JP4490455B2 - 内燃機関のノッキング判定装置、ノッキング判定方法、その方法を実現するプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体 - Google Patents

内燃機関のノッキング判定装置、ノッキング判定方法、その方法を実現するプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、内燃機関のノッキング判定装置、ノッキング判定方法、その方法を実現するプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体に関し、特に、内燃機関の振動の波形に基づいたノッキングの判定に関する。
従来より、内燃機関において発生するノッキング(ノック)を検出する様々な方法が提案されている。たとえば、内燃機関の振動の強度がしきい値よりも高いとノッキングが発生したと判定する技術がある。ところが、ノッキングが発生していなくても、たとえば吸気バルブや排気バルブが閉じる際に発生する振動などのノイズの強度がしきい値よりも高い場合がある。この場合、ノッキングが発生していないにもかかわらず、ノッキングが発生したと誤判定し得る。そこで、振動が発生するクランク角や減衰率など、強度以外の特性も考慮するために振動の波形に基づいてノッキングの有無を判定する技術が提案されている。
特開2003−21032号公報(特許文献1)に記載の内燃機関のノック制御装置は、内燃機関のノッキングを検出するためのノックセンサと、ノックセンサにより検出される出力信号を統計処理する統計処理部と、統計処理部による処理結果に基づいてノッキングの発生を判定する第1の仮判定部と、ノックセンサにより検出される出力信号の波形形状に基づいてノッキングの発生を判定する第2の仮判定部と、第1の仮判定部によるノック仮判定と第2の仮判定部によるノック仮判定との結果に基づいて最終的にノッキングの発生を判定する最終ノック判定部とを含む。第2の仮判定部は、ノックセンサにより出力される出力信号が所定値以上となる判定期間と、判定期間中に検出される出力信号の最大値とに基づいてノックの発生を仮判定する。最終ノック判定部は、第1の仮判定部と第2の仮判定部との両方がノッキングが発生したと判定したときに最終的にノッキングが発生したと判定する。
特開2003−21032号公報
しかしながら、特開2003−21032号公報に記載のノック制御装置のように、ノックセンサにより出力される出力信号が所定値以上となる判定期間と、判定期間中に検出される出力信号の最大値とに基づいてノッキングの発生を仮判定すると、内燃機関においてノッキングとは異なる要因により大きな強度の振動が定常的に発生した場合に誤判定し得る。また、ノックセンサにより出力される出力信号が所定値以上となる判定期間中の最大値に基づいてノッキングの発生が判定されるため、ノッキングに起因する振動の強度よりも、ノッキングとは異なる要因による振動の強度が大きいと誤判定し得る。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、誤判定を抑制することができる内燃機関のノッキング判定装置、ノッキング判定方法、その方法を実現するプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体を提供することである。
第1の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置は、内燃機関の振動の強度を検出するための手段と、検出された強度に基づいて、内燃機関の振動の波形を検出するための手段と、波形における振動の強度を積算した積算値を、複数の予め定められたクランク角の領
域毎に算出するための手段と、積算値と予め定められた値との差により、点火サイクル間での積算値の変化量を検出するための検出手段と、複数のクランク角の領域のうち、積算値の変化量がより大きいクランク角の領域を予め定められた数だけ特定するための第1の特定手段と、特定されたクランク角の領域を基準にして定められる探索領域内で、隣接するクランク角における強度に比べて大きい強度を有するクランク角を特定するための第2の特定手段と、内燃機関の振動の基準として定められた波形モデルにおいて強度が最大になるタイミングを、特定されたクランク角に一致させた状態で、波形と波形モデルとを比較した結果に基づいて内燃機関にノッキングが発生したか否かを判定するための判定手段とを含む。第15の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第1の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第1または15の発明によると、内燃機関の振動の強度が検出される。検出された強度に基づいて、内燃機関の振動の波形が検出される。波形における振動の強度を積算した積算値が、複数の予め定められたクランク角の領域毎に算出される。積算値と予め定められた値との差により、点火サイクル間での積算値の変化量が検出される。複数のクランク角の領域のうち、積算値の変化量がより大きいクランク角の領域が予め定められた数だけ特定される。特定されたクランク角の領域を基準にして定められる探索領域内で、隣接するクランク角における強度に比べて大きい強度を有するクランク角が特定される。これにより、点火サイクル間で振動の強度に変化があるといえるクランク角を特定することができる。すなわち、ノッキングが発生した可能性が高いクランク角を特定することができる。内燃機関の振動の基準として定められた波形モデルにおいて強度が最大になるタイミングを、特定されたクランク角に一致させた状態で、波形と波形モデルとを比較した結果に基づいて内燃機関にノッキングが発生したか否かが判定される。これにより、検出された波形において、突発的に強度が大きくなった部分に基づいてノッキングが発生したか否かを判定し、定常的に強度が大きい部分に基づいてノッキングが発生したか否かを判定することを抑制することができる。そのため、ノッキングが発生していないにも関わらず、ノッキングが発生したと誤判定することを抑制することができる。その結果、誤判定を抑制することができる内燃機関のノッキング判定装置またはノッキング判定方法を提供することができる。
第2の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置は、第1の発明の構成に加え、特定されたクランク角が予め定められた領域にある場合、内燃機関にノッキングが発生していないと判定するための手段をさらに含む。第16の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第2の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第2または16の発明によると、特定されたクランク角が予め定められた領域にある場合、内燃機関にノッキングが発生していないと判定される。これにより、たとえばノッキングが発生し得ないクランク角において偶発的に振動の強度が大きくなった場合に、ノッキングが発生していないにもかかわらずノッキングが発生したと誤判定することを抑制できる。
第3の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第1または2の発明の構成に加え、特定されたクランク角の領域と同じ領域が探索領域として定められる。第17の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第3の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第3または17の発明によると、点火サイクル間の積算値の変化量が大きいクランク角の領域から、振動のピークが検出される。これにより、ノッキングが発生した可能性が高いクランク角の領域から振動のピークを検出することができる。そのため、ノッキングに起因する振動のピークを精度よく特定することができる。
第4の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第1または2の発明の構成に加え、特定されたクランク角の領域を含み、かつ特定されたクランク角の領域よりも広い領域が、探索領域として定められる。第18の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第4の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第4または18の発明によると、特定されたクランク角の領域を含み、かつ特定されたクランク角の領域よりも広い領域から、振動のピークが検出される。これにより、積算値の変化量が大きいクランク角の領域の近傍からも、振動のピークを検出することができる。そのため、ノッキングが発生した可能性が高いクランク角の領域から振動のピークを検出することができる。その結果、ノッキングに起因する振動のピークを精度よく特定することができる。
第5の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置は、第4の発明の構成に加え、探索領域内に、隣接するクランク角における強度に比べて大きい強度を有するクランク角がない場合、内燃機関にノッキングが発生していないと判定するための手段をさらに含む。第19の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第5の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第5または19の発明によると、探索領域内に、隣接するクランク角における強度に比べて大きい強度を有するクランク角がない場合、内燃機関にノッキングが発生していないと判定される。これにより、振動のピークが発見できない場合は、ノッキングが発生していないと判定することができる。そのため、たとえばノッキングが発生し得ないクランク角、すなわち探索領域外において偶発的に振動の強度が大きくなった場合に、ノッキングが発生していないにもかかわらずノッキングが発生したと誤判定することを抑制できる。
第6の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第1〜5のいずれかの発明の構成に加え、検出手段は、積算値と予め定められた値との差の絶対値により、点火サイクル間での積算値の変化量を検出するための手段を含む。第20の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第6の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第6または20の発明によると、積算値と予め定められた値との差の絶対値により、点火サイクル間での積算値の変化量が検出される。これにより、たとえば大きな強度のノッキングの後に続いて小さな強度のノッキングが発生した場合など、積算値が減少する場合であっても、積算値の変化量を算出することができる。
第7の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第1〜6のいずれかの発明の構成に加え、ノッキング判定装置は、積算値の変化量の合計値に対する各積算値の変化量の割合を算出するための手段をさらに含む。算出された割合に応じた数が、予め定められた数として定められる。第21の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第7の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第7または21の発明によると、積算値の変化量の合計値に対する各積算値の変化量の割合に応じた数だけ、積算値の変化量がより大きいクランク角の領域が特定される。たとえば、各割合のうちの少なくともいずれか1つの割合が予め定められた割合より大きい場合、1が予め定められた数として定められる。これにより、たとえば1つの領域においてのみ積算値の変化量が大きいといえる場合には、必要以上の数の領域を特定することを抑制することができる。そのため、相対的な積算値の変化量が大きいが、絶対的な積算値の変化量が小さい領域を特定することを抑制することができる。その結果、ノッキングが発
生した可能性が低いクランク角の領域から振動がピークになるクランク角を誤って特定することを抑制することができる。
第8の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第7の発明の構成に加え、各割合のうちの少なくともいずれか1つの割合が予め定められた割合より大きい場合、1が予め定められた数として定められる。第22の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第8の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第8または22の発明によると、各割合のうちの少なくともいずれか1つの割合が予め定められた割合より大きい場合、1が予め定められた数として定められる。これにより、相対的な積算値の変化量が大きいが、絶対的な積算値の変化量が小さい領域を特定することを抑制することができる。その結果、ノッキングが発生した可能性が低いクランク角の領域から振動のピークを誤って検出することを抑制することができる。
第9の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第1〜8のいずれかの発明の構成に加え、内燃機関の振動の強度および波形は、複数の点火サイクルにおいて検出される。積算値は、各点火サイクルごとに算出される。予め定められた値は、波形モデルと比較される波形が検出された点火サイクルよりも前の点火サイクルにおける積算値である。第23の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第9の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第9または23の発明によると、積算値は、各点火サイクルごとに算出される。予め定められた値は、波形モデルと比較される波形が検出された点火サイクルよりも前の点火サイクルにおける積算値である。これにより、点火サイクル間での積算値の変化量を検出することができる。
第10の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第9の発明の構成に加え、予め定められた値は、波形モデルと比較される波形が検出された点火サイクルよりも前の点火サイクルであって、かつ振動の強度の最大値が予め定められた強度よりも小さいという条件を満たした点火サイクルにおける積算値である。第24の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第10の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第10または24の発明によると、予め定められた値は、波形モデルと比較される波形が検出された点火サイクルよりも前の点火サイクルであって、かつ振動の強度の最大値が予め定められた強度よりも小さいという条件を満たした点火サイクルにおける積算値である。これにより、振動の強度の最大値が予め定められた強度よりも小さいという条件を満たした点火サイクル、すなわち、ノッキングが発生していないと考えられる点火サイクルの積算値を基準にして、積算値の変化量を検出することができる。そのため、ノッキングが発生しているにもかかわらず、積算値の変化量が小さくなるということを抑制することができる。その結果、ノッキングが発生した可能性のある領域を精度よく特定することができる。
第11の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第9の発明の構成に加え、予め定められた値は、波形モデルと比較される波形が検出された点火サイクルよりも前の点火サイクルであって、かつ振動の強度の最大値が予め定められた強度よりも大きいという条件を予め定められた回数より多く連続して満たした複数の点火サイクルのうちのいずれか1つの点火サイクルにおける積算値である。第25の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第11の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第11または25の発明によると、予め定められた値は、波形モデルと比較される波形が検出された点火サイクルよりも前の点火サイクルであって、かつ振動の強度の最大値が予め定められた強度よりも大きいという条件を予め定められた回数より多く連続して満たした複数の点火サイクルのうちのいずれか1つの点火サイクルにおける積算値である。これにより、振動の強度が大きくとも、定常的な状態であれば積算値の変化量を算出するための基準として用いることができる。そのため、ノッキング以外に起因して発生した強度の大きな振動を、ノッキングに起因した振動であると誤判定することを抑制することができる。
第12の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第1〜8のいずれかの発明の構成に加え、予め定められた値は、積算値が平滑化された演算値である。第26の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第12の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第12または26の発明によると、積算値が平滑化された演算値が予め定められた値として用いられる。これにより、点火サイクル間での変化が小さい演算値を基準にして、積算値の変化量を検出することができる。そのため、積算値の変化量を検出するための基準が点火サイクルごとで大きく異なるということを抑制することができる。その結果、ノッキングが発生したか否かを安定的に精度よく判定することができる。
第13の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第12の発明の構成に加え、予め定められた値は、振動の強度の最大値が予め定められた強度より小さい点火サイクルにおける積算値が平滑化された演算値である。第27の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第13の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第13または27の発明によると、振動の強度の最大値が予め定められた強度より小さい点火サイクルにおける積算値が平滑化された演算値が予め定められた値として用いられる。これにより、たとえば、ノッキングが発生した点火サイクルの積算値を除いた積算値から演算値を算出することができる。そのため、点火サイクル間での変化が小さい演算値を基準にして積算値の変化量を検出し、積算値の変化量を検出するための基準が点火サイクルごとで大きく異なるということを抑制することができる。その結果、ノッキングが発生したか否かを安定的に精度よく判定することができる。
第14の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第1〜13のいずれかの発明の構成に加え、ノッキング判定装置は、波形と波形モデルとの差が小さいほどより大きくなるように、波形とモデルとの差に応じた値を算出するための手段をさらに含む。判定手段は、差に応じた値がしきい値より大きい場合に、ノッキングが発生したと判定するための手段を含む。第28の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第14の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第14または28の発明によると、波形と波形モデルとの差が小さいほどより大きくなるように、波形とモデルとの差に応じた値が算出される。差に応じた値がしきい値より大きい場合に、ノッキングが発生したと判定される。これにより、ノッキングが発生したか否かを波形に基づいて精度よく判定することができる。
第29の発明に係るプログラムは、第15〜28のいずれかの発明に係る内燃機関のノッキング判定方法をコンピュータで実現するプログラムであって、第30の発明に係る記録媒体は、第15〜28のいずれかの発明に係る内燃機関のノッキング判定方法をコンピ
ュータで実現するプログラムを記録した記録媒体である。
第29または第30の発明によると、コンピュータ(汎用でも専用でもよい)を用いて、第15〜28のいずれかの発明に係る内燃機関のノッキング判定方法を実現することができる。
第31の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置は、内燃機関の振動の強度を検出するための手段と、検出された強度に基づいて、内燃機関の振動の波形を検出するための手段と、波形における振動の強度を積算した積算値を、複数の予め定められたクランク角の領域毎に算出するための手段と、点火サイクル間での積算値の変化量を、複数のクランク角の領域毎に検出するための検出手段と、複数のクランク角の領域のうち、積算値の変化量がより大きい領域を予め定められた数だけ特定するための特定手段と、特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを判定するための第1の判定手段と、特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、特定された領域における積算値の変化量が小さくなるように、検出された振動の波形を補正するための補正手段と、補正された波形における振動の強度を積算した積算値を、複数のクランク角の領域毎に算出するための手段と、補正された波形における各積算値の総和を用いてノッキングが発生したか否かを判定するための第2の判定手段とを含む。第45の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第31の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第31または45の発明によると、内燃機関の振動の強度が検出される。検出された強度に基づいて、内燃機関の振動の波形が検出される。波形における振動の強度を積算した積算値が、複数の予め定められたクランク角の領域毎に算出される。この積算値の、点火サイクル間での変化量が検出される。複数のクランク角の領域のうち、積算値の変化量がより大きいクランク角の領域が予め定められた数だけ特定される。これにより、点火サイクル間で振動の強度に変化があるといえるクランク角の領域を特定することができる。すなわち、ノッキングが発生した可能性が高いクランク角の領域を特定することができる。ところが、ノッキングに起因せずとも、突発的に振動の強度が大きくなり得る。そこで、特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、特定された領域における積算値の変化量が小さくなるように、検出された振動の波形が補正される。これにより、ノッキングとは異なる要因(たとえば内燃機関を構成する部品の作動)により突発的に強度が大きくなった部分を、検出された波形から取り除くことができる。補正された波形における振動の強度を積算した積算値が、複数のクランク角の領域毎に算出される。補正された波形における各積算値の総和を用いてノッキングが発生したか否かが判定される。これにより、ノッキングに起因せずに大きくなった強度の影響が小さい波形を用いて、ノッキングが発生したか否かを判断することができる。そのため、ノッキングが発生したか否かを誤判定することを抑制することができる。その結果、誤判定を抑制することができる内燃機関のノッキング判定装置またはノッキング判定方法を提供することができる。
第32の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第31の発明の構成に加え、補正手段は、特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、特定された領域における積算値を前回の点火サイクルにおいて算出された積算値と同じ値にすることにより、積算値の変化量が小さくなるように、検出された振動の波形を補正するための手段を含む。第46の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第32の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第32または46の発明によると、特定された領域における積算値が前回の点火サイクルにおいて算出された積算値と同じ値になるように、検出された振動の波形が補正される
。これにより、ノッキングとは異なる要因により突発的に強度が大きくなった部分を、検出された波形から取り除くことができる。
第33の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第32の発明の構成に加え、検出手段は、連続する点火サイクル間の積算値の差により、積算値の変化量を検出するため手段を含む。第47の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第33の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第33または47の発明によると、連続する点火サイクル間の積算値の差により、積算値の変化量を検出することができる。
第34の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第32の発明の構成に加え、検出手段は、連続する点火サイクル間の積算値の差の絶対値により、積算値の変化量を検出するため手段を含む。第48の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第34の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第34または48の発明によると、連続する点火サイクル間の積算値の差の絶対値により、積算値の変化量を検出することができる。
第35の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置は、第31の発明の構成に加え、ノッキング判定装置は、積算値を平滑化した演算値を複数のクランク角の領域毎に算出するための手段をさらに含む。補正手段は、特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、特定された領域における積算値を演算値と同じ値にすることにより、積算値の変化量が小さくなるように、検出された振動の波形を補正するための手段を含む。第49の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第35の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第35または49の発明によると、特定された領域における積算値が積算値を平滑化した演算値と同じ値になるように、検出された振動の波形が補正される。これにより、ノッキングとは異なる要因により突発的に強度が大きくなった部分を、検出された波形から取り除くことができる。
第36の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第35の発明の構成に加え、検出手段は、積算値と演算値との差により、積算値の変化量を検出するため手段を含む。第50の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第36の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第36または50の発明によると、積算値と演算値との差により、積算値の変化量を検出することができる。
第37の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第35の発明の構成に加え、検出手段は、積算値と演算値との差の絶対値により、積算値の変化量を検出するため手段を含む。第51の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第37の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第37または51の発明によると、積算値と演算値との差の絶対値により、積算値の変化量を検出することができる。
第38の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置は、第31〜37のいずれかの発明の構成に加え、特定された領域を基準にして定められる探索領域内で、隣接するクランク
角における強度に比べて大きい強度を有するクランク角を特定するための手段をさらに含む。第1の判定手段は、内燃機関の振動の基準として定められた波形モデルにおいて強度が最大になるタイミングを、特定されたクランク角に一致させた状態で、波形と波形モデルとを比較した結果に基づいて、特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを判定するための手段を含む。第52の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第38の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第38または52の発明によると、特定された領域を基準にして定められる探索領域内で、隣接するクランク角における強度に比べて大きい強度を有するクランク角が特定される。これにより、点火サイクル間で振動の強度に変化があるといえるクランク角を特定することができる。すなわち、ノッキングが発生した可能性が高いクランク角を特定することができる。内燃機関の振動の基準として定められた波形モデルにおいて強度が最大になるタイミングを、特定されたクランク角に一致させた状態で、波形と波形モデルとを比較した結果に基づいて内燃機関にノッキングが発生したか否かが判定される。これにより、検出された波形において、突発的に強度が大きくなった部分に基づいてノッキングが発生したか否かを判定し、定常的に強度が大きい部分に基づいてノッキングが発生したか否かを判定することを抑制することができる。そのため、ノッキングが発生していないにも関わらず、ノッキングが発生したと誤判定することを抑制することができる。その結果、誤判定を抑制することができる内燃機関のノッキング判定装置またはノッキング判定方法を提供することができる。
第39の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置は、第38の発明の構成に加え、ノッキング判定装置は、波形と波形モデルとの差が小さいほどより大きくなるように、波形とモデルとの差に応じた係数を算出するための手段をさらに含む。第1の判定手段は、係数がしきい値より大きい場合に、特定された領域における積算値がノッキングに起因して変化したと判定するための手段と、係数がしきい値より小さい場合に、特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定するための手段とを含む。第53の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第39の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第39または53の発明によると、波形と波形モデルとの差が小さいほどより大きくなるように、波形とモデルとの差に応じた係数が算出される。したがって、係数が大きいほど、ノッキングが発生した可能性がより高いといえる。そこで、係数がしきい値より大きい場合に、特定された領域における積算値がノッキングに起因して変化したと判定される。逆に、係数がしきい値より小さい場合に、特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定される。これにより、積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを精度よく判断することができる。
第40の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第31〜37のいずれかの発明の構成に加え、第1の判定手段は、特定されたクランク角が予め定められた領域内にある場合、特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定するための手段を含む。第54の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第40の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第40または54の発明によると、特定されたクランク角が予め定められた領域にある場合、特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定される。これにより、たとえばノッキングが発生し得ないクランク角において偶発的に振動の強度が大きくなった場合に、ノッキングが発生していないにもかかわらずノッキングが発生したと誤判定することを抑制できる。
第41の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第31〜40のいずれかの発明の構成に加え、特定手段は、複数のクランク角の領域のうち、積算値の変化量がより大きいクランク角の領域を複数特定するための手段を含む。第1の判定手段は、複数の特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを判定するための手段を含む。第55の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第41の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第41または55の発明によると、積算値の変化量がより大きいクランク角の領域が複数特定される。複数の特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かが判定される。これにより、ノッキングに起因せずに積算値が変化した領域を特定する精度を高めることができる。
第42の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第41の発明の構成に加え、ノッキング判定装置は、複数の特定された領域のうちの少なくともいずれか一つの領域における積算値がノッキングに起因して変化したと判定された場合、検出された波形の補正を禁止するための手段をさらに含む。第56の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第42の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第42または56の発明によると、複数の特定された領域のうちの少なくともいずれか一つの領域における積算値がノッキングに起因して変化したと判定された場合、検出された波形が補正されない状態で算出された積算値の総和を用いてノッキングが発生したか否かが判定される。これにより、処理を簡略にすることができる。
第43の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第41の発明の構成に加え、補正手段は、複数の特定された領域のうちの少なくともいずれか一つの領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された領域における積算値の変化量が小さくなるように、検出された振動の波形を補正するための手段を含む。第57の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第43の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第43または57の発明によると、複数の特定された領域のうちの少なくともいずれか一つの領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された領域における積算値の変化量が小さくなるように、検出された振動の波形が補正される。これにより、ノッキングとは異なる要因により突発的に強度が大きくなった部分を、検出された波形から取り除くことができる。
第44の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置は、第31〜43のいずれかの発明の構成に加え、ノッキングが発生したか否かを判定するために用いる判定値を、補正された波形における各積算値の総和を用いて補正するための手段をさらに含む。第2の判定手段は、内燃機関の振動の強度および補正された判定値を比較した結果に基づいてノッキングが発生したか否かを判定することにより、補正された波形における各積算値の総和を用いてノッキングが発生したか否かを判定するための手段を含む。第58の発明に係る内燃機関のノッキング判定方法は、第44の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置と同様の要件を備える。
第44または58の発明によると、ノッキングが発生したか否かを判定するために用いる判定値が、補正された波形における各積算値の総和を用いて補正される。内燃機関の振動の強度および補正された判定値を比較した結果に基づいてノッキングが発生したか否かを判定することにより、補正された波形における各積算値の総和を用いてノッキングが発
生したか否かが判定される。これにより、内燃機関の個体毎の振動特性を加味して補正された判定値を用いて、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定することができる。
第59の発明に係るプログラムは、第45〜58のいずれかの発明に係る内燃機関のノッキング判定方法をコンピュータで実現するプログラムであって、第60の発明に係る記録媒体は、第45〜58のいずれかの発明に係る内燃機関のノッキング判定方法をコンピュータで実現するプログラムを記録した記録媒体である。
第59または第60の発明によると、コンピュータ(汎用でも専用でもよい)を用いて、第45〜58のいずれかの発明に係る内燃機関のノッキング判定方法を実現することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本発明の実施の形態に係るノッキング判定装置を搭載した車両のエンジン100について説明する。このエンジン100には複数の気筒が設けられる。本実施の形態に係るノッキング判定装置は、たとえばエンジンECU(Electronic Control Unit)200のROM(Read Only Memory)202に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
エンジン100は、エアクリーナ102から吸入された空気とインジェクタ104から噴射される燃料との混合気を、燃焼室内で点火プラグ106により点火して燃焼させる内燃機関である。点火時期は、出力トルクが最大になるMBT(Minimum advance for Best
Torque)になるように制御されるが、ノッキングが発生した場合など、エンジン100の運転状態に応じて遅角されたり、進角されたりする。
混合気が燃焼すると、燃焼圧によりピストン108が押し下げられ、クランクシャフト110が回転する。燃焼後の混合気(排気ガス)は、三元触媒112により浄化された後、車外に排出される。エンジン100に吸入される空気の量は、スロットルバルブ114により調整される。
エンジン100は、エンジンECU200により制御される。エンジンECU200には、ノックセンサ300と、水温センサ302と、タイミングロータ304に対向して設けられたクランクポジションセンサ306と、スロットル開度センサ308と、車速センサ310と、イグニッションスイッチ312と、エアフローメータ314とが接続されている。
ノックセンサ300は、エンジン100のシリンダブロックに設けられる。ノックセンサ300は、圧電素子により構成されている。ノックセンサ300は、エンジン100の振動により電圧を発生する。電圧の大きさは、振動の大きさと対応した大きさとなる。ノックセンサ300は、電圧を表わす信号をエンジンECU200に送信する。水温センサ302は、エンジン100のウォータージャケット内の冷却水の温度を検出し、検出結果を表わす信号を、エンジンECU200に送信する。
タイミングロータ304は、クランクシャフト110に設けられており、クランクシャフト110と共に回転する。タイミングロータ304の外周には、予め定められた間隔で
複数の突起が設けられている。クランクポジションセンサ306は、タイミングロータ304の突起に対向して設けられている。タイミングロータ304が回転すると、タイミングロータ304の突起と、クランクポジションセンサ306とのエアギャップが変化するため、クランクポジションセンサ306のコイル部を通過する磁束が増減し、コイル部に起電力が発生する。クランクポジションセンサ306は、起電力を表わす信号を、エンジンECU200に送信する。エンジンECU200は、クランクポジションセンサ306から送信された信号に基づいて、クランク角およびクランクシャフト110の回転数を検出する。
スロットル開度センサ308は、スロットル開度を検出し、検出結果を表わす信号をエンジンECU200に送信する。車速センサ310は、車輪(図示せず)の回転数を検出し、検出結果を表わす信号をエンジンECU200に送信する。エンジンECU200は、車輪の回転数から、車速を算出する。イグニッションスイッチ312は、エンジン100を始動させる際に、運転者によりオン操作される。エアフローメータ314は、エンジン100に吸入される空気量を検出し、検出結果を表わす信号をエンジンECU200に送信する。
エンジンECU200は、電源である補機バッテリ320から供給された電力により作動する。エンジンECU200は、各センサおよびイグニッションスイッチ312から送信された信号、ROM202やSRAM(Static Random Access Memory)204に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて演算処理を行ない、エンジン100が所望の運転状態となるように、機器類を制御する。
本実施の形態において、エンジンECU200は、ノックセンサ300から送信された信号およびクランク角に基づいて、予め定められたノック検出ゲート(予め定められた第1クランク角から予め定められた第2クランク角までの区間)におけるエンジン100の振動の波形(以下、振動波形と記載する)を検出し、検出された振動波形に基づいて、エンジン100にノッキングが発生したか否かを判定する。本実施の形態におけるノック検出ゲートは、燃焼行程において上死点(0度)から90度までである。なお、ノック検出ゲートはこれに限らない。このノック検出ゲートが、前述の第1の発明における第1の範囲に対応する。
ノッキングが発生した場合、エンジン100には、図2において実線で示す周波数付近の周波数の振動が発生する。ノッキングに起因して発生する振動の周波数は一定ではなく、所定の帯域幅を有する。そのため、本実施の形態においては、図2に示すように、第1の周波数帯A、第2の周波数帯Bおよび第3の周波数帯Cに含まれる振動を検出する。なお、図2におけるCAは、クランク角(Crank Angle)を示す。なお、ノッキングに起因して発生する振動の周波数帯は3つに限られない。
図3を参照して、エンジンECU200についてさらに説明する。エンジンECU200は、A/D(アナログ/デジタル)変換部400と、バンドパスフィルタ(1)410と、バンドパスフィルタ(2)420と、バンドパスフィルタ(3)430と、積算部450とを含む。
A/D変換部400は、ノックセンサ300から送信されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。バンドパスフィルタ(1)410は、ノックセンサ300から送信された信号のうち、第1の周波数帯Aの信号のみを通過させる。すなわち、バンドパスフィルタ(1)410により、ノックセンサ300が検出した振動から、第1の周波数帯Aの振動のみが抽出される。
バンドパスフィルタ(2)420は、ノックセンサ300から送信された信号のうち、第2の周波数帯Bの信号のみを通過させる。すなわち、バンドパスフィルタ(2)420により、ノックセンサ300が検出した振動から、第2の周波数帯Bの振動のみが抽出される。
バンドパスフィルタ(3)430は、ノックセンサ300から送信された信号のうち、第3の周波数帯Cの信号のみを通過させる。すなわち、バンドパスフィルタ(3)430により、ノックセンサ300が検出した振動から、第3の周波数帯Cの振動のみが抽出される。
積算部450は、バンドパスフィルタ(1)410〜バンドパスフィルタ(3)430により選別された信号、すなわち振動の強度を、クランク角度で5度分づつ積算する。以下、クランク角度で5度分づつ積算された値を5度積算値と表わす。5度積算値の算出は、周波数帯ごとに行なわれる。この5度積算値の算出により、各周波数帯における振動波形が検出される。
さらに、算出された第1の周波数帯A〜第3の周波数帯Cの5度積算値は、クランク角度に対応して加算される。すなわち、第1の周波数帯A〜第3の周波数帯Cの振動波形が合成される。
これにより、図4に示すように、エンジン100の振動波形が検出される。すなわち、第1の周波数帯A〜第3の周波数帯Cの合成波形が、エンジン100の振動波形として用いられる。
検出された振動波形は、図5に示すようにエンジンECU200のROM202に記憶されたノック波形モデルと比較される。ノック波形モデルは、エンジン100にノッキングが発生した場合の振動波形のモデルとして予め作成される。
ノック波形モデルにおいて、振動の強度は0〜1の無次元数として表され、振動の強度はクランク角と一義的には対応していない。すなわち、本実施の形態のノック波形モデルにおいては、振動の強度のピーク値以降、クランク角が大きくなるにつれ振動の強度が低減することが定められているが、振動の強度がピーク値となるクランク角は定められていない。
本実施の形態におけるノック波形モデルは、ノッキングにより発生した振動の強度のピーク値以降の振動に対応している。なお、ノッキングに起因した振動の立ち上がり以降の振動に対応したノック波形モデルを記憶してもよい。
ノック波形モデルは、実験などにより、強制的にノッキングを発生させた場合におけるエンジン100の振動波形を検出し、この振動波形に基づいて予め作成されて記憶される。
ノック波形モデルは、エンジン100の寸法やノックセンサ300の出力値が、寸法公差やノックセンサ300の出力値の公差の中央値であるエンジン100(以下、特性中央エンジンと記載する)を用いて作成される。すなわち、ノック波形モデルは、特性中央エンジンに強制的にノッキングを発生させた場合における振動波形である。なお、ノック波形モデルを作成する方法は、これに限られず、その他、シミュレーションにより作成してもよい。
検出された波形とノック波形モデルとの比較においては、図6に示すように、正規化さ
れた波形とノック波形モデルとが比較される。ここで、正規化とは、たとえば、隣接するクランク角の5度積算値に比べて大きく、かつそのような5度積算値の中で最大の5度積算値、すなわち5度積算値のピーク値で各5度積算値を除算することにより、振動の強度を0〜1の無次元数で表わすことである。なお、正規化の方法はこれに限らない。
本実施の形態において、エンジンECU200は、正規化された振動波形とノック波形モデルとの偏差に関する値である相関係数Kを算出する。振動波形において強度(5度積算値)がピークになるクランク角とノック波形モデルにおいて強度がピークになるタイミングとを一致させた状態で、正規化後の振動波形とノック波形モデルとの偏差の絶対値(ズレ量)をクランク角ごと(5度ごと)に算出することにより、相関係数Kが算出される。なお、振動波形において強度がピークになるクランク角を特定する方法については後で詳述する。
正規化後の振動波形とノック波形モデルとのクランク角ごとの偏差の絶対値をΔS(I)(Iは自然数)とし、ノック波形モデルにおける振動の強度をクランク角で積分した値(ノック波形モデルの面積)をSとおくと、相関係数Kは、K=(S−ΣΔS(I))/Sという方程式により算出される。ここで、ΣΔS(I)は、ΔS(I)の総和である。本実施の形態において、相関係数Kは、振動波形の形状がノック波形モデルの形状に近いほど、大きな値として算出される。したがって、振動波形にノッキング以外の要因による振動の波形が含まれた場合、相関係数Kは小さく算出される。なお、相関係数Kの算出方法はこれに限らない。
さらに、エンジンECU200は、5度積算値の最大値に基づいて、ノック強度Nを算出する。5度積算値の最大値をPとし、エンジン100にノッキングが発生していない状態におけるエンジン100の振動の強度を表わす値をBGL(Back Ground Level)とお
くと、ノック強度Nは、N=P/BGLという方程式で算出される。なお、ノック強度Nを算出する際の5度積算値の最大値Pは対数変換される。また、ノック強度Nの算出方法はこれに限らない。
BGLは、後述する強度値LOG(V)の頻度分布において、標準偏差σと係数(たとえば「1」)との積を、中央値V(50)から減算した値として算出される。なお、BGLの算出方法はこれに限らず、BGLをROM202に記憶しておくようにしてもよい。
本実施の形態において、エンジンECU200は、算出されたノック強度NとSRAM204に記憶された判定値V(J)とを比較し、さらに検出された波形と記憶されたノック波形モデルとを比較して、エンジン100にノッキングが発生したか否かを1点火サイクル(クランク角で720度)ごとに判定する。
図7に示すように、判定値V(J)は、エンジン回転数NEと吸入空気量KLとをパラメータとした運転状態により区分される領域毎に、マップとして記憶される。本実施の形態においては、低回転(NE<NE(1))、中回転(NE(1)≦NE<NE(2))、高回転(NE(2)≦NE)、低負荷(KL<KL(1))、中負荷(KL(1)≦KL<KL(2))、高負荷(KL(2)≦KL)で区分することにより、気筒毎に9つの領域が設けられる。なお、領域の数はこれに限らない。また、エンジン回転数NEおよび吸入空気量KL以外のパラメータを用いて領域を区分するようにしてもよい。
エンジン100もしくは車両の出荷時において、ROM202に記憶される判定値V(J)(出荷時における判定値V(J)の初期値)には、予め実験などにより定められる値が用いられる。ところが、ノックセンサ300の出力値のばらつきや劣化などにより、エンジン100で同じ振動が生じた場合であっても、検出される強度が変化し得る。この場
合、判定値V(J)を補正し、実際に検出される強度に応じた判定値V(J)を用いてノッキングが発生したか否かを判定する必要がある。
そこで、本実施の形態においては、強度Vを対数変換した値である強度値LOG(V)と、各強度値LOG(V)が検出された頻度(回数、確率ともいう)との関係を示す頻度分布に基づいて、ノック判定レベルV(KD)が算出される。
エンジン回転数NEと吸入空気量KLとをパラメータとする領域ごとに強度値LOG(V)が算出される。強度値LOG(V)を算出するために用いられる強度Vは、検出された波形における強度の最大値(5度積算値の最大値)である。算出される強度LOG(V)に基づいて、強度値LOG(V)の頻度を最小値から累積して50%になる中央値V(50)が算出される。また、中央値V(50)以下の強度値LOG(V)における標準偏差σが算出される。たとえば、本実施の形態においては、複数(たとえば200サイクル)の強度値LOG(V)に基づいて算出される中央値および標準偏差と近似した中央値V(50)および標準偏差σが、以下の算出方法により1点火サイクルごとに算出される。
今回検出された強度値LOG(V)が前回算出された中央値V(50)よりも大きい場合、前回算出された中央値V(50)に予め定められた値C(1)を加算した値が、今回の中央値V(50)として算出される。逆に、今回検出された強度値LOG(V)が前回算出された中央値V(50)よりも小さい場合、前回算出された中央値V(50)から予め定められた値C(2)(たとえばC(2)はC(1)と同じ値)を減算した値が、今回の中央値V(50)として算出される。
今回検出された強度値LOG(V)が、前回算出された中央値V(50)よりも小さく、かつ前回算出された中央値V(50)から前回算出された標準偏差σを減算した値よりも大きい場合、前回算出された標準偏差σから予め定められた値C(3)を2倍した値を減算した値が、今回の標準偏差σとして算出される。逆に、今回検出された強度値LOG(V)が、前回算出された中央値V(50)よりも大きい場合、または前回算出された中央値V(50)から前回算出された標準偏差σを減算した値よりも小さい場合、前回算出された標準偏差σに予め定められた値C(4)(たとえばC(4)はC(3)と同じ値)を加算した値が、今回の標準偏差σとして算出される。なお、中央値V(50)および標準偏差σの算出方法はこれに限定されない。また、中央値V(50)および標準偏差σの初期値は、予め設定された値であってもよいし、「0」であってもよい。
中央値V(50)および標準偏差σを用いて、ノック判定レベルV(KD)が算出される。図8に示すように、中央値V(50)に係数U(1)(U(1)は定数で、たとえばU(1)=3)と標準偏差σとの積を加算した値が、ノック判定レベルV(KD)となる。なお、ノック判定レベルV(KD)の算出方法はこれに限らない。
ノック判定レベルV(KD)よりも大きい強度値LOG(V)の割合(頻度)が、ノッキングが発生した頻度として判定され、ノック占有率KCとしてカウントされる。
ノック占有率KCがしきい値KC(0)よりも大きいと、点火時期の遅角が行なわれる頻度が高くなるように、判定値V(J)が予め定められた補正量A(1)だけ小さく補正される。補正された判定値V(J)は、SRAM204に記憶される。
係数U(1)は、実験などより得られたデータや知見から求められた係数である。U(1)=3とした場合のノック判定レベルV(KD)よりも大きい強度値LOG(V)が、実際にノッキングが発生した点火サイクルにおける強度値LOG(V)と略一致する。なお、係数U(1)に「3」以外の値を用いるようにしてもよい。
以下、振動波形において強度がピークになるクランク角を特定する方法について説明する。
本実施の形態においては、図9に示すように、ノック検出ゲートを6等分した領域ごとに、すなわち、クランク角で15度分だけ強度(3つの5度積算値)を積算した15度積算値が算出される。15度積算値は、複数の点火サイクルごとに算出される。なお、この15度積算値が、前述の第1の発明における積算値に対応する。また、領域の数は6つに限らず、その他、複数であればいくつでもよい。
今回の点火サイクルの15度積算値と前回(1つ前)の点火サイクルの15度積算値との差より、図9において斜線で示す15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出される。
15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出された6つの領域のうち、15度積算値の変化量がより大きい領域が2つ特定される。すなわち、変化量が大きい上位2つの領域が特定される。なお、特定する領域は2つに限らない。
特定された領域と同じ領域が探索領域として定められ、この探索領域内において、隣接するクランク角の強度(5度積算値)に比べて大きく、かつそのような強度の中で最大の強度(5度積算値)のクランク角が特定される。すなわち振動波形において強度がピークになるクランク角が特定される。このクランク角に、ノック波形モデルにおいて振動の強度が最大になるタイミングを一致させて、振動波形とノック波形モデルとの比較が行なわれる。
図10を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200の機能について説明する。なお、以下に説明するエンジンECU200の機能は、ハードウェアにより実現してもよく、ソフトウェアにより実現してもよい。
エンジンECU200は、強度検出部210と、波形検出部212と、ノック強度算出部220と、相関係数算出部222と、ノッキング判定部230と、15度積算値算出部240と、変化量検出部242と、領域特定部250と、クランク角特定部252とを含む。
強度検出部210は、ノックセンサ300から送信された信号に基づいて、ノック検出ゲートにおける振動の強度Vを検出する。波形検出部212は、振動の強度Vをクランク角度で5度分づつ積算することにより、ノック検出ゲートにおける振動の波形を検出する。
ノック強度算出部220は、ノック強度Nを算出する。相関係数算出部222は、相関係数Kを算出する。ノッキング判定部230は、ノック強度Nが判定値V(J)より大きく、かつ相関係数Kがしきい値K(0)より大きい場合、ノッキングが発生したと判定する。
15度積算値算出部240は、ノック検出ゲートを6等分した領域ごとに15度積算値を算出する。変化量検出部242は、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)を検出する。
領域特定部250は、6つの領域のうち、検出された15度積算値の変化量がより大きいクランク角の領域を特定する。本実施の形態において、領域特定部250は、検出され
た15度積算値の変化量がより大きい領域を2つ特定する。
クランク角特定部252は、特定された領域と同じ領域に定められた探索領域内において、隣接するクランク角の強度に比べて大きく、かつそのような強度の中で最大の強度のクランク角を特定する。
図11を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、以下に説明するプログラムは、予め定められた周期で繰返し実行される。
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、エンジンECU200は、クランクポジションセンサ306から送信された信号に基づいて、エンジン回転数NEを検出するとともに、エアフローメータ314から送信された信号に基づいて、吸入空気量KLを検出する。
S102にて、エンジンECU200は、ノックセンサ300から送信された信号に基づいて、エンジン100の振動の強度を検出する。振動の強度は、ノックセンサ300の出力電圧値で表される。なお、ノックセンサ300の出力電圧値と対応した値で振動の強度を表してもよい。強度の検出は、燃焼行程において上死点から90度(クランク角で90度)までの間で行なわれる。
S104にて、エンジンECU200は、ノックセンサ300の出力電圧値(振動の強度を表わす値)を、クランク角で5度ごとに(5度分だけ)積算した5度積算値を算出する。5度積算値の算出は、第1の周波数帯A〜第3の周波数帯Cの振動ごとに行なわれる。さらに第1の周波数帯A〜第3の周波数帯Cの5度積算値が、クランク角度に対応して加算されて、エンジン100の振動波形が検出される。
S110にて、エンジンECU200は、ノック検出ゲートを6等分した領域ごとに15度積算値を算出する。
S112にて、エンジンECU200は、今回の点火サイクルの15度積算値と前回(1つ前)の点火サイクルの15度積算値との差より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)を検出する。
S114にて、エンジンECU200は、6つの領域のうち、検出された15度積算値の変化量がより大きい領域を2つ特定する。
S116にて、エンジンECU200は、特定された領域と同じ領域に定められた探索領域内において、隣接するクランク角の強度(5度積算値)に比べて大きく、かつそのような強度の中で最大の強度のクランク角を特定する。
S120にて、エンジンECU200は、エンジン100の振動波形を正規化する。S122にて、エンジンECU200は、正規化された振動波形とノック波形モデルとの偏差に関する値である相関係数Kを算出する。S124にて、エンジンECU200は、ノック強度Nを算出する。
S126にて、エンジンECU200は、ノック強度Nが判定値V(J)よりも大きく、かつ相関係数Kがしきい値K(0)よりも大きいか否かを判別する。ノック強度Nが判定値V(J)よりも大きく、かつ相関係数Kがしきい値K(0)よりも大きい場合(S126にてYES)、処理はS128に移される。そうでない場合(S126にてNO)、
処理はS132に移される。
S128にて、エンジンECU200は、エンジン100にノッキングが発生したと判定する。S130にて、エンジンECU200は、点火時期を遅角する。S132にて、エンジンECU200は、エンジン100にノッキングが発生していないと判定する。S134にて、エンジンECU200は、点火時期を進角する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200の動作について説明する。
エンジン100の運転中において、クランクポジションセンサ306から送信された信号に基づいて、エンジン回転数NEが検出されるとともに、エアフローメータ314から送信された信号に基づいて、吸入空気量KLが検出される(S100)。また、ノックセンサ300から送信された信号に基づいて、エンジン100の振動の強度が検出される(S102)。
燃焼行程における上死点から90度までの間において、5度ごとの5度積算値が第1の周波数帯Aから第3の周波数帯Cの振動ごとに算出される(S104)。算出された第1の周波数帯A〜第3の周波数帯Cの5度積算値がクランク角度に対応して加算され、前述した図4に示すようなエンジン100の振動波形が検出される。
さらに、前述した図9に示すように、ノック検出ゲートを6等分した領域ごとに15度積算値が算出される(S110)。今回の点火サイクルの15度積算値と前回(1つ前)の点火サイクルの15度積算値との差より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出される(S112)。
ノッキングは突発的に発生することから、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が大きい領域は、ノッキングが発生したクランク角を含む可能性が高いといえる。そこで、6つの領域のうち、検出された15度積算値の変化量がより大きい領域が2つ特定される(S114)。
特定された領域と同じ領域に定められた探索領域内において、隣接するクランク角の強度に比べて大きく、かつそのような強度の中で最大の強度のクランク角が特定される(S116)。これにより、ノッキングが発生した可能性があるクランク角を特定することができる。
振動波形は、正規化される(S120)。ノック波形モデルにおいて振動の強度が最大になるタイミングを特定されたクランク角に一致させ、この状態で、正規化後の振動波形とノック波形モデルとのクランク角ごとの偏差の絶対値ΔS(I)が算出される。このΔS(I)の総和ΣΔS(I)およびノック波形モデルにおいて振動の強度をクランク角で積分した値Sに基づいて、K=(S−ΣΔS(I))/Sにより相関係数Kが算出される(S122)。これにより、検出された振動波形とノック波形モデルとの一致度合を数値化して客観的に判定することができる。また、振動波形とノック波形モデルとを比較することで、振動の減衰傾向など、振動の挙動からノッキング時の振動であるか否かを分析することができる。
さらに、ノック強度Nが算出される(S124)。ノック強度Nが判定値V(J)よりも大きく、かつ相関係数Kがしきい値K(0)よりも大きい場合(S126にてYES)、ノッキングが発生したと判定され(S128)、点火時期が遅角される(S130)。これにより、ノッキングの発生が抑制される。
ノック強度Nが判定値V(J)以下である場合または相関係数Kがしきい値K(0)以下である場合(S126にてNO)、ノッキングが発生していないと判定され(S132)、点火時期が進角される(S134)。
以上のように、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECUによれば、ノック検出ゲートを6等分した領域ごとに15度積算値が算出される。今回の点火サイクルの15度積算値と前回の点火サイクルの15度積算値との差より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出される。6つの領域のうち、検出された15度積算値の変化量がより大きい領域が特定される。特定された領域内において、隣接するクランク角の強度に比べて大きく、かつそのような強度の中で最大の強度のクランク角が特定される。これにより、点火サイクル間で振動の強度に変化があるといえるクランク角を特定することができる。すなわち、ノッキングが発生した可能性が高いクランク角を特定することができる。ノック波形モデルにおいて振動の強度が最大になるタイミングを特定されたクランク角に一致させて、相関係数Kが算出される。この相関係数Kを用いてノッキングが発生したか否かが判定される。これにより、検出された波形において、突発的に強度が大きくなった部分に基づいてノッキングが発生したか否かを判定することができる。そのため、定常的に強度が大きい部分に基づいてノッキングが発生したか否かを判定することを抑制することができる。そのため、ノッキングが発生していないにも関わらず、ノッキングが発生したと誤判定することを抑制することができる。
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、強度(5度積算値)がピークになるクランク角として特定されたクランク角が予め定められた領域内にある場合、ノッキングが発生していないと判定する点で前述の第1の実施の形態と相違する。その他の構造については、前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
図12を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200の機能について説明する。なお、以下に説明するエンジンECU200の機能は、ハードウェアにより実現してもよく、ソフトウェアにより実現してもよい。また、前述の第1の実施の形態と同じ構成については、同じ符号を付してある。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
エンジンECU200は、判定部260をさらに含む。判定部260は、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の(クランク角がより大きい)領域内に、強度がピークになるクランク角として特定されたクランク角がある場合、ノッキングが発生していないと判定する。
言い換えると、判定部260は、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、進角側の(クランク角がより小さい)領域内に、強度がピークにあるクランク角として特定されたクランク角がない場合、ノッキングが発生していないと判定する。
なお、ノッキングが発生していないと判定する領域は、ノック検出ゲートを2等分した領域に限定されず、ノック検出ゲート内の任意の領域でよい。たとえば、上死点〜10度までと、55度〜90度までのように、複数設定してもよい。また、この領域を運転条件に応じて可変としてもよい。
図13を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、前述の第1の実施の形態と
同じ処理については、同じステップ番号を付してある。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
S200にて、エンジンECU200は、特定されたクランク角が、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の領域内にあるか否かを判別する。特定されたクランク角が、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の領域内にある場合(S200にてYES)、処理はS132に移される。もしそうでないと(S200にてNO)、処理は120に移される。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200の動作について説明する。
図14において斜線で示すように、ノック検出ゲートの終点、すなわちクランク角で90度付近の領域において15度積算値の変化量が大きいと、強度度がピークになるクランク角が、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の領域内から特定され得る。
エンジン100において、ノッキングは、上死点付近で発生することが知られている。すなわち、クランク角で90度付近において発生する振動は、ノッキング以外の要因により発生したものであるといえる。
そこで、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の領域内に、15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域がある場合(S200にてYES)、ノッキングが発生していないと判定される(S132)。
これにより、ノッキングが発生し得ないクランク角において偶発的に振動の強度が大きくなった場合に、ノッキングが発生していないにもかかわらずノッキングが発生したと誤判定することを抑制できる。なお、ノッキングが発生していないと判定する代わりに、相関係数Kを「0」として算出するようにしてもよい。
<第3の実施の形態>
以下、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域を含み、かつ特定された領域よりも広い領域が探索領域として定められる点で、前述の第1の実施の形態と相違する。さらに、探索領域内において強度がピークになるクランク角がない場合、ノッキングが発生していないと判定する点で、前述の第1の実施の形態と相違する。その他の構造については、前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
図15に示すように、本実施の形態においては、15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域を含み、かつ特定された領域よりも広い領域が探索領域として定められる。これにより、積算値の変化量が大きいクランク角の領域の近傍からも、振動のピークを検出することができる。そのため、15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域内において強度がピークになるクランク角がない場合であっても、特定された領域の近傍に強度がピークになるクランク角があれば、そのクランク角を特定することができる。その結果、ノッキングに起因する振動のピークを精度よく特定することができる。
図16を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200の機能について説明する。なお、以下に説明するエンジンECU200の機能は、ハードウェアにより実現してもよく、ソフトウェアにより実現してもよい。また、前述の第1
の実施の形態と同じ構成については、同じ符号を付してある。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
エンジンECU200は、判定部262をさらに含む。判定部262、探索領域内において、隣接するクランク角の強度に比べて大きい強度を有するクランク角、すなわち強度がピークになるクランク角がない場合、ノッキングが発生していないと判定する。
図17を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、前述の第1の実施の形態と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
S300にて、エンジンECU200は、探索領域内において、隣接するクランク角の強度に比べて大きい強度を有するクランク角、すなわち強度がピークになるクランク角があるか否かを判別する。探索領域内において、強度がピークになるクランク角がある場合(S300にてYES)、処理はS116に移される。そうでない場合(S300にてNO)、処理はS132に移される。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200の動作について説明する。
探索領域内において強度がピークになるクランク角がない場合は(S300にてYES)、たとえばノッキングが発生し得ないクランク角、すなわち探索領域外において偶発的に振動の強度が大きくなったと考えられる。この場合、ノッキングが発生していないと判定される(S132)。そのため、ノッキングが発生していないにもかかわらずノッキングが発生したと誤判定することを抑制できる。なお、ノッキングが発生していないと判定する代わりに、相関係数Kを「0」として算出するようにしてもよい。
<第4の実施の形態>
以下、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、今回の点火サイクルの15度積算値と前回の点火サイクルの15度積算値との差の絶対値より、15度積算値の変化量を検出する点で、前述の第1の実施の形態と相違する。その他の構造については、前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
今回の点火サイクルの15度積算値と前回の点火サイクルの15度積算値との差の絶対値より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)を検出した場合、図18において斜線で示すように、今回の点火サイクルの強度が前回の点火サイクルの強度よりも小さい場合であっても、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)を検出することができる。
<第5の実施の形態>
以下、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の合計値ΔV(A)に対する各15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の割合に応じて、変化量がより大きい領域として特定する領域の数を定める点で前述の第1の実施の形態と相違する。その他の構造については、前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
図19を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU20
0の機能について説明する。なお、以下に説明するエンジンECU200の機能は、ハードウェアにより実現してもよく、ソフトウェアにより実現してもよい。また、前述の第1の実施の形態と同じ構成については、同じ符号を付してある。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
エンジンECU200は、割合算出部264と、特定数設定部266とをさらに含む。割合算出部264は、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の合計値ΔV(A)に対する各15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の割合を算出する。
特定数設定部266は、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の合計値ΔV(A)に対する各15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の割合のうちの少なくともいずれか1つ割合が、しきい値(たとえば50%)以上である場合、「1」を特定する領域の数として定める。
15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の合計値ΔV(A)に対する各15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の割合の全てがしきい値より小さい場合、「2」を特定する領域の数として定める。なお、特定する領域の数は、「1」または「2」以外の数であってもよい。
図20を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、前述の第1の実施の形態と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
S500にて、エンジンECU200は、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の合計値ΔV(A)に対する各15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の割合を算出する。
S502にて、エンジンECU200は、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の合計値ΔV(A)に対する各15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の割合のうちの少なくともいずれか1つ割合がしきい値以上であるか否かを判別する。
15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の合計値ΔV(A)に対する各15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の割合のうちの少なくともいずれか1つ割合が、しきい値以上である場合(S502にてYES)、処理はS504に移される。もしそうでないと(S502にてNO)、処理はS508に移される。
S504にて、エンジンECU200は、「1」を特定する領域の数に定める。S506にて、エンジンECU200は、6つの領域のうち、検出された15度積算値の変化量がより大きい領域を1つ特定する。すなわち、15度積算値の変化量が最も大きい領域を特定する。S508にて、エンジンECU200は、「2」を特定する領域の数に定める。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200の動作について説明する。
ノッキングが発生せず、かつノッキング以外の要因による振動が発生すると、図21に示すように、ノッキングが発生し得ない領域の15度積算値の変化量のみが、他の領域の15度積算値の変化量に比べて著しく大きくなる場合がある。
このような場合、15度積算値の変化量が大きい領域として2つの領域を特定すると、相対的な変化量は大きいが、絶対的な変化量が小さい領域が特定され得る。このような領域が特定されると、ノッキングが発生したか否かを誤判定する要因になり得る。
そこで、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の合計値ΔV(A)に対する各15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の割合が算出される(S500)。15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の合計値ΔV(A)に対する各15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の割合のうちの少なくともいずれか1つ割合が、しきい値以上である場合(S502にてYES)、「1」が特定する領域の数として定められる(S504)。
そのため、6つの領域のうち、検出された15度積算値の変化量がより大きい領域が1つ特定される(S506)。これにより、相対的な変化量は大きいが、絶対的な変化量が小さい領域が特定されることを抑制することができる。そのため、ノッキングが発生した可能性が低い領域から強度がピークになるクランク角を誤って特定することを抑制することができる。その結果、誤判定を抑制することができる。
一方、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の合計値ΔV(A)に対する各15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)の割合の全てがしきい値より小さい場合(S502にてNO)、通常通り、「2」が特定する領域の数として定められる(S508)。
<第6の実施の形態>
以下、本発明の第6の実施の形態について説明する。本実施の形態は、今回の点火サイクルの15度積算値と、前回以上前の点火サイクルであって、強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より小さいという条件を満たす点火サイクルの15度積算値との差より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)を検出する点で前述の第1の実施の形態と相違する。その他の構造については、前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
本実施の形態においては、今回の点火サイクルの15度積算値と、前回以上前の点火サイクルであって、図22の頻度分布に示すノック判定レベルV(KD)よりも強度値LOG(V)が小さいという条件を満たす点火サイクルの15度積算値との差より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出される。
すなわち、前回の点火サイクルの強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)以上であって、前々回の点火サイクルの強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より小さいと、今回の点火サイクルの15度積算値と、前々回の点火サイクルの15度積算値の差より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出される。
ここで、検出された振動波形における強度の最大値を用いて強度値LOG(V)を算出することから、強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より小さいことは、検出された波形における強度の最大値がノック判定レベルV(KD)を逆対数変換した値より小さいことと同じである。
図23を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、前述の第1の実施の形態と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
S600にて、エンジンECU200は、前回の点火サイクルの強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より小さいか否かを判別する。前回の点火サイクルの強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より小さい場合(S600にてYES)、処理はS112に移される。そうでない場合(S600にてNO)、処理はS602に移される。
S602にて、エンジンECU200は、今回の点火サイクルの15度積算値と、前回よりも前の点火サイクルであって、強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より小さい点火サイクルのうち、最も新しい点火サイクルの15度積算値との差より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)を検出する。
なお、前回よりも前の点火サイクルであって、強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より小さい点火サイクルのうち、最も新しい点火サイクル以外の点火サイクルの15度積算値を用いるようにしてもよい。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200の動作について説明する。
前回の点火サイクルにおいてノッキングが発生したり、ノッキング以外に起因して大きな強度の振動が発生したりすると、前回の点火サイクルにおける15度積算値が大きくなり得る。このような点火サイクルの15度積算値を基準にして15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)を検出すると、今回の点火サイクルにおいてノッキングが発生した場合であっても、変化量自体は小さくなる。
そこで、前回の点火サイクルの強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より大きい場合(S600にてNO)、今回の点火サイクルの15度積算値と、前回よりも前の点火サイクルであって、強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より小さい点火サイクルのうち、最も新しい点火サイクルの15度積算値との差より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出される(S602)。
すなわち、ノッキングによる振動およびノッキング以外に起因する大きな強度の振動が発生しなかった点火サイクルの15度積算値を基準として、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出される。
これにより、ノッキングが発生しているにもかかわらず、15度積算値の変化量が小さくなるということを抑制することができる。そのため、ノッキングが発生した可能性のある領域を精度よく特定することができる。
前回の点火サイクルの強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より小さい場合(S600にてYES)、通常通り、今回の点火サイクルの15度積算値と前回(1つ前)の点火サイクルの15度積算値との差より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出される(S112)。
<第7の実施の形態>
以下、本発明の第7の実施の形態について説明する。本実施の形態は、今回の点火サイクルの15度積算値と、前回以上前の点火サイクルであって、強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より大きいという条件を予め定められた回数より多く連続して満たした複数の点火サイクルの15度積算値との差より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)を検出する点で前述の第6の実施の形態と相違する。その他の構造について
は、前述の第1および第6の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
図24を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、前述の第1または第6の実施の形態と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
S700にて、エンジンECU200は、前回までの点火サイクルにおいて、強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より大きい点火サイクルが、予め定められた回数以上連続しているか否かを判別する。強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より大きい点火サイクルが、予め定められた回数以上連続している場合(S700にてYES)、処理はS112に移される。そうでない場合(S700にてNO)、処理はS602に移される。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200の動作について説明する。
前回の点火サイクルの強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より大きい場合(S600にてNO)、前回までの点火サイクルにおいて、強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より大きい点火サイクルが、予め定められた回数以上連続しているか否かが判別される(S700)。
強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より大きい点火サイクルが、予め定められた回数以上連続している場合(S700にてYES)、大きい強度の振動は、ノッキングなどにより突発的に発生したものでなく、エンジン100自体に定常的に発生しているものであるといえる。
この場合、通常通り、今回の点火サイクルの15度積算値と前回(1つ前)の点火サイクルの15度積算値との差より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出される(S112)。これにより、エンジン100に定常的に発生する振動を基準にしてノッキングが発生したか否かを判定することができる。そのため、ノッキングが発生していないにもかかわらず、ノッキングが発生したと誤判定することを抑制することができる。
強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より大きい点火サイクルが、予め定められた回数以上連続していない場合(S700にてNO)、大きい強度の振動は、ノッキングなどにより突発的に発生した振動であるといえる。
この場合、今回の点火サイクルの15度積算値と、前回よりも前の点火サイクルであって、強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より小さい点火サイクルのうち、最も新しい点火サイクルの15度積算値との差より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出される(S602)。
すなわち、ノッキングによる振動およびノッキング以外に起因する大きな強度の振動が発生しなかった点火サイクルの15度積算値を基準として、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出される。
これにより、ノッキングが発生しているにもかかわらず、15度積算値の変化量が小さくなるということを抑制することができる。そのため、ノッキングが発生した可能性のある領域を精度よく特定することができる。
なお、前回までの点火サイクルにおいて、強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より大きい点火サイクルが、予め定められた回数以上連続している場合、前回の点火サイクルの代わりに、強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より大きいという条件を予め定められた回数より多く連続して満たした複数の点火サイクルのうちのいずれかの点火サイクルの15度積算値を用いるようにしてもよい。
<第8の実施の形態>
以下、本発明の第8の実施の形態について説明する。本実施の形態は、今回の点火サイクルの15度積算値と、指数平滑法と呼ばれる平滑化手法を用いて過去の15度積算値から算出される演算値、すなわち15度積算値が平滑化された演算値との差より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)を検出する点で前述の第1の実施の形態と相違する。その他の構造については、前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
図25を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200の機能について説明する。なお、以下に説明するエンジンECU200の機能は、ハードウェアにより実現してもよく、ソフトウェアにより実現してもよい。また、前述の第1の実施の形態と同じ構成については、同じ符号を付してある。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
エンジンECU200は、演算値算出部268をさらに含む。演算値算出部268は、下記の式(1)により、演算値(平滑化された15度積算値)VNを算出する。なお、下記の式(1)において、VN(i)は、今回の点火サイクルにおいて算出される演算値VNを示す。VN(i−1)は、前回の点火サイクルにおいて算出された演算値VNを示す。V15(i−1)は、前回の点火サイクルにおける15度積算値を示す。Zは定数である。
VN(i)=VN(i−1)+Z×(V15(i−1)−VN(i−1)・・・(1)
なお、演算値VNは、複数のクランク角の領域ごとに算出される。
図26を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、前述の第1の実施の形態と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
S800にて、エンジンECU200は、指数平滑法を用いて15度積算値から演算値VNを算出する。
S802にて、エンジンECU200は、今回の点火サイクルの15度積算値と演算値VNとの差より、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)を検出する。
このようにすれば、点火サイクルごとの変化量が小さい演算値VNを基準にして、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)を検出することができる。そのため、ノッキングが発生したか否かを安定的に精度よく判定することができる。なお、平滑化の手法は上記に限らず、単純移動平均もしくはフィルタなどを用いて実現してもよい。
<第9の実施の形態>
以下、本発明の第9の実施の形態について説明する。本実施の形態は、強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より小さいという条件を満たす点火サイクルの15度
積算値のみを用いて演算値VNを算出する点で前述の第8の実施の形態と相違する。その他の構造については、前述の第1および第8の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
図27を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、前述の第1または第9の実施の形態と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
S900にて、エンジンECU200は、前回の点火サイクルにおいて、強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より小さいか否かを判別する。前回の点火サイクルにおいて、強度値LOG(V)がノック判定レベルV(KD)より小さい場合(S900にてYES)、処理はS800に移される。そうでない場合(S900にてNO)、処理はS802に移される。
このようにすれば、たとえば、ノッキングが発生した点火サイクルの15度積算値を除いた15度積算値から演算値VNを算出することができる。このような演算値VNを基準として15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)が検出される。そのため、点火サイクルごとの変化量が小さい演算値VNを基準にして、15度積算値の変化量ΔV(1)〜ΔV(6)を検出することができる。そのため、ノッキングが発生したか否かを安定的に精度よく判定することができる。
<第10の実施の形態>
以下、本発明の第10の実施の形態について説明する。本実施の形態は、相関係数Kがしきい値K(0)以下である場合、またはノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の(クランク角がより大きい)領域内に、強度がピークになるクランク角として特定されたクランク角がある場合、検出された振動波形を補正する点で、前述の第1の実施の形態と相違する。
また、本実施の形態においては、図28に示す頻度分布に用いる強度値LOG(V)を、燃焼行程における上死点から90度までの強度を積算した値(以下、90度積算値とも記載する)を対数変換して算出する。さらに、本実施の形態においては、90度積算値をBGLで除算することによりノック強度Nが算出される。すなわち、本実施の形態においては5度積算値の代わりに90度積算値を用いて頻度分布が作成されるとともに、ノック強度Nが算出される。
その他、エンジン100自体の構造などについては、前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
図29を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200の機能について説明する。なお、以下に説明するエンジンECU200の機能は、ハードウェアにより実現してもよく、ソフトウェアにより実現してもよい。また、前述の第1の実施の形態と同じ構成については、同じ符号を付してある。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
エンジンECU200は、判定部270と、補正部272と、積算値算出部274と、更新部276と、禁止部278とをさらに含む。判定部270は、15度積算値の変化量がより大きいクランク角の領域として特定された領域の15度積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを判定する。すなわちエンジン1000自体の構成部品(吸気バル
ブ116、排気バルブ118など)が作動して生じる機械振動により変化したか否かが判定される。
たとえば、相関係数Kがしきい値K(0)以下である場合、またはノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の(クランク角がより大きい)領域内に、強度がピークになるクランク角として特定されたクランク角がある場合、15度積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定される。
逆に、相関係数Kがしきい値K(0)より大きい場合、またはノック検出ゲートを2等分した領域のうち、進角側の(クランク角がより小さい)領域内に、強度がピークになるクランク角として特定されたクランク角がある場合、15度積算値がノッキングに起因して変化したと判定される。
15度積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かは、15度積算値の変化量がより大きいクランク角の領域として特定された複数(本実施の形態においては2つ)の領域毎に判定される。したがって、相関係数Kは、強度がピークになるクランク角として特定された各クランク角を用いて、複数(本実施の形態のおいては2つ)算出される。相関係数Kを算出する方法は、前述の第1の実施の形態と同じであるため、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
なお、15度積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを判断する方法はこれに限らない。また、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の(クランク角がより大きい)領域内に、強度がピークになるクランク角として特定されたクランク角がある場合、相関係数Kを「0」として算出するようにしてもよい。
補正部272は、15度積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された領域における15度積算値の変化量が小さくなるように、検出された振動波形を補正する。より具体的には、15度積算値が前回の点火サイクルにおいて算出された15度積算値と同じ値にされる。
積算値算出部274は、補正された振動波形における強度の15度積算値および90度積算値を算出する。更新部276は、90度積算値を用いて強度値LOG(V)の頻度分布を更新する。頻度分布を更新することにより、BGLの算出、ノック判定レベルV(KD)の算出、判定値V(J)の補正などが実行される。
禁止部278は、15度積算値の変化量がより大きいクランク角の領域として特定された複数領域のうちの少なくとも一つの領域における15度積算値が、ノッキングに起因して変化したと判定された場合、振動波形の補正を禁止する。すなわち、全ての領域において振動波形の補正が禁止される。
図30および図31を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、前述の第1の実施の形態と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返さない。
S1000にて、エンジンECU200は、15度積算値がより大きい領域として特定された全ての領域における15度積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを判別する。全ての領域において、15度積算値がノッキングに起因せずに変化した場合(S1000にてYES)、処理はS1010に移される。もしそうでないと(S1000にてNO)、処理はS1002に移される。S1002にて、エンジンECU200は、振動
波形の補正を禁止する。
S1010にて、エンジンECU200は、15度積算値がより大きい領域として特定された領域における15度積算値の変化量(今回の15度積算値−前回の15度積算値)が正値であるか否かを判別する。変化量が正値であると(S1010にてYES)、処理はS1012に移される。もしそうでないと(S1010にてNO)、処理はS1020に移される。
S1012にて、エンジンECU200は、検出された振動波形を補正する。S1014にて、エンジンECU200は、補正された振動波形における15度積算値を算出する。S1016にて、エンジンECU200は、補正された振動波形における15度積算値の総和、すなわち補正された振動波形における90度積算値を算出する。
S1018にて、エンジンECU200は、補正された振動波形における90度積算値を用いて強度値LOG(V)の頻度分布を更新する。頻度分布を更新することにより、BGLの算出、ノック判定レベルV(KD)の算出、判定値V(J)の補正などが実行される。
S1020にて、エンジンECU200は、補正がなされなかった振動波形における90度積算値を算出する。S1022にて、エンジンECU200は、振動波形を補正せずに算出された90度積算値を用いて強度値LOG(V)の頻度分布を更新する。
S1030にて、エンジンECU200は、ノック強度Nが判定値V(J)より大きいか否かを判別する。ノック強度Nが判定値V(J)より大きいと(S1040にてYES)、処理はS128に移される。もしそうでないと(S1040にてNO)、処理はS132に移される。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200の動作について説明する。
図32において斜線で示すように、ノック検出ゲートの終点、すなわちクランク角で90度付近の領域において15度積算値の変化量が大きいと、強度度がピークになるクランク角が、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の領域内から特定され得る。
エンジン100において、ノッキングは、上死点付近で発生することが知られている。すなわち、クランク角で90度付近において発生する振動は、ノッキング以外の要因により発生したものであるといえる。
そこで、ノック検出ゲートを2等分した領域のうち、遅角側の領域内に、15度積算値の変化量がより大きい領域として特定された領域がある場合、ノッキングに起因せずに15度積算値が変化したと判定される。また、算出された相関係数Kがしきい値K(0)以下である場合、ノッキングに起因せずに15度積算値が変化したと判定される。ここでは、特定された全ての領域において、ノッキングに起因せずに15度積算値が変化したと判定されたと想定する(S1000にてYES)。
15度積算値の変化量が正値であると(S1010にてYES)、特定された領域における15度積算値が前回の点火サイクルにおいて算出された15度積算値と同じ値になるように、振動波形が補正される(S1012)。すなわち、図32において斜線で示す部分が取り除かれる。その結果、図33に示すような振動波形が得られる。
補正された振動波形における15度積算値が算出される(S1014)。さらに、補正された振動波形における90度積算値が算出される(S1016)。この90度積算値を用いて強度値LOG(V)の頻度分布が更新される(S1018)。頻度分布を更新することにより、BGLの算出、ノック判定レベルV(KD)の算出、判定値V(J)の補正などが実行される。
これにより、大きな強度の機械振動が突発的に発生した場合には、このような振動の強度を取り除いた振動波形を用いて、ノッキングが発生したか否かを判定することができる。そのため、ノッキングに起因せずに大きくなった強度の影響が小さい振動波形を用いて、ノッキングが発生したか否かを判断することができる。その結果、ノッキングが発生したか否かを誤判定することを抑制することができる。
一方、15度積算値の変化量がより大きいクランク角の領域として特定された複数の領域のうちの少なくとも一つの領域における15度積算値が、ノッキングに起因して変化したと判定された場合、振動波形の補正が禁止される(S1002)。
また、補正がなされなかった振動波形における90度積算値が算出される(S1020)。振動波形を補正せずに算出された90度積算値を用いて強度値LOG(V)の頻度分布が更新される(S1022)。
さらに、ノック強度Nが算出される(S124)。ノック強度Nが判定値V(J)よりも大きいと(S1030にてYES)、ノッキングが発生したと判定され(S128)、点火時期が遅角される(S130)。ノック強度Nが判定値V(J)以下であると(S1030にてNO)、ノッキングが発生していないと判定され(S132)、点火時期が進角される(S134)。
以上のように、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU1000によれば、ノッキングに起因せずに15度積算値が変化したと判定されると、15度積算値の変化量が小さくなるように、検出された振動波形が補正される。補正された振動波形における90度積算値を用いて、強度値LOG(V)の頻度分布が更新される。これにより、大きな強度の機械振動が突発的に発生した場合には、このような振動の強度を取り除いた振動波形を用いて、ノッキングが発生したか否かを判定することができる。そのため、ノッキングに起因せずに大きくなった強度の影響が小さい振動波形を用いて、ノッキングが発生したか否かを判断することができる。その結果、ノッキングが発生したか否かを誤判定することを抑制することができる。
なお、今回の点火サイクルの15度積算値と前回の点火サイクルの15度積算値との差の代わりに、今回の点火サイクルの15度積算値と前回の点火サイクルの15度積算値との差の絶対値を、15度積算値の変化量として検出するようにしてもよい。
また、前述の第8の実施の形態と同様に、今回の点火サイクルの15度積算値と、指数平滑法、単純移動平均またはフィルタ(ローパスフィルタ)などの平滑化手法を用いて過去の15度積算値から算出される演算値、すなわち15度積算値が平滑化された演算値との差、または差の絶対値を、15度積算値の変化量として検出するようにしてもよい。これらの場合、15度積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された領域における15度積算値が平滑化された演算値と同じ値になるように、検出された振動波形を補正するようにしてもよい。
さらに、15度積算値の変化量がより大きいクランク角の領域として特定された複数領域のうちの少なくとも一つの領域の15度積算値がノッキングに起因して変化したと判定
された場合であっても、15度積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された領域において振動波形を補正するようにしてもよい。
<その他の実施の形態>
前述の第1〜第10の実施の形態は、任意の組合わせで用いるようにしてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の第1の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUにより制御されるエンジンを示す概略構成図である。 ノッキング時にエンジンで発生する振動の周波数帯を示す図である。 図1のエンジンECUを示す制御ブロック図である。 エンジンの振動波形を示す図である。 エンジンECUのROMに記憶されたノック波形モデルを示す図である。 振動波形とノック波形モデルとを比較した図である。 エンジンECUのROMもしくはSRAMに記憶された判定値V(J)のマップを示す図である。 強度値LOG(V)の頻度分布を示す図(その1)である。 15度積算値の変化量を示す図(その1)である。 本発明の第1の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUの機能ブロック図である。 本発明の第1の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUの機能ブロック図である。 本発明の第2の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 15度積算値の変化量を示す図(その2)である。 本発明の第3の実施の形態において、強度がピークになるクランク角の探索領域を示す図である。 本発明の第4の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUの機能ブロック図である。 本発明の第4の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 15度積算値の変化量を示す図(その3)である。 本発明の第5の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUの機能ブロック図である。 本発明の第5の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 15度積算値の変化量を示す図(その4)である。 強度値LOG(V)の頻度分布を示す図(その2)である。 本発明の第6の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 本発明の第7の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 本発明の第8の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUの機能ブロック図である。 本発明の第8の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 本発明の第9の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 強度値LOG(V)の頻度分布を示す図(その3)である。 本発明の第10の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUの機能ブロック図である。 本発明の第10の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その1)である。 本発明の第10の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャート(その2)である。 15度積算値の変化量を示す図(その5)である。 補正後の振動波形を示す図である。
符号の説明
100 エンジン、102 エアクリーナ、104 インジェクタ、106 点火プラグ、108 ピストン、110 クランクシャフト、112 三元触媒、114 スロットルバルブ、210 強度検出部、212 波形検出部、220 ノック強度算出部、222 相関係数算出部、230 ノッキング判定部、240 度積算値算出部、242 変化量検出部、250 領域特定部、252 クランク角特定部、260,262,270 判定部、264 割合算出部、266 特定数設定部、268 演算値算出部、272 補正部、274 積算値算出部、276 更新部、278 禁止部、300 ノックセンサ、302 水温センサ、304 タイミングロータ、306 クランクポジションセンサ、308 スロットル開度センサ、310 車速センサ、312 イグニッションスイッチ、314 エアフローメータ、320 補機バッテリ、400 A/D変換部、410 バンドパスフィルタ(1)、420 バンドパスフィルタ(2)、430 バンドパスフィルタ(3)、450 積算部。

Claims (52)

  1. 内燃機関のノッキング判定装置であって、
    前記内燃機関の振動の強度を検出するための手段と、
    検出された強度に基づいて、前記内燃機関の振動の波形を検出するための手段と、
    前記波形における振動の強度を積算した積算値を、複数の予め定められたクランク角の領域毎に算出するための手段と、
    点火サイクル間での前記積算値の変化量を検出するための検出手段と、
    前記複数のクランク角の領域のうち、前記積算値の変化量がより大きいクランク角の領域を予め定められた数だけ特定するための第1の特定手段と、
    特定されたクランク角の領域を基準にして定められる探索領域内で、隣接するクランク角における強度に比べて大きい強度を有するクランク角を特定するための第2の特定手段と、
    前記内燃機関の振動の基準として定められた波形モデルにおいて強度が最大になるタイミングを、特定されたクランク角に一致させた状態で、前記波形と前記波形モデルとを比較した結果に基づいて前記内燃機関にノッキングが発生したか否かを判定するための判定手段とを含む、内燃機関のノッキング判定装置。
  2. 前記ノッキング判定装置は、前記特定されたクランク角が予め定められた領域にある場合、前記内燃機関にノッキングが発生していないと判定するための手段をさらに含む、請求項1に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  3. 前記特定されたクランク角の領域と同じ領域が前記探索領域として定められる、請求項1または2に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  4. 前記特定されたクランク角の領域を含み、かつ前記特定されたクランク角の領域よりも広い領域が、前記探索領域として定められる、請求項1または2に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  5. 前記ノッキング判定装置は、前記探索領域内に、隣接するクランク角における強度に比べて大きい強度を有するクランク角がない場合、前記内燃機関にノッキングが発生していないと判定するための手段をさらに含む、請求項4に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  6. 前記ノッキング判定装置は、前記積算値の変化量の合計値に対する各前記積算値の変化量の割合を算出するための手段をさらに含み、
    算出された割合に応じた数が、前記予め定められた数として定められる、請求項1〜のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  7. 各前記割合のうちの少なくともいずれか1つの割合が予め定められた割合より大きい場合、1が前記予め定められた数として定められる、請求項に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  8. 前記内燃機関の振動の強度および前記波形は、複数の点火サイクルにおいて検出され、
    前記積算値は、各点火サイクルごとに算出され、
    前記検出手段は、前記積算値と、前記波形モデルと比較される波形が検出された点火サイクルよりも前の点火サイクルにおける積算値との差の絶対値により、点火サイクル間での前記積算値の変化量を検出するための手段を含む、請求項1〜のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  9. 前記内燃機関の振動の強度および前記波形は、複数の点火サイクルにおいて検出され、
    前記積算値は、各点火サイクルごとに算出され、
    前記検出手段は、前記積算値と、前記波形モデルと比較される波形が検出された点火サイクルよりも前の点火サイクルであって、かつ振動の強度の最大値が予め定められた強度よりも小さいという条件を満たした点火サイクルにおける積算値との差の絶対値により、点火サイクル間での前記積算値の変化量を検出するための手段を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  10. 前記内燃機関の振動の強度および前記波形は、複数の点火サイクルにおいて検出され、
    前記積算値は、各点火サイクルごとに算出され、
    前記検出手段は、前記積算値と、前記波形モデルと比較される波形が検出された点火サイクルよりも前の点火サイクルであって、かつ振動の強度の最大値が予め定められた強度よりも大きいという条件を予め定められた回数より多く連続して満たした複数の点火サイクルのうちのいずれか1つの点火サイクルにおける積算値との差の絶対値により、点火サイクル間での前記積算値の変化量を検出するための手段を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  11. 前記検出手段は、前記積算値と、前記積算値が平滑化された演算値との差の絶対値により、点火サイクル間での前記積算値の変化量を検出するための手段を含む、請求項1〜のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  12. 前記検出手段は、前記積算値と、振動の強度の最大値が予め定められた強度より小さい点火サイクルにおける積算値が平滑化された演算値との差の絶対値により、点火サイクル間での前記積算値の変化量を検出するための手段を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  13. 前記ノッキング判定装置は、前記波形と前記波形モデルとの差が小さいほどより大きくなるように、前記波形と前記モデルとの差に応じた値を算出するための手段をさらに含み、
    前記判定手段は、前記差に応じた値がしきい値より大きい場合に、ノッキングが発生したと判定するための手段を含む、請求項1〜12のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  14. 内燃機関のノッキング判定方法であって、
    前記内燃機関の振動の強度を検出するステップと、
    検出された強度に基づいて、前記内燃機関の振動の波形を検出するステップと、
    前記波形における振動の強度を積算した積算値を、複数の予め定められたクランク角の領域毎に算出するステップと、
    点火サイクル間での前記積算値の変化量を検出するステップと、
    前記複数のクランク角の領域のうち、前記積算値の変化量がより大きいクランク角の領域を予め定められた数だけ特定するステップと、
    特定されたクランク角の領域を基準にして定められる探索領域内で、隣接するクランク角における強度に比べて大きい強度を有するクランク角を特定するステップと、
    前記内燃機関の振動の基準として定められた波形モデルにおいて強度が最大になるタイミングを、特定されたクランク角に一致させた状態で、前記波形と前記波形モデルとを比較した結果に基づいて前記内燃機関にノッキングが発生したか否かを判定する判定ステップとを含む、内燃機関のノッキング判定方法。
  15. 前記ノッキング判定方法は、前記特定されたクランク角が予め定められた領域にある場合、前記内燃機関にノッキングが発生していないと判定するステップをさらに含む、請求項14に記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  16. 前記特定されたクランク角の領域と同じ領域が前記探索領域として定められる、請求項14または15に記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  17. 前記特定されたクランク角の領域を含み、かつ前記特定されたクランク角の領域よりも広い領域が、前記探索領域として定められる、請求項14または15に記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  18. 前記ノッキング判定方法は、前記探索領域内に、隣接するクランク角における強度に比べて大きい強度を有するクランク角がない場合、前記内燃機関にノッキングが発生していないと判定するステップをさらに含む、請求項17に記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  19. 前記ノッキング判定方法は、前記積算値の変化量の合計値に対する各前記積算値の変化量の割合を算出するステップをさらに含み、
    算出された割合に応じた数が、前記予め定められた数として定められる、請求項14〜18のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  20. 各前記割合のうちの少なくともいずれか1つの割合が予め定められた割合より大きい場合、1が前記予め定められた数として定められる、請求項19に記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  21. 前記内燃機関の振動の強度および前記波形は、複数の点火サイクルにおいて検出され、
    前記積算値は、各点火サイクルごとに算出され、
    前記積算値の変化量を検出するステップは、前記積算値と、前記波形モデルと比較される波形が検出された点火サイクルよりも前の点火サイクルにおける積算値との差の絶対値により、点火サイクル間での前記積算値の変化量を検出するステップを含む、請求項14〜20のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  22. 前記内燃機関の振動の強度および前記波形は、複数の点火サイクルにおいて検出され、
    前記積算値は、各点火サイクルごとに算出され、
    前記積算値の変化量を検出するステップは、前記積算値と、前記波形モデルと比較される波形が検出された点火サイクルよりも前の点火サイクルであって、かつ振動の強度の最大値が予め定められた強度よりも小さいという条件を満たした点火サイクルにおける積算値との差の絶対値により、点火サイクル間での前記積算値の変化量を検出するステップを含む、請求項14〜20のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  23. 前記内燃機関の振動の強度および前記波形は、複数の点火サイクルにおいて検出され、
    前記積算値は、各点火サイクルごとに算出され、
    前記積算値の変化量を検出するステップは、前記積算値と、前記波形モデルと比較される波形が検出された点火サイクルよりも前の点火サイクルであって、かつ振動の強度の最大値が予め定められた強度よりも大きいという条件を予め定められた回数より多く連続して満たした複数の点火サイクルのうちのいずれか1つの点火サイクルにおける積算値との差の絶対値により、点火サイクル間での前記積算値の変化量を検出するステップを含む、請求項14〜20のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  24. 前記積算値の変化量を検出するステップは、前記積算値と、前記積算値が平滑化された演算値との差の絶対値により、点火サイクル間での前記積算値の変化量を検出するステップを含む、請求項14〜20のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  25. 前記積算値の変化量を検出するステップは、前記積算値と、振動の強度の最大値が予め定められた強度より小さい点火サイクルにおける積算値が平滑化された演算値との差の絶対値により、点火サイクル間での前記積算値の変化量を検出するステップを含む、請求項14〜20のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  26. 前記ノッキング判定方法は、前記波形と前記波形モデルとの差が小さいほどより大きくなるように、前記波形と前記モデルとの差に応じた値を算出するステップをさらに含み、
    前記ノッキングが発生した否かを判定するステップは、前記差に応じた値がしきい値より大きい場合に、ノッキングが発生したと判定するステップを含む、請求項14〜25のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  27. 請求項14〜26のいずれかに記載のノッキング判定方法をコンピュータに実現させるプログラム。
  28. 請求項14〜26のいずれかに記載のノッキング判定方法をコンピュータに実現させるプログラムを記録した記録媒体。
  29. 内燃機関のノッキング判定装置であって、
    前記内燃機関の振動の強度を検出するための手段と、
    検出された強度に基づいて、前記内燃機関の振動の波形を検出するための手段と、
    前記波形における振動の強度を積算した積算値を、複数の予め定められたクランク角の領域毎に算出するための手段と、
    点火サイクル間での前記積算値の変化量を、前記複数のクランク角の領域毎に検出するための検出手段と、
    前記複数のクランク角の領域のうち、前記積算値の変化量がより大きい領域を予め定められた数だけ特定するための特定手段と、
    前記特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを判定するための第1の判定手段と、
    前記特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、前記特定された領域における積算値の変化量が小さくなるように、前記検出された振動の波形を補正するための補正手段と、
    前記補正された波形における振動の強度を積算した積算値を、前記複数のクランク角の領域毎に算出するための手段と、
    前記補正された波形における各前記積算値の総和の頻度分布において、予め定められた判定レベルよりも大きい前記積算値の総和の割合に応じて、ノッキングが発生したか否かを判定するために用いる判定値を補正するための手段と、
    前記内燃機関の振動の強度および前記補正された判定値を比較した結果に基づいてノッキングが発生したか否かを判定するための第2の判定手段と、
    前記特定された領域を基準にして定められる探索領域内で、隣接するクランク角における強度に比べて大きい強度を有するクランク角を特定するための手段と、
    前記内燃機関の振動の基準として定められた波形モデルにおいて強度が最大になるタイミングを、前記特定されたクランク角に一致させた状態で、前記波形と前記波形モデルとを比較し、前記波形と前記波形モデルとの差が小さいほどより大きくなるように、前記波形と前記モデルとの差に応じた係数を算出するための手段とを含み、
    前記第1の判定手段は、
    前記係数がしきい値より大きい場合に、特定された領域における積算値がノッキングに起因して変化したと判定するための手段と、
    前記係数がしきい値より小さい場合に、特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定するための手段とを含む、内燃機関のノッキング判定装置。
  30. 内燃機関のノッキング判定装置であって、
    前記内燃機関の振動の強度を検出するための手段と、
    検出された強度に基づいて、前記内燃機関の振動の波形を検出するための手段と、
    前記波形における振動の強度を積算した積算値を、複数の予め定められたクランク角の領域毎に算出するための手段と、
    点火サイクル間での前記積算値の変化量を、前記複数のクランク角の領域毎に検出するための検出手段と、
    前記複数のクランク角の領域のうち、前記積算値の変化量がより大きい領域を予め定められた数だけ特定するための特定手段と、
    前記特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを判定するための第1の判定手段と、
    前記特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、前記特定された領域における積算値の変化量が小さくなるように、前記検出された振動の波形を補正するための補正手段と、
    前記補正された波形における振動の強度を積算した積算値を、前記複数のクランク角の領域毎に算出するための手段と、
    前記補正された波形における各前記積算値の総和の頻度分布において、予め定められた判定レベルよりも大きい前記積算値の総和の割合に応じて、ノッキングが発生したか否かを判定するために用いる判定値を補正するための手段と、
    前記内燃機関の振動の強度および前記補正された判定値を比較した結果に基づいてノッキングが発生したか否かを判定するための第2の判定手段と、
    前記特定された領域を基準にして定められる探索領域内で、隣接するクランク角における強度に比べて大きい強度を有するクランク角を特定するための手段とを含み、
    前記第1の判定手段は、前記特定されたクランク角が予め定められた領域内にある場合、前記特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定するための手段を含む、内燃機関のノッキング判定装置。
  31. 前記補正手段は、前記特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、前記特定された領域における積算値を前回の点火サイクルにおいて算出された積算値と同じ値にすることにより、前記積算値の変化量が小さくなるように、前記検出された振動の波形を補正するための手段を含む、請求項29または30に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  32. 前記検出手段は、連続する点火サイクル間の前記積算値の差により、前記積算値の変化量を検出するため手段を含む、請求項31に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  33. 前記検出手段は、連続する点火サイクル間の前記積算値の差の絶対値により、前記積算値の変化量を検出するため手段を含む、請求項31に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  34. 前記ノッキング判定装置は、前記積算値を平滑化した演算値を前記複数のクランク角の領域毎に算出するための手段をさらに含み、
    前記補正手段は、前記特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、前記特定された領域における積算値を前記演算値と同じ値にすることにより、前記積算値の変化量が小さくなるように、前記検出された振動の波形を補正するための手段を含む、請求項29または30に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  35. 前記検出手段は、前記積算値と前記演算値との差により、前記積算値の変化量を検出するため手段を含む、請求項34に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  36. 前記検出手段は、前記積算値と前記演算値との差の絶対値により、前記積算値の変化量を検出するため手段を含む、請求項34に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  37. 前記特定手段は、前記複数のクランク角の領域のうち、前記積算値の変化量がより大きいクランク角の領域を複数特定するための手段を含み、
    前記第1の判定手段は、前記複数の特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを判定するための手段を含む、請求項29〜36のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  38. 前記ノッキング判定装置は、前記複数の特定された領域のうちの少なくともいずれか一つの領域における積算値がノッキングに起因して変化したと判定された場合、前記検出された波形の補正を禁止するための手段をさらに含む、請求項37に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  39. 前記補正手段は、前記複数の特定された領域のうちの少なくともいずれか一つの領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、前記積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された領域における積算値の変化量が小さくなるように、前記検出された振動の波形を補正するための手段を含む、請求項37に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  40. 内燃機関のノッキング判定方法であって、
    前記内燃機関の振動の強度を検出するステップと、
    検出された強度に基づいて、前記内燃機関の振動の波形を検出するステップと、
    前記波形における振動の強度を積算した積算値を、複数の予め定められたクランク角の領域毎に算出するステップと、
    点火サイクル間での前記積算値の変化量を、前記複数のクランク角の領域毎に検出するステップと、
    前記複数のクランク角の領域のうち、前記積算値の変化量がより大きい領域を予め定められた数だけ特定するステップと、
    前記特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを判定するステップと、
    前記特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、前記特定された領域における積算値の変化量が小さくなるように、前記検出された振動の波形を補正するステップと、
    前記補正された波形における振動の強度を積算した積算値を、前記複数のクランク角の領域毎に算出するステップと、
    前記補正された波形における各前記積算値の総和の頻度分布において、予め定められた判定レベルよりも大きい前記積算値の総和の割合に応じて、ノッキングが発生したか否かを判定するために用いる判定値を補正するステップと、
    前記内燃機関の振動の強度および前記補正された判定値を比較した結果に基づいてノッキングが発生したか否かを判定するステップと、
    前記特定された領域を基準にして定められる探索領域内で、隣接するクランク角における強度に比べて大きい強度を有するクランク角を特定するステップと、
    前記内燃機関の振動の基準として定められた波形モデルにおいて強度が最大になるタイミングを、前記特定されたクランク角に一致させた状態で、前記波形と前記波形モデルとを比較し、前記波形と前記波形モデルとの差が小さいほどより大きくなるように、前記波形と前記モデルとの差に応じた係数を算出するステップとを含み、
    前記積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを判定するステップは、
    前記係数がしきい値より大きい場合に、特定された領域における積算値がノッキングに起因して変化したと判定するステップと、
    前記係数がしきい値より小さい場合に、特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定するステップとを含む、内燃機関のノッキング判定方法。
  41. 内燃機関のノッキング判定方法であって、
    前記内燃機関の振動の強度を検出するステップと、
    検出された強度に基づいて、前記内燃機関の振動の波形を検出するステップと、
    前記波形における振動の強度を積算した積算値を、複数の予め定められたクランク角の領域毎に算出するステップと、
    点火サイクル間での前記積算値の変化量を、前記複数のクランク角の領域毎に検出するステップと、
    前記複数のクランク角の領域のうち、前記積算値の変化量がより大きい領域を予め定められた数だけ特定するステップと、
    前記特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを判定するステップと、
    前記特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、前記特定された領域における積算値の変化量が小さくなるように、前記検出された振動の波形を補正するステップと、
    前記補正された波形における振動の強度を積算した積算値を、前記複数のクランク角の領域毎に算出するステップと、
    前記補正された波形における各前記積算値の総和の頻度分布において、予め定められた判定レベルよりも大きい前記積算値の総和の割合に応じて、ノッキングが発生したか否かを判定するために用いる判定値を補正するステップと、
    前記内燃機関の振動の強度および前記補正された判定値を比較した結果に基づいてノッキングが発生したか否かを判定するステップと、
    前記特定された領域を基準にして定められる探索領域内で、隣接するクランク角における強度に比べて大きい強度を有するクランク角を特定するステップとを含み、
    前記積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを判定するステップは、前記特定されたクランク角が予め定められた領域内にある場合、前記特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定するステップを含む、内燃機関のノッキング判定方法。
  42. 前記検出された振動の波形を補正するステップは、前記特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、前記特定された領域における積算値を前回の点火サイクルにおいて算出された積算値と同じ値にすることにより、前記積算値の変化量が小さくなるように、前記検出された振動の波形を補正するステップを含む、請求項40または41に記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  43. 前記積算値の変化量を検出するステップは、連続する点火サイクル間の前記積算値の差により、前記積算値の変化量を検出するためステップを含む、請求項42に記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  44. 前記積算値の変化量を検出するステップは、連続する点火サイクル間の前記積算値の差の絶対値により、前記積算値の変化量を検出するためステップを含む、請求項42に記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  45. 前記ノッキング判定方法は、前記積算値を平滑化した演算値を前記複数のクランク角の領域毎に算出するステップをさらに含み、
    前記検出された振動の波形を補正するステップは、前記特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、前記特定された領域における積算値を前記演算値と同じ値にすることにより、前記積算値の変化量が小さくなるように、前記検出された振動の波形を補正するステップを含む、請求項40または41に記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  46. 前記積算値の変化量を検出するステップは、前記積算値と前記演算値との差により、前記積算値の変化量を検出するためステップを含む、請求項45に記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  47. 前記積算値の変化量を検出するステップは、前記積算値と前記演算値との差の絶対値により、前記積算値の変化量を検出するためステップを含む、請求項45に記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  48. 前記積算値の変化量がより大きい領域を特定するステップは、前記複数のクランク角の領域のうち、前記積算値の変化量がより大きいクランク角の領域を複数特定するステップを含み、
    前記積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを判定するステップは、前記複数の特定された領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したか否かを判定するステップを含む、請求項40〜47のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  49. 前記ノッキング判定方法は、前記複数の特定された領域のうちの少なくともいずれか一つの領域における積算値がノッキングに起因して変化したと判定された場合、前記検出された波形の補正を禁止するステップをさらに含む、請求項48に記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  50. 前記検出された振動の波形を補正するステップは、前記複数の特定された領域のうちの少なくともいずれか一つの領域における積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された場合、前記積算値がノッキングに起因せずに変化したと判定された領域における積算値の変化量が小さくなるように、前記検出された振動の波形を補正するステップを含む、請求項48に記載の内燃機関のノッキング判定方法。
  51. 請求項40〜50のいずれかに記載のノッキング判定方法をコンピュータに実現させるプログラム。
  52. 請求項40〜50のいずれかに記載のノッキング判定方法をコンピュータに実現させるプログラムを記録した記録媒体。
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