孔45aが板状部材である吸着部材45の上面に開口した孔部45dにおいては、溶射膜65が貫通孔45a内に部分的に垂下して付着することにより、溶融したアルミナは孔部45dのエッジに付着して覆う形状の孔部付着誘電膜65aとなる。またアルミナの溶射範囲は吸着部材45の上面のみだけでなく、吸着部材45の下面と同一平面形状のろう付け面44dとが接合された状態において、図13(c)に示すように、吸着部材45の側端面の全範囲と冷却プレート44の側端面の一部(ろう付け面44d(ろう付けによる接合部分)から所定幅だけ下方の範囲)を含んだ範囲に、溶射膜65が形成される。
この後、アルミナ溶射面を対象として表面研磨が行われる(ST4)。すなわち、図13(c)に示すように、吸着部材45上面に溶射された溶射膜65を機械研磨し、平滑な被覆面65bを形成する。この機械研磨により、貫通孔45aの孔部45dを覆った孔部付着誘電膜65aの上面が部分的に除去され、当初孔径d1で加工された貫通孔45aの開口部の有効孔径はd1よりも小さいd2となる。したがって、真空吸引やエアブローを適切に行う上で必要とされる孔径d2よりも大きい孔径d1で、貫通孔45aを穴明け加工することができる。これにより、加工難度が高い微細孔の穴明け加工を必要とせずに、微細径の貫通孔を設けることが可能となる。
すなわち上述の電極部材46を製造する電極部材の製造方法は、吸着部材45に複数の貫通孔45aを形成する貫通孔形成工程と、貫通孔45aが形成された吸着部材45の上面にアルミナを溶射することにより、貫通孔45aが吸着部材45の上面に開口した孔部45dのエッジを覆う形状の溶射膜65を形成する溶射工程と、溶射膜65が形成された吸着部材45の表面を機械研磨する表面研磨工程とを含む形態となっている。
このように、下部電極3において上面に露呈されてプラズマに暴露される部分を上述のような形態の誘電膜で覆うことにより、次のような優れた効果を得る。従来装置においては、電極部材の表面は大部分が金属面が露呈した構成となっていたため、プラズマアッシングによって真空チャンバ内に付着した堆積物を除去するためのクリーニング実行の都度、電極部材の金属部分はプラズマに曝されることとなっていた。このため電極部材の表面はプラズマのスパッタリング効果によって除去され、電極部材の部品寿命が短くなって部品消耗コストが上昇するとともに、スパッタリングによる飛散物が装置内面に付着して汚染する結果となっていた。
これに対し、本実施の形態においては、電極部材46の上面を誘電膜によって覆う構成としていることから、金属表面が直接プラズマに曝されることがない。したがって金属がスパッタリングによって除去されることによる飛散物の発生が抑制され、飛散物付着による装置内部の汚染を防止するとともに、下部電極を電極部材の部品寿命を延長させることが可能となっている。
さらに、本実施の形態においては、孔部45dのエッジを覆った形状の孔部付着誘電膜65aを形成することにより、貫通孔45aの開口部のエッジ部分の耐エッチング性を向上させて局部的な部品寿命を延長させるとともに、エッジ部にて発生しやすい異常放電を防止することができる。また電極部材46の外周面において、吸着部材45の側端面と冷却プレート44の側端面の一部を溶射膜65で覆うことにより、下部電極3の外周近傍での異常放電の発生を防止することができる。
なお、電極部材46を下部電極3に装着して半導体ウェハ5を対象としたプラズマ処理を反復実行する過程において、吸着部材45の表面はプラズマのエッチング作用によってダメージを受け、被覆面65bが荒れた状態となる。そしてこの表面ダメージが進行すると電極部材46は使用に耐えない状態となり、新たな電極部材46と交換される。従来は、表面ダメージが生じた電極部材46は耐用寿命を過ぎた消耗部品として廃却処分されていたが、本実施の形態に示す電極部材46は、以下のリサイクル方法によって再生処理を行うことにより、再使用が可能となっている。
このリサイクル方法においては、まず使用済みの電極部材46において吸着部材45上面の溶射膜65をブラストなどの方法により除去する(膜除去工程)。次いで溶射膜65が除去された後の吸着部材45の上面に、図13(b)と同様に、再び溶射膜65を溶射により形成する(再溶射工程)。そして溶射後の吸着部材45の表面を再び機械研磨することにより、図12(c)に示すように吸着部材45上面の溶射膜65には平滑な被覆面65bが形成され、再び使用可能な状態となる。これにより、複雑な機械加工や接合工程を経て製作される高コストの電極部材を繰り返し使用することが可能となり、プラズマ処理装置のランニングコストを低減することが可能となる。