JP4491787B2 - 耐硫酸性セメント組成物およびセメント硬化体 - Google Patents

耐硫酸性セメント組成物およびセメント硬化体 Download PDF

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Description

この発明は耐硫酸性セメント組成物およびセメント硬化体、詳しくは、例えばトンネルおよび大空洞構造物などの吹付け工法(吹付けコンクリート)による覆工、補強工事に好適で、硫酸酸性環境においても優れた耐久性を示す耐硫酸性セメント組成物およびそれを用いたセメント硬化体に関する。
トンネルの掘削工事などでは、露出した地山の崩落を防ぐため、急結剤を添加した急結コンクリートの吹付け工法が知られている(特許文献1)。
特許文献1では、コンクリートポンプにより主管から圧送されたベースコンクリート(フレッシュコンクリート)と、別の管から圧送された急結剤とを、吹付け用ノズルの直前で合流させて混合し、急結性吹付けコンクリートとして地山面に吹付ける。
ところで、コンクリートの吹付け工事においては、吹付け時にコンクリートのはね返り(リバウンド)が起き易く、粉塵も発生する。そのため、良好な作業環境を確保する対策が必要となる。例えば、発塵を抑制するには、ポルトランドセメント中にシリカフュームを5重量%添加し、細骨材に含まれる粒径が150μm以下となる微粉末の量を、15重量%に調整することが有効とされている(非特許文献1および非特許文献2)。
また、対象地盤が硫酸酸性岩盤の場合には、従来、高炉スラグ微粉末が添加された高炉セメントが使用されている。これは、以下の理由による。すなわち、高炉セメントの水和反応は、セメントクリンカの水和と高炉スラグ微粉末の水和との2種類に分かれる。このうち、高炉スラグ微粉末の水和は、セメントクリンカの水和により生成される水酸化カルシウム(Ca(OH))と、高炉スラグ微粉末とが反応するものである。
したがって、硫酸酸性岩盤に高炉セメントを使用すれば、岩盤中の硫酸と反応して硫酸カルシウム(CaSO)を生成させる水酸化カルシウムの量が、普通ポルトランドセメントに比べて減少する。さらに、高炉スラグ微粉末をポルトランドセメントに添加することにより、水酸化カルシウムを多く発生させるエーライト量を抑えることができる。したがって、コンクリート硬化体中の水酸化カルシウム量を減少させる高炉セメントは、耐硫酸性を有したセメントと言える。
ところで、硫酸酸性岩盤のpHは1〜4の場合が多い。このような低pHの岩盤に土木建築用の構造物を構築する場合には、必ずしも完全な耐硫酸性である必要はなく、実用上は、従来の土木建築構造用セメントに比べて耐硫酸性に優れ、かつ耐用年数が長いものであればよい。これは、セメントの種類により、耐硫酸性に差はあるものの、完全な耐硫酸性を期待できないためと考えられる。
これを踏まえて、従来、耐硫酸性を得る方法としては、以下のものが知られていた。
(a)酸に溶解しないポリマーなどの有機物をコンクリート表面に被覆したり、コンクリートに混合して使用する(特許文献2)。
(b)セメント水和物中で酸に溶解し易いポルトランダイト〔Ca(OH)〕の生成量を減らすため、アルミナセメントを使用する(特許文献2)。
(c)ポルトランダイトの生成量を減らすため、フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末などの混合材をポルトランドセメントに添加する。このうち、高炉セメントが多用さている(特許文献3)。
特開2004−67474号公報 特開2000−128618号公報 特開2002−128559号公報 コンクリート標準示方書−施工編、土木学会、2002年 NATM設計施工指針、日本鉄道建設公団、1996年
しかしながら、硫酸酸性岩盤用の吹付けコンクリートとして高炉セメントを使用すれば、その始発時間が短くなり、吹付け時の吹付けコンクリートのはね返りが多くなる。よって、高炉セメントは、作業環境の面および施工コストの面から、必ずしも満足するものではなかった。しかも、耐硫酸性のレベルにおいても、高炉セメントは普通ポルトランドセメントに比べれば優れているものの、pHが1〜4と低い地盤に対しては、十分ではなかった。
また、特許文献2に記載された(a)ポリマーなどの有機物および(b)アルミナセメントは、何れも高価である。また、特許文献3に記載された(c)フライアッシュは、初期材齢においてポゾラン反応性が悪いので、ポルトランダイトの消費速度が遅い。そのため、初期材齢の強度発現性が低下し、一般に耐硫酸性セメント用混合材としては適当ではなかった。
また、シリカフューム、高炉スラグ微粉末などの混合材についても、耐硫酸性を高めるために多量に使用すれば、コンクリート硬化体の初期強度の発現性が低下する。その結果、岩盤などから継続的に硫酸が流出する施工現場では、コンクリートの打設後、数日で型枠を外すと、脱型の直後にコンクリート硬化体が硫酸に浸食され易かった。
そこで、発明者らは鋭意研究の結果、凝結時間(特に凝結の始発時間)を調整可能な材料として石灰石微粉末に着目した。すなわち、石灰石微粉末を添加することで、吹付け性能が高炉セメントに比べて顕著に優れた耐硫酸性セメントが得られた。しかも、石灰石微粉末を添加した耐硫酸性セメントの硬化体は、無添加のものと耐硫酸性は変わらない。通常、石灰石は硫酸と反応して分解するのであるが、このように耐硫酸性に変化がないのは、石灰石微粉末とセメント中のカルシウムアルミネートが水和し、反応物であるカルシウムカルボアルミネートが生成されるためであると考えられる。
この発明は、高い耐硫酸性が得られ、しかも吹付け用の材料として使用した際の吹付け性能を高めることができ、これにより吹付けコンクリートなどの吹付け用の材料として好適な耐硫酸性セメント組成物およびそれを用いたセメント硬化体を提供するものである。
請求項1に記載の発明は、硫酸酸性岩盤への吹き付けに用いるセメント組成物であって、2CaO・SiO の含有量が40〜60重量%であるポルトランドセメント30〜65重量部と、シリカフューム2〜10重量部と、ブレーン値3000〜10000cm /gの高炉スラグ微粉末30〜65重量部と、石膏0〜5重量部と、ブレーン値4500〜9000cm /gの石灰石微粉末0.5〜11重量部とからなり、JSCE−D102の吹付けコンクリート用急結剤品質規格に定められた試験に準じ、前記セメント組成物に急結剤を5〜10重量%添加して、水セメント比を56%、細骨材セメント比3.0としたモルタルの凝結の始発時間が10〜100分間であり、前記セメント組成物、粗骨材、細骨材、水、混和剤を練混ぜて作製したコンクリート供試体を、7日経過時からpH0.5〜pH1.5の硫酸溶液に52週間浸漬した後の質量減少率が20%以下であることを特徴とする耐硫酸性セメント組成物である
請求項1に記載の発明によれば、JSCE−D102の吹付けコンクリート用急結剤品質規格に定められた試験に準じ、水セメント比を56%、細骨材セメント比3.0とし、急結剤の添加量を5〜10重量%とした凝結試験において、モルタルの凝結の始発時間が10〜100分間となる耐硫酸性セメント組成物としたので、耐硫酸性を有しながら、吹付け用の材料とした際の吹付け性能を高めることができる。
耐硫酸性セメント組成物の用途は限定されない。例えば、土木建築用構造物の構築、岩盤の補強、地盤改良などが挙げられる。特に、トンネルなどの覆工および補強工事に使用される吹付けコンクリートに好適である。
モルタルの凝結の始発時間が10分間未満では、吹付けコンクリートのこわばり(固化)が早く、吹付け面からのはね返りが多くなり、吹付け性能は低下する。また、100分間を超えると、そのはね返りは少なくなるものの、吹付け面から吹付けコンクリートがダレ落ちる可能性が高まる。好ましい始発時間は、15〜30分間である。この範囲であれば、吹付けコンクリートの急結性を十分に発揮することができるというさらに好適な効果が得られる。
以下、JSCE−D102の吹付けコンクリート用急結剤品質規格に準じた凝結試験を説明する。
練混ぜ用の水は、上水道水または水道法第4条(水質基準)に適合するものとする。砂は、JIS R 5201に規定する標準砂を使用する。モルタルの配合は、水セメント比を50%、細骨材セメント質量比(細骨材セメント比)3.0とする。ただし、この発明では水セメント比は56%である。
試験における急結剤の添加量は、各メーカーの推奨量とする。ただし、この発明では、急結剤の添加量を5〜10重量%としている。
これらの材料の練混ぜは、次のように行う。すなわち、粉末急結剤を使用する場合には、あらかじめセメントと細骨材と急結剤とを30秒間練混ぜてから注水し、さらに60秒間練混ぜる。
モルタルの凝結試験は、JSCE−D102の附属書に示す貫入抵抗によるモルタルの凝結時間測定方法で行うものとする。
この凝結時間測定方法における始発時間とは、セメントと水とが最初に接した後、モルタルの貫入抵抗が3.5N/mmに達するまでに要する経過時間である。また、終結時間とは、セメントと水とが最初に接した後、モルタルの貫入抵抗が28.0N/mmに達するまでに要する経過時間をいう。
モルタル試料の容器としては、剛性を有し、水密性、非吸収性、かつ油の付着していないもので、その水平な断面形状は円形または長方形のものとする。容器の最小横寸法および深さは、150mm以上とする。
貫入抵抗試験装置としては、油圧またはスプリングを介して、貫入針に貫入力を与える機構を有し、かつ貫入に要する力を圧力計またはスプリングによって最大1000Nまで、精度10Nで測定可能な装置とする。
貫入針としては、100mm、50mm、25mmおよび12.5mmの断面積を有し、先端が平面に仕上げられた丸鋼を用いる。貫入針の頭部は、貫入抵抗試験装置に着脱可能なように加工され、貫入針の先端から25mmの位置の円周に刻印が付けられている。
突き棒としては、断面円形の鋼棒で、直径16mm、長さ約610mmを有し、一端を半球形に丸めたものを採用する。
モルタルの凝結試験の方法を、以下説明する。
容器内を満たすために十分な量のモルタルを容器に入れ、振動機または突き棒により締め固める。突き棒により締め固める場合には、試料の上表面6cmにつき、1回の割合で全表面を均等に突く。振動機により締め固める場合には、表面がほぼ平面に仕上がるまで振動機を作動させる。
容器の側面を突き棒により軽くたたき、振動機または突き棒により発生した空隙を無くすと同時に、試料の表面を水平にならす。
振動や衝撃を与えずに所定の温度で、試料を貯蔵する。この間、モルタル中の水分が蒸発しないように湿布を掛けておき、ブリーディングの水を除く時と貫入試験を行う時だけ、覆いを除くようにする。
貫入抵抗試験は、次による。
すなわち、30分毎に、また貫入試験の直後に容器を傾け(12度程度の傾斜)、ピペットによりブリーディングの水を捨てる。
プロクター針をモルタル中に10秒間で25mmの深さまで貫入させ、そのときの所要の力とモルタル練混ぜ後の経過時間を記録する。使用する針は、モルタルの硬化状態に応じて適当な寸法のものを選ぶ。
次回の貫入は、既往の試験で乱された表面を避けて行う。それには、針貫入の純間隔を、使用する針の2倍以上でかつ13mm以上とし、貫入位置と容器側面との純間隔は25mm以上とする。貫入抵抗値の計算は、針の貫入深さ25mmを生じるまでに要した力を、針の支持面積で割って、貫入抵抗をN/mmの単位で計算する。
この発明における耐硫酸性セメント組成物の水セメント比は、非特許文献2に規定される水セメント比55〜60%のうち、56%とした。
急結剤の添加量が5重量%未満では、始発時間が著しく長くなり、急結しない。また、10重量%を超えると、始発時間が著しく短くなり、吹付け材料のはね返りが極端に多くなる。
コンクリート供試体をpH0.5未満の硫酸溶液に浸漬した場合には条件が厳しく、耐硫酸性岩盤のpH1〜4の実態にそぐわない。また、コンクリート供試体をpH1.5を超える硫酸溶液に浸漬した場合には、セメント間の耐硫酸性にほとんど差がなく、優劣の評価がし難い。pH0.5〜pH1.5の範囲をさらに狭めて制御するためには、設備投資が必要になる。
52週経過時における供試体の質量減少率が20%を超えると、高炉セメントを使用した硬化体の耐硫酸性と同等となり、耐硫酸性を高めることができない。供試体の好ましい質量減少率は15%以下である。この範囲であれば、高炉セメントと比較して著しく優れた耐硫酸性が得られる。
ポルトランドセメントにシリカフュームを混合したことにより、何れも耐硫酸性セメント組成物を含むセメントペースト、モルタル、コンクリートに高い流動性が得られる。これにより、水和組織が早期に密になり、セメントペーストなどが硬化直後から硫酸に対して浸食され難くなる。また、2CaO・SiOの含有量が多いセメントクリンカ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末、石膏を添加したので、酸に極めて弱いセメント水和物のポルトランダイトがフリーの状態で存在し難い耐硫酸性セメント組成物およびその硬化体を得ることができる。
特に、ポルトランドセメント中における2CaO・SiOの含有量を40〜60重量%としたので、ポルトランダイトの生成量が少なくなる。これにより、耐硫酸性セメント組成物の耐硫酸性の度合いをさらに高めることができる。
ポルトランドセメント、シリカフューム、高炉スラグ微粉末、石膏の各配合量は、全組成物量に対する割合である。また、石灰石微粉末の添加量(重量%)は、耐硫酸性セメント組成物(ポルトランドセメント+シリカフューム+高炉スラグ微粉末+石膏)に対する割合をいう。
ポルトランドセメント中における2CaO・SiOの含有量が40重量%未満では、硫酸性環境下におかれた硬化体の質量減少が大きい。また、市販されているポルトランドセメント中の2CaO・SiOの含有量の上限値は60重量%である。
ポルトランドセメントの配合量が30重量部未満では、高炉スラグ微粉末の量を増加させても硫酸酸性環境下におかれた硬化体の質量減少が大きい。また、65重量部を超えると、高炉スラグ微粉末の量を減少させることになり、硬化体の質量減少が大きくなる。
ポルトランドセメントの比表面積は、ブレーン値で2500〜5000cm/gである。2500cm/g未満では、初期材齢での強度発現性の不良が生じる。また、5000cm/gを超えると、製造コストが高騰する。ポルトランドセメントの好ましい比表面積は、3000〜4500cm/gである。この範囲であれば、セメント工場で通常に製造されているセメントを利用可能で、水との混練物の流動性が良く、施工性と耐久性とに優れるというさらに好適な効果が得られる。
また、シリカフュームの配合量が2重量部未満では、高炉スラグ微粉末の量を増やしても、硫酸酸性下におかれた硬化体の質量減少が大きい。また、シリカフュームが10重量部を超えると硬化体の質量減少が大きく、コスト高となる。シリカフュームが2〜10重量部では、高炉スラグ微粉末の量が少なくても硬化体の質量減少が小さく、圧縮強度に優れたものが得られる。シリカフュームの好ましい配合量は5〜10重量部である。この範囲であれば、耐硫酸性と製造コストとに優れるというさらに好適な効果が得られる。
シリカフュームのBET比表面積は、14〜27m/gである。14m/g未満では水和反応が遅く、強度発現性が低下する。また、27m/gを超えると、一般にSiCや炭素などの超微粒子の混入が多くなり、強度発現性と流動性とが低下し易い。シリカフュームの好ましいBET比表面積は、20〜25m/gである。この範囲であれば強度発現性と流動性とに優れるというさらに良好な効果が得られる。
高炉スラグ微粉末の配合量が30重量部未満では、硫酸酸性環境下におかれた硬化体の質量減少が大きい。また、65重量部を超えると強度の発現性が低下し、硬化体の質量減少も大きくなる。高炉スラグ微粉末の好ましい配合量は35〜60重量部である。この範囲であれば硬化体の質量減少が少なく、強度発現性に優れるというさらに好適な効果が得られる。
高炉スラグ微粉末の比表面積はブレーン値で3000〜10000cm/gである。3000cm/g未満では水和反応性が低下し、強度発現性も悪化する。また、10000cm/gを超えると流動性が低下する。高炉スラグ微粉末の好ましい比表面積は、4000〜8000cm/gである。この範囲であれば強度発現性と流動性に優れるというさらに良好な効果が得られる。
石膏としては、例えば天然石膏、火力発電所などから排出される排ガス中のSOを消石灰で中和し、酸化して得られる排煙脱硫石膏やリン酸工場から副産されるリン酸石膏に代表される化学石膏などを採用することができる。
石膏の配合量が5重量部を超えると、強度の発現性が低下し、硫酸酸性環境下におかれた硬化体の質量減少も大きくなる。石膏の配合量は好ましくは2〜5重量部である。この範囲であれば強度発現性と耐硫酸性とに優れるセメントペースト、モルタル、コンクリートが得られるというさらに好適な効果が得られる。
石灰石微粉末が0.5重量%未満では、モルタルの凝結の始発時間が短くなりすぎて、モルタル(生モルタル)のこわばりが早く発生し、吹付け時に吹付け面からのはね返りが多くなる。また、石灰石微粉末が15重量%を超えると、始発時間が長くなり、吹付け面からのはね返りは減少するが、吹付け面から吹付け材がダレ落ち易い。石灰石微粉末の好ましい添加量は、4〜10重量%である。この範囲であれば、セメントペースト、モルタル、コンクリートの急結性を保持しながら、さらに吹付け材料のはね返りが少ないというより好適な効果が得られる。
石灰石微粉末の比表面積は、ブレーン値で4500〜9000cm/gである。4500cm/g未満では、始発時間を長くする作用が低下し、添加量が増える。また、9000cm/gを超えると、製造コストが高騰する。石灰石微粉末の好ましい比表面積は、5000〜8000cm/gである。この範囲であれば、始発時間の調整が容易で、製造コストを抑えることができるというさらに好適な効果が得られる。
請求項2に記載の発明は、前記ポルトランドセメントと、前記シリカフュームと、前記高炉スラグ微粉末と、前記石膏と、前記石灰石微粉末とがプレミックスされた請求項1に記載の耐硫酸性セメント組成物である。
プレミックスとは、現場ではなく、各種のセメント材料(ポルトランドセメント、シリカフューム、高炉スラグ微粉末、石膏、石灰石微粉末)を、予めセメント工場内で混合してセメントを作製することをいう。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載された耐硫酸性セメント組成物を含むセメント硬化体である。
セメント硬化体とは、流動性を有するセメントペーストを硬化させたセメントペーストの硬化体、流動性を有するモルタルを硬化させたモルタルの硬化体、流動性を有するコンクリートを硬化させたコンクリートの硬化体などをいう。
セメントペースト、モルタル、コンクリートの硬化方法としては、例えば常温、大気圧下での養生、蒸気養生やオートクレーブ養生などを採用することができる。養生後の硬化体であるセメントペースト、モルタル、コンクリートは、通常の構造物および二次製品などに採用されている。
耐硫酸性セメント組成物としては、請求項1に記載されたもの、請求項2に記載されたものの何れでもよい。
請求項1,2に記載の耐硫酸性セメント組成物および請求項3に記載のセメント硬化体によれば、JSCE−D102の吹付けコンクリート用急結剤品質規格に定められた試験に準じ、かつ水セメント比を56%、細骨材セメント比3.0とするとともに、急結剤の添加量を5〜10重量%とした凝結試験において、モルタルの凝結の始発時間が10〜100分間のものとしたので、耐硫酸性セメント組成物を含むコンクリートを吹付け材に用いた場合には、例えば普通ポルトランドセメントを含む吹付けコンクリートまたは高炉セメントを含む吹付けコンクリートに比べて、吹付け時の吹付け壁からのはね返りを低減させることができる。その結果、吹付けの作業環境が改善され、施工コストを低減させることができる。
また、供試体の作製から7日経過時に、供試体をpH0.5〜pH1.5の硫酸溶液に浸漬し、そして供試体の作製から52週経過時における供試体の質量減少率が20%以下のものとしたので、例えば耐硫酸性セメント組成物を含むコンクリートを、硫酸酸性岩盤などに対する吹付けコンクリートとして使用した場合、吹付け性能に優れ、しかも耐硫酸性に優れた硬化体が得られる。
この耐硫酸性セメント組成物によれば、2CaO・SiOの含有量が40〜60重量%のポルトランドセメントを30〜65重量部、シリカフュームが2〜10重量部、高炉スラグ微粉末が30〜65重量部、石膏が0〜5重量部、特に石灰石微粉末を0.5〜15重量%含有するセメント組成物としたので、例えば耐硫酸性セメントを吹付け材の水硬性材料として使用した場合、吹付け材の凝結時間(始発時間)を任意に制御することができる。これにより、普通ポルトランドセメント、高炉セメントの場合に比べて吹付け性能が高められる。
また、ポルトランドセメントのビーライトの含有量を40〜60重量%としたことで、ポルトランダイトの生成を抑制し、高い耐硫酸性を有した硬化体を得ることができる。さらに、石灰石微粉末とセメント中のカルシウムアルミネートとの水和反応により、カルシウムカルボアルミネートの水和物が生成し、耐硫酸性セメント組成物の耐硫酸性をさらに高めることできる。
請求項2に記載の耐硫酸性セメント組成物によれば、ポルトランドセメント、シリカフューム、高炉スラグ微粉末、石膏および石灰石微粉末があらかじめ混合されているので、単位水量を小さくすることが可能となる。これにより、水和組織が早期に密となり、耐硫酸性セメントをそれぞれ水硬性材料としたセメントペースト、モルタル、コンクリートは硬化直後から硫酸に対して浸食され難くなる。しかも、優れた耐硫酸性セメント組成物およびそれを用いたセメントペースト、モルタル、コンクリートならびにセメント硬化体を得ることができる。また、何れも耐硫酸性セメント組成物を含むセメントペースト、モルタル、コンクリートは、あらかじめそれらを構成する全ての材料が個々に混合されるので、施工現場における省力化が図られる。これは、施工コストの低減にも繋がる。
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。ここでは、この発明を吹付けコンクリート(実施例1)、および、コンクリート二次製品(実施例2)に適用した。ただし、この発明はこれらに限定されるものではない。
まず、この発明を吹付けコンクリートに適用した例を示す。
(1) 使用材料
この発明に使用される材料を、次の表1に示す。
表1において、試作品A(SFB1(比較例))は、シリカフュームセメント(SFC;三菱マテリアル社製)と、高炉スラグ微粉末(MM;三菱マテリアル社製、4280cm/g)とを50:50で混合したセメント(4670cm/g)である。試作品B(SFB2(比較例))は、前記シリカフュームセメントと、前記高炉スラグ微粉末とを70:30で混合したセメント(4480cm/g)である。吹付け材A(吹付け性能が優れたセメント(比較例))は、普通ポルトランドセメント(N(比較例);三菱マテリアル社製、3330cm/g)と、シリカフューム(SF;市販品)と、石灰石微粉末(F(フィラー);三菱マテリアル社製、7970cm/g)とを、所定の割合で混合した三菱マテリアル社製の吹付け材用のセメント(4960cm/g)である。高炉セメント(BB(比較例))は、三菱マテリアル社製(4050cm/g)である。急結剤は電気化学工業社製のデンカナトミックTYPE−5である。
また、細骨材には、福岡県西ノ浦産海砂:藍島産海砂=2:1の混合品(粗粒率2.39)を採用した。
粗骨材には、福岡県三吉産砕石(最大寸法13mm、粗粒率6.14)を採用した。水は上水道水である。
Figure 0004491787
(2) 耐硫酸性の評価項目および評価方法
耐硫酸性の試験項目および方法は、JIS原案「コンクリートの溶液浸漬による耐薬品性試験方法(案)」を基に行った。試験用コア供試体(φ10cm×長さ20cm)は、JSCE−F561−1999に従って作製した。養生条件としては、標準水中養生(20℃)と、硫酸溶液(pH1、20℃)とした。吹付け工事では施工直後から硫酸溶液に晒されると想定されること、および、コア供試体の切り取りに必要な強度の発現時期およびコアの切り取り作業時間を考慮し、最速の材齢8日から硫酸溶液に浸漬した。
a) 耐硫酸性試験用のコンクリートの配合
コンクリートの配合を、表2に示す。これは、一般的な吹付けコンクリートの配合である。ただし、吹付け性能が優れたセメントは、プレミックスされている石灰石微粉末を細骨材に置換して使用した。
Figure 0004491787
b)コンクリートの練混ぜ方法
コンクリートの練混ぜには、容量200リットルのパン型強制練りミキサを使用し、1バッチの練混ぜ量を100リットルとした。具体的には、まずセメントと細骨材と粗骨材とをパン型強制練りミキサに投入して15秒間空練りし、その後、水および混和剤をさらに加えて120秒間本練りした。
c) コンクリートの吹付け設備
コンクリートの吹付け設備には、図1に示す旭硝子セラミックス社製の湿式吹付けAGRF工法用吹付けユニット(吐出量:1.0〜1.6m/hr(4〜5kgf/cm))を採用した。これを用い、耐硫酸性吹付け材をよう壁に吹付けた。
d)コア供試体の作製方法
吹付けコンクリートの圧縮強度試験用供試体の作り方(JSCE−F・561−1999)に従った。
e)吹付けコンクリートの耐硫酸性
吹付けコンクリートのコア供試体を、浸漬用容器であるコンテナ中の硫酸溶液(pH1)に浸漬し、耐硫酸性試験を行った。なお、硫酸溶液への浸漬は、材齢8日から硫酸溶液に浸漬した。
硫酸溶液(pH1)に浸漬後から52週では、試作品A、試作品B、BBの各供試体の表面に、薄いこげ茶色の生成物が一体的に付着した。また、吹付け材A、Nの各供試体の表面には、薄茶色の生成物がパテ状に付着していた。生成物の除去後の各供試体を観察すれば、試作品A、試作品Bのモルタル部分の浸食は4mmであった。これは、BBの場合の6mm、吹付け材Aの場合の13mmおよびNの場合の15mmと比べて、優れた耐硫酸性を示した。
f)質量残存率の推移
硫酸溶液に浸漬後52週の試作品A,試作品Bの質量減少率は、図2のグラフに示すように16.3%(試作品A)、20%(試作品B)であった。これらの数値は、BBの24.7%、Nの約42%、吹付け材Aの約30%とに比べて小さかった。
g)共鳴振動数の測定結果
硫酸溶液に浸漬後52週の試作品A、試作品Bの共鳴振動数は、図3のグラフに示すように、浸漬前とほとんど変わらなかった。これにより、供試体の表面は劣化が認められるもののコンクリートの内部は健全であると考えられた。
h)破壊試験結果
図4のグラフに、硫酸溶液に浸漬した各コア供試体の圧縮強度を示す。これから、硫酸溶液に52週浸漬した試作品Aおよび試作品Bの供試体の強度は27N/mm程度と、BBに比べて若干低かった。なお、吹付け材A、Nの供試体については、局部的に著しく浸食が進行した部分が存在し、これを原因として、強度が他の供試体に比べて著しく低くなったものと考えられた。
(3) 吹付け性能の評価項目および評価方法
耐硫酸性吹付け材の吹付け性能の評価は、図1のコンクリートの吹付け設備を用い、耐硫酸性吹付け材をよう壁に吹付けたときのはね返り率、引き抜き強度および圧縮強度により行った。
コンクリートのはね返り率の算出は、よう壁から50cmだけ離れた位置から垂直にコンクリートを吹付け、よう壁の1m×1mの範囲に厚さ15cmになった時の、はね返ったコンクリートの質量の(はね返ったコンクリート+よう壁に付着したコンクリート)質量に対する百分率として行った。
a) 吹付けコンクリートの吹付け性能
吹付けコンクリートの性状を、表3に示す。
Figure 0004491787
b)はね返り率
コンクリートの吹付け試験の結果、試作品Aと試作品Bのはね返り率は約38%で、吹付け材Aの約28%に比べてはね返りが多く、Nの約31%およびBBの約33%に比べてやや多く、吹付け性能が劣る結果となった。この耐硫酸性吹付け材のはね返り率が吹付け材Aに比べて高くなった原因として、凝結の始発時間が吹付け材Aよりも短く、吹付け時にこわばりが発生し、コンクリートのはね返りが多くなったためと考えられた。その要因調査の結果を次項に示す。
c)引き抜き強度および圧縮強度
試作品A、試作品Bともに吹付けコンクリートの材齢3時間引き抜き強度は、比較のセメント(N,BB)に比べて優れていた(表3)。試作品A、試作品Bの材齢1日圧縮強度は、他のセメントに比べて低かったが、材齢28日では同程度(35N/mm)であった。
(耐硫酸性セメントのはね返り率に影響を与える要因調査)
急結剤などが凝結の始発時間に与える影響を、コンクリートの凝結時間との相関が推定されたモルタルにより調査した。
(1) 急結剤を添加したモルタルの凝結試験方法
a)使用材料
使用するセメントおよび急結剤を、表1に示す。骨材には、JIS R 5201に規定された標準砂を使用した。
b)モルタルの配合
モルタルの配合は、JSCE−D102の吹付けコンクリート用急結剤品質規格に定められた試験に準じ、水セメント比を56%、細骨材セメント比3.0とし、急結剤の添加量を5〜10重量%とした。
c)凝結時間の測定方法
凝結時間の測定は、JSCE−D 102に規定されている貫入抵抗によるモルタルの凝結時間測定方法に従った。
(2) 急結剤の添加量が始発時間に与える影響
急結剤を添加した凝結試験(始発時間)の結果を、図5のグラフおよび図6のグラフに示す。
a)吹付け材A、試作品A、試作品B、NおよびBBの始発時間は、いずれも急結剤を5〜13重量%で一定の値を示し、添加量が少なくなれば(例えば3重量%)長くなる傾向が見られた。なお、終結時間は急結剤の添加量が増えるほど短くなった。
b)試作品A、試作品B、NおよびBBの始発時間は、急結剤の添加量5〜13重量%において、約5分であった。これに対して、はね返り率が小さくて好適な吹付け材用である吹付け材Aの始発時間は20分と長かった。この点から、始発時間を20分に近づければ、はね返り率が改善される(小さくなる)ことを知見した。そして、試作品A、試作品Bの始発時間を吹付け材Aの約20分と同等にするため、石灰石微粉末の添加の影響を調べた。
(3) 吹付け性能改善のための石灰石微粉末を添加した耐硫酸性セメントの凝結性状
a)石灰石微粉末が耐硫酸性セメントの始発時間に与える影響
石灰石微粉末を添加した耐硫酸性セメントである試作品A、試作品Bにおける凝結試験の結果を図7のグラフに示す(急結剤は7重量%)。これにより、試作品A、試作品Bに石灰石微粉末を添加すると、凝結時間は長くなることがわった。試作品Aの始発時間を吹付け材Aの20分と同等にするには、石灰石微粉末を2重量%程度、試作品Bには石灰石微粉末を6重量%程度添加することが有効であることが明らかになった。
b)石灰石微粉末を添加した耐硫酸性セメントの始発時間に及ぼす急結剤の添加量の影響
試作品Aに石灰石微粉末を2重量%添加したモルタルである試作品A−F2(SFB1−F2(本発明)、4730cm/g)、試作品Aに石灰石微粉末を3重量%添加したモルタルである試作品A−F3(SFB1−F3(本発明)、4770cm/g)、および、試作品Bに石灰石微粉末を6重量%添加したモルタルである試作品B−F6(SFB2−F6(本発明)、4680cm/g)、試作品Bに石灰石微粉末を8重量%添加したモルタルである試作品B−F8(SFB2−F8(本発明)、4740cm/g)の凝結時間に及ぼす急結剤の添加量の影響を調査した。その結果を図8のグラフおよび図9のグラフに示す。
石灰石微粉末を添加した試作品A−F2、試作品A−F3のモルタルの始発時間は、急結剤の添加量5〜10重量%で略20分となった。一方、石灰石微粉末を添加した試作品B−F6、試作品B−F8の始発時間は、急結剤の添加量が7重量%以上で20分となったが、試作品B−F6、試作品B−F8に急結剤を5重量%添加した場合では、約90分と長くなった。急結剤を5重量%添加した場合、始発時間が長すぎて、吹付けコンクリートがダレ落ちることが予想された。そのため、モルタルにより簡易な吹付け性能試験を行い、ダレ落ちのないことを確認した。
(吹付け性能改善のための石灰石微粉末を添加した耐硫酸性セメントの耐硫酸性試験)
耐硫酸性セメントに石灰石微粉末を添加したモルタル供試体の耐硫酸性試験を行った。試料は、試作品A−F2、試作品A−F3、試作品B−F6、試作品B−F8である。
セメントの耐硫酸性の確認のため、急結剤を添加したモルタル供試体の耐硫酸性試験を行った。モルタル供試体は、吹付け性能試験時と同量の7重量%の急結剤を添加すると、モルタルが瞬結して供試体が成形できない。そのため、モルタル供試体が成形可能な3重量%を添加した。
本試験で使用したセメントを表4に示す。なお、急結剤には、表1のものを採用した。骨材としては、JIS R 5201に規定された標準砂を使用した。
Figure 0004491787
a)モルタルの練混ぜ方法
モルタルの練混ぜには、モルタルミキサを使用し、1バッチの練混ぜ量を約3リットルとした。練混ぜは、空練り30秒、本練り1分で行った。
(1) 供試体の目視観察結果
硫酸溶液(pH1)に浸漬後、24週における各供試体の目視観察の結果を報告する。試作品A、試作品B、試作品A−F2、試作品A−F3、試作品B−F6および試作品B−F8の供試体の表面には、灰白色の生成物が一体的に付着し、BBには白色の生成物が一体的に付着していた。生成物の除去後の供試体を観察すると、石灰石微粉末の添加品は、石灰石微粉末の無添加品と変わらなかった。
(2) 質量残存率の推移
図10のグラフに、モルタル供試体(急結剤3%を添加)の質量残存率の経時変化を示す。硫酸溶液への浸漬後24週における試作品A−F2および試作品A−F3の質量減少は、石灰石微粉末の添加の有無にかかわらずなかった。一方、試作品B(単味)の7.0%に対して、試作品B−F6が7.8%、試作品B−F8が8.3%と、石灰石微粉末の添加の有無で変わらなかった。
(3) 強度試験結果
硫酸溶液に浸漬したモルタル供試体の圧縮強度を図11のグラフに示す。石灰石微粉末を添加した試作品A−F2、試作品A−F3、試作品B−F6、試作品B−F8の浸漬後24週における圧縮強度は、石灰石微粉末の無添加品およびBBと、ほとんど変わらなかった。
次に、この発明の耐硫酸性セメントをコンクリート二次製品に適用した例を示す。
(1) 使用材料
この発明に使用される材料は、セメントとして表1中の試作品A、試作品Bを使用した。また、混和剤としては、レオビルドSP8SV、(株式会社エヌエムビー製、主成分はポリカルボン酸エーテル系配合物)を使用した。細骨材には2種類(細骨材S1,細骨材S2)を採用した。細骨材S1は、福岡県西ノ浦産海砂:藍島産海砂=2:1、表乾密度2.58g/cm、吸水率1.05%、粗粒率2.32のものである。また、細骨材S2は、福岡県船尾産石灰石砕砂、表乾密度2.62g/cm、吸水率1.02%、粗粒率2.42のものである。粗骨材にも2種類(粗骨材G1,粗骨材G2)を採用した。粗骨材G1としては、福岡県三吉産砕石:2013、表乾密度2.73g/cm、吸水率0.88%、粗粒率7.02のものを使用した。また、粗骨材G2としては、福岡県三吉産砕石:1305、表乾密度2.74g/cm、吸水率0.77%、粗粒率6.23のものを使用した。ただし、細骨材S1と細骨材S2とは容積比1:1で使用した。また、粗骨材G1,G2も容積比1:1で使用した。
(2) コンクリート試験方法
配合条件は、W/Cが35.1%、スランプが8〜10cm、空気量が1〜3%である。単位量は、水(W)が158kg/cm、セメント(C)が450kg/cm、混和剤はレオビルドSP8SVを適量加える。
スランプ試験は、JIS A 1101に従って行った。環境温度は20℃、測定時期は、標準養生を行った場合で材齢7日、材齢28日とした。また、蒸気養生の場合には、材齢1日、材齢7日とした。蒸気養生の条件は、最高温度60℃(前置き3時間、昇温2時間、保持5時間、降温5時間)である。
(3) 練混ぜ方法
コンクリートの練混ぜは、容量60リットルの二軸強制練りミキサを使用し、1バッチの練混ぜ量は30リットルとする。練混ぜは、20℃・80%R.H.の恒温恒湿室で、以下に示す方法により行った。
まず、セメントと骨材を二軸強制練りミキサに投入し、30秒間空練りする。次に、二軸強制練りミキサに水と混和剤とをさらに投入し、120秒間混練する。こうして、コンクリートを練り上げた。
(4) 強度試験の結果
試作品Aの場合には、標準養生後の材齢7日の強度が10N/mm、標準養生後の材齢28日の強度が35N/mmである。また、蒸気養生後の材齢7日の強度が38N/mm、蒸気養生後の材齢28日の強度が44N/mmである。
試作品Bの場合には、標準養生後の材齢7日の強度が8N/mm、標準養生後の材齢28日の強度が34N/mmである。また、蒸気養生後の材齢7日の強度が35N/mm、蒸気養生後の材齢28日の強度が42N/mmである。
試作品A−F2の場合には、標準養生後の材齢7日の強度が15N/mm、標準養生後の材齢28日の強度が47N/mmである。また、蒸気養生後の材齢1日の強度が43N/mm、蒸気養生後の材齢7日の強度が48N/mmである。
試作品B−F6の場合には、標準養生後の材齢7日の強度が13N/mm、標準養生後の材齢28日の強度が58N/mmである。また、蒸気養生後の材齢1日の強度が50N/mm、蒸気養生後の材齢7日の強度が56N/mmである。
(5) スランプ試験の結果
試作品Aおよび試作品Bのスランプは、何れも約8cmであった。
この発明の実施例1に係る耐硫酸性セメントを含むコンクリートの吹付け設備の側面図である。 コア供試体の質量残存率の経時変化を示すグラフである。 硫酸溶液に浸漬したコア供試体の共鳴振動数の経時変化を示すグラフである。 硫酸溶液に浸漬したコア供試体の圧縮強度を示すグラフである。 急結剤を添加したモルタルの始発時間を示すグラフである。 急結剤を添加した別のモルタルの始発時間を示すグラフである。 耐硫酸性セメントの凝結時間に及ぼす石灰石微粉末量の影響を示すグラフである。 試作品Aの始発時間に及ぼす急結剤添加量の影響を示すグラフである。 試作品Bの始発時間に及ぼす急結剤添加量の影響を示すグラフである。 モルタル供試体の質量残存率の経時変化を示すグラフである。 モルタル供試体の圧縮強度を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 硫酸酸性岩盤への吹き付けに用いるセメント組成物であって、
    2CaO・SiO の含有量が40〜60重量%であるポルトランドセメント30〜65重量部と、
    シリカフューム2〜10重量部と、
    ブレーン値3000〜10000cm /gの高炉スラグ微粉末30〜65重量部と、
    石膏0〜5重量部と、
    ブレーン値4500〜9000cm /gの石灰石微粉末0.5〜11重量部とからなり、
    JSCE−D102の吹付けコンクリート用急結剤品質規格に定められた試験に準じ、
    前記セメント組成物に急結剤を5〜10重量%添加して、
    水セメント比を56%、細骨材セメント比3.0としたモルタルの凝結の始発時間が10〜100分間であり、
    前記セメント組成物、粗骨材、細骨材、水、混和剤を練混ぜて作製したコンクリート供試体を、7日経過時からpH0.5〜pH1.5の硫酸溶液に52週間浸漬した後の質量減少率が20%以下であることを特徴とする耐硫酸性セメント組成物
  2. 前記ポルトランドセメントと、前記シリカフュームと、前記高炉スラグ微粉末と、前記石膏と、前記石灰石微粉末とがプレミックスされた請求項1に記載の耐硫酸性セメント組成物。
  3. 請求項1または請求項2に記載された耐硫酸性セメント組成物を含むセメント硬化体。
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